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Page 1: junyafujimoto/IMG_0006.pdfCreated Date 5/2/2012 4:09:35 PM

私達日本人は、声楽家を除くとまず初めにドイッから西洋音楽を学んできたように思います。 しかしながら私の場合、ある年代になった頃からイタリア音楽への憧憬が自然に生まれてきました。かのゲーテは幼少の頃から妹のイタリア語を聴きながら南国の地への憧れを持ち、成人して「イタリア紀行」を執筆するまでイタリアヘの強い思いを抱いていましたし、またイタリアの地を踏まなかった ドイツ語圏の作曲家、小説家でさえ、音楽や作品の中に南国のエッセンスを織 り交ぜました。私は、イタリアの魅力を考えた時、古代ローマの歴史や現代のモー ド、また地中海の気候 もあるとは思いますが、やはリイタリア語の持っている響きの美 しさとリズム感ではないかと思えてなりません。私は上手 くイタリア語を話せませんが、この言語は明瞭な響きも相まって皆を明るくさせ、生きる喜びを表現させる力を含んでいるように思います。だからこそ音楽に最も合った言語と言われる所以なのではないでしょうか。今回、ヴェルディ「運命の力」序曲を演奏 しますが、楽譜を正確に演奏することも大切ですが (ア マチュ

アの場合はまずそこからですね)、 それ以上にイタリア語のもつリズム感と美しさに少しでも近づいた表現になればと思います。さらにラテン語圏の言葉は、ドイッ語とは異なり前へ進もうとする推進力を秘めています。そしてオペラの内容をコンパクトにまとめた序曲には、魅力的な歌の数々と劇的表現、エキサイティングなアンサンブルが凝縮されていますので、ライブならではの表現をお楽しみ頂ければ幸いです。

二曲目のピアノ協奏由についてですが、まず西洋音楽史でいうところの古典派からロマン派になると、様式美や調和の中で表現されてきたものが、プライベー トなテーマと自由な発想によって、より大胆に演奏されるものへと移行していったように思います。今回の協奏曲をみますと、自由奔放な作風の中で次から次ヘと新たな楽想が生まれ、時には思考が脈絡もなく飛翔 し、気分が覚醒 したかと思えば鬱に転 じてしまう。ところが第二楽章になると、今までの事がまるで嘘に思えるほど、クララとの幸せな家庭を表すかのような音楽で満たされている。そして三楽章の高揚感はワーグナーを彿彿とさせます。このような感情の起伏をみますと、シユーマンはまさにロマン派作曲家の典型だったのではないでしょうか。

次に、皆さんの中にはご存知の方もあるかと思いますが、「田園Jの第一楽章のテーマは、バル トークの論文に依 ります と、ベー トーベンが活躍 した当時の、西オース トリアに移住 したクロアチア人の演奏する

民族音楽であったことが分かっています。手元には

その楽譜 もあ りますが、原曲はセルビアとクロアチアの旋律から取られています。ちなみに、このような転用は現代であれば盗作騒ぎになるかもしれませ 藤 薔 轟= 攣 `鵡 隕 鰻, 鐵 ‐辮 攣 … 鰺 ―菫

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が出来ます。では、クロアチァ人が移住する村々を散歩 しながら楽曲の構想を練ったベー トーベンには、村人の姿と景色、そして彼らの音楽がどのように映ったことで しょう。ただ作曲者 も断っているように、これは決 して情景描写ではなく、自然と接 した時の感情の音楽であるとしている。

ところで、ベートーベンと同時代の哲学者ヘーゲルの美学講義を以前読んで、冒頭から戸惑ったところがありました。私は哲学や美学を専門に勉強してはおりませんが、ヘーゲルは美学を論ずるにあたり、「美Jを自然美と芸術美の二つに分け、自然美には美の価値は無いと考察から除外し、もっぱら芸術美について細分化し論じ始めました。私は登山が好きなので「えっ、自然は美しくないの ?Jと 本を手にしながら大声で叫びたかった。しかしながらよく読むと、「美」とは我々の心の姿であり、思考、感情、精神の表れが美に至る、とかなり端折って記しますが論じられています。ベートーベンの「田園Jは確かに自然を謳いあげていますが、実は′心の中に生まれた「美Jを音として記したのではないかと思います。さらにショーペンハウアーによる「音楽は意志自体を表し、それ以外の芸術(絵画、建築、彫刻、詩など)の ように模倣によって表現はされない」とする芸術観を、僣越ながらここにご紹介するのをお許し頂きたいのですが、この事が作品をより深く楽しむためのささやかな助けとなれば幸いです。

最後になりますが、本日お越しの皆様方には、我々の演奏中に多少のお耳汚しの所もあるかもしれませんが、半年間練習を重ねてきた成果をお楽しみ頂ければ幸いに存じます。また、アンケートも団員の皆さんは楽しみにしておりますので、是非ご記入下さいますようお願い申し上げます。

鋼 ‐羹 1諄‐蒔。 蓼 ■ ‐鐵 鑢 】畿 `攣 響 ‐藤

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