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IgE非依存性アレルギー疾患検査方法
群馬大学大学院医学系研究科 小児科学分野
准教授 滝沢 琢己
大学院生 八木 久子
教授 荒川 浩一
2
4.5%
2.6%2007
2013
文部科学省統計
30万人
58万人
学童の食物アレルギー6年間で28万人の増加
背景 アレルギー疾患は爆発的に増加している
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抗原
肥満細胞
IgE抗体による抗原の認識
B細胞
ヒスタミンを放出
ヘルパーT細胞(Th2)
抗原提示細胞
感作
蕁麻疹全身症状
IgE依存性アレルギー
背景
4
IgE非依存性アレルギー
背景
IgE抗体が存在せずとも起こるアレルギー反応乳児消化管アレルギー薬物アレルギー
病態の詳細は不明 リンパ球の直接応答による組織障害か?
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背景アレルギー 補助検査
IgE依存性アレルギー →特異的IgE抗体価測定
IgE非依存性アレルギー →リンパ球刺激試験
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従来のリンパ球刺激試験
患者末梢血
PBMC分離
抗原の添加培養開始
5-6日間培養
放射性同位体などによる標識
1日間培養
細胞増殖の評価シンチレーションELISAフローサイトメトリー
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問題点
✓ PBMCの分離✓ PBMC分離のために新鮮な血液が必要
→採血のタイミングが限られる✓ 末梢血量が多量に必要。1抗原につき0.5-1mL、合計5mL✓ 長い(6~7日)培養期間✓ 放射性アイソトープを取り扱える施設
手間と時間がかかり、採血量が多い
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新しいリンパ球刺激試験
患者末梢血
PBMC分離
抗原の添加培養開始
5-6日間培養
放射性同位体などによる標識
1日間培養
マーカー遺伝子のPCRによる検出
24時間
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新技術の特徴
✓PBMC単離をする必要がない。
✓培養時間を大幅に短縮
✓放射性同位体を用いる必要がない。
✓採血量は1/5程度に減少
✓RNAを測定するので、刺激後検査まで凍結保存できる。
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想定される使用法
PCRによるマーカー検出
予め採血管に抗原を入れておき、血液を入れた後そのまま一晩培養し、凍結後に検査会社に送付できる
採血時間を任意の時間に設定できる検体の取扱いによる細胞障害の影響をうけにくい
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検討結果
αラクトアルブミン
βラクトグロブリン
αカゼイン κカゼイン
AUC 0.914 AUC 0.914
AUC 0.809
AUC 0.938
ミルクによる消化管アレルギー 従来法判別に対するROC曲線解析
PBMCによる結果
単一マーカーでも感度、特異度ともに高い
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ROCの多重ロジステック回帰分析AUC
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
αLac βLac α casein κ casein protein mix milk
IL2RA+LRRC32 IL2RA+TNFRSF4 LRRC32+TNFRSF4 IL2RA+IL1B IL2RA+TGFβ1 TNFRSF4+IL1β LRRC32+IL1β TNFRSF4+TGFB1
LRRC32+TGFB1 IL1β+TGFB1 IL2RA+IL19 TNFRSF4+IL19 LRRC32+IL19 IL1β+IL19 TGFB1+IL19
複数のマーカーを組み合わせることで、AUCは更に改善
PBMCによる結果
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aLac-IL2RA
aLac
-IL2R
A-n
eg
aLac
-IL2R
A-p
os
0
20
40
60
80
ROC of aLac-TNFRSF4:ROC curve
100% - Specificity%
0 20 40 60 80 100
0
20
40
60
80
100aLac-TNFRSF4
TNFR
SF4
(CD13
4)-n
eg
TNFR
SF4
(CD13
4)-p
os
0
5
10
15
20
aLac-LRRC32
LRRC32
-neg
LRRC32
-pos
0
5
10
15
ROC of aLac-LRRC32:ROC curve
100% - Specificity%
0 20 40 60 80 100
0
20
40
60
80
100
aLac-CD69
CD69
-neg
CD69
-pos
0
1
2
3
4
ROC of aLac-CD69:ROC curve
100% - Specificity%
0 20 40 60 80 100
0
20
40
60
80
100
検討結果
ミルクによる消化管アレルギー 従来法判別に対するROC曲線解析
全血法による結果 αラクトグロブリン
陰性 陽性ALST
ROC of aLac-IL2RA:ROC curve
100% - Specificity%
0 20 40 60 80 100
0
20
40
60
80
100IL2RA
陰性 陽性ALST
TNFRSF4
陰性 陽性ALST
LRRC32 CD69
陰性 陽性ALST
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IL2RA (CD25)
TNFRSF4
(CD134)LRRC32 CD69 IL1B TGFBI IL1F9 IER3 INHBA
αラクトアルブミン
ROC-AUC 0.800 1.000 0.792 1.000 0.750 1.000 0.833 0.800 0.800
ROC-P 0.128 0.011 0.153 0.053 0.317 0.046 0.183 0.245 0.125
t検定-p 0.161 0.007* 0.194 0.095 0.429 0.071 0.286 0.381 0.381
βラクトグロブリン
AUC 0.568 0.800 0.667 1.000 0.500 0.583 0.667 0.700 0.600
P 0.735 0.128 0.414 0.053 1.000 0.739 0.505 0.439 0.699
t検定-p 0.811 0.160 0.497 Er 1.00 0.857 0.643 0.571 0.857
αカゼイン
AUC 0.825 0.950 0.786 0.800 0.533 1.000 0.667 0.900 0.900
P 0.057 0.008 0.131 0.245 0.882 0.025 0.456 0.121 0.130
t検定-p 0.065 0.006* 0.163 0.381 1.000 0.036 0.571 0.191 0.191
κカゼイン
AUC 0.524 0.667 0.567 0.583 0.750 1.000 0.667 0.667 0.889
P 0.886 0.317 0.715 0.724 0.289 0.034 0.480 0.513 0.127
t検定-p 0.945 0.366 0.792 0857 0.400 0.057 0.629 0.700 0.200
上記混合
AUC 0.760 0.780 0.580 0.750 0.500 0.750 0.700 0.700 0.800
P 0.111 0.087 0.624 0.439 1.000 0.221 0327 0.439 0.245
t検定-p 0.129 0.099 0.679 0.560 1.00 0.286 0.413 0.571 0.381
検討結果全血法による結果 ROC解析のまとめ
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実用化に向けた課題
• 現在、PBMCを用いたものに関しては、複数マーカーの組み合わせでROC解析により診断可能性の高いものを見出している。しかし、陰性コントロールのデータが少ない。
• 全血を用いた解析は、解析症例数が少ない。今後症例数の増加、陰性コントロールのデータ蓄積を行っていく。
• 複数マーカの組み合わせは現在検討中。
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実用化に向けた課題
• これまでの解析症例が、小児の消化管アレルギーのみであり、IgE非依存性薬物アレルギーに関しては、症例の蓄積がない。
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今後の展開
• 転写産物のみでなく、培養液中に増加する液性因子をマーカーとすることで、イムノクロマトを用いたオンサイト診断技術を開発
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企業への期待
• 共同研究することで、多くの消化管アレルギーや薬物アレルギー症例の検体を集積し、それらの解析により、より精巧な技術となることが期待される。
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本技術に関する知的財産権
• 発明の名称:IgE非依存性アレルギー疾患検査方法
• 出願番号 :特願2015-181355
• 出願人 :群馬大学
• 発明者 :荒川浩一、滝沢琢己
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お問い合わせ先
群馬大学 産学連携・知的財産活用センター
〒376-8515 群馬県桐生市天神町1-5-1
TEL 0277-30-1171~1175
FAX 0277-30-1178
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