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34 —— 下水道機構情報 Vol.13 No.28 WEFTEC 2018(ニューオーリンズ研究第二部   総括主任研究員 篠﨑 淳 資源循環研究部 研究員     山科 健一 はじめに 平成30年9月30日~10月3日にアメリカ合衆国ル イジアナ州ニューオーリンズ市のアーネストN.モリ アルコンベンションセンターで開催されたWEF(米 国水環境連盟)主催のWEFTEC2018に参加しました。 WEFTECは,日本での下水道展・下水道研究発表会 に水道展を加えたような内容で,世界最大級の規模で す。近年はニューオーリンズとシカゴで毎年交互開催 されています。今回,口頭発表について本機構から2 名が参加し,成果を報告しました。 研究発表 本会議における研究発表では下水道協会会員から6 件の口頭発表が行われ,うち2件について本機構より 篠﨑総括主任研究員と山科研究員が口頭発表を行いま した。 【篠﨑総括主任研究員】 「Research Toward a Long-Term Restoration Plan for Sewage Pipes(下水道管路長期改築計画策定に関 する研究)」 従来の管路調査で困難であった小口径管きょ(呼び 径800mm未満)の既設管の耐荷能力等の定量的な評 価方法を行うための非破壊かつ非開削での手法とし て,衝撃弾性波検査法があります。本発表では,衝撃 弾性波検査法を用いた新たな調査手法の内容,従来の 調査手法の場合と新たな調査手法の場合との改築の緊 急度の違い,および目標耐用年数の算定による調査・ 改築の想定サイクルの延伸による管渠の改築コストを 抑えた改築計画について取りまとめ,成果として報告 しました。 口頭発表の様子 【山科研究員】 「ActualStateofMainPumpRotationSpeedControl In Waste Water Treatment Plants and Energy- SavingMeasures(下水処理場における主ポンプの回 転速度制御の実態と省エネ対策)」 WEFTEC 2018 開催会場 WEFTEC2018と下水道展2017の比較 ※1 下水道協会→WEFに確認した情報 ※2 コンベンションセンター HPを参考に算出。 ※3 WEFTEC2018パンフレットを数えたもの。 ※4 下水道展HPおよび研究発表会HPより引用
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WEFTEC 2018(ニューオーリンズ)...34 —— 下水道機構情報 Vol.13 No.28 WEFTEC 2018(ニューオーリンズ) 研究第二部 総括主任研究員 篠﨑 淳

Oct 08, 2020

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Page 1: WEFTEC 2018(ニューオーリンズ)...34 —— 下水道機構情報 Vol.13 No.28 WEFTEC 2018(ニューオーリンズ) 研究第二部 総括主任研究員 篠﨑 淳

34 —— 下水道機構情報 Vol.13 No.28

✈WEFTEC 2018(ニューオーリンズ)研究第二部  総括主任研究員

篠﨑 淳

資源循環研究部研究員    

山科 健一

はじめに

平成30年9月30日~10月3日にアメリカ合衆国ルイジアナ州ニューオーリンズ市のアーネストN.モリアルコンベンションセンターで開催されたWEF(米国水環境連盟)主催のWEFTEC2018に参加しました。WEFTECは,日本での下水道展・下水道研究発表会に水道展を加えたような内容で,世界最大級の規模です。近年はニューオーリンズとシカゴで毎年交互開催されています。今回,口頭発表について本機構から2名が参加し,成果を報告しました。

研究発表

 本会議における研究発表では下水道協会会員から6件の口頭発表が行われ,うち2件について本機構より篠﨑総括主任研究員と山科研究員が口頭発表を行いました。

【篠﨑総括主任研究員】「Research�Toward�a�Long-Term�Restoration�Plan�for�Sewage�Pipes(下水道管路長期改築計画策定に関する研究)」 従来の管路調査で困難であった小口径管きょ(呼び径800mm未満)の既設管の耐荷能力等の定量的な評価方法を行うための非破壊かつ非開削での手法として,衝撃弾性波検査法があります。本発表では,衝撃弾性波検査法を用いた新たな調査手法の内容,従来の調査手法の場合と新たな調査手法の場合との改築の緊急度の違い,および目標耐用年数の算定による調査・改築の想定サイクルの延伸による管渠の改築コストを抑えた改築計画について取りまとめ,成果として報告しました。

口頭発表の様子

【山科研究員】「Actual�State�of�Main�Pump�Rotation�Speed�Control�In�Waste�Water�Treatment�Plants� and�Energy-Saving�Measures(下水処理場における主ポンプの回転速度制御の実態と省エネ対策)」

WEFTEC 2018 開催会場

WEFTEC2018と下水道展2017の比較

※1 下水道協会→WEFに確認した情報※2 コンベンションセンター HPを参考に算出。※3 WEFTEC2018パンフレットを数えたもの。※4 下水道展HPおよび研究発表会HPより引用

Page 2: WEFTEC 2018(ニューオーリンズ)...34 —— 下水道機構情報 Vol.13 No.28 WEFTEC 2018(ニューオーリンズ) 研究第二部 総括主任研究員 篠﨑 淳

下水道機構情報 Vol.13 No.28 —— 35

 下水処理場の主ポンプにおいて,省エネを目的とした高水位一定制御を行う事例が増えていますが,資源循環研究部の下水処理場のエネルギー自立化に向けた研究を進める中で,ポンプの性能特性を無視した過剰な回転速度制御によって無駄なエネルギーを消費しているケースが散見されました。本発表では,昨年度実施した共同研究の結果をもとに,処理場の運転日報データに基づいた省エネ分析の手法,ポンプの回転速度と効率の関係性の把握,運転方法の改善策とその効果について取りまとめ,成果として報告しました。

口頭発表の様子

展示会

 展示会には約1,000団体の出展があり,各ブースは,天幕部分を天井から吊り下げ式であったり,柱は中央に集約したりと,日本の下水道展より開放的な作りが多いように感じました。また,各団体による先進的な技術・商品の紹介だけでなく,アメリカ国内における下水道管の歴史に関するブースがあり,現代の私たちに過去を知った上で技術革新を行っていくべきだと語りかけているように感じました。

ニューオーリンズという街

 ニューオーリンズ市は2005年8月にハリケーン・カトリーナによって50箇所に及ぶ越流と破堤により,都市の80%以上が浸水し,多くのエリアで約1.8mを超える浸水となりました。このような大規模災害へ拡大した要因として各所よりさまざまなレポートがなされていますが,その中の一部では,「市民に浸水リスクがよく理解,伝達されていなかった」「堤防とポンプ場の維持管理と運用に関する責任が,多くの機関に分散されており対応が後手にまわった」と記述されています。現在,国内の下水道分野でも積極的に行われているBCP訓練の重要性を改めて感じます。 被害発生から10年以上が経過し,街並みは復興され,堤防も上部に嵩上げされており,災害以前の活気を取り戻していました。ただし,その堤防は世界有数の大河川ミシシッピ川にも関わらず,日本の堤防と比べるとその構造が少し貧弱そうな印象を受けました。その他,滞在中には数mmの雨量のスコールで道路が水浸しになる箇所が見られるなど,雨水排除能力は低い街との印象もうけました。

おわりに

 今後も本機構は,関係者の皆さまと協力して研究を進めるとともに,国際会議を通じて積極的にアピールし,世界に誇る日本の下水道技術の海外展開に貢献していきたいと考えています。 なお,次回(WEFTEC2019)は現地時間で2019年9月21日~25日にイリノイ州シカゴ市にて開催予定です。

展示会場の様子

歴代の下水道管路に関する展示