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群衆の知恵集団的知性と Wikiコラボレーション 塚本 生 Published: 2010.01.25 Updated : 2010.02.16
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群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

Oct 30, 2014

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江渡浩一郎氏は「『集合知』という言葉は群衆の知恵と集団的知性、二つの意味合いで使われている」と指摘する。集合知とは何か、両者の混同の弊害は、そしてどのように集合知の競創へ向けて、Wikiを活用していくべきかを考察する。
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Page 1: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

塚本牧生

Published: 2010.01.25

Updated : 2010.02.16

Page 2: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

群衆の知恵と集団的知性

“江渡浩一郎さんの「Wikiとコラボレーションの過去・未来」において、集団的知性(Collective Intelligence)と群衆の知恵(Wisdom of Crowds)の二つが「集合知」として混同されてい

るという話にはっとした。前者がエリート主義的な傾向があるのに対して、後者は反エリート主義的な傾向があり、確かに両者は同じように扱ってはまずい。”

yomoyomo・「WikiWay」訳者・Wired Visionに「情報共有の未来」連載中

Page 3: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

集合知とは何か

• 集合知は主に二つの意味合いで使われている。

• 集団的知性(Collective Intelligence、CI)とは、多くの個人の協力と競争の中から、その集団自体に知能、精神が存在するかのように見える知性である。(ja.wikipedia.com)

• 一握りの天才や、専門家が下す判断よりも、普通の人の普通の集団の下す判断のほうが実は賢い(『「みんなの意見」は案外正しい』ジェームス・スロウィッキー)

• 両者の意味が混じって使われている。

江渡江渡江渡江渡浩一郎浩一郎浩一郎浩一郎・メディア・アーティスト/研究者。・近著に「パターン、Wiki、XP」

Page 4: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

「どっちが」ではなく

「群衆の知恵」と「集団的知性」、江渡さんは対立させてないですよね。それともどちらかにネガティブな印象がありますか?

ありませんよ。どっちも大事です。

集団知性:エリート主義的な傾向群衆の知恵:反エリート主義的/反権威的な傾向

Page 5: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

集合知

• 「群衆の知恵」「集団的知性」を考える

• 両者をともに論じる/求めるのは良い

–それぞれまったく別の意義とメカニズム

• 両者を同じように扱ってはまずい

– メカニズムの理解を妨げる

–アプローチの検討を誤る

むしろ「集団的知性=権威主義的=ヨクナイ!」的なイメージは心配

Page 6: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

群衆の知恵

Wisdom of Crowds

Page 7: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

「群衆の知恵」のメカニズム

• 多数の意見を求める

– 「多様性」「独立性」「分散性」が重要

– 個人の判断=情報+間違い

• これを集約する

– ベクトルのあった正しい「情報」は増幅

– ベクトルのばらばらな「間違い」は相殺「多様性」「独立性」「分散性」が十分であれば間違い≒0まで相殺されきる

– 群衆の知恵=情報(だけが残る)

「みんなの意見」は案外正しいby ジェームズ・スロウィッキー,

角川文庫, 2009/10

※原著は2005年、邦訳(ハードカバー)は2006年

Page 8: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

情報カスケーディング

• 個人は「賢い模倣」を意図して周囲をまねる。– 学習としては有用。

• 模倣の連鎖は「情報カスケーディング」を起こす。– 集団にとっては良い面も(悪い面も)ある。

• 「群衆の知恵」は生まない。– 意見の「独立性」は失われる。

http://d.hatena.ne.jp/starocker/20060206/p1

はてブのホットエントリははてブのホットエントリははてブのホットエントリははてブのホットエントリは集合知とは無関係集合知とは無関係集合知とは無関係集合知とは無関係

Page 9: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

集約のメカニズム

• 株式市場– 無数の個人の意見が「売値」「買値」として流通

– 意見をリアルタイムに集約

– トータルな「みんなの意見」である「株価」を決定

• ソーシャルメディアと集約性– 新しい「意見の流通の場」

– 集約の仕組みがあれば集合知を形成• なければ「意見の散在」か「声の大きい人が勝つ」場で終わる

1996年の「チャレンジャー」

爆発事故。株式市場は原因を窺わせる情報すらない中、その日のうちに発射に関わった主要4

社のうち3社の株価を2%程

度下げ、後に責任が認められた残る1社の株価だけは12%も下落させた。

Page 10: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

「群衆の知恵」の実装

• パターン

– フラットな意見表明の場

– 「分散性」の実現

– 「集約性」の仕組み

• アンチパターン

–情報カスケーディング

– 「集約性」の欠如

Page 11: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

集団的知性

Collective Intelligence

Page 12: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

群衆の知恵と集団の能力

• 群衆の知恵– みんながバラバラに(isolated)判断を下す

– みんなの判断を収集、統計処理(aggregate)する

• トリオバンドに「100人に1人」のピアノを迎えるa. 100人の群衆がバラバラに演奏し、音を重ねる?

b. 100人のピアニストそれぞれとセッションしてみる?

c. そのセッションを公開し、リトライも受け付ける?

• 「群衆の知恵」とは異なる集団の能力– 多様なチャレンジが行われる

– お互いに学ぶ

Page 13: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

「集団的知性」のメカニズム

• 「歩み寄りと合意という、とても古いメカニズム」(Raph Koster)– コミュニティ内で情報、知見、成果を共有する– お互いの知見を修正し、評価しあい、そして理解の一致に至る

• 多様性、成果共有、競争、洗練– Wikipediaの継続的な洗練– 研究者の論文による情報共有と競争– マスワークス社のMATLABコンテスト

• 群衆の知恵の「多様性、分散性、集約」とは異なる

“Collective Intelligence:

Mankind's Emerging

World in Cyberspace”

by Pierre Levy, 1999/12

Page 14: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

Web2.0世界のカルテット

• GarageBandとGarageBand Users Club– 「リミックス」というバンド参加

• ピアノソロに「音を足す」、インストに「歌詞を足す」• 無数の「A meets B」が何度も試される

– 人気曲はピックアップされ、視聴、リミックスを集める• ソーシャルフィルタリング≒ 「群集の知恵」的な淘汰のプロセス

• 初音ミクとニコニコ動画

http://gbuc.net

Page 15: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

アイデアゴラとオープンイノベーション

• InnoCentive– P&Gの「プリングルスへの印刷」で知られる

– 「Open Innovation Marketplace」

– 「研究者のクラウド」(橋本大也)

– 「100,000万の頭脳は1つに勝る」(Boston Globe紙)

– 「人材の市場」「アイデアの広場(アイデアゴラ)」(ウィキノミクス)

• アイデアゴラ– アイデアゴラには「課題を求める解決策」と「解決策を求める課題」がある

– 求職サイトの求職と求人のように、アイデアと発明の「売ります」と「買います」が並ぶ

30%企業が独力解決に至らず、InnoCentiveに持ち込まれ解決された難題

75%解決された難題のうち、ソルバーが答えを「すでに知っていた」もの

Page 16: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

企業内のアイデアゴラ

• Geek Squad USB Flash Drive

– 社内で自社ブランド商品のアイデア募集

– 数百人の社員がアイデアを提示

– さらに多数がブラッシュアップに参加

– 2ヶ月で企画からデザインまで完了

• 企業内のアイデアゴラ– 一定規模の企業はアイデアゴラの母体に

– 場とテーマ(アゴラ)を設置する

– 社員が参加できるような調整を行うGeek Squad™

1GB USB 2.0

Flash Drive

Page 17: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

「集団的知性」の実装

• パターン– 集団の参加のプラットフォーム

• 「指示(要請)をもっとずっと明確に」• 「仕事を小さく分け、それぞれで完結する作業に」

– チャレンジのショーケース

• アンチパターン– ボーダーライン– 「ご意見募集」や「アンケート」– 強力なモデレータ– 声の大きいファシリテータ

Page 18: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

企業とソーシャルメディア

Page 19: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

群衆の知恵と集団的知性

参加者たちが、Surowieckiの群衆の知恵という発想とPierre

Levyの集団的知性という発想の重要な違いをぼかしてしまう

せいで、この議論は混濁し続けている。

Henry Jenkins

・メディア研究者・南カリフォルニア大学教授

「集団的知性」と「群集の知恵」はどちらもゲームデザインの建設的なモデルを提案するが、もしこの2つを混同してしまえば

我々はどこにもたどり着かない。

Page 20: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

アプローチのねじれ

• トップの期待– 集団的知性– ボトムアップの発明・開発的イノベーション(ボトムの活動・成果)

• ボトムの期待– 群衆の知恵– ボトムアップの意思決定イノベーション(トップの活動・成果)

• できあがるもの– 集約性のない意思決定に寄与しない「意見の場」– 誰もいない「人材の市場」

Page 21: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

参考:BeatOffice利用状況調査より

社内Wiki5

アンケートアンケートアンケートアンケート4

Q&A3

日記2

コミュニティ1

Q&A

社内Wiki

4~5

メッセージ3

コミュニティ

日記

1~2

【【【【効果効果効果効果】】】】90%前後の企業から「知識や情報の共有に役

立った」「社内のコミュニケーションが活性化した」との回答

【【【【考察考察考察考察】】】】「風通しの良さ」は招待制のSNSに現れるのに

対し、強制登録の場合、「知識や情報の共有」というナレッジマネージメントに近い効果が現れる傾向

【【【【効果効果効果効果】】】】「社内のコミュニケーション円滑化」が86%と圧

倒的であることから、企業が社内のコミュニケーションを非常に重視している現状

【【【【考察考察考察考察】】】】2年前に比べ社内SNS上でのコミュニケーション

が深まっている

2007年年年年 2009年年年年

• SNSの期待効果、用途はコミュニケーションに集約の傾向

• 「アンケート」なども取り入れられたが、利用頻度は低い

「群衆の知恵」プラットフォームとしてはSomethingが必要

http://www.beat.co.jp/sns_report.html http://press.beat.co.jp/press/2009/12/sns2009.html

Page 22: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

ソーシャルメディアの必要性

• 大前提は群衆の規模大前提は群衆の規模大前提は群衆の規模大前提は群衆の規模– 「集団に何らかの自律性が生じるのは、集団が『クリティカルマス』に達した後であって、そうなる前には『お膳立て』が必要なのだ。」(小飼弾)

– 「クラウドソーシングに用いるユーザー基板の規模として最適なのは、5,000人前後だ。」(アルフィアス・ビンガム)

• マスコミュニケーションの時代マスコミュニケーションの時代マスコミュニケーションの時代マスコミュニケーションの時代– 「このお膳立てこそ、かつてはマスメディアの特権だったとも言える。」(小飼弾)

• マスコラボレーションの時代とソーシャルメディアマスコラボレーションの時代とソーシャルメディアマスコラボレーションの時代とソーシャルメディアマスコラボレーションの時代とソーシャルメディア– 「ネットは不特定多数無限大の意見を吸い上げ集約するアグリゲータだ」(ジェームス・スロウィッキー)

– 「全世界のIBM社員とその家族、大学、ビジネス・パートナー、お客様企業67社を含む、104カ国、15万人以上が[II] インターネット上でアイデアを出し合った」(IBM)

Page 23: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

ソーシャルメディアの特性

• コミュニケーション型– ブログ、SNSなどのコンテンツ蓄積型– マイクロブログやIMなどのコンテンツ揮発型– 群集の参加で成立し、立ち上がりは早い– ソーシャルキャピタル増減を示す間接的な指標値で評価– これまでの取り組みの主流はこちら

• マスコラボレーション型– ソーシャルブックマーク(タギング)、Wiki、コードリポジトリ– 最初に「集団的知性」の発露が必要– 成果物の生産量と利用量で評価可能– 多様なチャレンジと淘汰を必要とし、立ち上がりが遅い

• 「集約性」「公開と再利用」の仕組みの有無が一つの境界線

Page 24: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

クラウドソーシング

• クラウドにアウトソースすることではない• 「クラウドソーシングは、産業時代を席巻していた流れ作業をよしとする思想、フォーディズムと対極」

チームが集合知とコラボレーションすることチームが集合知とコラボレーションすることチームが集合知とコラボレーションすることチームが集合知とコラボレーションすること

クラウドソーシングのルール1. 正しい方式を選ぶ

a. 集団的知性、あるいは群衆の知恵b. 群衆の創造c. 群衆の投票d. 群衆の投資

2. 正しい群衆を選ぶ3. 正しい動機を与える4. 早まってリストラしてはいけない5. ものいわぬ群衆、あるいは慈悲深い独裁者の原則6. ことを単純にし、小さく分ける7. スタージョンの法則を忘れない8. スタージョンの法則を逆手にとって、10%の存在を忘れない9. コミュニティはつねに正しい10. 自分のために群衆に何ができるかではなく、群衆のために自分に何ができるかを

問う

“Crowdsourcing: Why the

Power of the Crowd Is

Driving the Future of

Business”

by Jeff Howe, 2009/10

邦訳:クラウドソーシング

Page 25: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

Wikiコラボレーション

Page 26: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

Wikiとパターン

• WikiPatterns.com– Wikiの導入に見られる「パターン」を収集

– 4つのカテゴリで分類• 人々のパターン(People Patterns)

• 人々のアンチパターン(People Antipatterns)

• 導入のパターン(Adoption Patterns)

• 導入のアンチパターン(Adoption Antipatterns)

– パターンの祖はC2com WikiやMeatball Wikiに見られる

• Stewart Mader「WikiPatterns」(2007, Wiley)– 2007年に書籍化、その後もパターン収集は続く

Page 27: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

Wiki利用者のパターン

• Wikiの推進者– チャンピオン(そのサイトの第一人者、シンボル)– 大使(Wiki非支持者に効果的で決定的な働きかけをする人)

– 後援者またはスポンサー(Wikiの後見人になり、リソース援助する上位者)

• Wikiの貢献者– 貢献者(コンテンツを書くライターと、コンテンツを整える以下のような人たち)– WikiZenマスター(見出し整備や図版追加などビジュアルを整える人)– Wikiの小人(タイポや表現の修正、リンクの追加などをする人)– Wikiの庭師(コンテンツの品質、流れ、総合的な磨き上げに気を配る人)

– ページメンテナー(サイト内でのページの位置づけなどに気を配る人)– メンテナー(サイト全体の構成、活動などに気を配る人)

• Wikiの利用者– 観客

「ライター」に加え、多様な「ガーデナー」の貢献がある。

日本でもライターとは異なる「小人さん」活動をする人がおり、それがWikiサイトの成

功に重要であることは2003年ごろの黎明

期から認識され、議論されてきた。

Page 28: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

コラボレーションとコアグループ

• 「マスコラボレーションにおけるコンテンツ形成プロセスの分析」

– 伊藤諭志、伊藤貴一、熊坂賢次、井庭崇/2007年– 「秀逸な記事」75件の形成プロセスを分析

• 編集者の構成(重複含む)– 「執筆者」は2人以上、平均32人、編集者の8~40%– 「校正者」は20人以上、平均138人、88~100%

– 複数の執筆者、執筆者の倍以上の校正者を持たない秀逸な記事は存在しない

• 秀逸な記事の形成– 少人数で完結した「小規模リレー型」– 少人数のコアを持つ「インタラクション型」

• 「雨氷」は26人の編集者、2人のコア• 「キリスト教」は348人の編集者、4人のコア

– 「大規模リレー型」の秀逸な記事は存在しない秀逸な記事「キリスト教」の入次数分布秀逸な記事「キリスト教」の入次数分布秀逸な記事「キリスト教」の入次数分布秀逸な記事「キリスト教」の入次数分布(「マスコラボレーションにおける(「マスコラボレーションにおける(「マスコラボレーションにおける(「マスコラボレーションにおけるコンテンツ形成プロセスの分析」より)コンテンツ形成プロセスの分析」より)コンテンツ形成プロセスの分析」より)コンテンツ形成プロセスの分析」より)

コラボレーションタイプの概念図コラボレーションタイプの概念図コラボレーションタイプの概念図コラボレーションタイプの概念図(「マスコラボレーションにおける(「マスコラボレーションにおける(「マスコラボレーションにおける(「マスコラボレーションにおけるコンテンツ形成プロセスの分析」より)コンテンツ形成プロセスの分析」より)コンテンツ形成プロセスの分析」より)コンテンツ形成プロセスの分析」より)

Page 29: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

Wikiの競創プロセス

• コラボレーション=集合知の強さコラボレーション=集合知の強さコラボレーション=集合知の強さコラボレーション=集合知の強さ– 秀逸な記事の形成

• 2人以上の執筆(ライターの貢献)

• 20人以上の校正(ガーデナーの貢献)

– 集合知が全ての「単著」ページを凌いでいる

• コンテンツの形成コンテンツの形成コンテンツの形成コンテンツの形成 …………集団的知性集団的知性集団的知性集団的知性– ガーデニングとライティング

– 「一工夫と一足飛びの繰り返し」

• リソースの配分リソースの配分リソースの配分リソースの配分…………群衆の知恵群衆の知恵群衆の知恵群衆の知恵– 秀逸な記事は75件/50万件

– 「群集の創造」「群集の投票」的なリソース配分

秀逸な記事「雨氷」の秀逸な記事「雨氷」の秀逸な記事「雨氷」の秀逸な記事「雨氷」のコラボレーションネットワークコラボレーションネットワークコラボレーションネットワークコラボレーションネットワーク(「マスコラボレーションに(「マスコラボレーションに(「マスコラボレーションに(「マスコラボレーションにおけるコンテンツ形成プロセスおけるコンテンツ形成プロセスおけるコンテンツ形成プロセスおけるコンテンツ形成プロセスの分析」より)の分析」より)の分析」より)の分析」より)

緑は執筆者、赤は執筆者兼校正者、青は校正者、矢印が編集の順序を示す。執筆者は初期に関わった人、継続的に関わっている人、ある時期に一時的に関わる人など様々である。

Page 30: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

Wikipedia

• 正確性はブリタニカに比肩– たくさんの目が誤りを見つけ出す

– 「WikipediaとBritannicaが正確な情報源として同レベル」(“Internet encyclopaedias go head to head”, Nature #438)

• 網羅性の高さ– プロシューマーたちによるページ開設

– 専門家による他ユーザが取り組まないページ開設• “the entry on ‘spin density wave’ was originated

by a physicist.”(“Wiki’s Wild World”, Nature #438)

– アマチュアによるスタブページ開設

Page 31: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

Wikiとパターンと競創の原則

• 江渡浩一郎「パターン、Wiki、XP」(2009, 技術評論社)– パターン、Wiki、XPという一つの歴史物語

• パターンランゲージI建築分野での「パターン」誕生

• プログラミングパターンI プログラミングへの導入

• Wiki Iパターンの共有、競創の環境として誕生

– Wikiとパターンに通底する「競創の本質」を論じる

• パターン、Wiki、XPの相似性– 集団的知性的な形成

– 反復的で全身的なプロセス• コーディング→テスト→リファクタリング

• ライティング→レビュー→リファイン

Page 32: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

組織内Wiki '07~’09

「Enterprise 2.0=SLATES」とWikiの対応Web 2.0の情報爆発力獲得への提言

【機能】– Wikiファーム、ポータル、アクセス制御– WYSIWYG、変更履歴

【利用】– 一人Wiki

– ファイル共有スペース– 草の根Wikiの収容

日々の利活用と更新ツールとしての定着に向けたレシピ

1. 草の根がベスト2. あなたのウィキはウィキペディアではない、3. 最初に編集4. グループ・コラボレーションを築く5. 利用を拡大する6. 緊急時の行動をサポートする7. 障害を監視する

Enterprise 2.0 : 社内社内社内社内Wikiの目的の目的の目的の目的塚本牧生塚本牧生塚本牧生塚本牧生, 2007.08

Organisational Wiki Adoption

Mike Cannon-Brooks, 2007.10

(訳)塚本牧生(訳)塚本牧生(訳)塚本牧生(訳)塚本牧生, 2009.07

Page 33: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

組織内Wiki '10

• 集合知メカニズムの理解集団的知性に向けたWikiリテラシー

• クラウドソーシングへのアプローチ1空間を共有

コントリビューションデザイン

• 情報の「爆発」「更新」を基礎とした知識への「集約」「洗練」へ

群衆の知恵・集団的知性と群衆の知恵・集団的知性と群衆の知恵・集団的知性と群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーションコラボレーションコラボレーションコラボレーション塚本牧生塚本牧生塚本牧生塚本牧生, 2010.01

Page 34: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

Wikiリテラシーのレベル3

• レベルレベルレベルレベル1::::Wiki記法におじけない(記法におじけない(記法におじけない(記法におじけない(Wiki ’07の意識改革)の意識改革)の意識改革)の意識改革)– 「Wiki記法なんてメールの装飾と同じ」– 実は「やらない」人はいても「できない」人はいない

• レベルレベルレベルレベル2::::Wikiサイトへの参加(サイトへの参加(サイトへの参加(サイトへの参加(Wiki ’09の意識改革)の意識改革)の意識改革)の意識改革)– 「全体に公開」「いつまでも残る」コンテンツ作成に踏み出す– 「公開範囲」と「伝播範囲」の区別がハードルを下げる

• レベルレベルレベルレベル3:所有意識から所属意識へ(:所有意識から所属意識へ(:所有意識から所属意識へ(:所有意識から所属意識へ(Wiki ’10の意識改革)の意識改革)の意識改革)の意識改革)– あなたの作成したコンテンツを誰かが書き換え始める

• コラボレーションが始まる瞬間• コンテンツの「所有意識」が失われる瞬間

– この痛みを歓迎できることがWikiリテラシー

Page 35: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

1つの共有Wiki空間

パターンかつアンチパターンパターンかつアンチパターンパターンかつアンチパターンパターンかつアンチパターン“One Wiki space per Group”からの卒業からの卒業からの卒業からの卒業http://wikipatterns.com/display/wikipatterns/One+Wiki+space+per+Group

パターンとしてのパターンとしてのパターンとしてのパターンとしての“One Wiki space per Group”– 知識整理や焦点の確立、チーム単位での運営がしやすい– 「小さな伝播範囲」感覚を持ちやすく、参加を得やすい

フラットな「グループごとのフラットな「グループごとのフラットな「グループごとのフラットな「グループごとのWiki群」群」群」群」で定着させる(組織内で定着させる(組織内で定着させる(組織内で定着させる(組織内Wiki ’07、、、、’09))))

アンチパターンとしてのアンチパターンとしてのアンチパターンとしてのアンチパターンとしての“One Wiki space per Group”– コラボレーションには規模が重要– 衝突が少ないことはイノベーションの機会を削ぐ

「全体スペース「全体スペース「全体スペース「全体スペースととととマイスペース」マイスペース」マイスペース」マイスペース」への移行を推進する(組織内への移行を推進する(組織内への移行を推進する(組織内への移行を推進する(組織内Wiki ’10))))

ページごとにコミュニティがあることページごとにコミュニティがあることページごとにコミュニティがあることページごとにコミュニティがあることに配慮するに配慮するに配慮するに配慮する– コミュニティにメインWikiへのページの移動を働きかける

Page 36: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

コントリビューションデザイン

様々なサイズと種類のコントリビューションをデザインする様々なサイズと種類のコントリビューションをデザインする様々なサイズと種類のコントリビューションをデザインする様々なサイズと種類のコントリビューションをデザインする• 対象を分割し、プロセスを小さなタスクに分割する• 適切なタスクに、適切な仕組みを用意する

– 「グリーンITを調べたい。Googleで調べるには?」

– ハイチ地震災害へのマイクロドネーション• Yahoo! ポイント、はてなポイント、iTunes Store

– ハイチ地震災害へのマイクロボランティア• Open Street Maps、Haiti Earthquake Support Center

Wikiコントリビューションのデザインコントリビューションのデザインコントリビューションのデザインコントリビューションのデザイン• 対象の分割(ページ、セグメント、I)• プロセスの分割(ライティング、各種ガーデニング、I)

さらに分割I 「ライティング」から「出典の明記」を分離など

• インターフェース(仕組み)「一読して欲しい(書かれたばかりの)段落一覧」「出典を探している情報一覧」I Q&Aサイト風に

クラウドソーシングクラウドソーシングクラウドソーシングクラウドソーシング -組織の組織の組織の組織のポテンシャルを挙げるポテンシャルを挙げるポテンシャルを挙げるポテンシャルを挙げる“協協協協業業業業”のスタイルのスタイルのスタイルのスタイル岡田良太郎岡田良太郎岡田良太郎岡田良太郎, 2008.08

Haiti Earthquake Support

Center

The Extraordinaries, Inc.

2010.01

Page 37: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

組織内Wikiコラボレーションの実現

Internal CrowdsourcingEnterprise 2.0

企図企図企図企図

・コラボレーションに必要なWikiリテラシーを個々人に広める・「One Wiki Per Space Per Group」からの卒業

・クラウドとコラボレーションするスキルを養う

企図企図企図企図

・情報投稿の心理障壁を下げる・「One Wiki Per Space Per Group」の実現

・情報の利用と更新を日常化に定着させる

運用の提言運用の提言運用の提言運用の提言・One Wiki、ひとつながりのWikiをイメージする・主Wikiへ、サブWikiのページの移行を促す

・非公開ページの公開を促す・多様な貢献を定義し、リクエストする

運用の提言運用の提言運用の提言運用の提言・一人Wiki

・ファイル共有・「草の根」Wikiの集約

ゴールゴールゴールゴール

・コラボレーションにより情報を集合知へ「集約」「洗練」

システムの提言システムの提言システムの提言システムの提言

・多様な貢献にあったインターフェースを設ける

ゴールゴールゴールゴール

・Web 2.0的な情報爆発

システムの提言システムの提言システムの提言システムの提言・Wikiファーム

・アクセス制限・ポータル・WYSIWYG

・変更履歴

Page 38: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

まとめ

Page 39: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

まとめ

• 多様な集合知– 群衆の知恵:選択に強い、分散性が重要、集約集約集約集約が必要が必要が必要が必要– 集団的知性:創造に役立つ、協働が重要、知見や成果の共有、相互利用、知見や成果の共有、相互利用、知見や成果の共有、相互利用、知見や成果の共有、相互利用、評価が必要評価が必要評価が必要評価が必要

– etc.

• クラウドソーシング– 集合知を活かすためのチームとクラウドのコラボレーションノウハウ– 「群衆の知恵」「集団的知性」「群集の創造」「群集の投票」「群集の投資」– チームにはスキルと労力が求められる

• Wiki– 集団的知性の性格が強い集合知の創造プロセス– 多数のライターと無数のガーデナーによるコラボレーション– 「Wikiリテラシー」「クラウドの形成」「コントリビューションデザイン」が必要

Page 40: 群衆の知恵・集団的知性とWikiコラボレーション

参考文献

• 書籍– ジェームズ・スロウィッキー著、小高尚子訳「『みんなの意見』は案外正しい」(角川文庫, 2009)– ドン・タプスコット、アンソニー・D・ウィリアムズ著、井口耕二訳「ウィキノミクス」(日系BP社, 2007)– 江渡浩一郎著「パターン、Wiki、XP」(技術評論社, 2009)– ジェフ・ハウ著、中島由華訳「クラウドソーシング」(早川書房, 2009)

• 論文、プレゼンテーションスライド– Jim Giles “Internet encyclopaedias go head to head”(2005)– 伊藤諭志、伊藤貴一、熊坂賢次、井庭崇「マスコラボレーションにおけるコンテンツ形成プロセスの分析」(2007)– 岡田良太郎「クラウドソーシング -組織のポテンシャルを挙げる“協業”のスタイル」(2008)– 山崎由佳、井庭崇、熊坂賢次「Wikipedia における編集者の活動分析」(2009)– 江渡浩一郎「Wikiとコラボレーションの過去・未来」(2009)– 武田英明「Wikipediaと研究コミュニティ」(2009)

• Web– sta la sta「はてブのホットエントリは集合知とは無関係」– Stewart Mader他“WikiPatterns.com”– Nature誌編集部“Editorial: Wiki's wild world”– 吉田倫子「イントラネットSNSのライフサイクルをマネジメントする」– 小飼弾「404 Blog Not Found:Apathy of Crowds」– 市村佐登美「スロウィッキー氏が語る、大衆の知恵:Wisdom and Madness of Crowd」– IBM「IBM イノベーションを通じて飛躍する年 - Japan」– IBM「企業における集合知の活用事例『InnovationJam』」– Open Street Map「WikiProject Haiti」– The Extraordinaries, Inc. 「Haiti Earthquake Support Center」– アトラシアンジャパン「Confluence ケーススタディ - Dow Jones」