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https://www.sendai.miyagi.med.or.jp/ 仙台市医師会・仙台市医療センター 仙台市医師会 100万市民 仙台市医師会 を結ぶ情報誌 配布用です ご自由にお持ち 帰りください 特集 「脳卒中」脳を守る 時間との闘い ワンポイントアドバイス 尿路結石 ドクター訪問 読者からのご質問に お答えします! 結核について 連載 仙台歴史を歩く CALENDAR 連載 鈴木江美のほっとシーン 支える No.22 輸血を支える血液事業のプロフェッショナル 50 vol. 2020 8
16

Ì yC^ h ç§Â Óp Ï ôM®LU8 4pV b Ð ^ t Ï Ú O è x åt º Ý^ hÏ D ó QUK b Ð \w çC% i « y Ï B 9TbC% qMO Q ôBy ~ v Ø ´ ~ Æ T º ~ d qM óh ôw±^ è ç ôw¤ V è srU

Oct 20, 2020

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  • 鈴木江美のほっとシーン

    50

    「お馬さんは、あったかいよ」会いに来てくれてありがとう

    鈴木江美フォトグラファー/ 仙台市在住

    令和2年8月発行(年2回 通常7月・12月発行)/発行:仙台市医師会/編集責任:医政広報部           〒984-0806 仙台市若林区舟丁64-12 TEL.022-227-1531

    環境への負荷を軽減する「水なし印刷」を採用しています。

    https://www.sendai.miyagi.med.or.jp/

    仙台市医師会・仙台市医療センター仙台市医師会

    100万市民と仙台市医師会を結ぶ情報誌

    配布用ですご自由にお持ち帰りください

    つくしちゃんと間近に向かい合って、みんなの目はキラキラ! お馬さんとたっぷり楽しんだひとときは、最高の思い出

     「1週間後にポニーに会える

    よ!」美里町南郷児童館に通う

    小学生の皆さんが楽しみに待っ

    ていたのは、〝出張ポニーふれあい

    体験〞。小学校の休校が続いて外

    で遊ぶことができなかった児童ク

    ラブの子どもたちへ、うれしいプ

    レゼントです!

     

    当日来てくれたのは、道産子

    のあられちゃん2歳と、18歳のつ

    くしちゃん。あられちゃんの口元

    におやつのニンジンを近づけると、

    器用に、おいしそうに食べてくれ

    てみんなにっこり。「顔に触ってい

    いよ」と教えてもらって、体の大

    きいつくしちゃんの頬に手を伸ば

    すと、つくしちゃんはそっと顔を

    近づけてきてくれました。「あった

    かくて気持ちがいいよ、ずっと

    触っていたい!」と、3年生の佐

    藤大翔君。

     

    毎年夏に行われていたバスで行

    く館外活動の遠足が今年は中止

    になりました。そんな時に今回の

    乗馬クラブの企画のことを知り、

    ぜひ夏休みの思い出にしたいと

    応募。「3月からの感染防止で自

    由に外に出掛けられない子ども

    たちに、楽しいことをさせてあげ

    たい思いと、馬という自分たちと

    は違う生き物に触れて命の大切

    さも感じてもらえたらと思いま

    した」と、角田克江先生。クロー

    バーの庭で楽しそうにポニーと触

    れ合っている子どもたちを見て、

    笑みがこぼれます。

     

    また、限定企画の出張体験を

    催してくれた乗馬クラブクレイン

    の大倉さんは「なかなか近寄れな

    い子も、心の中で葛藤したことが

    大事。今日のことを思い出して、

    何かにチャレンジする時の力に

    なってくれたらうれしい」。

     

    思いきり遊べず、友達と会え

    なかった時期を乗り越えたお子

    さんたちが、その時に支えとなっ

    たものを力に変えて、大きく育っ

    てくれることを願っています。

    特集「脳卒中」脳を守る時間との闘い

    おやつのニンジンを上手に食べるあられちゃんは、みんなと同じ小学生!

    ワンポイントアドバイス尿路結石ドクター訪問読者からのご質問にお答えします!結核について 連載 仙台歴史を歩くCALENDAR連載 鈴木江美のほっとシーン

    支える No.22輸血を支える血液事業のプロフェッショナル

    50vol.2020年8月

  • 「脳卒中」脳を守る時間との闘い 特集

     脳卒中のさまざまなタイプ

     

    脳卒中は、脳に酸素や栄養を供給する

    血管に障害が起き、その領域の脳がダ

    メージを受ける病気です。血管が詰まる

    「脳梗塞」と、血管が破れる「脳出血」「くも

    膜下出血」に大別されます。

     

    全体の約4分の3を占める脳梗塞は、

    動脈硬化によって起こるタイプと、心房

    細動など心臓の病気によって起こるタイ

    プがあります。後者は、突然心臓から血

    の塊が飛んできて詰まるので、重症にな

    ることが多いのが特徴です。

     

    脳出血が高血圧などによって脳内の細

    かい血管が破れるのに対し、くも膜下出

    血は血管にできた動脈瘤というコブが破

     治療は時間との勝負

     

    治療開始が早ければ早いほど回復の見

    込みは高くなります。

     

    脳梗塞は、発症4時間30分以内であれ

    ば、血栓を溶かすtPAという薬を使え

    る可能性があります。この「tPA静注療

    法」は2005年に国内承認された治療

    で、高い効果が期待できます。さらに、条

    件はありますが、近年開発された「カテー

    テルによる血栓回収治療」が適用になれ

    ば、これまで長期のリハビリを要してい

    た方でも、場合によっては歩いて退院す

    ることが可能になっています。

     

    壊れてしまった脳細胞をよみがえらせ

    ることは、東北大学による幹細胞を使っ

    た再生医療など、いくつか研究は進んで

     生活習慣改善と脳ドック

     

    予防の基本は、健康的な生活習慣で

    す。公益社団法人日本脳卒中協会が分

    かりやすく十ヶ条にまとめています。

    ぜひこちらを参考になさってください。

    一度脳梗塞になった人は再発しやすい

    ので、「薬による抗血栓療法」と「動脈硬

    化のリスクを下げる生活習慣の実践」を

    生涯継続していきます。

     

    最後に「脳ドック」についてです。頭部

    MRI検査をすると、「無症状の脳梗塞」

    「くも膜下出血になりうる動脈瘤」「血管

    の狭さ」「脳の萎縮」などが分かります。

    高血圧・糖尿病・不整脈・喫煙といった脳

    仙台市立病院脳神経内科部長 

    遠藤 薫 先生 

    突然の発症サイン、ためらわず行動を

    インタビュー

     

    国内で年間約30万人の新たな発

    症があると推計される「脳卒中」

    は、その後の人生や暮らしを変えて

    しまう病です。突然の発症は、いつ

    自分や家族の身に起こるか分かり

    ません。覚えておきたい初期対応、

    治療と予防の基本について聞きま

    した。

    裂して脳の表面に出血します。

     

    脳卒中が怖いのは、昨日まで元気だっ

    た人がある日突然発症すること、発症者

    の半数以上が死亡もしくは介護が必要

    になることです。死亡原因としては、悪

    性新生物(がん)、心疾患に次いで多く、

    要介護原因としては認知症に次ぐ2位

    ですが、最も重い「要介護5」においては

    約30%を占め1位になっています。

     異変に気付いたらすぐ行動を

     「FAST」は、いち早く発症に気付

    き、対応するための合言葉です。「左右

    どちらかのまひ」や「ろれつが回らない」

    などの異変があったら、迷わず救急車

    を呼んでください。くも膜下出血の場

    合は少し違って、突然、激しい頭痛が

    起きます。

     

    脳梗塞の治療方針を決める上で重要

    な「発症時刻」は、「発見時刻」ではあり

    ません。最後に元気だった姿が確認で

    きた「最終未発症時刻」を意味します。

    「朝起きて気付いた」のであれば、「就寝

    前」が起点です。服用している薬や既往

    歴も重要な情報ですので、分かるよう

    準備しておいてください。

     

    まひなどの症状が短時間でおさまっ

    たとしても、「しばらく様子を見よう」

    とそのままにしてはいけません。「一過

    性脳虚血発作」という脳梗塞の前触れ

    で、すぐに大きな本番が来るかもしれ

    ません。日中ならかかりつけ医を、時

    間外なら急患センターなどを速やかに

    受診しましょう。

    いますが、現時点ではまだできません。

    一刻も早く来院し、脳が壊死する前に血

    栓を溶かしたり回収したりすることが、

    今できる最良の選択です。

     

    脳出血は血圧を下げる内科治療がメ

    インで、血腫の大きさや場所によっては

    手術を行うこともあります。くも膜下出

    血は動脈瘤が再び破裂する危険が高い

    ため、急いで手術を行います。

     

    失った機能を回復させるリハビリテー

    ションについても、早期に開始すること

    が重要です(5、6ページ参照)。

    1.手始めに高血圧から治しましょう2.糖尿病放っておいたら悔い残る3.不整脈見つかり次第すぐ受診4.予防にはたばこを止める意志を持て5.アルコール控えめは薬 過ぎれば毒

    6.高すぎるコレステロールも見逃すな7.お食事の塩分・脂肪控えめに8.体力に合った運動続けよう9.万病の引き金になる太りすぎ10.脳卒中起きたらすぐに病院へ

    脳卒中予防十か条

    (公益社団法人日本脳卒中協会)うまく笑顔が作れますか?

    FFace顔のまひ

    AArm腕のまひ

    両側を上げたままキープできますか?

    SSpeech言葉の障害

    短い文がいつも通りしゃべれますか?

    TTime発症時刻

    発症時刻を確認してすぐに119番を!

    一つでも症状があれば脳卒中の可能性大!卒中の危険因子を持つ人には特にお勧

    めします。

    0102

  • 「脳卒中」脳を守る時間との闘い 特集

     脳卒中のさまざまなタイプ

     

    脳卒中は、脳に酸素や栄養を供給する

    血管に障害が起き、その領域の脳がダ

    メージを受ける病気です。血管が詰まる

    「脳梗塞」と、血管が破れる「脳出血」「くも

    膜下出血」に大別されます。

     

    全体の約4分の3を占める脳梗塞は、

    動脈硬化によって起こるタイプと、心房

    細動など心臓の病気によって起こるタイ

    プがあります。後者は、突然心臓から血

    の塊が飛んできて詰まるので、重症にな

    ることが多いのが特徴です。

     

    脳出血が高血圧などによって脳内の細

    かい血管が破れるのに対し、くも膜下出

    血は血管にできた動脈瘤というコブが破

     治療は時間との勝負

     

    治療開始が早ければ早いほど回復の見

    込みは高くなります。

     

    脳梗塞は、発症4時間30分以内であれ

    ば、血栓を溶かすtPAという薬を使え

    る可能性があります。この「tPA静注療

    法」は2005年に国内承認された治療

    で、高い効果が期待できます。さらに、条

    件はありますが、近年開発された「カテー

    テルによる血栓回収治療」が適用になれ

    ば、これまで長期のリハビリを要してい

    た方でも、場合によっては歩いて退院す

    ることが可能になっています。

     

    壊れてしまった脳細胞をよみがえらせ

    ることは、東北大学による幹細胞を使っ

    た再生医療など、いくつか研究は進んで

     生活習慣改善と脳ドック

     

    予防の基本は、健康的な生活習慣で

    す。公益社団法人日本脳卒中協会が分

    かりやすく十ヶ条にまとめています。

    ぜひこちらを参考になさってください。

    一度脳梗塞になった人は再発しやすい

    ので、「薬による抗血栓療法」と「動脈硬

    化のリスクを下げる生活習慣の実践」を

    生涯継続していきます。

     

    最後に「脳ドック」についてです。頭部

    MRI検査をすると、「無症状の脳梗塞」

    「くも膜下出血になりうる動脈瘤」「血管

    の狭さ」「脳の萎縮」などが分かります。

    高血圧・糖尿病・不整脈・喫煙といった脳

    仙台市立病院脳神経内科部長 

    遠藤 薫 先生 

    突然の発症サイン、ためらわず行動を

    インタビュー

     

    国内で年間約30万人の新たな発

    症があると推計される「脳卒中」

    は、その後の人生や暮らしを変えて

    しまう病です。突然の発症は、いつ

    自分や家族の身に起こるか分かり

    ません。覚えておきたい初期対応、

    治療と予防の基本について聞きま

    した。

    裂して脳の表面に出血します。

     

    脳卒中が怖いのは、昨日まで元気だっ

    た人がある日突然発症すること、発症者

    の半数以上が死亡もしくは介護が必要

    になることです。死亡原因としては、悪

    性新生物(がん)、心疾患に次いで多く、

    要介護原因としては認知症に次ぐ2位

    ですが、最も重い「要介護5」においては

    約30%を占め1位になっています。

     異変に気付いたらすぐ行動を

     「FAST」は、いち早く発症に気付

    き、対応するための合言葉です。「左右

    どちらかのまひ」や「ろれつが回らない」

    などの異変があったら、迷わず救急車

    を呼んでください。くも膜下出血の場

    合は少し違って、突然、激しい頭痛が

    起きます。

     

    脳梗塞の治療方針を決める上で重要

    な「発症時刻」は、「発見時刻」ではあり

    ません。最後に元気だった姿が確認で

    きた「最終未発症時刻」を意味します。

    「朝起きて気付いた」のであれば、「就寝

    前」が起点です。服用している薬や既往

    歴も重要な情報ですので、分かるよう

    準備しておいてください。

     

    まひなどの症状が短時間でおさまっ

    たとしても、「しばらく様子を見よう」

    とそのままにしてはいけません。「一過

    性脳虚血発作」という脳梗塞の前触れ

    で、すぐに大きな本番が来るかもしれ

    ません。日中ならかかりつけ医を、時

    間外なら急患センターなどを速やかに

    受診しましょう。

    いますが、現時点ではまだできません。

    一刻も早く来院し、脳が壊死する前に血

    栓を溶かしたり回収したりすることが、

    今できる最良の選択です。

     

    脳出血は血圧を下げる内科治療がメ

    インで、血腫の大きさや場所によっては

    手術を行うこともあります。くも膜下出

    血は動脈瘤が再び破裂する危険が高い

    ため、急いで手術を行います。

     

    失った機能を回復させるリハビリテー

    ションについても、早期に開始すること

    が重要です(5、6ページ参照)。

    1.手始めに高血圧から治しましょう2.糖尿病放っておいたら悔い残る3.不整脈見つかり次第すぐ受診4.予防にはたばこを止める意志を持て5.アルコール控えめは薬 過ぎれば毒

    6.高すぎるコレステロールも見逃すな7.お食事の塩分・脂肪控えめに8.体力に合った運動続けよう9.万病の引き金になる太りすぎ10.脳卒中起きたらすぐに病院へ

    脳卒中予防十か条

    (公益社団法人日本脳卒中協会)うまく笑顔が作れますか?

    FFace顔のまひ

    AArm腕のまひ

    両側を上げたままキープできますか?

    SSpeech言葉の障害

    短い文がいつも通りしゃべれますか?

    TTime発症時刻

    発症時刻を確認してすぐに119番を!

    一つでも症状があれば脳卒中の可能性大!卒中の危険因子を持つ人には特にお勧

    めします。

    0102

  •  

    新しい薬や検査機器、治療器具

    が開発され、脳卒中の治療内容は

    年々進化しています。医療現場も、

    内科と外科が連携し、一刻も早く

    治療が開始できるよう体制を整

    えています。

    特集

    カテーテルを使った血管内治療に期待

    インタビュー

    特集

    独立行政法人国立病院機構仙台医療センター臨床研究部長・脳卒中センター長

    江面 正幸 先生

     さまざまな検査画像で鑑別

     

    まひ、失語、嘔吐を伴う激しい頭痛な

    ど、脳卒中を疑われる患者さんが来院さ

    れると、直ちにCT検査を行います。CT

    の画像は出血したところが白く見えるの

    で、脳出血やくも膜下出血の場合は比較

    的スムーズに診断が可能です。反対に、

    超急性期の脳梗塞は単純CTでは見えな

    いことが多く、造影剤を使ったCT検査・

    MRI検査・MRA検査など、適切な検

    査を組み合わせて診断します。

     

    検査と治療は「最終未発症時刻」(1

    ページ参照)からの経過時間によって変わ

    ります。また同じ治療でも開始が早けれ

    ば早いほど効果が期待できます。すべて

    が「時間との闘い」です。

     動脈瘤の再破裂を防ぐ

     

    脳出血については、薬による内科治療

    が主ですが、脳を圧迫するような大きい

    血腫があれば、開頭または吸引によって

    取り除く手術をします。

     

    くも膜下出血は、再出血も含めた死亡

     早期なら血流再開が可能

     

    脳梗塞の治療は、最終未発症時刻か

    ら4時間30分以内であれば、tPAという

    強力な血栓溶解剤を使える可能性があ

    ります。「可能性がある」というのは、血

    栓を溶かして血流が再開すると、場合に

    よっては、弱っていた血管から出血する危

    険があるため、tPAの適用範囲を制限

    しているからです。再開通を目指すか、

    別な方法を選択するか、慎重に判断し

    ます。

     

    もう一つ、再開通を目指す方法として

    近年成績を上げているのが、「血栓回収療

    法」です。足の付け根の血管からカテーテ

    ルという細い管を脳の表面の血管まで挿

    入し、その中に網状のステントという器具

    をすぼめて押入していくと、カテーテルの

    先を出たところでステントが元の径まで

    膨らみ、血栓が絡まります。血栓が絡

    まったステントをそのまま引き抜いて取り

    出す、という外科治療です。以前は最終

    未発症時刻から「8時間まで」とされてい

    た時間的な限界が、最近になって「24時間

    「脳卒中」脳を守る時間との闘い 

    A B C

    血栓回収療法による脳梗塞治療

    A.血管が詰まり、  その先の血流が途絶えているMRA画像

    B.血栓を除去し、血流が再開

    C.ステントに絡めて回収した血栓

     

    クリッピング術

    動脈瘤

    クリップ

    コイル塞栓術

    動脈瘤コイル

    カテーテル

    まで」に拡大され、この治療の適用が増え

    ました。

     「tPAによる血栓溶解」や「カテーテル

    による血栓回収」の適用、効果は人によっ

    て異なりますが、うまくいけば劇的な回

    復が期待できる治療です。ケースによっ

    て、二つのどちらか一つ、または両方を行

    うことがあります。

    率が約50%という重大な病気です。最初

    の出血による影響がたまたま小さかった

    としても、またいつ破裂して再出血する

    か分かりません。すぐに動脈瘤への血流

    を止める手術を行います。主な方法とし

    ては、開頭して動脈瘤の根元をクリップ

    で止める「クリッピング術」と、血管に挿

    入したカテーテルを使って動脈瘤の中に

    細くて柔らかい金属コイルを詰める「コイ

    ル塞栓術」があります。一長一短があり、

    どちらかが優れている、ということはあり

    ません。

     

    将来、くも膜下出血を引き起こすか

    もしれない「未破裂動脈瘤」については、

    脳ドックの普及や他の病気の検査で発見

    されることが多くなりました。ただ、そ

    の大半は治療を要しない小さなもので

    す。手術の対象となるのは5ミリ以上で、

    3ミリより小さいものは経過観察、3ミ

    リから4ミリはケースバイケース、という

    のが大まかな目安です。未破裂動脈瘤の

    手術は、コイル塞栓術の適用が多くなっ

    ています。

    起きたとき、すぐに対応ができるか不安

    に思う方もいらっしゃるでしょう。

     

    くも膜下出血の場合は、かなり激しい

    頭痛や吐き気がするので、救急対応が遅

    くなる、ということはまずありません。

    遅れがちになるのは、「片側の手足に力が

    入らない」とか「うまくしゃべれない」とい

    う脳梗塞特有の「動きのない症状」への対

    応です。実際「寝る前にちょっと動きづら

    さを感じたけれど、一晩様子を見て、やっ

    ぱり動かないので病院に来ました」という

    声を聞くことがあります。でも「一晩待つ

    間に病状が進行し、tPAも使えなくな

    る」ということを、どうか理解していただ

    きたいのです。

     

    神経疾患の救急現場には、けいれんに

    よる搬送も多く見られます。人は、けい

    れんのような「動き過ぎる症状」には驚い

    てすぐ行動するのですが、実は「動けない

    症状」の方が医学的には深刻かつ緊急で

    す。片側の動きづらさ、しゃべりにくさを

    感じたら、夜中でも迷わず家族を起こ

    し、救急車を呼んでください。

     動かないときこそ緊急

     「卒中」とは「突然起こる」という意味で

    す。突然、経験したことのない症状が

    え  づら

    0304

  •  

    新しい薬や検査機器、治療器具

    が開発され、脳卒中の治療内容は

    年々進化しています。医療現場も、

    内科と外科が連携し、一刻も早く

    治療が開始できるよう体制を整

    えています。

    特集

    カテーテルを使った血管内治療に期待

    インタビュー

    特集

    独立行政法人国立病院機構仙台医療センター臨床研究部長・脳卒中センター長

    江面 正幸 先生

     さまざまな検査画像で鑑別

     

    まひ、失語、嘔吐を伴う激しい頭痛な

    ど、脳卒中を疑われる患者さんが来院さ

    れると、直ちにCT検査を行います。CT

    の画像は出血したところが白く見えるの

    で、脳出血やくも膜下出血の場合は比較

    的スムーズに診断が可能です。反対に、

    超急性期の脳梗塞は単純CTでは見えな

    いことが多く、造影剤を使ったCT検査・

    MRI検査・MRA検査など、適切な検

    査を組み合わせて診断します。

     

    検査と治療は「最終未発症時刻」(1

    ページ参照)からの経過時間によって変わ

    ります。また同じ治療でも開始が早けれ

    ば早いほど効果が期待できます。すべて

    が「時間との闘い」です。

     動脈瘤の再破裂を防ぐ

     

    脳出血については、薬による内科治療

    が主ですが、脳を圧迫するような大きい

    血腫があれば、開頭または吸引によって

    取り除く手術をします。

     

    くも膜下出血は、再出血も含めた死亡

     早期なら血流再開が可能

     

    脳梗塞の治療は、最終未発症時刻か

    ら4時間30分以内であれば、tPAという

    強力な血栓溶解剤を使える可能性があ

    ります。「可能性がある」というのは、血

    栓を溶かして血流が再開すると、場合に

    よっては、弱っていた血管から出血する危

    険があるため、tPAの適用範囲を制限

    しているからです。再開通を目指すか、

    別な方法を選択するか、慎重に判断し

    ます。

     

    もう一つ、再開通を目指す方法として

    近年成績を上げているのが、「血栓回収療

    法」です。足の付け根の血管からカテーテ

    ルという細い管を脳の表面の血管まで挿

    入し、その中に網状のステントという器具

    をすぼめて押入していくと、カテーテルの

    先を出たところでステントが元の径まで

    膨らみ、血栓が絡まります。血栓が絡

    まったステントをそのまま引き抜いて取り

    出す、という外科治療です。以前は最終

    未発症時刻から「8時間まで」とされてい

    た時間的な限界が、最近になって「24時間

    「脳卒中」脳を守る時間との闘い 

    A B C

    血栓回収療法による脳梗塞治療

    A.血管が詰まり、  その先の血流が途絶えているMRA画像

    B.血栓を除去し、血流が再開

    C.ステントに絡めて回収した血栓

     

    クリッピング術

    動脈瘤

    クリップ

    コイル塞栓術

    動脈瘤コイル

    カテーテル

    まで」に拡大され、この治療の適用が増え

    ました。

     「tPAによる血栓溶解」や「カテーテル

    による血栓回収」の適用、効果は人によっ

    て異なりますが、うまくいけば劇的な回

    復が期待できる治療です。ケースによっ

    て、二つのどちらか一つ、または両方を行

    うことがあります。

    率が約50%という重大な病気です。最初

    の出血による影響がたまたま小さかった

    としても、またいつ破裂して再出血する

    か分かりません。すぐに動脈瘤への血流

    を止める手術を行います。主な方法とし

    ては、開頭して動脈瘤の根元をクリップ

    で止める「クリッピング術」と、血管に挿

    入したカテーテルを使って動脈瘤の中に

    細くて柔らかい金属コイルを詰める「コイ

    ル塞栓術」があります。一長一短があり、

    どちらかが優れている、ということはあり

    ません。

     

    将来、くも膜下出血を引き起こすか

    もしれない「未破裂動脈瘤」については、

    脳ドックの普及や他の病気の検査で発見

    されることが多くなりました。ただ、そ

    の大半は治療を要しない小さなもので

    す。手術の対象となるのは5ミリ以上で、

    3ミリより小さいものは経過観察、3ミ

    リから4ミリはケースバイケース、という

    のが大まかな目安です。未破裂動脈瘤の

    手術は、コイル塞栓術の適用が多くなっ

    ています。

    起きたとき、すぐに対応ができるか不安

    に思う方もいらっしゃるでしょう。

     

    くも膜下出血の場合は、かなり激しい

    頭痛や吐き気がするので、救急対応が遅

    くなる、ということはまずありません。

    遅れがちになるのは、「片側の手足に力が

    入らない」とか「うまくしゃべれない」とい

    う脳梗塞特有の「動きのない症状」への対

    応です。実際「寝る前にちょっと動きづら

    さを感じたけれど、一晩様子を見て、やっ

    ぱり動かないので病院に来ました」という

    声を聞くことがあります。でも「一晩待つ

    間に病状が進行し、tPAも使えなくな

    る」ということを、どうか理解していただ

    きたいのです。

     

    神経疾患の救急現場には、けいれんに

    よる搬送も多く見られます。人は、けい

    れんのような「動き過ぎる症状」には驚い

    てすぐ行動するのですが、実は「動けない

    症状」の方が医学的には深刻かつ緊急で

    す。片側の動きづらさ、しゃべりにくさを

    感じたら、夜中でも迷わず家族を起こ

    し、救急車を呼んでください。

     動かないときこそ緊急

     「卒中」とは「突然起こる」という意味で

    す。突然、経験したことのない症状が

    え  づら

    0304

  •  

    脳血管の障害によって、後遺症

    として残るさまざまな機能障害。

    その回復を促すリハビリテーショ

    ンは、多くの専門職がチームを組

    んで取り組みます。患者さんの状

    態と気持ちに寄り添いながら、

    「日常生活動作の獲得」と「社会

    参加」を目指します。

    チーム医療で支えるリハビリテーション

    インタビュー

    東北大学大学院医工学研究科リハビリテーション医工学分野・肢体不自由学分野 教授東北大学病院肢体不自由リハビリテーション科 科長

    出江 紳一 先生

     リハビリテーションの意味

     

    脳卒中の後遺症は、まひなどの運動障

    害、しびれなどの感覚障害、失語・失認・

    失行などの高次機能障害と、さまざまな

    ものがあります。リハビリテーションの目

    的は、このような機能障害を適切な訓練

    によって回復・改善させること、残存して

    いる神経のネットワークを組み換え、再構

    築することです。

     

    リハビリテーションを進める上で大切な

    のは、「できないこと」だけでなく「できる

    こと」にも注目することです。例えば「右

    手は使えないけれど、左手は動く」「装具

     急性期から回復期に行うこと

     

    脳卒中のリハビリテーションは発症後す

    ぐにスタートします。「急性期」は、褥瘡が

    できないよう体位を変えたり、関節が固

    まらないよう手足を動かしたりすること

    から始め、「早期離床」を目標にします。

     患者さんとご家族へのメッセージ

     

    医学は進歩しています。その昔「脳溢

    血になったら寝たきりだ」と言われた時代

    がありましたが、今の医療なら、当時亡

    くなった人が助かり、寝たきりの人が社

    会復帰できるのではないでしょうか。「動

    かない」「食べられない」と諦めていた病態

    についても研究が進み、できることが少し

    ずつ増えています。訓練の補助をする装

    具や装置も開発されています。

     「脳卒中だから仕方ない」と決め込ま

    ず、患者さんご自身の「こうしたい」「こう

    なりたい」という思いを、医療者と共有し

    ていただきたいと願います。本来であれ

    ば、医療をする側から積極的に聞くべき

    ことですが、忙しい現場では満足にでき

    を使えば歩くことができる」というのは

    「能力」です。こうした能力を伸ばす訓練

    と、できないことをできるようにする訓

    練、二つを同時に行います。

     

    訓練がすべてではないことも重要です。

    患者さんは、突然体が不自由になり、大

    変なショックを受けています。「これからど

    うなるのだろう」という不安や、「自立し

    た生活が送れるだろうか」「復職はできる

    だろうか」と切実な悩みもあります。リハ

    ビリテーションは、これらの多様な問題に

    も対応しながら、「日常生活動作の獲得」

    と「社会参加」という目標に向かって進ん

    でいきます。介護保険や障害者支援と

    いった社会資源も利用しながら、さまざ

    まな分野の専門職と力を合わせることが

    必須になります。

     

    看護師理学療法士

    義肢装具士医療

    ソーシャルワーカー

    特集特集「脳卒中」脳を守る時間との闘い 

    病態にもよりますが、早ければ24時間以

    内、遅くとも72時間以内には体を起こ

    します。患者さんにとって「起きる」こと

    は、筋力の低下を防ぐだけでなく、「自

    分の体が回復に向かっている」という強い

    メッセージになるからです。

     

    2週間ほど過ぎて「回復期」に入ると、

    本格的な訓練がスタートします。車椅子

    への移動や、立つ・歩くといった全身の基

    本動作訓練は理学療法士が専門です。

    最近は、まひなどがあって1人で立つこと

    が難しくても、足に装具を付けること

    で、以前より早期から歩く練習を始めて

    います。専用の装具は、医師の処方を基

    に義肢装具士があつらえます。

     

    食事のためにスプーンを使う、トイレの

    ために下着を下す、といった主に手を使

    う日常生活動作の訓練は、作業療法士

    が支援します。

     

    摂食嚥下障害については、言語聴覚士

    が舌・唇・飲み込みの訓練を行います。訓

    練の前提となる口腔衛生は歯科の担当で

    す。一定の訓練を終えたら、エックス線で

    撮影しながら、実際に食べ物を飲み込ん

    でいるときの様子や誤嚥の有無を観察・

    評価しますが、これは耳鼻咽喉科に関係

    する領域です。

     このほか、心のケアを行う公認心理師・

    臨床心理士、社会生活復帰を支援する

    医療ソーシャルワーカーも関わります。こ

    のように多種多様な専門スタッフが連携

    し、一丸となって取り組むのが、回復期リ

    ハビリテーションの特長です。

     

    食事やトイレ、車椅子の乗り降りと

    いった日常生活動作がある程度できるよ

    うになると、いよいよ退院です。在宅で

    は、介護保険サービスによる訪問・通所

    リハビリテーションを利用しながら、基本

    的には生活の中で体を動かし、維持して

    いくことになります。

    い  ずみ

    患者さんとご家族

    作業療法士公認心理師

    臨床心理士 言語聴覚士

    医師(リハビリテーション科以外の科を含む)

    のう

    いっ

    けつ

    0506

    神経線維にアプローチする「磁気刺激装置」。出江先生の研究を基に開発され、リハビリテーションの現場で使用されている。

    ていないかもしれません。医療者として

    申し訳なく思いながらのお願いです。

     

    最後に、患者さんに寄り添い、支え、

    リハビリテーションのサポートもしてくだ

    さっているご家族に、改めて敬意と感謝を

    表します。病気によって変わってしまった

    患者さんとその関係性に、戸惑われたこ

    とも多いと思います。

     

    患者さんを観察すること。できている

    ことや小さな変化に気付いて伝えること。

    対話を続けること。言葉が不自由なら会

    話によらないコミュニケーションを重ねるこ

    と。そのようなことを大切にしながら、

    患者さんと一緒に「新たな生活」を築いてい

    ただけたら、と願います。

  •  

    脳血管の障害によって、後遺症

    として残るさまざまな機能障害。

    その回復を促すリハビリテーショ

    ンは、多くの専門職がチームを組

    んで取り組みます。患者さんの状

    態と気持ちに寄り添いながら、

    「日常生活動作の獲得」と「社会

    参加」を目指します。

    チーム医療で支えるリハビリテーション

    インタビュー

    東北大学大学院医工学研究科リハビリテーション医工学分野・肢体不自由学分野 教授東北大学病院肢体不自由リハビリテーション科 科長

    出江 紳一 先生

     リハビリテーションの意味

     

    脳卒中の後遺症は、まひなどの運動障

    害、しびれなどの感覚障害、失語・失認・

    失行などの高次機能障害と、さまざまな

    ものがあります。リハビリテーションの目

    的は、このような機能障害を適切な訓練

    によって回復・改善させること、残存して

    いる神経のネットワークを組み換え、再構

    築することです。

     

    リハビリテーションを進める上で大切な

    のは、「できないこと」だけでなく「できる

    こと」にも注目することです。例えば「右

    手は使えないけれど、左手は動く」「装具

     急性期から回復期に行うこと

     

    脳卒中のリハビリテーションは発症後す

    ぐにスタートします。「急性期」は、褥瘡が

    できないよう体位を変えたり、関節が固

    まらないよう手足を動かしたりすること

    から始め、「早期離床」を目標にします。

     患者さんとご家族へのメッセージ

     

    医学は進歩しています。その昔「脳溢

    血になったら寝たきりだ」と言われた時代

    がありましたが、今の医療なら、当時亡

    くなった人が助かり、寝たきりの人が社

    会復帰できるのではないでしょうか。「動

    かない」「食べられない」と諦めていた病態

    についても研究が進み、できることが少し

    ずつ増えています。訓練の補助をする装

    具や装置も開発されています。

     「脳卒中だから仕方ない」と決め込ま

    ず、患者さんご自身の「こうしたい」「こう

    なりたい」という思いを、医療者と共有し

    ていただきたいと願います。本来であれ

    ば、医療をする側から積極的に聞くべき

    ことですが、忙しい現場では満足にでき

    を使えば歩くことができる」というのは

    「能力」です。こうした能力を伸ばす訓練

    と、できないことをできるようにする訓

    練、二つを同時に行います。

     

    訓練がすべてではないことも重要です。

    患者さんは、突然体が不自由になり、大

    変なショックを受けています。「これからど

    うなるのだろう」という不安や、「自立し

    た生活が送れるだろうか」「復職はできる

    だろうか」と切実な悩みもあります。リハ

    ビリテーションは、これらの多様な問題に

    も対応しながら、「日常生活動作の獲得」

    と「社会参加」という目標に向かって進ん

    でいきます。介護保険や障害者支援と

    いった社会資源も利用しながら、さまざ

    まな分野の専門職と力を合わせることが

    必須になります。

     

    看護師理学療法士

    義肢装具士医療

    ソーシャルワーカー

    特集特集「脳卒中」脳を守る時間との闘い 

    病態にもよりますが、早ければ24時間以

    内、遅くとも72時間以内には体を起こ

    します。患者さんにとって「起きる」こと

    は、筋力の低下を防ぐだけでなく、「自

    分の体が回復に向かっている」という強い

    メッセージになるからです。

     

    2週間ほど過ぎて「回復期」に入ると、

    本格的な訓練がスタートします。車椅子

    への移動や、立つ・歩くといった全身の基

    本動作訓練は理学療法士が専門です。

    最近は、まひなどがあって1人で立つこと

    が難しくても、足に装具を付けること

    で、以前より早期から歩く練習を始めて

    います。専用の装具は、医師の処方を基

    に義肢装具士があつらえます。

     

    食事のためにスプーンを使う、トイレの

    ために下着を下す、といった主に手を使

    う日常生活動作の訓練は、作業療法士

    が支援します。

     

    摂食嚥下障害については、言語聴覚士

    が舌・唇・飲み込みの訓練を行います。訓

    練の前提となる口腔衛生は歯科の担当で

    す。一定の訓練を終えたら、エックス線で

    撮影しながら、実際に食べ物を飲み込ん

    でいるときの様子や誤嚥の有無を観察・

    評価しますが、これは耳鼻咽喉科に関係

    する領域です。

     このほか、心のケアを行う公認心理師・

    臨床心理士、社会生活復帰を支援する

    医療ソーシャルワーカーも関わります。こ

    のように多種多様な専門スタッフが連携

    し、一丸となって取り組むのが、回復期リ

    ハビリテーションの特長です。

     

    食事やトイレ、車椅子の乗り降りと

    いった日常生活動作がある程度できるよ

    うになると、いよいよ退院です。在宅で

    は、介護保険サービスによる訪問・通所

    リハビリテーションを利用しながら、基本

    的には生活の中で体を動かし、維持して

    いくことになります。

    い  ずみ

    患者さんとご家族

    作業療法士公認心理師

    臨床心理士 言語聴覚士

    医師(リハビリテーション科以外の科を含む)

    のう

    いっ

    けつ

    0506

    神経線維にアプローチする「磁気刺激装置」。出江先生の研究を基に開発され、リハビリテーションの現場で使用されている。

    ていないかもしれません。医療者として

    申し訳なく思いながらのお願いです。

     

    最後に、患者さんに寄り添い、支え、

    リハビリテーションのサポートもしてくだ

    さっているご家族に、改めて敬意と感謝を

    表します。病気によって変わってしまった

    患者さんとその関係性に、戸惑われたこ

    とも多いと思います。

     

    患者さんを観察すること。できている

    ことや小さな変化に気付いて伝えること。

    対話を続けること。言葉が不自由なら会

    話によらないコミュニケーションを重ねるこ

    と。そのようなことを大切にしながら、

    患者さんと一緒に「新たな生活」を築いてい

    ただけたら、と願います。

  • 峯岸 正好 所長中川 國利 所長

    輸血を支える血液事業のプロフェッショナル

    0708

    宮城県赤十字血液センター・東北ブロック血液センター

    宮城県赤十字血液センター・東北ブロック血液センター

    宮城県赤十字血液センター東北ブロック血液センター

    日本赤十字社東北ブロック血液センター

    仙台市泉区明通2-6-1TEL.022-354-7070

    www.bs.jrc.or.jp/th/bbc/index.html

    日本赤十字社宮城県赤十字血液センター

    仙台市泉区明通2-6-1TEL.022-290-2501

    www.bs.jrc.or.jp/th/miyagi/index.html

    No.22支える

    血液製剤の製造工程。血液バッグを遠心分離機にかけ、赤血球と血漿に分ける製造の最終工程。血液をバッグに詰め、ラベルを貼り、添付文章を入れて完成

    血液製剤の製造工程。除去フィルターでろ過し、白血球を除去

    コレステロールなどの生化学検査を行う

     

    365日安定供給

     

    献血者の提供した血液が輸血を必

    要とする患者さんに届くまでには、

    さまざまな工程があります。

     「宮城県赤十字血液センター」は、

    宮城県内における採血と供給の担い

    手です。献血推進・採血部門は人々に

    献血を呼びかけ、献血バスや献血

    ルームで採血を行います。供給部門

    は、県内の医療機関からの注文を24

    時間365日受け付け、指定の血液

    製剤を献血運搬車で届けています。

     

    現在の輸血医療は、血液中の必要

    な成分だけを入れる「成分輸血」が主

    流です。そのため、医療機関からの注

    文は「赤血球製剤」「血漿製剤」「血小

    板製剤」という種類別・血液型別にな

    ります。また、それぞれの有効期間

    は、赤血球製剤が採血後21日間、血小

    板製剤が採血後4日間と非常に短期

    間です。

     

    峯岸正好所長は、「すべての種類と

    血液型について、適正在庫である3

    日分を通年確保するのは難しい」と話

    します。「例年、年度初めやお盆など、

    献血者数が落ち込む時期があり、緊

    急の呼びかけや他のブロックとの需

    給調整でやりくりしています」

     

    少子高齢化で若い世代の献血者が

    減っていることに対しては、「ありが

    たいことに、学校ぐるみで協力して

    くださる私立高校もあります。こう

     

    安心安全な血液製剤を

     

    宮城県赤十字血液センターに隣接

    する「東北ブロック血液センター」に

    は、東北6県で採血された約1000

    人分の血液が毎日運ばれます。ここ

    は「検査」「製造」「需給管理」を行う、

    東北ブロックの中核施設です。

     

    検査部門は「血液型検査」「病原体

    の抗原・抗体検査」「ウイルスを検出す

    る核酸増幅検査」を行って血液製剤

    の安全性を担保し、「生化学検査」「血

    球計数検査」を行って献血者の健康

    管理に貢献しています。

     

    製造部門は、受け入れた全血から

    副作用を抑えるため白血球を除去

    し、遠心機で赤血球と血漿に分離、そ

    れぞれを製剤化します。

     

    需給管理部門は、各製剤を適正環

    境下で保存し、東北各地の血液セン

    ターの在庫を確認しながら、過不足

    なく供給しています。

     

    これらの事業は、以前は都道府県

    単位で行われていましたが、2012

    年に現在の広域運営に移行しまし

    した善意の輪が広がるよう、さらな

    る広報活動を続けてまいります」 

    た。中川國利所長は、その成果を

    「年間約34万本の安全性の高い血液

    製剤を製造し、必要なとき必要な医

    療機関に安定供給できる体制が

    整った」と説明します。医療機関の

    要請に100%応えつつ、「期間が

    過ぎて使用できなくなる割合は、赤

    血球製剤で約0.2%、血小板製剤で約

    1%と驚異的な低さに抑えていま

    す。大切な血液を使い切る努力も怠

    りません」

     

    輸血用血液は人工的につくるこ

    とができません。献血者の善意と血

    液事業者の手に、今も支えられてい

    ます。

    医療機関へ配送。1 日 2 回の定時配送と緊急配送を行う

    献血ルーム アエル20。 新型コロナウィルス感染症対策のため、事前予約を呼びかけている

    けっしょう

  • 峯岸 正好 所長中川 國利 所長

    輸血を支える血液事業のプロフェッショナル

    0708

    宮城県赤十字血液センター・東北ブロック血液センター

    宮城県赤十字血液センター・東北ブロック血液センター

    宮城県赤十字血液センター東北ブロック血液センター

    日本赤十字社東北ブロック血液センター

    仙台市泉区明通2-6-1TEL.022-354-7070

    www.bs.jrc.or.jp/th/bbc/index.html

    日本赤十字社宮城県赤十字血液センター

    仙台市泉区明通2-6-1TEL.022-290-2501

    www.bs.jrc.or.jp/th/miyagi/index.html

    No.22支える

    血液製剤の製造工程。血液バッグを遠心分離機にかけ、赤血球と血漿に分ける製造の最終工程。血液をバッグに詰め、ラベルを貼り、添付文章を入れて完成

    血液製剤の製造工程。除去フィルターでろ過し、白血球を除去

    コレステロールなどの生化学検査を行う

     

    365日安定供給

     

    献血者の提供した血液が輸血を必

    要とする患者さんに届くまでには、

    さまざまな工程があります。

     「宮城県赤十字血液センター」は、

    宮城県内における採血と供給の担い

    手です。献血推進・採血部門は人々に

    献血を呼びかけ、献血バスや献血

    ルームで採血を行います。供給部門

    は、県内の医療機関からの注文を24

    時間365日受け付け、指定の血液

    製剤を献血運搬車で届けています。

     

    現在の輸血医療は、血液中の必要

    な成分だけを入れる「成分輸血」が主

    流です。そのため、医療機関からの注

    文は「赤血球製剤」「血漿製剤」「血小

    板製剤」という種類別・血液型別にな

    ります。また、それぞれの有効期間

    は、赤血球製剤が採血後21日間、血小

    板製剤が採血後4日間と非常に短期

    間です。

     

    峯岸正好所長は、「すべての種類と

    血液型について、適正在庫である3

    日分を通年確保するのは難しい」と話

    します。「例年、年度初めやお盆など、

    献血者数が落ち込む時期があり、緊

    急の呼びかけや他のブロックとの需

    給調整でやりくりしています」

     

    少子高齢化で若い世代の献血者が

    減っていることに対しては、「ありが

    たいことに、学校ぐるみで協力して

    くださる私立高校もあります。こう

     

    安心安全な血液製剤を

     

    宮城県赤十字血液センターに隣接

    する「東北ブロック血液センター」に

    は、東北6県で採血された約1000

    人分の血液が毎日運ばれます。ここ

    は「検査」「製造」「需給管理」を行う、

    東北ブロックの中核施設です。

     

    検査部門は「血液型検査」「病原体

    の抗原・抗体検査」「ウイルスを検出す

    る核酸増幅検査」を行って血液製剤

    の安全性を担保し、「生化学検査」「血

    球計数検査」を行って献血者の健康

    管理に貢献しています。

     

    製造部門は、受け入れた全血から

    副作用を抑えるため白血球を除去

    し、遠心機で赤血球と血漿に分離、そ

    れぞれを製剤化します。

     

    需給管理部門は、各製剤を適正環

    境下で保存し、東北各地の血液セン

    ターの在庫を確認しながら、過不足

    なく供給しています。

     

    これらの事業は、以前は都道府県

    単位で行われていましたが、2012

    年に現在の広域運営に移行しまし

    した善意の輪が広がるよう、さらな

    る広報活動を続けてまいります」 

    た。中川國利所長は、その成果を

    「年間約34万本の安全性の高い血液

    製剤を製造し、必要なとき必要な医

    療機関に安定供給できる体制が

    整った」と説明します。医療機関の

    要請に100%応えつつ、「期間が

    過ぎて使用できなくなる割合は、赤

    血球製剤で約0.2%、血小板製剤で約

    1%と驚異的な低さに抑えていま

    す。大切な血液を使い切る努力も怠

    りません」

     

    輸血用血液は人工的につくるこ

    とができません。献血者の善意と血

    液事業者の手に、今も支えられてい

    ます。

    医療機関へ配送。1 日 2 回の定時配送と緊急配送を行う

    献血ルーム アエル20。 新型コロナウィルス感染症対策のため、事前予約を呼びかけている

    けっしょう

  •  2019年に「仙台赤十字病院」院長

    を退任し、現職となりました。整形外科

    医としては、股関節と足を多く診てき

    ました。病院としても下肢の外科治療

    に力を入れており、この分野の先生方の

    成長と活躍をうれしく思っています。

     専門は「小児整形外科」です。成長期

    の手術は「できれば避けたい」けれど

    「するべき時にしないと後で大変なこ

    とになる」という難しさがあります。

     私自身は「趣味に使う時間があったら

    患者さんに使いたい」と考える人間で、

    昔も今も仕事中心の生活です。

     心に残っているのは、足先が内向きに

    変形する「先天性内反足」の新しい治療

    の国内普及に努めたことです。昔は大

    きな手術をするしかありませんでした

    が、2000年に開発者のポンセッティ

    教授と出会い、ギプス矯正とアキレス

    腱切離による治療を学びました。「子ど

    ものアキレス腱を切る」という発想は

    驚きです

    が、今では

    広く受け入

    れられてい

    ます。大き

    な手術を受

    けるお子さ

    んはわずか

    になりまし

    た。

    泉中央病院 副院長中川 晴夫 先生

    尿路結石ドクター訪問内反足の新治療に光

    ワ ン ポ イ ン ト ア ド バ イ ス

     勤務医を経て、2010年に「れんぼ

    う眼科クリニック」を開業しました。五橋

    中学校、宮城県第二女子高等学校(

    現・

    宮城県仙台二華高等学校)

    卒の私にとっ

    て、連坊はホームグラウンド。高校は、チャ

    イムが鳴ってから登校しても間に合って

    いました(

    笑)

    。やはり地元はいいですね。

    診察室で同級生と久々の再会をするこ

    ともあります。

     ここで10年続けてこられたのも、地域

    の患者さんやスタッフのおかげです。今

    後も患者さんの話をよく聞き、丁寧な説

    明を心掛けてまいります。

     特別な趣味はありませんが、学会で訪

    れたことがきっかけで沖縄が好きにな

    り、20年以上通っています。はじめは観光

    スポットも回っていましたが、今のお気に

    入りは、観光客が少なくてリラックスで

    きる北部の「やんばる」です。散策した

    り、夕日が沈む海を眺めたり、農園で

    シークヮーサーを買って泡盛に入れて楽

    しんだり。主人と一緒に、ただただのんび

    りしてきます。

    沖縄の風に癒やされ

    簱福 みどり 先生(れんぼう眼科クリニック 院長)

    北 純 先生(仙台赤十字病院名誉院長)

    あつしはたふく

    自然排石または外科的破砕

    結石ができにくい食習慣とは

    食生活の変化で増える罹患者

    ▲大自然に囲まれたカフェでしぼりたての シークヮーサージュースを。

    ▲米アイオワ大学のセミナーにて Ponseti教授と(右が北先生)

    0910

    健康の

     汗をかく季節や睡眠中に多く発症する「尿路結石」。その中で

    厄介なのが、突然激しい痛みに襲われる「尿管結石」です。原因は、

    長年無意識に続けてきた食習慣にあります。

     治療は、小さい結石であれば水分を

    多く取り、排出を促す薬を使って、尿

    と一緒に出るのを待ちます。

     大きい結石や自然排出が難しい場合

    は、外科的治療が検討されます。

     「体外衝撃波結石破砕術」は、エック

    ス線で結石の位置を確認し、体外から

    衝撃波を当てて砕きます。入院は必要

    ですが、体への負担が少ない治療です。

     「経尿道

    的結石破砕

    術」は、麻酔

    下で尿管か

    ら内視鏡を

    し、

    レーザー照

    射で破砕し

    ます。体外

    からでは難

    しい大きさ、

     「尿路結石」は、腎臓でできた結石が

    尿の通り道にとどまり、痛みなどが出

    る病気です。結石のある場所によって

    「腎臓結石」「尿管結石」「膀胱結石」「尿

    道結石」に分類されます。国内では、そ

    のうち約96%が腎臓結石と尿管結石

    で、男性の7人に1人、女性の15人に1

    人が一生に一度は罹患すると言われ、

    罹患率は増加傾向にあります。

     腎臓結石については、自覚症状がな

    く、多くは検診などで偶然見つかりま

    す。排出しにくい場所にあり、感染や痛

    みがなければ積極的な治療は行いませ

    ん。

     問題となるのは尿管結石です。突然

    激痛に襲われ、嘔吐を伴うこともあり

    ます。血尿が出て、尿の流れが悪い状態

    が続くと腎臓が腫れ、腎盂腎炎を起こ

    す危険もあります。

     尿路結石は再発率が高く、日常の食

    習慣が予防の鍵になります。

     まず水分の摂取ですが、「食事以外

    に2リットル以上」を意識します(

    水制限のある方を除く)

    。ビールなど

    のアルコール飲料は一時的には尿量

    が増えますが、その後脱水症状を招く

    ため注意が必要です。水や麦茶をこま

    めに飲むことをお勧めします。

     食事は、結石の原因となるシュウ酸

    の摂取を控えること。ホウレンソウ・

    タケノコ・紅茶など、えぐみのある食

    品に多く含まれます。プリン体や塩分

    の過剰摂取も禁物です。積極的に取り

    たいのは、シュウ酸の吸収を抑制する

    カルシウムです。「ホウレンソウ+し

    らす」「紅茶+ミルク」など、食べ合わ

    せに使うと効果的です。

     睡眠中は尿が濃くなるため結石が

    できやすい時間帯です。食後は結石に

    なる物質が多くなるため、就寝3時間

    前には食事を終えるよう心掛けま

    しょう。

    ▲体外衝撃波結石破砕術

    形、場所の結石に有効です。

    手配中

  •  2019年に「仙台赤十字病院」院長

    を退任し、現職となりました。整形外科

    医としては、股関節と足を多く診てき

    ました。病院としても下肢の外科治療

    に力を入れており、この分野の先生方の

    成長と活躍をうれしく思っています。

     専門は「小児整形外科」です。成長期

    の手術は「できれば避けたい」けれど

    「するべき時にしないと後で大変なこ

    とになる」という難しさがあります。

     私自身は「趣味に使う時間があったら

    患者さんに使いたい」と考える人間で、

    昔も今も仕事中心の生活です。

     心に残っているのは、足先が内向きに

    変形する「先天性内反足」の新しい治療

    の国内普及に努めたことです。昔は大

    きな手術をするしかありませんでした

    が、2000年に開発者のポンセッティ

    教授と出会い、ギプス矯正とアキレス

    腱切離による治療を学びました。「子ど

    ものアキレス腱を切る」という発想は

    驚きです

    が、今では

    広く受け入

    れられてい

    ます。大き

    な手術を受

    けるお子さ

    んはわずか

    になりまし

    た。

    泉中央病院 副院長中川 晴夫 先生

    尿路結石ドクター訪問内反足の新治療に光

    ワ ン ポ イ ン ト ア ド バ イ ス

     勤務医を経て、2010年に「れんぼ

    う眼科クリニック」を開業しました。五橋

    中学校、宮城県第二女子高等学校(現・

    宮城県仙台二華高等学校)

    卒の私にとっ

    て、連坊はホームグラウンド。高校は、チャ

    イムが鳴ってから登校しても間に合って

    いました(

    笑)

    。やはり地元はいいですね。

    診察室で同級生と久々の再会をするこ

    ともあります。

     ここで10年続けてこられたのも、地域

    の患者さんやスタッフのおかげです。今

    後も患者さんの話をよく聞き、丁寧な説

    明を心掛けてまいります。

     特別な趣味はありませんが、学会で訪

    れたことがきっかけで沖縄が好きにな

    り、20年以上通っています。はじめは観光

    スポットも回っていましたが、今のお気に

    入りは、観光客が少なくてリラックスで

    きる北部の「やんばる」です。散策した

    り、夕日が沈む海を眺めたり、農園で

    シークヮーサーを買って泡盛に入れて楽

    しんだり。主人と一緒に、ただただのんび

    りしてきます。

    沖縄の風に癒やされ

    簱福 みどり 先生(れんぼう眼科クリニック 院長)

    北 純 先生(仙台赤十字病院名誉院長)

    あつしはた ふく

    自然排石または外科的破砕

    結石ができにくい食習慣とは

    食生活の変化で増える罹患者

    ▲大自然に囲まれたカフェでしぼりたての シークヮーサージュースを。

    ▲米アイオワ大学のセミナーにて Ponseti教授と(右が北先生)

    0910

    健康の

     汗をかく季節や睡眠中に多く発症する「尿路結石」。その中で

    厄介なのが、突然激しい痛みに襲われる「尿管結石」です。原因は、

    長年無意識に続けてきた食習慣にあります。

     治療は、小さい結石であれば水分を

    多く取り、排出を促す薬を使って、尿

    と一緒に出るのを待ちます。

     大きい結石や自然排出が難しい場合

    は、外科的治療が検討されます。

     「体外衝撃波結石破砕術」は、エック

    ス線で結石の位置を確認し、体外から

    衝撃波を当てて砕きます。入院は必要

    ですが、体への負担が少ない治療です。

     「経尿道

    的結石破砕

    術」は、麻酔

    下で尿管か

    ら内視鏡を

    し、

    レーザー照

    射で破砕し

    ます。体外

    からでは難

    しい大きさ、

     「尿路結石」は、腎臓でできた結石が

    尿の通り道にとどまり、痛みなどが出

    る病気です。結石のある場所によって

    「腎臓結石」「尿管結石」「膀胱結石」「尿

    道結石」に分類されます。国内では、そ

    のうち約96%が腎臓結石と尿管結石

    で、男性の7人に1人、女性の15人に1

    人が一生に一度は罹患すると言われ、

    罹患率は増加傾向にあります。

     腎臓結石については、自覚症状がな

    く、多くは検診などで偶然見つかりま

    す。排出しにくい場所にあり、感染や痛

    みがなければ積極的な治療は行いませ

    ん。

     問題となるのは尿管結石です。突然

    激痛に襲われ、嘔吐を伴うこともあり

    ます。血尿が出て、尿の流れが悪い状態

    が続くと腎臓が腫れ、腎盂腎炎を起こ

    す危険もあります。

     尿路結石は再発率が高く、日常の食

    習慣が予防の鍵になります。

     まず水分の摂取ですが、「食事以外

    に2リットル以上」を意識します(

    水制限のある方を除く)

    。ビールなど

    のアルコール飲料は一時的には尿量

    が増えますが、その後脱水症状を招く

    ため注意が必要です。水や麦茶をこま

    めに飲むことをお勧めします。

     食事は、結石の原因となるシュウ酸

    の摂取を控えること。ホウレンソウ・

    タケノコ・紅茶など、えぐみのある食

    品に多く含まれます。プリン体や塩分

    の過剰摂取も禁物です。積極的に取り

    たいのは、シュウ酸の吸収を抑制する

    カルシウムです。「ホウレンソウ+し

    らす」「紅茶+ミルク」など、食べ合わ

    せに使うと効果的です。

     睡眠中は尿が濃くなるため結石が

    できやすい時間帯です。食後は結石に

    なる物質が多くなるため、就寝3時間

    前には食事を終えるよう心掛けま

    しょう。

    ▲体外衝撃波結石破砕術

    形、場所の結石に有効です。

    手配中

  • ~読者から寄せられたご質問に答えるページです~

    公益財団法人 宮城県結核予防会理事長 渡辺 彰 先生

    仏堂と里修験

    お答え します!

     結核は、結核菌によって肺などに炎症を起こす病気です。減少傾向にあるとはいえ、今も国内で年間約15,000人が新たに発病し、約2,000人が亡くなっています。他の都府県に比べると罹患率の低い宮城県においても、2018年は166人の発病と、30人の死亡が確認されています。 患者さんの多くは、日本で結核がまん延したころ感染していた高齢者ですが、最近は留学生や技能実習生など外国生まれの若年層も増えています。決して「昔の病気」ではありません。 感染は、患者さんの咳やくしゃみからの「空気感染」で、同じ部屋にいれば吸い込む危険があります。吸い込んだ人のうち、結核菌が定着して感染する人は約3割、発病にいたる人はその中の7~ 10%程度です。多くは免疫力によって増殖が抑えられ、菌は休眠状態に入ります。高齢になってから発病するのは、免疫力が弱まり、封じ込めていた菌が復活するからです。 初期症状は、微熱や咳など風邪とよく似ているため、診断が遅れがちです。微熱やだるさ、タンの絡む咳が2週間以上続くときは、呼吸器の先生に診ていただくことをおすすめします。 診断は、レントゲン・CT・血液検査・タンに菌が排出されているかどうかの検査で確定します。治療は、3~ 4種類の薬の内服です。顕微鏡で見てタンに菌が見つかった人や、基礎疾患のある人は、原則入院治療となります。昔は長期の療養生活が必要でしたが、今は6~9カ月間きちんと薬を飲めば「治る病気」になりました。

     予防で大切なことは健診です。定期的に住民健診・事業所健診を受け、ご質問のように周囲に患者さんが出た場合は、接触者健診を受けてください。自分や周囲を守ることにもなります。また、特定の集団を対象にした健診が実施されることもあります。 健康的な生活を送り、免疫力を上げることも重要です。免疫力の弱い赤ちゃんは重症化リスクが高いので、1歳になるまでにBCGを接種します。効力は10年から15年続くといわれています。

    先日、職場に結核の方が出て、事業所全体が検査を受けることになりました。結核は「昔の病気」と思っていましたが、今でも怖い病気なのでしょうか? (泉区・女性)

     以前、この紙面で「蛸薬師の真実」と題し、長町の“蛸薬師堂”について記したが(42号 平成28年7月発行)、この様に寺院とは異なった単立の仏堂は街中や郊外の街道筋の一角で結構見かける。その名称も“観音堂”であったり“不動堂”であったりと様々な仏様をお祀りしている。しかし、中には名もなくひっそりと佇む仏堂なのかお社なのかも分からない建物もある。その多くは廃寺・廃社となった社寺の名残の建物で、無住後は周辺の住民達によってお守りされている。また、本来仏堂であれば向拝に鰐口が、お社では鈴がさがるはずなのにその両方あるものもあって、お参りした折にかしわ手を打つか否か迷う場面もある。何故この様な建物が方々で見られるのだろうか。それは明治初年発布の俗にいう“神仏分離令”に由来する。 神仏分離令ではそれまでの神仏習合の慣習が廃され(神道と仏教、神と仏、神社と寺院とをはっきり区別させること)、連動して本地垂迹説(日本の神々は様々な仏が化身としてこの世に現れた権現であるとする考え)により成立していた修験道も禁止された。しかもこれを契機に起った廃仏毀釈運動等で廃寺を余儀なくされた寺院も多く、その名残の堂宇が紆余曲折の末、信仰心の篤い地域住民達に守られて現在に至っているというのが真相で、当時禁止された修験道に関係する堂宇も多い。従って前述の鰐口と鈴の件も、元々神仏混合のお堂であったことからも頷ける。 ところで、神仏分離令で禁止となった修験道とはどの様な宗教で、それまでどの様な経

    緯を経て民衆に受け入れられ、どの様な役割を果たしていたのだろうか。修験道の歴史は古く6世紀の飛鳥時代まで遡るという。その始祖は役小角(役行者)と言われ、古来の森羅万象に命や神霊が宿るという神奈備や磐座を信仰の対象とした古神道にそれらを包括する山岳信仰と仏教が習合して出来た日本独特の宗教で、平安時代に密教(天台宗・真言宗)の伝来によりその要

    素も加味された。後に密教で行われていた山中での修行にこの山岳信仰が結びつくことで、修験者(山伏)と称される修験道の行者が日本各地の霊山を修行の場とし、深山幽谷に分け入り厳しい修行を行うことで得られる功徳の印である“験力”を以て衆生を救済するという実践的な宗教へと成長した。特に医学が未発達な時代、そうした“験力”を有する修験者が山岳修行で得た施術や医薬(薬草)の知識で処方したり、陰陽師や密教の僧同様に“加持祈祷”によって疾病の平癒を祈ったりと、現在の医者代わりにもなった。特に漢方による医療すら貧弱な古代・中世においては、修験者による疾病平癒の所業は欠くべからざるものであった。そうした行為は江戸時代になっても続き、本来人里離れた修行の場に居るはずの修験者が里に降りて庵(修行場)を構え、“験力”を以て衆生の要求に応えた。これを“里修験”と称し、街中を含め各地域に点在することになる。しかし、明治政府はその様な修験道による色 な々所業を「庶民を惑わす行為である」として禁止、修験者達は天台・真言両宗の何れかに改宗を余儀なくされた。 とは言え、民衆の中には“おがみさん”と称してそうした慣習は“精神的な拠り所”として残り、長い間 “病は医者ではなくおがみさんへ”という構図が年配者の間に残っていたことは記憶している。勿論、現在皆無であろうが、“精神的な拠り所”は現在も必要で、それが占いやカウンセリングに代わっていったといえるのかも知れない。

    仙  台 歴 史  を 歩   

    く   

    藩政時代に一里塚があった「賢聖院勢至堂(二十三夜堂)」

    “愛子”の地名の由来となった「子安(愛)観音堂」

    えんのおづぬ えんのぎょうじゃ

    ほんじすいじゃく

    たこやくし

    かん のんどう

    こうはい わにぐち

    しゅげんどう

    どううはいぶ つきしゃく

    しんざん ゆうこく

    いおり

    ふどうどう まつ

    か み な び

    いわくら

    (仙臺郷土研究会 理事 渡邊 洋一) 健康にまつわるご質問がある方は、住所、氏名、性別、年齢、電話番号を明記の上、とじ込みのはがき、または仙台市医師会ホームページの「お問い合わせ」フォームでお送りください。なお、採用された方にはクオカードを差し上げます。ご質問募集中!※いただいた個人情報は、掲載に関すること以外には使用いたしません。

    (公財)結核予防会 結核の常識2019より

    り      しゅう    げん

    1112

  • ~読者から寄せられたご質問に答えるページです~

    公益財団法人 宮城県結核予防会理事長 渡辺 彰 先生

    仏堂と里修験

    お答え します!

     結核は、結核菌によって肺などに炎症を起こす病気です。減少傾向にあるとはいえ、今も国内で年間約15,000人が新たに発病し、約2,000人が亡くなっています。他の都府県に比べると罹患率の低い宮城県においても、2018年は166人の発病と、30人の死亡が確認されています。 患者さんの多くは、日本で結核がまん延したころ感染していた高齢者ですが、最近は留学生や技能実習生など外国生まれの若年層も増えています。決して「昔の病気」ではありません。 感染は、患者さんの咳やくしゃみからの「空気感染」で、同じ部屋にいれば吸い込む危険があります。吸い込んだ人のうち、結核菌が定着して感染する人は約3割、発病にいたる人はその中の7~ 10%程度です。多くは免疫力によって増殖が抑えられ、菌は休眠状態に入ります。高齢になってから発病するのは、免疫力が弱まり、封じ込めていた菌が復活するからです。 初期症状は、微熱や咳など風邪とよく似ているため、診断が遅れがちです。微熱やだるさ、タンの絡む咳が2週間以上続くときは、呼吸器の先生に診ていただくことをおすすめします。 診断は、レントゲン・CT・血液検査・タンに菌が排出されているかどうかの検査で確定します。治療は、3~ 4種類の薬の内服です。顕微鏡で見てタンに菌が見つかった人や、基礎疾患のある人は、原則入院治療となります。昔は長期の療養生活が必要でしたが、今は6~9カ月間きちんと薬を飲めば「治る病気」になりました。

     予防で大切なことは健診です。定期的に住民健診・事業所健診を受け、ご質問のように周囲に患者さんが出た場合は、接触者健診を受けてください。自分や周囲を守ることにもなります。また、特定の集団を対象にした健診が実施されることもあります。 健康的な生活を送り、免疫力を上げることも重要です。免疫力の弱い赤ちゃんは重症化リスクが高いので、1歳になるまでにBCGを接種します。効力は10年から15年続くといわれています。

    先日、職場に結核の方が出て、事業所全体が検査を受けることになりました。結核は「昔の病気」と思っていましたが、今でも怖い病気なのでしょうか? (泉区・女性)

     以前、この紙面で「蛸薬師の真実」と題し、長町の“蛸薬師堂”について記したが(42号 平成28年7月発行)、この様に寺院とは異なった単立の仏堂は街中や郊外の街道筋の一角で結構見かける。その名称も“観音堂”であったり“不動堂”であったりと様々な仏様をお祀りしている。しかし、中には名もなくひっそりと佇む仏堂なのかお社なのかも分からない建物もある。その多くは廃寺・廃社となった社寺の名残の建物で、無住後は周辺の住民達によってお守りされている。また、本来仏堂であれば向拝に鰐口が、お社では鈴がさがるはずなのにその両方あるものもあって、お参りした折にかしわ手を打つか否か迷う場面もある。何故この様な建物が方々で見られるのだろうか。それは明治初年発布の俗にいう“神仏分離令”に由来する。 神仏分離令ではそれまでの神仏習合の慣習が廃され(神道と仏教、神と仏、神社と寺院とをはっきり区別させること)、連動して本地垂迹説(日本の神々は様々な仏が化身としてこの世に現れた権現であるとする考え)により成立していた修験道も禁止された。しかもこれを契機に起った廃仏毀釈運動等で廃寺を余儀なくされた寺院も多く、その名残の堂宇が紆余曲折の末、信仰心の篤い地域住民達に守られて現在に至っているというのが真相で、当時禁止された修験道に関係する堂宇も多い。従って前述の鰐口と鈴の件も、元々神仏混合のお堂であったことからも頷ける。 ところで、神仏分離令で禁止となった修験道とはどの様な宗教で、それまでどの様な経

    緯を経て民衆に受け入れられ、どの様な役割を果たしていたのだろうか。修験道の歴史は古く6世紀の飛鳥時代まで遡るという。その始祖は役小角(役行者)と言われ、古来の森羅万象に命や神霊が宿るという神奈備や磐座を信仰の対象とした古神道にそれらを包括する山岳信仰と仏教が習合して出来た日本独特の宗教で、平安時代に密教(天台宗・真言宗)の伝来によりその要

    素も加味された。後に密教で行われていた山中での修行にこの山岳信仰が結びつくことで、修験者(山伏)と称される修験道の行者が日本各地の霊山を修行の場とし、深山幽谷に分け入り厳しい修行を行うことで得られる功徳の印である“験力”を以て衆生を救済するという実践的な宗教へと成長した。特に医学が未発達な時代、そうした“験力”を有する修験者が山岳修行で得た施術や医薬(薬草)の知識で処方したり、陰陽師や密教の僧同様に“加持祈祷”によって疾病の平癒を祈ったりと、現在の医者代わりにもなった。特に漢方による医療すら貧弱な古代・中世においては、修験者による疾病平癒の所業は欠くべからざるものであった。そうした行為は江戸時代になっても続き、本来人里離れた修行の場に居るはずの修験者が里に降りて庵(修行場)を構え、“験力”を以て衆生の要求に応えた。これを“里修験”と称し、街中を含め各地域に点在することになる。しかし、明治政府はその様な修験道による色 な々所業を「庶民を惑わす行為である」として禁止、修験者達は天台・真言両宗の何れかに改宗を余儀なくされた。 とは言え、民衆の中には“おがみさん”と称してそうした慣習は“精神的な拠り所”として残り、長い間 “病は医者ではなくおがみさんへ”という構図が年配者の間に残っていたことは記憶している。勿論、現在皆無であろうが、“精神的な拠り所”は現在も必要で、それが占いやカウンセリングに代わっていったといえるのかも知れない。

    仙  台 歴 史  を 歩   

    く   

    藩政時代に一里塚があった「賢聖院勢至堂(二十三夜堂)」

    “愛子”の地名の由来となった「子安(愛)観音堂」

    えんのおづぬ えんのぎょうじゃ

    ほんじすいじゃく

    たこやくし

    かん のんどう

    こうはい わにぐち

    しゅげんどう

    どううはいぶ つきしゃく

    しんざんゆうこく

    いおり

    ふどうどう まつ

    か み な び

    いわくら

    (仙臺郷土研究会 理事 渡邊 洋一) 健康にまつわるご質問がある方は、住所、氏名、性別、年齢、電話番号を明記の上、とじ込みのはがき、または仙台市医師会ホームページの「お問い合わせ」フォームでお送りください。なお、採用された方にはクオカードを差し上げます。ご質問募集中!※いただいた個人情報は、掲載に関すること以外には使用いたしません。

    (公財)結核予防会 結核の常識2019より

    り      しゅう    げん

    1112

  • 編集後記

    市民医学講座から 

    ※新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、 現在開催を見合わせております。

    2020年7月31日時点

    脳卒中は大変怖い病気です。元気だった人がある日突然発症し、発症した人の半数以上が死亡、もしくは介護が必要な状態になると言われています。しかし、医学の進歩はすばらしく、特に脳梗塞に対する「tPAによる血栓溶解療法」や「カテーテルによる血栓回収療法」の治療効果は劇的です。この治療の恩恵を受けるには発症後すぐに受診し、出来るだけ早く診断してもらう必要があります。「手足に力が入らない」「ろれつが回らない」などの異変に気付いたら、迷わず救急車を呼んでください。(仙台市医師会医政広報部 大浦 敏博)

     糖尿病網膜症は国内失

    明原因の3位である。病

    態は、網膜の血管の損傷、

    閉塞、新生血管の発生と

    段階的に進行するが、か

    なり進行するまで自覚症

    状がない。

     まずは健診を受けて糖

    尿病の早期発見を。診断

    されたら、内科と眼科の

    通院・治療を継続するこ

    とで、失明のリスクを回

    避できる。

     死亡数が最も多い「が

    ん」は肺がん。膵がんは4

    位だが、罹患者数に対し

    亡くなる割�