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IEEJ:2003年9月掲載研究報告・討論会資料

北米西海岸におけるＬＮＧ受入基地プロジェクトの動向について

－その背景と現状、太平洋ＬＮＧ市場への影響－

平成15年9月9日

（財）日本エネルギー経済研究所

第一研究部　ガスグル－プ

錦織　一夫

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IEEJ:2003年9月掲載

本調査の位置付け

●資源エネルギ－庁からの受託調査

　　平成14年度『アジア・太平洋地域の天然ガス需給動向調査』の一部

　　　

●アメリカ・メキシコでのヒアリングを実施　　　◆2002年1月末～2月初め

　　　◆ワシントン・ヒューストン・メキシコシティ

　　　◆規制当局・関係機関（FERC、DOE、CRE、 AGA）

　　　◆エネルギ－事業者（Shell、Marathon、ConocoPhillips、PEMEX等）

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報告内容

１．カリフォルニア州の天然ガス需給動向

２．メキシコの天然ガス需給動向

３．アメリカ・メキシコのＬＮＧ規制

４．ＬＮＧ受入基地プロジェクトの概要

５．ＬＮＧ受入基地が実現するための課題

６．ＬＮＧ受入基地が実現した場合の影響

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北米のＬＮＧ受入基地（既存・計画）の位置関係

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はじめに：北米西海岸にＬＮＧ受入基地が計画される目的

●　アメリカ・カリフォルニア州、メキシコ・バハカリフォルニア州

　　（ティファナ、エンセナダ等）での計画

　　　 ⇒主にカリフォルニア州の天然ガス需給ギャップ改善に寄与

　　　　　　　　《メキシコに立地する理由＝Not-In-My-Backyard、ＮＩＭＢＹ問題》

●　メキシコ南西部（ラサロ・カルデナス等）での計画

　　　 ⇒メキシコの天然ガス需給ギャップ改善に寄与

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報告内容







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IEEJ:2003年9月掲載１．カリフォルニア州の天然ガス需給動向　（1/3）

（１）天然ガス需要見通し（単位：MMCF/D）

（出所）カリフォルニア州エネルギ－委員会

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（２）用途別電力需要の実績・見通し（背景＝堅調な人口増）

（単位：GWh）

（出所）カリフォルニア州エネルギ－委員会

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（３）カリフォルニア州向けの州際パイプライン

Production Basin

Pipeline Capacity

（出所）アメリカ・連邦エネルギ－省

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報告内容







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２．メキシコの天然ガス需給動向　（1/4）

（１）天然ガス需給の見通し　　　　　　　　　　　　　（単位：BCF/D）

（出所）メキシコ・連邦エネルギ－規制委員会

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IEEJ:2003年9月掲載２．メキシコの天然ガス需給動向　（2/4）

（２）用途別の天然ガス消費見通し（2001-2011）　　（単位：MCF/D）

発電用需要

（出所）メキシコ・連邦エネルギ－省

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（３）天然ガスのパイプライン網　⇒　東部に発達


バハカリフォルニア地域

⇒国内パイプライン網とは連結なし

ラサロカルデナス

⇒国内パイプライン網の終点

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（４）受入基地の予定地 ⇒ バハカリフォルニア、南西部、東海岸


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報告内容







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３．アメリカ・メキシコのＬＮＧ規制　（1/2）

（１）ガス事業規制

民間資本、特に外資系が参入

（Sempra、Tractebel、Gas Natural、GDF等）

小売自由化が進展天然ガスの配給

パイプライン網の大半はPEMEX所有

⇒第三者アクセスを義務づけ

州際パイプラインに第三者アクセスを義務づけ天然ガスの輸送

国営石油会社PEMEXの独占非規制天然ガスの開発

・生産

メキシコアメリカ

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３．アメリカ・メキシコのＬＮＧ規制　（2/2）

（２）ＬＮＧに関する規制

第三者アクセスを義務づける方向だが、アメリカの左記政策変更を受けて検討中（実例はない）

従来は、FERCの監督下で第三者アクセスを義務づけ

⇒新規の基地はこの義務を解除して投資を促進

受入基地の

運用

連邦エネルギ－規制委員会（CRE）・連邦環境資源省（SEMARNAT）・地元自治体の承認が中心

連邦エネルギ－規制委員会（FERC）の承認の他、環境面・保安面で関係機関の承認が必要

受入基地の

建設

非規制連邦エネルギ－省・化石燃料局（DOE）の承認が必要ＬＮＧ輸入

メキシコ（基本的にはアメリカ型の規制を模倣）

アメリカ

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報告内容







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IEEJ:2003年9月掲載４．ＬＮＧ受入基地プロジェクトの概要　（1/2）

アメリカ・メキシコ西海岸のＬＮＧ受入基地プロジェクト一覧

ペルーからLNG供給か？n.a.メキシコ南西部

Lazaro CardenasTractebel

ボリビアからLNG供給か？n.a.Lazaro CardenasGastream （Repsol YPF）

カリフォルニア州

バハカリフォルニア州

（2003/2 撤退）Vallejo（Shell ＋ Bechtel ）

2008年Offshore of VenturaBHP Billiton

n.a.Humboldt BayCalpine

2007年Long Beach三菱商事

n.a.Offshore of VenturaCrystal Energy

SEMARNATへの申請は却下？

豪DarwinからLNG供給か？n.a.RosaritoConocoPhillips

2003/9以降にCREの承認予定

2003/8 豪GorgonとLNG供給合意n.a.RosaritoChevron Texaco

2003/4 SEMARNATの承認

2003/8 CREの承認

2003/8 豪GorgonとLNG供給合意

2007年EnsenadaShell Gas & Power

2003/4 SEMARNATの承認

2003/8 CREと地元自治体の承認2007年EnsenadaSempra

2003/5 CREの承認

2003/8 インドネシアDonggiからLNG供給合意

2006年TijuanaMarathon

政府当局の承認等稼動予定建設予定場所事業主体

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４．ＬＮＧ受入基地プロジェクトの概要　（2/2）

では実現する基地の数は？

　⇒どれだけの天然ガスが足りないか？

◆カリフォルニア州：約1,000MMcf/d　（2001～2012の需要増加分、ＬＮＧ換算約760万トン/年）

　　⇒対応策　①州際パイプライン容量の拡張による他州からの輸入量増加

　　　　　　　　 ②LNG受入基地の新設

　　　　　　　　（③州内生産量の増加）

　　⇒計画されている基地の能力：500～1,000MMcf/d

　　⇒実現するのは1～2ヶ所程度？

◆メキシコ：約1,800MMcf/d　（2011年時点の需要と国内生産の差）

　　⇒対応策　①アメリカからの輸入量増加

　　　　　　　　 ②東海岸でのLNG受入基地の新設（Altamira：500MMcf/d）

　　　　　　　　 ③南西部でのLNG受入基地の新設（Lazaro Cardenas）

　　⇒南西部では500MMcf/d　（ＬＮＧ換算約380万トン/年）　程度

　　⇒実現するのは1ヶ所か？

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報告内容







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５．ＬＮＧ受入基地が実現するための課題　（1/3）

①　政府当局の規制

　　⇒アメリカでは

　　　・　ＬＮＧ輸入承認手続は簡素化へ

　　　・　受入基地運用は第三者アクセス義務づけから相対交渉へ

　　⇒メキシコでは

　　　・　ＬＮＧ関連規制が暫定的

②　ＮIＭＢＹ（ Not-In-My-Backyard ）問題

　　⇒ＬＮＧの安全性に対する一般市民の根強い不安感

　　⇒エネルギー施設の立地を忌避

③　受入基地での熱量管理

④　ＬＮＧとパイプラインガスの競合

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IEEJ:2003年9月掲載５．ＬＮＧ受入基地が実現するための課題　（2/3）

　③受入基地での熱量管理　　　⇒高熱量のＬＮＧを受け入れるには、低Btuガスとの混合・窒素注入などの対応が必要

【液化基地】【受入基地】

（出所）World Gas Intelligence 誌1,117Malaysia

1,050Indonesia（Tangguh）

1,114Indonesia（Bontang）

1,127Brunei

1,127ＮＷＳ

1,075 ～ 1,130Qatar

1,100 ～ 1,150Oman

1,136Abu Dhabi

1,125～1,150Nigeria

1,113Algeria（Arzew）

1,075Trinidad

1,009Alaska

出荷するＬＮＧの熱量

（Btu/cf）

1,075Elba Island

1,200Lake Charles

1,150Everett

1,100Cove Point

受入可能なＬＮＧ熱量の上限値

（Btu/cf ）

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IEEJ:2003年9月掲載５．ＬＮＧ受入基地が実現するための課題　（3/3）

　④ＬＮＧとパイプラインガスの競合

◆ＬＮＧとパイプラインガスは天然ガス供給において相互補完的

◆しかし、ＬＮＧの競争力はパイプライン整備により左右される

　　●中期的にはカリフォルニアでもメキシコでも天然ガス需給はタイトになる

　　　　⇒天然ガス価格は上昇局面

　　　　⇒ＬＮＧの価格競争力は維持される

　　●ＬＮＧの価格競争力が弱まることはないのか？

　　　　⇒将来的に輸送パイプラインの容量拡張・新設が進捗すれば

　　　　　　・他州からの輸入量が増加（カリフォルニア州）

　　　　　　・国産ガスの流通量が増加（メキシコ）

　　　　⇒価格上昇は抑制される

　　　　⇒相対的にＬＮＧの価格競争力は弱まる

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報告内容







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IEEJ:2003年9月掲載６．ＬＮＧ受入基地が実現した場合の影響　（1/3）

《カリフォルニア州・メキシコでの国内的影響》　　⇒カリフォルニア州・メキシコそれぞれの天然ガス需給バランスが改善される

《太平洋ＬＮＧ市場への影響》

①　ＬＮＧ需給への影響は？

　⇒供給はアジア太平洋（インドネシア・オ－ストラリア等）と南米（ボリビア・ペルー）

との競合

　　⇒アジア太平洋から北米西海岸への流れができても、太平洋ＬＮＧ市場は供給

過多気味であるため、顕著な影響はない

②　では価格面では？

　　⇒北米西海岸向けＬＮＧは、カリフォルニア州際受渡価格やメキシコ国内価格に

リンク

　　⇒北東アジア（日・韓・台）向けとは異なる価格フォーミュラ

　　⇒北東アジア向け現行フォーミュラ（JCCリンク）の妥当性検討の契機になりうる

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IEEJ:2003年9月掲載６．ＬＮＧ受入基地が実現した場合の影響　（2/3）

　ＬＮＧはどこから供給されるのか？

　◆需要地までの輸送距離

（太平洋の産ガス国からバハカリフォルニアRosaritoまでの距離）

3,662

Peru

（Lima）

4,468

SakhalinⅡ

（Prigorodnoye）

7,171

Indonesia

（Bontang）

7,314

Malaysia

（Bintulu）

8,105

豪州

NWS

（単位：マイル）

（出所：各種資料よりエネ研作成）

　◆候補となるＬＮＧ液化プロジェクト　　

約180約500（東北電力90、東京ガス・東邦ガス・大阪ガス

160、石油資源開発48、KOGAS200）680

Malaysia Tiga

（生産開始済み）

6600660Bolivia Pacific LNG

325375(中国福建省向け260、韓国POSCO,SK向け115700Indonesia Tangguh

400（ChevronTexaco200、Shell200、いずれもバハカリフォルニア向け）

600(全量Marathon、バハカリフォルニア向け)

280（東京ガス110、東京電力120、九州電力50）

最大契約量（2003年8月末時点）

100500豪州 Gorgon

0600Indonesia Donggi

680960SakhalinⅡ

未契約分生産量

（単位：万トン/年）

（出所：各種資料よりエネ研作成）

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６．ＬＮＧ受入基地が実現した場合の影響　（3/3）

《太平洋ＬＮＧ市場への影響》

③　ＬＮＧの取引形態への影響は？

　◆既に現在の太平洋ＬＮＧ市場でも、短期・スポット・スワップといった要素を

加味した取引が顕在化

　　　（例①：韓国KOGAS向けの冬場スポット取引）

　　　（例②：東京電力・東京ガスとマレーシアⅠの契約更改）

　◆新たにアジア太平洋（または南米）の産ガス国と北米西海岸との間でＬＮＧ

取引が始まれば

　　　⇒長期契約をベースとしつつも短期・スポット・スワップといった要素を加

味した取引が北米西海岸向けに成立

　◆太平洋ＬＮＧ市場におけるＬＮＧ取引の一層の多様化・活発化を促す契機

の一つ

　　　　（他の変化要素＝新たなＬＮＧ輸入国としての中国・インドの登場）　

問い合わせ先：[email protected]

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