当院採用薬 ・末梢静脈栄養 ビーフリード輸液(ビタミンB1・糖・電解質・アミノ酸液) 500ml中総熱量:210kcal、ブドウ糖:37.5g、 アミノ酸:15g、 VB1:0.75mg、NPC/N比:64 浸透圧比:約3 ・中心静脈栄養 エルネオパ輸液(糖・電解質・アミノ酸・総合ビタミン・微量元素液) 1号1000ml(560kcal) 浸透圧比:約4 2号1000ml(820kcal )、1500ml(1230kcal ) 浸透圧比:約6 ・脂肪乳剤 イントラリピッド輸液(静脈用脂肪乳剤) 20%250ml(500kcal )、100ml(200kcal ) 浸透圧比:約1
当院採用薬
・肝不全用アミノ酸注射液
モリヘパミン点滴静注
300ml中 アミノ酸:22.755g
Fischer比*:54.13
*分岐鎖アミノ酸/(フェニルアラニン+チロシン)[モル比]
浸透圧比:約3
・腎不全用総合アミノ酸注射液
ネオアミュー輸液
200ml中 アミノ酸:12.2g
必須アミノ酸/非必須アミノ酸:3.21
浸透圧比:約2
糖濃度が高くなるにつれて浸透圧が高くなり、静脈炎の発生頻度も高くなるので注意が必要。浸透圧比3(浸透圧800~1000mOsm/kgH2O)が限界。静脈炎の発生には製剤の浸透圧のみならずpHや滴定酸度が影響する。
糖アミノ酸電解質輸液を基本とし、脂肪乳剤を加えると1日あたり1,000Kcal~1,200Kcalのエネルギー、たんぱく質(アミノ酸量)として50~60gの投与が可能である。
ビーフリードはNPC/N比が64であり、製剤によっては50未満のものもある。そのため、腎機能が低下した高齢者やCKDの患者では、アミノ酸負荷による腎前性高窒素血症をきたすリスクがあり、注意を要する。 投与カロリーを増加させると水分量が増加するという欠点があり、心不全、腎不全など投与する水分量が制限される例には注意を要する。
ビーフリードはビタミンB1を配合した製剤(約1mg/500ml)であるが、使用法や病態によってはビタミンB1ビタミン欠乏症に陥る危険性があることに留意して使用する必要がある。
脂肪乳剤
10%と20%があり、組成は大豆油が多くリノール酸 (n-6系)が主体であるが、α-リノレン酸(n-3系)も含まれ、必須脂肪酸の供給が出来る。 熱量は20%で2kcal/mlと非常にエネルギー密度が高く、かつ低浸透圧の輸液製剤
であるため(浸透圧比約1)、末梢から十分なエネルギー量を投与し、NPC/N比を適正にして投与するためには有用である。 浸透圧が高いアミノ酸加糖電解質液と同時に投与すれば浸透圧を下げることができ、静脈炎の予防にも有用である。
脂肪乳剤は側管あるいは末梢輸液ラインから投与する。 高カロリー輸液用キット製剤の種類としては、高カロリー輸液基本液とアミノ酸製剤の組み合わせ(ピーエヌツイン、アミノトリパ、ユニカリック)、高カロリー輸液基本液とアミノ酸製剤に脂肪乳剤を組み合わせたキット製剤(ミキシッド)、さらに高カロリー輸液基本液とアミノ酸製剤に高カロリー輸液用総合ビタミン剤を加えたもの(フルカリック、ネオパレン)、さらに高カロリー輸液用微量元素製剤まで加えたもの(エルネオパ)がある。
現在、使用可能な高カロリー輸液基本液は3種類で、製剤によって糖質ならび電解質量が異なるため、投与量に配慮して選択する必要がある。(ハイカリック、小児用リハビックス、トリパレン) ナトリウムとクロールを含まない製剤(ハイカリック液1号、2号、3号)や、カリウムとリンを含まない製剤(ハイカリックRF)があるので、病態に応じて選択する。ハイカリックRFは、糖質濃度を50%と高くして電解質濃度を必要最小限とし、腎不全時に血中濃度が上昇しやすいカリウムとリンを含有しない組成になっている。
肝不全用アミノ酸製剤にはアミノレバン、モリヘパミンがある。肝性脳症に対する治療として分岐鎖アミノ酸を増量して芳香族アミノ酸を減量することによってFischer比を28.4~40と高くした製剤で、 Fischer比を改善させて肝性脳症を改善させる目的で投与される。 腎不全用アミノ酸製剤は、血液透析導入前に窒素負荷を避けるためと尿素回路の機能不全を防ぐことを目的として必須アミノ酸ならびにアルギニンを配合した設計となっている。(ネオアミュー) 現在用いられている高カロリー輸液キット製剤に含まれるアミノ酸は、総合アミノ酸製剤(ピーエヌツイン)、または高濃度分岐鎖アミノ酸製剤(ネオパレン、エルネオパ)である。
脂肪乳剤を投与しない静脈栄養管理下では、欠乏症が小児では、約2週間、成人で約4週間で発生する。 非タンパクカロリーを糖質のみにすると、糖質が過剰投与となり、脂肪肝やTPN関連肝障害の原因となる。したがって、必須脂肪酸欠乏症予防や投与エネルギーを補う目的だけでなく、静脈栄養時の脂肪肝やTPN関連肝障害発生予防のためにも脂肪乳剤を投与することは有用である。 現在の基本的な考え方は、重症患者においても脂肪乳剤投与は必須であり、適正な投与速度(0.1g/kg/時以下の速度)で投与すれば、合併症は発生しない、とされている。
脂肪乳剤が有効に利用されるには、リポタンパクリパーゼによって脂肪酸に加水分解される必要がある。投与速度は0.1g/kg/時を超えないことが推奨される。0.1gTG/kg /時では血中トリグリセライド値が一定になるが、0.3gTG/kg/時では血中トリグリセライド値が上昇し続ける。
脂肪乳剤の投与時には血中TG値をモニタリングし、十分利用されていること(血中TG値が300mg/dL未満)を確認しながら投与することが重要である。
フィルターを介して投与してはいけない。(平均粒子径は0.2~0.4μ mであるため、0.22μ mのフィルターを通過できない)
脂肪乳剤は他剤との混合によって粒子の粗大化や凝集をきたす可能性が高いため、他の薬剤と混合して投与することは避ける。