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基調講演で登壇した米国 レッドハット 社長 兼 CEO のジ ム・ホワイトハ ーストは 、まず 「 イノベ ーション は 、テクノロ ジーの変化と密接に結び付い ている」と切り出した。 1970~80年代はメインフ レームの時代で、イノベーショ ンは常にベンダー内のクロー ズドな環境で起こっていた。 1990 年代にはクライアント/ サーバーの時代になり、ベン ダーの参加によって初めてオー プンスタンダードが生まれた。 2000 年に入るとインターネッ トの時代を迎え、様々な標準仕 様や共通ルールが登場した。 「そして今日は、完全なクラ ウドの時代だ。ここで本当の意 味でのオープンイノベーション が実現されることになる」。 現在ではユーザー企業自身 が OSS を活用して、独自のイノ ベーションを創り始めている。 Facebook、Google、PayPalな どがその好例だ。 「ITユーザーはベンダーが 気付く前に問題を発見し、OSS を活用することで問題を自ら 解決していっている。ベンダー がソリューションを作るのを 待ってはいない」。 かつて産業革命で勝者と なったのはマシンメーカーでは なく、そのマシンを使って次々 と小さな変化を起こし、最終的 に抜本的な変化、即ち大量生 産を実現した人たちだ。 「イノベーションは、たとえば “来週これをやりたいね”と いった小さなところから生ま れる。それが積み重なり、最終 的に大きなイノベーションの 波となって世の中を変えてい く。これ がクラウド時 代のイノ ベーションだ」。 2014年10月10日、東京・恵比寿で国内最大級のOSS イベント「レッドハット・フォーラム 2 0 1 4 」が 開 催され た。第 6 回となる今回のテーマは、「世界で勝つオープン イノベーション」。10 月 8 日の大阪での開催を皮切りに、 今回はライブストリーミングを含むバーチャルイベント も実施。先進ユーザー企業 CIO による基調講演やレッド ハットとパートナー企業による展示エリアなど、会場は 約3,000名の来場者で活気に溢れ、OSSやオープンハイ ブリッドクラウドに対する関心の高まりを感じさせるイベ ントとなった。 米国レッドハット 社長 兼 CEO ユーザー企業がOSSを活用して 自らイノベーションを 創り出す時代 ジム・ホワイトハースト クラウド時代のオープンイノベーションは、 オープンソースの活用によって実現される 基調講演 Success story for your business Red Hat K.K. EDITORIAL 2015 OPEN EYE 18 vol. 2015 February オープンソースの 新 時 代 を 築く、サクセスストーリー INDEX 開催レポ 世界で勝つオープンイノベーション October 10, 2014 REDHAT FORUM 開催レポート October 10, 2014 行徳 セル 日産自動車株式会社 グローバルコーポレート IS/IT アライアンスグローバル VP 常務執行役員 CIO 特別講演 米国レッドハット社長 兼 CEO オープニング 全日本空輸株式会社 上席執行役員 業務プロセス改革室長 幸重 孝典 中部電力株式会社 情報システム部長 野村 武 日本航空株式会社 IT企画本部 IT運営企画部 部長 荘司 敏博 エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社 取締役 田中 基夫 エグゼクティブ・セッション ジム ホワイトハースト エコシステムを拡充してWindows to Cloud拍車をかけ、 2020年東京五輪までに Linuxを国内シェアNo.1にする! ユーザー事例 Success Story ジネスルールエンジン で、 俊敏性を大幅向上。 変化に合わせたルールの 最適化 と、 インテリジェントな 自動化 を実現 株式会社インテリジェンス レッドハット最新レポート Windows Server 2003からOSSベースのクラウド基盤への移行サービスについて記者発表
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OPEN EYE Vol.18

Feb 01, 2017

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Page 1: OPEN EYE Vol.18

 次にホワイトハーストが指摘したのは、“現在我々が目にしているイノベーションの多くは、OSSとビッグデータから生まれている”ということだ。大規模分散処理を行うHadoopやデータベース管理システムのCassandra、データ分析を行うSpark、さらにはコンテナ型の仮想化技術であるDockerも、全てOSSで作られている。

 「先にも述べたが、これはベンダーが気付く前にユーザー企業が問題を提起し、それに対する解決策を求めたから。販売目的で作られたものではない。オープンイノベーションの力について考える時、忘れてならないのはマススケールの威力だ。最終的に勝ち残るのは、多くのユーザーが適正なソリューションだと選んだもので、テクノロジーを選択することは、実はイノベーションを選択するということ」。 メインフレームの時代ならIBM、クライアント/サーバーの時代ならIntelとWindowsがスタンダードだった。そして今のクラウドの時代に新たなデフォルトの選択肢となるのが、OSSだ。 「例えばIaaSを考える時に

OpenStackを選択することは、将来のイノベーションを生むための選択をしているということでもある。選択肢の中にはさまざまなベンダーの製品もあり、簡単な選択ではないかもしれない。しかしイノベーションの観点、またそれがどれだけ速いスピードで起こっているのかを考えれば、正しい選択ができるはずだ」。 一方、ユーザー企業が先導して生まれたオープンイノベーションのパワーはきわめて強力で、それを他の企業が使いこなして勝利を収めることはなかなか難しい。そのためオープンイノベーションを採用することは企業にとって、大きなチャレンジとなる。そこにレッドハットの存在意義がある。 「我々はOSSの領域で頭角を表すために鋭意努力しており、数年前に従業員と共にミッションステートメントを定義した。“お客様、開発者、パートナーのコミュニティの架け橋としての役割を果たすため、より良いテクノロジーを生み出すオープンソースのスタイル”を確立すること。これが我々のミッションだ」。

 レッドハットはOSSの各コミュニティと連動してその方向性を決め、一方でユーザー企業のニーズを吸い上げてコミュニティとの橋渡し役を担っ

ている。 「我々は IaaSを構築するOpenStackのプロジェクトでは最大手のコントリビュータであり、他の企業とも協力しながらロードマップを作成し、お客様のニーズも吸い上げてエンタープライズのユースケースにマッチしたものを作り上げている。SDN(Software Defined N e t w o r k i n g)を実現するOpenDaylightのコミュニティでも同様で、Hadoopをより使いやすくするための支援もしている」。 またレッドハットの提供するRed Hat Enterprise Linux(以下、RHEL)は、米フォーチュン500の94%の企業が利用しており、証券取引所の基幹システムの50%がRHELに頼っている。 「我々はユーザーとしてもOSSを利用し、ベンダーとしてはオープンイノベーションのパワーを加速しつつ、お客様が使える形に落とし込んだ上でご提供できる。これは我々の大きな強みだ」。 さらにRHELは日本におい

て、商用Linux市場の実に約85%ものシェアを占めており、世界市場の約65%を大きく凌いでいる。 「日本は品質を追求する市場。それゆえにOSSが伸びており、我々のシェアも高くなっていると考えている。今回来日して特に感じたのは、お客様にしても、パートナー様にしても、OpenStackへの取り組みが他の国よりはるかに進んでいるということ。まさにイノベーションの先頭を切っている」。 この他にもレッドハットが貢献する分野はミドルウェアならRed Hat JBoss、PaaSならOpenShiftなど多岐にわたり、現在ではオープンハイブリッドクラウドという考え方を提唱している。 「開発したアプリケーションを、物理、仮想を問わず、またプライベートクラウド、パブリッククラウドに関わらず自由に稼働させ、管理できる環境を構築するものだ。このオープンハイブリッドクラウドの実現こそ、オープンイノベーションを可能にする」。

 

 基調講演で登壇した米国レッドハット 社長 兼 CEOのジム・ホワイトハーストは、まず「イノベーションは、テクノロジーの変化と密接に結び付いている」と切り出した。 1970~80年代はメインフ

レームの時代で、イノベーションは常にベンダー内のクローズドな環境で起こっていた。1990年代にはクライアント/サーバーの時代になり、ベンダーの参加によって初めてオープンスタンダードが生まれた。2000年に入るとインターネットの時代を迎え、様々な標準仕様や共通ルールが登場した。 「そして今日は、完全なクラ

ウドの時代だ。ここで本当の意味でのオープンイノベーションが実現されることになる」。 現在ではユーザー企業自身がOSSを活用して、独自のイノベーションを創り始めている。Facebook、Google、PayPalなどがその好例だ。 「ITユーザーはベンダーが気付く前に問題を発見し、OSSを活用することで問題を自ら解決していっている。ベンダーがソリューションを作るのを待ってはいない」。 かつて産業革命で勝者となったのはマシンメーカーではなく、そのマシンを使って次々と小さな変化を起こし、最終的に抜本的な変化、即ち大量生産を実現した人たちだ。 「イノベーションは、たとえば“来週これをやりたいね”といった小さなところから生まれる。それが積み重なり、最終的に大きなイノベーションの波となって世の中を変えていく。これがクラウド時代のイノベーションだ」。

 2014年10月10日、東京・恵比寿で国内最大級のOSSイベント「レッドハット・フォーラム 2014」が開催された。第6回となる今回のテーマは、「世界で勝つオープンイノベーション」。10月8日の大阪での開催を皮切りに、今回はライブストリーミングを含むバーチャルイベントも実施。先進ユーザー企業CIOによる基調講演やレッドハットとパートナー企業による展示エリアなど、会場は約3,000名の来場者で活気に溢れ、OSSやオープンハイブリッドクラウドに対する関心の高まりを感じさせるイベントとなった。

米国レッドハット 社長 兼 CEO

ユーザー企業がOSSを活用して自らイノベーションを創り出す時代

ジム・ホワイトハースト

クラウド時代のオープンイノベーションは、オープンソースの活用によって実現される

基調講演

Success story for your business Red Hat K.K. EDITORIAL 2015

OPEN EYE 18vol.2015 February

オープンソースの新時代を築く、サクセスストーリー

INDEX

開催レポート 世界で勝つオープンイノベーションOctober 10, 2014

RED HAT FORUM 開催レポート October 10, 2014

行徳 セルソ氏日産自動車株式会社 グローバルコーポレート IS/ITアライアンスグローバル VP 常務執行役員 CIO

特別講演

米国レッドハット社長 兼 CEOオープニング

全日本空輸株式会社 上席執行役員 業務プロセス改革室長 幸重 孝典氏

中部電力株式会社 情報システム部長 野村 武氏

日本航空株式会社 IT企画本部 IT運営企画部 部長 荘司 敏博氏

エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社 取締役 田中 基夫氏エグゼクティブ・セッション

ジム・ホワイトハースト

エコシステムを拡充してWindows to Cloudに拍車をかけ、2020年東京五輪までにLinuxを国内シェアNo.1にする!

ユーザー事例 Success Story

ビジネスルールエンジンで、俊敏性を大幅向上。変化に合わせたルールの最適化と、インテリジェントな自動化を実現

株式会社インテリジェンス

○ レッドハット最新レポートWindows Server 2003からOSSベースのクラウド基盤への移行サービスについて記者発表

Page 2: OPEN EYE Vol.18

 次にホワイトハーストが指摘したのは、“現在我々が目にしているイノベーションの多くは、OSSとビッグデータから生まれている”ということだ。大規模分散処理を行うHadoopやデータベース管理システムのCassandra、データ分析を行うSpark、さらにはコンテナ型の仮想化技術であるDockerも、全てOSSで作られている。

 「先にも述べたが、これはベンダーが気付く前にユーザー企業が問題を提起し、それに対する解決策を求めたから。販売目的で作られたものではない。オープンイノベーションの力について考える時、忘れてならないのはマススケールの威力だ。最終的に勝ち残るのは、多くのユーザーが適正なソリューションだと選んだもので、テクノロジーを選択することは、実はイノベーションを選択するということ」。 メインフレームの時代ならIBM、クライアント/サーバーの時代ならIntelとWindowsがスタンダードだった。そして今のクラウドの時代に新たなデフォルトの選択肢となるのが、OSSだ。 「例えばIaaSを考える時に

OpenStackを選択することは、将来のイノベーションを生むための選択をしているということでもある。選択肢の中にはさまざまなベンダーの製品もあり、簡単な選択ではないかもしれない。しかしイノベーションの観点、またそれがどれだけ速いスピードで起こっているのかを考えれば、正しい選択ができるはずだ」。 一方、ユーザー企業が先導して生まれたオープンイノベーションのパワーはきわめて強力で、それを他の企業が使いこなして勝利を収めることはなかなか難しい。そのためオープンイノベーションを採用することは企業にとって、大きなチャレンジとなる。そこにレッドハットの存在意義がある。 「我々はOSSの領域で頭角を表すために鋭意努力しており、数年前に従業員と共にミッションステートメントを定義した。“お客様、開発者、パートナーのコミュニティの架け橋としての役割を果たすため、より良いテクノロジーを生み出すオープンソースのスタイル”を確立すること。これが我々のミッションだ」。

 レッドハットはOSSの各コミュニティと連動してその方向性を決め、一方でユーザー企業のニーズを吸い上げてコミュニティとの橋渡し役を担っ

ている。 「我々は IaaSを構築するOpenStackのプロジェクトでは最大手のコントリビュータであり、他の企業とも協力しながらロードマップを作成し、お客様のニーズも吸い上げてエンタープライズのユースケースにマッチしたものを作り上げている。SDN(Software Defined N e t w o r k i n g)を実現するOpenDaylightのコミュニティでも同様で、Hadoopをより使いやすくするための支援もしている」。 またレッドハットの提供するRed Hat Enterprise Linux(以下、RHEL)は、米フォーチュン500の94%の企業が利用しており、証券取引所の基幹システムの50%がRHELに頼っている。 「我々はユーザーとしてもOSSを利用し、ベンダーとしてはオープンイノベーションのパワーを加速しつつ、お客様が使える形に落とし込んだ上でご提供できる。これは我々の大きな強みだ」。 さらにRHELは日本におい

て、商用Linux市場の実に約85%ものシェアを占めており、世界市場の約65%を大きく凌いでいる。 「日本は品質を追求する市場。それゆえにOSSが伸びており、我々のシェアも高くなっていると考えている。今回来日して特に感じたのは、お客様にしても、パートナー様にしても、OpenStackへの取り組みが他の国よりはるかに進んでいるということ。まさにイノベーションの先頭を切っている」。 この他にもレッドハットが貢献する分野はミドルウェアならRed Hat JBoss、PaaSならOpenShiftなど多岐にわたり、現在ではオープンハイブリッドクラウドという考え方を提唱している。 「開発したアプリケーションを、物理、仮想を問わず、またプライベートクラウド、パブリッククラウドに関わらず自由に稼働させ、管理できる環境を構築するものだ。このオープンハイブリッドクラウドの実現こそ、オープンイノベーションを可能にする」。

 

 基調講演で登壇した米国レッドハット 社長 兼 CEOのジム・ホワイトハーストは、まず「イノベーションは、テクノロジーの変化と密接に結び付いている」と切り出した。 1970~80年代はメインフ

レームの時代で、イノベーションは常にベンダー内のクローズドな環境で起こっていた。1990年代にはクライアント/サーバーの時代になり、ベンダーの参加によって初めてオープンスタンダードが生まれた。2000年に入るとインターネットの時代を迎え、様々な標準仕様や共通ルールが登場した。 「そして今日は、完全なクラ

ウドの時代だ。ここで本当の意味でのオープンイノベーションが実現されることになる」。 現在ではユーザー企業自身がOSSを活用して、独自のイノベーションを創り始めている。Facebook、Google、PayPalなどがその好例だ。 「ITユーザーはベンダーが気付く前に問題を発見し、OSSを活用することで問題を自ら解決していっている。ベンダーがソリューションを作るのを待ってはいない」。 かつて産業革命で勝者となったのはマシンメーカーではなく、そのマシンを使って次々と小さな変化を起こし、最終的に抜本的な変化、即ち大量生産を実現した人たちだ。 「イノベーションは、たとえば“来週これをやりたいね”といった小さなところから生まれる。それが積み重なり、最終的に大きなイノベーションの波となって世の中を変えていく。これがクラウド時代のイノベーションだ」。

クラウド時代の新たなデフォルトの選択肢こそOSS

オープンイノベーションを可能にするオープンハイブリッドクラウド

日本は品質を追求する市場。それゆえにOSSが伸びている

▼ エンタープライズの成功を促進するオープンイノベーション

INNOVATION OPENINNOVATION

PROPRIETARYINNOVATION

TIME

Success story for your business

2 OPEN EYE

世界で勝つオープンイノベーション

「レッドハット・トップ・カスタマー・アワード 2014」を発表

 レッドハット・フォーラム 2014では、各分野で革新的なシステムやアーキテクチャを実現したユーザー企業に感謝の意を表して、「トップ・カスタマー・アワード 2014」の発表と授与式が行われた。受賞企業は以下のとおり。

Best Cloud Service Providerエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社いち早くオープンソースの仮想化技術KVMを基盤としたクラウドサービスを立ち上げ、3年以上にわたり継続的にレッドハットとともに業界をリードするオープンソースの仮想化とクラウド技術を強力に推進されました。

Best Data Center Modernization全日本空輸株式会社データセンターの刷新に伴い、社会環境の変化を追従しやすいクラウドサービスや、Red Hat Enterpr ise L inuxとRed Hat JBoss MiddlewareによるIT基盤を採用、標準化を推進することでビジネスの変革を支える先進的なIT基盤を実現されました。

Best Middleware Implementation日本航空株式会社IT刷新プロジェクトの一環として、国内ツアー予約システムの基盤をRed Hat JBoss Middlewareに移行、またシステム連携基盤においてもRed Hat JBoss Fuseを採用。ベンダーに依存しないアプリケーションのモダナイゼーションを実現されました。

Best Global Platform Standardizationパナソニック株式会社クラウドを活用したオープン・イノベーションのために、北米、ヨーロッパ、アジアのデータセンターのモダナイゼーションとクラウド化を推進。サービスレベルに応じた適切なクラウド環境の実現とともに、Red Hat Enterprise Linuxを標準として積極的に推進されました。

Best Cloud Ready Infrastructure西日本電信電話株式会社クラウドサービスの提供を視野に入れ、100ヶ所以上に分散していたIT基盤を統合。Unixの性能と機能をIAサーバーとRed Hat Enterprise Linuxの組み合わせで実現、以前は5割を超えていたUnixから統合基盤に移行し、Red Hat Enterprise Linuxが9割を占めるに至り、積極的なOSSの利用を推進されました。

Best Mission Critical Platform中部電力株式会社経営効率化に向けた業務再構築プランのもと、ミッションクリティカルな社会基盤である配電システムをUnixからRed Hat Enterprise LinuxとRed Hat JBoss Middlewareにリプレース。今後のIT基盤のクラウド化やビッグデータの利用に向けてオープンソース技術を積極的に推進されました。

Best Middleware Strategy日産自動車株式会社同社中期経営計画である「POWER88」達成のために、グローバルIT戦略「VITESSE」を策定し、ビジネス価値創造に向けたIT戦略を推進。その戦略を支えるIT基盤をOSSで実現し、Red Hat JBoss Middlewareのルールエンジンの活用により、変化に強いシステムをグローバルに展開しました。

Page 3: OPEN EYE Vol.18

5年をかけてIT基盤を整備、今がビジネス価値を提供する時

 日産の中期経営計画「Nissan Power 88」は、2011年から2016年までの6か年でブランドとセールスのパワーを高め、グローバルの市場占有率8%と営業利益率8%を目指すものだ。この目標を達成するために6つの戦略、すなわちブランドパワー、セールスパワー、クオリティの向上、ゼロ・エミッションのリーダーシップ、事業の拡大、コストリーダーシップが定義されている。 「Nissan Power 88は先の目的達成のために、全てのグループ会社が6つの戦略に対して、各々どのように貢献していけばよいかを定義した中期経営計画。このビジネス側の戦略を支えるために我々が打ち出した IT 戦略が、フランス語でスピードを意味するVITESSEだ」(行徳氏)。 日産ではVITESSEに先立ち、2005年から「BEST」というIT戦略に着手。2010年までの6年間で、ITガバナンスを確立して徹底的なコストマネジメントを実現し、エンタープライズレベルのITアーキテクチャを定義、従来のシングルソーシングからマルチソーシングへシフトし、さらにITインフラの標準化、統合化を推し進めてきた。 そしてBESTを受けた現在のVITESSEでは、3つの柱が定義されている。1つ目が“VALUE INNOVATION”で、ビジネスを成功に導くための様々な投資を行うこと、2つ目が“TECHNOLOGY SIMPLIFICATION”で、IT自体のための投資を行うこと、そして3つ目が“SERVICE EXCELLENCE”で、さらなるコスト削減のための投資を行うことだ。

 「BESTでIT基盤を整え、それを現在のVITESSEでフル活用して、ビジネス価値を提供する。それがNissan Power 88に対するIS/ITの使命」。 参考までに、同社のIT部門ではアプリケーション領域をIS、インフラ領域をITとしてIS/ITという名称で呼び、世界の各リージョンにIT組織を設けて、それらをGlobal IS/ITが統括するという形態を採っている。ITスタッフの数は日本が684、米国311、欧州242で、2011年にはコスト低減とデリバリースピードのアップを目指して、インドに日産・ルノーのキャプティブセンター「RNTBCI(Renault-Nissan Technology and Business Center in India)」を開設した。RNTBCIでは現在、1,000名のエンジニアが活躍しているという。

 2005年からの10年以上におよぶ同社の2つのIT戦略において、重要な役割を果たしているのがOSSだ。その効果について行徳氏は、次のように説明する。 「BESTの大きな目標は、IT効率を向上させることだった。そしてこの6年間におけるOSSの最大の貢献は、TECHNOLOGY SIMPLIFICATIONに対するものだ。ITインフラの標準化と、アプリケーションの再利用(=コンポーネント化)においてOSS、特にレッドハット製品が果たしてくれた役割は実に大きい」。 先にも触れた通り、日産ではBESTの6年間でさまざまなIT基盤の整備を進めてきた。 「このBESTがなければ、今のVITESSEもなかった。

OSSを活用し、BESTで成果を出したことでトップマネジメントにITの効果が認められ、VITESSEでようやくイノベーションの話ができるようになった。まさに今がビジネスイノベーションに直接貢献する段階。ここでもOSSが大きな役割を果たしてくれている」。

 同社のITアーキテクチャは、わかりやすく以下の4つのレイヤーに分けられる。下から順に、標準化されたハードウェア/OS/ミドルウェアで構成される“共通プラットフォーム”、その上に載るのが“アプリケーション共通サービス”で、データインテグレーションやワークフローなど、アプリケーションが必要とする各種サービスを定義し、提供するレイヤーだ。そしてその上に開発標準化を推進する“アプリケーション開発環境”が載り、最上位に業務プロセスを直接支援する“アプリケーションサービス”が位置している。 「日産では、これら4つの階層全てがOSSの適用対象であり、レッドハット製品を活用もしくは導入の検討対象としている。そして我々が最終的に目指しているレイヤーが、ビジネスイノベーションへの貢献だ。ここで今、レッドハット製品の利用を想定しているのがビッグデータプラットフォームの領域で、分散ストレージ製品のRed Hat Storage Serverや、物理データベースを仮想的に統合してくれるデータ仮想化製品のJBoss Data Virtualizationなどが挙げられる」。 同氏は、こうしたレッドハット製品の活用が、ビジネスに新たなバリューやベネフィットを提供することに繋がると強調する。 「ビッグデータプラットフォームの構築によって、エンタープライズデータ、車から収集されるデータ、インターネット上のデータという3つのデータソースを統合して、多様なシミュレーションや分析を行うための環境が整う。2015年からは、データサイエンティストやビジネスアナリストを展開することも考えている」。 そして行徳氏は、OSSに向き合う自社のスタンスについて次のように述べ、締め括った。 「カルロス・ゴーンCEOからIS/ITが期待されているのは、スピード、標準化、シンプル化。これを実現するために、OSSの活用は実に有効だ。ただしOSSには多くの選択肢があり、これを何も考えずに誰かに任せるというのはあり得ない。OSSをどう展開し、そのベネフィットを100%引き出すために何をするかは、社内ITがしっかりと考えることだ。これからもOSSをしっかりと勉強し、ビジネス貢献に根ざした活用について考えていきたい」。

10年以上におよぶIT戦略の中で重要な役割を担い続けるOSS

4つの全レイヤーで利用されるレッドハット製品

ビジネスイノベーションに直接貢献するOSS、全てのITレイヤーでレッドハット製品を採用

特別講演

▼ OSSへの取り組みアプローチ:ビジネスイノベーションへの貢献

Private Cloud基盤として利用

共通インフラサービスへの適用

アプリケーション開発環境での利用

コアアプリケーションへの適用

ビジネスイノベーションへの貢献

アプリケーションサービス

In-houseApplications

PackageApplications

CloudApplications

共通プラットフォーム

Middleware

OS/Hypervisor

Hardware/Network

アプリケーション開発環境

Application Framework

Application Lifecycle Mgmt.

Tools & Guidelines

アプリケーション共通サービス

Data Integration

Information Mgmt.

Workflow Identity and Access Mgmt.

● 様々なデータソースを 横断する分析要望の高まり● 飛躍的なデータ量増加、 Ad-hoc利用への対応

● 分散配置された既存データ 統合によるアセット化● セルフサービスも可能にする 柔軟な分析基盤の実現

Big Data Platform

Red Hat Storage ServerJBoss Data VirtualizationHortonworks Data Platform

Big Data

OPEN EYE 3

Red Hat K.K. EDITORIAL 2015

 日産自動車株式会社は2011年から中期経営計画「Nissan Power 88」に着手、これを支えるIT戦略として「VITESSE」を打ち出した。グローバルコーポレートIS/IT アライアンスグローバルVP 常務執行役員 CIOの行徳セルソ氏は「VITESSEにおいてOSSはビジネスイノベーションに直接貢献するもの」と指摘、「さまざまなレイヤーでレッドハット製品を活用している」と強調した。

ビジネスへの貢献にOSSはきわめて有効ただしその活用は自社で考える必要がある 日産自動車株式会社 グローバルコーポレート IS/IT

アライアンスグローバルVP 常務執行役員 CIO 行徳 セルソ氏

Page 4: OPEN EYE Vol.18

 エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社では2010年から、KVMをベースとするレッドハットの「Red Hat Enterprise Virtualization」を採用したクラウドサービスの提供を開始した。 同社 取締役の田中基夫氏は「当時KVMを利用したサービスはほとんどなく、世界でも我々が先がけだったと認識しています」と語り、「その後もOSSのテクノロジーを随所で活用しながら、さまざまなサービスを提供してきています」とOSSの有用性を強調する。

 「我々はICT環境の仮想化をさらに進めて自動化を促進し、利用者の使い勝手をより高め、セルフマネジメントを強化していくことを目指しています」。 その一環として2012年からは、OpenFlowを利用したSDN(Software-Defined Networking)を採り入れ、グローバルでエンタープライズクラウドサービスの提供を開始。さらに2013年からは、KVMとSDN、そしてIaaS基盤となるOpenStackを組み合わせたパブリッククラウドサービスの提供も開始した。

 OSSを活用する理由について、田中氏は第一に“ベンダーロックインの回避”を挙げ、また“世界中の技術者と連携できること”も魅力だと説明する。 「OSSの利用を始めて強く感じるのは、世界中の技術者が積極的に貢献してくれること。問題が生じても、あっという間に共有され、解決されます。世

界中の知恵と連携できる点はとても魅力的です」。 さらに、OSSを使うことで“社内の技術者が育っていくこと”も大きなメリットだと指摘する。「自社でOSSを利用することで、社内技術者が育っていきます。エンジニアの育成についても、レッドハットにはぜひ協力いただきたいですね」。 日本企業としてグローバルでエンタープライズクラウドサービスを提供する同社にとって、ジャパン・クオリティは強みだ。ただし「日本品質に重

きを置き過ぎると、コストの面で競争力に影響するリスクも否めない。ジャパン・クオリティを意識しつつ、グローバルの目線でビジネスを展開することが重要」と語る。 今後は、SDNを使ってクラウドのみならずデータセンターやコロケーション、さらにはオンプレミスまでを一体化したICT環境を作っていきたいと語る同氏。「その上でレッドハットは強力なパートナーになると考えていますので、これからも引き続きのご協力を期待しています」。

 2014年、全日本空輸株式会社はプライベートクラウドを基盤とする自社用の新たなデータセンターを開設した。今後4年を費やし、個別最適のサイロ型だった旧データセンターからの移行を完了させる予定だ。同社 上席執行役員 業務プロセス改革室長の幸重孝典氏は、その際の留意点を次のように説明する。 「単純なデータセンターの移行ではなく、レッドハットの最新技術を活用して仮想化を図り、標準化、共通化までを実現したいと考えています。現在社内には約160のシステムがあります

が、このうちミッションクリティカルなもの以外はすべて、新たなプライベートクラウドに移していきたいと考えています」。 また現在、同社ではもう1つの大きな取り組みとして、航空会社にとっては基幹システムとなる、国内線および国際線の旅客システムの全面リプレイスを進めている。 「1988年に構築して以来、ともに30年近く経つ古いシステムで、それぞれ異なるハードウェアベンダーの大型汎用機を利用していました。2013年2月、このうちの国内旅客システムを最新のオープン系システムに全面移行しました。国際旅客システムについては2015年以降、航空業界全体で利用している“コミュニティクラウド”へ移管する予定です」。

 同社が2012年、全客室乗務員にiPadを支給したのは有名な話だ。「実は、社員全体に占める比率が最も高いのが客室

乗務員。彼女らのワークスタイルを変えていくことが、社内全体の変革を促す良いきっかけとなりました」。社内WiFiや仮想デスクトップの導入など、社員の生産性を向上させるために、経営陣の理解を得つつ変革を進めた。 顧客向けの取り組みとしても、モバイルファーストの推進を強化している。「航空業界は移動そのもの。スマートフォンを持って移動するお客様が何を望んでいるのかを見据えて、従来にない新しい顧客向け

サービスを実現していきたいと考えています」。 最後に、オープンソースへの取り組みやその意義、価値について聞くと「古いシステムを変えていくには、技術者やコスト、時間の問題など、課題が山積しています。オープンソースは、ユーザー数の増加と相まって、安定した品質の高いプロダクトが増えてきているので、その有用性はたいへん魅力です。今後もレッドハットの協力のもと、積極的に活用を進めたいですね」。

社内のワークスタイル変革とともに顧客向け取り組みとしてモバイルファーストを推進

ジャパン・クオリティを軸に統合ICT環境の実現を目指す同社にとって、レッドハットは強力なパートナー

エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社 取締役

田中 基夫氏

全日本空輸株式会社上席執行役員業務プロセス改革室長

幸重 孝典氏

ジャパン・クオリティとOSSのイノベーションの融合Reliableなクラウドを、グローバルに展開

基幹システムのクラウドへの移行とともに、モバイルによるワークスタイル変革を推進

▼ 『自前』から『利用』へ

国内旅客システム大型汎用機

国際旅客システム大型汎用機

国際旅客システム(Altea)amadeus

国内旅客システム(AirCore)

NEWOLD

1988~

1988~

2013~

2015~

新データセンター(Private Cloud)標準化・共通化・

統廃合従来型データセンター(個別最適サイロ型)

▼ クラウドサービスとオープンソース

● 2010年に「Red Hat KVM」を利用した最初の クラウドサービスを開始● 2012年に「SDN(OpenFlow)」を利用した エンタープライズクラウドサービスを開始● NTT研究所が早くからOpenStackを検証、 仮想ネットワーク(Neutron)にコントリビュート● 2013年に「OpenStack+KVM+SDN」を 利用したパブリッククラウドサービスを開始

● 2011年に「Gluster FS」を利用した 分散ファイルサービスを開始

● ベンダーロックイン回避● 最新技術を早期に活用/世界中の技術者と連携● 社内技術者の育成に貢献(メリット享受には社内技術者が必要)

Bizホスティング

Bizシンプルディスク

● クラウド分野においてオープンソースを積極的に活用● 次期クラウド基盤でも中心技術として活用予定

4 OPEN EYE

Success story for your business

世界で勝つオープンイノベーション

Page 5: OPEN EYE Vol.18

中部電力株式会社情報システム部長

野村 武氏

 2011年、中部電力株式会社は、東日本大震災の影響を受けて浜岡原子力発電所の稼働を停止した。その後、経営状況は厳しさを増し、全社を挙げた経営効率化の取り組みに着手する。同社 情報システム部長の野村武氏は、当時の状況を次のように振り返る。「ITコストはベースコスト。我々は、これをきっちり下げていくことを求められました。しかし今までの延

長線上の方法では、当時の状況を乗り越えることが難しかった。よりドラスティックなコストダウンが必要だったのです」。そこで同社はまず、ITコストの内訳を詳細に調査した。結果、一番比率を占めていたのがインフラ部分で全体の6割、中でもホストとミドルウェアが大きく、ミドルウェアについてはさらに上昇する兆しが見られたという。「この状況を何とか改善

するために、3つの方向性を打ち出しました。1つ目がプライベートクラウドを利用して共通インフラを構築すること、2つ目がホスト環境のオープン化を図ること、そして3つ目がOSSを採用してベンダーロックインからの脱却を図ることです」。

 共通インフラについては、従来オーダーメイドで構築していたサーバー環境を、プライベートクラウドによって標準化を図り、共通化することを目指した。そして、ミッションクリティカルな配電システムも含め、従来の商用OSとミドルウェアに代えて、Red Hat Enterprise LinuxとRed Hat JBoss Enterprise Application Platformを採用した。「OSSの採用理由は、やはり第一にコストダウンです。また、我々自身で技術を習得して、他の領域に広く適用できると考えました。若手技術者の大きなモチベーション向上にも繋がりま

す。また商用製品だと、システムリプレースの周期を自分たちで決めることができない。ベンダーロックインの回避という観点からも、OSSはきわめて有効でした。レッドハットには性能面や保守性を細かく検証してもらい、大きな問題なく運用開始できました」。 現在、電力業界では電力システム改革が進んでおり、2016 年には電力小売りの全面自由化、2018~2020年には送配電機能の法的分離が予定されている。「我々ITも同時並行で、求められるシステム構築をより速く、コストを抑えて進めていく必要がある。この対応においても、共通インフラを活用し、工期の

ミッションクリティカルなシステムにレッドハット製品を採用電力システム改革に向けた支援も期待

日本航空株式会社IT企画本部

IT運営企画部 部長

荘司 敏博氏

 日本航空株式会社は会社更生法の適用を申請した2010年1月以降、新たな再建の道を辿ってきた。同社 IT企画本部 IT運営企画部 部長の荘司敏博氏は、現在に至るまでのIT部門について「基幹となる旅客系システムを40数年にわたって使ってきましたが、2011年からは、“強く、しなやかなIT”を目標に掲げて、仮想

化・標準化、シンプル化、効率化・コスト削減という3つの取り組みにチャレンジしています」と説明する。 「なかでも『たびJAL』という、我々にとって基幹となる国内線ツアーシステムを更新する際は、レッドハットの力を借りて、うまく進めることができました」。 2000年以降、JALではITに対する投資もままならず、保守

的な対応が続いていたというが、「たびJAL」の刷新に際しては、これまでのさまざまな問題点を洗い直した。 「ハードウェアの保守の期限切れや、OSとミドルウェアの保守期限が間近であること等を再認識しました。そこで、ベンダーに大きく依存した体質からの脱却と、システムのホワイトボックス化を目指して、OSSの採用を決定したのです」。OS は可能な限りRed H a t Enterprise Linuxに置き換えて統合し、ミドルウェアについてはRed Hat JBoss Middleware に転換していく取り組みに着手。2011年にプロジェクトの検討を開始し、2013年11月にサービスインした。

 同社では現在、「チャレンジJAL宣言」と称して、新たな製品やサービスの導入、また取り組みへのサポートを展開している。 その一環として、ウェアラブルデバイスの活用を推進。今年5

月には、ホノルル空港でGoogleグラスを使った実証実験を、また8月には羽田空港でiBeaconTM

を使った実証実験を行った。 「新しい技術は、IT関係者にはとても興味深く、魅力的にうつります。航空会社には両手を使って行う作業が多いため、貨物搭載の現場や整備士には、両手が空くことで作業効率が上がると大変好評でした。将来的には、きわめて有用な手段だと確信しています」。 7月に開始された、国内線初の機内WiFiサービス「JAL SKY Wi-Fi」も話題だ。 お客様にとって利便性が上がるものは共有サービスで使いやすく、また差別化で知恵を

ウェアラブル端末の推進をはじめとした新たなITにチャレンジ

短縮・費用の抑制を進めています。今後、このような制度対応に加え、スマートメーター導入やお客さまサービスの更なる向上、それに伴う社内システムの変更が求められており、レッドハットにはビッグデータ分析などの技術支援やコンサルティングの領域で、引き続き力添えをいただきたいと思います」。

絞ることが必要な部分にはITを活用して工夫していきたいと語る同氏。ITを活用した同社のチャレンジは、今後も続く。

OSSを採用したプライベートクラウドを構築し、電力システム改革に活用。今後はビッグデータの活用へ

OSSで「強く」「しなやかな」ITを実現今後は、より新たなITへの「チャレンジ」を宣言

▼ 中部電力におけるITインフラの取り組み

徹底した経営効率化によるコストダウンの取り組み

「業界No.1の低コスト、高生産性の達成」をビジョンに掲げ、インフラベースコストの半減に向け❶共通インフラ(プライベートクラウド)の構築❷ホストのオープン化❸OSSの採用とベンダーロックインの回避を推進

ホスト計算機(共用)

高性能サーバー・PCサーバー(専用)

高性能サーバー(専用)

共通インフラ(プライベートクラウド)

PCサーバー(クラウド:共用)

(商用)OS(商用)APサーバー(商用)データベース(商用)運用管理ソフト

Red HatEnterprise LinuxJBoss,Tomcat,PostgreSQL,Zabbix

OSS 共通インフラ

パッケージソフトや段階的な開発、そして構築を進めてきた共通インフラ(プライベートクラウド)を駆使し、事業のスピードに追従していく

■電力システム改革の実施予定時期

● お客さま サービスの向上● スマートメーター● 自由化・制度対応● 社内システムの変更

電力システム改革への迅速な対応

第1段階

第2段階

第3段階

2015年目途

2016年目途

2018~2020年目途

広域的運営推進機関の設立

電気の小売業への参入の全面自由化

法的分離による送配電部門の一層の中立性確保

( )プライベートクラウド

▼ 「たびJAL」 における実例

システム名:国内ツアーシステム(「たびJAL」)● 老朽化の不安(経年劣化)

開発環境:2003年3月本番稼働:2004年8月

検討開始:2011年~本番稼働:2013年11月

個別(AIX)サーバーの乱立レガシーOS/ミドルウェアの存在

サーバーの統合(可能な限りLinux化)最新のOS/ミドルウェアへ(JBoss)

● JALのIT標準化への対応

古くて耐震対策されていない戸建から、免震対策済み大型マンションへの引越を実現

ハード保守・供給…期限切れの可能性OS/ミドルウェアの保守期限…間近

OSS化の選択:ベンダー依存脱却、ホワイトボックス化売上を最大に、経費を最小に:維持管理の内製化、ベンダー依存脱却

● システムサポート体制の脆弱性

OPEN EYE 5

Red Hat K.K. EDITORIAL 2015

Page 6: OPEN EYE Vol.18

 インテリジェンスが提供する転職支援サービスでは、転職活動をしている求職者からのエントリーを受け、社内の専任キャリアコンサルタント(以下、コンサルタント)がカウンセリングに入り、最終的な転職決定までを支援している。その際には、性別/年齢/希望職種/勤務エリアなど、求職者個々のプロファイルに応じて最適なコンサルタントをアサインするが、このマッチングの実現が、かつては実に難しかったという。以前の状況について、株式会社インテリジェンス BI本部 キャリアBITA(=Business IT Architect)部 ゼネラルマネジャーの片山健太郎氏は、次のように説明する。 「当社には、各領域に専門性を持つ200名以上のコンサルタントがいます。一方、転職支援サービスにご登録いただく求職者の方の数は、月ベースで数万件にも上ります。求職者の方々の専門性に適したコンサルタントをアサインするために、100を超えるマッチングルール群を設けてシステム化を図っていましたが、そこで最適な組み合わせを実現することが難しく、最終的には人の目で見て判断しなければならない非効率な業務が多数発生していました。求職者の方にベストの転職をしていただくためには、その前段としてより相応しいコンサルタントをアサインし、詳細を詰めていく必要がある。マッチングの精度をもっと高めなければならない、という課題がありました」。

 これまで同社では、求職者とコンサルタントとのマッチングを自社開発によるシステムによって行っていたが、自動化できていたのは約4割で、残りの約

6割についてはコンサルタントを統括するマネジャーが目視で内容を確認し、担当するコンサルタントを決めていたという。 「先に話した100を超えるマッチングルール群のマスターは、一度作って終わりというものではありません。例えば社内の組織体制の変更など、環境の変化に応じて随時チューニングが必要になります。以前は、一部の条件に微調整を加えるだけでも半月以上を要しており、チューニングも月に1回が精一杯という状況でした。また、マッチングの精度を高めるためにルールそのものが複雑化していたことも、チューニングに時間がかかる一因でした」。

 同社が自社開発によるマッチングシステムを構築したのは2007年。このシステムではルールのマスター変更に際し、片山氏がゼネラルマネジャーを勤めるBI本部 キャリアBITA部において現場からの変更依頼を受け、月に1回ルールを編集し、運用担当者がそれらを手作業でシステムに反映させるという属人的な業務プロセスになっていた。 「全体のプロセス変更と併せて、システム自体のルール変更も容易にできる、変化に強い仕組みにしていきたいという思いがありました」。 また従来のシステムは複雑化していたため、軽微な改修でも多大な手間と工数がかかり、年間で数百万円単位のコストが発生していたという。こうした運用コストの低減も重要なテーマだった。 「現行システムを“いかに変化に強い仕組みにできるか”という課題が、今回のスタート地点です。また属人な運用フローをロジックとして組み込むことも必要でした。これらを考えた時、従来のようにスクラッチで作り変えるのが正しいのかどうか。何かいいソリューションはないかと探っていた時に出会ったのが、レッドハットのRed Hat JBoss BRMSでした」。

 同社では2011年から、より柔軟な開発の実現とベンダーロックインからの脱却という観点から、OSSの積極活用を大きな方針として打ち出しており、グループの情報システム会社であるインテリジェンスビジネスソリューションズと連携してOSSを使った自社開発を行っていた。 また片山氏は、「一般的なBRMS(ビジネスルールマネジメントシステム)の存在も以前から知っており、強い関心を持っていた」と話す。同氏は、他社事例を参考にしながら実用に耐え得るものか否かを見定め、BRMS市場の広がりも睨みながら、自社で活用できる選択肢の1つとしてBRMS製品を考え始めたという。 「その中でJBoss BRMSを採用した理由は、やはり信頼性とコストです。JBoss BRMSは我々が求めた機能面も十分に満たしており、大手通信会社や保険会社での導入事例も豊富で、実に大きな信頼感をもちました。また今回、他の商用製品も検討対象としましたが、残念ながらコスト的にまったく見合うものではありませんでした」。 実際の導入プロジェクトは2013年から構想を練り始め、2014年2月に着手。レッドハットにも相談しながら、それぞれ2ヵ月を要して実装、本番環境での検証、そしてチューニングを行い、同年8月にカットオーバーした。

 まず片山氏が一番の課題として挙げた、最適なコンサルタントをアサインする精度の向上について、BI本部 キャリアBITA部 プロジェクトマネジャーの佐々木貴浩氏は以下のようにJBoss BRMSの導入効果を強調する。

 「これまで求職者の方とコンサルタントのマッチングで自動化できていたのは約4割でしたが、これが7割近くまで向上しました。単に自動化の比率が高まっただけでなく、精度の向上を伴った効果です」(佐々木氏)。 またマッチングルールのマスター変更については、従来の手作業に代わり、自動変換ツールによる仕組みを構築。統計解析ツールと自社開発したビジネスルールを自動変換するツールを組み合わせ、統計解析ツールが生成した“決定木”と呼ばれる最適化モデルをビジネスルールとして、JBoss BRMSに投入するというフローを確立した。これによってマニュアル作業は不要になり、マスターの変更も従来の月1回から週2回にまで頻度を増やせるようになった。 この点についてBI本部 キャリアBITA部 キャリアプロジェクトグループ マネジャーの山川飛鳥氏は、「マネジャーの業務負担が減り、マスターの更新頻度が高まったことで、ビジネスチャンスを逃さない、より柔軟な対応を採れるようになった」と高く評価する。 「例えば景況感の変化に応じて、柔軟かつスピーディにマッチングルールを変更できるようになりました。数字ではなかなか見えにくい部分ですが、会社が成長していく上で多大な効果をもたらしてくれる仕組みです」(山川氏)。

 また片山氏が挙げたJBoss BRMSのコスト削減効果についても、佐々木氏は商用製品との詳しい比較として、次のように説明する。 「サーバーに搭載されているプロセッサのコア数から見た時、商用製品の場合はコア数に応じて課金されますが、レッドハット製品では一定のコア数まで価格は変わりません。JBoss BRMSと比較して、10倍以上のコストがかかる商用製品もありました」(佐々木氏)。 またマッチングルールのマスター変更に伴うシステム開発コストも、年間で数百万円近くかかっていた費用が、数人日レベルで対応可能になった。 「導入コスト、運用コスト双方の観点から、JBoss BRMSの導入は大きなコスト削減効果をもたらしてくれました」(佐々木氏)。

 今回のJBoss BRMS導入に際し、同社が従来の使い勝手を担保するために重要視したのがパフォーマンスだ。求職者とコンサルタントとのマッチングを行うために投入される1回あたりの処理件数は2,000~3,000件。その際、約25万件に及ぶマッチングルールのマスター情報も読み込み、これらを併せた処理を20~30分以内に収める必要があった。 「当初は既存システムと比較してもかなり遅いという状況に陥っていましたが、マスター情報を分割して読み込む方法を提案してもらったり、JBoss BRMSにマルチスレッド機能を実装してもらい、内部で処理を分散する方法を採るなどして、我々の要求するパフォーマンスを実現することができました。レッドハットのコンサルタントの方がソースコードまで見ながらさまざまな施策を提案し、対応してくれたからこそ、改善できたのだと思います。我々の要求を真摯に受け止めてもらった点には心から感謝しています」(佐々木氏)。

 片山氏は「今後は、一定のルール化を図ることができる他の業務プロセスにもJBoss BRMSを積極的に適用していきたい」と将来の展望を語る。 「ただしその際には、今回のようにルール変更の頻度が高い業務プロセスでなければ、導入するメリットが限られてしまう。その点は十分に見極めながら、適用の可否を判断したいと思います」(片山氏)。 また現在同社では、データの活用を促進するための専属チームを設けてあらゆる検討を行っており、

その一環として“データの論理統合”に強い関心があると話す。 「現在、各事業部は個別でデータを管理していますが、それらを統合できれば、何かしら新しい取り組みに繋げられるかもしれない。レッドハットには、データ仮想化を実現するRed Hat JBoss Data Virtualizationという製品があるので、論理的なデータ統合の可能性についても探っていきたいと考えています。レッドハットには、さらなる強力な支援を期待しています」(片山氏)。

 「DODA(デューダ)」など、各種求人メディアの運営や人材紹介サービスなどを展開するインテリジェンスでは、専任のキャリアコンサルタントが求職者と面談およびカウンセリングを実施、転職の決定に至るまでをサポートしている。同社では、この両者の最適なマッチングを実現するために、レッドハットのビジネスルールエンジン「Red Hat JBoss BRMS」を採用。適材適所を目指す支援サービスの向上を実現した。

ビジネスルールエンジンで、俊敏性を大幅向上。変化に合わせたルールの最適化と、インテリジェントな自動化を実現

ビジネスルールエンジンの導入の流れ

01 背景 02 課題 03 システム要件 04 Red Hat JBoss BRMSを選んだ決め手

“ベストマッチ”が求められる転職支援サービスのシステム

マッチングルールの最適化で、より精度の高い求職者とコンサルタントとの組み合わせを

属人的な業務プロセスを改善し、“変化に強いシステム”の実現を目指す

成功事例が証明する高い信頼性と圧倒的なコストメリットを評価

・マッチングの精度を高めたいという現状認識

・目視で行う非効率な業務の発生

・自動化できていたマッチング件数は約4割

・1回のチューニングにかかる時間は半月以上

・より簡単にルール変更ができるシステムが必要

・運用コストの低減も重要なテーマ

・3年前からOSSの積極活用に取り組む

・JBoss BRMSの採用理由はコストと信頼性

システム要件属人的な業務プロセスを改善し、

“変化に強いシステム”の実現を目指す

背景“ベストマッチ”が求められる転職支援サービスのシステム

課題マッチングルールの最適化で、より精度の高い求職者とコンサルタントとの組み合わせを

Red Hat JBoss BRMSを選んだ決め手成功事例が証明する高い信頼性と圧倒的なコストメリットを評価

JBoss BRMSを導入したメリット1ルール変更のプロセスを自動化し、変更の頻度と精度を大幅に向上

6 OPEN EYE

Success story for your business

ユーザー事例Success Story

(株)インテリジェンスビジネスルールエンジンの導入

Page 7: OPEN EYE Vol.18

 インテリジェンスが提供する転職支援サービスでは、転職活動をしている求職者からのエントリーを受け、社内の専任キャリアコンサルタント(以下、コンサルタント)がカウンセリングに入り、最終的な転職決定までを支援している。その際には、性別/年齢/希望職種/勤務エリアなど、求職者個々のプロファイルに応じて最適なコンサルタントをアサインするが、このマッチングの実現が、かつては実に難しかったという。以前の状況について、株式会社インテリジェンス BI本部 キャリアBITA(=Business IT Architect)部 ゼネラルマネジャーの片山健太郎氏は、次のように説明する。 「当社には、各領域に専門性を持つ200名以上のコンサルタントがいます。一方、転職支援サービスにご登録いただく求職者の方の数は、月ベースで数万件にも上ります。求職者の方々の専門性に適したコンサルタントをアサインするために、100を超えるマッチングルール群を設けてシステム化を図っていましたが、そこで最適な組み合わせを実現することが難しく、最終的には人の目で見て判断しなければならない非効率な業務が多数発生していました。求職者の方にベストの転職をしていただくためには、その前段としてより相応しいコンサルタントをアサインし、詳細を詰めていく必要がある。マッチングの精度をもっと高めなければならない、という課題がありました」。

 これまで同社では、求職者とコンサルタントとのマッチングを自社開発によるシステムによって行っていたが、自動化できていたのは約4割で、残りの約

6割についてはコンサルタントを統括するマネジャーが目視で内容を確認し、担当するコンサルタントを決めていたという。 「先に話した100を超えるマッチングルール群のマスターは、一度作って終わりというものではありません。例えば社内の組織体制の変更など、環境の変化に応じて随時チューニングが必要になります。以前は、一部の条件に微調整を加えるだけでも半月以上を要しており、チューニングも月に1回が精一杯という状況でした。また、マッチングの精度を高めるためにルールそのものが複雑化していたことも、チューニングに時間がかかる一因でした」。

 同社が自社開発によるマッチングシステムを構築したのは2007年。このシステムではルールのマスター変更に際し、片山氏がゼネラルマネジャーを勤めるBI本部 キャリアBITA部において現場からの変更依頼を受け、月に1回ルールを編集し、運用担当者がそれらを手作業でシステムに反映させるという属人的な業務プロセスになっていた。 「全体のプロセス変更と併せて、システム自体のルール変更も容易にできる、変化に強い仕組みにしていきたいという思いがありました」。 また従来のシステムは複雑化していたため、軽微な改修でも多大な手間と工数がかかり、年間で数百万円単位のコストが発生していたという。こうした運用コストの低減も重要なテーマだった。 「現行システムを“いかに変化に強い仕組みにできるか”という課題が、今回のスタート地点です。また属人な運用フローをロジックとして組み込むことも必要でした。これらを考えた時、従来のようにスクラッチで作り変えるのが正しいのかどうか。何かいいソリューションはないかと探っていた時に出会ったのが、レッドハットのRed Hat JBoss BRMSでした」。

 同社では2011年から、より柔軟な開発の実現とベンダーロックインからの脱却という観点から、OSSの積極活用を大きな方針として打ち出しており、グループの情報システム会社であるインテリジェンスビジネスソリューションズと連携してOSSを使った自社開発を行っていた。 また片山氏は、「一般的なBRMS(ビジネスルールマネジメントシステム)の存在も以前から知っており、強い関心を持っていた」と話す。同氏は、他社事例を参考にしながら実用に耐え得るものか否かを見定め、BRMS市場の広がりも睨みながら、自社で活用できる選択肢の1つとしてBRMS製品を考え始めたという。 「その中でJBoss BRMSを採用した理由は、やはり信頼性とコストです。JBoss BRMSは我々が求めた機能面も十分に満たしており、大手通信会社や保険会社での導入事例も豊富で、実に大きな信頼感をもちました。また今回、他の商用製品も検討対象としましたが、残念ながらコスト的にまったく見合うものではありませんでした」。 実際の導入プロジェクトは2013年から構想を練り始め、2014年2月に着手。レッドハットにも相談しながら、それぞれ2ヵ月を要して実装、本番環境での検証、そしてチューニングを行い、同年8月にカットオーバーした。

 まず片山氏が一番の課題として挙げた、最適なコンサルタントをアサインする精度の向上について、BI本部 キャリアBITA部 プロジェクトマネジャーの佐々木貴浩氏は以下のようにJBoss BRMSの導入効果を強調する。

 「これまで求職者の方とコンサルタントのマッチングで自動化できていたのは約4割でしたが、これが7割近くまで向上しました。単に自動化の比率が高まっただけでなく、精度の向上を伴った効果です」(佐々木氏)。 またマッチングルールのマスター変更については、従来の手作業に代わり、自動変換ツールによる仕組みを構築。統計解析ツールと自社開発したビジネスルールを自動変換するツールを組み合わせ、統計解析ツールが生成した“決定木”と呼ばれる最適化モデルをビジネスルールとして、JBoss BRMSに投入するというフローを確立した。これによってマニュアル作業は不要になり、マスターの変更も従来の月1回から週2回にまで頻度を増やせるようになった。 この点についてBI本部 キャリアBITA部 キャリアプロジェクトグループ マネジャーの山川飛鳥氏は、「マネジャーの業務負担が減り、マスターの更新頻度が高まったことで、ビジネスチャンスを逃さない、より柔軟な対応を採れるようになった」と高く評価する。 「例えば景況感の変化に応じて、柔軟かつスピーディにマッチングルールを変更できるようになりました。数字ではなかなか見えにくい部分ですが、会社が成長していく上で多大な効果をもたらしてくれる仕組みです」(山川氏)。

 また片山氏が挙げたJBoss BRMSのコスト削減効果についても、佐々木氏は商用製品との詳しい比較として、次のように説明する。 「サーバーに搭載されているプロセッサのコア数から見た時、商用製品の場合はコア数に応じて課金されますが、レッドハット製品では一定のコア数まで価格は変わりません。JBoss BRMSと比較して、10倍以上のコストがかかる商用製品もありました」(佐々木氏)。 またマッチングルールのマスター変更に伴うシステム開発コストも、年間で数百万円近くかかっていた費用が、数人日レベルで対応可能になった。 「導入コスト、運用コスト双方の観点から、JBoss BRMSの導入は大きなコスト削減効果をもたらしてくれました」(佐々木氏)。

 今回のJBoss BRMS導入に際し、同社が従来の使い勝手を担保するために重要視したのがパフォーマンスだ。求職者とコンサルタントとのマッチングを行うために投入される1回あたりの処理件数は2,000~3,000件。その際、約25万件に及ぶマッチングルールのマスター情報も読み込み、これらを併せた処理を20~30分以内に収める必要があった。 「当初は既存システムと比較してもかなり遅いという状況に陥っていましたが、マスター情報を分割して読み込む方法を提案してもらったり、JBoss BRMSにマルチスレッド機能を実装してもらい、内部で処理を分散する方法を採るなどして、我々の要求するパフォーマンスを実現することができました。レッドハットのコンサルタントの方がソースコードまで見ながらさまざまな施策を提案し、対応してくれたからこそ、改善できたのだと思います。我々の要求を真摯に受け止めてもらった点には心から感謝しています」(佐々木氏)。

 片山氏は「今後は、一定のルール化を図ることができる他の業務プロセスにもJBoss BRMSを積極的に適用していきたい」と将来の展望を語る。 「ただしその際には、今回のようにルール変更の頻度が高い業務プロセスでなければ、導入するメリットが限られてしまう。その点は十分に見極めながら、適用の可否を判断したいと思います」(片山氏)。 また現在同社では、データの活用を促進するための専属チームを設けてあらゆる検討を行っており、

その一環として“データの論理統合”に強い関心があると話す。 「現在、各事業部は個別でデータを管理していますが、それらを統合できれば、何かしら新しい取り組みに繋げられるかもしれない。レッドハットには、データ仮想化を実現するRed Hat JBoss Data Virtualizationという製品があるので、論理的なデータ統合の可能性についても探っていきたいと考えています。レッドハットには、さらなる強力な支援を期待しています」(片山氏)。

05 JBoss BRMSを導入したメリット1 06 JBoss BRMSを導入した

メリット2JBoss BRMS導入の成功要因07 08 今後の展望/

レッドハットへの期待

ルール変更のプロセスを自動化し、変更の頻度と精度を大幅に向上

商用製品と比較して、導入コストは10分の1以下

レッドハットのサポートでパフォーマンスが向上、提案力の高さも大いに評価

他業務プロセスへのBRMS適用も検討、データの論理統合の可能性も探りたい

・マッチングの自動化比率が7割近く大幅アップ

・マネジャーの負担軽減でビジネスチャンスを逃さない対応が可能に

・コア数比較で圧倒的なコストメリットを実感・年間数百万円の開発コストも数人日レベルに

・マスターの分割読み込みなどさまざまな施策を検討・JBoss BRMSのマルチスレッド化も実現

・ルール変更の頻度が高い業務プロセスを見極めて適用の可否を判断

・他のJBoss製品によるデータの論理統合の可能性も探りたい

JBoss BRMSを導入したメリット2商用製品と比較して、

導入コストは10分の1以下

JBoss BRMS 導入の成功要因レッドハットのサポートでパフォーマンスが向上、提案力の高さも大いに評価

今後の展望/レッドハットへの期待他業務プロセスへのBRMS適用も検討、データの論理統合の可能性も探りたい

佐々木 貴浩 氏

株式会社インテリジェンスBI本部 キャリアBITA部プロジェクトマネジャー

片山 健太郎 氏

株式会社インテリジェンスBI本部 キャリアBITA部ゼネラルマネジャー

山川 飛鳥 氏

株式会社インテリジェンスBI本部 キャリアBITA部

キャリアプロジェクトグループ マネジャー

 日々変化するビジネス現場のルールをシステムとして可視化し、一元管理する仕組み。複雑な商品の組み合わせや約款との整合性チェック、条件判断などを、独立したビジネスロジック(ビジネスルール)として管理できる。 リサーチ会社ITR発行のレポートによると「Red Hat JBoss BRMS」は国内BRMS市場で26.7%、大手の商用製品を抜いてシェアNo.1のポジションを獲得。2013年度には大手製造業など多くの企業が導入を決めた。

ビジネスルールマネジメントシステム(BRMS:Business Rule Management System)とは

▼ ルール変更のプロセスを自動化し、 変更の頻度と精度を大幅に向上

現在

登録 履歴DBカウンセリングマッチング

従来

運用担当者が手作業で集約

運用担当者が手作業でマスター編集

顧客属性に応じて適切なキャリアコンサルタントをアサイン

各マネジャーが毎月マッチングルールを

手作業で編集

登録 カウンセリングマッチング

履歴DBの実績データを統計解析ツールで分析

統計解析ツールが決定木を生成

決定木をビジネスルールに自動変換

ビジネスルールをBRMSに自動読込

BRMS

統計解析

履歴DB

OPEN EYE 7

Red Hat K.K. EDITORIAL 2015

Page 8: OPEN EYE Vol.18

OPEN EYE Vol.182015年2月 発行

発行:レッドハット株式会社東京都渋谷区恵比寿4-1-18tel:03(5798)8500

Copyright 2015 Red Hat Inc. All Rights Reserved. "Red Hat"、"Red Hat Enterprise Linux"、"JBoss"、"Openshift"および"Shadow Man"ロゴは、米国およびその他の国における Red Hat, Inc. の登録商標です。Linuxは、Linus Torvalds氏の登録商標です。OpenStackR Word MarkとOpenStackのロゴは、米国とその他の国における OpenStack Foundation の登録商標/サービスマークまたは商標/サービスマークのいずれかであり、OpenStack Foundation の許諾の下に使用されています。Red Hat は、OpenStack FoundationやOpenStack コミュニティの系列企業ではなくまた、支持や出資を受けていません。その他全ての登録商標及び商標の所有権は、該当する所有者が保有します。本誌に掲載された内容の無断複製・転載を禁じます。

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○ レッドハット最新レポート

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 始めにレッドハット 代表取締役社長の廣川裕司は「これまでのITインフラを支えてきたWindowsの時代が、大きく動き始めている」と指摘、「その変化の先にあるのが、まさにOSSベースのクラウドだと我々は考えている」と強調した。

 2014年、レッドハットは仮想化、IaaS、PaaS、統合クラウド管理の各領域で製品強化を図った。今後の企業システムの標準インフラと目されるクラウド基盤を、より柔軟に構築し、管理していくための戦略だ。 まず仮想化製品として「Red Hat Enterpr ise Virtualization 3.4」を6月にリリース、7月にはIaaS製品として“今唯一デファクトスタンダードになりつつあるOpenStack”をベースとした「Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform 5.0」を、11月にはPaaS製品としてOpenShiftをベースとした「OpenShift Enterprise 2.0」を市場に投入。さらに、プライベート/パブリックが混在するハイブリッドなクラウド環境を統合管理する「Red Hat CloudForms 3.1」を10月から提供開始した。 「レッドハットはOSSを核にして、ITインフラの地殻変動をドライブしていく。我々のこの戦略にご賛同いただいたOpenStackパートナー様は現在15社で、日本市場の約9割を網羅できるほどの規模感だ」。 IDCの調査によれば、国内のサーバーOS市場は現段階ではまだWindowsが約半数を占めているものの、直近の2~3年を見れば、Linuxは毎年約13%の伸びを示しており、この成長は今後も続くと予測される。※

 「2014年の国内における有償Linuxの割合は約24%で、このうちの85%をレッドハットが占めている。そして2020年には、有償Linux全体で50%以上のシェアを獲得するだろう。この実現に向けて、レッド

ハットはさまざまな取り組みに着手している」。 2014年7月にはコンテナ型仮想化ソフトウェアのDockerを正式サポートした「Red Hat Enterprise Linux 7」をリリース、そして今回、“Windows to Cloud”を支援するマイグレーションサービスを提供開始した。メインフレーム/UNIXからLinuxへのマイグレーションをサポートするRed Hat OSS Integration Center(2013年9月設立)の新たなサービスで、喫緊のターゲットは、2015年7月にサポート終了を迎えるWindows Server 2003からクラウドへの移行だ。 「Windows to Cloudのマイグレーションを我々と一緒に支えていただく賛同パートナー様も現在13社で、今後このエコシステムをさらに拡充させていく。そして我々は、東京五輪が開催される2020年までにLinuxを国内ナンバーワンにしたいと考えている」。

 続いて常務執行役員 パートナー・アライアンス営業統括本部長の古舘正清が、実際のWindows to Cloudソリューションを紹介し、Windowsユーザーが抱える4つの課題について言及した。 1つ目はサポート切れへの対応で、2015年から2020年までほぼ1年ごとに各種Windows製品がサポート切れを迎え、企業はその都度プラットフォームをどう変えていくかを考える必要に迫られる。しかしOSSならそうした心配は全くない。 2つ目がサポート切れに伴うTCOの増大だ。ライセンスコストや保守コストに加え、インフラ改変に付随するダウンタイムの発生により、従業員の生産性は大きく低下する。またバージョンアップやセキュリティ対策などを行うITスタッフの対応コストも必要だ。 「WindowsをRed Hat Enterprise Linux(RHEL)に移行することで、1年間の総所有コストは34%も削減できる」。 3つ目の課題がクラウドの有効活用、すなわちクラウドポータビリティ(=可搬性)だ。 「最近“オンプレミス環境で利用しているLinux上のワークロードを一定時期だけパブリッククラウドに移して使いたい”というご要望が増えてきている。そこで

我々は、認定クラウドプロバイダーのクラウドサービスとレッドハットのサブスクリプションをオンプレミスで購入していただいたお客様向けに、Red Hat Cloud Accessという機能を提供している。既にAmazonとGoogleのパブリッククラウドサービスと連携しており、順次国内パートナーを拡充していく」。 そして4つ目の課題が、ミッションクリティカルなアプリケーションの稼働環境の確保だ。 「我々はミッションクリティカルなアプリケーション領域における実績も、Windowsを大きく上回っている。世界22か国、26の証券取引所がRHELを採用しており、全世界の金融取引の50%以上がRHELベースで動いている」。 Red Hat OSS Integration Centerの提供するマイグレーションサービス「Red Hat Professional Services」では、Windowsを標準基盤にしていない企業、Windowsへの依存度を下げたい企業を対象に、Windows Server 2003からOSSへの移行を、現状調査→移行→運用→更新という4つのフェーズで支援する。対象領域は、Webサーバー、ファイルサーバー、データベース、アプリケーションの4つだ。 最後に古舘は「単にWindowsをクラウドに移行することが最終形だとは考えていない」と語り、「Windowsベースで作られているさまざまなアプリケーションをコンテナ技術を使ってクラウドに最適化したアプリケーションに替えていくことがこれからの流れだと認識している」と強調した。 「今後クラウドが標準プラットフォームになることは間違いない。それに併せて全てのアプリケーションをクラウドに移していく取り組みを、お客様、パートナー様と一緒になって進めていきたい」。

クラウド基盤製品の提供とパートナーとの協業で、ユーザー企業の“Windows to Cloud”を強力に支援

Windows to Cloudを4つのフェーズで支援、今後はアプリケーションの最適化もサポート

 2015年7月にサポート切れを迎えるWindows Server 2003。その移行先として有効となるのが、環境変化にも柔軟に対応できるOSSベースのクラウド基盤だ。2014年12月10日の記者発表から、レッドハットのWindows to Cloud戦略と実際のソリューションについてご紹介する。

エコシステムを拡充してWindows to Cloudに拍車をかけ、2020年東京五輪までにLinuxを国内シェアNo.1にする!

Windows Server 2003からOSSベースのクラウド基盤への移行サービスについて記者発表

※出典:IDC Japan, 2014年6月 「国内システムソフトウェア市場2013年の分析と2014年~2018年の予測」

Masakiyo Furudate

Red Hat OSS Integration CenterによるWindows Server 2003移行

▼ レッドハットの移行サービス

PostgreSQL,MySQL(MariaDB)

Samba4

Apache,Red Hat JBossMicrosoft IIS

ファイルサーバー

Active Directory

SQL Server

Windows Server 2003

Samba4

Red Hat Enterprise Linux

Yuji Hirokawa

Success story for your business Red Hat K.K. EDITORIAL 2015

http://jp-redhat.com/oss_integration_center/Red Hat OSS Integration Centerについて  http://jp-redhat.com/migration/WindowsからCloud への移行