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現代 日本 にお け る レ イ キ
一
レ イ キ は どの よ うに紹介され て い るか一
寺 石 悦 章
はじめに
レイキ 1 (霊気 、 Reiki2)が 日本に広 ま りつ つ あ る。 大きな書店 に行 けば、常時 5〜
10 冊ほ どの レ イ キ 関係の 本 を手 にするこ とがで きる3。
レ イ キ関係の 本は 、「ヒ
ーリン
グ (癒 し)」 の 本棚4に置か れて い る こ とが多い が 、 5〜 10 冊とい う数は 、 カ ラーセ ラ
ピーやス トーン セ ラ ピ ー (パ ワース トーン )な どに は及ばない もの の 、多種多様な ヒ
ー リン グの 技法が ある中で は、決 して 少 ない 数で は ない。 本 を開い てみ る と、「海外 で
は代替療法の一
つ とみな されてい る」とい っ た説明が含まれて お り5、 た くさん の 治癒
の 事例が紹介されて い るこ とが多い 6。 それ らの 証言 によれば、 レイキの 魅力は 、 とに
か く 「簡単」 で 「よく効 く」 こ とにあ る らしい。
で は 、レ イ キ とは何で あろうか 。 何か説明しない わけにはい か ない の で 、 身体に手
1 本稿で 取 り上げる 「レ イキ」 とは、原則 として 「臼井甕男の 系統 に連 なる レイキ」
(臼井式 レイ キ)で あ る 。
2 後述す るよ うに 、レイ キは 日本起源で あ り、 漢字表記が本来の 形で ある 。 しか し 、
海外 か ら再輸入 されて 広 ま っ たた め に 、 現在 で はカ タカ ナ表記 が主流 にな っ て い る 。
(「霊 」 の 字 の イ メージ の 悪 さも
一因と考え られ る 。 )本稿で も 「レ イ キ」 とカ タカ ナ
表記 す るこ とを原則 とす る 。 なお漢字 を用い る場合に は 、 原則 として 「霊気」 (あるい
は 「霊」・「気」)と表記 し 、
「靈氣」 (あるい は 「靈」・「氣」)は用 い ない
。た だ し 「気」
の 関係者の 間で は 「気 」 よ りも 「氣」、「霊 」 よ りも 「靈」 の 文宇が好ま れる傾向が あ
る。
3 [望月 2001]の よ うに ほ ぼ半分が マ ン ガ、 さらに は [高木 2007a]の よ うに ほぼ全体 が
マ ン ガ とい う本まで 登場 してい る 。 また 望月 (注 7 を参照)が指導 ・監修 した レ イ キ
の DVD / ビデオが BAB ジ ャパ ン か ら出て い る 。
4 レ イ キは 「療法」 で はあるが、 「健康」 (広 くは 「実用」) の本棚 とは別 の 、 「ヒー
リ
ン グ/癒 し」 (広 くは 「思想 ・ 宗教」 さ らには 「人文」)の 本棚 に置か れて い るこ とが
多い 。 「ヒー
リン グ/癒 し」 の 本棚は 、 しば しば 「精神世界」 の 本棚の 隣に ある 。
5 西洋現代医学以外 の 医療は 、 日本で は代替 医療 (Alternative Me (licine) と総称 さ
れ る こ とが多い。 西洋で は補完医療 (Complementary Medicine) と総称 され るこ と
も多く、 両者を合わせ た補完代替医療 (Complementary & Alternative Medicine、略称 は CAM )とい う名 称が正 式 に使用 され る機会 が増えて い る 。 詳 しくは [上野 2003】などを参照の こ と。 なお現在の 日本で は 、医療者側 の 日本 代替 ・相補 ・伝統医療連合
会議 (JACT )、 利用者側の CAMUNet (代替医療利用者ネ ッ トワーク)な どが組織 さ
れて い る。
6 多 くの 場合、西洋現代 医学か ら見放 された難病 の 事例 で ある。事例 の 分量 は さま ざ
まだが 、 t創工能力開発研究所 1999】の よ うに、ほ ぼ全体が 事例集 となっ て い るもの も
ある。
1
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を当て て 行 う 「手当療法」 で ある と 、 と りあえずは述べ て お こ う。 とは い え 「手 当療
法」 と呼び うる もの に もい ろい ろあ る。 その 中で の レイ キ の 特徴 とは どの よ うなもの
だろ うか 。 こ こで は 、レ イ キ ・ ヒ
ーリン グ ・ シ ス テ ム 本部の 望 月俊孝7が述 べ る 「レ イ
キ の 10大特徴」 を掲げて お こ う8。
(1)トレ ーニ ン グや修行 ・訓練 が不 要/(2)修行 ・訓練を怠 っ て も永 久にその パ ワ
ー
が失 われ ない /(3)ヒ ーリン グ中に強力な注意集中が不要/(4)気を入れた り、 抜 い
た りす る必 要が ない / (5)相 手の 邪気 を受けに くい /(6)時間 ・空 間を超 えた遠 隔 ヒ
ー
リン グが 身にっ く/(7)他の テ ク ニ ッ ク と無理 なく併用 で きる/(8)レ イ キ は信
じよ うが信 じまい が 、 必 要に応 じて エ ネル ギーが流れ る/(9)レ イ キは あなたの 素
晴 らしい 本質を向上 させ る/(10)効果例、実践例 が具体的か つ 豊 富
都合の よい 文句ばか りを並 べ た 、い い 加減 な勧誘用パ ン フ レ ッ トを読ん で い るよ う
に も思 えるが 、こ の 内容 に相 当する もの は 、 (大筋で は)ほ とん どの 本に見出すこ とが
で きる 。 そ の 意 味で 、レ イ キ関係者に広 く認 め られた内容 だ と考えて差 し支えない 。
後で検討す る こ とになるが 、 レ イ キは 日本起源で あ り 、 創始者は 臼井甕男 (うすい
み かお 、 1865 〜 1926)で ある と、 (こ こ で もとりあえず)述べ て お こ う。 臼井霊気療
法学会が設立 され るなどして 当初はか な り普及 した が 9、 戦後 、 その 勢力 は急速 に衰え
て い く1°。
一方 で 、
レイ キ は 臼井の 弟子で ある林忠次郎 11 (1879〜 1940)を経て 、ハ
7 自ら単著 4 冊 ・共著 1冊の レイ キ 関係の 本 を出 して い る他 、 手 当療法の 古典 とい わ
れ る[足 助 2004】[三井 2003][富田 1999】な どの 復刻を行 っ て い る 。 ([三 浦 1995】の 新版発行に も協力 して い る。 ) レイ キ以外に も 、
「宝地図」 な どを テーマ に した さま ざまな
本 を出 して お り、 そ の 影響力が 注 目され る 。レ イキの セ ミナーに つ い て 、 望月 は次の
よ うに述 べ て い る 。「お蔭様で年間約 170 日程度行 っ て い る弊社 の セ ミナーや講演会
は 90%以上 が 、 早期満席 とな るほ どの 人気 とな り、 皆 さん にお喜びい ただい て い ます 。
特に レ イキ ・セ ミナ ー は 、 東京 ・大 阪 ・名 古屋 ・福 岡で 定期的に行 っ て い ます。私が
レ イ キ をお伝 え し始 めて か ら 14年に な りますが 、お 蔭様で 累計 30000 人余 りの 方々
が レ イ キ を ご受講い た だ き、 日常で活 か してい ただい て い ます」 [望月 2007:3亅。 なお
本稿で は引用 の 際 、 文 意を損なわ ない 限 りで、 改行を無視 した り、 漢数字を算用数字
に改めた り、 傍点 ・ル ビ を除い た りす るこ とが ある。 また原則 と して 旧漢字は新漢字
に改め る 。 (た とえば 「靈 氣」 は 「霊気 」 とする 。 )8 [望月 2007 :41・43】。 た だ し
一部 を省略。
9 「臼井 先生 には 当時約 2000人の 門下が い た よ うですが ・…」 ([山 口 2007 :109】)。
1923 年の 関東大震災 の 際 、 臼井や そ の 弟子た ち は被害者救済 にあた り 、「これ を機 に
作家や芸能人 、 宗教家、武道家な どの 入 門者が増えた とい わ れ ます」([土居 2005 :83】)。
「・… 霊能力 と一
致出来る ほ どの 超能力者は、手 当療法の 中興の 祖 と申すべ きタナス
エ の 道の 開拓者臼井先生で あ り 、 そ の 門下及 び諸派の 先生方 で あ っ た 。 その ため終戦
前には信奉者 も百万 人以上 とい われ る ほ どで あ っ た 」 ([足助 2004 :24・25])。
10 「高弟 (臼井の 高弟… ・寺石 注)に は海 軍関係者が 多く 、 二 代 目会長 ・牛 田従三郎氏 と三代目会長 ・武富咸一
氏 は海 軍少将、五 代 目会長 ・ 和波豊一氏 は海軍 中将、母 に
2
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ワイ在住の ハ ワ ヨ ・ タカ タ (高田ハ ワ ヨ、 1909〜 1980)に よ っ て海外 に伝え られた。
レイ キ は 、 タカ タ本人やその 弟子 たちに よ っ て急速に広 ま り、実践者 は世界 中で 121
力 国、500万 人 ともい われ て い る12。
海外 に広 ま っ た レ イ キ を、 こ こ で は 「海外 レ イ キ 13」 と呼 んで お こ う。 この 海外 レ
イキ が 、 日本に知られ る よ うに なっ た の は 1980 年代後半で あ り 、 本格的に は 1990
年 代だ とい える 14。 その 頃、 日本 にお ける レイ キの 系統 (これ を 「国内レ イ キ」 と呼
んでお く)は 途絶え た とも言われて い たが 、 現在で は複数の 国内レ イ キ の 系統が確認
され てい る 。 とはい え 、 現在の 日本 で は海外 レイ キが圧倒的に優勢で ある 。
この よ うに レイ キ には、 と りあえず海外 レイ キ と国内レ イ キ が あ り、また両者の 折
衷が あ り、その 各々 に複数の 系統が ある 15。 その た め 、 同じく 「レ イキ」 とい う言葉
を使 っ て も、 そ こ で語 られ る内容は 大 き く相違 して い る こ とも少な くない 。
本稿の 目的は 、 現在の 日本 にお い て 、レイ キが どの よ うなもの と して紹介 され てい
るか を明 らか にする こ とに ある。 もと よ り、 その 内容は極めて 多様で あり、 網羅的な
調査 はと うて い 不可能で ある 。 そ こ で 以下では 、 日本の 通常の 書店で 手 に入 るレイ キ
関係 の 本 を手掛か りに、重要な相違点 に絞 っ て 検討 を行 うこ ととしたい。
霊気 を教え た林忠次郎先生は海 軍大佐で した 。
・… しか し戦後、 こ の海 軍 との 深い か
か わ りが裏 目に出て 臼井霊気療法学会 の 活動が大きく制限されて しまい ます 。 当時、
GHQ は西洋 医学以外の 民間療法をす べ て 禁止 す る方針 を打 ち出 しま した 。
… ・海軍
と関係の 深か っ た 臼井霊気療法学会は表向きの 活動を停止 し、事実上 、
一般 へ の 門戸
を閉ざした形 にな っ た の で す」 (【山 口 2007 :110])。
11 [田崎 1999 :31】に よれ ば 、 か つ て は 「忠治郎」 と表記 されて きたが 、「忠次郎」 とい
う資料が後に見つ か っ た こ とに よ り訂正 され る よ うに なっ た とい う。12 【望月 2007:14]。 海外で レ イキ がい か に普及 して い るか に つ い て は多 くの 本に記載が あるが 、 【土居 2005][望月 2007】な どが 比較的詳 しい
。
13 「西洋 レイキ」 (【山 口 2007】)、「西 洋式 レ イ キ」 ([土居 2005】)、
「海外式 (の ) レ
イ キ」 ([上 野 19971) な どと呼ばれ る 。 これ に対 し 、 日本の 伝統的な レ イ キは 「伝統
レイ キ」 (【土居 2005])、 「真伝者の レイ キ」 「日本式 レ イ キ」 (圧 野 19971)などと呼
ばれ てい る 。
14 日本で 最初に 出版 された レイ キ本は [レ イ 1987】で ある。 【土居 2005 :174 −175】によれ
ば、「入 門か ら指導者養成 まで 」 の
一貫 したシ ス テ ム が 日本に もた らされ たの は 1993
年 。
15 「実際には 、 海外 にお い て 様々 なルー トで 広 ま っ た た め 、 数 え切れない ほ どの リニ
ー ジ (流派)があり、シ ン ボル の 種類、ア チ ュー メ ン トの 方法 、
ヒーリン グの 方法、
アチ ュー メ ン トの 金額なども様 々 で す。 そ して 、 そ れぞれ の リニ ー ジ (流派)が 「わ
れ こそ一
番 !」 と主張 し合 っ てい るの が現状で す」 (【中尾 ・長谷 2005 :2])。 なお 、
一
般 に は 「ア チ ュー
ン メ ン ト」 とい う表記 が用 い られ るが 、 1中尾 ・長谷 2005】で は一
貫して 「ア チ ュ
ー メ ン ト」 と表記 され て い る。
3
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1.レイキの系統
レ イ キの 系統を論 じるの で あれ ば 、 創始者 ・ 臼井甕男 か ら始めるの が筋で あろ う。
しか し 、 臼井に っ い て の 記述 自体に大 きな相違が見 られ 、 そ の 相違は 臼井以後の 系統
の 違い に よるとこ ろが大きい と見 られるた め 、 先に 臼井 以後 の 系統 を確認 してお きた
い 。
国際気功 ・レ イキ研 究会の 田崎美雄が 示す レ イキ の 系統 図 16を手 がか りに しよ う。
これに よれ ば 、 臼井以後の 流れ は大 きく 3 っ に分かれ る 。 1 つ は 「林一タカ タ ・…」
の 海外 レ イ キ 、 1 つ は 「牛 田従三 郎一武富咸
一 … ・」 の 臼井霊気療法学会 、 もう1 つ
は レ イ キを名 乗 っ て はい ない が 、 社会的な影 響 も大 きか っ た 「江 口俊博 一宮崎五 郎」
とい う流れ 17で あ る 。
この うち海外 レ イ キの 系統は 、 さ らに フ ィ リス ・ フル モ トの 系統 (レ イキ ・ ア ライ
ア ンス ) とバ ーバ ラ ・レ イの 系統 (ラデ ィ ア ン ス ・テ クニ ー ク18)に分かれ て い る 。
こ の うち前者 は ラジ ニー
シ 19 あるい は フ ラン ク ・ペッ ター
を経て 日本 に、後者は三 井
三 重子20 を経 て 日本 に再輸入 され て い る とい う。
上 に言及 した系統図は 主要なもの の み を示 したの もの で 、 もと よ り網羅 的なもの で
は ない。 とは い え臼井以後 、 複数の 系統がある こ とは 、 現在で はは っ き りと確認 され
て い る 。 しか し海外 レ イ キ21 で は 、「臼井
一林
一タカ タ」 とい う系統 を 「本流」 あるい
は 「正 統」 とみなす だけで な く、 これ を 「唯一の 」 系統 とす らみなす傾 向がある。
16 [田崎 1999 :23】。これ に類似 した もの は他の い くつ か の本 に も見 られ る 。
17 彼 らの 技法は 「た なす え (手末)の 道」 と呼ばれ る。 なお江 口俊博 、 宮崎五 郎 、 お
よび 三 井甲之 の 生涯 な どにつ い て は、【三橋 2001】に 比較的簡潔 にま とめ られ て い る 。
18 ア メ リカ ン ・レイ キ ・ ア ソシ エ ーシ ョ ンか らイ ン ターナ シ ョ ナル ・ レイ キ ・ア ソ シ
エ ーシ ョ ン を経 て、 ラデ ィ ア ン ス ・テ ク ニ
ーク と改称。19 「また 、
レ イ キ ・ ア ライア ン ス の 流れ か らイ ン ドの 神秘家オ シ ョー
(和 尚)の サ ン
ニ ヤー
シ ン (弟子 )の あい だ に伝わ っ て い っ た もの か ら、 オ シ ョー ・レイ キ とい う
一
派が形成 され ま した。 デカ ン 高原の 中腹に あるプー
ナの ア シ ュ ラム で 、 ま た各国の 瞑
想セ ン ターそ の 他で 、 カ リフ ォ ル ニ アの エ サ レ ン 研 究所 か ら出たセ ラ ピス トをは じめ 、
ドイツ 、ア メ リカ、 日本 、 イ ギ リス 、オース トラ リア 、 イ タ リア 、 フ ラ ン ス な どの 出
身で 、 ア シ ュ ラム で トレ ー ニ ン グ コ ース を受 けた多 くの セ ラ ピス トやボディー ・ワ
ー
カーが働い て きま した が、 そ の 中で も日本人の サン ニ ヤ
ーシ ン は少な くありませ ん で
した」 ([上野 1997 :88】)。
20 【レイ 1987】の 訳者 。
21 以下に おい て 、海外 レイ キ 関係の 本の 内容が 互 い に類似 してい る場合に は 、 主に [レ
イ 1987】お よび [ミ ュ ラー
& ギ ュ ン ター 1999】を以 っ て 代表 させ る。 既に述 べ た よ うに 、
海外 レイ キは タカ タ以後 、 フ ル モ トの 系統 とレ イの 系統に 分かれ 、 【レ イ 1987】はその
レ イ 本人 の 著作。一
方の フ ル モ トに最 も近い の が【ミ ュ ラー & ギ ュ ン タ ー 1999】の 2 人
の 著者で あ り、 い ずれ もフル モ トの 直弟子 で あ る 。
4
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まず 「臼井一
林」 の 部分につ い て は 、 林が臼井か ら 「すべ て の 権限を託 された22」、
臼井が林を 「後継者 と定め」 た 23な どとして い る 。 また 「林一
タカ タ」 の 部分に つ い
て は、やは り林 がタカ タを 「後継者 として認 定した 24」 とか 、タカ タが林 の 「後 を継」
い だ25とい っ た記述 が見 られ る。 そ の一方で 国内 レイ キにつ い て は 、
「日本で は 、 第二
次世界大戦中に林先生の 治療院が破壊 され 、レイ キの 伝統が い っ た んは途絶えた もの
の 、 今ふ たたび西洋 か ら逆輸入 され る形で よみ が えろ うと して い ます 26」 とい っ た形
で 、 日本 にお ける レ イ キの 伝統は (ほ ぼ)途絶えてい るとい う立場に立 っ て い る。
海外 レ イ キの 中で独特なの は レ イ の 記述で ある 。「ウス イ博士 は 、 晩年にこ の 知識を
数人 の 日本 人 に教えま した 」と し27、複数の 系統 の 存在 を明記 して い るだけで な く、「臼
井一林一タカ タ」の 系統 を本流 とみ なすよ うな記述も見 られ ない 。 それ どこ ろか、
「タ
カ タは臼井博士 の 伝説の 細部を私に語 っ て くれ ま した。 しか しなが ら、 タカ タは 、 日
本 へ 行き 、レ イ キ を紹介され るず っ と前に ウス イ博士 が亡 くな っ た た め 、 彼 には会 っ
た こ とはあ りませ ん。彼女の ウス イ 博士 の 物語 は 、 長い 、 入 り組 ん だ 、 ドラマ テ ィ ッ
ク に強調 された 、 そ して推定的な第三 または第四の 人 づ て の説 明で した」 とまで述 べ
てい る28。
22 「臼井か らア チ ュー
ン メ ン トを受けた林は 、レ イキを実践 し伝 える こ とに強い 使命
感 を覚えて い た 。 林は 、 臼井 が も っ とも信頼 を置 く高弟 とな り 、 臼井 の 余命が わず か
とな っ た 頃、レイ キ・マ ス ター と して 臼井に認定 され 、その 教えに関するす べ て の 権限
を託 され た 」 (【ミュ ラー
& ギ ュ ン タ・− 1999;21−22】)。
23 「臼井先生は 亡 くな る数年前に、 元海 軍士官の 林チ ュ ウジ ロ ウ先生に レ イ キ療法の
す べ て を伝授 し 、 彼 を後継者 と定め ま した」 ([ホ ナ ヴォ グ ト 1998 :35】)。
24 「1941 年 、 林は ア メ リカ と 日本 の 間で 近々 戦争が勃発す る こ とを予感 して い た。
しか し 、 彼 は レ イ キ ・マ ス ターとして の 天命 を歩んで い る 自分が 、
い ま さら日本海軍 の
要請 に従 っ て軍 へ 出向 し 、 戦争に荷担する こ とは とて もで きない とい う思い を抱い て
い た 。
… ・その 頃、ハ ワ ヨ ・タカ タ は夢で 「日本にい る林の もとへ 急げ」 と告 げられ
た 。
… ・2人 の 間で す べ て の こ とが語 り尽 くされ、今後 とるべ き道 に つ い て意見の一
致を見 た後 、 林は ハ ワ ヨ ・ タ カ タを後継者 として 認定 した」 ([ミ ュ ラー& ギ ュ ン ター
1999 :24])。
25 「1941 年 に林先生が亡 くな る と 、 タカ タ女史 がそ の 後を継 ぎま した 」 (【ホナ ヴォ
グ ト 1998:36亅)。
26 [ホナ ヴォ グ ト1998:36]。
27 【レ イ 1987 :95】。
28 【レ イ 1987 :95】。 とはい え、 国内で は ほ とん ど知られ てい ない こ とが 、 海外 レ イ キ
の 系統で 伝 え られて い る こ ともある 。 た とえば林にっ い て は、「そ して 、皆に永遠の 分
かれ を告 げた林は 目本の 伝統的な装束に身を包み 、 蓮華坐 に座 り目を閉 じて 自ら命 を
絶 っ たの で あっ た 」 ([ミュ ラー
& ギ ュ ン ター& ギ ュ ン ター 1999:24亅) とい っ た記述が
ある 。 日本に つ い て の ス テ レ オ タイプ の イ メージ に よ っ て創作 され た もの の よ うに も
思 え るが 、 【青木 1999:177]は 、 林か らレ イキ を授けられた 人物 (実は山 口の 母親)の
5
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次に 、 国内 レ イ キの 伝統が途絶えて い ない とい う主張を確認 してお こ う。 まず、 臼
井が 1922 年に設立 した 臼井霊気療法学会は 、 絶えるこ となく現在まで存続 して お り 、
現在 300〜 400名の 会員が い る とい う29。
また直伝霊 気研 究会の 山 口忠夫は 、 自身 の母親を始め とする親族の 多 くが レイキを
学ん で い た こ とを報告 してい る30。 臼井の 弟子 で ある林は 、 臼井霊気療法学会 とは別
に林霊気研究会を設立 してお り、 彼 の一
族は この 林霊気研 究会におい て レイキを学ん
で い る とい う。 始 め は大 阪の 堺 市で講習を受 けてい るが 、やがて彼 らが住む石 川県加
賀市大聖寺 に も大聖寺分会が設 立 され 、 山口 の 母親 は こ こ で 講習を受けて い る 。
また コ ス モ ブ ライ トの 上野 正春は幼少の 頃 、 鞍馬 山に登 っ て大怪我を した際、「白い
着物 を着た行者の お じ さん 」 に手 を当て られ治癒 した経験 を もっ て い る とい うが、そ
の 「手当」 を レイ キだ と考え て い る らしい。 確認 は 困難で ある が 、 臼井が レイ キを感
応 した の は 、後述す るよ うに鞍馬山であ るか ら、 その 鞍馬 L凵 (あるい は そ の 周辺 )に
レ イキの 伝統 が残 っ て い る可能性 が ない とはい えない。
以上の よ うに、 レイ キの 系統は 「臼井一林一タカ タ」 に は限定 され ない。 それ以外
に もレ イ キ の 系統は存在 し 、 少な くともその一部は現在まで続い て い る31
。
とはい え、現代の 日本で は海外 レイ キ が主流で ある。 そ の た め 日本の レ イキ 関係者
の 多 くは、「海外 レ イ キ の み」 か 「海外 レ イキ と国内レイ キ の 双 方 を取 り入れ る」 の い
ずれ か の 立場 を と っ て い る32。 国 内レ イキを取 り入 れ て い る もの も少 な くない が 、 た
話 と して 「ほ とん ど知 られて い ない と思い ますが 、 実は林先生は 自殺 され た の です」
とい う発 言を紹介 して い る。
29 土居 は 「も しかする と 、 日本に も臼井先生 の 伝統を継い で い る人が 存在す るの で は
ない か」 と考 えて 、 情報収集に 当た っ た とい う。その 結果 、 明 らか にな っ た こ とを【土
居 1998】[土 居 2005】の 中で 詳 しく報告 して い る 。 そ してその 中で 、「しか し 、 学会が 臼
井霊気療法の 原型 (思想 ・技法) を継承 する唯一
の 正 当な団体だ とい う性格 は 、 今 も変化 して い ない と思われ ます」 「学会は 、外部か ら閉鎖的と見 られ るほ ど 、
「臼井 先生
の 伝統を守 り続 ける」 とい う使命 を重視 して 、原型 を保 ち続 けて来 ま した」 と述べ て
い る ([土居 2005:90】)。
30 [山 口 2007:60・73】。
31 こ れ 以外に も、レ イキ の伝 統 (の 少な くともその一部)を伝え る流れが存在する (し
た)こ とは確実で ある 。 望月は次 の よ うに述べ て い る。「因み に 門下生 の 中か ら分派独
立 して 、大 きな影響力 を持たれ た主 な先生並び に 系列の 先生方の お名 前を列記する と 、
『手の ひ ら療治』を創唱され た江 口俊博先生、三 井 甲之先生 。
一燈園の 鈴木 五郎先生 。
林忠次郎先生 門下の 松居松 翁先生 。 冨田流の 富 田魁二 先生 等に も及び … ・。
一説には、
石 井常造陸軍少将の 生気術 、生長 の 家 、 西式健康法の 西勝造先生 にも影響を与 え られ
た とされ る説 まで あ ります」 ([望 月 2007 :28])。
32 「国内レ イ キの み」 の 立揚を とろ うと して い るの は、山 口が唱える直伝霊気が 唯一
の よ うに思われ る 。 本文 に ある とお り 、 山 口 の 母親は林霊気研 究会の 講習を受けて い
る 。 なお 「直伝 霊気」とい う名 称は 「林 忠次郎直伝 」とい う意味で あ り(【山 口 2007 :151】)、
6
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とえば上野 は神伝 レイ キ33、現代霊気 ヒー リン グ協会の 土居裕は現代 レ イキ34、 グ n 一
バ ル ヒー
リン グカ レ ッ ジの 神作彌生は神作式仙骨 ヒー リン グ35・… とい っ た 形で 、 い
ずれ も海外 レ イキ を取 り入 れて い る 。
2.レイキとは何か
「レ イ キ」 とい う言葉の 意味す るもの は 、 基本的に は 2 っ ある 。 本稿の 冒頭 に述べ
た 「手 当療 法」 とい う言葉 を用 い るな ら、 レイ キは 「気」 を用い た 「手 当療法」 だ と
い える 。 その 際の 「手 当療 法」 そ の もの もレ イ キ と呼ばれ るが 、 そ の 際に用い られ る
「気」 も レイ キ と呼ばれ る。 こ こ で は後者 「知 と して の レイ キか ら、先に 見てい く
こ とに しよ う。
「気」 と して の レイ キに つ い て は 、 ほぼ例外 なく 「宇宙エ ネル ギー」 「生命 エ ネル ギ
ー」 あるい は 「宇宙生命 エ ネル ギ ー
」 とい っ た表現が用い られて い る36。 その エ ネル
ギー 自体は何 ら特別 の もの で はな く、 多くの 場合、我 々 の 体内に も流れて い る もの、
我々 を生か して い る もの だ と して い る。
海外で 書かれた本で は、多くの 揚合 、 こ の よ うな説 明の 後 で 、「気」 を さま ざまな言
臼井甕男直伝 とい う意味で はない。
33 「「神伝 レ イ キ」 とは 、 (1 )海外式 レ イ キ (つ ま り 、 現在主流)の 知識 とテ ク ニッ
クお よび エ ネル ギー
を携え 、 保持する と同時に 、(2 ) 日本式 レイキ (臼井甕男先生の
伝統的レ イ キ)の 大部分の 知識 とテ ク ニ ッ クお よび エ ネル ギーを携 え、保持す る もの
で あ り、 さらに 、 (3 )臼井先生 が レイ キを感得 され るに 至 る道程にお い て修め られ た
と思 しき行法 、 そ して レ イ キの 故郷 とされ る鞍馬 山や 尊天 とっ なが る方法を携えた も
の と言 えます」 (【上 野 1997:225】) と し 、 海外か ら逆輸入 され た海 外式 レイ キの 良さ
を十分に認 めた うえで 、 日本式 を生か す」 ([上野 1997 :96]) と述べ て い る。
34 「それ は新 しい レイ キの 系統 で は な く、 「臼井霊気療法 を 、 現代人が活用するた め
の 新 しい 実践法」 で す 。 世界各地 で認め られ広 く普及 した西洋式 レ イキの 合理性 と効
果性 、 さ らに 臼井先生 の 高い 精神性 と人 々 の 幸福 を願 う熱い 思い が 、そ の 根底 に根づ
い て い ます 」 (【土居 2005 :20】)。
35 「現在 、レイ キをは じめ とする ヒ ー リン グには さま ざまなもの が あ りますが、それ
らの 長所を取 り入れなが ら 、 今の 時代に合 っ たもの ・ よ り効果的なもの をつ くり出 し
て い きたい と考えて い ます 。 そ して 、その よ うな考え方 か ら生 まれ た の が神作式の オーダー
メー
ド療法 『仙骨 ヒ ーリン グ』です」 (1神作 2004:170])。
36 「レ イ キ とは 、 日本語 で宇宙生命 エ ネル ギー を意味す る言葉で ある。私た ちを取 り
巻 く空間に は 、 無尽 蔵の 涸れ るこ とな きエ ネル ギーが満ちて い る。 生命を生み出す純
粋 で 豊か な宇 宙エ ネル ギーの 源は また 、私 た ちを生 か し続 けて い る力で もある」 ([ミ
ュ ラー& ギ ュ ン タ
ー 1999:10】)、「レ イ キ とは宇宙の 生命エ ネル ギーで あ り… ・
」 「“
レ
イ ギ’
とい う言葉は宇宙生 命力 エ ネル ギー
を意 味 します」 (【レイ 1987:13D 、「つ ま り
『霊気』とは 、 宇宙エ ネル ギーの 中で もとて も神 々 しい 再考次元の エ ネル ギー
で ある
こ とを示 して い ます」 ([望月 2007:20】)。
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語 ・文化 の 中に置き換えて説明を して い る。「キ (気)は、キ リス ト教の 文化で は 『光』
あるい は 『精霊』 と して 、 中国の 人 々 には 『気』 として 、ヒ ン ドゥ
ー語 で は 『プラー
ナ』、 カ フ ナ (ハ ワイの 呪術師)の 言葉で は 『マ ナ』 として知 られて い る 。 また 、『バ
イオプ ラズ マ 』や 『宇宙エ ネル ギー』な ども同 じよ うに 『気』の こ とを指 して い る言
葉で あ る37」 とい っ た類 で ある。 国内向けに書かれ た本で は 、「気は エ ネル ギーです」
とい っ た簡潔な説明で 済ま されて しま うこ とが 多く 、 上記の 事柄は 国内向けに書かれ
た本に は見 られ ない 特徴 だ とい える38。
続い て 、療法 と して の レイ キ 、 あわせ て療法として の レイ キの 目的に つ い て 見て い
くこ とに しよ う。 本稿の 始めにも 「手 当療法」 と記 した よ うに 、レ イ キは
一般 に心身
を治療す る (ヒー
リン グ)技法と捉 えられて お り、こ の 点 につ い て特に異論は ない 39。
創始者 自身が 、 臼井霊気 「療法」 学会を設立 してい る こ とか らも 、レ イ キが 当初か ら
「療法」 と捉え られて い た こ とは確実で あ る 。 それで も、レ イ キを純粋に 「療法」 と
見なすの か 、「単なる療法で は ない 」 「療法以上 の もの 」 と見なす の か 、 とい っ た 意見
の 相違が見 られ る 。
土居は 、 「レ イ キ法 は有効 な ヒ ーリン グ技法」 で は あ るが 、
「それは レ イ キ法の ス タ
ー ト」 で しか ない (目的で は ない ) とい うCO。
ヒ ュー
マ ン & トラス ト研究所の 青木文
紀 も 、「また 、霊気療 法の 主 眼とする とこ ろは、たん に病気 を治療するだ けで なく、天
与の 霊能 に よ っ て心 を正 し くしか らだを健康 に して 、 人生 の 幸福を 味わい 楽しむ とこ
ろに ある の で す」 と述べ て い る41。 また レ イ も 、
「レ イ キ を単純 に肉体療法 と解釈 し分
類 して い る人がい ますが 、 それ は部分的には真実で す 。 しか レ … レ イ キは 肉体的治
療以上 の もの で す42」 と述 べ て お り、同様の 記述 は他 の 本に も多 く見い だす こ とが で
きる43。
37 【ミュ ラー
& ギ ュ ン ター 1999 :10】。
38 目本人 で あれ ば 「気 」 とい えばわか る (わか っ た よ うな気 にな る) とい うこ とが 、
そ の 背景に ある もの と推測 され る 。 また 、 この よ うな説 明をす る とかえ っ て混乱を招く、 とい っ た心配 も想定 され る。
39 「レ イ キ とは、プラ クテ ィ シ ョ ナ ー(実践者)の 手 を通 じて 、 宇宙生命エ ネル ギー
を受 け手 の 体の 中に導 く古代の ヒー
リン グ技術の こ とで ある」 (【ミ ュ ラー &ギ ュ ン ター一
1999:10])、「レ イ キ (霊気)
一それ は 、人 か ら人 へ 癒 しの エ ネル ギー
を送 る シ ン プ
ル な技術で す」 ([ホ ナ ヴォ グ ト1998:8])、「レ イ キ ・ヒ
ーリン グは 日本発祥の 、 世界的
な癒 しの 技法です」 (【土居 2005 :23])な ど。
401 土居 2005:12−14】。
41 [青木 1999 :73亅。
42 [レ イ 1987 :31】。43 た とえば 「レ イキを通 して 、 人 は魂の 成長 と変容の恵みを体験す る」 ([ミ ュ ラー&
ギ ュ ン ター 1999:11】)、
「身体の 健康 は もちろん 、 心 と魂の 安 らぎが得 られ ます」 (【ホナ ヴォ グ ト 1998 :10】)な ど 。 なお望月は 「レ イキは 医療行為で は ない 」 と明言 して い
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山口 の 立揚は こ れ とは異な る。彼 は、 臼井も林 も医療分 野 へ の 活用が その 中心で あ
っ た こ とを指摘 し、 医療 として の レ イキ を強調 してい る”。 この 揚合の 「医療分野」
とは 、 主 に身体的な治療を意味 して い る と考えて お り、 あくまで も療法、医療 として
の レ イ キが 本来の あ り方だ とす る 。
3.臼井甕男とレイキの起源
まず 、 臼井甕男 は レイ キ の 創始者か再発見者か 、 とい う問題 を取 り上 げる 。
本稿で は既に 、レ イ キは 日本起源で あ り 、 創始者は 臼井 だ と述べ たが 、これ は 「臼
井式 レイ キ」 に限定 した場合の 話で あ る。 レイキその もの は宇宙エ ネル ギーを活用す
るもの で あ っ て 、 太古の 昔か ら存在す る (昔の 方が活用 して お り、時代 が下 るに従 っ
てそ れが忘れ られ て い っ た)とい う考えの 方が 、 実は有力だ とい える ca。 具体的に は 、
レイ キは古代チベ ッ トあるい は古代イ ン ド起源だ と明記 され て い る こ とが 多い 。 その
揚合、臼井は創始者で は な く 、 レイキの 再発見者あ るい は 中興の 祖 とい うこ とになる 。
こ の 点につ い て 、最 も明確 な記述 を して い るの は レ イ で あろ う。rレイ キの 起源は 、 幾
千年の 昔 の 古代チ ベッ トに見るこ とがで きます 。 古代チ ベ
ッ ト人 は 、 現代に な っ て は
じめ て薪しい 物理 学の 発見の 中で表 され つ っ ある、物質 とエ ネル ギーの エ ッ セ ン ス の
知識を持ち、理解 して い ま した 。
・… 宇宙生命カ エ ネル ギー
をとらえる方法に 関す る
こ の 知識 は、結 局チベ ッ トか らイ ン ドに旅 した よ うで す。 イ ン ドか ら多くの 外的な形
を とっ て エ ジプ トとギ リシ ャ と ロー
マ を通 っ て 、 西 洋世界に散 らばりま した 。
… ・東
洋 で は 、 こ の 知識 は中国や 日本 に も た らされ … ・46J と述 べ て お り、古代チ ベッ トか
ら古代イ ン ドへ 、 さらには世 界中に広ま っ た もの と説 明 してい る 。
る (【望月 2007 :4D。 ただ しこれ は 、 法律上 の 問題 に抵触 しない よ うに とい う配慮か ら
記 された もの で あ っ て 、 レイ キ本来の あ り方を述 べ よ うと した もの で は ない と考え ら
れ る。“ 「臼井先生 、 林先生 もまた 、霊気 の 医療分野 へ の 活用を 、 その 活動の 中心 とされて
い ま した 。 直伝霊気研究会で はその 遺志を継 ぎ、医療従事者に も っ と霊 気を知 っ て い
ただ き 、 これ まで 西洋 式 レイ キ を学ん で きた 方々 に は 『医療 として の 霊気』を再確認して い た だ くた めの活動 を 、 今後 とも続 けて い くつ もりで す」 ([山口 2007 :4】)。
「霊気が海外で 『Reiki』とな り広 が っ て い く過程 で 『癒 し (healing)』と して の 側面ばか り
が強調され るよ うになっ た の は 、 あ る意味で仕方の ない こ とで しょ う。 た しか に 、 心
身の 無上 の 安 らぎを与えて くれ る霊気 の エ ネル ギー
は、最高の 癒 しを私た ち に与 えて
くれ るの で すか ら、そ の こ と 自体に 間違い は あ りませ ん。
しか し 、 霊気療法の 草創期に お い て 、 霊気は あくまで も治療 を主 眼に した もの で あっ た こ とを知 っ て い ただ きた
い の です」 ([山 口 2007 :781)。
45 こ の 他 に、臼井甕男に よ る レイ キ以前に も 「霊気」 とい う名称は用い られ て い るか
ら、その 名 称は 臼井の 独創 とはい えない とい う指摘 もある (【土居 2005 :76】)。
46 [レ イ 1987 :911。 ただ し、何 を根拠 に こ の よ うに語 っ て い るの か は不 明。
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これ に対 して 土居は 、レ イ キが 古代か ら活 用 され てい た と考 える点 で は同 じだ が 、
「イ ン ドで もチ ベ ッ トで も存在 したで し ょ うが 、 チベ ッ トに限定する必然性 はあ りま
せ ん」 と述べ 、起源 をチ ベ ッ トやイ ン ドに限定す る考 えを批判 してい る47。
レイ キが古代まで さかの ぼ るとす る考 えは 、 気 と して の レ イキ が宇宙エ ネル ギーで
あ っ て 、類似 の 技法が世界各地 に存在するこ と、 しか も同様の 技法が古代か ら用い ら
れ てい る形跡があるこ となどに基づ い て い る らしい 。 宇宙エ ネル ギー
は普遍 的なエ ネ
ル ギーで あ るこ とか ら、療法 と して の レ イ キ も、時問的に も空 間的に も普遍的な技法
として捉 えられ る こ とに なる 。 そ して こ の 立 場におい て は 、レ イ キが釈迦 (ゴ ー
タマ ・
ブ ッ ダ)やイ エ ス が行 っ た とされ る癒 しと関連づ け られ る。
一方 で、 レイ キ を 「臼井
式 レイ キ」 に限定 した場合には 、 創始者は 臼井甕男 とな り、 彼以前に レ イ キは存在 し
ない こ とに なる 。
続い て 、レ イ キの 創始者あるい は再発見者 とされ る臼井甕男をめぐる話にテー
マ を
移そ う。
臼井が鞍馬 山 (あるい は名称 な しで 「京都の 山」 等)で修行 を行い、 そ こ で レ イキ
を体得 した と され る点で は 、 すべ て の 本の 内容が一
致 して い るng。 しか し 、 鞍馬 山で
の 修行以前の 臼井の 行動 、 さらに は 臼井の 信仰等 に 関す る記述 に は驚くほ どの 違い が
見 られ る。
海外 レイ キやそ の 影響 を受 けた と考 えられ る本の 内容は 、 お お よそ一致して い る 。
そ こで は 、 臼井は キ リス ト教徒 、 そ れ も聖職者だ とされ て お り49、 語 られ る生涯全般
に キ リス ト教的な特徴が色濃 く見 られ る。 それに よれ ば 、 臼井が レ イ キ へ と至 る道を
歩 み始 める き っ か け となっ た 出来事 は 、聖職者で あ っ た彼が 、 イ エ ス が 行 っ た とされ
る癒 しに関す る質問を受け 、こ れに適切に答 えるこ とがで きなか っ た こ とだ とされ る 。
その 後、彼 は研 究あ るい は求道の 道に入 る。 そ して さま ざま な古代の 言語 を学 び 、 古
代 の 思想 ・宗教を研究 し、長 い 年月 を経て 、 よ うや くサ ン ス ク リッ ト語 の 文献 の 中に
47 「レイキを活用 した手 当療法は 、 日本で も古 くか らあ りま したが、 ウス イ式 レイ キ
は 『20 世紀前半に 、 臼井先生が創始 された技法』で あ り 、 それ 以外 の 何 もの で もあ り
ませ ん 」 ([土 居 2005 :138】〉 として い る 。
as こ こで は一
例をあげてお く。「住職の 提案に 従い 、彼は京都 の 聖な る山に 21 日間の
断食 と瞑想 の ために こ もる こ とを決意 した。
… ・『神 よ、 どうか私に光を見せ て くだ
さい !』する と、突如 として 頭上の 空が にわか に動 き 、 明る く輝 く光が現れた 。 光 は
み るみる うち に大き くな り、 臼井 め が けて突進 し、 額の まん なか、 第 3 の 目を打ち抜
い た 。
… ・この 光 の 体験が 仏陀 とイ エ ス が行 っ た癒 しの 業の 秘密を解 く鍵で あ り、 臼
井式 レ イキ の 出発 とな っ た 」 ([ミ ュ ラー &ギ ュ ン ター 1999 :15−16])。
49 「・… ウス イ博士 はキ リス ト教の 神父 となっ た学者 で 、当時京都に あっ た神学校で
教えて い ま した」 (【レ イ 1987 :93】)。 ただ し レイ の 揚合は 、 こ の 文を 「伝説に よれ ば… ・
」 で 始めてい る 。 他の 本で は 、 い ずれ も史実の よ うに伝えてい る。
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仏陀の 癒 しの 手 掛 か りを発 見 した とされて い る50。 なお 、 彼に つ い て は大学の 教員で
あ るとも伝え られ て い る51。
一方 、 国内で は これ とは異 なる 臼井 の 生涯 が語 られ て い る52。彼 の 生涯 に つ い て 調
査 を行 っ た土居は、「歴 史は神話か らス ター
トす る こ とが多 く、ある時期は神話が大切
な役割を担 っ て い ます」 と述べ つ つ も53、 臼井を 同志社大学 の 学長 (学部長、神学部
教授)、 神学校の 校長 、 博士、 キ リス ト教の 聖職者 (牧師 ・ 神父)などとする伝承を明
確に否定 して い る54。 また上野は
、レ イキが 日本の 伝統的な思想 と関連が深 い こ とを
指摘 してい る55。
前述 の よ うに 、 臼井 は鞍馬 山 (あるい は京都近郊の 山)で修行 を行い 、 レイ キ を体
得あ るい は感応 した とされ、その 点 では 異論は ない 。 た だ しその 具体的内容 となると 、
海外 レイキで は 、 体験の 中にイ エ ス などが登場す るな ど、 大変 ドラマ チ ッ クな もの に
な っ てい る56。
4.レイキの伝授(アチ ュー
ンメン ト、 ディグリー、 シンボル とマ ントラ・… )
既 に指摘 した よ うに 、 気 と して の レイ キ は宇宙エ ネル ギー、生命エ ネル ギー
で ある
とされ 、 我々 の 体内に も流れ 、 我 々 を生か して い る とされ る 。 とはい え、 誰 もがい き
な り手 当療法が で きる、 とい うこ とで はない。 手 当療法を行 うの で あれば 、 そ の よ う
50 「そ して つ い に 、 古代の サ ン ス ク リ ッ ト語原典の 中に 、 仏陀の 無名の 弟子 によっ て
記 された箇所 を発見 し 、 自分が 7年 間求 め てやまなか っ た解答 を見つ けた の で あ っ た」
(【ミ ュ ラー& ギ ュ ン ター1999:15])、
「… ・彼は 終局的にサ ン ス ク リ ッ トの 中に法 式 と
して 保存 され てい た 、 こ の 特別 な知識の 秘密を発 見 したの です」 ([レ イ 1987 :93])。
51 「地方 の 小 さな大学の 教師 として勤務 して い た」([ミュ ラー& ギ ュ ン ター1999:14])、
「レ イキ の 始祖 、 臼井甕男先生は・… 京都に あ る小 さな大学の 学長で あ り… ・
」 ([ホナ ヴォ グ ト 1998 :32])。52 臼井 の 生涯に つ い て は 、【青木 1999】[土居 2005]な どが詳 しい
。
53 [土 居 2005 :135]。
54 【土居 2005 :141】。 土居 は 臼井 にっ い て 、 「… ・欧米 ・中国に渡航 して 各種 の 学び を
深 めま した」 「職業 も公 務員 、会社員 、 実業家、新聞記者 、 政治家の 秘書 、 宗教の 布教師 、 刑務所 の 教戒 師などを体験 し 、 幅広 い 人 生経験を積み重ね ま した」「非常に多彩な人で 読書を好み 、歴史書 、 伝記 、 医学書、仏教経典 、 キ リス ト経典 、 心理学 、 神仙術 、
呪術、 易学 、 人相学な どの 造詣が深 く 、 これ らの 知識や体験が、 臼井 レイ キ療法 を創設する基礎 とな りま した」 と述べ てい る (【土居 2005 :80])。
こ の 内容か らすれ ば、海外 レ イ キ で 伝え られ るよ うな伝承 を生み 出す 「素材 」 は十分 に存在 した ともい え る 。
55 た とえば 、「こ の よ うに本来の レイ キは 、鎮魂帰神法 の 祖本田親徳か ら長沢雄盾 (駿
河 の 聖人)、 出口 王仁三郎 (大本教)の 流れ を引 く人 々 と平行 しつ っ、 交 わ り合い 、 日
本の 新興宗教 に影響を与 え 、 ま た摂取 され て ゆ くわけで す」 ([上 野 1997 :242・243】)な どとい う記述が ある 。
56 た だ し例 外的に 、[レ イ 1987】には そ の よ うな記 述が ない。
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な能力57 を もつ 人 (レイ キ ・マ ス ター あるい は レ イキ ・テ ィー
チ ャー)か ら、 そ の た
めの 能力 を伝授 して もら う必 要が ある。
一般 にその 伝授は 、
セ ミナー (講習) とい う
形 をとっ て行われ る。
レイ キ の 能力には段階が あ り、大き く 3 段 階とする立場 と 4 毀階とす る立場 に分 か
れ る58。 とは い え、おお まか に言 えぱ全 3段階の 最終段 階を 2 っ に分けると全 4 段階
にな るとい う関係 にあるた め 、 本質的な相違 とは言い に くい 59。 それ ぞれ の 段 階は順
に フ ァー ス ト ・ディ グ リ
ー−60 、セ カ ン ド・デ ィ グ リー、サ ー ド ・デ ィ グ リ
ーと呼 ばれ
る 。 全 4 段階の 場合は 、 そ の 次に マ ス ター (テ ィー
チャー)61 ・デ ィ グ リーが来るが 、
全 3 段 階の 揚合は 、 こ の 名称がサ ー ド ・ディ グリーの 別称 となる。 ○○ディ グ リー と
い う名称は 、 能力の 毅 階を示 す名称で あ るが 、 同時に各段階 の 能力伝授 の ため の セ ミ
ナー
の 名称 として も使用 されて い る。
セ ミナーで は さま ざまなこ とが学ばれ るが 、 知識だけで レ イ キの 能力 が身に つ くわ
けで は ない 。
一般 に 、
セ ミナ ーの 中で最 も重視 され るの はアチ ュ
ー ン メ ン ト62 (イ ニ
シ エー一
シ ョ ン とも呼ばれ る)で あ り、そ して シ ン ボル とマ ン トラだ とい える63。
57 「能力」 ある い はその 後の 「伝授」 とい っ た表現が不適 当とい う考えも あろ うが 、
本稿で は暫定的に こ の 表現 を使用す る 。
58 一部に は、レ イ ドウ ・ レイ キの よ うに 7段 階 (レ イ ドウ ・レ イ キ ヒ ー
ラー養成 コ ー
ス の 7段 階) とす る もの もある (【青木 1999:110−114】)。 また直伝霊気 の よ うに 「前期1
,2
,3」 「後期 1
,2」 「師範格認定 コ ー ス 」 「師範認定 コ ース 」 とする もの もある 。 こ の 場
合 、 おお よそ の対応は 、 フ ァー
ス ト・デ ィグ リーが 「前期 1,2」、セ カ ン ド・ディ グ リ
ーが 「前期 3 と後期 1,2」、 サー ド ・ディ グ リ
ーが 「師範格認定 コ ース 」、マ ス ター ・
デ ィ グ リー が 「師範認定 コ ース 」 とな る とい う ([山 口 2007 :152・153】)。 ただ し山 口
は、 「フ ァース ト」 等で は なく 「レ ベ ル 1」 等 と表記 してい る 。 ]
59 た とえば、レイ は 3 段階の 立場 を とっ て い るが、実際には 3A と 3B とい う形で サ
ー ド・デ ィ グ リーを二 つ に分 けて説 明 して い る ([レ イ 1987 :64・65】)。
60 「デ ィ グ リー」 の 部分 を 「レ ベ ル 」 と呼ぶ揚合もある 。 (た とえばフ ァ
ース ト ・レ
ベ ル 。 )セ カ ン ド以 降にお い て も同様。
61 マ ス ター
とティーチ ャ
ーを使い 分ける (た とえばマ ス ターは テ ィーチ ャ
ー よ りも上
位)場合 もあ るよ うだ が 、国内で 出版 されて い る本 を見 る限 り、 両者の 相違を明確 に
述 べ て い る もの は ない 。
62 一般 に 、レイキ の 能力 を身に つ け る た めに は
、ア チ ュ
ーン メ ン トは必要不可欠 と考
え られて い る 。 しか し【中尾 ・長谷 2005:59】の よ うに 、「ア チ ュ
ーメ ン トは 、 必 ず しも
必要 とい うわけで は なく、必要ない とい うわ けで もあ りませ ん 。
… ・もし、 高い レ ベ
ル の レ イ キ ヒー リン グを受けた こ とが あるな ら、あなたはすで に レイ キ を使 えます 」
とす る立場 もある。63 直伝霊気で は 、 ア チ ュ
ーン メ ン トは 「霊授」、 シ ン ボル は 「印」、マ ン トラは 「呪文」
と呼ばれ る ([LU口 2007】)。 現代 レイキで は 、マ ン トラは 「コ トダマ 」 と呼ばれ る ([土
居 1998])。
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ま ずア チ ュー
ン メン トとは 、 「エ ネル ギーの 回路 を開 く」 「エ ネル ギーの 流れ を大 き
くす る」 「エ ネル ギー
へ の ア クセ ス を可能にする」 もの だ と説明 され、これ を受け るこ
とで 自他へ の ヒー
リン グが可能 となる とされ る。
一般に 、 何か特別な能力を獲得す る
(伝授 され る)とい っ た揚合には 、 本人の 知識や努力 など一定の 資格を必要 とす るの
が普通 で あろ うが 、 レ イキ の ア チ ュー ン メ ン トを受ける側には何の 知識も努力 もい ら
ない とされ る 。 これ が レ イ キ の 大きな特徴だ とい えるが 、 こ の 点につ い て は筆者が見
る限 り異論はま っ た く存在 しない 。
次に シ ン ボル とマ ン トラで ある が 、シ ン ボル とは特定の 図形 、
マ ン トラ とは特定の
言葉で あ り 、シ ン ボル の 1 つ とマ ン トラの 1 つ がそれぞれ組 に な っ て い る。
一般 には
全部で 4 組あると され、 こ の うち 3 組が セ カ ン ド・ディ グ リー
で 、1 組がサ
ード ・デ
ィ グ リー
で 伝 え られ る 。これ らを用い る こ とで癒 しの 能力が高ま るだ けで な く、 遠隔
ヒ ー リン グな どが可能になるなど、レ イ キの 能力が飛躍的に向上する。
こ の シ ン ボル
とマ ン トラは秘伝 ・非公 開とされ て い るだけで な く、 多用を慎む 64 とい っ た さらな る
慎重 な態度 も見 られ 、 大半の 本に は掲載され てい ない 65。
その一
方で 、 シ ン ボル や マ ン トラ を公 開 した本 も出版 されて お り66、 そ の 点 に つ い
て は次の よ うに述 べ られて い る 。「私た ちは 、 日本で は タブー とされて きた シ ン ボル の
公 開に踏み切 りま した 。
… ・レイ キ に は こ ん なに もた くさん の バ リエー
シ ョ ン が あ る
とい うこ とを、み な さんに知 っ て い た だ き 、 シ ン ボル や ヒ ーリン グ方法 に こ だわ る必
要がない こ とを理 解 し 、 自由に楽 しん で い ただきたい か らです 。 」 さらにその 後で は 、
「こ の 本 は、レイキに 関す る暴露本では あ りませ ん 。レ イ キ を学び 、
レ イ キ を超 えて 、
本当の ヒー リン グを学ぶため の 本です」 とも述べ られて い る67。
筆者が知る限 り、 こ れは シ ン ボル や マ ン トラを公 開した 「日本で」 初めて の (と同
時に、本稿執筆時点で は 唯一
の )「本」 で ある 。 しか し 、 欧米で は 同様の 本はすで に 出
版 されて い た し、また 日本語 の ホー ム ペ ージ上で も 、 シ ン ボル や マ ン トラは公 開 され
て い た 。 こ の よ うな 、 シ ン ボル やマ ン トラの 公 開につ い て 、土居 は 「功罪相半 ばす る」
64 「… ・本来 はやた らと誰 もが用 い ては な らない もの で した 。 なぜ な ら、 そ の テ ク ニ
ッ ク を使 うこ とが ゆる され るの は 、そ の 使い 方を誤 らない だ けの 高い 人格と霊格を持
つ 者の みで な くて は な らない か らで す」 (【上野 1997 :173−174])。「ちなみに 、直伝霊
気 におい て は印や呪文の 多用は慎む よ うに指導 して い ます 。 あくまで も 『伝家の 宝刀 』
とい うよ うな感 じで 、い ざとい う時に使 うの が林先生 か ら受 け継い だ教えなの で す」
([山口 2007:158】)。
65 た とえば 「レイ キ をある波動にの せ るた めの 特有の シ ン ボル とマ ン トラは 、セ カ ン
ドお よびサー
ドの 各講座 の 際にマ ス ター ・テ ィー チャ
ーか ら密に伝授 されます 。 その
秘伝は公 開で きませ ん が ・…」 ([ホナ ヴォ グ ト 1998 :8】)な ど と述 べ られて い る。
66 [中尾 ・長谷 2005】。
67 [中尾 ・長谷 2005:4−5】。
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とし、「功」 につ い ては 「… ・秘伝 を売 りもの に して 、セ ミナーで 荒稼ぎ しよ うとす る
う風潮に歯止 めがか か るか も知れ ない・…
」 とする 。
一方の
、「罪」 に つ い て は 「… ・
多 くの 人 が秘伝として 大切に して きた もの を 、 何の 関係 もない 人たちの 目に触れ させ
た とい う心 ない 行為です 。 た とえば人 々 が崇敬 して い る神社の 御神体を、神殿 か ら引
きず りだ して 、『ほ ら、中に はこ ん な もの が入 っ て い るん だよ』と衆 目に さらしたの と
同様 の 行為で す」 と述 べ る 。 その 上で 「霊気法の 本質 か らい えば 、 シ ン ボル の 公 開な
どたい した意味もない の で すが、茶 目っ 気が過 ぎる よ うな気 も します」 と も述 べ て い
る68。
先に 、セ ミナー の 中で 最 も重視 され るの は ア チ ュ
ー ン メ ン ト、 そ して シ ン ボ ル とマ
ン トラだ と述べ たが 、 よ く見れ ば 「アチ ュー
ン メ ン トさえ受 ければ十分」 とい う立場
もあれば 、「ア チ ュ
ー ン メ ン トだ けで は不十分」 とい う立場 もある 69。 シ ン ボル やマ ン
トラ に つ い て も同様の こ とが い える70。
また 、 た とえばフ ァース ト ・デ ィ グ リー
、 セ カ ン ド・デ ィ グ リー
の セ ミナー を受け
る間隔につ い て も、「・… 少 なくと も 3 ヵ月以上の 時間が経過 して い る必 要が あ る 。 そ
れ よ り短 い 期間は例外的な状況以外許 されない 71」「… ・1 かA か ら3 か月の 間隔をお
き、エ ネル ギー
に よっ て 引き起 こ され た 内的プ ロ セ ス が完了す るの を待ちます72」 と
す る立揚 もあるが 、海外 レイ キで は 両デ ィ グ リーに相 当す る内容 を連続 して行 うの が
一般 的に な っ て い る73 とい っ た相違 が 随処 にみ られ る 。
68 [土居 1998:57】。
69 アチ ュー
ン メ ン トを遠 く離れ た場所か ら遠隔で 行 うこ とも可能で あ る とする説が
あ り、 い くっ か の ホ ーム ペ ージで はそ の よ うな内容が掲載 され て い る。 しか し筆者が
見 る限 り、 レイ キ本には その よ うな主張はない。
こ の 点に つ い て土居は 、 セ ミナーの
内容は通信講座で 、 遠隔ア チ ュー
ン メン トや遠隔霊授 で エ ネル ギーを伝達す るこ と も
可能だ と述べ なが ら、「しか し 、 ク リア しなけれ ばな らない の は、技術的な問題だけで
は あ りませ ん 。 技術 よ り大切 なもの は 、レ イ キ にお い て は 臼井先生 の 心で す。
… ・臼
井 霊気療法 におい て は 、 遠隔伝授 ・通信伝授な どは存在せ ず 、 『指導者が レ イキ と共鳴して 高い 波動の 場をっ く り、 そ こ に受講者を招 き入れ 、 人格の 触れ 合い を通 じて エ ネル ギー を伝達する』 とい うの が 、臼井先生以来の 伝統で す」 ([土居 2005 :59】) と述べ
て い る 。
70 本稿 「は じめに」 で示 した レイ キ の 10 大特徴の (1)(2)の 内容な どか らすれば 、「ア
チ ュー ン メ ン トさえ受けれ ば よい 」 とい う考えが 生 じるの は当然 ともい えよ う。
71 [ミ ュ ラー & ギ ュ ン タ ー 1999 :41亅。72 [ホ ナ ヴォ グ ト1998:52】。
73 田崎は、 ヨ ーロ ッ パ の あるベ テ ラ ン の レ イ キ ・マ ス タ
ーの 主張 として 、 フ ァ
ース トか らセ カ ン ドの 間は 3 か月以上、セ カ ン ドか らサ ー ドの 間は 3 年以上 、 サー ドか らマ
ス ターの 間は 6年以上 と伝えて い る[田崎 1999:44】。 また 山 口 の 直伝霊気 で も、 両デ
ィ グリー
にほ ぼ相 当す る内容が連続 して 3 日間で伝授 され て い る 。
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5.レイキの実際(ハ ンド・ ポジション 、 チャクラ、 適用範囲、 他の技法との 関係 … ・)
レ イ キで 自分や他 人を癒す こ と (施術) は、一
般 にセ ッ シ ョ ン 、 トリー
トメ ン ト、
あるい は ヒ ー リン グな ど と呼ばれ る 。
セ ッ シ ョ ン の 基本は ハ ン ド ・ポジシ ョ ンで あ り、ほ とん どの 本が 言及 して い る。 そ
して 、 基本 となるポジシ ョ ン を解説 しなが らも 、 そ の ヴァ リエ ーシ ョ ン を述 べ た り 、
緊急の 場合は この 限 りで は ない とい う注釈 を述 べ た りと、ケース ・バ イ ・ケ ー
ス で 柔
軟に対応で きる とい う立場 を とっ て い る点 は共通 して い る。 ただ し 、 そ の 柔軟さの 程
度に は大きな違い が見 られ る 。 極めて柔軟な態度を認 め る立場もあるが 、
一方で 「緊
急事態や事故 、 あるい は短時間の トリー
トメ ン トが必 要 とされ るよ うな例外的な状況
以外 はすべ て 、 レイキは最初か ら最後 まで通 しで 行われ る74」 とす る立場 もある 。
また 、 基本 とされるハ ン ド ・ ポジシ ョ ン の数 も 、 必ずしも一致 して い ない 。 多くの
揚合、 自 らに行 うヒー
リン グで は 12ポジ シ ョ ン とされ るが 、 例外 もある75。
こ の ハ ン ド・ポジシ ョ ン と密接に関係する の が チ ャ ク ラで ある 。 チ ャ ク ラ とは人体
の 中に あるエ ネル ギーの セ ン ター
ともい える もの で 、通常は あま り機能 して い ない 。
これ を活性化す る こ とで健康 に なれ る 、 あるい は特別 な能力 が得 られ る とされ る 。 も
とも とはイ ン ドで 伝承 され て きた もの だが 、 現在で は西洋に も広ま りっ っ ある 。 この
チ ャ ク ラに言及 し 、ハ ン ド ・ ポジシ ョ ン をチ ャ ク ラ との 関係で説明す るこ とが 多く 、
チ ャ ク ラに ま っ た く言及 しない もの は極めて 少 ない 76。 さらには、 エ
ーテ ル 体、ア ス
トラル 体、 メ ン タル 体、 コ ーザル 体とい っ た肉体 とは別の (ただ し密接に 関係 す る)
「体」 とレ イ キ を関連づ けるもの もあ る77。
さて 、セ ッ シ ョ ン に際して は 、 施術す る側 は何の 工 夫 も努力 もい らない とされ る78
。
それ は、 レイキの エ ネル ギー
がい わば宇宙エ ネル ギーで あ り 、 施術者の エ ネル ギーで
は ない こ とに よる 。レイキで は施術者 の エ ネル ギー を使 わない ため 、 施術者が疲れ る
74 [ミ ュ ラー
& ギ ュ ン ター 1999 :74】。
75 ハ ン ド ・ポ ジ シ ョ ン は通 常、ヘッ ド (頭)、 フ ロ ン ト (身体前面)、バ ッ ク (身体
背 面)に分け て説明 され る 。 12 ポジシ ョ ン の 場合は各 4 ポジシ ョ ン 。 他者に対 して行
う場合 、 ポ ジシ ョ ン の 数は あま り一致せず 、 【チ ャ
ーリッ シ ュ & ロ バ ー トシ ョ
ー
2004 :102 −1251の よ うに足 (レ ッ グ)まで 含めて 27 ポ ジ シ ョ ン と してい るもの もある。
76 海外 レ イ キで はチャ クラに言及す るの が 一般 的で ある。 また上 野の神伝 レイ キの よ
うに 、 国内の伝統を極め て重 視す る 立場で も 、 や は りチ ャ ク ラ へ の 言及が 見 られ る [上
野 1997:125】077 [松 下 2007】。 上野は 、
エー
テル 体 (幽体)、ア ス トラル 体 (微細身)につ い て 語 っ
て い る ([上 野 1997:124・125】)。
78 本稿 「は じめに 」 で 示 した レ イ キ の 10 大特徴(3)(4)(8)な どに 、 そ の こ とが述べ ら
れて い る 。 また(5)もこ れに 関連す る とい え よ う。
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こ とはない。 む しろ宇宙エ ネル ギー
の 中継を行 うこ とで、か えっ て エ ネル ギーに満ち
て くる とい う。 この 点にっ い て も、特 に異論は ない。
こ れが レ イキの 大 きな特徴で あ り魅力 で もあ るが 、 実際に は セ ッシ ョ ン の 前あるい
は 日頃か らの、 何 らか の 工夫や努力 を勧めて い る こ とも少な くない 。 多くの 本 に紹介
され て い るの が 、 臼井 の 教え とされ る 「招福の 秘法 ・ 万病の 霊薬亅 (通称 :五 戒)で あ
る 。 こ れ は、 「今 日丈 けは 怒 るな 心配 すな 感 謝 して 業に はけめ 、 人 に親切 に
(朝夕合唱 して 心 に念 じ 口に唱へ よ)」 とい うもの で 、 明 らか に精神 的な修養 を求 めた
もの だ とい える 。 その 他に も、 さま ざま な工 夫 が説かれ て お り、 た とえばホ ナ ヴォ グ
トは 「送 り手で あるあなたはただの チャネル にすぎず 、 施術の 結果には何の 影響 も持
た ない の で す」 と述 べ なが らも 、セ ッ シ ョ ン の 前の 瞑想 を勧めて い る79
。
こ こ まで 、 人 間を対象に した レ イキ にばか り言及 して きたが 、レ イ キ は宇宙エ ネル
ギー だ とする立場か らすれば、その 恩恵 を受けるの は人 間ばか りで はない。 従 っ て 、
レ イ キの 対象 には人 間以外の 存在 も含まれ る。 具体 的には動物 や植物 、 さらに は無生
物 とい うこ とに なる80。 動植物に言及 して い ない 本 も少 な くない が 、 それ は文宇通 り
「言及 して い ない 」 だ け ら しい。 動植物 へ の レイ キを否定 して い る本は、筆者が見 る
限 り存在 しない 。
さて 、 レイ キが短期間に 、 これ ほ ど多様な展 開を見せ て い る こ と自体が、 レ イキの
教 え (?)は非常に柔軟で あ り、他の ヒ ー リン グの 技法 ・ 思想な どとの 組み合わせ が
容 易で あ る こ とを証 明 して い る とい え る 。 大半の 本は 、 こ の こ とを積極的 にア ピ ール
して い る。 そ の い くつ か 見て み よ う。「レ イ キは、ほ か の どんな健康管理 療法と も併用
で き る、 自然 なエ ネル ギーの バ ラン ス とその 再生の テ ク ニ ッ クで 、 ま た人間的成長を
うながす他 の 療法 との 併用 も同様で す 。
81」 「マ ッ サージ 、 足の リフ レ ク ソ ロ ジー (反
79 「セ ッ シ ョ ン の 前に は 、 瞑想の 時間を持 ちま し ょ う。 そ うす るこ とに よ っ て 、あな
た もヒ ー リーも愛に包まれ、 リラ ッ クス し 、 余分 な力が 抜 けます 。 送 り手 で あるあな
た はた だの チ ャネル にす ぎず 、 施術の 結果に は何の 影響も持 たない の です 。ヒー
リー
が 吸収す るエ ネル ギー量は その 人 の 必要に応 じて 決まりますが 、 身体が癒 しの エ ネル
ギーを受 け入れ るまで にやや時間が か か る揚合が あ ります」(【ホナ ヴォ グ ト1998 :58])。
それ 以外 に も 、 事前に行 うべ き さまざまなア ドバ イ ス を して い る ([ホ ナ ヴォ グ ト1998 :64】)。
「レ イ キ ・ ヒ ーリン グを行 う前に は少 し時間 を取 っ て 心 を落 ち着け 、
レイ
キ ・エ ネル ギーの 流れ に神経を集 中させ るた めの 軽い エ クササイズ を行い ま しょ う」
([チ ャー リ ッ シ ュ & ロ バ ー
トシ ョー2004:98】)。
80 [レイ 1987】は 、「ペ ッ ト ・植 物 とレイ キ」 とい う1章を設 け てい る。 [ミ ュ ラー& ギ
ュ ン ター1999】で は 、
「動物 へ の レ イ キ ・トリー
トメ ン ト」 「植物 、 鉱物、無機物 へ の
レ イ キ ・トリー
トメン ト」 「飲み物 、 食べ 物に レ イ キを活用する」 とい う章をそれぞれ
設けて い る。 また【土居 1998】で は 「動物 へ の 霊気」 「植 物 へ の 霊気」、 [上野 1997]で は
「動植物や鉱物 へ の レ イ キ の 利用法」 とい っ た項 目を設 けて い る。 。
81 [レ イ 1987 :53]。
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射療法)、指圧 、鍼、 カイ ロ プ ラクテ ィ ッ ク 、ブルー ジ ン グセ ラ ピー
、 リン パ 腺浄化 、
精神療法な ど、 あ らゆる代替療法に対 して レ イ キは効果的で ある 。
82」 「霊 気は 自由性
が 高く、 他の ヒー
リン グや 瞑想法 と併用 した り 、 ミ ッ クス した入 りす るこ とが容易 に
で きます83。 」 この よ うに 、 他の 療法 と併用 で き、 しか もマ イナ ス 面がない とされ る こ
とも 、レイ キの 大きな特徴の
一つ で ある。
こ の よ うな考えに基づ くの で あろ うが 、レ イ キ に は さま ざまな 「流派」 が あ り 、 既
に言及 した 現代 レ イ キ、神伝 レイ キ、直伝霊気 な どの 他に も、 た くさん の 「○ ○ レ イ
キ」 が存在する 。 青木は 、「「レ イ ドウ」 とともに幸せ にな る力 (幸力)を授か っ た」
と して 、レ イ ドウ ・ レ イキを主張 して い る84
。 またやわ らぎの会 レイ キ療法士学院の
高木 明は 、 レ イ キ法 ・や わ らぎ法 ・宙心法を総合 した 「やわ らぎレイ キ」 を主張 して
い る 。 や わ らぎ法 とは 心身 をやわ らか くす るもの、 宙心法 とは 宇宙 と
一体化す るもの
で ある とい う85。 またマ ジカル シ ン デ レ ラの 松下仁美は 、
「ヒ トミ ・オ リジナル 」 と し
て 、 ア ロ マ ・レイキ、パ ワー
ス トー ン ・レイ キ に つ い て その 著書の 中で 述べ て い る86。
6.レイキと宗教
レイキは しば しば 「あや しい 」 「あぶ ない 」 とい う目で 見 られ る 。 現代の 日本で 広 く
使われて い る意味で い えば、 「宗教的 (宗教 っ ぽい )」 とい うこ とに なろ う。 最後に こ
の 点 につ い て 見て い こ う。 なお 、こ こ で 「宗教 とは何か」 とい う根本的な問題 に 踏み
込む つ も りはない 。
一般的 に 「宗教的 (宗教っ ぽい )」 と指摘 され る (指摘され そ うな)
部分 を中心 に検討す る こ とにする 。 以下で は レ イ キ の 宗教性、 臼井 の 信仰 、他 の (宗
教的 とされ る)療法 との 関係 に つ い て 、順に 見て い くこ とに しよ う。
まずは レ イ キの 宗教性 にっ い て だが 、
一般に海外で書か れた本 で は 、 特定の 教義が
ない 、信仰が必要ない、 とい っ た形で 「宗教で は ない 」 とい うこ とが 強調 され る傾 向
に ある 。 しか し 「宗教で は ない 」 とい っ て も、「い か な る宗教 とも無関係」 とい うこ と
で は なく、む しろ逆 で ある らしい。 そ の 多 くは 、
レイ キは 特定の 宗教で はない か らこ
そ 、 さま ざまな宗教の 信者に も矛 盾な く受け容れ られ る とい っ た説 明がな され て お り、
82 [ミュ ラー& ギ ュ ン ター 1999 :12−13】。83 【田崎 1999】。 こ の 他 、 本稿 「は じめに」 で 示 した レ イ キの 10 大特徴(7)も同様の 内
容だ とい える。
84 青木は 、 手術 を前に して 瞑想 を行 っ て い た夜 、「・… 空の 星がい っ もの 何倍 もの 明
る さで輝き 、 周囲の 草木 が 自然発光 した よ うに光 っ て 1 い た とい う不 思議 な体験 を し
て い る。 そ の 際 、「「レ イ ドウ」 とい う声が 聞こ え 、 そ の 光が 虫の よ うに私 の か らだ に
飛 び 込ん で き」 た とい う ([青木 1999:221)。
85 [高木 2007 :220 −221】[高木 2007a :136・141】。
86 【松 下 20071。
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む し ろレイ キ が宗教 と積極的に 関わ り得 るもの で ある こ とが強調 され て い る87。 特に
レ イ は 、レイ キ の 本全体を使 っ て積極的 に ニ ュ
ー エ イ ジに つ い て の 自説 を展 開 してい
る88。
国内向けの 本で は、宗教には言及 しない もの が多 く、言及す る とすれ ば、「レイ キは
宗教的だ」 とす る批 判に対する反論 (レ イキ の 擁護)が 中心 となる。 現在で は 、 西洋
現代医学以外の 方法で病気 が治 る とい うこ と 、 そ の こ と 自体が 「宗教的」 と見 られ る
傾向にあ る 。 こ うい っ た批判に つ い て は 、代替医療やホ リス テ ィ ッ ク ヒー リン グの 存
在 を指摘 し 、 そ の 中の一
っ と して レイキを位置づ ける とい っ た説明 もなされて い る89。
次に 臼井の 信仰につ い て だが 、 海外 レ イ キ にお い て 臼井が キ リス ト教徒、 しか も聖
職者 とされて い る こ とは 、 既 に 見た とお りで ある。 これ に対する反論も既に 見て きた
が 、 その 場合で も臼井が 仏教や キ リス ト教な どの 宗教に通 じて い た こ とは記述 され て
い るgo。 臼井の 生涯 に言及 しない 揚合は別だが 、 生涯 に言及 して い る場合に は ほ ぼ例
外 な く、 臼井が宗教 と無縁 の 人物 で はなか っ た こ とが強調 され てい る。 これ は、「その
よ うな人物だ か らこ そ レイキの創始者 (再発 見者)にな りえ た」 とい う解釈が背景に
あ る もの と推測 され る 。
最後に 、 他 の (宗教的と され る)療法 との 関係 につ い て見てい くこ とに しよ う。 手
を用 い て ヒ ー リン グを行 うとい う技術 は、世界各地 に存在する91。 海外の 本 (訳書)
で は 、 レイ キ は普遍 的な もの で あるこ とが強調 され て お り、 釈迦 (ゴー
タマ ・ブ ッ ダ)
やイ エ ス が 行 っ た とされ る癒 し と関連づ け られて い るこ とは、既に指摘 した とお りで
ある 。
87 「レイキ は宗教で は あ りませ ん 。 また 教義で も主義で もオカ ル トで もあ りませ ん 。・… レ イ キ は信 じない と効か ない とい うシ ス テ ム で は あ りませ ん し 、
マ イ ン ド ・ コ ン
トm −一一ル、 催眠 術や希 望的観測 の 形 の もの で もあ りませ ん 」([レ イ 1987:13])、「また 、
レ イ キはい か なる宗教的 、 瞑想的実践や儀式 とも矛 盾せ ず 、 む しろそれ らの 普遍的なエ ッ セ ン ス をますます豊か に し 、 強め る方向に作用す る」 (【ミ ュ ラー& ギ ュ ン ター
1999 :12])、「レイ キ は宗教 とは関係あ りませ んの で 、 どん な信仰をお 持 ちの 方 で も 、
受 けた り施術 した りする こ とが で きます 。 ある種の ヒー リン グ療法に 見 られ る宗教的
な教義 も定め られて い ませ ん」 (【チ ャー リッ シ ュ & ロ バ ー トシ ョ
ー− 2004 :17】)。
881 レ イ 1987]。
89 [青木 1999】は 「代替医療 と レ イ キ ヒー
リン グの 可能性」、 [神作 2004]は 「医療に活か され るホ リス テ ィ ッ ク ヒー リン グ」 とい う 1 章をそれぞれ設 け てい る。
9D こ の こ とは、彼 の逝 去の 翌年に建 て られ た 「臼井先生 功徳之碑」 で も確認 するこ と
がで きる 。 ま た 「まず 、 臼井先生 は T 教団 の 布 教に 回 られ て い た こ ともあ り… ・」(【上
野 1997 :245】) とい っ た 具体的な記述 も見 られ る 。 なお 、 臼井先生功徳之碑に つ い て
は [土居 1998] [青木 1999亅な どが比較的詳 しい 。
91 た とえば三 浦一郎は 、 「東西 の 『手 あて』療法概観」 として 、 国内外の さま ざまな
「手 あて療法」 を紹介 して い る ([三浦 1995:35−58】)。
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そ の よ うな技法 は国内に も存在す る 。 比 較的よ く知 られた もの だ けで も、 浄霊や真
光の 業な ど多数存在 し 、 その 多 くが 宗教団体と関連 して い る92。 これ らとの 関係が気
に なる所 だ が 、 国内向けの 本で は 、 こ うい っ た 内容に言及 しない もの が大半で あ る 。
その よ うな中で 、 世界救世教の 岡田茂吉の 手か ざ しと臼井の レイ キ につ い て 、「発祥 の
源 は ともな く、 波動の 大元 はおな じ 『光』で す」 とい っ た積極的な発言 があるの は注
目され る93。 また上野 の よ うに 、 大本 の 出 口王 仁三 郎や 、 言霊学者の 山 口志道 、 合気
道の 植芝盛平な どに積極的 に言及 し、 こ れ らと関連づ ける もの もある94。
むすびとして
筆者に は、 「臼井甕男 の 時代の レイ キ とは どの よ うなもの だ っ たの か」 「他の 類似す
る技 法 とは、どの よ うな関係 にある の か 」などなど、 さまざまな疑問がある。 しか し 、
この よ うな疑閙に は当面答えられ そ うにない。 そ の よ うな事情 もあっ て 、 本稿の 目的
は 、 現在の 日本 におい て レ イ キが どの よ うなもの として 紹介 されて い るか 、その 概要
を明 らか にす る こ とに 限定 してい る。 不十分な記述 もあるとは思 うが 、 紙数の 制限の
中で は 、 おお よそ、そ の 目的は果たせ た の で は ない か と考えて い る。
参考文献
足 助次朗 2004 『手当療法 (復刻版)』 ヴォ ル テ ッ クス 有限会社
上野圭一 2003 『補完代替医療入 門』岩波書店
92 三 浦は 国内に つ い て は 、 出 口王仁三郎、谷 口雅春 、 岡田茂吉な どに特に詳 しく言及
して い る ([三浦 1995:35−58,91・121】)。 なお津城寛文 は、本 田親徳 か ら五井 昌久 に至
る (出口 ・ 谷 口 ・岡 田 らを含む)人 々 を 「大本系の 鎮魂行法家」 と して 、 その 行法 に
っ い て詳 しく紹介 ・検討 して い る ([津城 2000】)。93 「臼井氏 と世界救世教の 『手か ざ し』を広 めた 岡 田茂吉氏が 直接的に関わ りあ っ て
い た か ど うか は定か で はあ りませ んが 、 同じよ うなイ ン フ ォ メーシ ョ ン を別 の 形で 受
け取 っ た とも考え られ ます 。 発祥の 源は ともな く、波動 の 大元 はお な じ 『光』です 。
光 をプ リズ ム で 分ける よ うに 、 『レ イ キ』『気功』『真光』な どと称 してい るだけなの で
す」 (【中尾 ・長谷 2005 :78 −79】)。 なお 『発祥の 源は ともなく』は原文 どお り。
94 【上野 1997】。 同書には次の よ うな記述 もある 。「今の 日本の 新興宗教の い くつ か は、
レ イ キを用い て 教えを広 げて い っ たの です 。 た とえば M 教団 、 T 教団 、 そ して二 つ の
S 教団 。 こ の 四教 団だけで も信者数 250 万人 は超 える もの と思われます」 (【上 野
1997:242】)。 なお本文 に述 べ た もの 以外に 、「・… 世界救世教か ら分派 して J ヒ ー
リ
ン グの 名で手 か ざ し療法を教えて い た 中島多加仁 氏や、京都の 山口忠夫氏 (現在 は Jヒー
リン グを離れ 、 直伝霊気を教えて い る)な どとも交流 し 、 レイ キ とは異 なる手 当
や4 か ざしの 世界が あ るこ とを知 りま した」(【土居 1998 :245】)とい っ た記述 もある。
なお 、 J ヒ ー リン グの 起源は世界救世教の 浄霊 にあ り、 ア メ リカ で 「JOHREI サイ エ
ン ス 」 と呼ばれて い る とい う。 (詳 し くは [中島 1996】[中島 1998】な どを参照の こ と。 )
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上野正 春 1997 『神伝 レイ キの 秘密一今蘇 る、幻の 心身健康法 「レイ キ 」』た ま 出
版
神作彌生 2004 『「癒 しの 力」が 目覚め る 5 つ の 扉一
レイキをべ 一ス とした ホ リス
テ ィ ッ ク ヒー
リン グ』現代書林
シ ャ フ リー, サ ンデ イ
・リア 2006 『レイキー
誰に で も出来る、 自然能力 を引き
出 し健康で 幸福な ライ フ 』産調出版
創工 能力開発研究所編 1999 『レイ キで 変わ っ た私 の 心 とか らだ 一本 当の 自分を
取 り戻 した 人々 か らの メ ッ セ ー ジ』オーエ ス 出版
台夕起子 1996 『驚異の レ イキ療法一宇宙エ ネル ギーで病気を癒す 1』 廣済 堂出
版
高木明 2007 『レイ キで人生が 楽 し く変わ る !一
やわ らぎ レイ キ』長崎出版
高木明 2007a 『やわ らぎレ イ キ ・セ ミナー ノー ト』木楽舎
田崎美雄 1999 『霊気 ヒー リン グ事典』た ま 出版
チ ャー
リッ シ ュ, ア ン & ロ バ ー トシ ョ
ー,
ア ン ジ ェ ラ 2004 『レ イ キ ー日本発
祥 の 霊気 に よる ヒー リン グ& セ ラ ピ ー』産調 出版
チ ャー
リッ シ ュ, ア ン & ロ バ ー トシ ョ
ー, ア ン ジ ェ ラ 2006 『レイ キ ー
日本発
祥の 霊気 に よるヒー
リン グ& セ ラ ピ ー (新装普及版)』産調出版
津城寛文 2000 『鎮魂行法論一
近代新党世界 の 霊魂論 と身体論 (新装版)』春秋社
土居裕 1998 『癒 しの 現代霊気法 一伝統技法と西洋式レ イ キの神 髄』元就出版社
土居裕 2005 『レ イキー宇宙に満ちるエ ネル ギー
』元就 出版社
富田魁二 1999 『靈氣 と仁術一富田流手 あて 療法 (復刻版)』BAB ジ ャ パ ン
中尾豊 & 長谷 マ リ 2005 『癒 しの 風』たま出版
中島多加仁 1996 『超宗教一
医 学 ・農業 ・ 芸術の 革命児 岡 田茂吉の 霊子科学』
た ま出版
中島多加 仁 1998 『ス ピ リチ ュ ア ル ・エ ナジー 「癒 し」 の メカ ニ ズ ム を解剖する』
た ま出版
バ ギン ス キ ー,
ボ ド・J.& シ ャ ラモ ン,
シ ャ リラ 1996 『レ イ キ とは何 か 一新
しい 入生 の 次元 を開 く魂を癒す た めに』BAB ジ ャ パ ン
パ ギン ス キー, ボ ド ・J.& シ ャ ラモ ン
, シ ャ リラ 2007 『Reiki basic〜 レ イ キ
とは何か』BAB ジャ パ ン
保坂栄之介 1997 『レ イ キ ・ヒー
リン グー
心身 を癒 し 、 幸福を もた らす エ ネル ギ
ー』PHP 研 究所
保坂栄之 介 1997 『だ れで もで きる霊気 ヒ ーリン グー
二 日間で 出来る心 とか らだ
の調 和 と癒 し』PHP 研 究所
ホナ ヴォ グ ト, タ ン マ ヤ 1998 『レ イ キ を活 か す一
人生 を前向きに こ の エ ネル
20
N 工工一Eleotronlo Llbrary
Yokkaichi University
NII-Electronic Library Service
Yokkalohl Unlverslty
ギーパ ワー
を生かす 』産調 出版
ホナ ヴォ グ ト, タ ン マ ヤ 2002 『レ イキ と瞑想一よ り深 く よ り高い レ ベ ル へ 』
産調出版
ホナ ヴォ グ ト, タ ン マ ヤ 2006 『感情を癒す レ イキ ー人生 の 不安や 日常の トラブ
ル か らくる不幸な感情を安らか にす る霊気』産調出版
ホナ ヴォ グ ト, タ ン マ ヤ & ニ ーマ ン , キ ャ ロ ル 2005 『忙 しい あなた の た め の
クイ ッ ク レ イ キ ー自宅 で もオ フ ィ ス で も手軽 にで きる、 シ ン プル ・ヒー
リン グ』
産調出版
松下仁美 2007 『レ イ キ ー宇宙を味方につ けるス ピ リチ ュ ア ル ・ メ ソ ッ ド』ア ル
マ ッ ト (国際語学社 )
三 浦一
郎 1995 『奇蹟の ハ ン ド ・ヒ ー リン グーあなた の 手 に隠され た超エ ネル ギ
ー』たま出版
三 井 甲之 2003 『手 の ひ ら療治 (復刻版)』 ヴォ ル テ ッ クス 有限会社
三 橋一
夫 2001 『手 の ひ らが病気 を治す』中央アー ト出版社
宮沢邦夫 & 望月俊孝 2006 『レ イ キ とReiki一西洋 と東洋 の 視点か ら見 る“
レ イ
キの 現在”
』BAB ジ ャパ ン
ミ ュ ラー, ブ リギ ッ テ & ギ ュ ン ター
,ホル ス ト・H .1999 『レイ キ完全本
一あ
なた を他人 を 世界す べ て を癒す た めに』BAB ジ ャパ ン
望月俊孝 1995 『癒 しの 手一宇宙エ ネル ギ
ー 「レ イキ」 活用法』た ま出版
望月俊孝 1997 『宇宙エ ネル ギー 「レイ キ」 の 奇蹟』 ごま書房
望月俊孝 2001 『超カ ン タ ン ・癒 しの 手一 2 日で
“
気”
が 出る 「レイ キ」 活用法』
た ま出版
望月俊孝 2007 『癒 しの 手一 「レ イ キ」 の 力で 、 自分 も人 も幸せ になれ る !』 ゴ
マ ブ ッ クス
山口忠夫 2003 『直傳霊気一 レ イ キの 真実 と歩み』BAB ジ ャ パ ン
山口忠夫 2007 『直慱霊気一
レイ キの 真実 と歩み (新装改訂版)』BAB ジャ パ ン
レ イ ,バ ーバ ラ 1987 『レイ キ療法一宇宙エ ネル ギー
の 活用』た ま 出版
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