レプリカ法と線型計画法に見る
無限小と無限大
奈良女子大学理学部
角田秀一郎
表紙
線型計画法の作成する点列を使ったカオスの構成(佐伯祐子との共同研究)
単体法における退化現象の回避 ----1 .背理法:矛盾に持ち込む方法2 .無限小を使うやり方
一方,境界を探索していく単体法に対して,80 年代中頃から内点法が脚光を浴び,双対内点法と進化していく(ホットな分野)
最適解
単体法と双対内点法をミックスさせる
計画法
原型:単体法の退化現象と無限小による回避
線型計画問題
ベクトル
行列
+
問題
双対内点法の統一的扱い
……
記号
双対
実行可能解 から
により,あらたな実行可能解
は適当な実数
解の改善
列ベクトル に対して, ベクトル を
で定義すると,
が成り立つ(佐伯).
は M の, は N の列ベクトル
これを使って解の収束等の評価を行う.
ベクトル
無限小の導入
ここで場合が分かれる.
の成分に 0 が少ないとき ε に無関係に解が移動
の成分に 0 が多いとき解は ε のオーダーでのみ変化
より具体的には
によって決まる.
無限小
点列とプロセス
はじめは内点を移動し,境界に到達する.しばらく境界上を移動して,次に動かなくなる.しばらくそのまま.突然,内点方向に飛び出す.以上のプロセスを繰り返す.
このように,内点では ε は点列には影響しないが,ε オーダーの違いは境界に行ったとき本質的となる.
飛び出すタイミングの評価はできるが,決定はできない.
点の動き
最悪のケースと♪の導入
のとき, ε オーダーで改善されていき, ε オーダーで元の
よりも改善されることが分かる.
これ以降, ε に小さい数を代入すれば,いつでも
よりも良い解が得られる. ε のままであれば,そのまま.
そこで n とは書けない大きな自然数 を導入する.
これによって通常の「数 」だけ改良されるとしてよい.
♪
前半のまとめ
このカオス的点列が境界から飛び出す瞬間が存在するのは前の評価を使ってできるが,いつかは原理的に確定できない.「存在定理」があるのみ.
漸化式は内部でも境界でもひとつの式で書け, の導入によりひとつの操作を行うだけとなる.
計画法の解法としても を適切にとってやれば,多項式オーダーで収束し,かつ,厳密解を得ることになる.
まとめ
レプリカ法と Parisi 解の無限小
分配関数 Z の計算: lnZ は難しいが, は計算できることがある.そこで式
を参考に
とするのをレプリカ法という.ただし,自然数 n だけで定義されたものに0を代入するので,そのままでは数学的裏付けはない.
レプリカ
レプリカ法
:ランダム変数(の集まり)
であるが,レプリカ法では
のあと
となり,順序交換が問題となる.
さらにレプリカ法には Parisi 解という面白い解がある.
今日の話は, Parisi 解を正当化する体系を作り,それを元にレプリカ法を
再構成すること.
由緒正しき方法は解析接続すること.しかし,いまの場合,解析接続の
前に関数自体を決定することが先決.
Parisi 解
レプリカ対称解:鞍点での値がレプリカ指標によらない解
としたのがレプリカ対称解
対称解以外で知られているのは Parisi 解のみ
対称解
€
m1
€
m1 は の約数,... を無限大にする.
€
nこの大小を反転させる… ( とするとき )
€
n→0
2 ステップ目以下同様に無限回繰り返す€
Im はすべての成分 1
€
n
Parisi 解 2
無限小=無限大の枠組み
€
p は十分大きな素数で の形
€
p = k!a+1
無限小
€
n→∞
€
k→∞ と を両立させることができる. 無限大は
多項式関係に強い数式処理ソフトの中には大きな素数を0とするものがある.当然,大きな数を扱う場合バグが出やすい.そこを逆に積極的に使う.
レプリカ法はシミュレーションと矛盾がない.これを「大きな」素数の存在によって説明できるかもしれない.シミュレーションはレプリカ法を使っているわけではないが,計算機での実際の数値計算で「意図せず」大きな素体での計算をしているかもしれない.
これを実証できると面白い.
€
k
€
n = 0
解説
€
k→∞ とするためには p を有限のまま無限大にしなければならない.
pを n とは書けないが有限の「素数 」に極限する.このとき k を「無限大」に飛ばすことができる.
上の議論が気に入らない人はあくまで近似のみを考えれば良い.しかし,それは実数を認めず,あくまで有理数ですべてを考えることに等しい.
♪2
形式的 Parisi 解
Parisi 解では のみ変数. も二重性をもつようにすると
新しい解が得られるか.
はmodとしては不変だが,そのまま自然数で考えると変数と
することは可能.
この方法で,通常の有限の解となり,かつ, Parisi 解と異なる
も
のが得られるかどうか不明.
€
m
€
q
€
q
€
qi = (ai,k + pibi ) で では積分が発散するが, では収束する
ようにできる.その上で Parisi 解とは異なる形で 0 に極限する.
€
qi
€
ai,k
形式解
N と n の順序交換の問題
を計算するとき,まず n を無限大にする.このとき,被積分
関数の n のある種のオーダーが有限となれば, N との順序交換は
可能となる.レプリカ対称解や Parisi 解はそうなっている.
したがって,この交換問題は n の二重性を考慮することで解決するもの
と思われる.
可換性
後半のまとめ
Parisi 解を中心にしてレプリカ法を再考察
「変数」の「解析接続」
変数の二重性を使用( 1 点のみに解析接続)
Parisi 解とレプリカ法をある程度説明できる.
課題:形式的 Parisi 解のようなあらたな解が構成できるか.
まとめ 2
replica1
replica2
たとえば,
こんな形. kでは収束せず, n では収束.
最後に n=0 に解析接続.
形式 Parisi