冠動脈外科全国アンケート調査結果 - jacas.org

日本冠動脈外科学会・理事長

瀬在幸安

冠動脈外科全国アンケート調査結果

2014年

日本冠動脈外科学会・全国アンケート調査委員会 委員長： 折目由紀彦 （日本大学） 副委員長： 荒井裕国 （東京医科歯科大学） 委員： 落 雅美 （日本医科大学） 委員： 西田 博 （東京女子医科大学） 委員： 申 範圭 （東京歯科大学市川総合病院） 委員： 新浪 博 （埼玉医大国際医療センター）

日本冠動脈外科学会公式ホームページ：http://www.jacas.org

冠動脈バイパス術(CABG) 総数 : 13,717 単独手術 : 9,768 (71%)(前回71%) 合併手術 : 3,949 (29%)(前回29%) 単独手術 初回待機手術 : 8,165 初回待機手術以外 :1,603 Off-pump : 5,532 Off-pump : 902 On-pump : 2,633 On-pump : 701 (Off-pump率 : 68%) (Off-pump率 : 56%) (前回 : 65%) (前回 : 52%)

Off-pump CABG率（初回待機手術）の年次推移

67%

65%

0

10

20

30

40

50

60

70

80

年

%

68%

初回待機手術総数 :8,165(100%) On-pump (心停止) :1,696(20.8%) On-pump (心拍動) : 937(11.5%) Off-pump (総数) :5,532(67.7%) Off-pump (完遂) :5,392 On-pump (移行) : 140 Off-pumpの完遂率 :97.5% Off からOn-pumpへの移行率 : 2.5% (前回:2.3%)

単独CABG総数死亡率:1.70% (前回:1.75%) 単独初回待機手術死亡率:1.03% (前回:1.08%) On-pump (心停止) :1.00% On-pump (心拍動) :2.56% Off-pump (総数) :0.78% Off-pump (完遂) :0.72% (前回:0.82%) On-pump (移行) :2.86% (前回:6.67%)

死亡率の年次推移（単独手術総数と単独初回待機手術）

2.72%

2.12%

1.45% 2.12%

0.75% 1.20%

2.72%

2.12%

0.72%

1.49%

1.08% 0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

4

%

年

総数

初回待機

死亡率

1.70%

1.03%

手術手技別死亡率の年次推移（単独初回待機手術）

0

1

2

3

4

5

6

7

8

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014

％

年

Off-pump（完遂）

On-pump（心拍動）

On-pump（心停止）

Offからon-pumpへの移行

死亡率

病変数による手術成績 (初回待機手術 総数：8,165例、死亡率:1.03%)

死亡率 (%)

1.0

0 25 50 75 100 (%)

1VD

(0.78%)

2VD

(0.76%)

3VD

(1.01%)

LMT

(0.55%) LMT＋2VD

(0.73%)

LMT＋1VD

(0.86%)

LMT＋3VD

(1.65%)

2.0

病変数による手術成績 (初回待機手術 off-pump完遂：5,392例、死亡率:0.72%)

死亡率 (%)

2.0

1.0

0 25 50 75 100 (%)

1VD

(0.65%)

2VD

(0.64%) 3VD

(0.60%)

LMT

(0%)

LMT＋1VD

(1.28%)

LMT＋2VD

(1.09%)

LMT＋3VD

(1.03%)

病変数による手術成績 (初回待機手術 on-pump 心停止：1,696例、死亡率:1.00%)

死亡率 (%)

2.0

1.0

0 25 50 75 100 (%)

1VD

(0%)

2VD

(0.42%)

3VD

(1.12%)

LMT

(0%)

LMT＋1VD

(0%)

LMT＋3VD

(2.08%)

LMT＋2VD

(0%)

病変数による手術成績 (初回待機手術 on-pump心拍動：937例、死亡率:2.56%)

死亡率 (%)

5

0 25 50 75 100 (%)

1VD

(6.67%)

3VD

(2.87%)

LMT

(7.69%)

LMT＋1VD

(0%)

LMT＋2VD

(0%)

LMT＋3VD

(3.05%)

10

2VD

(1.71%)

病変数による手術成績 (初回待機手術 off on-pumpへの移行：140例、死亡率:2.86%)

死亡率 (%)

10

5

0 25 50 75 100 (%)

2VD

(4.35%)

3VD

(1.33%)

LMT

(0%)

LMT＋1VD

(0%)

LMT＋2VD

(0%)

LMT＋3VD

(6.67%)

1VD

(0%)

病変数による手術成績 (初回待機以外の手術 総数：1,603例、死亡率:5.12%)

死亡率 (%)

10

5

0 25 50 75 100 (%)

1VD

(11.58%)

2VD

(3.93%)

3VD

(4.20%)

LMT

(11.43%) LMT＋1VD

(4.71%)

LMT＋2VD

(4.52%)

LMT＋3VD

(4.70%)

手術手技による手術成績 (初回待機以外の手術 総数：1,603例、死亡率:5,12%)

死亡率 (%)

10

5

0 25 50 75 100 (%)

Off-pump(total) 3.10%

On-pump (心拍動) 11.46%

On-pump (心停止) 3.98%

手技別のバイパスグラフト本数（初回待機手術）

総数

On-pump 心停止

On-pump 心拍動 Off on 移行

Off-pump 完遂

0 25 50 75 100%

平均本数 (昨年）

2.99 (2.97)

3.16 (3.10)

3.07 (3.02)

3.22 (3.00)

2.92 (2.90)

１枝 ２枝 ３枝 ４枝以上

４枝以上

４枝以上

４枝以上

４枝以上

３枝

３枝

３枝

３枝

２枝

２枝

２枝

２枝 １枝

１枝

１枝

１枝

バイパスグラフト本数別の手技（初回待機手術）

１枝

２枝

３枝

４枝以上

0 25 50 75 100%

Off-pump

Off on-pumpへの移行 On-pump(心拍動)

On-pump (心停止)

Off-pump

Off-pump

Off-pump

On-pump (心停止)

On-pump (心停止)

On-pump (心停止)

障害枝別の手技（初回待機手術）

１枝

２枝

３枝

0 25 50 75 100%

Off pump

Off on-pumpへの移行 On-pump(心拍動)

Off pump

On-pump (心停止)

LMT

LMT＋1枝

LMT＋2枝

LMT＋3枝

Off-pump

Off-pump

Off-pump

Off-pump

Off-pump

Off-pump

Off-pump

On-pump (心停止)

On-pump (心停止)

On-pump (心停止)

On-pump (心停止)

On-pump (心停止)

On-pump (心停止)

障害枝別のon-pump（心停止）とoff-pump（完遂）の手術成績 （初回待機手術）

死亡率 (%)

2.0

1.0

0

Off-pump（完遂）

On-pump（心停止)

1枝 2枝 3枝 LMT LMT ＋2枝

LMT ＋1枝

LMT ＋3枝

総数

1.0

0.65

0.0

0.64 0.42

0.6

1.12

0.0

1.28

0.0

1.09

0.0

1.03

2.08

0.0

0.72

障害枝別のoff on-pumpへの移行率(初回待機手術）（全体:2.5%)

１枝

２枝

３枝

0 25 50 75 100%

Off pump

Off on-pumpへの移行

Off pump

LMT

LMT＋1枝

LMT＋2枝

LMT＋3枝

Off-pump

Off-pump

Off-pump

Off-pump

Off-pump

Off-pump

Off-pump

0.3%

2.4%

2.9%

0.7%

1.3%

1.7%

3.3%

移行率 (前回：2.3%)

グラフト吻合箇所別のon-pump(心停止）とoff-pumpの比較(初回待機手術）

0 25 50 75 100%

On-pump(心停止)

On-pump(心停止)

On-pump(心停止)

Off-pump

Off-pump

Off-pump

71%

62%

89%

93%

78%

69%

吻合＋ 吻合−

RCA

LAD

LCX

吻合部位の有無によるoff-pumpとon-pumpへの移行の関係(初回待機手術）

0 25 50 75 100%

RCA(＋) 3,428

LAD(＋) 5,138

LCX(＋) 3,825

RCA(−) 2,104

LAD(−) 394

LCX(−) 1,707

Off-pump

Off on-pumpへの移行

3.0%

2.5%

2.9%

1.8%

2.3%

1.6%

Off-pump

Off-pump

Off-pump

Off-pump

Off-pump

症例数 移行率

男女別の年齢分布（初回待機手術）

2000 1000 1000 0 0

337

849

2263

2531

701

52

126

451

801

295

49≧

60−69

50−59

70−79

≧80

（年齢） 男性：79.5 女性：20.5%

3000

（例数） （例数）

高齢者割合の年次推移（初回待機手術）

51.5%

10.7% 0

10

20

30

40

50

60

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014

％

年

70歳以上

80歳以上

51.5%

11.8%

年齢別死亡率の年次推移（初回待機手術）

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014

％

年

49歳≧

５０−５９歳

６０−６９歳

７０−７９歳

８０歳≦

死亡率

グラフトの選択 （単独バイパス手術における延べ本数：26,191本）

左内胸動脈 (35.9%)

右内胸動脈 (14.1%)

胃大網動脈 (3.0%)

橈骨動脈 (5.0%)

大伏在静脈 (41.8%)

左内胸動脈 (35.6%)

右内胸動脈 (15.6%)

右胃大網動脈 (3.4%)

橈骨動脈 (4.4%)

大伏在静脈 (40.8%)

その他 (0.2%)

グラフト選択の年次推移

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014

％

年

左内胸動脈

右内胸動脈

胃大網動脈

橈骨動脈

大伏在静脈

手術手技別のstrokeの発生率（全単独冠動脈バイパス術） 全体の発生数：106例 全体の発生率：106/9768(単独冠動脈バイパス術数）＝1.09%

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

4

Off-pump（完遂） On-pump（心拍動） On-pump（心停止） OffからOn-pumpへの

移行

0.78%

1.94%

1.27%

3.66%

％

p=0.0097

p=0.1904

p=0.0090

p=0.1994

p=0.1361

p=0.0063

PCI後の合併症に対する緊急冠動脈バイパス手術の成績 定義；PCI後の合併症（冠動脈閉塞や出血など）に対して 24時間以内に緊急手術をおこなった症例 例数：78例 発生率：78例／9768例(単独CABG症例）；0.8% 死亡例：14例 死亡率:17.9% 手術手技別の成績 例数 死亡数 死亡率(%) 1枝バイパス 30 4 13.33 2枝バイパス 17 7 41.18 3枝バイパス 22 1 4.55 4枝バイパス 5 0 0 その他の手術 4 2 50

心室中隔穿孔の手術成績の年次推移

2014年; 総数：192、死亡：48(死亡率：25.0%)

0

10

20

30

40

50

60

死亡

率（％

）

年

心室中隔穿孔の手術成績(1) 生存

0 50 100 150

総数

バイパス（＋）

バイパス（−）

死亡

48

192(死亡率25.0%)

64 12

128 36

144

92

(死亡率18.8%)

(死亡率28.1%)

(例数）

200

52

心室中隔穿孔の手術成績(2)

0 50 100 150

Dagett法

生存 死亡

(死亡率22.0%)

10

21

(死亡率20%)

(死亡率33.3%)

(例数）

Komeda法

50

103

39 11

93 (死亡率23.3%)

前壁梗塞(死亡率22.7%)

Dagett法

Komeda法

後下壁梗塞(死亡率34.2%)

79 24

その他 1 (死亡率0%)

8 2

14

その他 7 (死亡率57.1%)

7

3 4

左室乳頭筋断裂の手術成績の年次推移

2014年; 総数：35、死亡：4(死亡率：11.4%)

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

死亡

率（％

）

年

左室乳頭筋断裂の手術成績

0 10 20 30

総数

バイパス（＋）

バイパス（−）

生存 死亡

35 (死亡率11.43%)

18

17 15

(死亡率11.11%)

(死亡率11.76%)

(例数）

4 31

16

2

2

心破裂の手術成績の年次推移

2014年; 総数：143、死亡：47(死亡率：32.9%)

ここここここここここここここここここ

0

20

40

60

80

100

120

死亡率（％）

年

心破裂の手術成績

0 50 100 150

総数

バイパス（＋）

バイパス（−）

生存 死亡

143 (死亡率32.9%)

(死亡率71.4%)

(死亡率14.9%)

(例数）

47 96

Blowout type 49 (死亡率67.3%) 33 16

7 (死亡率42.9%) 4

42 30 12

Oozing type

バイパス（＋）

バイパス（−）

94 14 80

25 (死亡率4.0%)

13 56 69 (死亡率18.8%)

1

24

3

左室瘤全体の手術成績の年次推移

2014年; 総数：193、死亡5(死亡率：2.59%)

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18死亡率（％）

年

左室瘤・虚血性心筋症に対する左室形成術（左室瘤切除を含む）の手術成績

0 100 200 300

総数

バイパス（＋）

バイパス（−） 生存 死亡

2

(死亡率1.71%)

83

115

82 (死亡率1.20%)

(死亡率2.94%)

(例数）

34 33

117

1

1

虚血性僧帽弁閉鎖不全に対する僧帽弁形成・置換術の手術成績

0 200 400

総数

死亡

523 (死亡率3.63%)

(例数）

19 504

総数

バイパス（＋）

バイパス（＋）

バイパス（−）

バイパス（−）

総数

376（死亡率3.19%) 12 364

283（死亡率4.24%) 12 271

93（死亡率0%)

93

149（死亡率4.69%)

142

78（死亡率8.97%)

7

71

71（死亡率0%)

71

生存

僧帽弁形成術

僧帽弁置換術

100 300 500

7

600

左室瘤・虚血性心筋症＋虚血性僧帽弁閉鎖不全の手術成績

0 50 100 150

総数

死亡

76 (死亡率3.94%)

(例数）

3

総数

バイパス（＋）

バイパス（＋）

バイパス（−）

バイパス（−）

総数

57（死亡率3.50%) 2

55

44（死亡率2.27%) 43

13（死亡率7.69%)

12（死亡率8.33%)

11

19（死亡率5.26%)

7（死亡率0%)

生存

左室形成術 ＋ 僧帽弁形成術

左室形成術 ＋ 僧帽弁置換術

12

18

1

73

7

1

1

1

1. 単独冠動脈バイパス手術の死亡率は1.70%、初回待機手術の死亡率は1.03%と前回より低下し、良好な手術成績であった。

2. 初回待機手術の内68%がoff-pumpで行われ、施行率は過去最高であった。また、その死亡率は0.72%と良好な成績であった。

3. Off-pumpからon-pumpへの移行率は2.5%と、前回より低下し、その死亡率も2.86%と低下、成績は向上した。

4. 多枝バイパスほどoff-pumpの施行率が低下するが、4枝以上でも63.7%の症例がoff-pumpで行われ、過去最高率であった。

5. 症例は年々高齢化しており、70歳以上は51.5%、80歳以上は11.8%であった。

結語（１）

6. 動脈グラフトは全グラフトの59%に使用され、静脈グラフトの使用率(40.8%)は昨年よりやや低下した。

7. 単独冠動脈バイパス術後の脳血管イベントの発生率は1.09%であり、手術手技間の発生率ではon-pump（心拍動）とoffからon-pump移行は脳血管の有害事象を起こす危険因子であり、off-pump（完遂）はそれらを有意に回避することが示された。

8. PCI後の合併症に対する緊急手術は単独冠動脈バイパス術の0.8%に行われ、その死亡率は17.9%と前回より上昇し、予後不良であった。

9. 心筋梗塞後合併症では、後下壁梗塞の心室中隔穿孔、 blowout typeの心破裂の成績は依然として不良であった。

結語（2）