Top Banner
作業道の改良による伐出作業システムの生産性の向上と経 費削減効果の検証 誌名 誌名 森林利用学会誌 ISSN ISSN 13423134 巻/号 巻/号 331 掲載ページ 掲載ページ p. 25-35 発行年月 発行年月 2018年1月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat
12

作業道の改良による伐出作業システムの生産性の向上と経 費 ...作業道の改良による伐出作業システムの生産性の向上と経 費削減効果の検証

Sep 21, 2020

Download

Documents

dariahiddleston
Welcome message from author
This document is posted to help you gain knowledge. Please leave a comment to let me know what you think about it! Share it to your friends and learn new things together.
Transcript
Page 1: 作業道の改良による伐出作業システムの生産性の向上と経 費 ...作業道の改良による伐出作業システムの生産性の向上と経 費削減効果の検証

作業道の改良による伐出作業システムの生産性の向上と経費削減効果の検証

誌名誌名 森林利用学会誌

ISSNISSN 13423134

巻/号巻/号 331

掲載ページ掲載ページ p. 25-35

発行年月発行年月 2018年1月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

Page 2: 作業道の改良による伐出作業システムの生産性の向上と経 費 ...作業道の改良による伐出作業システムの生産性の向上と経 費削減効果の検証

25 ~ 35 森利誌33(1) 2018

論文 特集「主伐と更新」

作業道の改良による伐出作業システムの生産性の向上と経費削減効果の検証

山崎真*・山崎敏彦*• 鈴木保志**・三谷幸寛***• 森本正延***• 長澤佳暁****

山崎真・山崎敏彦・鈴木保志・三谷幸寛• 森本正延・長澤佳暁:作業道の改良による伐出作業システムの

生産性の向上と経費削減効果の検証森利誌 33(1) : 25 ~ 35, 2018. 高知県の南国市黒滝地区において,

森林組合が施業地を集約化し,スイングヤーダや欧朴I製のタワーヤーダによる効率的な集材作業と 10tト

ラックによる現場から市場への直接運材を導入するため,既設の低規格な作業道を改良し事業地の幹線と

なる高規格な作業道を作設した。作設経費については,改良経費に低規格作業道の開設費を加えても,高

規格作業道を新設するよりも安価となった。作業道改良前後の伐出作業の労働生産性は,改良前の単線地

曳集材と小運搬作業による生産性が0.45mツ人時であったのに対し,改良後に可能となったタワーヤーダ

集材では 0.98mツ人時となった。伐出作業調査の生産性を用いると,作業道の開設費用も含めた伐出経費

は作業道改良前後で 13,817円/面から 8,895円/面に削減される結果となった。ただし,単木材積が小さ

くなるとコストは必ずしも低くならないことから, タワーヤーダがその性能を生かし,低コストで集材す

るためには単木材積が一定以上大きいことが必要である。

キーワード:作業システム,作業道急傾斜地

Shin Yamasaki. Toshihiko Yamasaki, Yasushi Suzuki, Yukihiro Mitani, Masanobu Morimoto and Yoshiaki

Nagasawa : A verification study of a spur road improvement project on harvesting operational

efficiency and total cost reduction. J. Jpn. For. Eng. Soc. 33(1): 25 -35, 2018. In Kurotaki area,

Nankoku city, Kochi Prefecture, a forest owners'association of the area consolidated the fragmented

individually managed stands, improved existing narrow spur roads and made them wide enough for 10

t trucks, and introduced more efficient harvesting systems such as swing yarders and European tower

yarder. Cost for the improvement and construction of narrow spur roads was lower compared to that

for construction of new wide spur roads. The operational efficiency before the improvement of roads

was 0.45 m3 per person-hour for the harvesting method of winching and short transportation, whereas

that after the improvement was 0.98 m3 per person-hour for the harvesting method of the tower yarder.

The total cost involved in the harvesting operation and the spur road improvement was reduced from

13,817 yen per m3 to 8,895 yen per m3 after the improvement, based on the application of the result of

operational efficiency obtained from the field study. However, the tower yarder system would require

larger tree volume for its full performance and low logging cost because smaller tree volume does not

result in lower cost.

Keywords : operation system, spur road, steep terrain

論文(技術) 2017年9月30日受付, 2017年12月20日受理

連絡先 (Correspondingauthor) : 山崎真 (ShinYamasaki) E-mail : [email protected]

本報告の一部は第 23回森林利用学会学術研究発表会で口頭発表した。

*高知県立森林技術センター Kochi Pref. For. Tech. Ctr., Kami 782-0078

**高知大学教育研究部自然科学系農学部門 Fae. Agric. and Marine Sci., Kochi Univ., Nankoku 783-8502

***香美森林組合 Kami For. Owners'Assoc., Kami 781-4212

.... (一社)高知県山林協会 Kochi. Pref. For. Assoc., Kochi 780-0046

Page 3: 作業道の改良による伐出作業システムの生産性の向上と経 費 ...作業道の改良による伐出作業システムの生産性の向上と経 費削減効果の検証

26

1. はじめに

1.1 集約化と作業道

日本の森林は所有規模が零細であり,多くの森林所有

者は単独で効率的な施業を実施することが困難である。

このため,隣接する複数の所有者の森林を取りまとめて,

路網整備や間伐等の森林施業を一体的に実施する「施業

の集約化」が進められている。施業の集約化により,作

業箇所がまとまり,路網の合理的な配置や高性能林業機

械による作業が可能となることから,素材生産コストの

削減が期待できる(林野庁2015)。この集約化を支援す

るため,国では,平成 24年度から森林経営計画制度を

導入し,集約化された事業地に対しての支援を行ってい

る。さらに,林野庁では平成22年度に林道規程を改正し,

新たに大型トラック等による搬出を想定した「利用形態

がもっぱら森林施業の実施である林道(林業専用道)」

の規定が盛り込まれた。この林業専用道は,高性能林業

機械の導入と大型トラックによる搬出を想定して整備さ

れており,平成 27年度には,このような大型林業用車

両の走行を想定した林道と林業専用道が全国で413km

開設されている(林野庁2017)。集約化された施業地に

幹線道としての林業専用道を開設し,高性能林業機械を

使った効率的な施業と大型トラックによる現場から市場

や製材工場等への直接運材が可能になれば,原木の増産

につながることが期待される。

1.2高知県の状況

高知県は県土の約 84%を林野が占め,そのうちの約

65%がスギ・ヒノキを主とした人工林という全国屈指の

林業県である。しかし,その素材生産最を見ると,昭和

63年度には 936千面であったものが平成 22年度には

404千面まで落ち込んだため,高知県産業振興計画に

即し,施業地の団地化促進や高性能林業機械の導入支援

など,様々な木材増産に関する県の政策が実施された。

その結果,平成 26年度には 610千面まで回復し,今後

は平成 31年度までに 780千面に増産することを目標に

掲げている。高知県の森林資源の状況を見ると,民有林

の齢級配置では平成 26年度現在45年生を超える森林が

全体の約 72%を占め,森林の高齢化と間伐の遅れが進

んでいるのが現状である(高知県林業振興・ 環境部

2016)。一方で,その原木を生産する森林の約 61%が傾斜角

30度以上の急傾斜地に成立しており(後藤2011),効率

的な伐倒集材作業が可能なハーベスタ等の高性能林業機

械を林内に直接入れて作業を行うことが困難なことか

ら,低規格な作業道を林内に開設し,小型のウインチ付

きグラップルなどを利用して単線地曳集材を行い,小型

のフォワーダやトラックにより現場内士場まで小運搬を

行うといった施業が広く行われている。また, これらの

作業の甚盤となる作業道及び林道の開設状況を見ると,

作業道の年間開設総延長は平成 17年の 4,109kmから平

成26年には 7,139kmに延びており,この期間で年平均

J. Jpn. For. Eng. Soc. 33 (1) 2018

303.0 km延伸しているのに対し,林道と林業専用道では,

同期間で2,371kmから 2,483kmであり,年平均 11.2km

の延伸に留まっている。なお,平成 26年度末の民有林

における林道の路網密度は 5.3m/haであり,同じく作

業道の路網密度は 15.2m/haであった(高知県林業振興・

環境部2016)。また,林業専用道クラスの高規格作業道

は平成 26年度の開設延長が23.6kmとなっており,こ

れらのことから,森林施業を行うために林道や林業専用

道といった高規格道路よりも低規格な作業道が主に開設

されていると考えられる。

また,森林の所有形態をみると, 20ha未満の林地を

保有する林家の林地面積が全体の約 60%を占めており

(高知県総務部統計課2016), そのような林地で森林施業

の作業効率を上げるために林地の集約化が行われてい

る。高知県では,集約化された森林を「森の工場」と呼び,

この森の工場内で行われる搬出間伐や作業道開設,高性

能林業機械の導入に対して支援を行っている。高知県木

材増産推進課によると,この支援事業を開始した平成 16

年度から平成 27年度末までの 11年間で 177か所,高知

県内の民有林約 14%に当たる 65,980haが森の工場とし

て認定されている。

これらのことより,高知県では林地の集約化が進めら

れているものの,そこに開設される作業道は従来の低規

格のものが多いことから施業も小型の林業機械を利用し

たものが主流となっており,集約化された事業地におい

ても大型の機械を適用する利点を活かした森林施業が必

ずしも行われていないと考えられる。さらに,立木の大

径化が進む施業地においては,従来型の集材作業システ

ムでは効率の良い作業ができず,作業システムのミスマ

ッチが起きていることも考えられる。集約化された事業

地では施業面積が大きいことから作業道の開設ルート選

択の自由度が高くなり,開設ルートの地形的条件の制約

を回避できる可能性が高くなる。このことから,集約化

された事業地で効率的な施業を行うためには地形や施

業条件に応じて適切な作業システムを導入することが必

要であり,それらの多様な作業システムを導入するため

には,基盤となるトラック道の整備が必要である(後藤

2011)。そこで, 10tトラックによる運材や高性能林業

機械による施業の導入を可能にするために作業道を改良

する事業を実施した。本論文では,事業地における作業

効率を事業実施前後について調査し,比較を行った結果

について報告する。

2. 方法

2.1調査対象事業地の概要

調査を行った高知県南国市黒滝地区は,従来から林業

に熱心な篤林家が多い地域である。この地域の林家の多

くは自家労働により作業道を作設し,小型の林業機械を

使用して森林施業を行ってきた。しかし近年,高齢化や

後継者不足により自家労働を行う林家が減少しているこ

Page 4: 作業道の改良による伐出作業システムの生産性の向上と経 費 ...作業道の改良による伐出作業システムの生産性の向上と経 費削減効果の検証

森利誌33(1) 2018

とや,戦後植栽された植栽木の大径化により,小型の林

業機械では効率的な作業を行うことが困難になってきて

いることから,地元の森林組合や林業事業体がこれらの

森林を集約化し,地元の林家に替わって間伐等の施業を

行うようになってきている。

当調査対象の森林(図ー1) はこの黒滝地区で香美森

林組合が集約化を行った事業地である。地質は主に砂岩

泥岩の互層で一部凝灰岩やチャートを含んでおり,岩質

は強固な部分と風化し脆い部分が混在している。森林簿

上の総面積は 311.6haであり,林分構成はスギ ・ヒノキ

人工林が全体の 82.5%を占め,残りの 17.5%は主にアカ

マツ,モミ,広葉樹林等であった。スギ・ヒノキの齢級

構成はスギが7齢級以上, ヒノキは 8齢級以上となって

おり,高齢林化が進み,間伐が遅れている林分が多い。

事業地内の既設作業道の総開設延長は約 20.5kmであ

り作業道の密度は 61m/haであるが,その作業道の多

くは幅員が3m以下と狭いうえにカープの曲線半径が5

m程度で拡幅もない箇所があり,大型の車両の通行が困

難である。このことから,収穫期を迎え,立木の大径化

が進んでいる当事業地において,効率的な搬出間伐や皆

伐更新等の森林整備が困難であることが想定された。そ

こで,当事業地において,急傾斜地での効率的な間伐作

業が可能であるタワーヤーダの導入(中澤ら 2012) と,

10 tトラックによる事業地から市場への原木の直接運材

を行うため,既設作業道の一部改良と新規開設を行った。

この作業道の改良 ・開設効果を検証するため,作業道改

良前後の作業システムによる労働生産性の比較と,伐木

集造材及び運材に掛かる作業コストの比較を行った。

2.2作業道改良の規格と路線選定

作業道の改良にあたり,まず改良を行う作業道の規格

を検討した。作業道改良後に行う森林施業は高性能林業

機械を利用した搬出間伐と, 10tトラックによる集材現

場から市場への原木の直接運材を想定した。作業道改良

後に導入する林業機械は,中型タワーヤーダまたは 0.45

[コ 事業地口 スギ・ヒノキ人工林ー・··• 既設作業道

-- 新設作業逢00000 改良後 幹線作業道

••••• 改良後支線作業道

図— l 調査対象事業地

27

m3クラスのスイングヤーダとし,原木の運材では,高

知県内で主に使用されている 10tショ ートボデイトラッ

クを使用することとした。このことにより,改良を行う

作業道の規格は,全幅員が3.5m以上で,最小曲線半径は,

10 tショ ート ボデイトラックが切り返しを行うことなく

曲がることが可能な 8.0m以上とし,この規格で改良す

る路線を幹線作業道とした。また,当事業地は急傾斜地

が多いことから幅員及び最小回転半径を十分に取れない

路線も想定され,そのような箇所では 8tトラックを使

用することを想定し,全幅員 3.0m以上,最小曲線半径

6.0 m以上で改良することとし,その路線を支線作業道

とした。

改良する作業道の選定は,以下のようにした。まず,

昭和 61年から昭和 63年にかけて事業地の入口から中間

付近を通るように開設され,開設以来大きな崩壊等が発

生していない比較的安定している既設作業道の 4,850m

を幹線作業道として改良することとした。さらに事業

地北部にある森林資源を効率的に収穫するため,北部へ

の幹線作業道の作設も望まれたが,地形条件により困難

であったため,幹線作業道から北部へ延びる小規模な既

設作業道 3,500mを支線作業道として改良することとし

た。そして,この幹線作業道と支線作業道の分岐点に現

場内土場を設置し,既設作業道から小型 トラックやフォ

ワーダで運材される原木を集積し, 10tトラックに積み

替えて運搬を行うことで作業の効率化を図ることとし

た。また,事業地内の東部および西部において,収穫可

能な資源があるが作業道が未整備な箇所については,新

たに作業道を開設した。その結果,新規に開設した作業

道の延長は 2路線で合計 1,794m となった。作業道の改

良及び開設工事は平成 27年4月から平成 28年3月まで

行われた。ここで本論文で想定した作業システムと路網

の組み合わせについてまとめておくと,改良基幹作業道・

新設作業道についてはタワーヤーダ,改良支線作業道に

ついてはスイングヤーダ,既設作業道についてはウイン

チとなる。

2.3作業システムと功程調査

作業道の改良により新たに導入可能となった伐木集造

材作業システムの効果を検証するため,作業道改良前と

改良後の作業システムによる功程調査を行い,労働生産

性を比較した。

功程調査は,幹線として改良された作業道に導入可能

となったタワーヤーダを使用し,香美森林組合が集材を

行った調査地 A(図ー 2)を平成 28年2月17日に実施し,

作業道改良前の状態で,同組合が通常選択する集材作業

として, 0.25m3クラスのスイングヤーダによる単線地曳

集材(上荷)を行った調査地 B(図ー 3)を平成 28年2

月26日に実施した。そして同じく作業道改良前に地元

の林家が行っていた作業として,本事業地の所有者の一

人が家族経営で施業をしている事業地で, 0.25m3クラス

のウインチ付きグラップルを使用して単線地曳集材(上

Page 5: 作業道の改良による伐出作業システムの生産性の向上と経 費 ...作業道の改良による伐出作業システムの生産性の向上と経 費削減効果の検証

28

げ荷)を行った調査地 C(図ー 4) を平成 28年1月26

日と 27日に実施した。それぞれの調査地の概要と使用

機械を表ー 1に示す。

2.3.1タワーヤーダ集材功程調査 調資地 Aの伐倒集

造材作業では,伐倒をチェーンソー,集材を MM

Forsttechnik社(オーストリア)製の牽引式タワーヤー

ダWANDERF ALKE U-AM-2to及び同社製の自動繋留

式搬器ShelpaU-3to, 造材には CAT312Dをベースマシ

ンとしたハーベスタ Keto150ECOSUPERを使用し,荷

外しにはオートチョーカーを使用した。牽引式タワーヤ

ーダは大型の重機運搬車で現場に搬入し,現場内の移動

では大型のトラクタで牽引した。集材作業は, タワーヤ

ーダを改良後の幹線上に設置し, 主索は斜面下方の谷の

対岸に向かってほぼ水平に架設した。先柱からタワーヤ

ーダまでの支間長は 316mであった。集材作業の作業手

順は,まず主索を張るための線下測量,線下伐開を行い,

タワーヤーダの架設後,伐倒集造材作業を,伐倒 l名,

0 5 _ 図ー 3 調査地 B スイングヤーダ単線地曳集材功程調査

J. Jpn. For. Eng. Soc. 33 (1) 2018

荷掛け 2名,造材 l名の 4名で同時並列作業で行った。

間伐方法は, タワーヤーダを設置した線下の列状間伐の

ほか,線下高が十分であったため主索に対して直角方向

に間伐を行う魚骨状間伐を行った。集材は上荷で行い,

オートチョーカーを使用することによりハーベスタのオ

ペレータが降りることなく荷外しをすることが可能であ

った。作業道上で造材した材は作業道上及び作業道脇に

槌積し,運材は 10tトラックで原木は市場まで,バイオ

マス材はバイオマス発電所まで積み替えなしで行った。

功程調査を行う調査プロットは,主索のほぽ中間地点で

あるタワーヤーダから約 140mの地点に面積 2,908面で

設定した。

2.3.2スイングヤーダ単線地曳功程調査 調査地 Bの

伐倒集造材作業では,伐倒をチェーンソー,集材は

CAT307Cをベースマシンとしたスイングヤーダ,造材

はリースの CAT314Dをベースマシンとした南星

CM-40ZNプロセッサ,そして小運搬には 2tトラックを

使用した。作業手順は,伐倒作業と集材作業を並列作業

で行い,集材作業後に作業道脇に集積した材をプロセッ

サで造材し,作業道上に椛積 したあと, 2tトラ ックで

現場内土場まで小運搬を行った。小運搬の運搬距離は

GISによる測定で 3.58kmであった。作業毎の作業員数

は,伐倒荷掛作業が2名,集材作業が1名,造材作業が

1名,小運搬作業が2名であった。功程調査は,作業道

から谷側下方向に 40m,作業道沿に 15mの面積 600m2

の調査プロットを設定して行った。

2.3.3グラップルウインチ功程調査 調査地 Cの伐倒

集造材作業では,伐倒をチェーンソー,集材を日 立

ZAXIS75US後方小旋回型をベースとした南星社製ウイ

ンチ付きグラップル,造材をチェーンソー,小運搬作業

を2tトラックにて行った。功程調査は作業道から谷側

下方向に約 30m,作業道沿に約 20m,面積 712面の調

査プロットを設定し,集材距離約 20m, 0.25 m3ベース

図ー 4 調壺地c

十●

0 10 15 ● ""'●● ,,_! ---・-・・-

グラップルウインチ単線地曳集材功程調査

Page 6: 作業道の改良による伐出作業システムの生産性の向上と経 費 ...作業道の改良による伐出作業システムの生産性の向上と経 費削減効果の検証

森利誌33(1) 2018

のウインチ付きグラップルを使用して集材作業を行っ

た。調査プロット全域の集造材に 1日半を要した。作業

人数は, 1日目は伐倒荷掛 1人,集材 1人,荷外しと造

材1人の3名作業で行い,2日目は伐倒仰掛及び造材 1人,

集材 1人の 2人作業であった。集材はすべて全木集材で

あり,造材は作業道上で行った。また,現場の作業道は

大型トラックが走行できないことから, 2tトラックを

使用して,公道沿いの土場まで 280mの小運搬を行った。

2.4生産性分析方法

全ての調査地において,伐倒集造材及び小運搬作業の

それぞれの工程をビデオカメラで撮影し,その映像から

作業時間を分析し,出材積からシステム生産性,労働生

産性を算出した。出材積は造材後の末口直径と材長から

末口二乗法で算定し,システム生産性,労働生産性は機

械化のマネジメント(全国林業改良普及協会 2001) を参

考に算出した。なお,本調査では,調査地師に直列作業,

並列作業の作業内容が異なることから,各工程のシステ

ム生産性を算出し,計算式によって全体のシステム生産

性を算出した。

2.4.1 タワーヤーダ集材作業にかかる生産性 調査地

Aは,タワーヤーダの設置にかかる測量,架設,撤去の

生産性を算出するため,作業にかかった人役と時間, 1

線あたりの収穫量について聞き取りを行い,作業班 l班

4人あたりのシステム生産性を凡として算出した。また,

タワーヤーダの主索を張るための線下伐倒はタワーヤー

ダ設置前に行い,そのシステム生産性は尺とした。そ

れ以外の伐倒,集材,造材は並列作業で行っており,タ

ワーヤーダ作業にかかるシステム生産性を (1)から (4)

式によって求めた。まず,伐倒,集材,造材の直列作業

としての生産性P。(m3/時)を (1)式で求めた。

P。=1/(1/Pa+1/Pb+ 1/P,) (1)

29

尺:伐倒作業のシステム生産性 (m3/時)

尺:集材作業のシステム生産性 (m3/時)

pc: 造材作業のシステム生産性 (m3/時)

並列作業のシステム生産性PA(m3/時)は, (2)式で求

められる(全国林業改良普及協会 2001)。

P"=m X Ks X P,。 (2)

m: 作業工程数

K,: システム稼働率

なお, Kは伐倒・集材・造材の 3工程のそれぞれの稼働

率の平均値とし, (3)式により求める。

Ks=(TA/T/¥+TB/T/¥+Tc/T/¥)/m

T" : 全作業時間

TA: 伐倒工程に要した時間

九:集材工程に要した時間

冗:造材工程に要した時間

(3)

これらの測量・架設・撤去Pd, 先行伐倒尺と.並列作

業の伐木集造材作業P"を疸列型作業として. (4) より

全体のシステム生産性p (m3/時)を求めた。

P= 1/(1/Pd + 1/Pe + 1/PA) (4)

2.4.2スイングヤーダ単線地曳作業にかかる生産性

調査地Bでは,伐側作業と集材作業を並列作業,造材と

小運搬をそれぞれ直列作業で行った。なお,伐倒手は荷

掛け作業も行ったが,伐倒作業と集材作業のそれぞれの

作業時間を分けて算出した。並列作業では,まず, (1)

表一 l 調査地の概要

項H 調査地 A 調査地B 調査地c所在地 南国市黒滝 南国市黒滝 南国市中ノ川

主要樹種・林齢 スギ ・51年生 ヒノキ・ 41年生 ヒノキ・ 45年生平均傾斜 15° 28° 14°

平均胸高直径 30 cm 21 cm 19 cm

平均樹高 21.9 m 13.6 m 13.1 m

平均幹材積 0.74 m3 0.25 m3 0.20 m 3

立木密度 942本/ha 1,383本/ha 1,978本/ha

蓄積 697 m3/ha 351 mツha 401 m3/ha

間伐率(本数率/材積率) 28% / 23% 36% I 31% 31% / 25%

間伐木平均幹材積 0.61 m3 0.22 m3 0.16 m 3

間伐方法 列状(魚骨状)間伐 点状間伐 点状間伐タワーヤーダ スイングヤーダ グラップルウインチ

集材機械 MM Forsttechnik CAT307C ZAXIS75US

W ANDERFALKE スイングヤーダ仕様 南星ウインチ

ハーベスタ プロセッサ

造材機械 CAT312 D CAT314D (小旋回型) チェーンソー

Keto 150ECO SUPER 南星 CM-40ZN

Page 7: 作業道の改良による伐出作業システムの生産性の向上と経 費 ...作業道の改良による伐出作業システムの生産性の向上と経 費削減効果の検証

30

式の造材作業尺を除いた伐倒作業尺および集材作業Pb

から直列作業としての生産性P。を求め,次に (2) 式に

よりシステム生産性pl¥を求めた。なお, システム稼働

率K,は伐倒,集材作業の 2工程のそれぞれの稼働率の

平均値として計算し, (3)式の伐倒工程に要した時間 TA

及び集材作業工程に要した時間刀により算出した。伐

木集材作業の生産性Pl¥と造材作業Pc,小運搬作業Eを

直列作業として (4)式により全体のシステム生産性を

求めた。ただし, (4)式の凡を尺に,尺をEに置き換

えた。

2.4.3グラップルウインチ集材作業にかかる生産性

調査地 Cでは,調査地内の伐木集造材作業及び小運搬作

業を完了するのに 2日を要した。1日目の作業では伐倒,

集材,造材の全ての作業を並列作業で行い, 2日目の作

業では伐木,集材を並列作業,造材と小運搬をそれぞれ

直列作業で行った。このことから,まず,伐倒作業Pが

集材作業尺及び 1日目の造材作業尺を並列作業として

(1)から (3) により システム生産性pl¥を計算した。次

に,並列作業のシステム生産性pl¥と, 2B§ の造材作

業pc' 及び小運搬作業Eを直列型作業として (4)式に

より 全体のシステム生産性Pを求めた。なお,並列作業

の労働生産性算定における作業員数は, 1日目の 3人作

業の 1人当たりの作業時間 19,954秒と 2日目の 2人作業

での 1人当たりの作業時間 6,844秒から加重平均で算出

し, 2.7人とした。

2.5 作業コスト計算方法

2.5.1対象林分と材積 作業道改良前後の間伐施業に

係るコストを比較した。比較を行う対象の林分は,事業

地311.6ha内のスギ・ヒノキ人工林257.1haのうち,作

業道から施業が可能な林分と した。作業道改良前の施業

対象林分は,当調査における単線地曳集材作業の実績か

ら40mの範囲とし,既設作業道の延長上にある事業地

のスギ・ヒノキ林を施業対象林分とし GISで面積を算出

すると 133.8haとなった(図ー 5)。また,作業道改良後

の施業対象林分は,幹線作業道をタワーヤーダ,支線作

業道をスイングヤーダ,既設作業道を単線地曳集材で施

業を行った場合を想定し, タワーヤーダの集材範囲を本

機を所有する香美森林組合の使用状況により,幹線道路

から 300m (中澤ら 2015)とし,スイングヤー ダの集材

範囲を, タワーヤーダの集材範囲を除く支線作業道から

100 m, 単線地曳集材の範囲をタワーヤーダおよびスイ

ングヤーダの集材範囲を除く既設作業道から 40m とし

た場合 タワーヤー ダの集材対象林分面積が 192.3ha,

スイングヤーダの集材対象林分面積が24.0ha, 単線地曳

集材の集材対象林分面積が 19.2haとなり,合計で235.5

haとなった(図ー 6)。

森林簿からスギ・ヒノキ林の haあたりの蓄積を算出

すると 482mツhaであり,比較対象林分の総材積は

113,511 m3となった。これらの林分を材積率 30%で間伐

し,バイオマスを含めた造材歩留りを 80%とすると,搬

J. Jpn. For. Eng. Soc. 33 (1) 2018

出可能な材積は 27,243面となり,これら材を搬出間伐

した場合に,間伐施業に係るコストを比較した。なお,

現地の地形や法面の状況から索張りができない可能性が

あるが,当事業地ではその影響は小さいと考えられるこ

とから,その影響については考慮しないこととした。コ

ストの計算には作業道の改良・開設に係るコスト,間伐

施業に係るコスト,当事業地入口までの運材に係るコス

トを算出し, これらの合計を間伐施業に係るコストとし

た。

2.5.2伐木集造材作業コストの計算 伐木,集材,造

材作業のそれぞれのシステム生産性をもとに作業コスト

を算出した。作業コストは「低コスト作業システム構築

事業事業報告書」 (B本森林技術協会 2010)を参考に

算出し,機械価格はタワーヤーダ(大型)が35,000千円,

ハーベスタ(中型)が25,000千円,スイングヤーダ(小

型)が 12,500千円,プロセッサ(中型) 19,000千円,グ

図ー 5 作業道改良前 単線地曳集材対象林分

口 事業地

D スギ・ヒノキ人工林

口 タワーヤーダ集材対象林分

EJ スイングヤーダ集材対象林分

● 単線地曳集材対象林分

ー・-・-既設作業道

ー一 新設作業道

ロロロcc改良後幹線作業道

••••• 改良後支線作業道

図ー 6 作業道改良後 タワーヤーダ・スイングヤーダ・単

線地曳集材対象林分

Page 8: 作業道の改良による伐出作業システムの生産性の向上と経 費 ...作業道の改良による伐出作業システムの生産性の向上と経 費削減効果の検証

森利誌33(1) 2018

ラップル(ウインチ付き)小 10,500千円,チェーンソー

202千円とした。人件費は平成 27年12月の高知県労務

資材単価の森林作業員 14,700円/日を使用した。なお,

タワーヤーダの測量,架設撤去作業には人件費のみ算出

した。

2.5.3現場内運材作業コストの計算 原木の現場内運

材作業のコストは,改良前作業道は 2tダンプトラック,

幹線作業道と改良後の新設作業道は 10tトラック,支線

作業道は 8tトラックの使用を想定して算出した。運材

距離は, トラックの種類ごとに施業地を分割し,それぞ

れの施業地の重心から事業地の入口までとした。コスト

の計算は「治山林道必携(積算・施工編)」の建設機械

損料算定表(日本治山治水協会 ・B本林道協会2014)を

使用し,運転手人件費及び燃料費は高知県単価を使用し

た。これらにより時間当たりの人件費機械損料,燃料

費を算出し合計を運材作業コストとした。人件費はすべ

てのトラックで同じく 2,873円/時となった。その他の

経費は, 2tダンプトラックでは機械損料が982円/時,

燃料費が424円/時となり, 8tトラックでは機械損料

が3,150円/時燃料費が955円/時 10tトラックでは,

機械経費が4,080円/時燃料費が 1,158円/時となった。

これにより時間当たりの運材作業コストは 2tダンプト

ラックが4,279円, 8tトラックが6,978円/時 10tト

ラックは 8,111円/時となった。運材にかかる時間は, 2

tダンプトラックと 10tトラックの運材功程調査の結果

から,それぞれの運材及び空前の作業道平均速度, 2t

ダンプトラックでは運材速度 11.60km/h, 空荷速度

11.85 km/h, 10 tトラックでは運材速度 12.27km/h, 空

荷速度 12.96 km/hと,それぞれの運材距離から算定し

た。なお, 8tトラックの走行速度は 10tトラックと同

等として算定した。材積の重さ換算は, 1tあたり 1.2m3

とし, 1回あたりの積載量は, 10tトラックは 12m3, 8

tトラックは 9.6m3, 2 tダンプトラックは 2.4面とした。

積込み,荷おろしの時間はそれぞれ功程調壺の結果を用

い, 8tトラックについては, 10tトラックの結果から

積載量の割合に応じて算出した。その結果, 10tトラッ

クの積込みは 861秒,荷おろしは 478秒, 8tトラック

は積込みが725秒,荷下ろしは 436秒, 2tダンプトラ

ックは積込みが847秒,荷おろしが317秒であった。なお,

10 tトラックヘの積込み,荷下ろしはトラック搭載のグ

ラップルクレーンで行い, 2tダンプトラックヘの積込

みは 0.25m3ベースのグラップル,荷おろしはダンプト

ラックの荷台を傾けて材をおろした後人力により槌積

を行った。

3. 結果と考察

3.1労働生産性の比較

調壺地 A, B, Cにおけるシステム生産性及び労働生

産性を表ー 2~4に示す。

3.1.1伐倒工程 調査地 Aの線下伐倒を除き,伐倒作

31

業の労働生産性を見ると,調査地 Aは9.37mツ人時

調査地 Bは 1.62mツ人時調査地 Cでは 1.50mツ人時

であった。調査地 Aが他の調壺地と比較して高い値と

なっているのは,調査地 Aのタワーヤーダによる間伐

方法はスギ林の魚骨状の列状間伐であり,伐倒のみの作

業であったのに対し,調査地 B,Cの伐倒作業は,ヒノ

キ林の点状間伐であり,列状間伐よりも選木に時間を要

したことや,掛かり木が多く発生したことが主な要因と

考えられる。また, 1本あたりの平均立木材積も調壺地

Aが0.61面であるのに対し,調査地Bが0.22m円調査

地Cが0.16m3と,調査地Aで特に大きい値となってい

ることも影響していると考えられる。以降の集材,造材,

小運搬の各工程および全体を通しての労働生産性につい

ても,このことを考慮して結果を解釈する必要がある。

3.1.2集材工程 集材工程の時間当たりの労働生産性

では調査地 Aのタワーヤーダ集材が最も高い 5.35mツ

人時であり,次に調査地Bのスイングヤーダ単線地曳集

材の 2.02mツ人時調査地 Cのグラップルウインチ単線

地曳集材0.61mツ人時という結果であった。タワーヤー

ダの集材では,平均集材距離が 140mで,主索からの最

大横取り距離は 20m程度であったが最も高い値となっ

た。また,調在地 Aでは,集材工程の林内作業を荷掛

け1名及び搬器操作 1名の 2名で行ったが,搬器は半自

動運転と遠隔操作が可能であることから,林内での集材

作業員は 1名にすることが可能であり,その場合の労働

生産性はさらに高くなると考えられる。調査地 Bと調壺

地Cの作業を比較すると,調査地 Bの地形は地山傾斜

の勾配がほぼ一定であることから地曳集材時に地形的な

支障はほとんどなかったが,調査地 Cは地形の起伏が大

きく,地曳の際に集材木が地面の凹凸にかかることがあ

ったうえ,作業の支障となる集材木の枝葉や梢端を除去

しながらの作業であったことから,調査地Bの方が生産

性が高かったと考えられる。

3.1.3造材工程 造材工程の労働生産性では,調査地

Aのハーベスタによる造材作業では 10.57mツ人時調

査地 Bのプロセッサによる造材作業では 6.91mツ人時

調査地 Cではチェーンソーによる造材作業を行い, 1B

目は 1.00mツ人時 2日目は 5.88mツ人時であった。調

壺地 Aでは,ハーベスタのオペレータが,搬器とオー

トチョーカーのラジオコントロール操作を兼務しなが

ら,集材作業と造材作業を行った。ハーベスタを使用す

るのは,ヘッドに角度を付けるチルト機能があることか

らタワーヤーダで集材され斜めに吊られた状態の材を直

接つかむことが容易であり,オートチョーカーでの荷外

しの際にあらかじめ集材木をつかみ,安定させることに

よって材が山腹を滑り落ちることなく造材作業に移るこ

とができるためとのことであった。集材した材はその場

で造材し,製材用とバイオマス用の材に分けて作業道及

び作業道脇に槌積した。調査地 Bの造材作業では,集材

後に作業道上に集積していた材をプロセッサで造材し,

Page 9: 作業道の改良による伐出作業システムの生産性の向上と経 費 ...作業道の改良による伐出作業システムの生産性の向上と経 費削減効果の検証

32

作業道上へ極積する作業と,バイオマス材以外の梢端及

び元材の処理を行った。調査地 Cでは,作業道上の材を

チェーンソーを使用して人力により造材を行った。 1日

目の造材は荷外し作業と兼務での作業であり,林業を始

めたばかりの新人作業員による造材作業であったため,

直材,曲材の判断や採寸に時間を要したことから生産性

が低くなったと考えられる。また, 2日目は熟練した作

業員による,集材作業で作業道上に並べられた材の造材

作業であり,集材時に枝葉や梢端を除去していることや,

バイオマス材については寸法を計測せずに歪切りを行っ

たことから,生産性が高い値となったと考えられる。

3.1.4小運搬工程 調査地 Aは小運搬作業はなく,調

査地 Bの労働生産性は 1.77mツ人時であり,調査地cでは 1.70mツ人時であった。調査地Bと調奇地 Cでは,

運搬距離が異なるが生産性がほぽ同等になったのは,調

査地Bでは 3.3面の原木を 2tトラックで 1回で運搬し

たのに対し,調壺地 Cでは作業道の勾配がきつい部分が

あったことから 4.5面の原木を 3回に分けて運搬したこ

とが主な要因であると考えられる。

3.1.5全工程 全体の労働生産性を比較すると,調査

地Aが0.98mツ人時調壺地 Bが0.45mツ人時調奔

地 Cが0.17mツ人時であり,調査地 Aの労働生産性が

J. Jpn. For. Eng. Soc. 33 (1) 2018

最も高い値となった。この要因の一つとしては,作業道

改良の結果,大型トラックによる直送が可能になり小運

搬作業が必要ではなくなったことが考えられる。また,

調壺地 Bと調査地 Cでは,立木の大きさがほぽ等しい

にも関わらず生産性に差があるのは,調壺地 Cの地形の

起伏が比較的大きく,集材作業における地曳きの際に集

材木が地面の起伏に掛かり集材時間を要したこと, 1日

目の造材作業に時間を要したことが原因と考えられる。

なお,「3.1.l伐倒工程」で記したように調査地 Aの単木

材積は他の調在地よりも約 3倍大きく,そのことも生産

性の差の要因であると考えられる。そこで仮に他の調壺

地と同様だった場合の生産性を測量・架設撤去を除く

各工程の生産性を 3分の 1として推計すると, 0.48mツ

人時となる。

3.2作業コストの比較

3.2.1作業道改良・開設コスト 作業道の改良工事費

について香美森林組合に聞き取りを行った結果,幹線道

路が 18,349千円,支線が7,626千円であった。改良延長

よりそれぞれの改良単価を算出すると,幹線作業道が

3,929円Im,支線作業道が2,179円Imとなる(表ー 5)。

これらの改良単価を高知県の作業道開設の工事平均単価

と比較した。幹線道路では同程度の規格である幅員 3.5

表ー 2 調査地 A タワーヤーダ集材 生産性

作業項目システム生産性 稼働率 作業員数

(m3/時) (人)

先行伐倒 直列作業 20.70 2 伐倒 9.37 0.7 1 集材 (並列作業) 10.70 (9.16) 1.0 2 (4)

造材 10.37 1.0 1 測量・架設・撤去 8.12 4

全体 3.56

労働生産性(mツ人時)

10.35 9.37 5.35 (2.29)

10.57 2.03

墜( )内は並列作業

作業項目

伐倒

集材(並列作業)

造材 直列作業小運搬 直列作業

全体

表ー 3 調壺地 B スイングヤーダ単線地曳集材 生産性

システム生産性 稼働率 作業員数(m3/時) ( 人 )

労働生産性

(mツ人時)

3.23 2.02

(1.98) 0.6 1.0

2

1

(3) 1.62 2.02

(0.66)

6.91 3.53 1.07

1

2

6.91 1.77

彗)内は並列作業

作業項目

伐倒

集材 (並列作業)造材造材 直列作業

小運搬 直列作業全体

表ー 4 調壺地 C グラップルウインチ単線地曳 生産性

システム生産性 稼働率 作業員数(m3/時)(人)

1.50 0.61 (0.57)

143 ii 0.4 1 1.0 1 (2.7)

0.3 0.7 1 2

労働生産性(mツ人時)

1.50 0.61 (0.21)

1.00 5.88 1.70 017

)内宜壷列作業

Page 10: 作業道の改良による伐出作業システムの生産性の向上と経 費 ...作業道の改良による伐出作業システムの生産性の向上と経 費削減効果の検証

森利誌33(1) 2018

m以上の林業専用道規格相当の工事費平均単価が25,0ll

円Imであり,新規開設に対して改良費は 16%程度とな

った。支線作業道では同程度の規模である高知県の中

核作業道の平均単価が 10,416円Imであり,新規開設に

対して改良費は 21%程度であった。また,新規に開設

した作業道については工事費が 13,463千円であり,単価

は7,624円Imであった。

これらの工事費をもとにして,出材積に対する改良・

開設コストを算出した。タワーヤーダ集材を行う林分面

積は 192.3haであり出材積は 22,246m3となる。なお,

採算性を下げる箇所については対象としないという選択

肢も考えられるが,事業の日的として原木の増産がある

ため,作業道の開設・改良により集材可能となった区域

を対象とした。タワーヤーダ集材を行うのは改良後の幹

線作業道及び新規開設作業道であり,これらの合計工事

費は 31,812千円であることから,出材積に対する工事費

の単価は 1,430円/m3となった。さらにスイングヤーダ

集材を行う林分面積は 24.0haであり,出材積は 2,776m3

となる。スイングヤーダによる集材作業を行うのは改良

後の支線作業道であり,工事費は 7,626千円であること

から,単価は 2,747円/面であった。

また,作業道改良前の集材対象林分の面積は 133.8ha

であり,改良後の集材対象面積である 235.5haよりも

101.7 ha少ない。このことから,この差分についても比

較対象とするため,改良前集材対象林分 133.8haと既設

作業道の延長23,598mから路網密度176m/haを算出し,

差分の面積 101.7haを単線地曳集材を行うためには新た

に17,899mの作業道の開設が必要となると想定した。こ

の作業道の開設単価を高知県平成 27年度作業道実行経

費の平均 3,120円Imとすると,開設コストは 55,844,880

円となり,全出材積27,243面における開設単価は 2,050

円/m3となった。

3.2.2伐木集造材作業コスト 2.52の方法により算出

した結果を表ー 6に示す。調壺地 Aにおける伐倒作業

コストは,先行伐倒作業が276円/m3, 魚骨状伐倒作業

が323円/面であったことから,先行伐倒作業の材積

15.72 m3, 魚骨状伐倒作業の材積26.28m3より加重平均

により算出し,伐倒作業コストは 305円/m3となった。

さらに, タワーヤーダによる集材作業が2,775円/m3,

ハーベスタによる造材作業が2,375円/m3,測量・架設・

撤去が1,207円/m3となり,合計で6,662円/面となった。

項目

幹線

支線

開設全体

(改良)

表ー 5

延長

(m)

4,670 3,500 1,766 9,936 (8,170)

作業道改良・開設事業費

改良 新規開設(比較)工事費 単価 単価

(千円) (円 /m) (円 Im)

18,349 3,929 25,011 7,626 2,179 10,416 13,463 7,624

33

また,調査地 Bでは,伐倒作業が 1,682円/m3, スイン

グヤーダによる単線地曳集材作業が5,034円/m3, プロ

セッサによる造材作業が3,519円/m3となり,合計で

10,235円/m3となった。調査地 Cでは,チェーンソーに

よる伐倒作業が2,028円/m3, ウインチ付きグラップル

による集材作業が 13,518円/面であった。造材作業は,

1日目の集材と同時作業での造材作業が2,097円/m3,2

H目の単独の造材作業が591円/面であったことから,

1日目の造材材積3.60m3, 2日目の造材材積0.91m3よ

り加重平均により算出し,造材作業のコストは 1,793円

/m3となり,合計で 17,339円/m3となった。ここでも調

在地 Aの生産性が実際の 3分の 1だった場合について

試算すると,伐木集造材コストは 14,230円/m3と推計さ

れる。

3.2.3現場内運材作業コストの比較 2.5.3の方法によ

り算出した結果,改良前の総運材経費は 41,749,722円と

なり, 1面あたりの現場内運材作業コストは 1,532円/

面となった。また,改良後の総運材経費は 18,706,175円

となり,同じく l吋あたり現場内運材作業コストは 687

円/m3となった。

3.2.4作業道改良前の総作業経費 作業道の改良前後

の作業コストを表ー 7に示す。作業道改良前の伐木集造

材作業の単価は,当事業地内の調査地Bで行ったスイン

グヤーダによる単線地曳集材の作業コスト 10,235円/m3

を用いた。運材作業コスト 1,532円/面と,単線地曳集

材を行うための追加作業道の開設単価 2,050円/面を合

計すると作業道改良前の間伐運材コストは 13,817円/m3

となった。

3.2.5作業道改良後の総作業経費 作業道の改良経費

は,幹線,支線の改良および新規開設分を合計すると

39,438,486円であり,これを出材積27,243面で割ると単

価が 1,448円/m3となった。伐木集造材のコストでは,

タワーヤーダ集材では,単価が6,662円/面であり,集

材対象林分の面積から出材積を算定すると 22,246m3と

なることから,伐木集造材のコストは 148,202,852円とな

った。また,スイングヤーダを使用したランニングスカ

イラインによる作業は,本事業地での調査を行っていな

いことから,森林整備革新的取組支援事業で行った土佐

表ー 6 作業コスト比較

調査地 A 調査地 B

(円 Imり(円 Imり

伐倒 305 1,682

項目

集材 2,775 5,034 造材 2 2,375 3,519

測量・架設・撤去 1,207

調査地c(円 Imり2,028 13,518 1,793

全体 6,662 10,235 17,339 1 : 調査地 Aの伐倒コストは,先行伐倒作業の材積と,魚骨状伐倒作業の材積による加重平均。2: 調査地Cの造材コストは,集材と同時作業の造材材積と,単独作業の造材材積による加重平均。

Page 11: 作業道の改良による伐出作業システムの生産性の向上と経 費 ...作業道の改良による伐出作業システムの生産性の向上と経 費削減効果の検証

34

町森林組合の報告(全国森林組合連合会2007)から,ラ

ンニングスカイライン上称による伐木集造材工程単価を

4,125円/m3, 同下前を 5,693円/m3とした。同じくスイ

ングヤーダの上荷と下荷のエリアを GISから算定する

と,それぞれ 14.2ha, 9.8 haとなり,出材積は 1,642m3

と1,134m3となる。このことから,伐木集造材のコスト

は上荷 6,773,250円,下荷 6,455,862円となり,合計で

13,229,112円であった。また,未改良区間については,

改良前と同じく単線地曳集材の伐木集造材コストの

10,235円/面を用いた。集材対象面積 19.2haから出材

積を計算すると 2,221面となり,伐木集造材のコストは

22,731,935円であった。これらを合計すると,改良後の

伐木集造材コストは 184,163,899円となり,単価は 6,760

円/m3となった。現場内運材にかかる単価は, 687円/

面であり,すべての作業を合計すると, 8,895円/面と

なった。

この結果,作業道改良前の 13,817円Im汀こ対し,改良

後は 8,895円/m3となり,作業道を改良することによっ

て4,922円/面の経費削減効果があると考えられる。た

だし,タワーヤーダを用いた調査地 Aの施業では,単

木材積が0.60m3と大きかったため,生産性が高く,経

費の節減効果が高かったと思われる。タワーヤーダの集

材対象区域で, この程度の単木材積が確保できれば,上

記の経費削減効果が期待できる。なお,調査地 Aの生

産性が3分の 1とした場合を想定すると,改良後の作業

経費は 15,075円/m3と推測され,改良前の経費を上回る

結果となった。

4. おわりに

この調査では,集約化された事業地において既設の低

規格作業道を高規格作業道に改良することにより,タワ

ーヤーダやスイングヤーダ等の高性能林業機械の導入と

10 tトラックの市場への直接運材を可能にし,森林施業

の作業コストの低減を図る一例を示した。この事業地で

使用しているタワーヤーダは,集材作業にかかる時間が

荷掛量との間には明確な傾向がないことから(中澤ら

2015), 間伐等の施業が遅れ単木材積が大きくなった林

J. Jpn. For. Eng. Soc. 33 (1) 2018

分でもその能力を発揮することが可能である。一方で,

本調査の結果では調査地 Aのタワーヤーダの生産性は

調査地 BおよびCよりも高かったが, これは単木材積

が大きかったことによる可能性があり,単木材積に比例

して他の調壺地と同等となるように生産性を低く見積も

るとコストは必ずしも低くならないことが示された。従

って,タワーヤーダがその能力を生かし,低コストで集

材するためには単木材積が一定以上大きいことが必要で

ある。多様な施業条件が混在する集約化団地において,

幹線作業道を開設することにより作業システムの選択肢

が増え, より効率の良い作業システムを選択することが

できる(後藤2011) と同時に,高密度な作業道の開設が

困難な地形においても, タワーヤーダといった中距離架

線システムの導入により,集材可能な範囲が広がり,結

果として伐出可能材積が増えるので,作業道の単位材積

あたりの負担が小さくなる。

また,今回の調壺結果では幹線作業道の改良単価が

3,929円Imであり,中核作業道の平均開設単価である

10,416円Imと合計しても,林業専用道規格相当の開設

単価 25,011円Imよりも安価となった。このことから,

作業道の開設においては,低規格作業道をあらかじめ開

設し,その後高規格作業道に改良したほうが安価になる。

この結果については今後検討の余地があるが,安価にな

った理由としては,一部ヘアピンでは盛土構造となった

が,多くの改良区間が切土主体であったことや,既設作

業道が開設されて約 20年が経過しているため路体が安

定しており,締固め等の作業が少なかったこと,既設作

業道を使うことにより残土の移動が容易になったことな

どが考えられる。また,この結果からは,作業道を開設

する手法として,植林や初期の除伐・間伐等の撫育期に

は低規格な作業道を開設し,資源が充実した出材期にな

れば作業道も固まり,その状況により拡幅を行う(大橋

2011) という方法も考えらえる。その場合には,当初か

ら勾配の修正やヘアピンカーブ等の線形を拡幅すること

を前提として作業道の計画を立てることが重要である。

集約化された事業地では最終的に主伐,更新が行われ

るまで繰り返し間伐等の森林整備が行われる。そのため,

表ー 7 作業道改良前後の伐木集造材,運材作業のコスト比較

面積 出材積 コスト(円 Imり区分 項 目 (ha) (mり 作業道 伐木

現場内運材 合計開設・改良 集造材

単線地曳集材133.8 15,478 10,235

(既設作業道)改良前 単線地曳集材

101.7 11,765 2,050 10,235 (追加作業道分)

全体 235.5 27,243 2,050 10,235 1,532 13,817 タワーヤーダ 192.3 22,246 1,430 6,662 スインク`ヤータ`上荷 14.2 1,642 2,747 4,125

改良後 スインゲヤータ‘下荷 9.8 1,134 5,693 単線地曳 19.2 2,221 10,235 全 体 235.5 27,243 1,448 6,760 687 8,895

Page 12: 作業道の改良による伐出作業システムの生産性の向上と経 費 ...作業道の改良による伐出作業システムの生産性の向上と経 費削減効果の検証

森利誌33(1) 2018

それぞれの施業毎にその都度新たな作業道を開設するの

ではなく,必要な箇所に必要なタイミングで,最小限の

投資で必要な施業ができるように,計画的に基盤整備を

することが永続的な森林経営につながると考えられる。

引用文献

後藤純一 (2011)路網を活用した作業システムの現状と

課題.林業経済 63(11) : 19 ~ 22. 高知県林業振興・環境部 (2016)平成 28年度版森林・

林業・環境行政の概要. 174pp, 高知県林業振興・

環境部高知

高知県総務部統計課 (2016)高知県の農林業 2015年農

林業センサス結果 農林豪経営体調査の概要.

64lpp, 高知県総務部統計課,高知.

中澤呂彦•吉田智佳史•佐々木達也・陣川雅樹・田中良明・

鈴木秀典・上村巧・伊藤崇之・山崎俊彦・大矢信次

郎・古川邦明・今富裕樹 (2012)先進林業機械とし

て導入されたタワーヤーダによる間伐作業システム

の開発一架線下における上げ飾集材作業の生産性一

.森利誌 27(3) : 175 ~ 178. 中澤昌彦•吉田智佳史・佐々木達也・陣川雅樹・田中良明・

鈴木秀典・ 上村巧・伊藤崇之・山崎敏彦 (2015)欧

35

1-1-1製中距離対応型タワーヤーダによる間伐作業シス

テムの開発ー上げ荷横取り集材作業の生産性ー.森

利誌 30(1) : 29 ~ 34.

H本治山治水協会・日本林道協会 (2014)平成 26年版

治山林道必携(積算・施工編). 2058pp, 日本治

山治水協会・日本林道協会,東京.

日本森林技術協会 (2010)低コスト作業システム構築事

業事業報告書. 268pp, B本森林技術協会,東京.

大橋慶三郎 (2011) 作業道 路網計画とルート選定

12lpp, 全国林業改良普及協会,東京.

林野庁 (2015)平成 26年度森林・林業白書. 225pp,

林野庁,東京.オンライン, (http://www.rinya.

maff.go.j p/j /kikaku/hakusyo/26hakusyo/index.

html). 2017年 9月26日参照.

林野庁 (2017)平成 28年度森林・ 林業白書. 236pp,

林野庁,東京.オンライン, (http://www.rinya.

maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/28hakusyo/index.

html). 2017年 12月26日参照.

全国林業改良普及協会 (2001)機械化のマネジメント.

239pp, 全国林業改良普及協会,東京.

全国森林組合連合会 (2007)平成 18年度森林整備革新

的取組支援事業実施報告書添付書類. 28pp, 全国

森林組合連合会,東京.