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Title 日本語非母語話者のメタ言語行動表現に関する一考察 ―配慮という観点から― Author(s) 金城, 尚美; 玉城, あゆみ; 中西, 朝子 Citation 留学生教育 : 琉球大学留学生センター紀要, 4: 19-41 Issue Date 2007-03 URL http://hdl.handle.net/20.500.12000/6788 Rights
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留学生教育 : 琉球大学留学生センター紀要, 4: 19-41 Issue...

Oct 06, 2020

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Title 日本語非母語話者のメタ言語行動表現に関する一考察 ―配慮という観点から―

Author(s) 金城, 尚美; 玉城, あゆみ; 中西, 朝子

Citation 留学生教育 : 琉球大学留学生センター紀要, 4: 19-41

Issue Date 2007-03

URL http://hdl.handle.net/20.500.12000/6788

Rights

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琉球大学留学生センター紀要留学生較育第4号.2007

研究論文

日本語非母語話者のメタ言語行動表現に関する一考察

一配慮という観点から-

金城尚美・玉城あゆみ・中西朝子

要旨

杉戸(2005等)は「日常われわれが行っている言語活動の中では「配lMiuを常に行っ

ており,その対人的な配慮は『メタ言語行動表現』の明示により示される」(杉戸1998)

と述べている。相手への配慮を示すことがよい対人関係を築くために必要な要素の1つ

であるとすれば,円滑な対人関係を築いている学習者は相手への配慮を適切に行ってい

ることになる。具体的にはメタ言語行動表現を適切に使用していると考えることができる。

そこで本研究では「言語行動における配慮」(杉戸2001等)という観点から,円滑な

人間関係を築いている日本語非母語話者の発話データを基に「メタ言語行動表現」が使

用されているかを調査した。その結果,「メタ言語行動表現」の使用実態が明らかになり,

また,「意識的配慰」(一二三1995等)も行っている様子も観察された。これらのこと

から,「メタ言粥行1lilj表現」の使用と「意識的配慮」が日本語非母語話者の印象の良し悪

しを決める要素になっている可能性があり,円滑なコミュニケーションの遂行に大きく

関わっているのではないかということが示唆された。

キーワード:メタ言iMi行動表現,言語行動,意識的配慮.日本人評価研究

1.はじめに

日本語の学習膝が長いにもかかわらず,言いたいことがうまく伝えられなかったり,

相手にF何だか失礼な感じがする」といった印象を与えてしまう学習者がいる。その一

方で,文法的な知識が限られていても,周りの人々とうまくコミュニケーションをは

かり.よい対人関係を築いている学習者がいる。これらの事実は言語運用力は単に文

法的に正確である,語奨を適切に使用している,といった言語の形式面だけが重要で

ないことを物語っている。では言語の構造と形式面以外にどのような点が「日本語が

うまい」という評価に関わっているのだろうか。

日本語教育の目標が日本語という道具を使用したコミュニケーションの遂行のみな

らず,コミュニケーションする相手との関係を円滑に保つために必要なことを習得

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日本語非母語話者のメタ言語行動表現に関する一考察一配慰という観点から-(金城・玉城・中西)

させることであるとすれば,それらの要素を教育に取り入れる必要性があると言える。

本研究ではコミュニケーションを人と社会を結ぶ活動であると捉える立場から,言語

運用力には円滑な人間関係を楠簗するために必要な要素が含まれていると考える。では,

円滑な人間関係を構築する言語運用力に含まれる要素とは何であろうか。

杉戸は.「言語行動'いの『対人性」という側面を考察するための具体的・明示的な手が

かりとして,メタ言語行動表現という表現類型が有効」であると述べている(杉戸

1998:168)。つまり,メタ言語行動表現を使うことは円滑な人間関係を築く要素の1

つであると言える。杉戸の研究は日本人の言語行動について言及したものだが.相手

への配慮を明示することがコミュニケーション上.人間関係を円滑にする機能を担っ

ているのであれば.日本語非母語話者であってもメタ言語行動表現で相手への配慮を

明示することが重要であると考えることができる。

そこで本研究では日本人から「日本語がうまい」と評価されている日本語非母語話

者に注目しその日本語非母語話者のメタ言語行動表現の使用実態を調査することに

した。そのためにまず,ある「1本語非母語話者の言語運用力について日本語母語話者

による評価を行い(調査1).評価が高いことを確認した上で.メタ言語行動表現の使

用状況を明らかにするための調査(調査2)を実施した。

2.調査について

本研究の目的は日本語の運用力が高く,周りの日本人とよい対人関係を築いている

とみなされる日本語非母語話者のメタ言語行動表現の使用実態を明らかにすることで

ある。その前提となる学習者の日本語運用力については「日本語能力試験」のような能

力認定試験の結果ではなく,日本語非母語話者に対する日本語母語話者による「日本

人評価」(後述)に基づきその評価が高く言語運用力があると判断される日本語非母

語話者を対象にメタ言語行動表現の使用状況を調べることにした。

本研究の調査の対象となった日本語非母語話者(以下BSとする)は日本国内の大学

院を修了し,研究者として沖縄に滞在しているヨーロッパ出身の女性である。日常生

活に必要な日本語力だけではなく,日本語での論文執筆や口頭での研究発表を行うこ

とができるレベルの言語能力も備えている。また,BSと接している日本人から「日本

語が流暢である」,「感じがよい」等の印象を持たれており,コミュニケーションが支障

なく行われている。以上の点からBSは周りの日本人と円滑な対人関係を築いており.

言語運用力が高いと予想されることから.調査対象者とした。BSの調査時の基本的な

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琉球大学留学生センター紀要留学生教育第4号.2007

背景情報は次の通りである。

(1)母語:ヨーロッパ地域の言語

(2)調査時の年齢:35歳

(3)日本語学習歴:5年(日本へ留学:1年,母国の大学:4年)

(4)調査時の淵日年数:7年7ヶ月(交換留学の1年。大学院5年半を含む)

(5)調査時の滞日目的:研究

(6)日本語以外の外国語学習経験:英語(3年),仏語(5年),中国語(2年),

韓国語(1年8ヶ月)

2.1.BSに対する日本人評価について(調査1)

BSのメタ言語行動表現を調査する前に日本語運用力の客観的評価を得るため日本

語母語話者による「日本人評価」の基準を用いた質問紙調査を行った。

2.1.1.日本人評価研究

日本語学習者の言語運用力を評価する場合,発音や文法は正しいか,語奨が豊富で

正確に使えているかといった言語の構造面・形式面に着目するだけでなく,「話が弾み

楽しかった」,「言いたいことがよくわからなかった」,「日本語は流暢のようだがずい

ぶん失礼な感じがした」といった感想や印象のレベルまで含む視点からの評価が必要

であるという立場から「日本語学習者の発話に対する日本語母語話者の評価」として

多くの研究がなされている(小林2004.渡部2003等)。小林(2004:10)は。これ

らの研究を日本人評価研究とし,「日本語学習者の日本語運用に対して日本語母語話者

が何に注目しどのように評価するかを明らかにする研究」と定義している。

外国語教育で母語話者による評価が研究されるようになったのは1970年代以降か

らで,教育の目標が「言語体系についての知識の獲得」から「コミュニケーション能力

の獲得」に移行するのに伴い,到達目標やシラバスの設定のためには円滑なコミュニ

ケーションを支える要因を明らかにする必要に迫られたことが背景にあると指摘され

ている(小林2004)。日本語教育における日本語母語話者による評価に関する研究は,

1980年代後半から注目されはじめ(渡部2002),一般の日本人の評価観点,日本語教

師の評価観点といった評価主体,あるいは被評価者の日本語力のレベルといった変数

の違いによる評価等,様々な側面からの研究が進められている。

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日本語非母語話者のメタ言語行動表現に関する一考察一配慮という観点から-(金城・玉城・中西)

2.1.2.BSに対する日本人評価(調査1)の概要

BSの日本語運用力を検証するための日本人評価の調査にあたって,大学の講義等を

通してBSと週に1回以上接している日本語母語話者である大学生,大学院生,大学の

教員。計31名(以下。母語話者とする)に協力を依頼した。母語話者は10代から50

代までに渡り年齢層は幅広い。母語話者には,渡部(2004b)の評価観点の5つのカテ

ゴリー(聞きやすさ対話能力,表現力,語彙・表現,ストラテジー)と質問項目を参考

にした質問紙による調査を行った。質問紙は渡部(前掲)の調査票の質問項目に7項目

を追加して作成した'2'・質問内容は表lの通りである。被調査者には各質問項目に対し,「あ

てはまらない,どちらでもない,あてはまる」の3段階の評定をしてもらった。また

BSの印象や日本語力に関して自由記述形式で記入してもらった。

表1日本人評価に関する調査内容

-22-

カテゴ

リー項目

刀テコ

リー項目

(1)文法の間違いが少ない(助詞,助l町制のI1ll述い

郡)

(2)iR(の大きさやIIL万は,畷じがいい

(3M1分の話を机手に」ql1解してもらおうとしている

(4)話の流れは.スムーズである

(5)1J本諮の発音のIlll通いが少ない

対鱈能力

(6)応符が.的確である(質IHIに対して適切な符が返っ

てくる)

(7)11Mの取り方が上手い

(8)タイミングよく話しかけている

(9)あいづちが適切である

(10)話しかける時.適切な前おきができる(r今ちょっと

いいですか…」,「お願いがあるんですが…_等)

(11)柑手に上手に何かを勧めることができる(お柴や

お菓子等)

(12)謝り方が適切である

語髄・表現

(13)fir葉や表現の111I違いが少ない

(14)適切なあいさつができる(人退室時,会った時.別

れる時)

(15)終助詞「ね」の使い方が適切である

(16)終助詞「よ」の使い方が適切である

(17)あなたが蝋心するような討蕊や表現があった

(若者言葉,UW1】用語,話し目薬等)

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琉球大学留学生センター紀要留学生教育第4号,2007

2.1.3.BSに対する日本人評価(調査1)の結果

母語話者によるBSに対する評価結果は図1に示した通りである。3段階評定の1

の回答に1ポイント,2に2ポイント,3に3ポイントを与え,各回答の人数と各ポイ

ント数をかけた数値を合計し,各評価観点のカテゴリーごとに平均値を算出した''1.調

査の結果,BSは「聞きやすさ」「対話能力」「語漿・表現」「表現力」「ストラテジー」の

各カテゴリーで高い数値を示し,母語話者からいずれの観点からも高く評価されてい

ることがわかった。

この結果から,文法的な正確さは母語話者が非母語話者の日本語を評価する際の要

素の,つであるものの,最重要視されていないこと,文法以外の要素も重要であるこ

とが確認された。BSは語彙数が多く,研究者であ、きやすさ回

ることから日常的な言葉だけでなく専門的な用語

まで幅広い知識があり,それを使用言語のレベル

まで高めている。このように多様な語彙の使い分

けもできることがコメントからもわかった。BS

の言語使用については,「超~」といったくだけた

表現も使用している一方,「先生に対する尊敬語が

正確である」Jていねいでへりくだった表現が多い」,

「礼儀正しい人」等,敬語の正確な使用や丁寧でネし

れた。これらの記述から,BSは場面や人,場所に

対括能力

ストラテジー

回 国

図1項目別平均値

儀正しいというコメントが多く見られた。これらの記述から,BSは場面や人,場所に

よって言葉や表現の使い分けをしスピーチレベルシフトを適切に行っていることが

わかった。またBSは,関西に在住歴があることから関西方言も時々発話に出てくるが,

方言を使うことが関西弁で冗談を交えて会話を盛り上げてくれ,明るくて感じの良い

人であるというプラス評価につながっていることがわかった。

BSの日本語の特徴として,「質問の際の前置き。つまらない質問かもしれませんが,

とか,すみませんが,等がある」,「色々と話の内容が変わってもきちんと対話していた」,

「うけこたえが早い」等のコメントや,「質問の正確な理解」,「くだけた表現の的確な使用」,

「日本語が出てこないときの対処のしかた」,「丁寧な話し方やお礼」ができるという回

答もあった。渡部(2004a)は日本語母語話者からプラス評価される評価基準の一つと

して社会文化的能力を挙げている。社会文化的能力には,「日本文化に対する配慮(直

接的過ぎる質問や意見,謙遜,否定的な表現の回避)が含まれる(渡部前掲;87)が,

調査結果からBSは社会文化的能力が高いと言えるだろう。

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日本語非母語話者のメタ言語行動表現に関する一考察一配慮という観点から-(金城・玉城・中西)

さらに,「場の雰囲気がよめる」,「相手に気を使わせない気の使い方ができる」とい

う回答もあり,言葉だけでなく相手への「意識的配慮」(一二三1995,2000,2004a

2004b等)が評価を高める要素の1つとして重要であることが明らかになった。意識

的配慮とは,「正確に表現しよう,互いにわからないことがあっても受け入れよう.自

己主張は控えめにしよう」といった会話を成立させるための心理面・言語面での配慮

を指す(一二三2004b:181)。

2.2.メタ言語行動表現の調査(調査2)

日本人評価(調査1)において高い評価を得た,つまり言語運用力があると評価され

たBSを対象に日本語母語話者との会話場面でメタ言語行動表現を使用しているか.

どのようなメタ言語行動表現を使用しているかという調査を行った。またBSは「日本

文化に対する配慮」(渡部2004a)と「意識的配慮」(一二三2000)もかなり行ってい

ることが調査1の結果から予測されたため,これらの点にも焦点を当てデータ収集す

ることにした。

22.1.言語行動における配慮

日本人評価に関する先行研究においては,どのような観点から評価されているのか

という点が主眼となっているが,本研究においては特に円滑なコミュニケーションを

支え‘よりよい人間関係を築くことに関わる要素について特に調べてみたいと考えた。

敬語や待遇表現を包含する人への配慮や気づかいとして,杉戸(1998.2001,2005,

2006)は「言語行動における配慮」という枠組みを提案している。本研究では.円滑な

コミュニケーションによる人間関係の構築の要素の1つに杉戸が提案する「言語行動

における配慮」が関わっていると考える。

杉戸(2005:2)によると「配慮」とは,「コミュニケーションにおける言語使用を背

後で支える各種の意識や心配り」であり,話し手と話し相手の関係を考慮した上で話

し手の行った言語行動の要素について言及するメタ言語行動表現である(杉戸1983:

33-34イ)。杉戸(1983:33)はコミュニケーションに際し,言語行動主体が行う対人

的な配慮を,表2の①~⑫の項目に分類した駅。

また杉戸(2005,2006)は言語行動における配慮の枠組みを設定し,人が話したり,

書いたりといった言語行動を行う場合には,何を気にするか(留意事項),どのような

言語行動に仕上げようとするか(価値・目標),何をよりどころにして配慮するか(判

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琉球大学留学生センター紀要留学生教育第4号,2007

断基準)の3つの観点を考慮することにより,その配慮が言葉によって明示されると

考える(杉戸2005,2006)。

一方,一二三(2000:21)は「日本語母語話者と日本語非母語話者とが日本語で会

話を行うとき.会話を継続させるために会話者はお互いに言語面でも心理面でも,様々

な調整や配慮を」行っていると述べている。また,「意識的配慮の調整を学習することが,

日本人との会話成立のための最低限の基盤を確保し,友好的な関係へ発展させるため

に重要である」(一二三2004b)と考え,一連の研究を行っている。

本研究では言語運用力が高いと評価される日本語非母語話者を対象に,日本語母語

話者との会話場面でのメタ言語行動表現の使用実態を調べることにした。また被調査

者に対する日本人評価の調査結果からBSの話し相手への気づかい等が評価を高めて

いる重要な要素になっていることもわかったため,メタ言語行動表現と同様の機能を

果たしている「意識的配慮」(一二三1995等)と社会文化的能力(渡部2004a)と考

えられる言語行動も調べることにした。

表2メタ言語行動表現の例

2.2.2.メタ言語行動表現の調査(調査2)の概要

BSのメタ言語行動表現の使用実態と意識的配慮,社会文化的能力と考えられる言

語行動を調査することを目的に,インタビューを通して発話データを収集した。また,

-25-

言語行動の成立要素 例

①言語行動の主体

②i

③7

:語行動の相手

籔語行動の機能上の種類

④言語行動のジャンル

⑤言語形式・言語表現

⑥言語行動の素材・話題

⑦言語表現の調子

)⑧物理的場面

⑨心理的場面

⑩接触状況・媒体

⑰言語行動の目的・動機

⑫言語行動の結果・効果

ワタクシナドガシヤシヤリデテ不蝶ケデスケレドモ…。

ホカナラヌ,キミニコソ言イタカッタンダケレドネ…。

コレハオ尋ネシテイルノデシテ.ケッシテ命令シテイルノデハアリマセン。

コンナ簡単ナメモデハ失礼デスノデ,アラタメテ正式ノ文譜ニイタシマス。

アナタト呼ブノハ気ガヒケマスノデ.先生卜呼パセテイタダキマス。

コンナコトヲ言ウベキカドウカワカリマセンケレド…。

ザックバランニI1l上ゲマシテ…。

コンナニ夜分遅ク申訳アリマセンガ…。

オトリコミノトコロ申訳アリマセンガ…。

本来ナラパオ目ニカカッテ山上ゲルベキトコロ,オ電話デ失礼イタシマス。

細カナトコロマデオワカリイタダキタクテ,クドクド言ツタワケデスノデ…

(アンナコト言ツタモノデ,)トンダゴ迷惑ヲオカケスルコトニナッテ申訳アリマセン。

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日本語非母語話者のメタ言調行動表現に関する一考察一配MHという観点から-(金城・玉城・中両)

インタビュー調査に先立って質問紙によるアンケートを行い.BSの学習の背景や外

国語学習歴等の基礎データを得た。調査の日程と内容は表3の通りである。

表3調査2の概要

にまず日本語学習歴や滞日歴.外国語学習歴,職歴等の経歴,現在の生活環境等の基礎

的な情報の他,日本語でのコミュニケーションについて質問したアンケートへの回答

を依頼した。次に大学内の教室で約90分のインタビューを2回行った。面接者は執筆

者を含めた4人'鮒である。インタビューはアンケートで得た情報を基に質問し,その内

容を深めるように進めた。インタビューの様子は事前にBSに了解を得て,テープによ

る録音(機材2台)とビデオによる録画(機材1台)を行った。テープの内容は文字お

こしを行い,分析資料とした。

3.調査2の結果と分析

約180分のインタビューを文字おこししたデータから,まずメタ言語行動表現が使

用されている発話を抜き出した。また,意識的配慮と社会文化的能力と考えられる言

語行動も抜き出した。

あいづちの「ええ」や「はい」を含むBSの発話中のターンテイキング数は416で.

BSが使用していたメタ言語行動表現は42である。比較できる客観的な盗料がないため,

メタ言語行動表現の使用頻度が高いか低いかという判断は下せないが.BSがメタ言

語行動表現を使用していることが明らかになった。42の発話をさらに杉戸(2005.

2006)の配慮を捉える枠組みに照らして分類した結果,「留意事項」(話し手が「何に」

気を配りながら話しているか)のうちの3種に大別することができたい。

3.1メタ言語行動表現

(1)行動相手に留意した発話

BSの行動相手に留意した発話の大部分は,話し相手が同じ内容の話を重複して聞く

-26-

調査実施[’ 調査方法 調査内容

1 200412.2~20[〕5.1.6 質'111紙 学習の背景,外睡|総学習歴等の錐礎データ

2 2005.1.14 インタビュー① l」本譜の学習動機,日本語学習歴,日本留学llf代の堆活等。

3 2005.128 インタビュー② 「1本と母国の違い,日本に来て変わったこと禅。

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ことにならないかを憂慮したものと。あることに対して否定的な意見を述べる前に話

し相手はそれに含まれない,ということを明示するものであった。以下に発話データ

を示す。メタ言語表現該当箇所は下線で示し,本人が特定できるような地名等の情報

は削除した。

1)あの'ただ,そうですね,ま,だから,前○○さんとちょっとしゃべったことあると思う

んですけど,私の解釈で言えば,あの'言葉だけは成り立たないんですよね。

2)そう,大阪の友達もおおかったしね,うん。で,やっぱり,なんか-,まあ,○○さんは

どう思われるのかちょっとわかんないですけれども,仲間とかのあいだでは,あの-,か

たい標準語でしゃべってる人たちは,コイツは変だね,とか思われるぐらいなので,…(略)

3)【反抗期について】

なんかぁ,あのぉ,高校生時代,ま,みなさんのケースはどうかちょっとわからないんですけ

れども,私,不良まではならなかったんですけれども…(略)

l)はインタビューが二度にわたったこと,調査前からBSと調査者の2人が知り合

いであり同様の話題で話したことがあったため.既知の情報であると予想されること

に言及するときに頻繁に現われた。また2)では自分よりも話題についてよく知ってい

ると思われる人が同席していたため.その人に失礼のないように配慮していると考え

られる。3)は.一般的によくないと考えられていることを述べる前に相手がそれに含

まれていないことを示す配慮をしたものだと捉えられる。

(2)内容・話題に留意した発話

内容・話題に留意した発話は,意見の一般化を避けるものである。BSは何か意見を

求められた時は,4)~7)の発話資料のように,あくまで「個人の経験上・・・」,「個人と

しての意見…」であることを強調していた。このようなメタ言語行動表現は,自分の意

見を前面に押し出すことを避け,意見を主張しすぎない配慮を示していると考えられる。

4)なんでⅢ頭さが,下げなきゃならないんですよ,とか思ったり。最初は。でもそれは頭下

げるんじゃなくて,丁寧にしゃべろうと思えば,別に自分を否定するのではなくて,ただ,

なんか,上下ではない,ま,私の今の理解で,今の私の理解でいえば,上と下ないんですよ。

5)大阪も,ね,東京よりなんか人間が暮しそうなところかもしれないんですけれども。ま,

-27-

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日本語非母語話者のメタ言語行動表現に関する-考察一配慰という観点から-(金城・玉城・中西)

もちろんそれ全部私の憲見なんですれけども。だから,東京はやっぱり遊びかバカンス

力〕出張ぐらいでいいじゃないかと思いますけれども。

6)あとは,なんかフォーマルな手紙とかね,あの来たりとかしてて,ま,何となくあのT寧

語とか敬語を聞く機会が多かったなんじゃないかと思います。私の場合ですね。ちょっと,

環境は特別だったかもしれませんよね。

7)「だから,なんか,ま,もちろん,自分の解釈だからまちがっているかもしれないんです

けれども,日本ではあの,フレームが大事ですよね。」

(3)言葉の調子に留意した発話

言葉の調子に留意する発話は自分自身の話し方に関わるものである。はっきりとし

た意見や強い意見を述べる前に,8)~10)のように前置きをしてクッションの機能

を持たせ,発言の印象をやわらげるような配慮をしている。

8)いや,あとはね,正直言いますとね,けんかは,一番いい練習だと思うんですよ。

9)私はね,自分,きつついかもしれないんですけれども,特別にきついかもしれないんで

すけれども,謝ったんだからこそ,っていってなんやⅢということになるんですよ。

10)え-つとですね,そこまでは言えないかもしれないんですけれども,日本人会う,あの’

機会は,あんまりなかったかもしれませんよね。あの-,やっぱり,日本語学校,日本語

学校行くと,全員外人なんじゃないですか,だから,…(略)

杉戸は「メタ言語行動としての注釈では,ただひとつの要素が考慮されるわけではなく,

同時にいくつかの要素が条件として考慮され,結果としてつまり注釈の表層的な表現

としては,あるひとつの要素に焦点がしぼられた如き姿をとる.と考えられる」(杉戸

1983a:35)と述べている。BSが使用していたメタ言語行動表現を杉戸の枠組みに

従い,3つに分類したが,杉戸(2006)が指摘するように複数の要素が関わっている

とみることもできる。例を挙げると,「これは前回も言ったかもしれないのですが」や「ま.

沖縄はちがうかもしれないけど」のようなメタ言語行動表現は相手への配慮だけでなく,

「内容にも言及」していると考えられる。また「これは私だけかもしれませんが」,「正

直言いますとね」といった発話も「発言内容に関して相手が異なる意見を持っている

場合を考慮している」と捉えることもできる。

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琉球大学留学生センター紀要留学生教育第4号,2007

32意識的配慮

一二三(2000)は,外国人留学生が日本語で会話を行うときの意識的配慮について

8つの因子を抽出し,会話の相手が日本人である場合には「相手の話を正確に理解す

るための方略を駆使する配慮」(一二三2000の第3因子),「自己を抑制し相手との距

離を保とうとする配慮」(同第7因子),「正しく適切な言葉使いで,誤解を避け,正確

に理解し合うことを志す配慮」(同第8因子)の3つが重要性を増すと述べている。

BSにもこれらの配慮を行っている88の言語行動が見られた。以下にデータの一部を

示す鰯が13つの配慮のうち「自己を抑制し相手との距離を保とうとする配慮」(第7因子)

は,前述したメタ言語行動表現の「行動相手に留意した発話」に相当すると考えられる

ため,ここでは割愛する。

(1)「相手の話を正確に理解するための方略を駆使する配慮」

この配慮には,相手の話を正確に理解しようとするだけではなく,自分も正しく相

手に理解されるように努めることも含まれる。11)と12)は,BSが思い出せなかっ

たり,わからない言葉が出てきたりした時に相手に教えてもらうという場面である。

また,13)では,言い間違いを正確に発音できるまで繰り返し,14)では質問の内容を

自分の言葉に置き換えて確認している。

11)BS:(略〉あの-,相手をだます?だます?な,だま,だまる-の,使役形なんですか?

あははは(笑)

BS・全:「だまらせる」

BS:すみません(笑)そう,失礼しました。だまされるぱあいは,負ける。

12)BS:そう,あの’赤い袴で,なんか髪の毛なんかしばってて,後ろにはなんかかわ

いいの,なんて言うんですかね,あれ,えっと,忘れました。あの-,お正月とかに

使う,そういうゴールドとかあの’

鋼2:あ,水引

BS:水引です。ありがとうございます。すいませんでした。(略)

13)BS:(略)私の場合はあの大体あの’シチュエーションを見て,自分が知ってるこ

ととかを生かして言葉にあた,あたはめ,はためた,当てはめた,ごめんなさい,

ゆえなかった。当てはめましたよねⅡ多分。そういうところで,まあ,いろいろ間

違ったりとかしたと思うんですよ。

-29-

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日本語非母語話者のメタ言語行動表現に|1Mする一考察一配慮という観点から-(金城・玉城・中西)

M)調3:そんなBSさんがどうしても困る時,というのはどんな時だったんですか。

BS:えっとですね,今は,何か,長い間をかけて会話とか'ま困らないようになった,

なってしまったっていう感じですけれども,今はですね,例えば’え,今はどんな

場面であの’困るという質問だったですか。

認3:はい,そうです。

(2)正しく適切な言葉使いで,誤解を避け,正確に理解し合うことを志す配慮

ここには文法を正しく話す,相手と理解し合って誤解が生じないようにする,自分

の話が相手にきちんと伝わっているかに注意する,ということ等が含まれる。15)は

話題に上っている場所(三浦海岸,葉山)について相手が情報を持っていないのではな

いか,ということをBSが配慮している。また.16)は,音だけではわかりにくい言葉

を他の言葉に言い換えて。相手に誤解がないように配慮している。

15)BS:(略)その2ケ月だけ,あの-,やってくれないか頼まれて,2ケ月だけなんだから,

いいなんじゃないかと思って,遠くても。それで,なんか,三浦海岸とかはきれい

ですし,ああ,すみません,彼女住んでたのは三浦なんですけれども,学校は葉山

で,あの-,葉山には,なんか,天皇の,あの-,別荘みたいなんあるんですよね。

そこは海岸がきれいですしい,(略)

16)調2:修験のテーマはなんですか?

BS:(略〉あの-,修士もですね,あの’がいこぐ,なんな'なんやったつけ,非漢字,あの’

非はあの’「じゃない」っていう意味ですね。あの,非漢字文化圏の研究者からみた,

漢字に関わる諸問題っていうかんじで,ま,タイトルは,かっこつけて書いたんです

けれども(笑)

3.3相手と協調関係を保つためのその他の配慮

(1)謙遜

BSは相手に褒められたり感謝されたりした時に謙遜を示す発話が観察された。謙

遜は,社会文化的能力(渡部2004a)にも含まれており,日本語による会話では謙遜

するという言語行動も対人関係を円滑に保つために重要な要素である。発話データは

次の17)~21)である。

-30-

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17)【調査を引き受けてくれたことに謝意を表した鯛査者に対して】

BS:いや,こちらこそこんなもんでいいのかなあ~?(笑)とか思うぐらいなんで

すけれども。私でよろしかったら,ぜひ。(笑)

18)【有名大の大学院に入学できたことについて】

BS:(略)そう!最初は研究生という形で行って,受験して,たまたま。

19)【年配の女性たちとの接触が日本鱈に与えた影響についての騒題で】

BS:(略)で,おばさんたちとしゃべってるときも,もちろん敬語つかいますし,も

ちろん,ま,私は,敬語は,そんなに上手ではないんですけれども,ぜつたい丁寧

語だったんですよね。

20)【修論のテーマに関する賭題】

BS:ま,あいかわらず,ずっとなんか,はずかしいんですけれども,あの’成果あげ

れないくせに(笑)ずつと(笑)おんなじかたち,おんなじことばっかりやってる

んですけれども,あの-,修士もですね,(中略)もちろん知職不足なので,まあ,

デタラメっていうか,あの-すごく浅い内容だと思うんですけれども。

21)【日本に来たばかりの頃,どのように周りの人と接していたかについて】

BS:多分最初は「そうですか」,しか言えなかったと思うんですよ。それでも,やっ

ぱり,あのロなんか,あの会話を止めないでⅢなんか,向こうが何が言いたいのか

を全体的に見た上で,自分の頭の中に解釈してたと思うんですよね。もちろん,

誤った解釈が大多数と思うんですけれども,・・・(略)

(2)不快感を与えない配慮

BS自身が「言い過ぎではないか,下品な表現ではないか」と認識したと思われる発

言のあと.また話題が「11心から逸れたとき等「失礼ではないか」と判断したと考えられ

るときに.「すみません」.「ごめんなさい」と言っている。BSが相手の発言権を奪ったり.

非礼なことをしたりしたわけではなく,BS自身が相手の気持ちを害したのではない

かと感じた場合に「すみません」と言っているようだ。このような相手に不快感を与え

ないようにするという配噸もコミュニケーションには重要であるが,そのような配慮

を行う言語行動が観察された。22)~27)がその発話データである。

22)【ゼミについての騒題で】

BS:(略)で,私でたのは鯛義が多くて,ゼミはほとんどでなかったんですけれども,

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日本語非母語話者のメタ言語行動表現に関する-考察一配慮という観点から-(金城・玉城・中西)

ゼミは嫁いなんだから,ごめんなさい。

23)【男性同士が肩を組んで歩くという話題で】

BS:それもなんか,おか/まだな ̄iとか。すいません。.._,

24)【男性のナンパについての話題で】

BS:(略)あの-,う-ん…そんな,デタラメなナンバがぁ,減ったんじゃないかな,

っと思うんですけれども,基本的には,<国名>人のふるい人たちのアプローチ

とかI式,私的には,とっても,あの-,ウザいです!(全:あはははは笑)しつつ

れいですしい,はい・・・,すみません(全:笑)

25)【大学図轡館の暖房について】

BS:もう,ほんとに,なんか,しかもほんとに空気が悪いんですよお゜みんな寒い寒

いとかいいながら,窓とか開けたりとかしないんよね。でⅢすごく何百人もいる

から,クサイなんですよ!(全:笑)すみません。

26)【大学図書館の暖房について】

BS:(略)だから!みんな寝たりとかしてるんですよね.空気が悪くってねえ,ほん

とに,勉強できない状態だったんですよ,私的には。かなり苦労しました。すみま

せんね,なんか;/文句ばっかり言ってしまいまして。

27)【インタビューの内容と直接関係がないと思われる括題で盛り上がった時に】

BS:まあ,笑いぱなしですね。あの’とりあえず,笑い話としてつかいましょう。(全:笑)

すみませんLぜんぜん脱線なってしまいました,はい。

(3)その他

あいさつをする場合でもその場にいる全員に声をかける〔28)〕,あいさつをする場合でもその場にいる全員に声をかける〔28)〕,お茶を勧められた

場合でも相手にも飲み物を勧める〔29)〕,飲み物を飲む時に「いただきます」と断りを

入れる〔30)〕等といった周りの人に気くばりをし,配慮をしている言語行動が見られた。

また場の目的に合わずはしゃいでしまったことに対し詫びる場面もあった〔31)〕。

28)BS:私は時間はいいんですけれども,みなさん,あと授業とかあるんでしょうかね。

29)BS:【複数の飲み物から好きな物を選ぶよう勧められた後】

(略)すいません。お先に選択させていただきました。すいませんでした。

先生は一緒に飲みませんか。

30)BS:(略)いろんないい関係とかに,恵まれてて,うん,すごく,いい勉強になっ

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たんじゃないかなっと思います。じゃ,ちょっといただきます。(お茶を飲む)

31)BS:【並べられた飲み物のペツトポトルを見ながら】

BS:じゃあ~あのお~まだ試したことのないい,あの’ものIこしてよろしいですか。

調1:はいはい,どうぞどうぞ。

BS:このキャラメルラッテにひかれました(笑)

調3:はぁ~(笑)

BS8しかも,アーモンドですよ!(笑)

全:はlまは(笑)

BS:(笑)すみません。(笑)

4.考察

4.1「配慮」について

日本人評価(調査1)の結果,BSは普段接している母語話者からの日本語力に対す

る評価が高く、言語運用力に優れていること,よい対人関係も築いていることが示さ

れた。このように日本語の運用力が高いと評価される日本語非母語話者は,予測した

通り,メタ言語行動表現を使用していた。また杉戸(1998)が「日常われわれが行って

いる言語活動の中では『配慮』を常に行っており,その対人的な配慮は『メタ言語行動

表現』の明示により示される」と述べているような配慮と同時に.多くの意識的配慮を

していると判断される言語行動が見られ,BSが相手に配慮したコミュニケーション

を行っている姿が明らかになった。

BSのメタ言語行動表現としては,行動相手への留意,内容・話題への留意,言葉の

調子への留意の3種類を使用していることがわかった。杉戸(1998:172)は,「言語

行動の種類・趣旨を説明するメタ言語行動表現を添えることが,その言語行動全体の

丁寧さを支える」と述べている。BSと接している母語話者から「相手に気を使わせな

い気の使い方ができる」,「礼儀正しい人だと思う」,「品のいい印象」,「感じのいい人」

といったコメントがあったが(調査1),待遇表現や敬語等の言葉を適切に使うだけで

なく,メタ言語行動表現を使用することでBSの言語行動に丁寧さが付加され,日本人

によい印象を与える要因の1つになっている可能性があることが示唆された.

また意識的配慮として。一二三(2000)が日本人場面において,日本語非母語話者

に強く意識されると指摘している「相手の話を正確に理解するための方略を駆使する

配慮」。「正しく適切な言葉使いで,誤解を避け,正確に理解し合うことを志す配慮」,

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日本語非母語話者のメタ言語行動表現に関する一考察一配愈という観点から-(金城・玉城・中西)

また杉戸のメタ言語表現に相当する「自己を抑制し相手との距離を保とうとする配慮」

を行っていることが発話データから明らかになった。さらにBSは日本人がジェスチ

ャーをあまり使わないことを意識し,母語で同国人と話すときにはジェスチャーをよ

く使用するものの,日本人とのコミュニケーションにおいてはジェスチャーを使わな

いようにしていると述べている。このように特に「相手との文化慣習の違いに注意」(一

二三2000)し.適切な態度を取ることにより,会話を円滑に進めるための配慮をして

いる実態が明らかになった。

またBSは,次のように述べている。

32)「日本語を賭しているときと.<母国>鰭で話している時と話題が違うんです。こう

いう話題とか'よ触れないほうがいいとか,こういう場では,こういうふうにしゃべら

ないとかあるんですよ。だからしゃべり方も結構違うんです。お願いすると時とか,

謝るとき等,本当の自分は出さない,出せないので,ちょっときつい。日本では形が

大事なんですよね。だから,形にあえば,何とかうまく行きます。」

この発言から,BSは一二mえ(2000)が意識的配慮として挙げている。「プライベート

なことは話さない」。「相手の感情を害しそうな話題は避け,平凡な話題を選ぶ」。「感

情をはっきり出さない」等.ロ本文化に配慮しながら自己を抑制し、相手との距離を保

ちながら日本語母語話者との会話を進めていることがわかった。さらに.「(日本人と

話すときは,自分の間違いを)訂正してもらうと話の流れが悪くなるので.訂正しても

らいたい気持ちもあるけど話の流れを大切にしたい」と述べている.つまり話が途切

れないように気をつけ,会話をスムーズに進めるような配慮もしている様子がうかが

われた。

4.2「配慮」の学習

一二三(2000)は,日本語非母語話者は日本人との接触が深まるにつれて,日本人

の会話の進め方を学習していくことを明らかにしている。本研究の調査結果から,BS

は社会文化的能力が高いことが示されたが。それはどのように身に付けてきたのだろ

うか。

例えばBSはインタビューで.日本語での謝るという行為。またあいづちの打ち方は,

母語の場合と大きく異なると述べ、文化・習慣の違いを認識していることがわかった。

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では日本語による会話上のルールをどのようにして学び,習得し,使用するまで能力

を高めることができたのだろうか。

BSも滞日年数が短い頃は,いろいろと戸惑いがあったことが次の発言からうかがえる。

33)「最初は,日本の建前,本当に分からなくて,みんなうそばかりゆって-,と思って

ましたよ。けど,慣れてしまえば,みんなうそばかり言っているのではなくて!こ ̄

ういう場ではこういうあいさつするのは普通。だから,別に意味はないんですよ。

ただ,今日はお天気がいいですね,みたいな感じでみんなに言うわけなんですよね。

で,知らないうちに自分もこういうふうにしゃべるようになりました。」

34)「謙譲語を話すのは最初はきつかった.何で,頭を下げなきゃならないのかと思った。

でも,それは頭を下げるんじゃなくて,丁寧にしゃべろうと思えば!別に自分を否

定するのでもなく,上下でもない。自分気持ちを表すために敬語を使ったり,謙醸

語を使ったりとかするわけなんですけれども,こっちが相手より低いという感情,

今はないです。無意味なあいさつみたいな,普通にこういう社会ではこういうふうへ ̄ヘーヘーヘーヘーヘーーーヘー

に動くんだから,こう言えばいい。前提なし,ただ結果的にはこうなっているとい

う感じです。ある意味で,これも形ですね。」

来日初期の頃は戸惑いもあったものの,目文化とかなり異なる日本文化や習慣を理

解し,次第に受け入れていった様子がうかがえる。具体的にどのように日本での配慮

の方法等を学んでいったかをBSは次のように述べている。

35)「こういう社会では,自分が持っている概念とかでは動けないのがはっきりわかった。

人間関係や座り方から,全部違うものだったので,私は何もわからないことにして,

子供のように全部観察してから動いてみようと思った。」

36)「周りから教わったのではなく,周りを観察して,周りの人たちがどう動いてるか

を見て,そのうち自分ある程度,動けるようになった。言葉だけでは成り立たない。

言葉と文化と習慣,全部くっついていて,言葉が話せるようになるには,そういう言

葉にくっついているしぐさとか,広い意味で背景とか’バックグランドとか,文化

とか'ま,一緒に学ばないと,接触しないと,ちゃんとしゃべれないんじゃないかと

思います。 ̄

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日本語非母語話者のメタ言語行動表現に関する一考察一配愈という観点から-(金城・玉城・中西)

BSは日本人を観察することによって。言語のみならず,ふるまい,しぐさ等の特徴

をつかみ,日本人と接する時の配慮等を習得していったことがわかった.BSは日本社

会で日本人との円滑にコミュニケーションを図るために重要だと考えられる様々な意

識的配慮に自ら気づき積極的に学び,社会文化的能力を高めていったと言えるだろう。

さらに,同年代の友人だけでなく,母語教室を通して知り合った中年の女性たち,アル

バイトを通して学んだビジネスの世界等,様々な世代,様々な場面,様々な環境で日本

人と接点を持つことで,日本人とのつながりや言葉の幅も広げ,日本語によるコミュ

ニケーション上の配慮を学んでいったと考えられる。このような環境との相互作用も

BSの日本語習得過程と深く関わっているようである。

5.おわりに

言語運用能力とは文法や発音等.言語的に正しい文を作り出すことができる能力だ

けでなく、その言語を状況に応じて適切に使える能力を指す。本研究ではさらにコミ

ュニケーションは単に自分の考えていることを相手に伝えるためだけの活動ではなく、

人と社会を結ぶ活動であるという立場から、言語運用能力をより円滑な人間関係を構

築するための能力であると考えた。そのような観点から考えると,コミュニケーショ

ンをとる際に,「いつ.どこで,誰が,誰に何を.どのように表現するのか」等のコミ

ュニケーションが起こる場面の知識も含め適切に会話を運ぶ能力が必要であると言える。

このような暗黙のルールとみなされるものや適切にコミュニケーションを達成させる

ための要素として,メタ言語行動表現が重要であると考えられ,本調査結果からもそ

の重要性が示された。

また,BSはメタ言語行動表現以外にも社会文化的能力の1つである謙遜等の言譜

行動を行ったり,意識的配慮による調整を行ったりしており,BSの「明るくて感じが

よい」,「場の雰囲気が読める」,「相手に気をつかわせない気の使い方ができる」といっ

た印象のよさに結びついていることも明らかになった。これらの要素も対人関係を構

築するために大きな役割を果たしていることが示唆された。

以上のような結果から,メタ言語表現や意識的配慮といった配慮を学習することが,

日本語母語話者との会話成立のための基盤を作り,友好的な関係を築くために重要で

ある。つまり,メタ言語行動表現や意識的配慮を視野に入れ社会文化的能力を向上さ

せることが,言語運用力の向上につながると考えられる。

インタビューを通して。BSが外国語を習得するにはその国の文化的・社会的な背鎧

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知識,習慣等も学ばなくてはならないという言語学習観を持っていることや,周りの

日本人のふるまい方を観察してからそれをまねて行動したり,日本人の言葉の使い方

をよく観察した上で適切に日本語を使うように努めたりしていることも明らかになった。

これらはBSの言語習得における学習ストラテジーとみなすことができるだろう。こ

のような言語学習観や学習ストラテジーが高い日本語運用力を身に付けることに深く

関わっているようだ。

BSの言語習得の状況から,教室外での学習が大きく関わり,日本人との交流が重要

な役割を果たしていることがわかった。このことから,学習者が環境とどのような相

互作用を行っているかを把握することも学習者を理解する上で重要であることが再認

識された。

本調査では統計的な数値でデータを示すことはできなかったが,メタ言語行動表現

の使用頻度を数量的に一般化するためには,日本語母語話者同士がどのようなメタ言

語行動表現をどの程度使用しているかを調査する一方で,日本語非母語話者によるメ

タ言語行動表現の使用実態のケーススタディーを重ねていかなければならないだろう。

また一二三(2000)の意識的配慮に関しても,実際の会話場面で配慮がどのように言

語形式として現われるか等の研究が重要な課題であろう。それらの知見がさらに日本

語学習に還元できる材料を提供してくれると考えられる。

本研究はケーススタディーの域を出ないが,今後は日本語母語話者.日本語非母語

話背のメタ言語行動表現の使用,意識的配慮に関する調査を積み重ねて基礎データを

収集すると伴にそれを言語運用力を高める目的とした教育の場に生かす方法を検討

していくことを課題としたい。

(1)ここで使用する言語行動とは,「人がことばによって行う思考・表現・伝達の行動,

および,これに対応する理解・受容・反応の行動」のことである(『言語学大辞典』

第六巻術語編P、392)。

(2)追加した質問項目は(5),(9),(10),(11),(14),(15),(16)である。宇佐美(1998)は日本

語でのディスコース・ボライトネスの例として「言語形式の丁寧度」,「スピーチレ

ベルシフト」,「あいづちの頻度」,「終助詞の使い分け」,「前置きの有無」等を挙げ

ている。本研究での言語運用力には,これらの要素も大きく関わっていると考え7

項目を加えた。

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日本語非母語話稀のメタ言識行動表現に関する-考察一配慮という観点から-(金城・玉城・中西)

(3)教室内は,教室外に比べて改まった場であることから,BSと教室内で会う人,教

室外で会う人と分けて平均値を算出してみた。しかし教室内外では特に差は見られず,

フォーマル,インフォーマル,どちらの場面でも評価が高いことが示された。

(4)日本でのメタ言語行動表現に関わる研究は,林四郎(1978)「メタ言語機能の働く

表現」(『文藝言語研究言語編3』),南不二男(1981)「ことばのタブー言いかえ・

言い控え」(『識座日本語学9敬語史』)等から始まり(杉戸1998),続いて杉戸

(1983)が言語行動を成立させる要素として言語行動の主体による「注釈」という

視点を提案した。注釈は「明言された言語表現であること.言語行動主体がみずか

らの言語行動の何らかの側面について言った(書いた)言語行動」のことで,「メタ

言語行動としての性格において共通性をもつ」(杉戸1983:34)。本研究では.杉

戸の「注釈」(1983)と「メタ言語行動表現」(1998)等は同一のものとみなして使

用している。

(5)杉戸(1983:33-34)の記述を筆者が表にまとめた。

(6)筆者の3人と,調査当時研究生だった元山由美子の4人がインタビューを行った。

(7)〈留意事項〉は①内容・話題,②時機・タイミング,③場所柄・状況.④行動主体研⑤

行動相手,⑥言葉の調子,⑦言語形式,⑧媒体・道具,⑨談話の組み立て,⑩言語行

動の機能の10項目に下位分類される。〈IilIi値・目標>,〈判断基準〉については杉

戸(2006:3-7)を参照のこと。〈価値・目標〉とく判断基準〉については佃別の言語

場面に応じた意識のあり方を調査する必要があると考えたため。本研究では言及し

なかった。

(8)BSの発話は「BS」,調査者の発話は「調1」,「調2」.「調3」,全員の場合は「全」と

表記する。

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日本語非母語話者のメタ言語行動表現に閲する-.考察一配慮という観点から-(金城・玉城・'11西)

渡部倫子(2004a)「日本語母語話者は何に注目して学習者の発話を評価するか」『日本

人は何に注目して外国人の日本語運用を評価するか』(平成12年度~15年度科学

研究費補助基盤研究(B)研究成果報告書研究代表者小林ミナ),pp76-93

渡部倫子(2004b)「日本語学習者の発話に対する日本語母語話者の評価一共分散構造

分析による評価基準の解明一」『日本人は何に注目して外国人の日本語運用を評価す

るか』(平成12年度~15年度科学研究費補助基盤研究(B)研究成果報告書研究

代表者小林ミナ),pp94-lO5

(金城一琉球大学留学生センター,玉城一琉球大学留学生センター非常勤講師.

中西一琉球大学大学院人文社会科学研究科修士課程修了)

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2007

A study on the communicative competence of

nonnative speakers of Japanese

KINJO, Naomi

TAMAKI, Ayumi

NAKANISHI, Asako

Keywords: linguistic behaviors, communicative competence, conversation rules

Abstract

Linguistic behaviors expressed verbally differ across languages and

cultures. In Japanese there are some conversation rules in language use. It

should be cissumed, then, that when a nonnative speaker of Japanese has a

conversation with a native speaker, such rules are applied in order to

communicate successfully.

Sugito (2005) pointed out that particular linguistic forms or expressions

are used based on consideration for the conversation partner and they are

presented in terms of communicative functions. Following Sugito, we believe

that communicative competence includes speakers' ability to use those

particular linguistic forms or expressions appropriately as a part of

conversation rules.

The purpose of this study is to clarify what kinds of conversation rules

nonnative speakers use to communicate with native speakers. To collect data

we interviewed nonnative speakers who have high-level commands of

Japanese. The results show that communicative competence, namely what

verbal expressions are used in what situation as conversation rules and other

social-cultural behaviors such as modesty and tact, is an indispensable skill to

communicate with native speakers successfully.

(University of the Ryukyus)

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