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Japanese Society of Psychosomatic Obstetrics and Gynecology NII-Electronic Library Service Japanese Sooiety of Psyohosomatio Obstetrios and Gyneoology 女性心 身医学 JJp SocPsychosom ObstetGynecol Vol16 No 3 pp 268 282 平成 24 3 覚醒作用 精油 健常成 心身 京都府 医科大学大学院医学 科免疫学 P 明治国際医療大 属統合医療 ンタ 2木村 1 聡子 Z 今西 2 Hand foot massage using essentiai oils can induce sedative or arousal effects inthe mind and body of healthy women Mari KIMuRAi EriWATANABEI SatokoKlsHIDA2 and Jiro IMANIsHI2 iDepartment O rmmuno ogy KyotoPrefecturalUniersity ofMedicine Z θ レθr8 qtegrative Medi e Center br lntegrative Medicine 概要 目的 女性 対象に鎮静 また 用が期待される 精油 ジを 実施 し を検 討す 試験 【方法】対象者は試験 説明 1 を得られた 22 30 健康成人女性 16 あり精油 なし2 525LA GE 25レモ グラ 25 PE LE 3 条件 30 のハ 1 名ず した試験ザイ は無 作 為化 較試した 対 象者 は心 拍計 装着 10 分間安 30 分問 施術10 分間 安静 試験を行 拍変動解析 によ HF LF HF 出 した施術前 10 分安静後) 3 回唾液を 採取 チゾ CS )濃 度 A lgA )濃分析 測定 した 術前後 2 心理 質問 記 入 を行 【結π二 元配置分散分 によ 施術 中 30 LA GE 」条 件 HF の上 LF HF 下が PE LE 条件 では HF 低下 LF HF られたまた 施術後 10 分に LA GE 」及び PE LE 条件 CS 濃度 大きく低下 した心理 指標 「精油 な し」条 件 と比 LA GE 条件 否定情 を示す 得点 大 きく低 下しPE LE 」条 件 では 肯定的感情 は 「 油な 1 比較 しり大 き く 2 疲労度 が 最 も低 下 し たLF HF CS IgA 度は対 象者 月経周賜 覚 的健 康度 強 く影響 され おり れ らを 被験者 聞因子とし元配置 分散分析 を行 3 条件 によ CSIgA 術前 動き異な された 1 健常成人女 ンド ジを 施す 精油 使 によ 効果 がよ 高ま 精油 種類 によ 同じジを も異な効果 られ る とが れた セラ ー・ にお 静作用や 作用 有す 油 を使 分け るこ 女性特有 症状緩和 めに あ る と思 わ れる summary OBJECTIVE To examine the sedative and arousal effects of hand and foot massage HFM 受付 2011 6 3 受領 2011 ll 18 別刷請 木村 都府立医 科 大学 大 学 院研 究科 免疫 602 8566 京都市 L 河原 町広小路オ尾井 剛 465 Received for publication June 3 2011 acceptedNovember 18 2011 R p i t eque t M ・・iKIMURA D partm n亡flmm 1 gy Ky t P efect ・・al U i sity fM di i e 465 K jii ch Kawaramachi Hirokoji I (amigyo ku Kyoto 602 8566 Japan N 工工 Eleotronio Library
15

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Jun 08, 2022

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Japanese Society of Psychosomatic Obstetrics and Gynecology

NII-Electronic Library Service

Japanese  Sooiety  of  Psyohosomatio  Obstetrios  and  Gyneoology

女性心身医 学 J Jp Soc Psychosom Obstet Gynecol  Vol.16, No .3, pp.268− 282,(平 成 24,3 月)

〈原 著 〉

鎮静 ・覚醒作用 の あ る精油を用 い た ハ ン ド ・フ ッ トマ ッ サ

ー ジ の

健常成人女性の 心身に及 ぼす効果

京都府立 医科大学大学院医 学 研究 科免疫学P

,明 治 国 際 医 療 大 学附 属統合医療セ ン ター2’

 木村 真理)

  渡邉 映理1)  岸 田 聡 子

Z)  今西 二 郎2〕

Hand −foot massage  using  essentiai  oils can  induce sedative  or  arousal  effects

          in the mind  and  body of healthy women

Mari KIMuRAi〕。Eri WATANABEI ), Satoko KlsHIDA2)and  Jiro IMANIsHI2冫

   i)Department  O.プ・

rmmuno ’ogy . Kyoto Prefectural Uniレersity  ofMedicine

  Z幅 θ夢 伽 レθr8 砂 q伽 tegrative Medi 伽 e・Center/br lntegrative Medicine

概要 【目的】健常成 入 女性を 対象に.鎮静,また は覚醒作用が期待 される精油を用い て ハ ン ド・

フ ッ トマ ッ サ ージ を 実施 し,心 身へ の 効果 の 違 い を検討する た め 試験を行 っ た.

 【方法】対象者 は,試験説明を行っ て 1司意を得 られた 22−30 歳の 健康成人女性 16名で あり,精油な し,真正 ラ ベ ン ダー2,5% + ゼ ラ ニ ウ ム 2.5% (LA /GE),ペ パ ー

ミ ン ト 2,5% + レ モ ン グ ラ ス 2.5% (PE/LE )の 3 条件で,30 分間 の ハ ン ド ・フ ッ トマ ッ サ

ージ を 1名ずつ 実施 した.試験デ ザイ ン は無作為化ク ロ ス

オーバ ー対.象比 較試験 と した.

 対 象者 は心拍計を装着 し.10分間安 静,30分問の 施術,10分 間安静の 順 で 試験を行 い ,心拍変動解析に よ りHF 値,  LF,,

/HF 比 を算出 した.また ,施術前 ・中 ・後 (10分安静後)の 3 回唾液を採取 し,コ ル

チ ゾール (CS)濃 度.イ ム ノ グ ロ ブ リ ン A (lgA)濃度 を 分析,測定 した.施術前後 の 2 回,心理質問

紙へ の 記入 を行 っ た.

 【結果】π二元配置分散分析に よ り,施術 中 30 分に 「LA /GE 」条件 で は,  HF 値の 上昇.  LFゾHF 値 の低下 が ,逆 に 「PE /LE 」条件で は HF 値の 低下,  LF /HF の 上昇が 見られた.また,施術後 10分 に 「LA /GE 」及 び 「PE /LE 」条件 で CS 濃度が 大きく低下 した.心理指標は 「精油 な し」条件 と比較 し て 「LA /GE」条件で ,否定的感情 を示す得点が大 きく低下 し,「PE/LE 」条件で は,肯定的感情 は 「精油な し1 と

比較 して よ り大きく上 昇し,他 の 2条件に 比 べ て疲労度が最 も低下 した.また,LF /HF や CS 濃度, IgA濃度は対象者の 月経周賜 自覚 的健康度に 強く影響され て お り,こ れ らを被験者聞因 子として 二 元配置

分散分析 を行 うと,3条件に よ る CS,  IgA の 施術前 ・中 ・後の 動 きが有意 に 異な る こ とが示さ れ た.

 【結論1健常成 人女性に ハ ン ド ・フ ッ トマ ッ サージを施すと,精油 の使用 に よ っ て 心 身へ の 効果が よ り

高まり,精油 の 種類 に よ り.同 じ手技 の マ ッ サ ージ を 行 っ て も異なる効果が 得 られる こ とが示 され た.ア ロ マ セ ラ ピー ・

ハ ン ド ・フ ッ トマ ッ サージ に お い て 鎮静作用や覚醒作用を有する精油 を使 い 分 け る こ

と は,女性特有の 症状緩和 の た め に有効 で ある と思わ れ る,

summary  OBJECTIVE :To examine  the sedative  and  arousal  effects  of hand and  foot massage (HFM )

受付 目 2011年 6月 3 日 受領 日 2011年 ll月 18 日

別 刷 請 求先 :木村 真理 京都 府 立 医科大学大学院医 学研 究科 免疫 学

〒602−8566 京都市.L京区河原町広小路オ尾井剛.465

Received for publication June 3,2011 ;acceptedNovember  18,2011R ・p ・i・t ・eque ・t・・M ・・i KIMURA ・D ・partm ・ n 亡・f lmm … 1・gy,・Ky ・t・・P・efect ・・al U ・i… sity 。f M ・di。i。 e,465 K 。jii.ch。,Kawaramachi −Hirokoji I(amigyo −ku, Kyoto 602−8566, Japan

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Japanese  Sooiety  of  Psyohosomatio  Obstetrios  and  Gyneoology

2012年 3月 木村他 269

using  essential  oils  on  healthy women .

 METHODS :Sixteen participants, aged  24.3 ± 2,78 (mean ± S.D 、),received  a 30−minute  HFM  under

three conditions  in a randomized  cross −over  design:IIFM  without  essential  oil (control );HFM  with  5%

peppermint  and !emongrass (PE /LE )oils ;and  HFM  with  5% lavender and  geranium (LA /GE )oils.

AlO −millute  rest  fo旦lowed each  HFM . During each  of these periods, heart rate  was  measured  and  saliva

was  collected  to evaluate  cortisol  and  IgA levels. Participants completed  psychological questionnaires

before and  after  HFM .

 RESULTS :Asta 〔istical procedure  with  two −way  analysis  of variance  revealed  that high−frequency

(HF )heart rate  activity  increased and  the ratio  of  low−frequency(LF )activity  to 1’IF activity (LF /HF )

decreased after HFM  with  LA /GE , whereas  the opposite  occurred  with  PE/LE. After HFM , cortisol

levels decreased sharply  with  LA /GE and  PEILE , and  IgA levds showed  the greatest increase during

HFM  with  PE /LE. Negative mood  scores . markedly  decreased with  LA /GE , while  positive mood  scores

increased more  greatly after HFM  with  PE !LE, compared  to the control  trial. Compared  to the other

two trials, fatigue scores  decreased m 〔〕st remarkably  and  relaxation  scores  increased the  most  after

HFM  with  PE/LE.}vlcnstrual cycle  or  degree of  self −awareness  on health of subjects  influenced LF 〆HF .

CS leVel and  lgA  leVels. When  anaiySiS  Of  VarianCe  WaS  perfOrmed  With“menStrUal  CyCle

”Or

」’degrCe Of

self−awareness  on  health”as  inter subject  factors, the change  of CS levels and  IgA levels before. during,

and  after massage  significantly  differed among  control , LA/GE and  PE /LE  triais.

 CONCLUSION :The present research  indicates HFM  with  various  essential  oils can  have diverse

beneficial effects  on  the female body and  mind . The  study  further implies the efficacy  of using  essential

oils with  sedative  Qr arousa 且effect durlng aromatherapy  with  HFM  depending on  conditions  to alleviate

Sympto 皿 s unique  to women .

(JJP S・・ P ・y・h… mOb ・t・tGyn … 12012 ;16 :268 〜282)

Keywords :Hand −foot massage , Essentia且oils, Cortisol, Autonomic nervQus  system , Mood  profile

         緒  言

 ア ロ マ セ ラピー (芳香療法)は ,植物か ら抽出

した揮発性 の 精油を用 い る 補完 ・代 替医療の一・

で ある.特 に最近 で は精油 を用 い た ア ロ マ セ ラ

ピー ・マ ッ サージが広 く行われ てお り,ス トレ ス

解消や健康維持,疲労同復に用 い られ て い る .臨

床現場にお い て も病気 の 予防や治療 に使 われ る だ

けで なく,看護や 介護領域 で もア ロ マ セ ラ ピー ・

マ ッ サージの 導入が試み られ て い る

1).例 えば臨

床研究で は ,精油を用 い た フ ル ボデ ィ・

マ ッ サー

ジが ,が ん患者 の 肉体的お よび精神的な症状 を改

善し,患者の quality of life(QOL )を高め る こ と

や2:1,ア ロ マ セ ラ ピ ー

や マ ッ サージが,が ん 患者の

緩和期お よび終末期患者の ケ ア にお い て不安 を軽

減 し躙

痛 み など の 身体的症状 を低下 させ1’1’1,)

免疫能

を刺激す る な どSl,ア ロ マ セ ラ ピー ・マ ッ サ ージ

が さまざまな症状 の 改善に 有効で あ る こ とが 示唆

され て い る,

  ア ロ マ セ ラ ピー ・マ ッ サージの 薬 理学 的作 用

は,精油分子が 嗅覚系を通 して ,また肺か ら吸入

され る こ とや 皮膚か ら直接吸収 され る こ とに よ り

起 こ る と考 え られ るがII

,精油を希釈 したキ ャ リ

アオイル を直接皮膚に塗布する方法を取 る た め,

経皮吸収によ る影響が最 も大 きい と予想され る.

経皮吸収 の 場合,精油分子 は皮下 組織の 大部分 を

占め る脂肪組織中に存在す る毛細血管 や毛嚢 から

吸収 されるが, こ れ は精油が脂溶性で ある こ と に

起因す る1).

 こ の ような理由か ら,腕や ふ くらは ぎの よ うに

精油 の 吸収 が比較的良 い 部分 を 中心 として マ ッ

サージ を行 うア ロ マ セ ラ ピー ・ハ ン ド

・フ ッ ト

マ ッ サー

ジは,部分 的で ある が ,効率的 に ア ロ マ

セ ラ ピー ・マ ッ サ

ージの 効果 を得る こ とが で きる

と考え,本研 究を行 うこ とに した ,

 精油 を用 い た ハ ン ド ・フ ッ トマ ッ サージ は身体

の 末端部分の 血流や リ ン パ の 流れ を高め る こ とが

で きるため1;

,疲労同復 や健康維持 に もつ な が る

と考え られ る.また,体 に 触れ る こ と や マ ッ サー

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Japanese  Societ 二y of  Psycho $ omatic  Obst 二e ヒ rics  and  Gynecology

270 鎮静・覚醒作用の ある精油を用い たノ、ン ド・フ ッ トマ ッ サージの 健常或人女性の 心身に及ぼす効果 女性心身医 16巻 3号

ID

      表 1 試験実施 日程 と 条 件提 示 順 序

    〔ヨ〉試験 実 施日程(2008 年 実施 〕   (b〕開始 時 刻  (c }条 件の 提示 顯 序

年 齢    蔕 油 なし   LA〆GE    PE !LE        蔕油な し LA /GE  PE!LE 

 

 

 

67890

25890

D3

。5

m

D2

D2

III

IIIII111

II

 

I

22     9月1 日

27   9月s 日

E7    9月5 日

22  9月13 日

25  10月2 日

30  10月1B

25   9 月19 日

29   9 月22日

30  10 月7 日

25  10月3日

2G   lO 月6日

24  10月22B

26  10月24 日

30   10 月23 日

26  11月6B

30   to 月2B 日

  9月4 日

  9 月5 日

  9月8 日

9月to 日

9 月28 日

te 月14 日

9 月27 日

9月25 目

10 月15 目

10月IB 日

10月31 日

10 月30 日

10月31日

10月20 日

10 月21 日

1D月31 日

  9月7 日

  9月2 日

9 月11 日

9月16日

9月25B10

月4 日

9 月23 日

9月28 日

10月io 日

10 月10 日

9月四 BlQ

月日日

Io 月17 日

10 月27 日

11 月9 日

11月3 日

13 〔〕Dlfi

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12311111222222

22212

52333

3115

31

5122322

11331

x 日

y 日

z 日

◆施術前 静

  審0分

◆ 徽前安静  10分

◆施 斎前安静  1吩

マ ッサージ 30分   

・な し

マ ッサージ 30  LA/GE

マ ッサージ 30  PE /LE

◆施術後安

  1吩

◆施 衛後蜜静  to分

◆ 術後靈静

  1吩

一      ◆        ★

      心     唾      拍        液

      変      採

      動        集

   前     歯               .コ)

10

票・前

 

(フ

20      3分    分

一◆

拍変動・中

 

30分

図 1  試験 ス ケ ジ ュール

対 象者 は 連 続 しない 31i 間∫試 験 に 参 加 した.

一★       ◆     ★

唾        心        唾

液      拍       液採      変      採集     動      集

中        後        後

             

10分

精 油 条 件 は 順 序 に よ る 影響をな くす た め,ラ ン ダム に 提示 した (表 1参照 〉,

票・後

 

20分

ジ の 手技 に よ る. リラク セ ーシ ョ ン 効果 も期待で

きる.

  身体の 部分的なマ ッ サ ージにつ い て は,フ ッ ト

マ ッ サ ージが収縮期血圧 を低下 させ ,主観的な眠

気を高め る こ と7,ア ロ マ セ ラ ピー ・ハ ン ドマ ッ

サ ージが 末期が ん 患者の 痛み や抑うつ 気分を軽減

す る こ とH,20分間の 手また は 足 の マ ッ サ ージが

が ん 患者 の 苦痛を緩和す る こ ど が 報 告 され て い

る.しか し.対象者の 年齢や健康状態,コ ン トロー

ル など の 条件 を厳密に統制し,生理,心理学的影

響 に つ い て 検討 した研究は 少な い ,また,マ ッ サ ー

ジ をする際の 精油 の 種類 に よる効果の 相違 は経験

的に は知 られ て い るが,実際に効果 の 違 い を調 べ

た研究 はほ とん どな い .

 本研 究で は,精油 の 種類に よ る マ ッ サージ効果

の 違 い を明確に す る た め ,マ ッ サ ージ に使用する

精油 を.鎮静作用.覚醒作用 を持つ と され る 2 条

件に し.精油 を使用 しな い 1条件を加えた 計 3 条

件 を設 定した.また本研究の 対象を健常成人女性

と し. ア ロ マ セ ラ ピー ・ハ ン ド ・フ ッ トマ ッ サ ー

ジが もた らす生理学的 ・心理学的効果 に つ い て評

価 し,精油の 有無,相違 に よる有効性 も併せ て検

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Japanese  Soolety  of  Psyohosomatlo  Obstetrlos  and  Gyneoology

2012年 3 月 木 村 他 271

討 した.

          方   法

1.対象者

 対象者 は 22歳以上 ,30歳以下 (平均 24.3 ± 2.78

歳)の健康な女 r大学生 ・大学院生の ボ ラ ン テ ィ

ア 16名で あ っ た .対象者 に は 試験前に 十分 な研究

内容を説明 し,書面に よ り試験に参加する 旨の 同

意 を得た.本研 究は京都府立 医科大学倫理審査 委

員会 の 承認の 下に行っ た.

1−1.対象者の 健康度,生活習慣

 試験初 日に,試験初 日まで の 2週 間に つ い て の

自覚的な健康度 ・生活習慣チ ェ ッ クが行わ れ , 対

象者の 個人 的属性 が 明 らか に な っ た,喫煙率 は

0% (n =0)で ,全員が 非喫煙者であ り,習慣的 に

飲 ん で い る薬が ある と答えた者は 12.5% (n =2)で

あ っ た が,経 口避 妊薬等を飲 ん で い る者 は い な

か っ た.飲酒に つ い て は, 「全 く飲まなか っ た」25%

(n =4),「週に 1回程度」50% (n = 8),「2, 3 日に…

度」18.8% (n =3),「毎日飲 んだ」6.3% (n =1)で

あ っ た.運動 につ い て は,「日常生活の 範 囲内で 多

少動 い た」56.3% (n = 9),「た まに軽 い 運動 (歩 く,

自転車に乗 る )をした 」37.5% (n =6),「日常的に

運動を した」6.3% (n ;1)で あ っ た.睡眠に つ い

て は 「非常 によ く眠れた 」37.5% (n ・・ 6),「眠れ た」

37.5% (n =6)「普通」25.0% (n ; 4)で ,「あま り眠

れ なか っ た」「全 く眠れなか っ た」と答えた者 は い

なか っ た,生活 リズ ム に つ い て は 「とて も規則正

し い 」0% (n = 0),「まあ規則正 し い 」3L3 % (n =

5),「規則正 しい が た まに乱れた」43.8% (n ・・7),

「乱れ た」25.0% 〔n =4),「非常 に乱れ た」0% (n =

0)で あ っ た.

 健康度に つ い て は 「よ い 」25.0% (n ・・4)t 「普通」

68.8% (n = 11),「悪 い 」 6.3% (n =1),精神的ス ト

レ ス に つ い て は 「ス トレ ス とは無縁 だ っ た」6,3%

(n =1),「ほ と ん ど ス トレ ス を感 じ な か っ た」

18.8% (n ;3), 「た まに ス トレ ス を感 じた」43.8%

(n =7),「い つ もス トレ ス を感 じた」25,0% (n =4),

「い つ も非常 に強い ス ト レ ス を感 じた 」6.3% (n =

1)とい う結果 にな り,様 々 な生活習慣,心身の 状

態を持 つ 者が 「健康」な対象者の 中にまん べ ん な

く存在す る こ とが確認、され た.

 また,中期的な健康度 だけで な く,試験当 日の

健康度 も生理,心理学的指標を左右す る要因 とな

りうる と思われた の で ,対象者 は毎回,試験前 日

か ら当日にかけて の 寝 つ きの 状態,睡眠の 状態 ,

睡眠時間 , 試験当日 の起床時間,起床 時の 状態,

朝食摂取の 有無 健康度,精神的ス トレ ス ,気力,

最後に食事をした 時間につ い て も,同様 に毎回,

自記式質問票に記入 した .さら に,対象者は最終

月経初 日か ら試験 日 まで の 経過 日数 に つ い て 毎

回,自己申告 を した .

II, 試 1験于川頁

 試験 は CS 分泌 の 日内変動1°)が 安定す る午後に

1 名ずつ 行 っ た.い ずれ の 日も 13時 00分開始ま

た は 16時 00分開始 と した (表 1).被験者に は試

験開始の 1時間前 よ り食事を しない よう予 め 指示

して お い た,本研究の 試験手順 (図 1)は竹 田 らが

健常成人に お い て 45分 間の ア ロ マ セ ラ ピー ・フ

ル ボ デ ィ ・マ ッ サージの 効果 につ い て 検討 した先

行研究 を参考 としたm.

 試験を行う部屋 は 個室 と し,仰臥位で もまぶ し

く感 じない よ うに部屋の 照 明を調整 した.室温 は

25度に設定し,施術部位 を露 出して も寒 さを感 じ

な い よ うにバ ス タ オ ル 等で 調節した.

  マ ッ サージは,施術や 精油の取 り扱 い を習熟 し

た施術者が 1 名で 行 っ た .当施術者は t 第三 者機

関で ある統合医療評価認証機構が認定 して い る,

メ デ ィ カ ル ・ア ロ マ セ ラピース ク ール プ ロ フ ェ ッ

シ ョ ナ ル コー

ス を 2 週間受けて トレー

ニ ン グ を行

い ,実技 と知識 に 関す る認定試験に合格 した後,

メ デ ィ カ ル ・ア ロ マ セ ラピース ク ール 講師に ハ ン

ド ・フ ッ トマ ッ サージ につ い て 技術指導を充分 に

受け,5 名の 協力者によ っ て,実際の 試験室で施術

の 再現性が繰 り返 し確認 され た後,本研究で施術

を行 っ た.

 対象者は試験 の 説明を受けた後,試験参加の 同

意書に記人 し,精湘 に よ る ア レ ル ギー

反応の 有無

を調 べ る ために簡易パ ッ チ テ ス トを受け,心拍計

を装着 し,試験が 開始され た,

II−1,施術前安静 (10分)

 対象者は,マ ッ サージ専用 ベ ッ ドに仰臥位 とな

りt 安静状態 を 10分間保 っ た状態に な り,施術前

N 工工一Eleotronlo  Llbrary  

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272 鎮静・覚醒作用のある精油を坩い たハ ン ド・フ ッ トマ ッサージの健常成人女性の心身に及ぼす効果 女性心身医16巻 3号

の 通常状態で の 心 拍数 (R −R 間隔)  が測 定 され

た.施術前安静 10分後に 90 秒 間で 唾液採取  が

実 施 さ れ,そ の 後,20分 問 で 心 理 質 問 紙 

(POMS ,  MMS ,疲労度,  SRSI ;後述の 評価項 目

を参照)の 記入が 行われ た.

II−2.ハ ン ド ・フ ッ トマ ッ サージ施術 (30 分)

  オ イル を浸透 しやす くし足 裏 を消毒する 目的

で ,施術 を行う前に フ ッ トバ ス (水温約 40℃)を

3分間行 っ た,そ の 後,対象者は ベ ッ ドに仰臥位と

な り30 分 間の ハ ン ド ・フ ッ トマ ッ サ ージ を受 け

た.施術 は前半 15分間 に ハ ン ドマ ッ サ ージ を行

い ,後半 15 分 間に フ ッ トマ ッ サー

ジ を行 っ た.施

術部位 は ハ ン ドマ ッ サ ージ が腕,手の 甲,手指,

手掌.手首,手首〜肘, フ ッ トマ ッ サー

ジが足の

甲,足指,足裏,足首,脛,足首〜膝下 とした.

手技 と して は 血液や リ ン パ 液の 循環 を促進 し,オ

イル を浸透 しや すくする軽擦法Vを主 に用 い た.施

術 中は心拍変動  が 測定 された.施術後す ぐに仰

臥位の 状態で ,90秒間で 唾液採 取  が 実施 さ れ

た.

II−3.施術後安静 (10 分)

 施術後は仰臥位の まま 10 分 問 の 安静状態を保

ち,心拍変動  が 測定 された.施術後安静 10分後

に 90秒 間で 唾i液採取  が 実施 さ れ ,そ の 後,20

分 間で 心 理 質 問紙  (POMS ,  MMS ,疲労 度

SRSI)の 記入が行 われた,

III.生理・心理 学的指標

 表 1の 通 りに 1)精油 を使用せ ず , キ ャ リ ア オ イ

ル の み を使用 (精油な し),2)真正 ラ ベ ン ダー精

油 2.5%,ゼ ラ ニ ウ ム 精油 2.5% をキ ャ リア オイル

に 添加 して使用 (LA /GE ),3)ペ パ ーミ ン ト精油

2.5%. レ モ ン グ ラ ス 精油 2.5% をキ ャ リ ア オ イ ル

に添加 して 使用 (PE/LE),の 3条件で の マ ッ サー

ジ を対象者全 員に行 い (精油条件σ)詳細 は 「IV.

精汕条件」を参照 ),以 下 の 項 目 に つ い て評価 した.

III−1.生 理学 的検査

 心 拍変動

 心拍数 (R −R 間隔)は,GMS 社製心拍計 AC ・301

A を装着,試験 開始か ら終 了 まで 連続 し て 測定

し,解析 ソ フ ト MemCalc  for Win ver .ユ.2 で 心拍

変動 の 解析 を 行 い ,Low  Frequency (LF )成分

(O.04−0.15Hz),  High Frequency (HF )成分 (0.15−

0.4Hz )を算出 し,  HF 値 を副交感神経活動指標.

LF/HF 値 を交 感神 経 活 動 指 標 と し て 評価 し

たIL’〕.それぞれの 指標に つ い て ,  施術 前安静 10

分,  ハ ン ド ・フ ッ トマ ッ サ

ージ 30分,  施術 後

安静 10分の 平均 を算 出 した.

  唾液分析

  passive  drawing法に よ り.空腹 時の 唾液 を  施

術 前安静 10分後,  ハ ン ド・フ ッ トマ ッ サー

30 分後,  施術後安静 10分後 の 3 回 に つ い て

90秒 間で 採 取 した.す べ て の 唾 液サ ン プ ル を一20℃ で 凍結保存 した後,CS 濃度お よび IgA 濃

度を測定 した.

  唾液中 コ ル チ ゾー

ル (CS)濃度

  CS 濃度 は精神的 ス トレ ス と相関が あ り.ス トレ

ス に よ っ て 濃度が上が る と い う知見があ り,指標

と し たls).分 析 に は EXPANDED  RANGE  High

Sensitivity  SALIVARY   CORTISOL   ENZYME

IMMUNOASSAY  KIT (SALIMETRICS , USA )を

使用 し,酵素免疫測定法に よ り測定した.

 唾液中イム ノ グ ロ ブ リ ン A (lgA)濃度

  唾液中 IgA は粘膜 の 中 に 分泌さ れ る主 要 な免

疫グ ロ ブリ ン で あり,精神性 ス トレ ス に よ り,唾

液中 IgA 濃度が減少する と考 え られ て お り1−.指

標 と し た.分 析 に は SALIVARY  SECRET ’ORY

IgA INDIRECT  ENZYME  IMMUNOASSAY

KIT (SALIMETRICS , USA )を使用 し,酵素免疫

測定法 に よ り測定した,

III−2.心理学的検査

  心理 学的検査は次の 検査 をハ ン ド・

フ ッ トマ ッ

サー

ジ前後に 2 回,20 分間で 実施 し,そ の 時点で

の 心理状態 を評価 した (心理質問紙  ・心理 質問

紙  ),なお,以 ドの 検査 を含んだ,前後で の 質問

紙の 内容は全 く同一

で あ っ た.

 気分 プ ロ フ ィー

ル 検査 (PrQfi!e of mood  state :

POMS )短縮版15’16 〕

 5 つ の 否定的な感情指標,「緊張一不安 (T−A )⊥

「抑 うつ (D )」,「怒 り一敵意 (A −H )⊥「疲労 (F)」,

「混乱 (C)」と 1 つ の 肯定的感情 「活気 (V )」の 6

因子で 構成 さ れ る .感情障害の 合計得 点 (Total

Mood  Disturbance)は 5 項 凵 (T−A ,  D ,  A −H ,

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2012年 3 月 木 村 他 273

F,C)合計点か ら V 得点を引 い て 算出 した,

 多 面 的 感 情 状 態尺 度 (Multiple Mood  Scale;

MMS )m

 MMS は 40項 目 4段階で 回答 し, 8 項 口を測定

す る質問票で あるが,その うちの 6 項 目に つ い て ,

「抑 うつ・不安」,「敵意⊥「倦怠」の 合計得点を 「否

定的感情」と し,「活動的快」,「非活動 的快⊥「親和 」

の 合計得点 を 「肯定的感r削 として算出 した .

 疲労度評価票IS ,

 精 神的疲労 10項 凵,肉体 的疲 労 10 項 目計 20

項 目を用 い て疲労度 を評価 した.

 Smith Relaxation Statcs Inventory (SRSI)101

 25項 目の リ ラ ッ ク ス 得点と 3項 同の ス トレ ス

得点 (身体 的ス トレ ス ,悩み ,消極 的感情) を測

定 し,それぞれ 合計 した.

IV.精油条件

 本研究で は精油 を使用 しない 「精油な し」条件

の 他,鎮静効果,覚醒効果が ある と考え られ る ブ

レ ン ド精油条件 を 2 種類,計 3 条件を設定 した.

各精油は キャ リアオ イ ル で ある ス イー

トア ーモ ン

ドオ イ ル (Prunas dalcis.  MEADOWS 社製,  Lot

No.187)7mL と混合 し,予備試験 に よ り最適 と示

唆 され , 人体 に と っ て も安全で ある と考え られ る

計 5% 濃度に 希釈 して 使用 したz°). ス イー トア

モ ン ドオ イ ル は,無臭で,ど ん な肌質に もよ く合

い ,キ ャ リア オ イル として は最 もよ く使わ れ て い

る た め,選択 した11.なお 1

こ の 3条件で の ハ ン

ド ・フ ッ トマ ッ サー

ジの 手技は全 く同一

と した.

条件は次の 通 りで あ る,

IV−1.精油 な し (Cont)条件

 精油を使用せ ず,ス イー トァ ーモ ン ドオイル の

み で マ ッ サージを行 っ た .

IV−2.真正 ラベ ン ダー

+ ゼ ラ ニ ウ ム (LA /GE )条

 鎮静効果 を持つ 精油 と して ,以 ドの 2 種類 の 精

汕が選択 され た.

  IV−2−1.真正 ラ ベ ン ダー

(Lavαndala  angusttfoti α )

(LA )

  真正 ラ ベ ン ダー精油 (SANOFLORE 社製 T

  Lot

No.712071S)が使用 された,主成分は,リナ ロー

ル 38.7%,酢酸 リナ リル 37,2% であ り,後は含有

量 5% 以 下 の 成分が 20種類 ほ ど検 出され て い る.

.ヒ記 2種類 の成分は い ずれ もエ ス テ ル で あ りt 流

通 して い る精油の なかで ,真正 ラ ベ ン ダー

は最 も

エ ス テ ル 含有量 が 高い 精油の ひ とつ で あ る2ω .エ

ス テ ル は鎮静作用 が あ り,酢酸 リナ リル ,リナ ロー

ル ,ラベ ン ダー精油 自体 につ い て の マ ウ ス で の 鎮

静効果 も確認 され て い る2°’,また,臨床的な研究

で もラ ベ ン ダーの 精油が鎮静作用を呈 し,気分を

落 ち着かせ る 効果 や:’),不眠へ の 効果が認め られ

て い るため22),本研究で 採用 した.

 IXk’.2.2.ゼ ラ ニ ウ ム (Petargoneum 8raveolens)

(GE )

  ゼ ラ ニ ウ ム 精 油 (SANOFLORE 社製,  Lot No,

712071S)が 使用 された.主成分は,シ トロ ネ ロー

ル 38.0%, ゲ ラ ニ オール 18.8%,リナ ロ

ール 6.5% 1

シ トロ ネリル フ ォ ル メー

ト 6ユ% で あ り,後 は多

数の 含有量 5% 以下の 成分で ある,こ れ らはモ ノ

テ ル ペ ン ア ル コール 類で あ り,シ トロ ネ ロ ール は

鎮静作用,筋肉弛緩作用,血圧 降下作用,ゲ ラ ニ

オー

ル は免疫調整作用,強壮刺激作用 に加 えて 鎮

痛 ・鎮静作用,抗不安症作用 を有 するz°.,さらに

リナ ロ ール は マ ウ ス に 吸入 させ た と こ ろ,運動量

が減少 したとい う報告 もあ り21 ),鎮静作用 をもつ

とさ れて い る ため2ω,採用 した,

IV−3.ペ パ ーミ ン ト+ レモ ン グ ラ ス (PE /LE )条

 覚醒効果 を持つ 精油 と して ,以 ドの 2種類 の精

油が選択 された.

 IV−3−1.ペ パ ー ミ ン ト (Menthapiperita)(PE )

  ペ パ ー ミ ン ト精 油 (SANOFLORE 社製,  Lot

No. LF3411104)が使用 され た.主成分は,メ ン トー

ル 51.5%,メ ン トン 19.0% で あ り,こ れ らの 成分

は強壮作用 やZ°)Z3}

,覚醒作用 を もつ こ とが 示 さ れ

てお り21),ペ パ ー

ミ ン トの 香 りが否定的感情 を 改

善 した25 〕

報告 もある.

 IV−3−2.レ モ ン グ ラ ス (〔Jynzbopogonflexuosus )

(LE)

  レ モ ン グ ラ ス 精油 (SANOFLORE 社 製,  Lot

No. 7Fl)が 使用 された.主成分 は,ゲ ラ ニ アール

41.4%,ネラール 31.6% と い っ た シ トラ

ール2°1

あるが,シ トラー

ル は刺激性が強 く,マ ウス で の

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274 鎮静・覚醒作用のある精油を用い たハ ン ド・フ ッ トマ ッ サージの健常成人女性の心身に及ぼす効果 女性 ひ身医16巻 3号

免疫増強効果が 示唆 されて い る濁

.また,競技者

に対 する ア ロ マ セ ラ ピー ・トリー トメ ン トで は,

精油 な しと比較 して レモ ン グ ラ ス 精油で 「集中力」

が 高ま る こ とが 示唆 され て い る27 ).

  LA /GE 条件で は,真正 ラ ベ ン ダ ー 2.5% ,ゼ ラ

ニ ウ ム 精油 2.5% をス イートア

ーモ ン ドオ イル に

混合 して (計 5%),使用 した. PE/LE 条件で は,

ペ パ ーミ ン ト精油 2.5%, レ モ ン グ ラ ス 精油 2.5%

をス イー トアーモ ン ドオイ ル に混合 して (計 5%)

使用 した,精油を単独で用 い ず,ブ レ ン ドした理

由と して ,  精汕 の相乗効果,  香 りの バ ラ ン ス

の 調整   香 りの 持続時間の 調節が 挙げ られる゜

また,著者 らの 先行研究で 80名 の 健常成人 男性で

香 りの 好 き嫌い に関す る 主 観 的評価 が 示 され た

が,真正 ラ ベ ン ダ ーや ゼ ラ ニ ウ ム

,ペ パ ー

ミ ン ト

の 香 りは,単独で は 「香 りが な い 状態」 と比較 し

て も有意 に 「好 きで はない 」 と い う評価に な り,

香 りの 個人にお ける好き嫌い と精油の 効果も関係

する こ とが示 唆さ れ k2H,.こ の こ とか ら,香 りの

調整が ,精油の 効果 に関係 し て くる 可能性 もある

の で,精油の ブ レ ン ド条件 に つ い て は事前 に官能

検査 を行 っ た .事前に様 々 な割 合で LA /GE 精油,

PE /LE 精油 をブ レ ン ドし,試験 に参加 した者 とは

別の 20歳以 上 30歳以下 の 女性 5 名に 実際に精油

の 香 りを嗅い で もらい ,官能検査 を した と こ ろ ,

どち ら も 1 :1 の 割合 で は精 油の 嫌が られ る特徴

が最 も緩和 されたが ,そ の 他の 割合 で は一方の 精

油 の 特徴 が強 く現れて しまうとの 主観的な結果が

出たの で,1:1 の 混合比 を採用 した.本試験 で の

2 つ の 精油条件に つ い て は, 先行研究

zs1を参考に試

験後 に形容詞に よる香 りの 主 観的な評価測定を実

施 した.

V.試験デ ザ イ ン

 試験デ ザ イ ン は無作為化 ク ロ ス オーバ ー対照比

較試験 と した.同一対象者で は 3 日以上 の ウ ォ ッ

シ ュ ア ウ ト期間をお き,異 な る 日に精油の 条件 を,

1)精 油 な し条件 2)LA /GE 条件 3)PE/LE

条件 に し,同様の ス ケジ ュール で行 っ た.対象者

全員の 試験 日程,開始時刻 を表 1−a ,b に示す,条

件は同一対象者で は同時刻 に試験 を開始 した (13 :

00開始また は 16 :00開始),順序 に よる影響をな

くすた め,表計算ソ フ トエ ク セ ル で乱数表を発生

させ ,被験者に よ りラ ン ダ ム に提示 順序を変更 し

た (表 1−c ).

VI,統計学的解析

  1,マ ッ サージ自体に よる効果 と 3条件 (精油 な

し,LA /GE ,  PE/LE )で の 相違を調べ るた め心拍

変動は 各精油条件内で の   施術 前安静 10分 間 ・

  施術 中 30分 間 ・  施 術後 安 静 10分 間の 平均

を,唾液指標は  施術前安 静 10 分 間 ・  施術 中

30分間 ・  施術後安静 10分間の 直後に 採取 した

値 を,反復測定 に よ る 二 元 配 置分散分析 と Bon・

ferroniの多重比較法で検定 した.心理学的指標 は

施術 前後 の 2 回の み 実施 し,  施術 前安静 10 分

間,  施術後安静 10 分間の それぞ れ直後に実施 し

た値 を対応の ある t 検定で 比 較 し,同様 に分散分

析 と多重比較 を行 っ た,

  II.精汕 の 有無 ・種類 に よ る 効果 の 違い に つ い

て ,さらに詳細 を調べ るた め,精油 な し,LA /GE ,

PE /LE の 3 条件に つ い て,各指標で 「  施術 中 一

  施術前」「  施術後 一  施術前」の 変化量 を求め,

精油な し一LA /GE , 精油な し

一PE/LE , LA /GE −

PE/LE に つ い て それ ぞれ対 応 の あ る t検定で 比

較 した.

  III.測定値へ の 性周期 や生 活習慣 の 影響 を確

認す るため ,最終月経開 始 凵か ら の 経過 日数 生

活習慣の 各指標に つ い て一

元配置分散分析,二 元

配置分散分析,Pearsonの 相関係数 を用 い て測定

値へ の 関連を検定した.

 統計解析 ソ フ トは SPSS ver14 .OJ を使用 した,

           結  果

1.施術前 ・中 ・後で の 変化,3条件の 比較

1−1,心拍変動

 心拍 変動の 結果 を表 2 に示す.

 HF 値,  LF /HF に つ い て,反復測定 によ る分散

分析で,  施術前 ・  施術 中 ・  施術後で の 変化,

お よび 3 条件 (精油な し,LA /GE ,  PE /LE)が変

化に及 ぼす影響 を検定した 。

 HF で は施術 前中後で の 主効果,施術 前中後 × 3

条件 (精油 なし,LA /GE ,  PE/LE )の 交互作用 に

有意差は なか っ た,

 LF /HF で は施術前 ・中 ・後 で主効果 に有意 な

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2012年 3月 木村他 275

表 2 施術前安 静 10分 間 ・マ ッ サ ージ 施術中 30分間・施術 後安静 10分

  間 の HF ,  LF /HF 平 均 値

心拍変動

(n =16) 条件平均値 〔標 準偏差 )

  施術前 藍施榊   施 術 後

HF (msLt )

精油 な し

LA /GEPE

「LE

1.271± 310857

± 亙49

⊥,201± 327

IA22± 302

LO61± 18693D

± 180

L355± 285

1,122± 200950

± 163

LFIHF

精油 な し      1.1± 0.2

1誰 ]‡ 1:誕::;0.9 ± 0ユ

1.0 ± 0ユ

1.0 ± 0.1

1.0 ± 0.ll

,3 士 0.21

、2 ± 0.1

n =16,mean ± SD*

p<0.05 〔反復測定 に よ る 分 散分 析で こD    の 主効果 を検定〕

‡p <O.05CBont’erroni に よる多 貢比較)

表 3 施術前安 静 ・マ ッ サージ 施術中 ・施術後安静 の コ ル チ ゾール,イ ム ノ グ ロ ブ リ

  ン A の 値

唾液解析

(n =16)条件

平均値 (標準偏 差)

  施術前   施術中   施術 後

コ ル チ ゾール*

(pm 〔〕1/ml ) 鞠 ・

】89 ± 2.218,6 ± 1、918

.0 ± 1、7

18D ± 1.818,4 ± 1.617

.8 ± 1.5

17.3± 1916

.4 ± 1.416

、Q ± 1.5

イ ム ノ グ ロ ブ リ ン A *

〔μgfdl)

精 油 な し

1譜 ]‡

59.4 ± 6.752

.4± 2.25

 .4± 5.7

68,0 ± 15.3

63,0± ll.2

63.7 ± 14.3

58.5 ± 9、950、6 ± 7,949

.4 ± 7.4

n ;16, mean ± SD*

p <O.05 (反復測定に よ る分散分析 で       の 主 効果 を検 定 )

‡p< 0.05 (Bunferronl の 多重比 較 )

傾向が認め られ た (F (2,78)=2.451,p =0.093).施

術前中後 x3 条件で の 交互 作用 に 有意差 は なか っ

た が,Bonferroni の 多重 比較で ,  LA /GE 条件 と

PE/LE 条件間 (p =0.032)で の 施術前,中,後 で

の LF/HF 値の 動 きに相違 が ある こ とが確 認 され

た.

1−2.唾液解析

 同様 に 分 散 分析 で .CS お よ び lgA の   施 術

前・  施術 中 ・  施術後で の 変化 × 3条件 (精 油

な し,LA /GE ,  PE /LE )を検定 した (表 3).

 CS で は 施術前・巾 ・後 で 主効果 に 有意 差が 認

め られ (F (1,63)=7.440,p =0.004),どの 条件 も 

施術後に大 き く低下 した .施術前 巾後 × 3条件で

の 交互作用に 有意差 は なか っ たが ,多重比較で ,

LA /GE と PE /LE 条件問 (p <0.001>,精油な しと

PE/LE 条件問 (p =0.018)の 施術前,中,後で の

CS 値 の 動 きに相違が ある こ とが確認 され た.

 IgA も同様 に検定 し,施術前 ・中 ・後で 主効果

に 有 意 差 が 認 め ら れ た (F (1,65)== 3.468,p =

O.049).施術前中後 × 3 条件 で の 交互作用 に有意差

はなか っ たが,多重比 較で LA /GE 条件 と PE/LE

条件間で ,施術前,中,後の IgA 値の 動 きに相違

が ある こ とが確認 され た (p = 0,035).

1−3,心理検査

 心理学的検査の 結果を表 4 に示す,  施術前,

  施術後の 値 を対応 の ある t検定で 比較す る と,

LA /GE 条件,  PE /LE 条件,精油 な しの 全 条件で,

POMS の 感情 障害合計得点,  MMS の 否定的感情

の 合計得点は,  施術後 に有意に低 くな り,MMS

の 肯定的感情の 合計得点は有意に高 くな っ た.肉

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276 鎮驂・覚醒作用のある粫油を用い たハ ン ド・フ ッ トマ ッ サー

ジの 健常成人女性の心身に及ぼす効果

     表 4 マ ッ サージ 施術前後の 心理学的指標 の 得点平均

女性 心 身医16巻 3 号

平 均値 (標 準 偏 差 ) t 検 定

条件  施術前   施術 後

P 値

  施 術前一.  施術 後

緊張一不 安

精油 な し

L.へ!GEPE/LE

5 ± 1.Z3、6 ± O.63.5± 0,8

0.7± D.30.4± O.20.6± O.3

<0.001<0.001〈e.OOl

抑 うつ

精油 な し

LA /GEPE/LE

2,1 ± 0.91.4 ± 0.5L9

± 0、7

O.6± O.4 .2± 0.10.6 ± 0、3

0.0450.Ol40,014

怒 り一敵 意

精 油 な し

LAIGEPE/LE

1.1± 0,40.8± 0.30.8± 0.4

0.3± 020,3± 0.3

  0

0.043

POMS  (n =16) 活 気

精 油な し

LA ,,’GEPE

/LE

6.3± 16.3± 0.96.6± 1、1

6.5 ± 1.16.5 ± 0.97,8± 1.1

疲労

精 油な し

LAIGEPE〆LE

3.9± 13.8 ± 0.73.8 士 0.6

1.5 ± 0.5L4± O.4U± 0.3

 0つ30 D.001<Oρ01

混舌L精油 な し

LAIGEPE/LE

6.1± O.64.9± 0.45、4 ± O.7

3.8 ± O.53.2 ± 0.33.4 ± O.4

<O.001  0.003 0.005

感情障害 の 合 計得 点

精油 な し

LA /GEPEfLE工19 ± 38,4 ± 2,28.9 ± 3.1

0.3 ± 1.9− 1 ± 1,5−2.1± 1,7

0.0020.0010,001

抑 うつ一不安

精油 な し

LA ,・,GEPE/LE

10.4 ± 1.29.2 ± 0.810

± 0.9

7 ± O.858± 0.56

.6 ± 0,8

〈 O.OOlく 0.001< 0.001

敵意

精.油 な し

LA !GEPE/LE

5.8 ± 0,35,4± 0.35、4± O.2

5、1 ± Q,1 5,0 5.0

倦 怠

精油 な し

LA ,/GEPE/LE

10.1± 0.89.8 ± 0,710.3± 0、6

7 ± 0.77.1± 0.67,1 ± O.5

 0.003  .002〈0.OO】

MMS  (n =16)

活動 的快

精油 な し

LA /GEPE,,LE

10.8 ± 08】0、8 ± 0.910.9 ± 1

13.3 ± ll2、9 ± 0,81

{ユ ± 0,8 O.004

非 活動 的快

精.油 な し

LA !GEPE/LE

13.1 ± 0、912.7t:0.913.8 ± 1ユ

14.9 ± 0.816.3 ± 0.916.3 ± 0、7

0.00】0.Dl8

親和精油 な し

LA /GEPE〆LE

9.8 ± 089,7 ±   910.3 ± 1

10.5± 0.9122± D.912± 0.7

0.OlOO,028

否定 的感情

精油 な し

LAIGEPE/LE

26.3 ± 1.724.4 ± 1.325.7 ± L4

19、1± 1.217.9 ± 0.918.7 ± 1、2

< Q,OO1< 0.OO1く O.001

肯定的感情

精油 な し

LA 〆GEPE/LE

33.6± 2.133.1 ± 2.2349

± 2,7

39± 2.3zal.4 ± 1.9423

± 1.8

0.0330DOlO

,004

肉体的疲労

精油 な し

LA 〆GEPE/LE

4.6± 142± 0.74

.4± 0.6

2.9 ± 0.62、3 ± 0.62

± 0,4

0、0350.Ol90.002

疲 労 度評価 (n =16) 精神 的疲 労

精.油 な し

LA 〆GEPE,!LE

9dlll11±

±

±

747 

76.5 ± 1.45.9± 1.35.3± L2

疲労 度計

精油 な し

LA 〆GEPE〆LE

!L6 ± 2.21L6± L611

.4 ± 1、6

9.4± 1.98,3± 1.77.3± 1.5 0.019

SRSI (n =16>

baSic−R  scales

精 油な し

LA 〆GEPE〆LE

42.8 ± 2.243.8 ± 2.944.6 ± 3、6

54、8 ± 2.756、4 ± 2.257.8± 3

  0.  01< 0.001< O.OO1

stress  scales精 油な し

LA !GEPE/LE

lO.9 ± 0.71 .5± α610.4 ± 0,8

7.8 ± 0.37.4 ± 0.2

ア、7± O、3

く O.O  1〈 0.001 0,001

n =16,mean ± SD.前後 の 値 を t検定 で 比 較,  p<  .05 で 有意 差を 表示

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2012年 3月 木村他 277

Nの匠

6001

400

200

0

一200

一400

一600

0.6

0、4

0.2

■ 精油なし

囲 LA /GE     O・O□ PEfLE

化’X ※

一〇.2

一〇.4

罵精 油 なし

ma LA /GE

□PE 〆LE

化xm

  一800              一〇.6 」     LF/HF 変{匕

  図 2 自律神経系 (HF ,  LF 〆HF ) の マ ッ サージ に よる 変化 と精油に よ る 違い

施術 中 変化※ 1 施術中 30分 の IIF (LF /HF )平均 と,施 術 前安静 10分 の HF (LF〆

IIF)平均の 差

施術 後変 化 ※ x :施術後安静 10分の HF (LF /HF )平均 と,施術前安静 10分の HF (LFI

HF )平均の 差

n =16,mean ± SD,対応 の あ る t 検定 で 差 を比較 p*< O.05.  p

* *く 0,01で 有意差 を

表示

体疲労は全条件 で 改善 されて い たが ,PE !〆LE 条件

で最 も改善 された.また,SRSI 得点 は条件にか か

わ らず,  施術後に リ ラ ッ ク ス 得点合計が有意に

高 くな る とい う結果 に な っ た.心 理得点 も生 理

デー

タと同様に分散分析 で ,  施術 前 ・  施術後

の 変化 × 3条件 (精油な し,LA /GE ,  PE /LE )を

検定 したが ,t 検定と同様,ほ ぼ全て の項 目で 施術

前 ・後にお い て 主効呆に強 い 有意差が認め られた

が,施術前中後 × 3条件で の 交互作用 t 及び多重比

較で の 3条件間 の 得点の 動 きに 有意差 は認め られ

なか っ た.

II.精油 なし, LA /GE , PE/LE 条件 で の 施術 に よ

る変化量 の 比 較

 精油な し,LA /GE , PE /LE の 3 条件 に よる マ ッ

サージの 効 果の 違 い を よ り詳し く調べ るた め,精

油 なし,LA /GE , PE /LE の 各指標の 施術前後の 変

化量 を求め ,精油 3条件の 変化量 を比較 した . 

施術前安静 ・  施術中・  施術後安 静の 平均値か

ら (A )施術 中の 変化量 (  一  ),(B)施術後の

変化量 ( 一  )を算出 した,

IL1.心拍変動

 図 2 に心拍変動の 結果 を示す.HF , LF/HF 値 に

つ い て,(A )( .マ ッ サ

ージ施術 中の 平均 一  施術

前安静 の 平 均),(B)(  施術 後安静 の 平均 一  施

術前安静の 平均)の 変化量 に つ い て ,「精油 な し一

LA /GE 」,「精 油 な し一PE/LE 」,「LA /GE −PE/LE 」

条 件 を対応 の ある t検定で そ れ ぞ れ比 較す る と

HF 値で は (A )(B)どち らも LA /GE 条件が上 昇,

PE /LE 条件が低下 し,それぞれ条件問で有意差が

見 られた ((A )t=2.193, p =0.044 (B)t=2.502, p =

O.024),

 LF/HF 値で は (A )で 「精油 な し」条件 と 「LA /

GE 」条件で 低.一ドしたが,「PE /LE 」条件は上昇 し,

「精油な し」条件 と 「PE /LE 」条件 (t ==− 2.694, p =

0.017),お よび 「LA /GE 」条件 と 「PE/LE 」条件

間で 有意差が 見 られた (t=− 2.152,p =0.048).ま

た (B)で は 「精油 な し」条件が低下,「LA /GE」条

件お よび 「PE/LE」条件が上昇 し,「精油 なし」条

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278 鎮静・覚醒作用のある桁油を用し・たハ ン ド・フ ッ トマ ッ サー

ジの 健常成人女性の心身に及ぼす効果 女性心 身医16巻 3 号

件 と 「PE/LE 」条件 間で 有意 差が見 られ た (t=

− 3.472,p =O.003).

II−2.唾液検査

  CS 濃度,  IgA 濃度 も同様に (A )(  施術 中一 

施術前),(B )(  施術 後 一  施術 前)の 変化量 を算

出 し,「精 油 な し一LA /GE 」,「精油 な し一PE/LE⊥

「LA /GE −PEiE 」で 対応の ある t検定で比較した

が,精油 条件間で の 有意差は見 られ なか っ た.

11−3.心理検査

  1 の 解析で は マ ッ サー

ジ に よ る効果が 非常 に強

く,3 条件で の 差は認め られな か っ た.さらに「精

油な し」「LA /GE 」「PE ,

iLE」の 3条件 の 効果の 違 い

を比 較する為,「施術後」の 3 条件 の 心理学 的指標

得点を一元 配 置分散分析で 比較 したが,い ずれ の

心理 学的尺 度 に も有意差 は見 られ なか っ た,

 施術後 の 心理 学的指標 得点を 「精油 な し一LA 〆

GE 」,「精油 な し一PE /1.E 」,「LA /GE −PE/LE」に つ

い て対応 の あ る t検定で 比較する と,POMS の 「感

情障害合計」得点は「精油な し」条件 と比較 し「LA /

GE 」条件 で 有意に低 く(t=2.259, p = 0.039),下 位

尺度の 「緊張 一不安」も同様の 結果 に な っ た (t=

2.236,p =0.041).また MMS の 「肯定的感情」が

「精油 な し」条件 と比 較 して 「PE /LE 」条件 で 有意

に高 く(t;− 2.745,p =0.Ol5),下 位尺度の 「親和」

も同様にな っ た (t=− 2.766,p =0.014).

IIL 測定値 に対象者 の 個人的要因が 及ぼす影響

III−1,測定値にお ける性周期の 影響

  III−1−1.対象者の最 終月経開始初 日か ら の 日数

(M −day)分布

 対象者 の 月経周期,基 礎体温 に つ い て は調査 し

て い ない が,「最終月経開始初 日か ら の 日数 (M −

day)」に つ い て は毎回,調査 を行 っ た.

 一

般健常女性の 月経周期平均29j

よ り月経 開始後

1〜14 凵 目ま で を卵胞期,15〜28 日目を黄体期 と

仮定す る と,3 条件(精油な し,LA /GE ,  PE /LE )

に は それ ぞ れ,M −dayが 1〜14 日 目まで の 者 は

43.8% t43 .8% ,62.5%,  M −dayが 15 日目以上の 者

はそれ ぞ れ 56.3%,56.3%,37.5% で,各性周期の

者が対象者の 中に バ ラ ン ス よ く存在 して い る と予

測 され る.また,3条件間で M −day に相違が ある

か ど うか.一

元配置 の 分散分析で検定 を行っ たが

有意差は な く,条件 間で性周期の 偏 りは ない こ と

が示唆され た.

  III・1−2.対 象者の 最終月経 開始初 日か ら の 日数

(M −day)が測定値ベ ース ライ ン に及 ぼ す影響

  対象者 16名で 3 条件,異なる 日程で試験 を行 っ

て い る の で ,計 48回の 試験に つ い て M −day と,施

術前 の 通常 時の 測定他 に つ い て Pearsonの 相 関

係数を求め,月経周期が 各生理・心理 学的指標に

及ぼす影響を調 べ た.M −day と施術前の CS 濃度

(r  ・O.678, p =O.Ol5),お よ び MMS の 活 動 的 快

(r =O.310, p 一 0.032),POMS の 怒 り(r ・= O.346, p =

O.016),混乱 (r ==O.373, p 一 0.009)に相 関が見 られ,

最終月経 開始初 日か ら 日数が 経つ ほ ど,CS 濃度の

ベー

ス ライ ン が高 ま り,活動的快,怒 り,混乱 と

い っ た 感情 が 高 まる こ とが示 唆 され た.M −day

「1〜14 日凵」と「15〜日目」の 2 群で t検定 を行 っ

て も同様に ,「1〜14 日 目」群 と比較 し て 「15〜凵

目」群 で は,CS 濃度 ベ ース ライ ン,活動的快,怒

り,混乱の 感情が有意 に 高か っ た。IgA,心拍変動

や リラ ッ ク ス 度,疲労度 との 関連 はなか っ た.ま

た M −day と,当日お よび「試験日 まで の 2 週間」の

自覚的健康度,ス トレ ス 度,睡眠 との 関連に つ い

て一

元配置分散分析 で 検定 をお こ な っ た が,有 意

差は見 られ なか っ た.

  III.1−3.対象者の 最終月経開始初 日か らの 日数

(M −day)が測定値 の動 きに及ぼす影響

  M −day を被験者間因子 として ,3条件 x 施術 前

中後 の 生理測定値を 二 元配置分散分析で 検定した

結果,LF/HF (F =3.817, p ・ O.008),  CS (F =2.522,

p =O.042), IgA (F =2.832, p =O.027),で 相互作用

に有意差が み られた.CS, LF /HF は最終月経開始

初 日か ら日数が 経つ ほ ど高 い 傾 向が 見 られ たが ,

IgA は逆 に低い 傾 向が 見 られた.同様 に,  M −day

を被験者問因子 と し て ,3 条件 × 施術 前 ・後の 心

理 測定 値 を検定す る と,POMS の 抑 うつ (F =

4.846,p =O.056),混乱 (F =3979,p =0.079)で 有

意確率が 10% 未満で あ り,最終月経開 始初 日か ら

日数が経つ ほ ど得点が高 い 傾向が 見 られ た,

III−2.測定値 に お ける測定時刻,お よ び 生 活習慣

の 影響

 試験 開始 時刻 が 13:00の 者 (n =9) と 16 :00

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20工2年 3 月 木村他 279

の 者 (n =7)を (表 1−b)t検定で 2群 に分け,測

定値 を全て 比較 したが 有意差 はな く,開始時間に

よる影響は な い もの と考え られる .また,「食事を

して か らの 時間」(1時間以 内,2時間,3時間T4

時間,5時 間以 ヒ)を因子 に し,生 理測定値を従属

変数 に して一元配置分散分析 を行 っ たが い ずれ も

有意差は な く,空 腹時間に よる生理学 的指標へ の

影響 はな い と思 われ る.

 なお ,生活習慣の 各項 目を被験者間因子 と して ,

3条件 × 施術前・中 ・後 を二 元配置分散分析で 検

定 した結果,LFソHF は 「当 日の 健康度」が 良 い ほ

ど低 く(F =2.746,p ;O.Ol3),マ ッ サー

ジ ・精汕に

よ り上が りや すい 傾向が,CS は,「最近 2週 間の健

康度」が悪 い ほ ど高 く(F =4.911,p < O.OOI),マ ッ

サー

ジ ・精油 に よ り,急激 に低下する傾向が ,IgA

は 「最近 2 週間 の 健康度」が良 い ほ ど高 く (F =

2.143, p =O.048),マ ッ サージ ・精油 に よ り上 昇す

る傾向が見 られ た.

III−3.香: りに対す る評価

 精油の香 りに対する評 価 を調査す るため ,各精

油条件で の 試験終了後 に.香 りを表現する 13 個の

言葉t8;

に対 し.100nlm Visual analog  scale 法で 回

答 させ (全 く当て は ま ら な い一非常に 当て は ま

る : 0− 10点),対応の ある t検定で ,LA /GE , PE /

LE 条件の 得点を比較 した.結果,  LA /GE と比較

し て PE/LE 条件で 「さわやか 」「目覚め る」「や る

気が 出る」「興奮す る」 とい う項 目で 有意 に得点が

高か っ た.一方,「けだ る くな る」は逆 に LA /GE

条件 で 有意 に得 点が 高か っ た.香 りを「くさい 」と

感 じるか, との 項 目で は両条件 と も平均値は同値

とな り,香 りの 不快感に 条件 問の 相違は な く,測

定値 に も影響がない と予測 され る.

         考  察

 本研究で は ア ロ マ セ ラ ピ ー ・ハ ン ド ・フ ッ ト

マ ッ サー

ジが心身に与 える 効果に つ い て .20代の

健常 成 人女性 で 3条件 匚精油 な し条件,LA /GE

条件 (ラベ ン ダー油 2.5% + ゼ ラ ニ ウ ム 油 2.5% ),

PE /LE 条件 (ペ パ ーミ ン 1・油 2.5% + レ モ ン グ ラ

ス 油 2.5%)]を比較 し,精油 の 心身に対す る効果 に

つ い て検討した,

 心拍変動 の 結果お よび算出され た変化量 よ り,

3 条件を比 較する と,「LA /GE 」「精油な し」条件で

は施術中 30分 に HF 上 昇 ・LF /HF 低下 が お こ る

が 「PE/LE 」条件 で は逆に HF 低下 ・LE 〆HF 上昇

が見 られ た.こ の こ とより,施術 中 30分間は,施

術前 20分 と比較 して 「LA /GE 」「精油な し」条件で

は副交感神経系が,「PE /LE 」条件で は交感神経系

が優位に なる こ とが 示唆される, と こ ろ が,施術

後 10分 間で は,施術前 10 分間 と比較 して 「LA /

GE」条件 で よ り大 き く HF 値 が 上 昇 し,「PE /

LE」条件で は逆 に低下 した,また,  LF/HF 値 は

「LA /GE 」条件で も上 昇したが,「PE/LE」条件 で は

顕著に 上 昇し,「精油な し」条件 と有意差が見 られ

た.

  こ の 変化に つ い て,ほ と ん ど の 精油は皮膚の 表

面 に 塗布 して か ら皮 膚 に 完全 に 浸透 す る に は

20〜60分か か る と され て い るた め2°,施術 中 30

分 間で は ,まだ精油 の 薬理学的効果が完全 に 現れ

て い な い と予測 され る.またマ ッ サージ 自体の 心

身へ の 影響が か な り大 きい ため ,施術 中 30分間で

は 「LA /GE 」条件 は 「精油 なし」.条件 と HF 値,

LF/HF が 似た 結果 に な っ た と考え られ る,しか

し,LA ,  GE 精油 と比 較 して PE,  LE 精油 は,揮

発性 の 高 い 成分が 多く含 まれて い る た め]/,,粘膜

や 皮膚へ の 刺激1生 即効性が あ り.マ ッ サ ージ自

体 の 効果 を上 回る薬埋学的効果が 現れ た の で はな

い か.施術後 10 分で は,マ ッ サージ自体の 直接的

な効果 は施術 中と比 較して減衰 し,また精油が 十

分 に皮膚 に浸透し て 薬理学的な効果が現れ る時間

で ある ため, 自律神経系 に,精油 の 影響が よ り強

く現れた の で は ない か と予測 され る,LA 精油 に

含 まれ る エ ス テ ル .GE 精油に含 まれ る モ ノ テ ル

ペ ン類 の 持 つ 鎮静作用 に よ り,施術後 10分間で は

「LA /GE 」条件で よ り HF 値が 高ま り,  PE 精油 に

含 まれ る覚醒作用 を持 つ メ ン ト ン ,LE 精油 に含

まれる刺激作用を持 つ ゲ ラ ニ アール など に よ り,

「PE/LE 」条件で は HF が低下 し,  LF /HF が よ り

高まっ たの で はない か.

 「LA /GE 」条件 で 施術後 10分間に LF /HF の平

均値 も H昇 した こ とは矛盾 して い る よ うに見える

が,例 えば,GE 精油 に含 まれ るゲラ ニ アール は強

壮 ・刺激作用 が あ り,対象者の 個人的因子 に よ っ

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28D 鎮静・覚醒作用のある精油を用い たハ ン ド・フッ トマ ッサージの健常成人女性の心身に測 ます効果 女 性心 身医16巻 3 号

て は相反する結果が 得られた もの と考えられる.

  精油の 種類 に よ り交感神経系,また,副交感神

経系 が刺激 される こ とが 本研 究に よ り明 らか に

な っ たが ,LF /HF の 変化 に は ,個 人的 な要因の 中

で も特に 月経周期と 自覚的健康度が強 く関わ っ て

お り,こ の 2 要 因が 複合的に LF /HF の ベ ース ラ

イ ン や 動 きに影響を与えて い る可能性が,分散分

析に よ り示唆 された.

  CS 濃度は,分散分析 よ り,条件にか か わ らず施

術に よ り低 下 した.また,精油な しに比 べ て PE /

LE 条件で は顕著 に低一ドし,  LA /GE 条件と比 較 し

て も有意差 が見 られた .ペ パ ーミ ン ト, レ モ ン グ

ラ ス は特 に,対象者の CS 濃度低 Fに影響 を及ぼ

した 口∫能性が示唆 され る.

  「最終月経初 日か らの 日数」を被験者間因子 とす

る と,CS は施術前中後 × 3 条件 に交互作用 が 見ら

れ,「精油 な し」「LA /GE」「PE /LE 」条件に より,異

なる変化 をする とい うこ とが 明らか にな っ た. ま

た,CS の ベ ース ラ イン や動 きに.特 に 自覚的健康

度が 関わ っ て い る こ とが 明 らかに な っ た.本研究

の 結果 は,精油の ある なし,また は精油の 種類 に

よ りCS の ベ ース ラ イ ン や 変 化の 仕 方 は異 な る

が ,同時 に CS は月経周期 や,自覚的健康度に も統

制 され て い る こ とを示 して い る.CS は卵胞期よ り

も黄体期で上 が る こ とが 示唆 され,それ は別 の 報

告と も一

致 し た3°1

.また 自覚的健康度が悪 い ほ ど

ベ ース ラ イ ン が高 く.ベ ー

ス ライ ン が高い ほ ど,

精油 に よ り急激に下が っ た.

 IgA は ,施術前 ・中 ・後の 比較で,どの 条件で

もマ ッ サージに よ り変化 し,施術 中に 上昇する と

い うこ とが 明 らか にな っ た.また.LA /GE ,  PE /

LE 条件で 動 きに 違い が見 られ た.

 同様に月経開始初 日か らの 日数,または最近 2

週間の 自覚的健康度 を被験者間因子 に した場合に

交互作用が あ り,3条件 に よ り異な る変化 をする

とい うこ とが 明 らか にな りtベ ー

ス ラ イ ンや変化

が,対象者の 月経周期や, 自覚的健康度に統制 さ

れ て い る とい うこ とが分か っ た,IgA は卵胞期,

また は 「最近 2週間の 自覚的健康度」が良い ほ ど

高 く,マ ッ サージや精油 に よ り 「施術 中」 に 上 昇

した.CS と異な り施術後 10 分後で す ぐに元に 戻

る傾向が ある こ とか らTマ ッ サ

ージ の 刺激に よ り

 ・時的に上 昇した と い うこ とが予測 され る.

  心理 学的指標は,マ ッ サ ージ前後を比較す る と,

精油の 有無に 関わ らず否定的感情,疲労,ス トレ

ス 得点が 改善され.肯定的感情や リラ ッ クス 得点

が 高まっ て い た.これは.マ ッ サー

ジ 自体の 効果

が 非常に大 きい た め と考 えられる.なお 1 疲労度

を改善する に は PE /LE 条件が特 に優れ て い る と

い う結果が 出た.こ れ は,メ ン トール ,メ ン トン ,

シ トラール な ど の 強壮効果や,免疫増強効果が関

連 して い る の で は ない か ,また,施術後の 得点を

3 条件で 比較す る と, LA /GE 条件で は精油 なし条

件 と比較 して ,感情 障害や不安得点が低 く,ラベ

ン ダー,ゼ ラ ニ ウ ム の 薬理学的作用 に沿 っ た結果

となっ た.LE/PE 条件で は 「肯定的感情」が精油

な し条件 よ りも高 く,メ ン トール や シ トラール の

効果で あ る と考え られ,精油条件 に よ り得られ る

気分 も異なる こ とが確認 された.

 心理 面 にお い て も月経周期の 影響が あ り,最終

月経開始初 日か ら 日数が経 つ ほ ど t 抑 うつ ,混乱

な ど の 気分が強 くな り,マ ッ サージ前後の 変化の

仕方も異 な る こ とが分か っ た.

 なお ,香 りに対す る対象者 の 感 じ方 は LA /GE

条件 と LE /PE 条件 で 全 く異な り,LA /GE 条件で

は 「けだ る くなる ⊥ LE /PE 条件で は 「さわや か 」

「目覚め る」「や る気が出る」「興奮す る」とい っ た,

まさに 「鎮静効果」「覚醒効果」の狙 い 通 りの 評価

が 得 られたと考 えられ る.

  こ れ らの 結果 よ り,LA /GE 精油 で マ ッ サージ

を行 うと,精油 なし条件と比 較 して ,施術後 に副

交感神経優位に な り,感情 障害や不安得点が低 く,

「けだる く」なる こ とが 分か っ た.また,LE/PE

条件で マ ッ サージを行 うと,精油な し条件 と比較

して ,施術後に交感神経優位に な り,疲労度が改

善 され,「肯定的感情」が 高 くな り,「さわ やか」「目

覚め る」「や る気が 出る」「興奮する」 とい っ た状態

に なる こ とが分か っ た.こ れ らは,精油 な し条件

で は 見 られず,精油な し条件 よ り顕著に現れ た結

果で あ る の で ,精油 の 薬理学的成分 とマ ッ サ ージ

に よる複合効果,相乗効果 に よる もの で ある と考

え られ る.

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2012年 3月 木村他 281

 LF.i’HF , CS, IgA の 動 きは月経周期や 自覚的健

康度の 影響を強 く受けて い るが,それ らを統制す

る と,精汕の 有無 精油 の種類に よ り異なる変化

をする こ とが 示唆 され た.

 全体 を通 して ,生殖期 にあ る成人健康女性 は生

理心理学的に も,非常に 月経周期の 影響 を強 く受

けて お り,特に黄体期後半 と予測され る時期 には,

CS が高 く,IgA が低 く,また怒 りや混乱 など否定

的感情 も強 くなる こ とか ら,身体的,心理学的に

負荷が かか っ て い る と思 わ れ る,こ の 時期 に 月経

前症候群 の よ うな症状が 出る こ とが 予測 され る.

また,自覚的健康度が悪 い 者 も同様 に ベー

ス ライ

ン の CS が 高 く,IgA が低 く,LF /HF が高 い 傾 向

にある.

 女性 は 月経前症 候群や 自律神経失調症, 更年期

障害な ど特 有の 疾患 を肩す る こ とが多い .先行研

究で もア ロ マ セ ラ ピーが女子大学生 に お い て 月経

痛 を軽減す る こ とや1’1〕,更年期女性の 抑 うつ や痛

み に 効果 的 で あ る こ とが 示唆 され て い る3L’)

,今

回 t 精油 を使 っ た マ ッ サ ージ で CS が低 く,IgA

が高 くな り,また心理 的に も否定的感情 が改善で

きる こ とが 示 され た の で ,精油 を使 っ た マ ッ サー

ジ に よ っ て 月経前症候群 をは じめ とする女性特有

の 症状 を改善で きる可能性が ある.

  また , 本研究で ,精油の 種類 を変 える こ と に よ

り,同 じマ ッ サ ージの 千技 を使 っ て も「鎮静効果」

「覚醒効果」と い っ た全 く異 なる生 理心 理 学的効果

が 得られ る こ とが示唆 されたが,例えば自律神経

失調症の 者 に,朝,覚醒作用 の ある 精油 を用 い ,

夜 は鎮静作用 の ある精油 を用 い る など, マ ッ サー

ジに使用する精油 を使 い 分ける こ とで ,自律神経

系,内分泌系,心理状態 を総合的に狙 い 通 りに調

整で きれ ば,個 人の 症 状 に合 わせ た効果が得 られ

る と思わ れる.

  本研究の 限 界点 として ,施術後 10 分 間まで の 急

性効果 しか測定 して い な い ため,完全 に浸透 して

か らの 持続効果や消失過程をさ らに検討する こ と

が 必要で ある と考え られ る.今後 はサ ン プ ル 数 を

増や し,測定指標に大きな影響 を及ぼす月経周期

や 自覚的健康 度 とい っ た個人要因を統制 して よ り

明確な結 果を得る こ とや 、精油の 種類や効果 につ

い て よ り幅広く効果を確認 し,デ ータベ ース 化 し,

将来的に は精油が心 身を調整する メ カ ニ ズ ム を総

合的 に解明する,と い うこ とを今後の 課題 と した

い .

 本研 究 で は,健 常成人 女性に ハ ン ド・フ ッ ト

マ ッ サー

ジを施すこ とに よ り,精油使用 に よ っ て

心 身へ の 効果が よ り高 まる こ とや ,精油の 種類 を

変 える こ とに よ り同 じ手技の マ ッ サージ を行 っ て

も異 な る 特徴 的 な効果が 得 られ る こ とが示 され

た.今後,さらに精油が心 身に及 ぼす効果 を科学

的に検証する こ とが必要で あ り, 目的に合 っ た精

油 を選択 して ア ロ マ マ ッ サージ を行 うこ とで ,そ

の 効果が よ り効率よ く発揮 され る もの と期待 され

る.

                 文   献

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