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(1) 心臓 カテーテル治療 あるいは 経皮的 動脈 形成術 (冠動脈インターベンション) について りんくう総 そう ごう りょう センター じゅん かん ない 連絡先:072-469-3111 きゅう きゅう には心 しん ぞう センター 救 きゅう きゅう たん とう または当 とう ちょく に連 れん らく してください。
27

(冠動脈インターベンション)...(1) 心臓 し ん ぞ う カテーテル 治療 ち り ょ う あるいは 経皮的 け い ひ て き 冠 かん 動脈 どう みゃく

Jan 02, 2021

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Page 1: (冠動脈インターベンション)...(1) 心臓 し ん ぞ う カテーテル 治療 ち り ょ う あるいは 経皮的 け い ひ て き 冠 かん 動脈 どう みゃく

(1)

心臓し ん ぞ う

カテーテル治療ち り ょ う

あるいは

経皮的け い ひ て き

冠か ん

動脈ど う み ゃ く

形成術け い せ い じ ゅ つ

(冠動脈インターベンション)

について

りんくう総そう

合ごう

医い

療りょう

センター

循じゅん

環かん

器き

内ない

科か

連絡先:072-469-3111

救きゅう

急きゅう

時じ

には心しん

臓ぞう

センター救きゅう

急きゅう

担たん

当とう

医い

または当とう

直ちょく

医い

に連れん

絡らく

してください。

Page 2: (冠動脈インターベンション)...(1) 心臓 し ん ぞ う カテーテル 治療 ち り ょ う あるいは 経皮的 け い ひ て き 冠 かん 動脈 どう みゃく

(2)

心臓しんぞう

と冠かん

動脈どうみゃく

のお話はなし

心しん

臓ぞう

は血けつ

液えき

を全ぜん

身しん

に送おく

り出だ

すポンプの働はたら

きをする大たい

切せつ

な臓ぞう

器き

です。1分間にほぼ4

から5リットルの血液を送り出しています。その大きさは皆さんの握にぎ

りこぶしより少し大き

いぐらいで、全体が筋肉でできています。心臓の表面を冠かんむり

のように覆おお

って心しん

臓ぞう

自じ

体たい

酸さん

素そ

と栄えい

養よう

を与あた

えているとても大切な血管が冠かん

(状じょう

)動どう

脈みゃく

です。

冠かん

動脈どうみゃく

は心臓の表面をかんむりのような形で覆っており、左右2本あります。左冠ひだりかん

動脈どうみゃく

は更に、心臓の前側まえがわ

を栄えい

養よう

する前ぜん

下か

行こう

枝し

、後ろ側を栄養する回かい

旋せん

枝し

に分かれま

す。右みぎ

冠かん

動どう

脈みゃく

は心臓の下側を栄養しています。結けっ

局きょく

、冠かん

動どう

脈みゃく

は大きく左ひだり

前ぜん

下か

行こう

枝し

左ひだり

回かい

旋せん

枝し

そして右みぎ

冠かん

動どう

脈みゃく

の3本あることになります。

もしこれらの冠動脈が、動どう

脈みゃく

硬こう

化か

のために狭くなったり、万が一完全につまったりする

と、心臓の筋肉がポンプとして働くために必要な燃ねん

料りょう

(主に酸さん

素そ

と栄えい

養よう

)が足りなくなり

ます。この状態は心臓に流れる血けつ

液えき

が乏とぼ

しい状じょう

態たい

なので心臓の虚きょ

血けつ

状じょう

態たい

と考えられま

す。このため、虚きょ

血けつ

性せい

心しん

疾しっ

患かん

と呼ばれます。

冠動脈狭窄を拡大した図

Page 3: (冠動脈インターベンション)...(1) 心臓 し ん ぞ う カテーテル 治療 ち り ょ う あるいは 経皮的 け い ひ て き 冠 かん 動脈 どう みゃく

(3)

虚きょ

血けつ

性せい

心しん

疾しっ

患かん

(心しん

筋きん

梗こう

塞そく

や狭きょう

心しん

症しょう

など)の話はなし

虚きょ

血けつ

性せい

心しん

疾しっ

患かん

の中で代表的な病びょう

名めい

としては、狭きょう

心しん

症しょう

と心しん

筋きん

梗こう

塞そく

があります。これらは

心臓に酸素と栄養を与える冠状動脈の動どう

脈みゃく

硬こう

化か

による病気です。狭心症は、冠かん

状じょう

動どう

脈みゃく

が動どう

脈みゃく

硬こう

化か

のために狭せま

くなり、その結果として十分な量の酸素と栄養が心臓に運ば

れないために起こります。狭心症の症しょう

状じょう

としては、

① 胸の痛み(胸の真まん

中なか

あたりの締め付けるような痛み、多くは朝あさ

方がた

駅えき

に急いで歩いたり

坂さか

道みち

や階かい

段だん

を上のぼ

ったりすると起こり、立ち止まるとすぐに楽になります。また会かい

議ぎ

興こう

奮ふん

したり、急に冷たい空気に触ふ

れたりしても起こります。時には、顎あご

や奥おく

歯ば

が浮く

ような症状や、肩から腕うで

の痛みを伴ともな

うこともあります)

② 息いき

苦ぐる

しさ

③ 心しん

悸き

亢こう

進しん

(動どう

悸き

とも呼ばれます。心臓がドキドキすることです)

④ 今までよりも運うん

動どう

能のう

力りょく

が落ちる(今まで何ともなかった駅の階段が辛つら

くなった、など)、

などがあります。

冠動脈の詰まりがひどくなり、狭心症も重症じゅうしょう

になってくると心臓のポンプとしての能のう

力りょく

も低てい

下か

し、心しん

不ふ

全ぜん

となることがあります。さらに進行すると、横になって休んでいても胸きょう

痛つう

が起こるような不ふ

安あん

定てい

狭きょう

心しん

症しょう

という危険な状態にも陥おちい

ります。

冠動脈の動脈硬化が進しん

行こう

して血けっ

栓せん

(=血のかたまり)なども関かか

わって冠動脈が突然詰つ

まると急きゅう

性せい

心しん

筋きん

梗こう

塞そく

になります。急性心筋梗塞とは、冠動脈が突然詰まり(=閉へい

塞そく

)、こ

の結果心臓への酸素と栄養の供給が突然無くなってしまったために心臓の筋肉が腐くさ

てしまった(=壊え

死し

)状態です。急性心筋梗塞にかかると、多くの場合、激はげ

しい胸むね

の痛いた

を感じます。この時の痛いた

みは人間が味わう痛いた

みの中でも一いち

番ばん

強つよ

い痛いた

みだとも言われて

います。さらに、痛みだけでなく、心臓が止まってしまうような不ふ

整せい

脈みゃく

が起こったり、また

ポンプとしての働きも低下してしまったりしますので生せい

命めい

の危き

険けん

があります。時には心臓

が破は

裂れつ

(=心しん

破は

裂れつ

)してしまうこともあります。

これらの結果、急きゅう

性せい

心しん

筋きん

梗こう

塞そく

にかかった場合速すみ

やかに適てき

切せつ

な治ち

療りょう

をすぐに受けな

いと、その死し

亡ぼう

率りつ

は 30%以上ありますが、速すみ

やかに適てき

切せつ

な治ち

療りょう

を受けることにより、死亡

率を 10%以い

下か

に低てい

下か

させることが出来ます。急きゅう

性せい

心しん

筋きん

梗こう

塞そく

を再さい

発はつ

した場合には、死亡

率は約 50%といわれています。

Page 4: (冠動脈インターベンション)...(1) 心臓 し ん ぞ う カテーテル 治療 ち り ょ う あるいは 経皮的 け い ひ て き 冠 かん 動脈 どう みゃく

(4)

■経けい

皮ひ

的てき

冠かん

動どう

脈みゃく

インターベンションとは

○経皮的冠動脈インターベンションの分ぶん

類るい

風ふう

船せん

治ち

療りょう

(POBA = Plain Old Balloon Angioplasty)

最初にグルンツィッヒ博士が考案したバルーン(=風船)による冠かん

動どう

脈みゃく

拡かく

張ちょう

術じゅつ

す。現在ではグルンツィッヒ博士が考案した最初のバルーンよりも多くの改良が加

えられ、性せい

能のう

・品ひん

質しつ

・安あん

全ぜん

性せい

ともに著しく向上しています。これまでの臨りん

床しょう

研けん

究きゅう

結果、風ふう

船せん

治ち

療りょう

の有効性と安全性は確認され、現在でも基き

本ほん

的てき

な治ち

療りょう

法ほう

です。

しかし一方で、風ふう

船せん

治ち

療りょう

にはいくつかの重じゅう

大だい

な欠けっ

点てん

があることが分かってい

ます。その欠点としては、

①再さい

狭きょう

窄さく

の存在、②冠かん

動どう

脈みゃく

内ない

膜まく

解かい

離り

や急きゅう

性せい

冠かん

閉へい

塞そく

の存在、そして③拡かく

張ちょう

不ふ

能のう

病びょう

変へん

の存在が挙げられます。

①再さい

狭きょう

窄さく

: 風ふう

船せん

治ち

療りょう

によって狭くなった冠動脈がうまく拡がったとしても、半年以

内にまた狭くなってしまうことがあります。この現げん

象しょう

を再狭窄と呼びます。これまで

Page 5: (冠動脈インターベンション)...(1) 心臓 し ん ぞ う カテーテル 治療 ち り ょ う あるいは 経皮的 け い ひ て き 冠 かん 動脈 どう みゃく

(5)

の研究で、風ふう

船せん

治ち

療りょう

の後に再さい

狭きょう

窄さく

を起こす可能性は40~50%あります。再狭窄の

メカニズムとしては、血管が拡げられたゴムが自然に戻るように縮ちぢ

まる弾だん

性せい

収しゅう

縮しゅく

新たに細さい

胞ぼう

増ぞう

殖しょく

が起こり血管の内ない

腔くう

のみが縮まる内ない

膜まく

増ぞう

殖しょく

、そして血管そのもの

が縮んでくる血けっ

管かん

陰いん

性せい

再さい

構こう

築ちく

の三つが挙げられています。これらのメカニズムに

よる再狭窄は風船治療の後、半年を過ぎればまず起こらない、とされています。こ

のため、経けい

皮ひ

的てき

冠かん

動どう

脈みゃく

形けい

成せい

術じゅつ

の半年後に確認の冠かん

動どう

脈みゃく

造ぞう

影えい

が行われます。ま

た再狭窄を起こしやすい病びょう

変へん

と起こしにくい病変があることも分かっています。

②冠かん

動どう

脈みゃく

内ない

膜まく

解かい

離り

と急きゅう

性せい

冠かん

閉へい

塞そく

: 風ふう

船せん

治ち

療りょう

によって狭くなった冠かん

動どう

脈みゃく

が拡ひろ

がっ

たとしても、冠かん

動どう

脈みゃく

の内うち

側がわ

の壁(=内ない

膜まく

)が剥は

がれてしまい、結果的に冠動脈が詰ま

ってしまうことがあります。経けい

皮ひ

的てき

冠かん

動どう

脈みゃく

形けい

成せい

術じゅつ

の中に風ふう

船せん

治ち

療りょう

しか無い時代に

は非ひ

常じょう

に怖こわ

い合がっ

併ぺい

症しょう

でした。そのような時代には全ぜん

症しょう

例れい

の2~5%で発はっ

生せい

し、最さい

悪あく

の場合には死し

亡ぼう

につながる合がっ

併ぺい

症しょう

です。現在では、色々な治ち

療りょう

法ほう

が開発された

ためにこのような合がっ

併ぺい

症しょう

が起こったとしても多くの場合、安全に治療できることが出

来るようになっています。

③拡かく

張ちょう

不ふ

能のう

病びょう

変へん

: 現在用いられている風船は 20気き

圧あつ

ぐらいの高こう

圧あつ

で拡ひろ

げても破は

裂れつ

しないような材ざい

質しつ

が用いられています。しかし、中には動どう

脈みゃく

硬こう

化か

の結果狭い部

分が非常に硬かた

くなり、20気き

圧あつ

以い

上じょう

の圧あつ

力りょく

をかけて拡ひろ

げようとしても拡ひろ

がらないこと

があります。このような場合には風ふう

船せん

治ち

療りょう

は全く歯が立ちません。

冠動脈ステントの植え込み

ステントというのは聴き

きなれない言こと

葉ば

だと思います。ステントという言葉はアメリカ

の歯し

科か

医い

であったステント(Stent)博士にちなんで名づけられた言葉です。ステント

博士は歯は

並なら

びの矯きょう

正せい

などを行うために金きん

属ぞく

でできた支ささ

えとなるものを考こう

案あん

しまし

た。これ以来、医学の世界ではこのように支えとして用いる器具のことをステントと

呼ぶことになりました。

冠かん

動どう

脈みゃく

にステントが用いられるようになったのは1986年頃からです。風ふう

船せん

治ち

療りょう

に伴ともな

う欠けっ

点てん

の中で、再さい

狭きょう

窄さく

と急きゅう

性せい

冠かん

閉へい

塞そく

を治療するために考こう

案あん

されました。316L

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(6)

ステンレスと呼ばれる医い

療りょう

用よう

に用もち

いられているステンレスのチューブをレーザーな

どの精せい

密みつ

加か

工こう

技ぎ

術じゅつ

を用もち

いて網あみ

状じょう

に加か

工こう

し、拡かく

張ちょう

用よう

の風ふう

船せん

に装そう

填てん

した状じょう

態たい

で供きょう

給きゅう

されます。 ステントを植う

え込こ

むことによって、再さい

狭きょう

窄さく

率りつ

を10~30%程てい

度ど

にまで低てい

下か

させることができるようになりました。また、冠かん

動どう

脈みゃく

内ない

膜まく

解かい

離り

がおこってもステント

を植う

え込こ

むことにより急きゅう

性せい

冠かん

閉へい

塞そく

にならずに安あん

全ぜん

に治ち

療りょう

することも可か

能のう

となりまし

た。これらのステント植う

え込こ

みによる多くの利り

点てん

のために、全ぜん

世せ

界かい

で冠かん

動どう

脈みゃく

形けい

成せい

術じゅつ

の中でステント植う

え込こ

みが占める割合は90%以上になっています。

Page 7: (冠動脈インターベンション)...(1) 心臓 し ん ぞ う カテーテル 治療 ち り ょ う あるいは 経皮的 け い ひ て き 冠 かん 動脈 どう みゃく

(7)

このように良いことずくめのように思えるステントですが、血管の中に金きん

属ぞく

を植う

え込こ

むために、そこに血けっ

栓せん

(血ち

が固かた

まること)ができて詰つ

まってしまわな

いように、植う

え込こ

み後ご

長期にわたりアスピリン(バイアスピリン®)とチクロ

ピジン(バナルジン®)あるいはクロピドグレル(プラビックス®)やシロスタ

ゾール(プレタール®)などの抗こう

血けっ

小しょう

板ばん

薬やく

と呼ばれる薬やく

物ぶつ

を服ふく

用よう

する必ひつ

要よう

あります。

このような薬物を服用していても、植え込み後に血栓によって詰まってし

まうこともわずかですが報告されています。このことをステント血けっ

栓せん

症しょう

呼びます。その発はっ

生せい

頻ひん

度ど

はステント植え込み後の 0.1~0.2%程てい

度ど

とされてい

ます。

ステントは金きん

属ぞく

で出来ていて風船よりも硬かた

いため、目もく

標ひょう

の病びょう

変へん

まで持も

ち込こ

もうと

しても持も

ち込こ

めない場合もあります。ステントの素そ

材ざい

としては高こう

品ひん

質しつ

な医い

療りょう

用よう

ステ

ンレスが用いられています。ステンレスの構こう

成せい

成せい

分ぶん

の一つとしてニッケルという金

属がありますが、このニッケルに対する金きん

属ぞく

アレルギーを強く持っている人の中に

は、希まれ

にステント植え込み後、色々なアレルギー性反応が起こる可か

能のう

性せい

も指し

摘てき

れています。

ステントは再さい

狭きょう

窄さく

率りつ

を風ふう

船せん

治ち

療りょう

よりも低てい

下か

させますが、それでも0%にすることは

出で

来き

ません(実際には30%前後の再さい

狭きょう

窄さく

率りつ

があります)。ステントの内うち

側がわ

に新しい組そ

織しき

が増ぞう

殖しょく

してくるため、ステントの内ない

腔くう

が植う

え込こ

み後ご

半はん

年とし

ぐらいで狭せま

くなることが

あります。この現げん

象しょう

をステント内ない

再さい

狭きょう

窄さく

(In-Stent Restenosis)と呼びます。ステント

の性せい

能のう

をもっと向こう

上じょう

させるために色いろ

々いろ

な方ほう

法ほう

が研けん

究きゅう

されてきました。現げん

在ざい

ではニッ

ケルをステンレスよりも少量しか含まないクロム合ごう

金きん

を用いたステントも使し

用よう

されて

います。ここまでご説せつ

明めい

したステントは金きん

属ぞく

がそのまま露ろ

出しゅつ

していますので、“裸はだか

の金きん

属ぞく

”ステント = Bare-Metal Stent 略りゃく

してBMSとも呼ばれています。

薬やく

剤ざい

溶よう

出しゅつ

性せい

ステント(DES: Drug-Eluting Stent)

冠かん

動どう

脈みゃく

インターベンションにおける大おお

きな進しん

歩ぽ

である冠かん

動どう

脈みゃく

内ない

ステント植う

え込こ

Page 8: (冠動脈インターベンション)...(1) 心臓 し ん ぞ う カテーテル 治療 ち り ょ う あるいは 経皮的 け い ひ て き 冠 かん 動脈 どう みゃく

(8)

みにも、ステント内ない

再さい

狭きょう

窄さく

(ISR: In-Stent Restenosis)という欠けっ

点てん

があります。これに

対たい

して、DES と呼よ

ばれる新あたら

しいステントが用もち

いられるようになってきました。

DESとはステントの表ひょう

面めん

に再さい

狭きょう

窄さく

を防ふせ

ぐ薬やく

物ぶつ

を塗ぬ

ってあるステントのことです。こ

れらの薬やく

物ぶつ

は冠かん

動どう

脈みゃく

内ない

に植え込まれてから徐々に冠かん

動どう

脈みゃく

局きょく

所しょ

に作さ

用よう

し、ステン

ト内ない

再さい

狭きょう

窄さく

の原げん

因いん

であるステント内ない

新しん

生せい

内ない

膜まく

増ぞう

殖しょく

を抑よく

制せい

し、これによってステント

内ない

再さい

狭きょう

窄さく

を予防します。

世界的にこれらのステントの効こう

果か

を検けん

定てい

するために、大だい

規き

模ぼ

臨りん

床しょう

試し

験けん

がたくさ

ん行おこな

われてきました。その結果、これらの DES はこれまでのステント(“裸はだか

の金きん

属ぞく

ステント = Bare-Metal Stent : BMS)に比較して、驚きょう

異い

的てき

に再さい

狭きょう

窄さく

を抑よく

制せい

し、治ち

療りょう

後ご

の心しん

事じ

故こ

(死し

亡ぼう

、心しん

筋きん

梗こう

塞そく

、冠かん

動どう

脈みゃく

バイパス手術あるいは再さい

経けい

皮ひ

的てき

冠かん

動どう

脈みゃく

ンターベンションなどのこと)を減へ

らすことが証しょう

明めい

されました。

現在では、世界中でDESが用いられており、場所によっては全ステント植え込

みの90%がBMSでなく、DESが使われている国もあります。 このように革かく

命めい

的てき

に優すぐ

れた臨りん

床しょう

成せい

績せき

を有するDESですが、いくつかの問もん

題だい

点てん

が存そん

在ざい

すると言われていま

す。それらは、

① ステント血けっ

栓せん

症しょう

を予防するために2種類の抗こう

血けっ

小しょう

板ばん

薬やく

を服用する必要があ

ります。バッファリン®とかバイアスピリン®は一生涯服用した方がよい

と言われています。これは、DESにおいては塗ぬ

られている薬やく

物ぶつ

の作さ

用よう

によ

りいつまでも金きん

属ぞく

表ひょう

面めん

が冠かん

動どう

脈みゃく

内ない

に露ろ

出しゅつ

し、このために血栓が出来ること

がありえるからです。

② DES の価か

格かく

が BMS よりも非ひ

常じょう

に高こう

価か

であるので、用もち

いることのできるステン

ト個こ

数すう

に制せい

限げん

があります。

③ ステントそのものとしての性せい

能のう

が必かなら

ずしも良よ

くないので、肝かん

心じん

の病びょう

変へん

にまで

DESを持ち込むことができない場合があります(新しいDESではステントその

ものの性せい

能のう

も非ひ

常じょう

に優すぐ

れたものになっています)。

④ 非常に太いステント、あるいは非常に細いステントがDESとして供きょう

給きゅう

されな

Page 9: (冠動脈インターベンション)...(1) 心臓 し ん ぞ う カテーテル 治療 ち り ょ う あるいは 経皮的 け い ひ て き 冠 かん 動脈 どう みゃく

(9)

いため、非ひ

常じょう

に太いあるいは細い冠かん

動どう

脈みゃく

に植え込むことができません。

これらの欠けっ

点てん

に関かん

しては今こん

後ご

もより性せい

能のう

の高いDESが開発され次第に解かい

決けつ

され

ていくことと思われます。

冠かん

動どう

脈みゃく

末まっ

梢しょう

保ほ

護ご

システム

急きゅう

性せい

心しん

筋きん

梗こう

塞そく

や不ふ

安あん

定てい

狭きょう

心しん

症しょう

、あるいは急きゅう

速そく

に進しん

行こう

してきた病びょう

変へん

や、静じょう

脈みゃく

イパス血けっ

管かん

などに対たい

して、ステント植う

え込こ

みやバルーン拡かく

張ちょう

を行った場合、時とき

とし

て病びょう

変へん

部ぶ

から脂し

肪ぼう

の固かた

まりや血けっ

栓せん

その他の物ぶっ

質しつ

が冠かん

動どう

脈みゃく

末まっ

梢しょう

に流れることがあ

ります。こうなると、病びょう

変へん

部ぶ

は綺き

麗れい

に拡ひろ

がっているのに、これらの物ぶっ

質しつ

が冠かん

動どう

脈みゃく

末まっ

梢しょう

の細ほそ

い動どう

脈みゃく

に詰つ

まり、全まった

く血けつ

液えき

が流なが

れないという事じ

態たい

に陥おちい

ることがあります。こ

の現げん

象しょう

は、「流なが

れが無な

い」、という英語から“No flow”と呼ばれます。

これは、非ひ

常じょう

に怖こわ

い合がっ

併ぺい

症しょう

です。この合がっ

併ぺい

症しょう

を予よ

防ぼう

するために、場ば

合あい

によって

は、冠かん

動どう

脈みゃく

末まっ

梢しょう

保ほ

護ご

システム(パークサージ: PercuSurge®)というシステムを用もち

いる

ことがあります。

もっともこのシステムは未だ不ふ

完かん

全ぜん

であり、全ぜん

例れい

に対たい

して用もち

いる訳わけ

にはいきませ

ん。また、このシステムを用いている間は、冠かん

動どう

脈みゃく

血けつ

流りゅう

が完かん

全ぜん

に数すう

分ふん

間かん

途と

絶ぜつ

しま

すので、通常の PCIに対して用いるには問題があります。

またこれとは別べつ

に先せん

端たん

に目め

の細こま

かい網あみ

が拡ひろ

がり塞そく

栓せん

物ぶっ

質しつ

をトラップするようにで

きたフィルターワイヤー(フィルトラップ: Filtrap®)というものも使つか

われます。

Page 10: (冠動脈インターベンション)...(1) 心臓 し ん ぞ う カテーテル 治療 ち り ょ う あるいは 経皮的 け い ひ て き 冠 かん 動脈 どう みゃく

(10)

ロータブレーター

ロータブレーター(Rotablator)は風船、ステントあるいはDCAとは異こと

なり、先せん

端たん

に細こま

かいダイヤモンド粉ふん

末まつ

が塗ぬ

られた金きん

属ぞく

球きゅう

を一分間に150,000回かい

転てん

以上で高こう

速そく

に回かい

転てん

させることにより、硬かた

い成せい

分ぶん

を粉こな

々ごな

に砕くだ

いていく治療法です。ちょうど、歯医者さん

で使われる歯し

科か

用よう

ドリルを思おも

い浮う

かべて下くだ

さい。歯し

科か

用よう

ドリルも先せん

端たん

にダイヤモンド

粉ふん

末まつ

が塗ぬ

られた金きん

属ぞく

ドリルを高こう

速そく

で回かい

転てん

させることにより非常に硬かた

いカルシウムを主しゅ

成せい

分ぶん

とする歯し

牙が

を削けず

ることができます。先に、風ふう

船せん

治ち

療りょう

の欠けっ

点てん

として拡かく

張ちょう

不ふ

能のう

病びょう

変へん

が存在することを述の

べましたが、まさしくロータブレーターはこのような硬かた

い病びょう

変へん

に対たい

して用もち

いられます。カルシウムが沈ちん

着ちゃく

して、骨ほね

のようにとても硬かた

くなった病びょう

変へん

もロータ

ブレーターを用いることにより硬かた

い部ぶ

分ぶん

を粉ふん

砕さい

し、充じゅう

分ぶん

に拡かく

張ちょう

することができるように

なります。粉ふん

砕さい

されたアテロームは赤せっ

血けっ

球きゅう

よりも小ちい

さい塊かたまり

となるために冠かん

動どう

脈みゃく

から

冠かん

静じょう

脈みゃく

に入り、やがて脾ひ

臓ぞう

などで捕ほ

捉そく

されて処理しょり

されてしまいます。

この治ち

療りょう

法ほう

は非ひ

常じょう

に強きょう

力りょく

なものですが、それだけにその使し

用よう

には熟じゅく

練れん

と経けい

験けん

が必ひつ

要よう

です。このため、日に

本ほん

においては全ぜん

国こく

200余あま

りの病院でしか用もち

いることがで

きないように定さだ

められています。

カッティング・バルーン

通つう

常じょう

の風ふう

船せん

治ち

療りょう

では、狭くなった病びょう

変へん

を中から単たん

純じゅん

に拡ひろ

げます。その結果、病びょう

変へん

には裂さ

け目め

が入はい

りますが、この裂さ

け目め

は勝かっ

手て

に入ってしまいます。これに対たい

して、

カッティング・バルーン(Cutting Balloon)では風ふう

船せん

の表ひょう

面めん

3方ほう

向こう

に微び

細さい

な刃は

がつい

ています。これによって、病びょう

変へん

に対たい

して裂さ

け目め

をその 3方ほう

向こう

のみに入い

れることがで

きます。

Page 11: (冠動脈インターベンション)...(1) 心臓 し ん ぞ う カテーテル 治療 ち り ょ う あるいは 経皮的 け い ひ て き 冠 かん 動脈 どう みゃく

(11)

補ほ

助じょ

的てき

に用もち

いられる器き

具ぐ

経けい

皮ひ

的てき

冠かん

動どう

脈みゃく

形けい

成せい

術じゅつ

をより安あん

全ぜん

に、より確かく

実じつ

に行おこな

うために各かく

種しゅ

の補ほ

助じょ

的てき

な器き

具ぐ

を用もち

いることがあります。

① 冠かん

動どう

脈みゃく

内ない

超ちょう

音おん

波ぱ

診しん

断だん

装そう

置ち

: IVUS (Intra-Vascular UltraSound)とも呼ばれま

す。

冠かん

動どう

脈みゃく

内ない

に挿そう

入にゅう

した微び

細さい

な超ちょう

音おん

波ぱ

観かん

察さつ

装そう

置ち

によって冠かん

動どう

脈みゃく

の中なか

から病びょう

変へん

様よう

子す

を観かん

察さつ

する装そう

置ち

です。同様ど う よ う

の画像が ぞ う

診断しんだん

装置そ う ち

では、近きん

赤外線せきがいせん

を応用した

光干渉断層法(OCT)があります。こちらは病変びょうへん

を観察かんさつ

するために冠かん

動脈血流を

排除する必要があり、そのため、病変近くで、一時的に風船を膨らませる必要があ

ります。

②冠かん

動どう

脈みゃく

内ない

血けつ

流りゅう

測そく

定てい

装そう

置ち

: やはり超ちょう

音おん

波ぱ

を冠かん

動どう

脈みゃく

内ない

で発はっ

射しゃ

することによってド

ップラー効こう

果か

を利り

用よう

して冠かん

動どう

脈みゃく

内ない

の血けつ

流りゅう

を測そく

定てい

する装そう

置ち

です。

③冠かん

動どう

脈みゃく

内ない

圧あつ

測そく

定てい

装そう

置ち

: 冠かん

動どう

脈みゃく

内ない

の局きょく

所しょ

血けつ

圧あつ

を測そく

定てい

することができます。

④冠かん

動どう

脈みゃく

内ない

血けっ

管かん

内ない

視し

鏡きょう

: 微び

細さい

な内ない

視し

鏡きょう

を用もち

いることによって病びょう

変へん

の性せい

状じょう

を詳くわ

く観かん

察さつ

することができます。

⑤一いち

時じ

的てき

ペースメーカー: 心しん

臓ぞう

の拍はく

動どう

がゆっくりとなることがあります。このような

場ば

合あい

には、一いち

時じ

的てき

ペースメーカーを用もち

いて心しん

臓ぞう

を電気で刺激して脈みゃく

拍はく

数すう

を保たも

ようにします。

⑥大だい

動どう

脈みゃく

内ない

バルーン・パンピング: IABP (Intra-Aortic Balloon Pumping)とも呼ば

れます。

心しん

臓ぞう

のポンプとしての働はたら

きが弱よわ

っている時、冠かん

動どう

脈みゃく

の血けつ

流りゅう

を増ぞう

加か

させたい時、あ

るいは予よ

防ぼう

的てき

に用もち

いられます。足の付つ

け根ね

の動どう

脈みゃく

(大だい

腿たい

動どう

脈みゃく

)から30~40ccの細ほそ

長なが

い風ふう

船せん

を大だい

動どう

脈みゃく

に入れます。この風ふう

船せん

を心しん

電でん

図ず

と同どう

期き

させながらヘリウム・ガス

によって心臓の拡かく

張ちょう

期き

に膨ふく

らませます。これにより、心臓が休む時とき

にかわりに全ぜん

身しん

に血けつ

液えき

を送おく

り出だ

します。足の付け根から挿入する必要がありますが、動脈が曲

がった方や、狭窄している方は、挿入できない場合もあります。

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(12)

⑦経けい

皮ひ

的てき

人じん

工こう

心しん

肺ぱい

あ るいは経けい

皮ひ

的てき

心しん

肺ぱい

補ほ

助じょ

: PCPS (Percutaneous

Cardio-Pulmonary Support)とも呼ばれます。

心しん

臓ぞう

の働はたら

きが極きょく

度ど

に低てい

下か

した時に、足あし

の付つ

け根ね

の動どう

脈みゃく

と静じょう

脈みゃく

から管くだ

を心しん

臓ぞう

の近ちか

くまで挿そう

入にゅう

し、体の外に置かれたポンプを用いて血液を全身に循じゅん

環かん

させます。こ

の時に、血液に十分な酸さん

素そ

を添てん

加か

させます。比較的太い管を、足の付け根から挿

入する必要がありますが、動脈が曲がった方や、狭窄している方は、挿入できな

い場合もあります。

⑧その他、状況に応じて各種の最さい

新しん

医い

療りょう

器き

具ぐ

を用いることがあります。

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(13)

冠かん

動どう

脈みゃく

内ない

に風ふう

船せん

などの治ち

療りょう

器き

具ぐ

を持ち込むためには、まず動脈にカテーテルと呼よ

ばれる管くだ

を入い

れる必ひつ

要よう

があります。カテーテルを動どう

脈みゃく

に入い

れる場所は主に3ヵ所ありま

す。それは足あし

の付つ

け根ね

の動どう

脈みゃく

(=大だい

腿たい

動どう

脈みゃく

)、肘の部分の動脈(=肘ちゅう

動どう

脈みゃく

)そして手て

首くび

動脈(=橈とう

骨こつ

動どう

脈みゃく

)です。この3ヵ所の中で大だい

腿たい

動どう

脈みゃく

と橈とう

骨こつ

動どう

脈みゃく

が良く用いられます。

大だい

腿たい

動どう

脈みゃく

よりの冠かん

動どう

脈みゃく

形けい

成せい

術じゅつ

昔から良く行われている方法です。利点としては、術者にとって行いやすい点と、太ふと

い治ち

療りょう

器き

具ぐ

も挿そう

入にゅう

できるという点が挙げられます。しかし、一般的に大腿動脈からの

手しゅ

技ぎ

の後にはベッドの上での長い安あん

静せい

が必要であり、また足の付け根部分での出しゅっ

血けつ

などの合がっ

併ぺい

症しょう

も起こりえます。

このため、Percloseパークローズ

とかAngiosealアンギオシール

と呼ばれる特殊な止血のための器具も用いられます。

これらの器具を用いれば術じゅつ

後ご

の安あん

静せい

時じ

間かん

を短たん

縮しゅく

できます。

橈とう

骨こつ

動どう

脈みゃく

からの冠かん

動どう

脈みゃく

形けい

成せい

術じゅつ

手技終了後の患者さんにとっては辛つら

いベッドの上での安静が必要でなく、また出血

による合がっ

併ぺい

症しょう

はほとんど起こりません。しかし、橈とう

骨こつ

動どう

脈みゃく

は比ひ

較かく

的てき

細ほそ

い動どう

脈みゃく

なので太ふと

い器き

具ぐ

を用いた治療を行うことはできません。また、治ち

療りょう

の後あと

にカテーテルを入い

れた側がわ

の手て

首くび

の脈みゃく

拍はく

が触ふ

れなくなることもあります。脈みゃく

拍はく

が触ふ

れないよりも触ふ

れるにこしたこと

はないですが、実じっ

際さい

には脈拍が触れなくなったとしても、非常に特とく

殊しゅ

な場ば

合あい

を除けば何

ら問題はありません。

退院後、翌日からは激はげ

しい肉にく

体たい

労ろう

働どう

でない限り、いつもの仕事をすることが許可され

ます。激しい運うん

動どう

は 2週しゅう

間かん

ぐらい避さ

けるようにして下さい。

経けい

皮ひ

的てき

冠かん

動どう

脈みゃく

形けい

成せい

術じゅつ

実じっ

際さい

にどのように行おこな

われるのでしょう?

【重要です、必ずお目通しください】

【重要です、必ずお目通しください】

Page 14: (冠動脈インターベンション)...(1) 心臓 し ん ぞ う カテーテル 治療 ち り ょ う あるいは 経皮的 け い ひ て き 冠 かん 動脈 どう みゃく

(14)

経けい

皮ひ

的てき

冠かん

動どう

脈みゃく

形けい

成せい

術じゅつ

はグルンツィッヒ博はか

士せ

によって 1977 年に初めて行おこな

われて以い

来らい

治ち

療りょう

成せい

績せき

に対たい

する科か

学がく

的てき

な検けん

討とう

、それに基もと

づいた教きょう

育いく

、そして技ぎ

術じゅつ

革かく

新しん

によるさまざ

まな改かい

良りょう

などが行われてきました。この結果、治ち

療りょう

成せい

功こう

率りつ

は 著いちじる

しく向こう

上じょう

し、反はん

対たい

に治ち

療りょう

に伴ともな

う危き

険けん

性せい

は飛ひ

躍やく

的てき

に低てい

下か

してきました。しかし、このような時代になっても治ち

療りょう

に伴ともな

う危き

険けん

性せい

をゼロにすることは残念ながら出来ません。患者さんおよびご家

族の方々もこの危険性を良くご理解の上で治ち

療りょう

に臨のぞ

んで下さい。私たち医療サイド

は常つね

に危き

険けん

性せい

を最さい

小しょう

にするべく努つと

めています。患かん

者じゃ

さん方のご理り

解かい

を得え

ることにより、こ

れらの危き

険けん

性せい

をより少すく

なくすることが可か

能のう

であると私わたし

たちは信しん

じています。

非ひ

常じょう

に重じゅう

大だい

な合がっ

併ぺい

症しょう

①死亡: 既すで

に病びょう

気き

のために障しょう

害がい

を受う

けている心しん

臓ぞう

に対たい

して治ち

療りょう

を行おこな

うために、どうし

てもその発はっ

生せい

頻ひん

度ど

をゼロにすることはまだ出来ません。一いっ

般ぱん

的てき

に経けい

皮ひ

的てき

冠かん

動どう

脈みゃく

形けい

成せい

術じゅつ

を受けられる患かん

者じゃ

さんの 0.1%(1000 人に 1 人の割わり

合あい

)で死し

に至いた

ることがあるとされていま

す。

②心しん

筋きん

梗こう

塞そく

の発はっ

生せい

: 冠かん

動どう

脈みゃく

の閉へい

塞そく

を起お

こして心筋梗塞になってしまうこともあります。

心筋梗塞を起こせば、強い痛みが起こるだけでなく、最悪の場合には死に至ることもあ

ります。また、最悪の事態を避けるために緊きん

急きゅう

冠かん

動どう

脈みゃく

バイパス手しゅ

術じゅつ

を行わねばならな

い事態になることもあります。

③緊急冠動脈バイパス手術: やむを得ずに緊急で冠動脈バイパス手術が必要となるこ

とがあります。この手術は輸ゆ

血けつ

も必要ですし、手術は全ぜん

身しん

麻ま

酔すい

の下で行われ、胸を開い

て心臓を一いち

時じ

的てき

に停てい

止し

させ、人じん

工こう

心しん

肺ぱい

を用いる必要があります。

経けい

皮ひ

的てき

冠かん

動どう

脈みゃく

形けい

成せい

術じゅつ

に伴ともな

う危き

険けん

性せい

【重要です、必ずお目通しください】

Page 15: (冠動脈インターベンション)...(1) 心臓 し ん ぞ う カテーテル 治療 ち り ょ う あるいは 経皮的 け い ひ て き 冠 かん 動脈 どう みゃく

(15)

重じゅう

大だい

な合がっ

併ぺい

症しょう

上で述べましたような非ひ

常じょう

に重じゅう

大だい

な合がっ

併ぺい

症しょう

以い

外がい

にも重じゅう

大だい

な合併症が起こりえます。

①冠かん

動どう

脈みゃく

破は

裂れつ

(冠動脈からの出血): 非常に稀にですが、病びょう

変へん

を拡ひろ

げた時に冠かん

動どう

脈みゃく

が破裂してしまうことがあります。通常、破裂したところを止血することで、回復しますが、

なかなか止血できない場合には、救命のために、緊急開胸手術を要する場合もありま

す。冠動脈の動脈硬化が進んだ、固くて、もろい病変において、拡張に伴う破裂が起こ

ることが多いとされます。その他に、稀ですが、ワイヤ先端で、冠動脈末梢を破いてしま

うこともあります。

②心タンポナーデ: 心臓は心しん

嚢のう

という袋ふくろ

で取り囲まれています。この袋の中に血けつ

液えき

充じゅう

満まん

し、その結果心臓が外から圧迫されて十分に血液を送り出せなくなる事じ

態たい

を心タン

ポナーデと呼びます。心タンポナーデが発生すれば、すぐに心しん

嚢のう

穿せん

刺し

を行い、貯た

まっ

た血けつ

液えき

を排はい

除じょ

せねばなりません。また、場合によっては出血を止めるために開かい

胸きょう

手しゅ

術じゅつ

が必要となる場合もあります。

③造ぞう

影えい

剤ざい

の使し

用よう

に伴ともな

う合がっ

併ぺい

症しょう

: 経けい

皮ひ

的てき

冠かん

動どう

脈みゃく

形けい

成せい

術じゅつ

を行うためには造ぞう

影えい

剤ざい

という薬やく

物ぶつ

を用いてレントゲンで冠かん

動どう

脈みゃく

の状態が見えるようにせねばなりません。残ざん

念ねん

ながらこ

の造ぞう

影えい

剤ざい

は多くの改良がなされた現在でも、希にアレルギー反応や腎じん

障しょう

害がい

を引き起こ

すことがあります。このため、私たちは造ぞう

影えい

剤ざい

の使し

用よう

量りょう

が可か

能のう

な限かぎ

り少なくなるように努

力しています。

ひどいアレルギー反応の場合には、皮ひ

疹しん

の出現だけでなく、血圧が低下したり、声せい

門もん

浮ふ

腫しゅ

を起こしたりして、最悪の場合死亡につながることもあります。

④放ほう

射しゃ

線せん

による障しょう

害がい

: レントゲンを用いることが治療上必要です。

しかしながらレントゲンは放ほう

射しゃ

線せん

の一いっ

種しゅ

ですので多た

量りょう

のレントゲン線を浴びてしまうと

放ほう

射しゃ

線せん

障しょう

害がい

が起こることがあります。皮膚に対する放ほう

射しゃ

線せん

障しょう

害がい

は蓄ちく

積せき

していきます。こ

の蓄ちく

積せき

線せん

量りょう

が多おお

くなると、放ほう

射しゃ

線せん

皮ひ

膚ふ

障しょう

害がい

の結けっ

果か

、皮ひ

膚ふ

移い

植しょく

が必ひつ

要よう

な事じ

態たい

に陥ること

もあります。他の施設で時として報告されているこのような皮ひ

膚ふ

合がっ

併ぺい

症しょう

を私たちは未だ

引ひ

き起お

こしたことはありません。私わたし

たちは、患かん

者じゃ

さんのレントゲン被ひ

曝ばく

が少すく

なくするように

何い

時つ

も努ど

力りょく

しています。

Page 16: (冠動脈インターベンション)...(1) 心臓 し ん ぞ う カテーテル 治療 ち り ょ う あるいは 経皮的 け い ひ て き 冠 かん 動脈 どう みゃく

(16)

⑤出しゅっ

血けつ

性せい

合がっ

併ぺい

症しょう

: 治療に際しては動どう

脈みゃく

からカテーテルを入れる必要があります。動どう

脈みゃく

はその圧あつ

力りょく

が強つよ

いので出血が起こりやすい血管です。また、治ち

療りょう

の最さい

中ちゅう

はヘパリンと

いう薬を用いて血けっ

栓せん

が出で

来き

にくくなるような状態にしています。これは逆ぎゃく

に出しゅっ

血けつ

を誘ゆう

発はつ

することになります。このような背景がありますので、極きょく

度ど

の高こう

血けつ

圧あつ

症しょう

があるなどの不ふ

利り

な条じょう

件けん

が揃そろ

うと脳のう

出しゅっ

血けつ

などがおこることもあります。また、カテーテルを入れた部ぶ

位い

から

出しゅっ

血けつ

し、後に輸ゆ

血けつ

や手しゅ

術じゅつ

が必ひつ

要よう

となることもあります。

⑥塞そく

栓せん

症しょう

の発はっ

生せい

: 治療に当たってはカテーテルを冠かん

動どう

脈みゃく

まで持ち込む必要がありま

す。冠かん

動どう

脈みゃく

だけでなく大だい

動どう

脈みゃく

にも動どう

脈みゃく

硬こう

化か

病びょう

巣そう

がたくさんあります。カテーテルの通つう

過か

に伴ともな

ってこれらの動どう

脈みゃく

硬こう

化か

の塊かたまり

が剥は

がれて、それが動どう

脈みゃく

血けつ

流りゅう

に沿そ

って流れ、体の

一部にひっかかって動どう

脈みゃく

血けつ

流りゅう

が途と

絶ぜつ

してしまうことがあります。また、カテーテルの一

部に形成された血けっ

栓せん

がはがれてひっかかることもあります。これらの状じょう

態たい

を塞そく

栓せん

症しょう

と呼よ

びます。例えば、脳のう

の動どう

脈みゃく

にひっかかれば脳のう

塞そく

栓せん

症しょう

が起こりますし、腸ちょう

の動どう

脈みゃく

にひっ

かかれば腸ちょう

間かん

動どう

脈みゃく

塞そく

栓せん

症しょう

を引き起こします。このような事態が起こらないように私たち

はカテーテルの操そう

作さ

は何い

時つ

も慎しん

重ちょう

に行おこな

うようにしていますが、それでも完かん

全ぜん

にその発はっ

生せい

を防ふせ

ぐことは困こん

難なん

です。

特とく

殊しゅ

な動どう

脈みゃく

塞そく

栓せん

症しょう

としてコレステロール塞そく

栓せん

症しょう

が希まれ

にあります。これは、腹ふく

部ぶ

大だい

動どう

脈みゃく

などからコレステロール結けっ

晶しょう

を多く含む動どう

脈みゃく

硬こう

化か

プラークが腸ちょう

管かん

動どう

脈みゃく

や下か

肢し

動どう

脈みゃく

末まっ

梢しょう

に塞そく

栓せん

したためにおこります。塞そく

栓せん

発はっ

生せい

後ご

数すう

週しゅう

間かん

の間あいだ

にアレルギー反はん

応のう

を伴ともな

う慢まん

性せい

炎えん

症しょう

が起こります。

また、特に下肢からのカテーテル検査の後では、下か

肢し

静じょう

脈みゃく

に血けっ

栓せん

が形けい

成せい

され、

その血けっ

栓せん

が離り

床しょう

後ご

に流なが

れ、肺はい

動どう

脈みゃく

にひっかかる肺はい

塞そく

栓せん

症しょう

が起こることがありま

す。

あるいは、カテーテル内に少量の空気が混入することによる空くう

気き

塞そく

栓せん

症しょう

も起こりえま

す。

いずれにしてもこれら塞そく

栓せん

症しょう

発はっ

生せい

頻ひん

度ど

は検査時間が長くなる程起こりやすいと言わ

れています。従って、これらの合がっ

併ぺい

症しょう

発はっ

生せい

を予防するために、カテーテル操そう

作さ

が困こん

難なん

検査に時間がかかる場合には、私達は検査途中で検査を中ちゅう

断だん

延えん

期き

する場合もありま

Page 17: (冠動脈インターベンション)...(1) 心臓 し ん ぞ う カテーテル 治療 ち り ょ う あるいは 経皮的 け い ひ て き 冠 かん 動脈 どう みゃく

(17)

す。

⑦感かん

染せん

症しょう

の誘ゆう

発はつ

: 体の中に一時的にせよ異い

物ぶつ

を入れるため、それに伴ともな

って感かん

染せん

症しょう

起お

こることがあります。私たちはこのような事じ

態たい

を予よ

防ぼう

するために、術じゅつ

前ぜん

検けん

査さ

には万ばん

全ぜん

来き

たし、手しゅ

技ぎ

時じ

間かん

を可か

能のう

な限かぎ

り短みじか

くして異い

物ぶつ

との接せっ

触しょく

時じ

間かん

を短たん

縮しゅく

するとともに、常つね

に清せい

潔けつ

を保たも

つようにしています。しかし、完全に防ぐことは困難です。

⑧穿せん

刺し

部ぶ

周しゅう

辺へん

の神しん

経けい

損そん

傷しょう

: 穿せん

刺し

の際に、血管と併へい

走そう

している神しん

経けい

を穿せん

刺し

針ばり

で損そん

傷しょう

ることがあります。また、検けん

査さ

終しゅう

了りょう

後ご

の出しゅっ

血けつ

によって神経を圧あっ

迫ぱく

損そん

傷しょう

することもあります。

この結果、強い痛みが残ったり、指が動きにくくなったり、あるいは手や足の筋きん

肉にく

萎い

縮しゅく

来すことがあります。特に“反はん

射しゃ

性せい

亣こう

感かん

神しん

経けい

ジストロフィー”と呼ばれるものがあります。こ

れは“カウザルギー症しょう

候こう

群ぐん

”とも呼ばれるものですが、何からの神しん

経けい

損そん

傷しょう

は引き金として、

耐た

え難がた

い持じ

続ぞく

性せい

の痛いた

みや損そん

傷しょう

部ぶ

位い

末まっ

梢しょう

の筋きん

萎い

縮しゅく

を来たすものが有名です。

⑨気き

胸きょう

・血けっ

胸きょう

: 鎖さ

骨こつ

下か

静じょう

脈みゃく

穿せん

刺し

や内ない

頚けい

静じょう

脈みゃく

穿せん

刺し

に伴って、肺の一部に穴を開けてし

まって肺はい

の空気が胸きょう

腔くう

にもれてしまい、結果的に肺を圧迫してしまうことがあります。こ

の状態は気き

胸きょう

と呼ばれます。適てき

切せつ

な処置により改善します。また、上じょう

述じゅつ

の静じょう

脈みゃく

穿せん

刺し

際さい

に、静じょう

脈みゃく

に並へい

走そう

する動どう

脈みゃく

を針はり

がかすり、動脈から出血が止まらず、結けっ

果か

的てき

に肺を圧

迫してしまうことがあり、この状じょう

態たい

を血けっ

胸きょう

と呼びます。血胸に対たい

処しょ

するために外げ

科か

的てき

開かい

胸きょう

手しゅ

術じゅつ

が必ひつ

要よう

となる場合があります。動脈からの出血が止まらない状態は、カテーテル検

査や治療の際さい

に、起お

こりやすくなります。その理り

由ゆう

は、カテーテル検査や治療では、カ

テーテル内で血液が固かた

まらないように薬やく

剤ざい

(ヘパリン)を投とう

与よ

する必ひつ

要よう

がありますが、そ

のヘパリンが動脈からの出血を助じょ

長ちょう

するからです。

⑩重じゅう

篤とく

な不ふ

整せい

脈みゃく

の出現: カテーテルによる心臓に対する機き

械かい

的てき

刺し

激げき

、あるいは造ぞう

影えい

剤ざい

注ちゅう

入にゅう

による化か

学がく

的てき

刺し

激げき

などにより、心しん

室しつ

性せい

期き

外がい

収しゅう

縮しゅく

や上じょう

室しつ

性せい

期き

外がい

収しゅう

縮しゅく

、あるいは心しん

房ぼう

細さい

動どう

などの不整脈が誘発されることがあります。多くの場合、これらの不整脈は一過

性で何の後こう

遺い

症しょう

も残しません。しかし、稀まれ

に心しん

室しつ

性せい

頻ひん

拍ぱく

症しょう

、心しん

室しつ

細さい

動どう

、徐じょ

脈みゃく

あるいは

心しん

停てい

止し

などの重じゅう

篤とく

な不ふ

整せい

脈みゃく

が出現することがあります。これらの事態に対応して、当院

の心臓カテーテル検査室では、緊きん

急きゅう

で心臓マッサージ、心臓ペーシング、電でん

気き

的てき

除じょ

細さい

動どう

、大だい

動どう

脈みゃく

内ない

バルーン・パンピング挿入あるいは経けい

皮ひ

的てき

人じん

工こう

心しん

肺ぱい

補ほ

助じょ

装そう

置ち

装そう

着ちゃく

を行

Page 18: (冠動脈インターベンション)...(1) 心臓 し ん ぞ う カテーテル 治療 ち り ょ う あるいは 経皮的 け い ひ て き 冠 かん 動脈 どう みゃく

(18)

えるように常時準備し、また訓練しております。しかしこれらの装そう

置ち

をきちんと使し

用よう

しても、

不ふ

安あん

定てい

狭きょう

心しん

症しょう

や急きゅう

性せい

心しん

筋きん

梗こう

塞そく

といった急きゅう

性せい

冠かん

症しょう

候こう

群ぐん

を中ちゅう

心しん

に、一いち

部ぶ

の重じゅう

篤とく

な病びょう

状じょう

においては、心しん

室しつ

頻ひん

拍ぱく

や心しん

室しつ

細さい

動どう

といった重じゅう

篤とく

な不ふ

整せい

脈みゃく

を停てい

止し

・コントロールすること

ができないこともあります。

⑪発はつ

熱ねつ

: アレルギー反はん

応のう

や感かん

染せん

に伴ともな

って発熱することがあります。

⑫止し

血けつ

デバイスの使用: 大だい

腿たい

動どう

脈みゃく

からの冠かん

動どう

脈みゃく

形けい

成せい

術じゅつ

後ご

に安あん

静せい

時じ

間かん

を短たん

縮しゅく

するた

めに、Percloseパークローズ

やAngiosealアンギオシール

などの止し

血けつ

デバイスを用いることがあります。患かん

者じゃ

の希き

望ぼう

、あ

るいは、医い

師し

の判はん

断だん

(「長ちょう

時じ

間かん

のベッド上じょう

の安あん

静せい

が患者に不ふ

利り

益えき

を与あた

える」)に基もと

づき、

止し

血けつ

デバイスを使し

用よう

することがあります。止し

血けつ

デバイスは、術じゅつ

後ご

のベッド上の安あん

静せい

時じ

間かん

を短たん

縮しゅく

できる利り

点てん

がありますが、希まれ

にながら、穿せん

刺し

部ぶ

の感かん

染せん

の原げん

因いん

となることがあります。

また、それらの止血デバイスを用いても、十分に止血ができず、用よう

手しゅ

圧あっ

迫ぱく

で止血しなけ

ればならない場合もあります。止血デバイスの使用に関して、「絶ぜっ

対たい

に止血デバイスを

使用して欲しくない」という患者様は、どうぞ遠えん

慮りょ

なく、医師にお申し出ください。

⑬その他、不ふ

測そく

の合併症が起こることがあり得ます。

一般的い っ ぱ ん て き

に言いまして、上に述べ

ました大小だいしょう

さまざまな合併症が っ ぺ い し ょ う

発生は っ せ い

頻度ひ ん ど

は合計で 1%程度とさ

れています。

Page 19: (冠動脈インターベンション)...(1) 心臓 し ん ぞ う カテーテル 治療 ち り ょ う あるいは 経皮的 け い ひ て き 冠 かん 動脈 どう みゃく

(19)

経けい

皮ひ

的てき

冠かん

動どう

脈みゃく

形けい

成せい

術じゅつ

を受う

けることによる患かん

者じゃ

さんの利り

益えき

虚きょ

血けつ

性せい

心しん

疾しっ

患かん

は冠動脈に狭せま

くなったり、詰つ

まったりする動どう

脈みゃく

硬こう

化か

病びょう

変へん

ができる

ことによって引き起こされます。経けい

皮ひ

的てき

冠かん

動どう

脈みゃく

形けい

成せい

術じゅつ

は今まで開かい

発はつ

されたどの治ち

療りょう

法ほう

とも異こと

なり、この動どう

脈みゃく

硬こう

化か

病びょう

変へん

そのものに対して直ちょく

接せつ

治ち

療りょう

を行おこな

います。この

意い

味み

で経けい

皮ひ

的てき

冠かん

動どう

脈みゃく

形けい

成せい

術じゅつ

は虚きょ

血けつ

性せい

心しん

疾しっ

患かん

に対する根こん

本ぽん

的てき

な治ち

療りょう

法ほう

と言うこ

ともできます。経けい

皮ひ

的てき

冠かん

動どう

脈みゃく

形けい

成せい

術じゅつ

の効こう

果か

についてはこれまでに数かず

多おお

くの臨りん

床しょう

研けん

究きゅう

によって学がく

問もん

的てき

に調ちょう

査さ

・研けん

究きゅう

が行おこな

われてきました。

短たん

期き

的てき

な利り

益えき

強い狭心症の症状があれば、その症しょう

状じょう

は劇げき

的てき

に改かい

善ぜん

します。また、先に述べま

したように急きゅう

性せい

心しん

筋きん

梗こう

塞そく

の場合には経けい

皮ひ

的てき

冠かん

動どう

脈みゃく

形けい

成せい

術じゅつ

を受けられることによ

って死し

亡ぼう

率りつ

と再さい

発ほっ

作さ

をおこす確かく

率りつ

が低てい

下か

します。

長ちょう

期き

的てき

な利り

益えき

他た

枝し

病びょう

変へん

(何なん

本ほん

もの冠かん

動どう

脈みゃく

に病びょう

変へん

がある状じょう

態たい

)の場ば

合あい

には、病びょう

気き

の自し

然ぜん

経けい

過か

や薬やく

物ぶつ

療りょう

法ほう

よりも心しん

事じ

故こ

発はっ

生せい

率りつ

(死し

亡ぼう

率りつ

や、心しん

筋きん

梗こう

塞そく

発はっ

生せい

あるいは再さい

治ち

療りょう

の必ひつ

要よう

率りつ

など)が低下することが分かっています。そして、この効果は半はん

年とし

から数すう

年ねん

以い

上じょう

にわたり持じ

続ぞく

します。一枝いっし

病びょう

変へん

(一本の冠動脈にのみ病変がある状態)の場合

には、もともと自し

然ぜん

経けい

過か

の生せい

命めい

予よ

後ご

が良いために、死し

亡ぼう

率りつ

では差さ

がでません。し

かし、半はん

年とし

から数すう

年ねん

にわたって薬やく

物ぶつ

療りょう

法ほう

や自し

然ぜん

経けい

過か

よりも症しょう

状じょう

や運うん

動どう

能のう

力りょく

が改かい

善ぜん

されることが判はん

明めい

しています。

これらの長ちょう

期き

的てき

利り

益えき

は数すう

年ねん

以い

上じょう

にわたり持じ

続ぞく

することが分かっていますが、も

ともと治ち

療りょう

法ほう

が開かい

発はつ

されてから30数年間しか経過していませんので、当とう

然ぜん

のことな

がら何なん

十じゅう

年ねん

にもわたって長ちょう

期き

的てき

利り

益えき

があるかどうかはまだ分わ

かりません。

Page 20: (冠動脈インターベンション)...(1) 心臓 し ん ぞ う カテーテル 治療 ち り ょ う あるいは 経皮的 け い ひ て き 冠 かん 動脈 どう みゃく

(20)

経けい

皮ひ

的てき

冠かん

動どう

脈みゃく

形けい

成せい

術じゅつ

を受う

けられない場ば

合あい

の患かん

者じゃ

さんの不ふ

利り

益えき

治療を受けられない場合に患者さんが被こうむ

る最さい

大だい

の不ふ

利り

益えき

は、治療を受けること

による利り

益えき

を享きょう

受じゅ

できないことです。

短たん

期き

的てき

な不ふ

利り

益えき

急きゅう

性せい

心しん

筋きん

梗こう

塞そく

の場ば

合あい

には経けい

皮ひ

的てき

冠かん

動どう

脈みゃく

形けい

成せい

術じゅつ

を受けられない場合には死し

亡ぼう

率りつ

や再さい

発ほっ

作さ

の確かく

率りつ

が明あき

らかに増ぞう

加か

します。狭心症の場合には、発ほっ

作さ

を抑よく

制せい

する

ために多た

量りょう

のお薬くすり

が必ひつ

要よう

となります。

長ちょう

期き

的てき

な不ふ

利り

益えき

徒いたづら

に薬やく

物ぶつ

療りょう

法ほう

にのみに頼たよ

っていると心しん

筋きん

梗こう

塞そく

や重じゅう

症しょう

の不ふ

整せい

脈みゃく

などを起お

こし

て命いのち

を落お

とす可か

能のう

性せい

が増ぞう

加か

します。

Page 21: (冠動脈インターベンション)...(1) 心臓 し ん ぞ う カテーテル 治療 ち り ょ う あるいは 経皮的 け い ひ て き 冠 かん 動脈 どう みゃく

(21)

狭きょう

心しん

症しょう

や心しん

筋きん

梗こう

塞そく

などの虚きょ

血けつ

性せい

心しん

疾しっ

患かん

に対

する、治ち

療りょう

法ほう

について

狭きょう

心しん

症しょう

や心しん

筋きん

梗こう

塞そく

に対してはカテーテルを用いた治療法である、経けい

皮ひ

的てき

冠かん

動どう

脈みゃく

形けい

成せい

術じゅつ

(PCI とも呼ばれます)が有名です。しかし、カテーテル治療以外にも多くの治療法が

あります。これらの治療法についても良くご理解して下さい。

また、そもそも治療を受けられるか受けないで放っておくかは患者さんご本人がご家

族と良くご相そう

談だん

されて決められることであり、私たち医い

療りょう

サイドから治療や検査を強きょう

制せい

ることは出来ません。私たちは、治療や検査を受けられるか否かは 患者さんご自身が

自じ

由ゆう

意い

志し

で決けっ

定てい

される権けん

利り

があると考えています。そして、そのような患者さんの人じん

権けん

を とても大切なものと考えます。

しかしながら、私たちはプロフェッショナルとしての立たち

場ば

から、患者さんが検査を受け

られ、その結果何らかの有ゆう

効こう

な治ち

療りょう

を受けられることを強つよ

く勧すす

めます。 また、以下に述

べます事こと

柄がら

は全すべ

ての虚きょ

血けつ

性せい

心しん

疾しっ

患かん

の患かん

者じゃ

さんにとって重じゅう

要よう

なことですので、是ぜ

非ひ

皆みな

様さま

方がた

全ぜん

員いん

一いち

度ど

はお目め

を通とお

して下くだ

さい。

日にち

常じょう

生せい

活かつ

の改かい

善ぜん

動どう

脈みゃく

硬こう

化か

は生まれたての赤ちゃんには存在しません。しかし、年ねん

齢れい

を経へ

るに従したが

って誰だれ

にでも動脈硬化は起お

こってきます。このため、動脈硬化に伴う虚血性心疾

患などは成せい

人じん

病びょう

の一つともされています。成人病は日にち

常じょう

生せい

活かつ

の違ちが

いなどによりそ

の発はっ

生せい

頻ひん

度ど

は大きく変化します。

冠かん

動どう

脈みゃく

危き

険けん

因いん

子し

の除じょ

去きょ

心筋梗塞などの虚血性心疾患が米べい

国こく

民みん

の死し

亡ぼう

原げん

因いん

の大だい

多た

数すう

を占し

めていること

を問題視した米べい

国こく

政せい

府ふ

は1950年代から米国の片かた

田舎いなか

であるフラミンガムという人

口数万人の町の全町民を、もちろん同意の上で20年間にわたって登とう

録ろく

観かん

察さつ

しま

Page 22: (冠動脈インターベンション)...(1) 心臓 し ん ぞ う カテーテル 治療 ち り ょ う あるいは 経皮的 け い ひ て き 冠 かん 動脈 どう みゃく

(22)

した。これはフラミンガム研究と呼ばれ、臨りん

床しょう

疫えき

学がく

の金きん

字じ

塔とう

とされている研究です。

この結果、心筋梗塞を引き起こしやすい因いん

子し

が幾つか分かりました。

①高こう

コレステロール血けっ

症しょう

: コレステロールが高い人は心しん

筋きん

梗こう

塞そく

を起こしやすいこ

とが分かりました。日本人で、どの程度のコレステロール値が上じょう

限げん

値ち

として適当か

については、多くの議論がなされてきました。現在一般的に考えられているコレス

テロールの上じょう

限げん

値ち

は、心しん

臓ぞう

発ほっ

作さ

を既に起こしたことのある人では200~220mg/dl

です。コレステロールの中でもいわゆる悪あく

玉だま

コレステロールと呼ばれるLDLコレス

テロールの値あたい

が重要です。既に心しん

臓ぞう

発ほっ

作さ

を起こしたことのある患者さんでは、

LDLコレステロール値ち

が100mg/dl以下になることが目もく

標ひょう

です。

②糖とう

尿にょう

病びょう

: 糖とう

尿にょう

病びょう

があれば虚きょ

血けつ

性せい

心しん

疾しっ

患かん

になりやすいことが分かっています。

具体的には一ヶ月間の平へい

均きん

血けっ

糖とう

値ち

の良い指標とされているヘモグロビンA1c(正

式にはグリコ・ヘモグロビンA1cです)が7.0%未み

満まん

となることが目もく

標ひょう

です。

③高こう

血けつ

圧あつ

症しょう

: 高血圧症があれば虚血性心疾患に陥おちい

り易やす

いことが分かっています。

目もく

標ひょう

血けつ

圧あつ

値ち

は最さい

高こう

血けつ

圧あつ

150mmHg以下、最さい

低てい

血けつ

圧あつ

90mmHg未み

満まん

です。但ただ

し、「若じゃく

年ねん

者しゃ

、中ちゅう

年ねん

者しゃ

あるいは糖とう

尿にょう

病びょう

を有ゆう

する患かん

者じゃ

さん」においては、虚きょ

血けつ

性せい

心しん

疾しっ

患かん

を併へい

発はつ

する危き

険けん

性せい

が高たか

いため、目もく

標ひょう

血けつ

圧あつ

値ち

は140/90mmHg未満とすべきだとの意見

も強くあります。

④喫きつ

煙えん

: タバコが肺はい

がんを引ひ

き起お

こす危き

険けん

性せい

については皆様方もご存ぞん

知じ

だと思

います。しかし、それ以上にタバコを吸うことによって虚血性心疾患の発はっ

生せい

危き

険けん

性せい

が10倍以上も増加することをご存知でしょうか? タバコは最も心臓に悪いもので

す。是ぜ

非ひ

、タバコは辞めて下さい。

⑤肥ひ

満まん

: 肥ひ

満まん

があると明らかに狭心症や心筋梗塞に陥り易いことも判明しました。

頑がん

張ば

って標ひょう

準じゅん

体たい

重じゅう

を維い

持じ

するように心がけましょう。

⑥高こう

尿にょう

酸さん

血けっ

症しょう

(痛つう

風ふう

): 高尿酸血症を放置していると、動どう

脈みゃく

硬こう

化か

の進しん

行こう

を促そく

進しん

てしまいます。このため、食しょく

事じ

療りょう

法ほう

や薬やく

物ぶつ

療りょう

法ほう

により治療する必要があります。

⑦虚血性心疾患の家か

族ぞく

歴れき

: 肉にく

親しん

の方かた

々がた

に虚血性心疾患になっている方がおら

れると心しん

筋きん

梗こう

塞そく

や狭きょう

心しん

症しょう

になりやすいことも分かっています。残念ながらこの因いん

子し

Page 23: (冠動脈インターベンション)...(1) 心臓 し ん ぞ う カテーテル 治療 ち り ょ う あるいは 経皮的 け い ひ て き 冠 かん 動脈 どう みゃく

(23)

はご本ほん

人にん

の努ど

力りょく

では如何ともしがたいものがあります。

⑧メタボ: メタボという言葉は多くの方が聞かれているでしょう。正確には、メタボリ

ック・シンドローム(=症しょう

候こう

群ぐん

)のことです。これは日本で見いだされた概がい

念ねん

です。

色々な診しん

断だん

基き

準じゅん

が提てい

唱しょう

されていますが、腹部の内ない

臓ぞう

脂し

肪ぼう

が増加している状態で

す。このため、腹ふく

囲い

が増加している方々は、メタボの可か

能のう

性せい

があります。メタボにな

ると、色いろ

々いろ

な病びょう

気き

になる可か

能のう

性せい

が高くなります。

運うん

動どう

不ぶ

足そく

の解かい

消しょう

日ひ

頃ごろ

、適てき

度ど

に運うん

動どう

を続つづ

けることが大切です。重いものを持ち上げるような、気き

張ば

るような運動、これを無む

酸さん

素そ

運うん

動どう

と呼びますが、このような運動は筋きん

肉にく

の乳にゅう

酸さん

代たい

謝しゃ

に結びつき、心臓に強い負荷を与えます。そのような運動ではなく、空気を吸す

込こ

んで体内のブドウ糖や脂し

肪ぼう

酸さん

を好こう

気き

性せい

代たい

謝しゃ

に結びつけるような有ゆう

酸さん

素そ

運うん

動どう

(エ

アロビクスとも呼びますね)を行うことが心臓に対して良い、とされています。ですか

ら、激はげ

しい運うん

動どう

をする必要はありません。毎日 1時間程度の平へい

地ち

歩ほ

行こう

を続けること

が重要です。通つう

勤きん

の際さい

にはなるべく歩くようにしましょう。

薬剤や く ざ い

による治療ち り ょ う

アスピリン

バッファリン®やバイアスピリン®のことです。本ほん

来らい

、熱ねつ

さましの薬くすり

であったアスピリ

ンが、動どう

脈みゃく

硬こう

化か

の予よ

防ぼう

や動どう

脈みゃく

硬こう

化か

の結けっ

果か

起お

こる脳のう

塞そく

栓せん

、脳のう

梗こう

塞そく

、心しん

筋きん

梗こう

塞そく

ある

いは狭きょう

心しん

症しょう

の予よ

防ぼう

に有ゆう

効こう

であることが分かりました。この作用は、アスピリンの持

つ抗こう

血けっ

小しょう

板ばん

作さ

用よう

によるとされています。血けっ

小しょう

板ばん

は人にん

間げん

の体からだ

の中なか

で出しゅっ

血けつ

を止と

める

大たい

切せつ

な働はたら

きを担にな

っています。しかし、その一いっ

方ぽう

で動どう

脈みゃく

硬こう

化か

を起お

こしている動どう

脈みゃく

対たい

しては時として悪わる

い作さ

用よう

をします。これをアスピリンが阻そ

止し

するのです。アスピリ

ンは今や万ばん

能のう

の秘ひ

薬やく

とまで言われるくらいです。但し、服ふく

用よう

量りょう

が多おお

すぎると逆ぎゃく

効こう

Page 24: (冠動脈インターベンション)...(1) 心臓 し ん ぞ う カテーテル 治療 ち り ょ う あるいは 経皮的 け い ひ て き 冠 かん 動脈 どう みゃく

(24)

果か

だとも言われます。一いち

日にち

一いち

錠じょう

から二に

錠じょう

が最さい

適てき

とされています。アスピリンは胃い

潰かい

瘍よう

を誘ゆう

発はつ

することがありますので、胃い

の痛いた

みを覚おぼ

えられたならばすぐに医師に報

告して下さい。また、希まれ

にアスピリン喘ぜん

息そく

と呼よ

ばれる喘ぜん

息そく

様よう

の呼こ

吸きゅう

困こん

難なん

が誘ゆう

発はつ

され

る場合もあります。

その他た

の抗こう

血けっ

小しょう

板ばん

薬やく

クロピドグレル(プラビックス®)やチクロピジン(パナルジン®やチクピロン®)やシロ

スタゾール(プレタール®)などです。特にプラビックス®やパナルジン®は強きょう

力りょく

な抗こう

血けっ

小しょう

板ばん

作さ

用よう

を有しているため、冠動脈内ステント植え込み後のステント血けっ

栓せん

閉へい

塞そく

予よ

防ぼう

のために用もち

いられます。また、これらの薬やく

剤ざい

は、脳のう

梗こう

塞そく

の予よ

防ぼう

薬やく

として、ある

いは閉へい

塞そく

性せい

下か

肢し

動どう

脈みゃく

硬こう

化か

症しょう

の治ち

療りょう

薬としても用いられます。

クロピドグレルやチクロピジンはとても大切な薬ですが、残ざん

念ねん

ながら重じゅう

篤とく

な副ふく

作さ

用よう

が発はつ

現げん

することもあります。これらの重じゅう

篤とく

な副ふく

作さ

用よう

としては、重じゅう

大だい

な肝かん

機き

能のう

障しょう

害がい

白はっ

血けっ

球きゅう

減げん

少しょう

症しょう

あるいは血けっ

小しょう

板ばん

減げん

少しょう

症しょう

などが知られています。また、それ以外にも

皮ひ

疹しん

が出現することもあります。このため、クロピドグレルやチクロピジンを服用して

から少なくとも最初の 2ヶ月間は 2週間に一回の血液検査をすることが義ぎ

務む

付づ

けら

れていますので、どうぞご協力下さい。

硝しょう

酸さん

薬やく

ニトログリセリン、ニトロペン®、ニトロール®、アイトロール®、バソレータ®、ニトロダ

ーム®、ニトロール・スプレー®などは硝しょう

酸さん

薬やく

と言い

われるものです。狭きょう

心しん

症しょう

発ほっ

作さ

の予よ

防ぼう

と改かい

善ぜん

に劇げき

的てき

に効こう

果か

があります(但ただ

し、狭きょう

心しん

症しょう

という病びょう

気き

の進しん

行こう

に対たい

しての予よ

防ぼう

効こう

果か

はありませんし、根こん

本ぽん

的てき

な解かい

決けつ

法ほう

ともなりません。例たと

えは悪わる

いですが、単たん

なる

痛いた

み止ど

めと思おも

われるのが無ぶ

難なん

です)。このニトログリセリンの効こう

果か

は劇げき

的てき

ですので、

胸の痛みがニトログリセリンによっておさまれば、それだけで狭心症という診しん

断だん

下くだ

せるほどです。副作用として脳の血管が拡張することによる頭ず

痛つう

が起こることが

あります。

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(25)

早い効果を期待するニトログリセリンは舌ぜっ

下か

投とう

与よ

法ほう

が用いられます。また、同様

に発ほっ

作さ

止ど

めのためのニトロール・スプレーも口こう

腔くう

内ない

に噴ふん

霧む

します。口こう

腔くう

粘ねん

膜まく

から

吸きゅう

収しゅう

された薬やく

物ぶつ

は肝かん

臓ぞう

で分ぶん

解かい

されることなく速すみ

やかに冠かん

動どう

脈みゃく

まで到とう

達たつ

することが

できます。このための、舌ぜっ

下か

投とう

与よ

や口こう

腔くう

内ない

噴ふん

霧む

なのです。

これらの薬剤を開始した当初(数日)に血管拡張作用から頭痛を自覚される場

合がありますが、内服を続けることで、症状が改善することも多いです。どうしても、

頭痛が我慢できない場合には、医師に御申し出ください。

ベータ交こう

感かん

神しん

経けい

遮しゃ

断だん

薬やく

ベータ亣感神経遮断薬は心しん

臓ぞう

の過か

剰じょう

な動うご

きを抑おさ

えます。これによって心臓の

酸さん

素そ

と栄えい

養よう

の消しょう

費ひ

量りょう

が抑おさ

えられます。この結果、狭心症発作が起こりにくくなりま

す。薬が効き

きすぎると脈みゃく

拍はく

が遅おそ

くなりすぎることがあります。

カルシウム拮きっ

抗こう

薬やく

アダラート®、アムロジン®、ノルバスク®、ヘルベッサー®などの薬です。直ちょく

接せつ

動どう

脈みゃく

を拡かく

張ちょう

することによって薬やっ

効こう

を発はっ

揮き

します。狭心症の中でも特に、冠かん

動どう

脈みゃく

の痙けい

攣れん

を伴う狭心症(異い

型けい

狭きょう

心しん

症しょう

とか安あん

静せい

時じ

狭きょう

心しん

症しょう

、あるいは冠かん

攣れん

縮しゅく

性せい

狭きょう

心しん

症しょう

などと呼

ばれます)に対しては特とっ

効こう

薬やく

とも言われます。カルシウム拮きっ

抗こう

薬やく

の中には、果くだ

物もの

グレープフルーツなどと一いっ

緒しょ

に服ふく

用よう

すると、その作さ

用よう

が強つよ

くなり副ふく

作さ

用よう

を現あらわ

し易やす

なる薬やく

物ぶつ

もありますので、注意が必要です。アダラート®、カルスロット®などは影えい

響きょう

を強く受けますが、アムロジン®、ノルバスク®などは影響を受けにくいと言い

われてい

ます。

ワーファリン

ワーファリンは抗こう

凝ぎょう

固こ

薬やく

と呼ばれています。体の中の血液を固める作用をブロ

ックします。この薬物は非常に強力な薬剤ですので、血液検査によって効き具合

をチェックしながら投とう

薬やく

量りょう

を決けっ

定てい

します。理り

想そう

的てき

には INR(=International

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(26)

Normalized Ratio: )国こく

際さい

標ひょう

準じゅん

化か

比ひ

率りつ

という値が 2.0前後にあることが良いとされて

います。もちろんのことながら、その患者さんの病びょう

態たい

によってこの目もく

標ひょう

値ち

は上じょう

下げ

ます (この INR という値を用いることが、ワーファリン投とう

与よ

量りょう

の正せい

確かく

な決定を行う上

で、国こく

際さい

的てき

に推すい

奨しょう

されています。しかし未だに不ふ

正せい

確かく

な古いTTという検査値が用

いられている場合もあります。もしも貴方あなた

がワーファリンを服ふく

用よう

されているにもかか

わらず、INRという検査を受けていないのであれば、担たん

当とう

医い

師し

にご相談下さい)。ワ

ーファリンの効き

き具ぐ

合あい

は体たい

調ちょう

や食しょく

物もつ

摂せっ

取しゅ

によって大きく影響されます。特に、納なっ

豆とう

や極きょく

端たん

に多おお

くの緑りょく

黄おう

色しょく

野や

菜さい

の摂せっ

取しゅ

によって、その効果は失われます。従って、ワ

ーファリンを服用している時には、特に納なっ

豆とう

は残念ながら食べることが出来ません。

ワーファリンは心しん

房ぼう

細さい

動どう

や人じん

工こう

弁べん

置ち

換かん

後ご

、あるいは広こう

範はん

な心しん

筋きん

梗こう

塞そく

後ご

、また心しん

機き

能のう

低てい

下か

時じ

などの脳のう

梗こう

塞そく

予よ

防ぼう

に対して用いられることがあります。ワーファリンを服

用している時に行われる何らかの手術、ポリープ切せつ

除じょ

あるいは抜ばっ

歯し

などには厳げん

重じゅう

な管かん

理り

と注ちゅう

意い

が必ひつ

要よう

です。ワーファリンはとても大切な薬ですが、効き

き過す

ぎると出

血を起こす危険があります。この中には、歯は

茎ぐき

からの出しゅっ

血けつ

(歯し

齦ぎん

出しゅっ

血けつ

)、鼻び

出しゅっ

血けつ

皮ひ

下か

出しゅっ

血けつ

や関かん

節せつ

内ない

出しゅっ

血けつ

などだけでなく、重じゅう

篤とく

な脳のう

内ない

出しゅっ

血けつ

や消しょう

化か

管かん

出しゅっ

血けつ

などもあ

ります。従いまして、ワーファリン服用中は定てい

期き

的てき

な INRのチェックを必ず行って頂

く必ひつ

要よう

があります。

ACE阻そ

害がい

薬やく

レニベース®、カプトリル®、チバセン®などです。動どう

脈みゃく

の緊きん

張ちょう

状じょう

態たい

を解かい

除じょ

します。

ARB と呼ばれる薬やく

剤ざい

ディオバン®、ブロプレス®などです。動どう

脈みゃく

の緊きん

張ちょう

状じょう

態たい

を解かい

除じょ

します。

スタチンの仲なか

間ま

クレストール®メバロチン®、ローコール®、リピトール®、リポバス®などです。コレス

テロールの肝かん

臓ぞう

での合ごう

成せい

を抑おさ

えることによってコレステロール値を下げます。これ

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(27)

によって二次的に狭心症や心筋梗塞を抑えることができます。特に悪あく

玉だま

コレステ

ロールと呼ばれる LDL コレステロールを低てい

下か

させることができます。

また、スタチンではありませんが、ゼチーア®と呼ばれる薬もあります。この薬剤

は、腸ちょう

管かん

でのコレステロール再さい

吸きゅう

収しゅう

を抑えることにより、悪あく

玉だま

コレステロールを低

下させます。

冠かん

動どう

脈みゃく

バイパス手し ゅ

術じゅつ

冠動脈バイパス手術は 1950 年代の昔に米国で開発された手しゅ

術じゅつ

法ほう

です。詰ま

ったり狭くなったりした冠動脈の先に、新たに血管をつないで脇わき

道みち

(バイパス)を通

して血液を流す手術法です。このバイパスとして用いる血管には、足あ し

の静じょう

脈みゃく

(大だい

伏ふ く

在ざい

静じょう

脈みゃく

)、胸むね

の内う ち

側がわ

の動ど う

脈みゃく

(内ない

胸きょう

動ど う

脈みゃく

)その他の動脈が用いられます。

これまでに多くの人々の命を救ってきた手術ですが、やはり心臓に対する手術

ですので 1~2%程度の非常に重じゅう

大だい

な手しゅ

術じゅつ

合がっ

併ぺい

症しょう

を伴います。心臓外科医はこの

合併症を少しでも低下させるために、技ぎ

術じゅつ

的てき

修しゅう

練れん

を続つづ

けるだけでなく手しゅ

術じゅつ

法ほう

改かい

良りょう

を常に行っています。

冠動脈バイパスは、カテーテル治療(PCI と呼ぶ)と比べて、全身麻酔をかける

必要があることをはじめ、体への負担が大きいと言われます。特に、高齢の方であ

る程、その傾向が強まります。

しかし、その一方で、カテーテル治療では治せない重症の冠動脈病変も、冠動

脈バイパスで治療することができることもあり、治療方法の中の重要な選択枝の一

つです。

2011.6.1,000