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規制改革会議による労働法破壊と闘おう
日本労働弁護団事務局長
東京法律事務所 菅 俊治
2014.1.22 世界経済フォーラム年次総会(通称「ダボス会議」)
安倍首相の基調講演
— “既得権益の岩盤を打ち破るドリルの刃になる”と私は言ってきた。春先には
国家戦略特区が動き出す。そこではいかなる既得権益といえども、私の“ドリ
ル”から無傷でいられない。
1 敵は誰なのか? (1) 規制改革会議・産業競争力会議の発足と答申
H24.12.26 野田内閣退陣、安倍首相指名
H25.1.9 「経済財政諮問会議」が復活
H25.1.23 「規制改革会議」が復活(設置期間3年)
「産業競争力会議」が発足
H25.5.10 「国家戦略特区ワーキング・グループ」が発足
H25.6.5 規制改革会議「規制改革に関する答申 経済再生への突破−口」
=規制改革の第1次答申 ★
H25.6.14 閣議決定「日本再興戦略— Japan is Back 」
H25.7.30 参院選・自民圧勝でねじれ解消
H25.10 臨時国会
H25.12.26 「世界でトップレベルの雇用環境・働き方」の実現を目
指して=産業競争力会議「雇用・人材分科会」中間整理
★★
(2)「内閣主導」の実態 規制緩和論者による「日本占領」
経済財政諮問会議: 財務省から予算策定権限を奪うための機構
毎年「骨太の方針」を決める
定員上限11名(4割を民間議員で構成)
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マクロ経済政策を決定
規制改革の重要項目も決定
閣僚が交代しても、民間議員は変わらず
日本経済再生本部: 閣僚らで構成される会議(閣議セレモニー)
経済戦略に関する方針を決める。しかし、その実態
は10分〜20分程度の開催時間で産業競争力会議
の決定事項をなぞり、お墨付きを与えるもの。
産業競争力会議: 経済戦略の実質的議論を担う。数名の財界人・規制
改革論者の民間議員が方針を決定。
重要テーマについては分科会がおかれる。
産業競争力会議/雇用人材分科会
民間議員(長谷川、八代、竹中)がペーパーを出す。
折に触れて厚労省に意見を述べさせ、攻撃する。
厚労省がまっとうな意見を述べても聞く耳もたず。
民間議員のペーパーに沿った報告書がまとまる。
規制改革会議: 規制改革の実行部隊。労働法破壊の答申を出す。
財界人・規制改革論者の民間議員が牛耳る。
太田弘子議長代理がリード。
関係省庁の政策立案に枠をはめ手足を縛る機構。
規制改革会議/雇用ワーキンググループ 鶴光太郎座長
早稲田・島田教授、東大・水町教授もメンバー。
かつて暴走して批判を浴びた「労働タスクフォー
ス」(福井座長)の反省?
(3) 規制改革ホットライン の設置:民間企業からの要望を集める
H25.3.22〜 内閣府に設置
H25.5.31 約 900件の要望
H25.12.31 2173件の要望(うち雇用ワーキンググループ関連 52件)
(4)「国際先端テスト」:財界にとっての「最恵国待遇」チェック
我が国は企業にとって「もっとも稼ぎやすい」国でなければならない。
監督官庁に国際比較を行わせ、規制を維持する理由の回答を求める。
「規制維持側に挙証責任をおく」(太田弘子)
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(5) 厚労省 と労働政策審議会(公益・労働・使用者の3者構成)
審議会がスタートしたときには既に外堀を埋められている
厚労省は、規制改革会議と見解を一つにはしていない=抵抗勢力
2 規制改革会議の描く労働法破壊の工程表
(1)改革の具体的な項目
① 無期転換ルールの特例・その1 〜研究開発力強化法改正
<労契法18条無期転換ルールの周知をすすめる厚労省>
労契法 18条の無期転換ルール(H25.4.1施行)ができた
有期労働契約の濫用的な利用を抑制
労働者の雇用の安定を図る
通算 5 年を超えて更新すると無期転換権発生
(最短で H30.4.1 に無期転換権発生の見込み)。
<研究開発力強化法とは>
・ H20.6研究開発力強化法が成立
公的研究機関・大学への効率的資源投入
公的研究機関・大学の研究成果の民間への提供を促進
<無期転換ルールの特例>
・ 特例(5 年→10 年)を設けよ
「5 年以上かかるプロジェクトがある」という理屈
・ 大学、研究機関+共同研究者(民間労働者)
・議員立法で提案 H25.12 成立 H26.4.1 施行 <問題点>
・ 研究者、技術者の雇止め=不安定雇用が温存される。もとも
と 5 年を待たないと無期転換権が発生しないのは長過ぎる。
・ 優秀な人材の枯渇=結局は、研究開発力の地盤沈下をもたら
す。
・ 立法事実なし
* 事業としての「プロジェクトごと」の有期雇用は労基法上
も可能である(労基法 14条)。特例を設ける必要はない。
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* 企画ものとしての「プロジェクト」については、プロ
ジェクトが終わるころには別のプロジェクトがスタート
するのが実態であり、無期転換権を発生させる正当性あり。
研究者・技術者のみ特例とする必要はない。
・ 諸外国では学問分野の無期転換ルールについて特例を設けて
いる例はある。労契法は附則で 18条施行後 8 年を経た時点
で無期転換ルールの効果や影響を検証するとしている。しか
し、労政審での検討も行わず、議員提案により1週間程度の
審議で改正したのはあまりにも拙速。
② 労働者派遣制度の改正
<前史1> 派遣法制定史
・ 労働者派遣の本質的な問題=直接の雇用者でないものが使用
雇用の不安定、使用者責任の不明確さ、実態は職業紹介
・ 職安法44条は労働者派遣を禁じていた
人身売買、中間搾取、強制労働の温床となった歴史的経験
直接使用する者が雇用契約の使用者であるべきとの原則
・ 1950 年代、鉄鋼、港湾、運輸などで「社外工」制度が広がる。
親企業に雇用される直用労働者「本工」に対して、親企業の
構内で、請負企業に雇用されて働く労働者。
・ S41(1966)年マンパワー社が日本上陸。オイルショック後
の S49(1974)年以降全国展開、S56(1981)年から全国
オンライン化。事務系労働の分野で、業務処理請負業が急拡
大。
・ 昭和 60(1985)派遣法制定。昭和 61 年施行。
男女雇用機会均等法と引き換えに導入。
<前史2> 小さく生んで大きく育った労働者派遣制度
・ 強い反対を受け、複雑な規制のしくみ
・ はじめの15年(H11(1999)年まで):「業務」による
規制
13 業務→26 業務と拡大
H11 年のネガティブリスト化により原則解禁
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一部の禁止業務(建設、警備、港湾、医療)
・ つぎの15年:期間制限を組み合わせる
同一業務への受け入れに上限を設ける
1年→3年(H18)と緩和
専門 26 業務は期間制限なし
・ 「常用代替防止」という考え方で派遣労働市場を制約
・ 派遣労働者保護のための若干の譲歩を勝ち取る
日雇派遣の原則禁止/ グループ企業内派遣の 8 割規制
/ 労働契約申込みみなし制度/ 離職後 1 年以内の派遣
労働者としての受入れの禁止 等々
・ 派遣労働者市場は着実に拡大・・・もっと拡大せよ
規制改革会議第 2 次答申 宮内・奥谷(H14(2002)年)
製造業派遣の解禁(H16(2004)年)
紹介予定派遣の解禁(同)
<前史3> 緩和一辺倒から労働者保護へ向かいかけた…
・ H18〜19 にかけて潮目が変わる 労働者保護へ【補論】参照
・ H20 自公法案
日雇い派遣の原則禁止、マージン率公開の2点で規制強化
グッドウィル事件、秋葉原事件
リーマンショックと製造業分野の「派遣切り」
→自公法案は不十分として左からの批判・・・廃案に
・ H21 政権交代後、民主党 法案提出
製造業派遣の原則禁止(H16 解禁したのを戻す)
登録型派遣の原則禁止
日雇い派遣(2ヶ月)の原則禁止
労働契約申込みみなし制度の創設
→ 左右からの反対で立法が進まず
そのうちに民主党の支持率低下
・ 国会審議による修正を経て、H24.3 改正案成立 H24.10 施 行
登録型派遣・製造業派遣の原則禁止は見送り
日雇い派遣(30 日)の原則禁止
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・H24 改正法の国会審議の際の付帯決議→制度の在り方を検討
<反転> 派遣労働者保護→派遣自由化・恒常化へ
・ 厚労省/今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会発足
H24.10 〜 H25.1〜第 2 次安倍内閣発足
「論点整理」:労働者保護はネグレクト、自由化を盛り込む
・ 規制改革会議/雇用ワーキンググループ報告書 H25.6.5派遣期間制限の見直し=「常用代替防止原則」を骨抜きに
・ 厚労省/今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会報告
書 H25.8.30・ 厚労省/労働政策審議会/職業安定分科会/労働力需給制度
部会 報告書(公益委員案)
・ 労働力需給制度部会 報告書 H26.1.29<労働力需給制度部会・報告書の内容>
・ 「労働力の需給調整において重要な役割を果たしていること
を評価」「労働力の迅速・的確な需給調整という重要な役割
を果たしている」と労働者派遣制度を肯定的に評価。
・ 「業界全体として、労働者派遣事業の健全な育成を図る」
・ 「登録型派遣・製造業務派遣」は「禁止しない」
・ 26業務(期間制限なし)か否かの区別はなくする
・ 期間制限について
★ ルール1(個人単位の期間制限)
【新たなルール】
「同一の組織単位において3年を超えて継続して同一の
派遣労働者を受け入れてはならない」
【帰結】
* 3年経過前に同一派遣労働者の派遣切りは自由。派
遣先は直用義務を負わない。
* 別の組織単位ならば 、同一の派遣労働者を受け入れ
てよい(報道1課→報道2課→…と人事異動すれば
派遣労働者 A を受け入れ続けることができる)。
* 現行法においては、実態として同一の「業務」と判
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断される場合には継続受け入れができない。かなり
脱法的に偽装「異動」があるが。
* 「組織単位」: 「業務のまとまりがあり、かつ、そ
の長が業務の配分及び労務管理上の指揮監督権限を
有する単位として派遣契約上明確にしたもの(契約
に書いておけばよいことになる)
★ ルール2(事業所単位の期間制限)
【新たなルール】
「同一の事業所において3年を超えて継続して派遣労
働者を受け入れてはならない」
【例外とその帰結】
* 過半数組合等から意見聴取すれば 、同じ事業所に派
遣労働者を3年を超えて受け入れできる。
* 意見を聞けば足りるので歯止めにならない(過半数
組合等の賛成を必要とすれば足りるというものでも
ないが)。
* これまでは「同一業務」への受け入れ制限があり
(派遣法 40条の 2)、それ以上受け入れようとす
ると労働契約の申込義務が生じた(派遣法 40条の
5)。クーリング期間1ヶ月を設けなければならな
いのは不便。これからは、同一業務に、派遣労働者
A→派遣労働者 B→…と、派遣労働者を入れ替えつつ
切れ目なく受け入れ続けることができる。
* 同一事業所に、同一労働者を受け入れる場合には、
上記のルール1の適用があるので、組織単位は少な
くとも3年おきに変える必要がある。
★ 常用型等は期間制限撤廃(ルール1、ルール2は不適用)
・無期雇用の派遣労働者
・60歳以上の高齢者
・日数限定業務、有期プロジェクト業務
・育児休業の代替要員等
★ 期間制限の事実上の撤廃=派遣自由化へ
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・派遣市場の大幅拡大 派遣=正規
・派遣切りの横行する、超不安定社会へ
・ 均等待遇原則は見送り
・ キャリアアップに取り組む(派遣元事業主の責任として計画
的な教育訓練などを実施する)…派遣先としては、質のいい
労働者を提供してほしい
・ 紹介予定派遣は推進
・ 通常国会で措置、 H27.4.1 施行予定
<人材ビジネスのチャンス到来>
・ 「すべての労働者派遣事業を許可制とする」:大手囲い込み
・ 人材ビジネスの跋扈(「労働者代表委員からは、当部会の運
営について、直接の利害関係を有する派遣元事業主が非常に
多くの発言を行う等、委員以外の構成員と委員の発言機会の
バランスに懸念があった…との意見があった」
<使用者側は全く満足していない>
・ 「使用者代表委員からは、今回の見直しにおいて、問題の多
い平成 24 年改正法について十分な検討が行えなかった こと
から、日雇派遣の原則禁止、グループ企業内派遣の 8 割規制 、
労働契約申込みみなし制度、離職後 1 年以内の派遣労働者と
しての受入れの禁止などについて、廃止を含めた抜本的な見
直しの検討に速やかに着手すべきであるとの意見があっ
た。」
<未来予想・・・「派遣川柳」より>
俺派遣 君らも派遣 皆派遣
「労働は商品です」と派遣法
やがて来る 派遣が正規と言われる日
成果主義? 今やわが社は派遣主義
③ 国家戦略特区法に基づく区域指定と法整備:「治外法権」
<国家戦略特区ワーキンググループによる制度設計>
・ 産業競争力会議 H25.4.17 ・竹中の反省と提案
「日本の規制緩和は、世界の水準から大きく遅れをとってい
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る」
世界銀行「規制環境ランキング」
40位(H12)→28位(H18)→47位(H23)
H14「構造改革特区」を提案してそれなりの成果を挙げたが
…
近年の特区は安易な補助金頼り。規制改革が忘れられている。
今回は、従来とは次元の異なる特区を設ける
・ 国家戦略特区 WG 発足 H25.5.10〜
・ 「国家戦略特区」の基本的考え方と当面の進め方について
H25.5.24
「世界で一番ビジネスのしやすい環境をつくる」ことを目指
す
地域の先導的な取組に対し、国が主体的にコミット
総理主導の下、大胆な規制改革等を実現するための突破口と
なる
・ 「区域会議」 を設ける
区域会議は、いわば「ミニ独立政府」。特命担当大臣・首
長・民間企業で構成。全権をもって、区域計画を立て、やる
べき規制改革をすすめる。改革への協力義務。
・ 「国家戦略特区諮問会議」 を設ける
特区の指定、基本方針の決定、必要事項の審議を行う。区域
会議を直轄指導する。
・ 「バーチャル特区構想」 H25.5.29(坂村健ペーパー)
特区は地域である必要はない
→ 特定の企業なども特区の対象に
・ 国家戦略特別区域法 H25.12 成立 <狙われている「岩盤規制」>
・ H25.9.20 産業競争力会議 課題別会合 八田ペーパー
特例措置の対象と内容
・開業後5年以内の企業の事業所・・・②③の特例措置
・外国人比率が一定比率以上(30%以上)の事業所に対
して、①〜③の特例措置
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① 有期雇用
契約締結時に、労働者側から、5年を超えた際の無期
転換の権利を放棄することを認める。
これにより、使用者側が、無期転換の可能性を気に
せず、有期雇用を行えるようにする。
→「労働契約法 18条にかかわらず無期転換放棄条項
を有効とする」旨を規定する。
② 解雇規制の特例
契約締結時に、解雇の要件・手続きを契約条項で明確
化できるようにする。
仮に裁判になった際に契約条項が裁判規範となるこ
とを法定する。
→労働契約法第 16条を明確化する特例規定として、
「特区内で定めるガイドラインに適合する契約条
項に基づく解雇は有効となる」ことを規定する。
③ 時間規制の特例
一定の要件(年収など)を満たす労働者が希望する
場合、労働時間・休日・深夜労働の規制を外して、労
働条件を定めることを認める。
→労働基準法 41条による適用除外を追加する。
特区内の監督機能強化
上記の特例措置に伴い、不当労働行為、契約の押しつけや不履
行などがされることのないよう、特区内の労働基準監督署を体
制強化し、労働者保護を欠くことのないよう万全を期す。
<反対を受けて方針転換>
・ 田村厚労大臣、特区には反対
「雇用に特区はなじまない」「ルール周知で」
・ H25.10.4 国家戦略特区ワーキングループ 八田ペーパー
「対象従業員に限る」とのびほう策をつけ加える
・一定の専門資格取得者(弁護士、会計士等)
・修士号・博士号取得者
→ しかし反発が強い・・・方針転換へ
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・ H25.10.18 国家戦略特区における規制改革事項等の検討方針
(日本経済再生本部=閣議決定)
① 雇用条件の明確化
*「雇用労働相談センター」を設置
「国家戦略特区内の外国会社その他事業主に体する
「情報の提供、相談、助言その他の援助」事業を行う
(特区法 36条 1 項)
*「雇用指針」の作成
「国家戦略特区諮問会議の意見を聞いて、「雇用指
針」を作成」する。裁判例の分析と分類を行う。
② 無期転換ルールの特例制度創設は全国区で措置せよ
「労契法 18条 1 項の通算契約期間の在り方について全国
で実施することが適当であるものについて検討を加えて、
必要な措置を、平成 26 年通常国会に法律案を提案する」
(附則 2条)
・ 解雇ルールの緩和、金銭解決制度の火種が残った
<今後の懸念>
「雇用指針」の内容→解雇緩和への誘導
「雇用労働相談センター」の機能
→金銭解決、司法を拘束する機能を持たされる危険性
仲裁制度に発展する可能性もある
・ 無期転換ルールは特区ではなく全国区で実施に方針転換
附則による立法義務づけという荒技
「平成 26 年通常国会」で措置せよ
・ 時間規制は労政審で
労政審労働条件部会で検討開始。
<着々と準備が進んでいる>
・ 国家戦略特区の提案募集(H25.8.23〜) 62件の応募
・ ヒアリングの開催(H.25.9.5〜9.19)
特区のプレゼンを WG委員が聞く
・ たとえば東京都の提案
東京を世界一ビジネスのしやすい街に
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法人税、パテント税の減免(諸外国との比較)
外国企業、外国人労働者への便宜供与(インターナショ
ナルスクール、医療機関その他の外国語サービス)
24時間活動する都市に(公共交通機関その他の24時
間営業)
・ 国家戦略特別区域会議(通称:国家戦略特区統合推進本部)
「新たな規制の特例措置に関する協議の結果【論点シート】
(中間公表)」
特区に対応するための関連法の整備
論点の例:技能実習生の制度対象の拡大が必要
厚労省は反対意見を出すが、会議は再検討を指示
・ 国家戦略特区諮問会議の発足 H26.1.7・ 「国家戦略特区の進め方について」H26.1.7
民間議員 5 名(竹中、八田など)のペーパー
*短期課題
・3月までに区域指定
都道府県ないし都市圏を中心とする比較的広域指定
一定分野ではバーチャル特区型指定(やる気ある企
業)
・区域会議の立ち上げ
4月には立ち上げる
シンプルな構成(民間事業者の代表格が特区プロモー
ターの顔となる)
・通常国会を含めた対応(関連法の整備)
・雇用ガイドラインの策定(3月までに)
*中期(2002オリンピックを視野に)
・今後2年間を集中期間として残された岩盤規制について、
少なくとも特区では突破口を開く
・特区から全国展開へのプロセス・目標を明確化(たとえ
ば特区ごとの改革競争を通じて全国展開を促進する)
④ 有期労働契約 労契法の無期転換ルールの特例 その2
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<経緯・・・特区は断念・全国区で>
・ 八田ペーパー H25.9.20 H25.10.4 への反発
・ 特区に盛り込もうとしたが断念
→ では全国区で
「検討方針」H25.10.18 「平成 26 年通常国会に所要の法案を提出する」
特区法附則2条
特区法なのに全国区の例外創設を年度を決めて義務づけ
<内容>
・無期転換ルール(H25.4.1施行)の例外(5年→10年)
・高度な専門的な知識、技術又は経験
・年収
・ 労政審 有期雇用特別部会の審議開始 H25.12.25〜
H26.3 を目途に結論を出す ・ 厚労省は抵抗
有期雇用契約の濫用的な利用を抑制し、雇用の安定を図ると
いう制度趣旨が失われないように、特例の範囲を定めるべき
・ 労政審 有期雇用特別部会 H26.2.14有期労働契約の無期転換ルールの特例等について(報告)
* 抽象的な要件 → 省令への白紙委任
「一定の期間内に完了する業務に従事する高収入か
つ高度な専門的知識、技術又は経験を有する有期契
約労働者」
* 「一定の期間内に完了する業務」の要件:
「企業内の期間限定のプロジェクトの業務のうち、
高度な専門的知識等を必要とするものを含む」
→事業に永続性があっても、「プロジェクト」だけ
が期間限定ならば対象にしうる
プロジェクトを細かく恣意的に設定することで
無期転換権の発生を長期にできる
* 「高収入かつ高度な専門的知識、技術又は経験を有
する」の要件:
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対象労働者の具体的要件は「厚生労働省令等」で定
める。→法律には具体的要件は書き込まれない。
* 労基法 14条に関する大臣告示を参考に定める
→ 広範な対象。緩和のおそれ。
1号 博士課程修了者
2号 修士課程修了者で実務経験2年以上
3号 次のいずれかの有資格者
4号 次のいずれかの能力評価試験合格者
5号 特許発明の発明者、登録意匠の創作者、登録
品種の育成者
6号 一定の学歴及び実務経験を有する次の者で年
収が1075万円以上のもの
7号 国等により有する知識等が優れたものと認定
されている者
* 「定年後引き続いて雇用される有期契約労働者」も
特例対象
* 特例を受けるには、厚生労働大臣の「認定」を受け
る必要がある
厚生労働大臣が、適切な雇用管理の実施に関する基
本的な指針を策定
厚生労働大臣が、指針に沿った対応が取られるとの
認定を行う・・・そんなことが判断できるのか?
⑤ 時間法制の改正:日本型裁量労働制
・ 規制改革会議/雇用ワーキンググループ「労働時間規制の見
直し」に向けた主な論点(案)(H25.11.27)・ 規制改革会議「労働時間規制の見直しに関する意見」
(H25.12.5)
・ 現在ある労働時間の例外措置
「管理監督者の適用除外」・・・名ばかり管理職を生んでい
る
「裁量労働制」・・・手続が煩雑で利用度が低い
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→ わかりやすい新制度を創設する
・ 適用除外の範囲は
「国が対象者の範囲の目安を示した上で、基本的には企業レ
ベルの集団的な労使自治に委ねる(労使代表で労使協定を締
結)
割増賃金制度は深夜を含めて適用しない(労基法 37条)
・ 選択の幅は広く!
「国が枠組みを設定するにあたっては、企業の実態に合わず、
企業の活力低下につながることがないよう、適切な選択の幅
が用意されるべきである」「また、非常時においては、労使
の取り決めにより、一時的にこうした規制を緩和できるよう、
十分配慮されるべきである」
・・・36協定と同じ仕組み。要するに残業代ゼロ!
・ 「三位一体の改革」とアピールせよ!
量的上限規制(一定のメニューから労使が選択)
休日・休暇取得(一定のメニューから労使が選択)
新たな適用除外制度(企業の手段的自治に委ねる)
・当初は過半数組合のある企業に限定する
・規制改革会議の議事録で語られる本音(第 22回)
鶴:フレックス、裁量労働の手続の見直し、割増賃金規制の
中小企業への猶予などの個別議論に留めてはいけない。
包括的な改革をしなければならない。
鶴:岡議長、太田議長代理からマスコミ対策のアドバイスを
受けた(「残業代ゼロ法案」と報道されて失敗した経
験)。今回は三位一体改革であることをアピールする。
金丸:過半数労組である必要ないのでは。
鶴:本音はそうだ。しかし労側からケチがつくので今はでき
ない。
・労政審/労働条件分科会 ヒアリング(H25.9〜)→審議ス
タート(H26.1.15〜)・ H25 上期調査開始 →H25 秋検討開始 →1年を目途に結論、結
論を得次第措置
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⑥ ジョブ型正社員の雇用ルール整備
・ 規制改革会議 H25.12.5 「ジョブ型正社員の雇用ルール整備に関する意見」
・ 厚生労働省/「多様な正社員の普及・拡大のための有識者懇
談会」を設置
・ ジョブ型正社員とは
職種・勤務地・労働時間のいずれかが限定された正社員
既にかなり普及しており、法制度上の制約があるわけではな
い
・ なぜ、いまその普及と拡大を進めようとしているのか?
少子化対策:育児、介護中でも正社員として働き続ける(労
働力人口の減少への対応)
労契法 18条による無期転換後の正社員の処遇問題
・ 人間らしい働き方・公正処遇ができない現状を温存・固定化
していくためのキャンペーンとして用いられる可能性
・ 「無限定正社員」という用語を用いての誤った理解の普及
解雇がしにくく賃金が高いかわりに
無限定な配転を命じられる
無限定な残業を命じられる
・ 「限定正社員」という用語を用いての誤った理解の普及
職がなくなれば容易に解雇ができる
限定しているかわりに賃金が低くてもよい
同一価値労働同一賃金・・・処遇を低く固定
H25 検討開始 →H26 措置 ⑥ 有料職業紹介事業の規制改革
H25 検討開始→ H26 早期に結論・国際先端テスト実施事項 ・ 労働者を移動させるとお金がおちる仕組み
労働移動助成金
儲かっている大企業も対象に
送り出し企業の民間人材ビジネスの訓練費用を助成
支援を委託した段階でも助成金を支給
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受け入れ企業の訓練にも助成金を支給
・ 求人情報の提供(H26.8まで) → 人材ビジネスへの横流
し
人材ビジネスが求人企業に売り込みをかける
雇用の劣化
・ 求職情報の提供(検討中) → 人材ビジネスへの横流し
ダイレクトメールによる営業活動
個人情報の悪用
・ ジョブカードの発行とキャリアカウンセリングビジネス
キャリアカウンセリング資格取得ビジネス
キャリアカウンセルビジネス
・ トライアル雇用による雇用の劣化
奨励金の支給対象を拡大
・ 市場化テストでは、ハローワークの圧勝だったが
・ パソナなど人材業界の政治的力の拡大
⑦ 外国人技能実習生の活用・拡大、高齢者の活用
外国人の単純労働者としての活用も今後の課題
⑧ 仲裁法の改正
現行仲裁法(H15):将来において生ずる個別労働関係紛争を対
象とする仲裁合意は無効(附則4条)
→ 法制定時、労側の強い反対で附則が盛り込まれた
雇用契約締結時に仲裁合意を入れられると、裁判を提起で
きなくなるため
産業競争力会議「雇用・人材」分科会中間整理(H25.12.26)
「グローバルに活動している外国企業が日本に投資できるよう、
対象者を含め、仲裁合意についての諸外国の関係制度・運用の
状況の研究をすすめる」
(2)労働法破壊・・・何をもたらすか? 大変なことになる!
(3)どこまでいくのか?・・・産業競争力会議の描く改革像
H25.10.17 八代尚弘(国際基督教大学)「世界でトップレベル
の雇用環境・働き方を目指して」
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H25.11.11 長谷川閑史(主査:武田薬品工業社長、経済同友会
幹事)「世界でトップレベルの雇用環境・働き方を
目指して」
H25.12.26 産業競争力会議 「中間整理」
H26.1.24 雇用ワーキング・グループの今後の進め方(案)
3 いかに闘うか? (1) 労働弁護団のとりくみ方針
ア 闘争本部を設置
イ 緊急拡大幹事会を開催:情報を整理し、各地の運動をよびかける
2014.2.15(日)2 時〜5時
中央大学記念館 620(お茶の水)
ウ 学習会活動、論文・書籍の執筆、投稿、労組との交流
講師派遣、労働組合などに学習会開催の申し入れ
労組等との定期的な研究会(ホーム&アウェイで)
15年後の働き方をイメージ:例)仮称「2030年の春闘方針」
エ 武器の準備
学習会レジュメたたき台、規制改革資料集のアップデート
オ 運動と発信
集会、街頭宣伝、派遣法川柳、ブログ、ツイッター、FB カ マスコミ 記者会見 是非各地のマスコミに意見書・声明のレクを
キ 外部への働きかけと共同のよびかけ
国や自治体の職員、学者、政治家、企業人にも真面目な人はいる
(6) 運動の目標とスローガン、戦略
【補論】過去の経験に学ぶ
(7) ホワイトカラーエグゼンプション断念の経験
ア 導入に向けた動き
H17.5 日経連 ホワイトカラーエグゼンプションを提言
経済財政諮問会議 エグゼンプション導入を求める報告書
労政審の答申 エグゼンプション導入へ
イ 与党・自民党からの批判
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自民党雇用生活調査会初会合(H18.12.13)
後藤田正純(週間エコノミスト H19.1新春号)
「経済界にはヒール(悪役)になってもらう」「これまで労働法制は規
制緩和の一点張りだったが、これからは党が責任をもって規律ある労働
市場の創設をはたらきかけていく」「市場万能主義を主張する時代は終
わりを告げている」
川崎二郎雇用生活調査会会長・元厚労相「雇用の量は改善されたが、
質で大きな問題を抱えた。企業が「安価な労働力」に頼りすぎた結果、
正規雇用すべきものまで、非正規化が進んでしまった」
加藤紘一「小泉・安倍時代からの経済財政諮問会議メンバーをいっそう
すべきだ」
公明・太田 安倍首相と会談「働いている方の感情もあるし、拙速に
なってはならない」(H18.12.26)安倍首相が「今の段階では難しい」導入断念を表明(H19.1.16)
ウ 自民党からの造反を生み出した決め手「残業代ゼロ法案」の報道
八代尚弘(経済財政諮問会議 H19.1.8)
「反対派が、「残業代ゼロ法案とワンフレーズで表現した。これに対し
てちゃんとした対応がとられていない。」
朝日コム(H19.1.17)
「法案提出を見送ったのは名前が悪かったから。・・・経済界でそんな
「敗因分析」が広まっている」
エ 名前の問題ではない=提案が労働実態と乖離しているから
とんでもない法律だという本質を国民が理解した
(8) 潮目は H18〜H19 にかけて既に変わりつつあった
ア 変化の背景
・小泉が郵政改革を終えて満足→安倍(リーダーシップなし)
・経済的背景
労働分配率の低下
ワーキングプアや格差の拡大
生活保護受給世帯の増加
非正規雇用の増加
自殺や少子化
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・社会問題の発生
ライブドア事件、村上世彰インサイダー取引事件
三菱ふそうトラック事件、西武鉄道事件、耐震偽装、労災隠し事件
JR福知山線事故・・・
日雇い派遣の告発 グッドウィル事件
・政治的な背景
小泉の退陣(郵政で満足):新自由主義陣営はカリスマを失う
経済財政諮問会議での官僚・与党の巻き返し
自民党造反議員の復党
参院選での安倍大敗、「生活が第一」を掲げた民主党が躍進(H19) ・国際的な背景
アメリカモデルへの批判(スティグリッツ等々)
イラク戦争の失敗
民主党の大勝(H18.11 中間選挙)
イ 報道と書籍 社会問題として認知されるようになった
NHK 特集「フリーター漂流 モノづくりの現場で」(H17.2.17)NHK 特集「ワーキングプア 働いても働いても豊かになれない」
(H18.7.23)
岩波新書「格差社会」 橘木俊詔(H18.9.20)
岩波新書「労働ダンピング」 中野麻美(H18.10.20)
岩波新書「偽装請負」 朝日新聞特別報道チーム(H19)東洋経済「雇用融解」風間直樹(H19)蟹工船ブーム H19書店販売員が取り上げる
H20.1雨宮・高橋対談(毎日新聞)が火をつける
ウ 労働弁護団の果たした役割
声明、意見書、シンポジウム
事件活動
報道へのはたらきかけ
(9) エグゼンプション断念後・・・規制改革会議の地盤沈下
ア 規制改革会議厚労省のカウンターパンチ
イ 規制改革会議/労働タスクフォースの暴走
「脱格差と活力をもたらす労働力市場へ 労働法制の抜本的見直しを」−
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(H19.5.21)・・・規制は労働者のためにならない
ウ 厚労省のカウンターパンチ
雇用労働政策の基軸・方向性に関する研究会(学者のみ=使側の排除)
同報告書「上等な市場社会に向けて 公正・安定・多様性− 」
エ 最低賃引き上げ:中央最低賃金審議会、都道府県レベルでも
「従来の考え方の延長ではない賃金底上げ」
オ 規制改革会議 第 2 次答申(H19.12.25)最賃引上げ反対
カ 厚労省の第2のカウンター(H19.12.28)わずか3日後
政府機関が規制改革会議に公然と反論するに至った
運動の盛り上がり→政権交代へ
日弁連人権退会(H20.11)
リーマンショックと派遣切り訴訟(H20.11 ころ)
年越し派遣村(H20.12〜H21.1)(10)今は? 原発事故後・・・
以上
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