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2.非線形光学(II) 2.1 波動方程式による非線形相互作用の記述 これまでの非線形光学応答の説明では媒質中の特定の位置(例えば z=0)における分極や
非線形感受率を考え、空間部分の影響すなわち波の位置に関係する項を考慮しなかった。
実際には入射波はある波数ベクトルを持った波であり、非線形応答により生成された分極
は新たに別の波数ベクトルを持った波を放射し(仮に分極波と呼ぶ)、ある有限の厚さを持
った非線形結晶媒質を通過したあとに得られる出力波は、入射波と分極波が空間を伝播す
る過程で行う相互作用の結果として得られる。2つの波の位相速度が一致(位相整合)し
たとき入射波から分極波(例えば SHG 波)へのエネルギーの変換効率は 大になる。言い
換えると非線形効果による波長変換効率は入射波と分極波の位相速度の関係(位相整合条
件)で決まる。非線形分極(入射波)と分極波の空間伝播を記述するにはこれから説明す
る非線形媒質中の波動方程式を使って系を記述する必要がある。
非線形媒質中の波動方程式を導出するためまず Maxwell 方程式から出発する。
ρ~~~div =⋅∇≡ DD (2.1.1a)
0~~div =⋅∇≡ BB (2.1.2a)
t∂∂
+=×∇≡DjHH~~~~rot (2.1.3a)
t∂∂
−=×∇≡BEE~~~rot (2.1.4a)
ここでは演算”div”と”rot”をベクトル演算子”▽”(ナブラ)で書き直し、時間的に早く振動
する量の記号にはチルダ“~”をつけた。実電荷及び実電流の無い媒質を考え( 0~ =ρ 、 0~ =J )また媒質は非磁性体であるとしよう( HB ~~
0μ= )。したがって、Maxwell の方程式は次の
ように書き直せる。
0~~div =⋅∇≡ DD (2.1.1b)
0~~~div 0 =⋅∇=⋅∇≡ HBB μ (2.1.2b)
t∂∂
=×∇≡DHH~~~rot (2.1.3b)
tt ∂∂
−=∂∂
−=×∇≡HBEE~~~~rot 0μ (2.1.4b)
一方、電束密度D~ は非線形分極P~ を用いて
PED ~~~0 += ε (2.1.5)
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と表せる。ここで非線形分極P~ は一般に電界E~ に非線形に依存するものと考える。 ここで電界に関する波動方程式を導出するために、いつもの方法で Maxell 方程式からB~
またはH~ を消去する。すなわち(2.1.4b)の rot(旋回)をとり、時間と空間の微分の順序を
入れ替え、(2.1.3b)を用いてH~ の rot をD~ の時間微分と置き換える。
0~~2
2
0 =∂∂
+×∇×∇tDE μ (2.1.6)
さらに(2.1.5)を使ってD~ をP~ で表すと
非線形媒質における一般的な波動方程式
2
2
02
2
00
~~~tt ∂
∂−=
∂∂
+×∇×∇PEE μεμ (2.1.7)
これは非線形媒質における波動方程式としてもっとも一般的な形をしたものである。ある
状況ではこの式はより単純化される。すなわちベクトル演算子の計算ではつねに
EEE ~)~(~ 2∇−•∇∇=×∇×∇ (2.1.8)
が成り立っているので、線形な媒質では 0~ =•∇ D は 0~ =•∇ E を意味しているので、右側
の式の 初の項はゼロになる。しかし、非線形媒質ではこの項は厳密にはゼロにはならな
い。幸い我々が考えるような非線形過程ではこの右辺の 初の項はゼロで近似できる。例
えばE~ が横波で平面波の場合は 0~ =•∇ E が成立している。もっと一般的な状況でも振幅が
ゆっくり変化するときは 0~ =•∇ E が近似的に成り立っている。 さてここで、分極P~ を線形な成分と非線形な成分に分離して表示しておく。
NL)1( ~~~ PPP += (2.1.9)
ここで)1(~P はE~ に線形に比例する分極成分である。同様に電束密度も
NL)1( ~~~ DDD += (2.1.10)
と表せる。ここで)1(~D は
)1(0
)1( ~~~ PED += ε (2.1.11)
で表される電束密度の線形な成分である。 これらの量を用いて非線形媒質の波動方程式(2.1.7)を書き直すと、線形部分と非線形部分
を分離した形の波動方程式は
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2
NL2
02
)1(2
0
~~~tt ∂
∂−=
∂∂
+×∇×∇PDE μμ (2.1.12)
と書くことができる。この式では線形な成分は左辺にまとめられており、非線形な成分は
右辺のNL~P のみで記述されているので、実際に問題を解くときに便利な形をしている。
まず吸収が無く、したがって分散もない媒質の場合を考えてみよう。このとき線形な電
束密度)1(~D は周波数に依存しない誘電率テンソル
)1(ε を用いて
EεD ~~ )1()1( •= (2.1.13)
と表せる。等方的な媒質では、)1(ε はスカラー量になり
ED ~~ )1()1( ε= (2.1.14)
となる。したがって等方的な媒質では波動方程式は
吸収・分散のない等方的な媒質中の波動方程式
2
NL2
02
2)1(
0
~~~tt ∂
∂−=
∂∂
+×∇×∇PEE μεμ (2.1.15)
で与えられる。この式は非線形な分極(右辺)によって強制振動する振動子(左辺)に対
応している。右辺の強制力の項がゼロの場合は、位相速度)1(
0/1 εμ で分散の無い媒質中
を進む平面波を表している。 分散のある媒質の場合は、各周波数成分について考える必要があるので、電界、電束密
度、分極をさまざまな周波数成分の重ね合わせとして表す。
),(~'),(~ tt nnrErE ∑= (2.1.16a)
),(~'),(~ )1()1( tt nnrDrD ∑= (2.1.16b)
),(~'),(~ NLNL tt nnrPrP ∑= (2.1.16c)
ここでサンメンションは正の周波数のみについてとり、各周波数成分は
c.c.)exp()(),(~ +−= tit nnn ωrErE (2.1.17a)
c.c.)exp()(),(~ )1()1( +−= tit nnn ωrDrD (2.1.17b)
c.c.)exp()(),(~ NLNL +−= tit nnn ωrPrP (2.1.17c)
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で与えられる。 吸収がない場合は
)1(~nD と nE
~の関係は周波数に依存する実数の誘電率テンソルで表され、
),(~)(),(~ )1()1()1( tt nnn rEεrD •= ω (2.1.18)
である。式(2.1.16)から(2.1.18)までを(2.1.12)の波動方程式に代入すると、各周波数成分に
ついて、(2.1.15)と同様な形の波動方程式が得られる。
各周波数成分についての波動方程式
2
NL2
02
2)1(
0
~~)(~
ttnn
nn ∂∂
−=∂
∂•+×∇×∇
PEεE μωμ (2.1.19)
吸収分散がある場合は)1(~
nD の振幅)1(
nD と nE~
の振幅 nE 関係は周波数に依存する複素誘電率
テンソルで表され
)()()( )1()1( rEεrD nnn •= ω (2.1.20)
で与えられる。この式と式(2.1.16)及び(2.1.17)を(2.1.12)の波動方程式に代入すると、各周
波数成分の振幅(時間依存の位相項を含まない)について、次の波動方程式が得られる。
各周波数成分の振幅に関する波動方程式(Helmholtz の方程式)
)()()()( NL0
2)1(0
2 rPrEεrE nnnnnn μωωμω =•−×∇×∇ (2.1.21)
先に述べたように左辺の第一項はしばしば、 )()()( 2 rErErE nnn Δ−=−∇≅×∇×∇ (Δは
ラプラシアン)とすることができるので、その場合は非線形媒質に対する Helmholtz の方
程式になる。 2.2 SFG に対する結合波動方程式(Coupled-wave equation)
この節では具体的に和周波発
生(SFG)の場合に前節で導い
た非線形媒質中の波動方程式
(2.1.19)を使って空間伝播の様
子を見てみることにしよう。こ
こでは吸収のない非線形媒質に
周波数ω1 とω2 の電磁波が入射
し、ω3=ω2 +ω1 の波が発生する
とする。電磁波は z 軸方向に伝
ω12d=χ(2)
ω2
ω3=ω1+ω2
z
L
図 2.2.1 和周波波発生の様子。
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播し、長さ L の媒質に垂直に入射するとする(図 2.2.1)。 波動方程式はそれぞれの周波数成分に対して成り立つ。まず、和周波数ω3=ω2 +ω1につい
ては、非線形分極の影響を考えないとき、+z方向に伝播する平面波としての解は、
c.c.)(exp(),(~3333 +−= tzkiAtz ωE (2.2.1)
の形で与えられる。ここで波数は
03)1(
333
3 /)(, εωεω == ncn
k (2.2.2)
で与えられ、A3は定数である。また、簡単のためここでは、ひとつの偏光成分のみを考え、
電界や分極などをスカラーとして扱う(スカラー近似)。(2.1.19)の右辺の非線形分極の影響
を考えると、A3 は定数ではなくなるが、非線形分極がそれほど大きくないときは、A3 は zに対して(波長に比べて)ゆっくり変化する関数と考えることができ、やはり解は(2.2.1)の形で与えられるとしてよい。一方(2.1.19)における非線形分極の項は
c.c.)exp(),(~333 +−= tiPtzP ω (2.2.3)
の形で与える。ここで分極の振幅は(1.6.33)より
2103 4 EdEP ε= (2.2.4)
で与えられる。ここで簡単のため deff = d と書いた。さらに入射波を
21,ic.c.,)(expc.c.)exp(),(~ =+−=+−= tzkiAtiEtzE iiiiii ωω (2.2.5)
で与えると、非線形分極の振幅は
])(exp[4 212103 zkkiAdAP += ε (2.2.6)
で与えられる。ここで振幅 A3に関する方程式を得るために、 iE~ (i=1,2,3)に対する (2.2.5) 式、と 3
~P に対する(2.2.3)を(2.1.19)に代入する。振幅がゆっくり変化する場合は ∇×∇ は2∇− で近似でき、
2∇− は z 軸方向のみを考えればよいから、222 / z∂∂=∇ で置き換えら
れる。したがって、次の式を得る。
c.c])(exp[4
c.c.)](exp[)(2
3212
3210
3332
33)1(
032
33
323
2
+−+−=
+−⎥⎦
⎤⎢⎣
⎡+−
∂∂
+∂
∂
tizkkiAdA
tzkiAAkz
Aik
zA
ωωμ
ωωωεμ (2.2.7)
ここで )/1()(/)()/( 002
33)1(
0022
33)1(2
332
3 εμωωεμεωωεω ==== cccnk なので左辺
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の第 3 項と第 4 項は互いに打ち消しあう。また複素共役な項を省略しても方程式の有効性
は失われない。したがって、この式は次のように書ける。
])(exp[42 3212
32103
323
2
zkkkiAdAdz
dAik
dzAd
−+−=+ ωμ (2.2.8)
ここで A3 は z にのみ依存するので、変微分は全微分の記号に書き直し、共通の位相項
exp(-iω3t)は取り除いた。振幅 A3が z に対して緩やかに変化する場合、 初の2
32 / dzAd の
項は 2 番目の項と比べて小さい。すなわち
dzdA
kdz
Ad 332
32
<< (2.2.9)
し た が っ て 、 (2.2.9) が 成 り 立 つ と き 、 初 の 項 を 無 視 で き る 。 こ の 近 似
を”Slowly-varying-amplitude approximation(SVA 近似)”という。この近似は A3が電磁
波の波長程度の距離に対してはほとんど変化しないことを意味している。SVA 近似を用い
ると、式(2.2.8)は
和周波数に対する結合振幅方程式
)exp(2
])(exp[2
213
230
3213
232103 kziAA
kd
izkkkik
AdAi
dzdA
Δ=−+=ωμωμ
(2.2.10)
となる。ここで次の量を定義した。
321 kkkk −+=Δ (2.2.11)
この量は波数ベクトル不整合(wave vector mismatch)と呼ばれる。 (2.2.10)の形の式は結合振幅方程式(Coupled amplitude equation)として知られる。ここ
では周波数ω3 の波がω1 とω2 の波と結合して(Coupled)その振幅がどのように変化するか
を表している。周波数ω1 とω2 の波の振幅も一般に変化するので、それぞれに対して同様な
手続きで、結合振幅方程式が得られる。すなわち
入射波に対する結合振幅方程式
)exp(2 *
231
2101 kziAA
kd
idzdA
Δ−=ωμ
(2.2.12)
)exp(2 *
132
2202 kziAA
kd
idz
dAΔ−=
ωμ (2.2.13)
これらの結合振幅方程式を導くのに吸収の無い媒質を仮定している。なぜなら
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(1) 線形な吸収を表す項が現れない。 (2) それぞれの周波数における非線形係数 d に対して同じ値を使っているので完全置換
対称性(Full permutation symmetry)の条件が必要。 だからである。
<位相整合条件について>
まず簡単のため、入射波の振幅 A1 と A2 が定数である場合を考えてみる(和周波数への
波長変換率が小さい場合に相当)。このとき
0=Δk 完全位相整合条件(Condition of perfect phase matching) (2.2.14)
という特別な条件の場合は(2.2.10)の右辺が定数になるので、A3は伝播するにつれ(z が増加
するにつれ)線形に増加していく。したがって、強度は z の 2 乗に比例して大きくなってい
く。 0=Δk という条件は完全位相整合条件(Condition of perfect phase matching)として知
られている。 この条件が成立しているときは、生成された波は非線形分極の位相とつねに
一致しているので、もっとも効率的に入射波からエネルギーを引き出す(変換する)こと
ができる。微視的にみれば、完全位相整合条件のもとでは非線形分極によって誘起された z軸上の双極子(ダイポール)からの放射は伝播方向に位相がそろっており、個々の双極子から
の放射がコヒーレントに重ね合わさり、強められることになる(双極子の数が N の場合、
コヒーレントに重ね合わさった場合の放射強度は N2に比例して強くなるが、インコヒーレ
ントに重ね合わされた場合は N にしか比例しない)。 次に kΔ がゼロでない場合を考えよう。このときは 0=Δk が成立している場合よりも和
周波発生の効率は低下する。長さ L の非線形媒質を透過したときの SFG の振幅は(2.2.10)式を z=0 からz=L まで積分したもので与えられる。したがって、
⎟⎠⎞
⎜⎝⎛
Δ−Δ
=Δ= ∫ kikLi
kAdAidzkzi
kAdAiLA
L 1)exp(2)exp(2)(3
23210
03
23210
3ωμωμ
(2.2.15)
一般に光強度はそのポインティングベクトルの大きさの時間平均として与えられるので、
3,2,1,2 2
0
0 == iAnI ii με
(2.2.16)
と書ける。 したがって、SFG の強度として
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8
2
23
43
22
213
20
22
3
23210
0
033
1)exp(8
1)exp(22)(
kkLi
ckAAnd
kkLi
kAdAnLI
Δ−Δ
=
Δ−Δ
=
ωμ
ωμμε
(2.2.17)
ここで式に表れる位相因子の自乗は
)2/(sinc)2/(
)2/(sin)(
cos121)exp(1)exp(1)exp(
222
22
222
2
πkLLkL
kLL
kLkLL
kLkLi
kLkLiL
kkLi
Δ=Δ
Δ=
ΔΔ−
=⎟⎠⎞
⎜⎝⎛
Δ−Δ−
⎟⎠⎞
⎜⎝⎛
Δ−Δ
=Δ
−Δ
(2.2.18)
で与えられる。ここで xxx ππ /)sin()sinc( ≡ である。
SFG の強度を入射波の振幅ではなく強度で表すとすると次にようになる。
)2/(sinc8
1)exp(22)(
223321
221
23
052
22
3
23210
0
033
πλ
μπ
ωμμε
kLnnn
LIIdc
kkLi
kAdAnLI
Δ=
Δ−Δ
= (2.2.19)
ここで 33 /2 ωπλ c= は真空中での SFG の波長、 00/1 με=c は光速度である。この式では
波数ベクトル不整合の影響はすべて sinc2(ΔkL/2π)という因子の中に含められている。この
因子は位相不整合因子(Phase mismatch factor)と呼ばれる。その関数の形を図 2.2.1 に示
す。 位相不整合因子は|ΔkL/2|
が大きくなると急激に減少す
る。|ΔkL/2|=πでゼロになり、
その後また増加するが、πの整
数倍のところでゼロになる減
衰 振 動 を 示 す 。 こ れ は
|ΔkL/2|> πでは SFG あるいは
非線形効果による波長変換の
効率が非常に悪くなることを
意味している。これは結晶の
長さが π/Δk で与えられる長
さよりも長くなると、発生し
-4 -3 -2 -1 0 1 2 3 40
1
sinc
2 (ΔkL
/2)
ΔkL/2 (xπ)
図 2.2.1 位相不整合因子
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た SFG の位相が非線形分極の位相からずれてしまい、新たに発生した SFG が先に発生し
た SFG を打ち消すように作用し、結果として入射波のエネルギーが SFG へ効率よく変換
されなくなるためである。π/Δk で定義される長さは、コヒーレンス長(Coherence Length)と呼ばれ、発生した波(SFG や DFG)と非線形分極の位相が保たれ、効率よくエネルギー
変換がを行える長さの上限を与える。言い換えると波長変換の効率が 適になる非線形結
晶の厚みの目安を与える。 コヒーレンス長(Coherence Length)(注 9)
kLc Δ
=π (2.2.20)
コヒーレンス長を使って位相不整合因子を書き表すと
)2/(sinc2cLL (2.2.21)
となる。 2.3 Manley-Rowe の関係式(The Manley-Rowe Relations) 吸収のない非線形媒質を伝播する 3 つの電磁波の相互作用(和周波発生)を別の一般的な
観点から考察してみよう。すなわち、電磁波強度の空間的な変化を考察する。強度は
3,2,1,2 *
0
0 == iAAnI iii με
(2.3.1)
と書けるので、その z 方向への微分は
3,2,1,2*
*
0
0 =⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛+= i
dzdA
AdzdA
AndzdI i
ii
ii
με
(2.3.2)
この式と(2.2.12)式を用いると周波数ω1に対応する波の空間的な変化は
{ }{ }c.c)exp(4
c.c)exp(22
c.c)exp(22
c.c.22
*2
*131
*2
*13
1
210
0
0
*23
1
210*
10
0
1*1
0
0*
11
1*1
0
01
+Δ−=
+Δ−=
⎭⎬⎫
⎩⎨⎧
+Δ−=
⎟⎠⎞
⎜⎝⎛ +=⎟⎟
⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛+=
zkiAAiAd
zkiAAiAkdn
zkiAAkdiAn
dzdAAn
dzdAA
dzdAAn
dzdI
ω
ωμμε
ωμμε
με
με
(2.3.3)
注 9:コヒーレンス長の定義はテキストによってばらつきがある。Lc=2π/Δk、あるいは Lc=1/ Δkと定
義する場合もある。
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となる。あるいはこれを書き直して
{ })exp(Im8 *2
*131
1 zkiAAAddzdI
Δ−−= ω (2.3.4a)
周波数ω2とω3に対応する波についても同様に
{ })exp(Im8 *2
*132
2 zkiAAAddzdI
Δ−−= ω (2.3.4b)
{ } { })exp(Im8)exp(Im8 *2
*13321
*33
3 zkiAAAdzkiAAAddzdI
Δ−=Δ−= ωω (2.9.4c)
これらの式を見ると dI1/dz と dI2/dz の式の符号は同じだが、dI3/dz は反対になっているの
が分かる。またこれらの式の符号すなわちエネルギーの流れの向きは相互作用している3
つの波の相対的な位相関係で決まることが分かる。さらにω3 = ω1 + ω2なので、
{ } 0)exp(Im8)( *2
*13123
321 =Δ−−−=++ zkiAAAddzdI
dzdI
dzdI ωωω (2.3.5)
となり、エネルギーの流れは保存されていることが分かる。したがって、3 つの波の全体と
しての強度(パワー)は一定である。
const.321 =++= IIII (2.3.6)
また(2.3.4a)~ (2.3.4c)を見ると
⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛−=⎟⎟
⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛=⎟⎟
⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛
3
3
2
2
1
1
ωωωI
dzdI
dzdI
dzd
(2.3.7)
の関係が成り立っていることも分かる。この関係は Manley-Rowe の関係(Manley-Rowe relations)として知られている。一個の光子のエネルギーは iω で与えられるので、 iiI ω/
は単位時間に単位面積を通過する光子の流れ(フラックス)に相当している。また、(2.3.7)の関係は次のようにも書ける
0,0,02
2
1
1
3
3
1
1
3
3
2
2 =⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛−=⎟⎟
⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛+=⎟⎟
⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛+
ωωωωωωII
dzdII
dzdII
dzd (2.3.8)
これらの式を形式的に積分すると次のような保存量(空間的な)を得る。
32
2
1
12
3
3
1
11
3
3
2
2 , MIIMIIM
II=−=+=+
ωωωωωω (2.3.9)
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11
これらの関係式が示しているのは、周波数ω1 の光子が作られる率は、周波数ω2 の光子が作
られる率と等しく、またそれは周波数ω3 の光子が消滅する率に等しいということである。
これは吸収のない媒質での非線形過程はエネルギーが保存され、パラメトリックな過程(光
子の数の収支が光子系で保存され、物質系へ散逸しない)であることを意味している。 2.4 SFG のより一般的な取り扱い 2.2 節では入射波の強度が非線形効果によって減衰しない単純化された場合について検
討した。ここでは入射波も非線形相互作用によって減衰するより一般的な場合について検
討してみよう。図 2.4.1 に示されるような配置を考える。 これらの波の相互作用を記
述する結合振幅方程式は 2.2節で(2.2.10)~(2.2.13)で与え
られた。これらの方程式を厳
密に解くには Jacobi の楕円
関数を用いる。しかし、式が
記述していることを直感的
に理解しやすいように、ここ
では問題を少し単純化した
場合の扱い方法について述
べる。すなわち、入射波のうちの一つは強度が大きく(周波数をω2とする)、もう一方はそ
れに比べて非常に小さい(周波数をω1 とする)場合について考える。これは微弱な周波数
ω1 の赤外信号光を周波数ω3 =ω1 +ω2 の可視光へ、周波数ω2 のレーザー光との和周波混合に
より増幅変換するアップコンヴァージョン(Up-conversion)という手法に対応している。
この仮定のもとでは周波数ω2の入射波の振幅 A2は定数とすることができるので、結合振幅
方程式(2.2.10)、(2.2.12)、(2.2.13)は次のように書ける。
)exp(311 zkiAK
dzdA
Δ−= (2.4.1a)
)const.(,0 22 == A
dzdA
(2.4.1b)
)exp(133 kziAK
dzdA
Δ+= (2.4.1c)
ここで
23
230
3*
21
210
12
,2
Akd
iKAkd
iKωμωμ
== (2.4.1d)
ω12d=χ(2)ω2
ω3=ω1+ω2ω3
ω1ω2
z
図 2.4.1 和周波波発生の様子。
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H20 後期 光計測工学(谷)
12
と置いた。方程式(2.4.1)はΔk=0 のときは簡単に解ける。まず、(2.4.1a)の微分をとると
dzdA
Kdz
Ad 312
12
= (2.4.2)
(2.4.1c)を使って A3を消去すると
12
21
2
Adz
Adκ−= (2.4.3)
ここで次で定義される、正の値を持つ結合係数κ2を導入した。
22
31
223
21
20
312 4 A
kkdKK ωωμκ =−≡ (2.4.4)
方程式(2.4.3)の一般解は次の形で与えられる。
zCzBA κκ sincos1 += (2.4.5a)
ここでこの式の z の微分をとり、(2.4.1a)式を使うと( 113 /)/( KdzdAA = )
zKCz
KBA κκκκ cossin
113 +
−= (2.4.5b)
が得られる。そして境界条件を満たす(2.4.5a)及び(2.4.5b)の形の解を捜す。境界条件として
は z=0 でω3の振幅はゼロで(A3(0)=0)、ω1の振幅は初期値 A1(0)を持つとする。まず A3(0)=0 の境界条件から、(2.4.5b)式において係数 C=0 が得られる。ω1 の振幅の初期値 A1(0)から
B= A1(0)と書ける。したがってω1の振幅に対する解は
zAA κcos)0(11 = (2.4.6)
ω3の振幅に対する解は
zK
AA κκ sin)0(1
13 −= (2.4.7)
で与えられる。ここで 後の式の係数κ/K1は次のように計算できる。
*2
2
31
13*
2
2
12/1
31
31
*2
2
12/1
31
31*
2
22
12/1
31
311*
22
10
122/1
31
310
1
)(
)()(2)(2
AA
nn
iAA
kkk
i
AA
kkk
iAA
kkk
idAi
kAkk
dK
ωω
ωω
ωω
ωωω
ωμωωμκ
−=−=
−=−==
(2.4.8)
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H20 後期 光計測工学(谷)
13
さらに*
22 / AA は次のように表すことができる。
)exp( 22
22
2
22*
2
2
2
2*
2
2 φiAA
A
AAAA
AA
AA
==== (2.4.9)
ここでφ2は振幅 A2 の位相である。したがって、(2.4.7)は次のように表すことができる。
)exp(sin)0( 2131
133 φκ
ωω izA
nniA = (2.4.10)
解(2.4.6)と (2.4.10)の伝播特性を図 2.4.2 に示す。
0 1 2 3
|A1|2|A3|
2
Inte
nsity
κz (x π)
図 2.4.2 完全位相整合の場合の Up-conversion 過程の信号強度|A1|2と|A3 |2
の変化の様子(ポンプ光の強度|A2|2は変化しない場合)。 さて次に結合振幅方程式(2.4.1)を一般にΔk=0 で無い場合について解いてみよう。我々は
次の形の解を仮定する。
),2/exp()}exp()exp({)(1 kziigzGigzFzA Δ−−+= (2.4.11)
)2/exp()}exp()exp({)(3 kziigzDigzCzA Δ−+= (2.4.12)
ここで g は振幅の空間的な変化率を与え、C,D,F,G は境界条件に依存した定数である。この
式の形をみれば分かるように周波数ω1とω3の波の振幅の空間変化は同じような形(変化率)
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H20 後期 光計測工学(谷)
14
をしている。これは周波数ω1 とω3の波は互いに結合しているからである。また 終的な解
の表式が簡単になるように、位相差の因子は )2/exp( kziΔ± の形で与えた。 まず(2.4.11)の解を結合振幅方程式(2.4.1a)に代入すると係数に関する次の式が得られる。
)2/exp()}exp()exp({)2/exp()}exp()exp({
)2/exp()}exp()exp({
11
21
kziigzDKigzCKkziigzGigzFki
kziigzigGigzigF
Δ−−+
=Δ−−+Δ−Δ−−−
(2.4.13)
この式は z のあらゆる値で成り立つ必要があるので exp(-igz)及び exp(+igz)で括られる項は
右辺と左辺で常に等しくならなければならない。したがって
CKkiigF 121 )( =Δ− (2.4.14)
DKkiigG 121 )( =Δ+− (2.4.15)
同様に(2.4.12)の解を結合振幅方程式(2.4.1c)に代入すると係数に関する次の式が得られ
る。
)2/exp()}exp()exp({)2/exp()}exp()exp({
)2/exp()}exp()exp({
33
21
kziigzGKigzFKkziigzDigzCki
kziigzigDigzigC
Δ−+
=Δ−+Δ+Δ−−
(2.4.16)
この式は z のあらゆる値で成り立つ必要があるので exp(-igz)及び exp(+igz)で括られる項は
右辺と左辺で常に等しくならなければならない。したがって、
FKkiigC 321 )( =Δ+ (2.4.17)
GKkiigD 321 )( =Δ−− (2.4.18)
が得られる。(2.4.14)式と(2.4.17)式は F と C に対する連立方程式となっているので、行列
形式で
0)(
)(
21
3
121
=⎥⎦
⎤⎢⎣
⎡⎥⎦
⎤⎢⎣
⎡Δ+−
−Δ−
CF
kgiKKkgi
(2.4.19)
この方程式が解を持つためには行列の行列式がゼロになる、すなわち
241
312 kKKg Δ+−= (2.4.20)
が成立する必要がある。ここで(2.4.4)式で行ったのと同様、 312 KK−=κ という正の量を定
義する。すると(2.4.20)式は
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15
2412 kg Δ+= κ (2.4.21)
と書くことができる。ここで平方根のプラスの符号を取ったのは、(2.4.11)と(2.4.12)の解の
表式には exp(+gz)と exp(-gz)の両方の空間変化の項が含まれているので、どちらか一方を
解とすればよいからである。 結合振幅方程式(2.4.5a)~ (2.4.5c)の一般解は、したがって (2.4.21)による g で記述される
(2.4.11)式と (2.4.12)式で与えられる。ここで任意の係数 C,D,F,G は適当な境界条件を設定
することで決定される。非線形媒質の入射端面 z=0でA1(0)とA3(0)が既知であるとしよう。
このとき、
GFA +=)0(1 (2.4.22)
DCA +=)0(3 (2.4.23)
である。一方、(2.4.14)と(2.4.15)は C,D,F,G についてさらに2つの方程式を与える。した
がって、4つの独立な線形方程式が4つの係数 C,D,F,G に対して得られるので、C,D,F,Gについて解くことができる。C,D,F,G について解いた値を(2.4.11)式と (2.4.12)式へ代入す
ると、A1と A3の空間変化に対する次の解が得られる。
)exp(sin)0(2
)0(cos)0()( 21
131
11 kzigzAgkiA
gK
gzAzA Δ−⎥⎦
⎤⎢⎣
⎡
⎭⎬⎫
⎩⎨⎧ Δ
++= (2.4.24)
)exp(sin)0()0(2
cos)0()( 21
13
333 kzigzAg
KA
gkigzAzA Δ⎥
⎦
⎤⎢⎣
⎡
⎭⎬⎫
⎩⎨⎧
+Δ
−+= (2.4.25)
ここで、この式の表していることの意味を確認しておこう。まず、振幅の空間位相変化の
因子がそれぞれ exp(-iΔkz/2)及び exp(iΔkz/2)になっている。これは振幅 A1 と A3 の位相差
がΔkz であることを意味している(A1と A3で絶対値が同じで符号が正反対になっているの
は、解の形をそのように選んだからである)。空間変化を表す項は cos の項と sin の項に分
かれるが、cos の項はその振幅がその波の初期値なので、入射波が伝播するにつれ、変化率
g で変動することを表している。sin の項は同様に変化率 g で変動するが、その振幅は、入
射波の初期値のみでなく、結合係数 K1及び K3と位相不整合因子Δk に依存している(g は
結合係数の積と位相不整合因子に依存している)。この sin の項は他方の入射波の振幅を含
むので(例えば A3(z)の場合は A1(0))、他方の波のエネルギーが変換され、その波の振幅に
寄与する成分を含んでいる。 A3(0)がゼロの場合(A2=一定、A1(0)=ある有限の値) について考えてみよう。(2.4.25)式はこのとき
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16
)exp(sin)0()( 21
13
3 kzigzAg
KzA Δ= (2.4.26)
で与えられる。従って SFG の強度は
gzg
KAzA 2
2
232
12
3 sin)0()( = (2.4.27)
ここで2
412 kg Δ+= κ の逆数 1/g は波の相互作用長を表す特性パラメーターとなってお
り、位相不整合Δk が大きくなると短くなる。したがって、Δk が大きくなると生成される
SFG 強度の 大値は減衰する。より詳しくいうとΔk が大きくなると SFG 強度の 大値は
)/( 24122 kΔ+κκ に比例して小さくなる。一方 A1(z)は
)exp(sin2
cos)0()( 21
11 kzigzgkigzAzA Δ−⎥
⎦
⎤⎢⎣
⎡ Δ+= (2.4.28)
で与えられ、その強度は
⎥⎦
⎤⎢⎣
⎡ Δ+= gz
gkgzAzA 2
2
222
12
1 sin4
cos)0()( (2.4.29)
で与えられる。 A3(0)がゼロの場合の A3(z)及び A1(z)の振る舞いを図 2.4.3 に示した。
Inte
nsity
z
|A1|2, Δk=4κ
|A3|2, Δk=4κ
|A1|2, Δk=0
|A3|2, Δk=0
図 2.4.3 A3(0)=0、A2=一定、の場合の SFG 発生における A3と A1の強度変化。
Δk=0 及びΔk=4κの場合。
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H20 後期 光計測工学(谷)
17
2.5 DFG 及びパラメトリック増幅(Parametric Amplification)の場合
DFG 及びパラメトリック
増幅の場合について検討し
てみよう。まず、図 2.5.1 に
示されるように、ω3 とω1 の
波が吸収のない非線形媒質
に入射し、差周波数ω2= ω3
-ω1の波を発生するDFG過
程を考えよう。ここでω3 の
波は十分強く、非線形相互作
用で減衰せず、その振幅強度
は一定と考える。また、差周波の波の振幅は 初ゼロと考える。結合振幅方程式は SFG の
場合と同様の手続きで得られ、
)exp(2 *
231
2101 kziAA
kd
idzdA
Δ=ωμ
(2.5.1a)
)exp(2 *
132
2202 kziAA
kd
idz
dAΔ=
ωμ (2.5.1b)
)const.(,0 33 == A
dzdA (2.5.1c)
で与えられる。ここで 213 kkkk −−=Δ である(符号が SFG の場合と比べて反転)。 <Δk=0 の場合の DFG> まずΔk=0 の完全位相整合の場合について解いてみよう。(2.5.1b)を z で微分し、(2.5.1a)の複素共役を用いて dA1*/dz を消去すると次の式が得られる。
22
2*
3321
22
21
220
22
2 4AAAA
kkd
dzAd
κωωμ
≡= (2.5.2)
ここで、結合係数
23
21
22
21
2202 4
Akk
d ωωμκ = (2.5.3)
を導入した。同様に A1に対して
ω32d=χ(2)ω1
ω2=ω3−ω1ω2
ω3ω1
z
図 2.5.1 差周波発生の様子。
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H20 後期 光計測工学(谷)
18
12
1*
3321
22
21
220
21
2 4 AAAAkk
ddz
Ad κωωμ≡= (2.5.4)
が得られる(注 18)。
このとき A2及び A1の一般解は次の形で与えられる。
zDzCzA κκ coshsinh)(2 += (2.5.5a)
zGzFzA κκ coshsinh)(1 += (2.5.5b)
ここで C,D,F,G は境界条件で決まる積分定数である。 さて、境界条件として
arbitraryAA == )0(,0)0( 12 (2.5.6)
を仮定する。まず、A2(0)=0 の境界条件から、 0)0(2 == DA 及び A2(0)の境界条件から、
GA =)0(1 が得られる。また
FAAkd
idz
dAκ
ωμ=== 0)0(
2)0( *23
1
2101 (2.5.7)
より F=0 が得られる。 後に
CAAkd
idz
dAκ
ωμ== )0(
2)0( *13
2
2202 (2.5.8)
より
)0()0()0(2 *
13
3
12
21*1
3
3
1
2
2
1*13
2
220 A
AA
nn
iAAA
kk
iAAkd
iCωω
ωω
κωμ
=== (2.5.9)
が得られる。これらの係数を使って(2.5.5)を書きなおすと
zAzA κcosh)0()( 11 = (2.5.10)
zAAA
nnizA κ
ωω sinh)0()( *
13
32/1
12
212 ⎟⎟
⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛= (2.5.11)
となる。この解の振る舞いを図 2.5.2 に示す。
注 18:A1と A2は(2.5.1a)及び(2.5.1b)式において対称なので,同じ微分方程式で与えられる。
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19
Inte
nsity
z
|A1(z)|, Δk=0
|A2(z)|, Δk=0
図 2.5.2 A2(0)=0、A3=一定、Δk=0 の場合の DFG における A2と A1の変化。 図 2.5.2 をみると分かるように、SFG の場合との大きな違いは A1も A2もともに z 方向に
伝播するにつれ振幅が単調に増加していることである(κz>>1 で exp(κz)に漸近する)。ま
た、ω1 についての解の形をみれば分かるように、その位相は変化しない(単に増幅される
だけ)。このような振る舞いは SFG 過程の場合に入射波(強くないほうの)と SFG の強度
が z に対して振動したことと比べて、DFG 過程における波の振る舞いは全く異なっている。
これは次のように考えると理解できる。すなわち、DFG 過程ではω3 の光子が消滅し、ω1
とω2の光子が生成するが、この過程ではω1の光子はω2の光子の生成を助長する(結合振幅
方程式を見ると分かる)。同様に新たに発生したはω2 の光子はω1 の光子の生成を助長する。
このような過程の相乗効果で DFG の強度は指数関数的に増加するのである。 この場合、ω1の波はパラメトリック過程である DFG 過程で増幅されるのでパラメトリッ
ク増幅と呼ばれている。このように考える場合「ω1 のシグナル波は非線形混合過程で増幅
され、周波数ω2 =ω3 −ω1 のアイドラー波が発生したと」などという言い方をする。また、
ω1またはω2に対して反射率の高いミラーを非線形媒質の両端に置き、共振器を構成すると、
パラメトリック増幅過程のゲインがあるために発振するようになる(パラメトリック発振)。 < 0)0(,0)0(,0 21 ≠≠≠Δ AAk の一般の DFG の場合> さて、Δk=0 でない一般の場合の DFG の結合振幅方程式(2.5.1a)~(2.5.1c)の解は次で与
えられる(導出は省略するが、先にやったのと同様のやり方でできる)。
)2/exp(sinh)0(sinh2
cosh)0()( *2
111 kzigzA
ggz
gkigzAzA Δ⎥
⎦
⎤⎢⎣
⎡+⎟⎟
⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛ Δ−=
κ (2.5.12a)
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H20 後期 光計測工学(谷)
20
)2/exp(sinh)0(sinh2
cosh)0()( *1
222 kzigzA
ggz
gkigzAzA Δ⎥
⎦
⎤⎢⎣
⎡+⎟⎟
⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛ Δ−=
κ (2.5.12b)
ここで 2/12
*21 2 ⎥
⎥⎦
⎤
⎢⎢⎣
⎡⎟⎠⎞
⎜⎝⎛ Δ
−=kg κκ 、
j
jj k
dAi 32
02 ωμκ = (2.5.12c)
とした。 2.6 SHG の場合 つぎに図 2.6.1 で表されるような SHG 過程の場合について検討してみよう。媒質は基本
周波数ω1 でも SHG 周波数ω2 でも吸収がないとし、完全置換対称性が成り立っているとす
る。 さて、非線形媒質内のトータルの電界を
),(~),(~),(~21 tzEtzEtzE += (2.6.1)
で表すことにする。ここでそれぞれの項は複素振幅 Ej(z)及びゆっくり空間的に変動する振 幅 Aj(z)で表されるとする。すなわち
{ } c.c)(exp)(
c.c.)exp()(),(~
+−=
+−=
tizkizA
tizEtzE
jjj
jjj
ω
ω
(2.6.2) ここで波数と屈折率は次で定義される。
0)1( /)(
,/
εωε
ω
jj
jjj
n
cnk
=
= (2.6.3)
非線形媒質における特定の周波数成分についての波動方程式(2.1.19)において ×∇×∇ を
•∇− 2で近似し、スカラー近似を用いると
2
2
02
2)1(
02
2 ~~)(
~
tP
tE
zE jj
jj
∂
∂=
∂
∂−
∂
∂μωμ ε (2.6.4)
の形の非線形な波動方程式を得る。ここで非線形分極は
),(~),(~),(~21 tzPtzPtzP NL
j += (2.6.5)
2d=χ(2)ω1 ω2=2ω1
z
L 図 2.6.1 SHG 発生の様子。
Page 21
H20 後期 光計測工学(谷)
21
2,1c.c.)exp()(),(~ =+−= jtizPtzP jjj ω (2.6.6)
で与える。非線形分極 Pjは(1.6.33)式及び(1.6.34)式から
})(exp{44)( 12*
12*
121 zkkiAdAEdEzP −== (基本波ω1=2 ω1-ω1の非線形分極) (2.6.7)
及び
)2exp(22)( 12
12
12 zikdAdEzP == (SHG 波ω2=2 ω1の非線形分極) (2.6.8)
で与えられる。 このとき結合振幅方程式は SFG の場合と同様な手続きで次のように与えられる。
)exp(2 *
121
2101 kziAA
kd
idzdA
Δ−=ωμ
(2.6.9)
)exp(21
2
2202 kziA
kd
idz
dAΔ=
ωμ (2.6.10)
ここで
212 kkk −=Δ (2.6.11)
と置いた。 入射波ω1の強度が強く A1を一定と考える場合、(2.6.10)式は直ちに積分できて SHG の空
間伝播に関する解が得られる。より一般には結合方程式(2.6.9)式と(2.6.10)式を同時に解く
必要がる。そのためにそれぞれの複素振幅を振幅係数と位相因子に分けて書いておくと便
利である。そこで振幅 A1 と A2を次のように表す。
)exp(2 11
2/1
1
01 φiu
nIZ
A ⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛= (2.6.12)
)exp(2 22
2/1
2
02 φiu
nIZ
A ⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛= (2.6.12)
ここで 000 / εμ=Z は真空のインピーダンスである。また I はω1 とω2 の波の強度を合わ
せた全光強度である。
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H20 後期 光計測工学(谷)
22
21 III += , 2
0
2j
jj A
Zn
I = (j=1, 2) (2.6.13)
Manley-Rowe の関係から全光強度 I は一定である。ここで新しく導入された無次元の振幅
u1と u2はその自乗和が 1 になるように規格化されている。すなわち
1)()( 22
21 =+ zuzu (2.6.14)
次に規格化された距離パラメーターを次で定義する。
dIZnn
llz1
2/1
30
22
1
212
,/ω
ς ⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛== (2.6.15)
l は波がエネルギーを交換するのに要する特性距離である。また相互作用する波の相対位相
及び規格化された位相不整合パラメーターを次の式で与える。
kzΔ+−= 212 φφθ (2.6.16)
lks Δ=Δ (2.6.17)
ここで定義した uj, φj, ζ, Δs を結合振幅方程式(2.6.12)と(2.6.13)に代入すると、実数パラメ
ーターu1, u2, 及びθについての次の結合方程式を得る((2.6.12)と(2.6.13)を結合振幅方程式
に代入し、実部と虚部のそれぞれについて解く)。
θς
sin211 uu
ddu
= (2.6.18)
θς
sin21
2 uddu
−= (2.6.19)
)(lnsincos
22
1 uudds
dd
ςθθ
ςθ
+Δ= (2.6.20)
この方程式をまず、完全位相整合の条件の場合に解いてみよう。このときΔk すなわちΔs が
ゼロなので、(2.6.20)式を書き直すと
0)ln(cos)lncos(ln
)(ln)cos(ln)(lncossin
22
122
1
22
122
1
==+=
+=+−
uudduu
dd
uudd
dduu
dd
dd
θς
θς
ςθ
ςςςθ
θθ
(2.6.21)
を得る。したがって、 )ln(cos 22
1 uuθ という量は不変量になっている。この対数の中の量
をΓとしよう。
Page 23
H20 後期 光計測工学(谷)
23
Γ=22
1cos uuθ (ζに対して不変量) (2.6.22)
この量はζ=0(すなわち z=0)での u1, u2, θの初期値から決まる。これで u12+ u22=1((2.6.14)式)と合わせて, 2つの不変量が得られた。これらを利用して、連立微分方程式(2.6.18)~(2.6.20)を変数分離することができる。例えば、(2.6.19)式は u12+ u22=1 を用いると、
2/1222
21
2 )cos1)(1(sin θθς
−−±=−= uuddu
(2.6.23)
と書くことができる。さらに(2.6.22)式と(2.6.14)式を用いて、cos2θを不変量Γで表し、u2
だけの微分方程式を得ることができる。すなわち
2/12
222
2
22
22/1
22
41
22
22 )
)1(1)(1()1)(1(
uuu
uuu
ddu
−Γ
−−±=Γ
−−±=ς
(2.6.24)
を得る。この式は次のように書くこともできる。
2/1222
222
22 ])1[( Γ−−±= uu
ddu
uς
(2.6.25)
2/1222
222
22 ])1[(2 Γ−−±= uu
ddu
ς (2.6.26)
後の式を変形してζを u22の関数の積分で表すと
∫ Γ−−±=
)(
)0( 2/1222
222
22
22
22 ])1[(2
1 ζς
u
u uudu
(2.6.27)
が得られる。これは u22 について Jacobi の楕円関数の形をしている。したがって、Jacobiの楕円関数により u22(ζ)とζの関係が決まるので、u2 が計算される。u2 が得られれば
u12=1-u22の関係から u1も得られる。一般的に基本波ω1と SHG 波ω2はエネルギーを周期的
に交換しながら伝播していく。 (Δk=0)に対する(2.6.26)式の解はΓがゼロのときはさらに単純になる。Γ=0の条件は入
力のどちらか一方がゼロであるか、初期位相が cos θ = 0となるようにそろっていればいつ
でも成り立っている。 初Γ=0であればΓは不変量だったので規格化された距離ζのあらゆる
値でゼロになる。これはすなわち一般に cos θ = 0であることを意味している。
0cos =θ (2.6.28)
したがって、sinθ �= 1 または sinθ =-1であるが、我々は
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H20 後期 光計測工学(谷)
24
1sin −=θ (2.6.29)
と取ることにする。これはΓ=0の条件では相互作用する波の相対位相が不変であることを意
味している。したがってΓ=0のとき結合振幅方程式は次のようになる。
211 uu
ddu
−=ς
(2.6.30)
21
2 uddu
=ς
(2.6.31)
2つめの式は
22
2 1 uddu
−=ς
(2.6.32)
と変形でき、その解は
)tanh( 02 ζζ +=u (2.6.33)
で与えられる。ここでζ0は積分定数である。 ここで初期条件として
1)0(,0)0( 12 == uu (2.6.34)
の場合を考えよう。これは入力に SHG の成分がないことを意味している(ほとんどの実験
はこの条件でよい)。この場合 0)tanh()0( 02 == ζu なのでζ0はゼロになり、したがって
)tanh()(2 ζζ =u (2.6.35)
が得られる。基本波 u1の振幅は u12=1-u22の関係から
)sech()(1 ζζ =u (2.6.36)
で与えられる。ここでζ=z/l であり、入射波は基本波ω1のみのなので l は
011
2/121
2)(
ZAdnnl
ω= (2.6.37)
で与えられる。(2.6.35)及び(2.6.36)で与えられる解の振る舞いを図 2.6.2 に示す。ζ=∞の極
限では入射基本波は 100%SHG に変換される。また、ζ0=0 でない場合、すなわち SHG の
初期振幅 )tanh()0( 02 ζ=u がゼロでない場合でも(ただし、sinθ=-1 から SHG の初期位相
φ2 は )(22/ 12 ζφφπθ −=−= の関係を満たす必要がある)、ζの値が大きくなると、
tanh(ζ +ζ0)はζ0の任意の値に対して同様な振る舞いを示し、いずれにせよすべての入射波の
エネルギーは SHG に変換されることになる(Δk=0 の条件で)。
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H20 後期 光計測工学(谷)
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すでに述べたようにΔk=0 でない一般の場合も楕円関数を用いて SHG に対する結合振幅
方程式の解を得ることができる。 1)0(,0)0( 12 == uu の初期条件(すなわちΓ=0)で、い
くつかの位相不整合Δs の値に対して計算された SHG の振る舞いを図 2.6.3 に示す(Δk す
なわちΔs がゼロでない場合の(2.6.27)式で与えられる u22についての関数を数値積分するこ
とによってζ(u22)の関係を得る)。図 2.6.3 から分かるように位相不整合が大きくなるほど、
SHG への変換効率は低下する。Γ=0 の場合、u2(ζ)がとる 大値は次の式で与えられる(詳
細は Armstrong et al. (1962)[4]を参照)。
18
18
1(max)2
2 −⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛ Δ+−
Δ+=
ssu (2.6.38)
図 2.6.4 に u2(max)のΔs 依存性を示す。
0 1 2 30
1Δk=0, Γ=0
Normalized propagation distance
u2(ω2=2ω1)Nor
mal
ized
fiel
d am
plitu
de
ζ=z/l
u1(ω1)
図 2.6.2 Δk=0,Γ=0 で初期条件 1)0(,0)0( 12 == uu の場合の SHG 発生の様子。ζ>3 で入
射基本波はほぼ 100%SHG に変換される。
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0 1 20.0
0.5
1.0
Δs=0
Δs=25Δs=10
Normalized propagation distance
u 2
ζ=z/l
Δs=2
図 2.6.3 初期条件 1)0(,0)0( 12 == uu の場合に、位相整合条件Δs=0,2,10,25 のそれぞれ
について計算されたSHG発生の様子。Δsが大きくなるほどSHG発生効率は低下している。
0 5 10 15 20 25 300.0
0.5
1.0
u 2(max
)
phase mismatch Δs
図 2.6.4 Γ=0 の場合の SHG 発生の規格化振幅 u2 (max)の位相不整合Δs 依存性。Δs が大
きくなるほど u2 (max)は低下している。
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2.7 位相整合条件 2.2 節で SFG の強度は位相不整合
321 kkkk −+=Δ (2.7.1) に依存して
)2/(sinc(max))2/(
)2/(sin(max) 232
2
33 kLIkL
kLII Δ=Δ
Δ= (2.7.2)
のように変化することを示した((2.2.17)をみよ)。この式は SFG 発生効率はΔk がゼロから
ずれると急激に悪くなることを示している。完全位相整合条件は媒質が分散を持つために
実現が困難になる。通常、赤外、可視域で透明な物質は正常分散、すなわち周波数が大き
くなるほど屈折率が大きくなる傾向を示す。完全位相整合条件Δk=0 を3つの波の進む方向
が同じである場合(Collinear)に屈折率を使って書き直すと、
332211 ωωω nnn =+ (2.7.3) 一方、エネルギーの保存則(パラメトリック過程)より
321 ωωω =+ (2.7.4) が成り立つ。これら2つの条件を屈折率がそれぞれの周波数で異なっているときに同時に
満たすのは一般には困難である。たとえば正常分散においては 321 ωωω << とすると
321 nnn << なので、完全位相整合は得られない。
<複屈折による位相整合> 位相整合を得るには例えばフォノンなどの共鳴吸収付近の異常分散(周波数が大きいほ
ど屈折率が小さくなる)を利用することも可能であるが、 も良く用いられる方法は、非
線形結晶の複屈折(Birefringence, 偏光方向によって屈折率が異なる)を用いる方法であ
る。複屈折は 1 軸性、及び 2 軸性の結晶に現れ、立方晶などの光学的に等方的な結晶には
表れない。表 2.3 に結晶のタイプと対応する線形な光学特性を示す。 表 2.3 結晶のタイプと光学特性 結晶のタイプ 線形な光学特性
3 斜晶(triclinic), 単斜晶(Monoclinic),
斜方晶(Orthorhombic)
2 軸性(Biaxial)
4方晶(Tetragonal), 3方晶(Trigonal), 6方晶(Hexagonal)
1 軸性(Uniaxial)
立方晶(Cubic) 等方的(Isotropic)
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5000 10000 15000 20000 25000 300001.8
2.0
2.2
2.4
2.6
2.8LiNbO
3
ne
n0
Refra
ctiv
e in
dex
Frequency (cm-1)
図 2.7.1 LiNbO3(1 軸性)の屈折率分散。 複屈折によって位相整合をとる場合は、一番高い周波数 213 ωωω += の波の偏光方向を
低いほうの結晶の屈折率に合わせるようにする。例えば図 2.7.1 のように負の複屈折(異常
光に対応する屈折率 neのほうが、正常光に対応する屈折率 noよりも小さい)を持つ 1 軸性
結晶の場合(LiNbO3 の場合)、異常光に対応する偏光方向にω3の波の偏光を合わせる。こ
の場合、低いほうの2つの周波数ω1 とω2 の波の偏光方向のとり方には2つの方法がある。
一つはタイプ I と呼ばれる位相整合の取り方で、2つの波の偏光方向を同じにとる(先の例
では正常光の偏光方向に合わせる)。もう一つはタイプ II と呼ばれる位相整合の取り方で、
2つの波の偏光方向を互いに垂直にとる。表 2.4 にそれぞれの場合の組み合わせの可能性を
示す。 表 2.4 タイプ I 及びタイプ II の位相整合の場合の組み合わせ。
正の 1 軸性結晶 (ne > no)
負の 1 軸性結晶 (ne < no)
Type I 221133 ωωω eeo nnn += 221133 ωωω ooe nnn +=
Type II 221133 ωωω eoo nnn += 221133 ωωω oee nnn +=
この表で示すタイプ II の場合の組み合わせでは、ω2をω1より周波数が高くなるように選ん
だほうが位相整合をとりやすい(弱い複屈折で済む)。
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<角度位相整合> 入射波に対して、結晶の角度をうまく調節することにより、先に述べた複屈折を利用し
て位相整合条件を満たすようにすることができる。1 軸結晶の場合について説明する。 1 軸結晶は光学軸と呼ばれる(c 軸または z 軸とも呼ばれる)特別な方向があり、この光
学軸と伝播方向の波数ベクトル k を含む平面に垂直な方向に偏光した光を正常光と呼び、
正常光が感じる屈折率を正常屈折率(no)と呼ぶ。また光学軸と伝播方向の波数ベクトル k を
含む平面に平行な方向に偏光した光を異常光と呼び、異常光が感じる屈折率を異常屈折率
(ne)と呼ぶ(図 2.7.2 参照)。異常屈折率は光線が光学軸となす角θに依存する。異常光と正
常項の関係は次のように表すことができる。
2
2
2
2
2cossin
)(1
oee nnnθθ
θ+= (2.7.5)
ここで en は異常屈折率の主値である(屈折率楕円体の主軸に相当)。θが 90 度のときは ne(θ)は en と等しくなる。位相整合はΔk=0 となるように角度θ(したがって ne(θ)を)を調整する
ことで得られる。
ω 2ω
ExtraordinaryOrdinary
θk
c-axis
図 2.7.2 1 軸性結晶における SHG の角度整合。
角度位相整合の例として、図2..7.2 に示すような負の1軸性結晶の場合の SHG 発生を考え
よう。負の1軸性結晶では neが noよりも小さいので基本波ωのほうが正常光、SHG(2ω)の
ほうが異常光となるように偏光を選ぶ。このとき位相整合条件は
)(),2( ωθω oe nn = (2.7.6)
で与えられる。あるいは ne(θ)を表す(2.7.5)式を用いて、
22
2
2
2
2 )(1
)2(cos
)2(sin
),2(1
ωωθ
ωθ
θω ooee nnnn=+≡
(2.7.7)
式を簡単化するためにに cos2θを 1-sin2θで置き換え、sin2θについて解くと、
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)2(1
)2(1
)2(1
)(1
sin22
222
ωω
ωωθ
oe
oo
nn
nn
−
−= (2.7.8)
という関係が得られる。この式は位相整合を取るためには、この式を満たすように角度θを
調整する必要があることを示している。 <温度位相整合> 角度位相整合には一つ大きな欠点がある。それは整合角度θが有限な場合、エネルギーの流
れであるポインティングベクトル S の方向と波面の伝播方向を表す波数ベクトル k の方向
が異常光に対しては一致しなくなることである。この結果正常光と異常光のビームは非線
形媒質中を伝播するにつれ分離して行く。これは Walk off 効果と呼ばれ、2 つの波の空間
的な重なりを制限し、光波間の相互作用の効率を低下させる。 ある結晶では複屈折が温度に強く依存する(例えば LiNbO3 や LiB3O5 など)。したがっ
てそのような結晶ではθ=90 度に保ちながら、温度を調節することによって位相整合を達成
することができる(注 30a)。これを温度位相整合という。 2.8 擬似位相整合 非線形光学効果による効率的な波長変換のためには位相整合を達成することが必要で、
複屈折を利用した角度位相整合や温度位相整合などの手法が用いられることを前節で述べ
た。しかし、複屈折を利用した位相整合の手法がいつでも都合よく利用できるとは限らな
い。例えば GaAs は大きな非線形感受率を持つが、複屈折を持たないので、角度位相整合
や温度位相整合などの複屈折を利用した手法は使えない。特定の波長の組み合わせで位相
整合を達成することは可能だが、広い範囲で DFG などの出力波長を変化させることは困難
である。複屈折が非常に小さい非線形光学結晶の場合も同様である。複屈折を利用した位
相整合の手法が使えないもう一つの例は、d33 など入射波と出力波の偏光成分が同じになる
非線形感受率テンソル成分を使わなければならない場合である(注 30b)。このような場合には
たとえその非線形光学結晶が複屈折を持っていたとしても、複屈折を利用して位相整合を
達成することができない。 このように複屈折を利用して位相整合を達成するのが難しい場合に利用される手法が擬
似位相整合(Quasi-Phase-Matching)と呼ばれる手法である。擬似位相整合について以下概
略を説明する。図 2.8.1(a)と(b)にはそれぞれ、バルクの非線形光学結晶による場合と周期的
に非線形光学結晶の極性(ドメイン)を反転させた場合の SFG(ω3= ω1+ ω2)の様子が示され
ている。バルク結晶の場合は、SFG の振幅増加率 dA3 /dz はコヒーレンス長 Lcの 2 倍の周期
で増減(方向が反転)する。すなわち、結晶中を入射波が Lcだけ伝播すると SFG の振幅 A3
(=∫(dA3/dz)dz=∫dA3 )は 大になり、2Lcの周期だけ進むと SFG の振幅 A3はゼロに戻る。 注 30a:θ=90 度のとき、Walk-off は起こらないので、一般に温度位相整合のほうが、角度位相整合よ
り効率が上がる。
注 30b:例えば LiNbO3結晶(1 軸性)の d33は 100 x 10−9 (esu) 程度で非常に大きいが、他の d31などの
成分は 10 x 10−9 (esu) 前後なので、SHG などの発生効率を上げるためには d33を使う必要がある。
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ω1ω2
ω1ω2
dA3/dz z
deff
ω3
ω1ω2
ω1ω2
dA3/dz
Lc
z
ω3
(a)
(b)
Λ=2Lc 図 2.8.1 (a)バルクの非線形光学結晶による SFG(ω3=ω1+ω2)の様子。(b)極性をコヒーレンス長ご
とに反転させた非線形光学結晶による SFG の様子。A3 は SFG の振幅を表す。
0 1 2 3 4 5 6
with a wavevector mismatch
Quasi-phase-matching
Perfect phase-matching
SFG
inte
nsity
|A3|2 (a
rb. u
nit)
z/Lc
図 2.8.2 位相不整合のあるバルク結晶合( 一番下の正弦波状の曲線)、擬似位相整合 (真ん中の曲線)、完全な位相整合(一番上の破線)、それぞれの場合の SHG 発生強度(振幅の自乗)の z 軸方向への依存性。
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32
バルクの結晶ではこの繰り返しで SFG が発生する。したがって、結晶厚は結晶中での吸収
を考慮すれば、コヒーレンス長 Lcに一致させるのがよい。しかし、SFG の強度は結晶の厚
さ L の自乗に比例するので、コヒーレンス長が短いときには発生効率があまりあがらなく
なる。一方、図 2.8.1(b)のように極性を周期的に反転させている結晶の場合、反転周期を 2Lc
となるようにとると、SFG の振幅増加率 dA3 /dz は負になることがなく、SFG の振幅 A3 は
結晶中を伝播するにつれ、単調に増加していく。この様子を図 2.8.2 に示した。 以上で擬似位相整合の定性的な説明を行ったが次に数学的な記述を示そう。d(z)を伝播方
向 z に依存した非線形結合係数とする。d(z)は周期Λの擬似位相整合結晶中では次の矩形波
関数で表すことができる。
)]/2sign[cos()( Λ= zdzd eff π (2.8.1)
この d(z)は次のようにフーリエ展開できる。
)exp()( zikGdzd mm
m
meff ∑
+∞=
−∞=
= (2.8.2)
ここで km=2πm/Λは m 次のフーリエ成分の格子ベクトル(grating vector)である。(2.8.1) 式の矩形波関数のフーリエ係数 Gmは次で与えられる。
)2/sin()/2( ππ mmGm = (2.8.3)
この式から 1 次のフーリエ成分の振幅 G1は G1= 2/π = 0.637 であることが分かる。
さて、擬似位相整合の場合の SFG の発生と伝播は 2.2 節で示したのと同じように結合振
幅方程式により記述できる。ただし、擬似位相整合の場合は deff を(2.8.1)式の d(z)に置き換
える。しかしそのままでは解きにくいので、(2.8.2)式でフーリエ展開した低次数の成分を用
いて d(z)を近似する。このとき SVA 近似のもとで擬似位相整合による SFG の結合振幅方程
式は次のように表される(Gauss 単位系)。
)exp(8 *
231
11 zkiAAcn
didzdA
QQ Δ−=
ωπ (2.8.4a)
)exp(8 *
132
22 zkiAAcn
didz
dAQ
Q Δ−=ωπ
(2.8.4b)
)exp(8
213
33 zkiAAcn
didzdA
QQ Δ+=
ωπ (2.8.4c)
ここで dQはフーリエ成分の次数 m に依存した非線形結合係数で、次で与えられる。
meffQ Gdd = (2.8.5)
また波数不整合ΔkQはフーリエ成分の次数 m に対して
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33
mQ kkkkk −−+=Δ 321 (2.8.6)
で定義される。(2.8.4a)~(2.8.4c)は d と k の係数が異なるだけで、2.2 節で導出した SFG に
対する結合振幅方程式と同じ形をしている。dQは次数 m が大きくなるにつれ減少するので、
擬似位相整合は次数 m=1 の成分を用いるのが も効率がよい。次数 m=1 に対しては
Λ−−+=Δ /2321 πkkkkQ , effQ dd )/2( π= (2.8.7)
である。(2.8.7)の 初の式より擬似位相整合ΔkQ= 0 を実現するためには極性の反転周期Λは
次で与えられることが分かる。
cLkkkk 2/2)/(2 321 =Δ=−+=Λ ππ (2.8.8)
擬似位相整合は LiNbO3(強誘電体であり、大きな d33 をもつ)に対してよく用いられ、
PPLN(Periodically Poles Lithium Niobate)結晶として市販もされている。c 軸に垂直にカットさ
れた LiNbO3 基板にすだれ状の周期電極を表面に付け(裏面には一様な接地電極を付ける)、
閾値以上の大きな静電界(>21 kV/mm) を印加すると電界を印加した部分の c 軸極性が反転
し、PPLN を作成することができる。例えば 1.06 μm の YAG レーザーの光を PPLN で SHG
に変換する場合の周期Λは 3.4 μm である。
2.9 ガウス型ビームをフォーカスした場合の非線形相互作用 これまでの記述では相互作用する波として、すべて無限に広がる平面波を仮定していた。
しかし、実際には入射光の強度(単位面積あたりのパワー)を上げ、非線形効率を高めるため、
通常レンズなどで非線形結晶上にレーザー光をフォーカスする。この節ではレーザービー
ムをフォーカスしたときの非線形相互作用について検討する。 <近軸波動方程式(Paraxial wave equation)> まず、周波数ωnについての非線形な波動方程式から出発しよう。
周波数ωnの波の成分に対する波動方程式は (2.1.19)において ×∇×∇ を •∇− 2で近似し、線
形な誘電率をスカラー(等方的)とすると
2
2
02
2)1(
02
~~)(~
ttnn
nn ∂∂
=∂
∂−∇
PEE μωεμ (2.9.1a)
0)1(
00)1(
00 //,/1 εεεμμεεμ ≅== nc の関係を用いて書き直すと
2
2
20
2
2
2
22
~1~~tctc
n nnn ∂
∂=
∂∂
−∇PEE
ε (2.9.1b)
である。電界と分極を次の形で与える。
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34
c.c.)}(exp{)(),(~ +−= tzkit nnnn ωrArE (2.9.2a)
c.c.)}'(exp{)(),(~ +−= tzkit nnnn ωrprP (2.9.2b)
ここで、 nE~
と nP~
はその複素振幅 Anと pnを空間的(横方向)にも変化する量として与える
ことで、非平面波を表すようにした。さらに位相不整合のため、 nP~
の波数ベクトル kn’と nE~
の波数ベクトル knとは異なるとした。(2.9.2)式を(2.9.1)に代入する。z 軸が伝播方向の中心
であるとすると、ラプラシアンを2
T222 / ∇+∂∂=∇ z と書いておくと便利である。ここで横
方向のラプラシアンは
22222T // yx ∂∂+∂∂=∇ (直角座標系) (2.9.3a)
または
2222T /)/1()/)(/)(/1( φ∂∂+∂∂∂∂=∇ rrrrr (円柱座標系) (2.9.3b)
で与えられる。以前に行ったように SVA 近似を用い、Anの z 方向への変化は波長オーダー
の距離では無視できるほど小さいと考える。したがって、(2.9.1)の波動方程式は
)exp(2 20
22
T kzicz
ik nn
nn
n Δ−=∇+∂
∂ pAAεω (2.9.4)
ここで nn kkk −=Δ ' である。この式は22 / zn ∂∂ A の寄与を無視しており、この近似は波が z
軸の近傍を進む場合に成り立っているので、近軸波動方程式(paraxial wave equation)と
して知られる。 <ガウス型ビーム(Gaussian Beam> 波動方程式(2.9.4)の解の性質を調べるために、まず、右辺の強制振動項 pnがない場合(自
由伝播の場合)の解について考えてみる。このとき、横方向の強度分布がガウス型で与え
られるビームの場合について解くと次の解が得られる。
))(exp())(2/exp())(/exp()(
),( 22200 zizRikrzwr
zwwAzrA Φ−= (2.9.5a)
ここで
2/12200 ])/(1[)( wzwzw πλ+= (2.9.5b)
は電界分布の 1/e 半径、
])/(1[)( 220 zwzzR λπ+= (2.9.5c)
は波面の極率半径、
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H20 後期 光計測工学(谷)
35
)/arctan()( 20wzz πλ−=Φ (2.9.5d)
は波の空間的位相変化(平面波を基準にとる)である。これらの式のなかで w0はビームの
焦点位置(z=0)での半径を表す。またλ=2πc/nωは媒質中での波長を表す。遠視野(Far field)でのビームの広がり角はθff= λ/π w0で与えられる。この解(ガウスビーム)の特徴を図 2.9.1に図示した。 理論的な取り扱いをする場合、ガウスビームを次のようなコンパクトな式(しかし直感
的には分かりにくい)で表すのが便利である。
)}1(/exp{1
),( 20
20 ζζ
iwri
AzrA +−+
=
(2.9.6a) ここで
bz /2=ζ (2.9.6b) は 共 焦 点 パ ラ メ ー タ ー (Confocal parameter) b で規格化された無次元の
伝播方向(z 軸方向)の距離である。共焦
点パラメーターとは
20
20 /2 kwwb == λπ (2.9.6c)
で与えられ図 2.9.1 に示されるように、
ガウスビームの焦点領域の長さに相当
している。
全ビームのパワーP0 はガウスビーム
の横方向の強度分布を積分することで
求められる。 ∫= rdrIP π20 であり、強
度は2
02 AncI ε= で与えられるので、
20
2000 AncwP πε= = const.
(2.9.7) が得られる。 <ガウスビームを用いたときの高次高
調波発生(Harmonic Generation)> さて、ガウスビームを基本波に用い
(a)
Inte
nsity
r
2w(z)1/e
(b)
phase front
z
2w(z)
z=0
R(z)
(c)
2w0
b
図 2.9.1 (a) ガウスビームの強度分布、
(b)半径 w の変化と波面の位置 z での極率
半径、(c) 焦点位置でのビーム半径 w0と共
焦点パラメーターb。
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H20 後期 光計測工学(谷)
36
たときの高次高調波発生(Harmonic Generation)について検討してみよう。第 2 高調波
(SHG)だけでなく一般に q 次の高調波発生について考える。q 次の高調波(周波数ωq=
qω)の振幅を Aqとすると、Aqは次ぎの波動方程式に従う。
)exp(2 1)(
20
22
T kziAc
Az
Aik qqq
qq
q Δ−=∇+∂
∂χ
εω
(2.9.8)
ここでΔk=qk1-kqで、非線形分極の複素振幅 qp をqq
q Ap 1)(χ= で与えた。
)(qχ は q 次高調
波発生を記述する非線形感受率( )()()( ωωωωχχ ++== qqq)で、A1 は基本波の複素
振幅である。A1は(2.9.6a)を使って、
)}1(/exp{1
),( 20
2101 ζ
ζiwr
iAzrA +−+
= (2.9.9)
と書ける。 ポンプ光の基本波が十分強く、一定である場合について考える。波動方程式(2.9.8)を解く
のに、次の形の解を考える(やや天下り的だが)。
)}1(/exp{1
)(),( 2
020 ζ
ζiwqr
izA
zrA qq +−
+= (2.9.10)
ここで Aq0(z)は z の関数である。この解を(2.9.8)式に代入すると、Aq0(z)が次の微分方程式
を満たすべきものであることが分かる。
110)(
0
0
)1()exp(
2)(
−+Δ
= qqqq
ikziA
nciq
dzzdA
ζχ
εω (2.9.11)
この式はそのまま積分を行うと( 10A は z に依存しない定数であることに注意)
),,(2
)( 010)(
00 zzkJA
niqzA q
qqq Δ= χ
εω (2.9.12a)
と書ける。ここで積分関数
∫ −+Δ
=Δz
z qq bizdzkzizzkJ
0 10 )/'21(')'exp(),,( (2.9.12b)
を定義した。z0は非線形媒質入り口での z の値を表す。この解の形((2.9.10)式)から高次
高調波は入射基本波と同じ共焦点パラメーターを持っていることが分かる。q 次の高次高調
波の焦点でのビーム半径は基本波のそれに比べ 1/q1/2に小さくなっており、それに伴い遠視
野での高次高調波の回折角 )/()( 2/10qwqff πλωθ = は基本波の回折角 )/()( 0wff πλωθ = と
比べ 1/q1/2になっている。 (2.9.12b)に表される積分はある特別な場合には解析的に求めることができる。一つの場
合は b>>|z0|,b>>|z|となる平面波の極限である。この場合積分は次の形になる。
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H20 後期 光計測工学(谷)
37
kikzikzidzkzizzkJ
z
zq ΔΔ−Δ
=Δ=Δ ∫)exp()exp(')'exp(),,( 0
00 (2.9.13a)
したがって L=z-z0と置くと
⎟⎠⎞
⎜⎝⎛ Δ
=Δ2
sinc),,( 222
0kLLzzkJq (2.9.13b)
が得られる。 もう一つの極限は入射基本波が媒質中で非常に強く絞られる場合で、このとき z0=-|z0|, z=|z|及び b<<|z0|, b<<|z|と考えることができる。この極限では(2.9.12b)に表れる積分は
次で近似することができる(積分区間を無限大に拡大)。
∫∞
∞− −+Δ
=Δ 10 )/'21(')'exp(),,( qq biz
dzkzizzkJ (2.9.14a)
この積分は適当な閉曲線の積分経路を仮定しコーシーの積分公式を用いると次のように求
められる。
⎪⎩
⎪⎨
⎧
>ΔΔ−⎟⎠⎞
⎜⎝⎛ Δ
−
≤Δ
=Δ −
0)2/exp(2)!2(
22
,0,0),,( 2
0 kkbkbq
b
kzzkJ q
q π (2.9.14b)
この関数の bΔk に対する依存性を q=3 の THG の場合について示したのが図 2.9.2 である。 この結果は幾分驚くべきものである。なぜなら強く絞り込んだ極限におけるTHGではTHGの効率は完全位相整合Δk=0のときゼロになり、ある正のΔk の値のとき 大値をとってい
-10 0 100
1
J 3/b
bΔk
図 2.9.2 ビームを強く絞り込んだ THG における位相整合因子 J3 の
bΔk に対する依存性。縦軸の値は共焦点パラメーターb で規格化してあ
る。
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H20 後期 光計測工学(谷)
38
(a)
(b)
(c)
Δk>0
Δk~angle mismatch
Δk<0
図 2.9.3 THG の場合の位相整合条件。 (a )波がすべて
Colinear(平面波)でΔk が正の値を持つ場合。(b) Δk が正の値を持
つが、ビームの絞りの効果で、角度整合が成り立つ場合。(c) Δkが負の値を持ち、Colinear の場合もビームを絞った場合も位相整
合が成り立たない。 るからである。このような振る舞いは強く絞り込んだビームが焦点を通過後、πだけ位相シ
フトすることで説明される。この位相シフトは Gouy シフトと呼ばれる。非線形光学ではこ
の効果は、非線形分極が A1の q 乗に比例するので非常に重要になってくる。q 次の非線形
分極は焦点を通過後、qπだけ位相シフトすることになるからである。したがって、Gouy シ
フトによって発生した非線形分極の位相遅れを補償し、高次高調波発生を効率良く行うた
めにはΔk は正のある適当な値を持つ必要がある。これは直感的には図 2.9.3 に示すような
波数ベクトルの角度による位相整合と理解することもできる。
すなわち、平面波の場合(図 2.9.3(a))ではΔk>0 では位相整合が取れていないが、非常に強
く基本波を絞り込んだ場合、基本波はある角度を持って非線形分極と結合するが、一方の
THG 波は基本波に比較して角度広がりが少ない(2/1/)()( qffqff ωθωθ = )ため、この角度
による位相不整合が発生し、この角度不整合がもともとの位相不整合と相殺しあい、結果
として位相整合が保たれる(図 2.9.3(b))というわけである。一方Δk<0 では角度不整合は
Δk 同じ符号なので、位相不整合がさらに強くなり高次高調波発生の効率はほとんどゼロに
なる(図 2.9.3(c))。 Boyd and Kleinmann (1968) [5] は基本波のレーザービームの絞り方をどのように調節
すれば SHG の効率が良くなるかを調べ、次の結果を得た。Walk-off の効果が無視でき、ま
た入射基本波は非線形光学結晶( 厚さ L)の中心で焦点を結ぶとする。また波数不整合をΔkとする。このとき L=3.2/Δk となる結晶厚さ L を選び、共焦点パラメーターと結晶厚さの比
が L/b=2.84 になるとき 大の SHG 効率が得られる(図 2.9.4 参照)(注 38)。この条件のとき得
られる SHG のパワーは次で与えられる。
注 38:おおまかにいうと結晶厚さをコヒーレンス長 Lc にとり、共焦点パラメーターが Lc の約 1/3 に
なるようにビームの絞り具合をレンズの焦点距離で調整すればよい。
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39
2
2142
0
231
22068.1(max) ωω εω P
nncLdP ⎥
⎦
⎤⎢⎣
⎡= (2.9.15)
SFG や DFG の場合も SHG 場合同様な共焦点パラメーターb を選ぶことにより効率を 適
化できることが示される。
L≒Lc
b=L/2.84=1.13/Δk=0.36Lc
図 2.9.4 適な波数不整合Δk, 非線形光学結晶厚さ L 及び共焦点パ
ラメーターb の関係。
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H20 後期 光計測工学(谷)
40
2.10 電気光学効果(Electrooptic effect)(注 40) 非線形結晶に静電界(またはゆっくり変化する電界)を印可すると、屈折率が変化する
現象が見られる。屈折率の変化が電界強度に比例する場合、この効果を(線形な)電気光学効
果(Linear electrooptic effect)と呼ぶ。あるいは Pockels 効果と呼ばれることもある。電
気光学効果は次のように誘電率に対する 2 次の非線形分極の寄与として記述される。
∑ +==jk
kjijki EEP )0()()0(2 )2( ωωωχ (2.10.1)
電気光学効果は 2 次の非線形分極で記述されるので、中心対称性を持つ結晶には現れない。
中心対称性を持つ結晶では、静電界(またはゆっくり変化する電界)の 2 乗に比例する屈
折率の変化が観測される。この効果は光 Kerr 効果(Kerr electro-optic effect)あるいは 2次の電気光学効果(Quadratic electro-optics effect)と呼ばれ、3 次の非線形分極で記述さ
れる。
∑ ++==jkl
lkjijkli EEEP )0()0()()00(3 )3( ωωωχ (2.10.2)
電気光学効果は歴史的にこれまで用いてきたような非線形分極に基づく記述方法とは異
なる方法で記述されてきた。本節でも、通常用いられている電気光学効果についての記述
方法を学ぶが、本質的には 2 次の非線形効果に基づくものであることに留意しておこう(後
で電気光学係数と 2 次の非線形感受率との関係を示す)。 <電気光学係数> まず、非等方的な媒質中での線形応答(線形誘電率)についての記述方法を見ておこう。 電束密度 D と電界 E の関係は誘電率テンソルを用いて現象論的に次の式で与えられる。
∑=ij
jiji ED ε (2.10.3)
行列で書くと
⎥⎥⎥
⎦
⎤
⎢⎢⎢
⎣
⎡
⎥⎥⎥
⎦
⎤
⎢⎢⎢
⎣
⎡
=⎥⎥⎥
⎦
⎤
⎢⎢⎢
⎣
⎡
z
y
x
zzzyzx
yzyyyx
xzxyxx
z
y
x
E
EE
D
DD
εεε
εεε
εεε
(2.10.4)
吸収がない媒質では誘電率テンソルの各成分は実数になる。また光学活性でない(旋光性、
円偏光2色性を持たない)媒質では誘電率テンソルは対称行列(εij=εji)になる。したがって、
独立な成分はεxx, εyy, εzz, εxy= εyx, εxz=εzx, εyz=εzy の 6 個である。対称行列は直交変換(空間
の 2 点間の距離を変えない回転に対応)で対角化することができる。すなわちもとの直交
座標系(x, y, z)を回転することにより得られる、ある直交座標系(X, Y, Z)に対して(2.10.4)式を次のように対角化することができる。 注 40:この節では Gauss 単位系を用いる。
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H20 後期 光計測工学(谷)
41
⎥⎥⎥
⎦
⎤
⎢⎢⎢
⎣
⎡
⎥⎥⎥
⎦
⎤
⎢⎢⎢
⎣
⎡=
⎥⎥⎥
⎦
⎤
⎢⎢⎢
⎣
⎡
Z
Y
X
ZZ
YY
XX
Z
Y
X
EEE
DDD
εε
ε
000000
(2.10.5)
この新しい座標系を主軸座標系という(それぞれの軸の方向を主方向、対応する誘電率を
主値という)。つぎに単位体積あたりのエネルギー密度について考える。非等方的な媒質中
を伝播する波のエネルギー密度は
∑=⋅=ij
jiij EEU ε21
21 ED (2.10.6)
で与えられる。主軸座標系ではエネルギー密度は
⎥⎦
⎤⎢⎣
⎡++=
ZZ
Z
YY
Y
XX
X DDDUεεε
222
21 (2.10.7)
で表される。これは D 空間においてエネルギー密度一定の面は楕円体であることを示して
いる。楕円体表面での座標を
ZYX DU
ZDU
YDU
X2/12/12/1
21,
21,
21
⎟⎠⎞
⎜⎝⎛=⎟
⎠⎞
⎜⎝⎛=⎟
⎠⎞
⎜⎝⎛= (2.10.8)
と置くと、(2.10.7)式は
1222
=++ZZYYXX
ZYXεεε
(2.10.9)
と書くことができる。この式で表される曲面はオプティカルインディカトリクス(Optical indicatrix)または屈折率楕円体(Index ellipsoid)と呼ばれる。
index ellipsoid
semi-major axis
semi-minor axisk-vector optical (c) axis
図 2.10.1 屈折率楕円体の様子。 (2.10.9)の形の屈折率楕円体は も単純な形をしているが、別の座標系を使って表した場合、
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H20 後期 光計測工学(谷)
42
楕円体の一般式で書くことができ、次の形で与えられる。
1121212111
62
52
42
2
32
2
22
2
12 =⎟
⎠⎞
⎜⎝⎛+⎟
⎠⎞
⎜⎝⎛+⎟
⎠⎞
⎜⎝⎛+⎟
⎠⎞
⎜⎝⎛+⎟
⎠⎞
⎜⎝⎛+⎟
⎠⎞
⎜⎝⎛ xy
nxz
nyz
nz
ny
nx
n (2.10.10)
ここで係数(1/n2)iは新しい座標系における屈折率楕円体を表す光学定数である。これらは通
常の座標変換の公式からεXX, εYY, εZZ と関係付けることができる。屈折率楕円体は異方性の
ある光学媒質中を伝播する光線の偏光に依存した振る舞いを記述するのに用いられる。す
なわち屈折率楕円体の中心を通り、光線の進行方向に垂直な面で楕円体を切ったときに得
られる楕円はその光線の偏光に依存した屈折率を表している(図 2.10.1)。得られた楕円の半
長軸と半短軸が許容される光の偏光方向と対応する屈折率を表している。 つぎに先に記述した屈折率楕円体が静電界またはゆっくり変化する電界を媒質に印加し
た場合にどのように変化するか検討してみよう。屈折率楕円体の変化は逆誘電率テンソル
(impermeability tensor)を用いることにより、うまく記述することができる。逆誘電率テン
ソルηijは次の式で定義される。
∑=j
jiji DE η (2.10.11)
この関係は(2.10.3)で与えられた誘電率テンソルによる関係とは逆になっていることに注意
しよう。したがって、逆誘電率テンソルの行列成分は誘電率テンソルの逆行列成分として
与えられる(ηij= (ε−1)ij)。エネルギー密度が逆誘電率テンソルを用いて
∑=⋅=ij
jiij DDU η21
21 ED (2.10.12)
と表せることから誘電率楕円体は逆誘電率テンソルを用いて次のように表すことができる。
1222 1323122
332
222
11 =+++++ xzyzxyzyx ηηηηηη (2.10.13)
この式と(2.10.10)式を比べると、係数の間に
21126
231135
232234
2
333
2222
2111
2
1,1,1
,1,1,1
ηηηηηη
ηηη
==⎟⎠⎞
⎜⎝⎛==⎟
⎠⎞
⎜⎝⎛==⎟
⎠⎞
⎜⎝⎛
=⎟⎠⎞
⎜⎝⎛=⎟
⎠⎞
⎜⎝⎛=⎟
⎠⎞
⎜⎝⎛
nnn
nnn (2.10.14)
の関係があることが分かる。 次にηijを印加した電界成分 Ekで展開できると仮定する。
+++= ∑∑kl
lkijklk
kijkijij EEsEr)0(ηη (2.10.15)
ここで rijkは線形な電気光学効果(Pockels 効果)を記述するテンソルであり、sijklは光 Kerr効果を記述するテンソルである。誘電率テンソルεij が対称で実数だったので、逆誘電率テ
ンソルηijも対称で、実数である。したがって、電気光学テンソル rijkは 初の2つの添え字
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H20 後期 光計測工学(谷)
43
に関して対称である。このため 3 階のテンソルである rijkを次で示す縮約表現を用いて 2 次
元行列 rhkとして表すのが便利である。ここで添え字 h は次で定義される。
⎪⎪⎪⎪
⎩
⎪⎪⎪⎪
⎨
⎧
======
=
21or12for6,31or13for5,32or23for4
,33for3,22for2
,11for1
ijijijijijij
h (2.10.16)
この縮約表現を用いることにより(2.10.15)式で表される光学係数(1/n2)i の 低次数の変化
量を次のように表すことができる。
∑=⎟⎠⎞
⎜⎝⎛Δ
jjij
i
Ern21 (2.10.17a)
この式を行列で表すと
( )( )( )( )( )( )
⎥⎥⎥
⎦
⎤
⎢⎢⎢
⎣
⎡
⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥
⎦
⎤
⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢
⎣
⎡
=
⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥
⎦
⎤
⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢
⎣
⎡
Δ
Δ
Δ
Δ
Δ
Δ
z
y
x
E
EE
rrrrrrrrrrrrrrrrrr
n
n
n
n
nn
636261
535251
434241
333231
232221
131211
62
52
42
32
22
12
,,,,,,,,,,,,
/1
/1
/1
/1
/1/1
(2.10.17b)
ここで rij は電気光学係数として知られる量で、電界強度に対する光学係数(1/n2)i の変化率
を与える。先に述べたように中心対称性を持つ結晶では電気光学係数の成分はすべてゼロ
になる。中心対称性を持たない結晶の場合もゼロでない成分は他の対称性の制限からゼロ
でない独立な成分の数はそれほど多くない。例えば m24 という対称性を持つ結晶の場合
(ADP や KDP など)は電気光学係数の行列は次の形をしている。
⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥
⎦
⎤
⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢
⎣
⎡
=
63
41
41
,0,00,,00,0,0,0,00,0,00,0,0
rr
rrij ( m24 の場合) (2.10.18)
ここで rijは光学軸(c 軸)を z 軸する、通常の結晶工学的座標系で記述されている。(2.10.18)
をみると分かるように m24 に属する結晶の対称性から 18 個の係数のうち 15 個はゼロにな
り、残りの3つの係数のうち2つは等しいことが示される。したがって、この場合の独立
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44
な電気光学係数は 2 個(r41と r63)のみである。同様に 3m の対称性を持つ結晶(LiNbO3 など)の場合には電気光学係数は次の形をしている。
⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥
⎦
⎤
⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢
⎣
⎡
−
−
=
0,0,0,0,0,,0
,0,0,,0,,0
22
42
42
13
1322
1322
rr
rrrrrr
rij (3m) (2.10.19)
また 4mm の対称性を持つ結晶の場合(BaTiO3など)は
⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥
⎦
⎤
⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢
⎣
⎡
=
0,0,00,0,0,,0
,0,0,0,0,0,0
42
42
33
13
13
rr
rrr
rij (4mm) (2.10.20)
m34 の対称性を持つ結晶(GaAs や ZnTe など Zinc-blende 型の半導体結晶など) の場合は
⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥
⎦
⎤
⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢
⎣
⎡
=
41
41
41
,0,00,,00,0,0,0,00,0,00,0,0
rr
rrij ( m34 の場合) (2.10.21)
で与えられる。一般にゼロでない独立な成分は対称性が強くなるほど数が少なくなること
が示される。一般に電気光学係数 rij の縮約行列表現は図 1.12 で図示した非線形係数 dij に
対応する行列を転置した形で与えられる。 代表的な電気光学結晶の電気光学係数を表 2.10.1 に示した。 ちなみに 2 次の非線形感受率あるいは 2 次の非線形係数と電気光学係数の間の関係は次
の式で与えられる。
);0(4)0;(2 )2( ωωεε
ωωχεε
−−=+−= kjijjii
ijkjjii
ijk dr (2.10.22)
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H20 後期 光計測工学(谷)
45
あるいは縮約表現を使うと
);0(4 ωωεε
−−= kljjii
lk dr (2.10.23)
例えば r14について
1420
414 dr
ε−= (2.10.24)
という関係が得られる(εyy=εzz=ε0 とした)。ここで電気光学係数と非線形係数とでは添え字
の k と l の順序が入れ替わっていることに注意しよう。これは電気光学係数のテンソル行列
が(定数因子を除き)非線形係数の転置行列になっていることに対応している。(注 45)
注 45: このことから Non-zero の rij成分は dijの Non-Zero 成分を示す図 1-12 の各行列を転置したもので
表される。
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H20 後期 光計測工学(谷)
46
表 2.10.1 代表的な電気光学結晶の電気光学係数
結晶 結晶点群 rij(10-12m/V) 屈折率 出典 Quartz(SiO2) 32=D3 r11 =-0.47
r41 =0.20 n3=1.555
n1=n2=1.546(@546nm)
[2]
LiNbO3(LN) 3m = C3v r13 =9.6 r22 =6.8 r33 =30.9 r42=32.6
no=2.3410 ne=2.4257 (@0.5μm)
[1]
LiTaO3 3m = C3v r13 =8.4 r22 =-0.2 r33 =30.5 r51=20
no=2.176 ne=2.180 (@633nm)
[2]
BaTiO3 4mm = C4v r13 =19.5 r33 =97 r42 =1640
no=2.488 ne=2.424 (@514nm)
[1]
NH4H2PO4 (ADP) m24 =D2d r41 =24.5 r63 =8.5
no=2.488 ne=2.424
(@546.1nm)
[1]
KH2PO4 (KD*P) m24 =D2d r41 =8.77 r63 =10.5
no=1.508 ne=1.468
(@546.1nm)
[1]
AgGaS2 m24 = D2d r41 =4.0 r63 =3.0
n3=2.5 n1=n2=2.55(@633nm)
[2]
CdSe 6mm = C6v r33 =4.3 r13 =1.8
n3=2.015 n1=n2=1.999
(@0.6μm)
[2]
ZnO 6mm = C6v r33 =2.6 r13 =-1.4
n3=2.542 n1=n2=2.522(@1.15μm)
[2]
CdTe m34 = Td r41 =6.8 no=2.82 (@1.3μm)
[2]
ZnTe m34 = Td r41 =4.3 no=2.91 (@0.7μm)
[2]
ZnSe m34 = Td r41 =2.0 no=2.66 (@546nm)
[2]
β-ZnS m34 = Td r41 =1.6 no=2.315 (@0.8μm)
[2]
GaAs m34 = Td r41 =1.2 no=3.5 (@1.02μm)
[2]
GaP m34 = Td r41 =-1.07 no=3.24 (@0.7μm)
[2]
データの出典は [1] Nonlinear Optics by Boyd, Table 10.2.1 [2] CRC Handbook of Lasers with Selected Data on Optical Technology, pp.451-456.
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H20 後期 光計測工学(谷)
47
<電気光学変調器(Electrooptic Modulators)> 電気光学効果の応用例として、例えば KDP を使って電気光学変調器をどのようにして作
るかを考えてみよう。KDP は m24 の点群に属する結晶なので、ここでの議論は他の m24に属する結晶にも当てはまる。 KDP は 1 軸性結晶であり、電界をかけない状態でその屈折率楕円体は
12
2
20
2
20
2
=++en
ZnY
nX (2.10.25)
と書ける。ここで X, Y, 軸の方向は電界が無いときの主軸座標系にとっている。結晶に電界
が加わると屈折率楕円体は(2.10.17)及び(2.10.18)の式に従って変化する。
( )( )( )( )( )( ) ⎥
⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥
⎦
⎤
⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢
⎣
⎡
=⎥⎥⎥
⎦
⎤
⎢⎢⎢
⎣
⎡
⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥
⎦
⎤
⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢
⎣
⎡
=
⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥
⎦
⎤
⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢
⎣
⎡
Δ
Δ
Δ
Δ
Δ
Δ
Z
Y
XZ
Y
X
ErErEr
EEE
rr
r
n
n
n
n
nn
41
41
41
63
41
41
62
52
42
32
22
12
000
,0,00,,00,0,0,0,00,0,00,0,0
/1
/1
/1
/1
/1/1
(2.10.26)
より
1222 6341412
2
20
2
20
2
=+++++ XYErXZErYZErnZ
nY
nX
ZYXe
(2.10.27)
この式には XY,XZ,XYなどの項が現れている。したがって、電界を印加すると、もと
の屈折率楕円体の主軸座標系は、主軸座標系ではなくなる。ここで加える電界成分はZ方
向のみ(KDP や ADP を用いた変調器によく用いられる配置)とすると(2.10.27)式は
12 632
2
20
2
20
2
=+++ XYErnZ
nY
nX
Ze
(2.10.28)
となる。このとき新しい主軸x,y,zは
zZyxYyxX =+
=−
= ,2
,2
(2.10.29)
で与えられ(2.10.28)式は
1112
22
6320
2632
0
=+⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛−+⎟⎟
⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛+
eZZ n
zyErn
xErn
(2.10.30)
と書き直される。この式は光学係数の変化量 r63Ez が小さいとき(<<1)、次のように書く
ことができる。
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H20 後期 光計測工学(谷)
48
(a)
z
entrance surface
Y
X
L
(b)
E
Transparent electrode
yx
L
V
(c)
index ellipsoid
X
without E field
Y
x y
nx
ny
n0
with E field
図 2.10.2 KDP 結晶を用いた電気光学変調器の構成。(a) 電界をかけない場合の主軸(X軸、Y 軸)の方位。(b) 電界をかけた場合の主軸(x 軸、y 軸)の変化。(c) Z=z=0 の面での
屈折率楕円の変化の様子。
1
21
21
11
2
2
2
2
2
2
2
2
2
633
00
2
2
633
00
2
2
22
6320
2632
0
=++≡+
⎟⎠⎞
⎜⎝⎛ +
+
⎟⎠⎞
⎜⎝⎛ −
≅
+⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛−+⎟⎟
⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛+
eyxeZZ
eZZ
nz
ny
nx
nz
Ernn
y
Ernn
x
nzyEr
nxEr
n (2.10.31)
したがって、新しい屈折率楕円体の主値は
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H20 後期 光計測工学(谷)
49
Zy
Zx
Ernnn
Ernnn
633
00
633
00
21
,21
+=
−= (2.10.32)
で与えられる。 図 2.10.2に KDP 結晶を用いた場合の電気光学変調器の様子を模式的に示す。図 2.10.2(a)では結晶の入射面が Z 軸と垂直となるようにKDPがカットされている(長さL)。したが
って、X軸とY軸は入射面内にある。図 2.10.2(b)では Z(=z)軸方向に電圧 V をかけ、結晶
には Ez=V/L の電界がかかっている。このとき結晶の主軸は 45 度回転し、x 軸、y 軸が新
たな主軸となる。電圧をかけるためには、入射面に透明な電極をつける。以前は金を薄く
蒸着するなどして電極を作成していたが、 近では ITO(Indium Tin Oxide)膜などが用い
られることが多い。図 2.10.2(c)では屈折率楕円体を Z=z=0 の面で切ったときの屈折率楕円
を示している。電界をかけないときは、屈折率楕円は円であるが、電界を印可すると主軸
がそれぞれ 45 度回転し、新しい主軸の x 軸方向に屈折率が増加し(半長軸)、y 軸方向に減
少(半短軸)している(r63Ezが負の場合に相当)。 このような電気光学結晶中を z 軸方向に伝播する光のビームを考えよう。このとき x 軸
方向に偏光した偏光成分は y 軸方向の偏光成分と異なる位相速度で進む。結晶の厚さ L を
伝播したあとのx方向と y 方向の偏光成分間の位相のずれは次で与えられる。
cLnn xy
ω)( −=Γ (2.10.33)
これを位相遅れ(Phase retardation)という。(2.10.32)式を用いて書き直すと
cVrn
cLErn z ωω 63
3063
30 ==Γ (2.10.34)
が得られる(注 49)。V = EzL なので位相遅れは結晶の長さに依存せず、印可する電圧で決まる
ことが分かる。ここで次のような量を定義し、位相遅れを表しておくと便利である。
E y x
z
X
Y
beam in
beam out
x(fast)y(slow)
YX
polarizer quarterwaveplate
polarizer
図 2.10.3 電気光学効果を利用した光強度変調器の構成(KDP 結晶の場合)。
注 49: この電気光学変調器の figure of merit(性能指数)はしたがって 633
0 rn で与えられる。すなわち変調
効率は 30n に比例する。屈折率が大きいほうが変調効率は大きくなるが、変調器のキャパシタンス C は誘
電率 200 n=ε に比例するため、高誘電率(高屈折率)の結晶は高速な変調には向かない。
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50
633
02/ rn
cVω
πλ = (2.10.35)
この量を使って(2.10.34)を書き直すと
2/λ
πVV
=Γ (2.10.36)
となる。この式から分かるように 2/λV は位相遅れがπになるときの V の値で、半波長電圧
(Half-wave voltage)と言われる。これは電気光学結晶の効率を表す特性値で可視域では
10kVオーダーの値になる。 x方向の偏光成分とy方向の偏光成分の間には(2.10.34)で表されるような位相のずれ
が生じる。入射光の偏光がX軸またはY軸方向の直線偏光になるように入射させると、電
気光学変調器を通過した光線は、その位相のずれに応じて偏光状態が変化する。この偏光
状態の変化を利用して、光強度変調器を作ることが可能である。 図 2.10.3 にその電気光学効果を利用した光強度変調器の構成を示す。入射光はまず、
初の偏光子を通過し、偏光方向が主軸の一つであるX軸方向に整えられる。電気光学結晶
とその後に置かれた 1/4 波長板(fast-axis と slow-axis をそれぞれx軸、y軸に合わせる)
を光が通過すると 1/4 波長板はでは位相がΓB=π/2 だけずれる。波長板によるこのような追
加的な位相ずれを位相バイアスと呼んでいる。電気光学結晶と 1/4 波長板を通過したあとの
位相のずれは
0.0π 0.5π 1.0π0.0
0.5
1.0
Retardation, Γ
ΓB
linear line
Tran
smiss
ion,
T
図 2.10.4 電気光学変調器による透過率の変化。ΓB=π/2 はバイアス点。
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51
22/
ππλ
+=ΓVV (2.10.37)
で与えられる。ここで 初の偏光子を透過したあとの入射波は次の形で与えられるとする。
)ˆˆ(2
,c.c.)exp(~ yxXEEE inin +==+−= inin
EEtiω (2.10.38)
この波が変調器と 1/4 波長板を通過すると y 軸方向の偏光成分は x 軸方向の偏光成分よりΓ
だけ位相が早く進む。したがって、変調器と 1/4 波長板を透過後の波は
))exp(ˆˆ(2
Γ+= iEin yxE (2.10.39)
と表される。出射端の偏光子では 2/)ˆˆ( yxY +−= の成分しか透過しないので、出射波は
YYYEE ˆ))exp(1(2
ˆ)ˆ( Γ+−=⋅= iEinout (2.10.40)
で与えられる。ここでこの変調器の透過率を次で定義する。
2
2
in
outTE
E= (2.10.41)
(2.10.40)をこの透過率の式に代入すると次の式が得られる。 )2/(sin 2 Γ=T (2.10.42)
この式で与えられるΓ依存の透過率を図 2.10.4 に示す。この図から位相遅れ(位相バイアス
も含む)がゼロからπまで変化するにつれ、透過率がゼロから1まで変化するのがわかる。 ここでπ/2の位相バイアスを加えた理由が分かる。電界が印可されていない状態では位相遅
れはπ/2の位相バイアスのみなので、透過率は 50%になる。Γ= π/2付近では透過率は位相の
遅れ、すなわち印可した電圧 V に対してほぼ比例して変化する(また位相遅れの変化に対
する透過率の変化量も 大になる)。例えば、印可電圧として正弦波的なものを考えよう。 すなわち、バイアス電圧を
tVtV mm ωsin)( = (2.10.43) で与える。すると位相遅れは
tV
Vm
m ωππ
λ
sin2 2/
+=Γ (2.10.44)
で与えられ、透過率は
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52
⎥⎦
⎤⎢⎣
⎡⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛+=
⎥⎦
⎤⎢⎣
⎡⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛++=⎟⎟
⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛+=
tV
V
tV
VtVVT
mm
mm
mm
ωπ
ωππωππ
λ
λλ
sinsin121
sin2
cos121sin
24sin
2/
2/2/
2
(2.10.45)
で与えられる。変調 2// λπ VVm が1よりずっと小さいとき、この式は次のように近似される。
⎥⎦
⎤⎢⎣
⎡+= t
VVT m
m ωπ
λ
sin121
2/
(2.10.46)
したがって、透過率は )2/( 2/λπ VVm を変調振幅として、50%付近を周波数ωmで振動する。 電気光学効果は強度変調器のみでなく、位相変調器にも利用される。たとえば、図 2.10.3の配置において入射光の偏光方向を x 軸または y 軸にそろえると、偏光状態は変化せず、
印可した電圧に比例した位相変調を受ける。電圧による位相シフトは次で与えられる。
cVrn
cLErn
cLnn z
x 22)( 63
3063
30
0ωωωφ −=−=−= (2.10.47)
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53
2.11 音響光学効果(この節ではガウス単位系を使用) 電界を非線形媒質に印加し,光強度と光の位相(あるいは周波数)を変調できる(電気
光学変調)ことを前節で述べたが,非線形媒質に音波を加えることにより,光の音波によ
る散乱を利用して光の強度と進行方向を変調することも可能である。音波(Sound wave)を利用した変調素子は音響光学素子(Acousto-optic device)と呼ばれるが,その散乱機構によ
り主として2つに大別される. (1) ブラッグ散乱(Bragg scattering)型:相互作用長(結晶の長さ)が長く,位相整合が
重要になる.ブラッグ散乱では回折光のビームは通常1本になる(1次回折のみ). X 線が結晶の複数の原子面から散乱される,ブラッグ回折と似ていることからブラ
ッグ散乱型と呼ばれている.回折効率はかなり高い(>50%). (2) ラマン・ナス散乱(Raman-Nath scattering)型:ブラッグ散乱とは逆に,相互作用
長(結晶の長さ)が短く複数の音波面からの多重散乱の影響がない場合.音波によ
って引き起こされる屈折率変化による光の位相(あるいは周波数)変調に相当.位
相整合はあまり問題にならない.通常,高次の散乱も含まれる(ラジオ波の FM 変
調機構と類似). 以下,それぞれの場合について解説する.
θk1, ω1
k2, ω2
Λ
transducer rf input atfrequency Ω
v
図 2.11.1 ブラッグ散乱型音響光学変調器
θ
Λsinθ
θ
Λ
図 2.11.2 音響光学散乱におけるブラッグ条件.
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H20 後期 光計測工学(谷)
54
(1) 音波による光のブラッグ散乱 図 2.11.1 にブラッグ散乱型素子の様子を図示する.周波数Ωで波長Λ=2πv/Ωの音波
(Acoustic wave)が速度 v で散乱媒質中を伝播しているとする.音波によって引き起こされ
た媒質の密度変化は誘電率変化を生じるので,入射した光波はその誘電率の変調のため散
乱される.ひとつひとつの音波によって散乱される光波の振幅は通常かなり小さいが,す
べての散乱波の位相がそろって重ね合わさると,全散乱強度は非常に強くなる.図 2.11.2に図示されているように,それぞれの音波から散乱された光波の位相がそろう条件は次で
与えられる. θλ sin2Λ= (ブラッグ条件) (2.11.1)
ここでλは媒質中での光の波長である.これはよく知られているブラッグ条件である(隣り
合う音波の極大から反射される光線の光路差が光の 1 波長に等しい).典型的な音響光学素
子におけるパラメーターは,例えば,v=1.5 x 105 cm/s, Ω/2π=200 MHz で,このときの音
波の波長はΛ=2πv/Ω=7.5 μm となる.光の波長を 0.5μm とすると(2.11.1)より sinθ=1/30 で
したがって回折偏角 2θ=4 度となる. (a)
θθ
q
k2
k1
(b)
θθ
q
k2
k1 図 2.11.3 位相整合関係からみたときのブラッグ条件 (a) 音波に対向して光(波数k1)
が入射し,ブラッグ角θで散乱される.(b) 音波の進行方向が(a)と逆向きの場合. (2.11.1)式で与えられるブラッグ条件は見方を変えれば位相整合条件である.入射光の波
数ベクトルを k1,回折された光の波数ベクトルを k2,音波の波数ベクトルを q とすると図
2.11.3(a)から分かるようにブラッグ条件は次の波数ベクトルの関係で与えられる. qkk += 12 (2.11.2) Brillouin 散乱の理論によれば,このとき散乱された光の周波数は音波の周波数分だけ増加
する. Ω+= 12 ωω (2.11.3)
音波の周波数Ωはω1よりずっと小さいのでω2はほとんどω1と同じであり,また 12 kk ≅ で
ある.図 2.11.1 では音波は入射光に向かって進行しているが,その逆向きに音波が進行し
ている場合は(2.11.2) 式と(2.11.3) 式に対応する式は次で与えられる.
Page 55
H20 後期 光計測工学(谷)
55
qkk −= 12 (2.11.4a) Ω−= 12 ωω (2.11.4b)
この場合,図 2.11.1 と図 2.11.2 は音波の波数ベクトルの向きが反対になるだけだが,図
2.11.3(a)は図 2.11.3(b)に置き換わる. 音波による光のブラッグ散乱は,音響的な密度変化 ρ~Δ によって引き起こされる誘電率の
時間的な変化 ε~Δ を考えることにより理論的に取り扱うことができる.通常 ε~Δ は ρ~Δ に線
形に依存するとしてよいので
0
,~~~0 ρρρ
εργρργρ
ρεε
=⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛∂∂
=Δ
=Δ∂∂
=Δ ee (2.11.5)
ここでρ0は媒質の平均密度,γeは電気ひずみ係数(Electostrictive constant)である.(2.11.5)式は液体の場合には厳密に当てはまり,他のすべての物質についても定性的には正しくそ
の振る舞いを記述している.不均一な物質の場合は,その光学特性の変化はテンソルを用
いて記述され,次のような形で与えられる.
[ ] ∑=Δ −
klklijklij Sp)( 1ε (2.11.6)
ここで pijklはひずみ光学テンソル(strain-optic tensor)である.Sklはひずみテンソル(strain tensor)で次で与えられる.
⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛∂∂
+∂∂
=k
l
l
kkl x
dxd
S21 (2.11.7)
ここで dkは平衡位置からの粒子の変位の k 方向成分である.逆誘電率テンソル ij)( 1−ε の変
化が小さい場合には,誘電率テンソル ijε の変化は次で与えられる(証明は行列εとその逆行
列ε−1の積の変化量Δ(ε・ε−1)=Δε・ε−1+ ε・Δ(ε−1)=ΔI=0 に右からεをかけることで得られる).
∑ −Δ−=Δjk
kljkijil εεεε )]([)( 1 (2.11.8)
k1, ω1k2, ω2
Λ
q, Ω
x
z
図 2.11.4 ブラッグ型音響光学変調器の光学配置
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H20 後期 光計測工学(谷)
56
ブラッグ散乱の配置として図 2.11.4 に示されるものを考え,入射光の電場は次で与えら
れるとする.
c.c.)}(exp{~1111 +−⋅= tiAE ωrk (2.11.9)
この入射波が波数ベクトル q の音波によって回折波
c.c.)}(exp{~2222 +−⋅= tiAE ωrk (2.11.10)
を生じるとする.ここで Ω+= 12 ωω である.また相互作用はほぼブラッグ条件(すなわ
ち位相整合条件)を満たしているとし, qkk +≅ 12 (2.11.11) と考える.このとき音波によって生じた誘電率の変化は c.c.)}(exp{~ +Ω−⋅Δ=Δ ti rqεε (2.11.12)
と書ける.ここで複素振幅 εΔ は,誘電率の変化が(2.11.5)式で正確に与えられるとすると
0/ ρργε Δ=Δ e で与えられる(チルダがついていないことに注意).より一般的には,不均
一な相互作用に対して,誘電率変化の振幅 εΔ は(2.11.8)式で与えられるテンソル成分を意
味している.全光波の電界振幅は次の波動方程式を満たす必要がある.
0~~~2
2
2
22 =
∂∂Δ+
−∇tE
cnE ε
(2.11.13)
ここで n は音波がない状態での物質の屈折率を表す. ε~Δ は(2.11.12)式に従い,周波数Ωで
振動するので周波数ω1 とω2=ω1+Ωとが(2.11.13)式において結合することになる.まず
(2.11.13)式において周波数ω1 で振動する部分について考える.周波数ω1 成分の振幅波動方
程式は次で与えられる.
0}(exp{*
)(22
22
22
12
21
2
12
12
11
11
121
2
21
2
=⋅−−Δ++
+−∂∂
+∂∂
+∂
∂+
∂∂
rq)kk 12iAc
Ac
n
AkkzA
ikxA
ikzA
xA
zxzx
εωω
(2.11.14)
この式は次のようにして簡略化できる.(1) SVA 近似を用い,2 次微分の項を省略する.(2) z 方向の平行移動に関して相互作用は変化しないことから,A1は x には依存するが,z には
依存せず,したがって 0/1 =∂∂ zA とできる.(3) 221
221
21 / cnkk zx ω=+ である.これらのこ
とから,(2.11.14)は次のように書ける.
}(exp{*2 22
221
1 rq)kk 12 ⋅−−Δ−=∂∂ iA
cxAik x ε
ω (2.11.15)
次に伝播ベクトルの不整合 kqkk 12 Δ−=−− は x 方向にのみゼロでない成分を持つこ
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H20 後期 光計測工学(谷)
57
とに注意すると(なぜなら z 方向には無限に広がる媒質を考えており,波数ベクトル k の
不整合はなくなってしまうからである.いいかえると z 方向の不整合があると波は存在でき
なくなる) kxΔ−=⋅−− rqkk 12 )( (2.11.16) と書け,したがって(2.11.15) 式は
)exp(2
*22
1
221 kxiA
cki
xA
x
Δ−Δ
=∂∂ εω
(2.11.17)
まったく同様に周波数ω2の成分を記述する振幅波動方程式は次で与えられる.
)exp(2 12
2
212 kxiA
cki
xA
x
ΔΔ
=∂
∂ εω (2.11.18)
後に, ωωω ≡≅ 21 及び xxx kkk ≡≅ 21 として結合方程式,(2.11.17) 及び(2.11.18)を書き直すと,
)exp(21 kxiAi
xA
Δ−=∂∂
κ (2.11.19a)
)exp(* 12 kxiAi
xA
Δ=∂
∂κ (2.11.19b)
となる.ここで次で与えられる結合係数κを導入した.
2
2
2*
ckx
εωκ
Δ= (2.11.20)
<Δk=0 の場合>
これらの結合振幅方程式の解は, 1~E がブラッグ角で入射する場合は非常に簡単に得られ
る.この場合,位相整合が完全に取れており,したがってΔk=0 であるので,(2.11.19a)と(2.11.19b)は
21 Ai
xA
κ=∂∂
, 12 * Ai
xA
κ=∂
∂ (2.11.21)
これらの方程式は簡単に解くことができ,その解は図 2.11.4 で与えられる境界条件のもと
では次で与えられる.
)cos()0()( 11 xAxA κ= (2.11.22a)
)sin()0(*)( 12 xAixA κκκ
= (2.11.22b)
ここでこれらの解は次の関係を満たすことに注意しておく.
Page 58
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58
21
22
21 )0()()( AxAxA =+ (2.11.23)
これはブラッグ散乱過程における光のエネルギーは保存されることを示している( Ω>>ωを仮定しているので).ここでブラッグ散乱の効率を周波数ω1の入射光強度に対する周波数
ω2の散乱光強度の比で定義する.このとき散乱効率ηは次で与えられる.
)(sin)0()( 2
2
1
2 LA
LAκη == (2.11.24)
(2.11.20)式で定義された結合係数κを音波の強度(すなわち単位面積当たりのパワー)で
表しておくと実用上都合がよい.音波の強度は,音速を v,音波によって生じる密度変化の
複素振幅をΔρとすると次で与えられる.
2
020
2
2~
ρρ
ρρ Δ
=>Δ<
= KvKvI (2.11.25)
ここで CK /1≡ は膨張係数(Bulk modulus),すなわち圧縮率(compressibility)C(圧力 pを変化させたときの密度ρの変化率)の逆数で,圧縮係数 C は次で定義される.
ppV
VC
∂∂
=∂∂
−=ρ
ρ11
(V:体積)
(2.11.5)式より 0/ ρργε Δ=Δ e なので,
2
2
2e
KvIγ
εΔ= (2.11.25b)
したがって(2.11.20) 式の結合係数 κ は次で表される.
2/1
2cos2⎟⎠⎞
⎜⎝⎛=
KvI
nce
θωγ
κ (2.11.26)
ここで kxは θω cos)/( cn で置き換えた.
ここで例として水によるブラッグ散乱の場合について(2.11.26)式を評価してみる.光の波
長として 0.5 μm,すなわち振動数ω=3.8 x 1015 rad/sec を考える.ことき水の特性値は,
n=1.33,γe=0.82,v=1x105 cm/sec,K=2.19x1010 cm2/dyne である.通常 1cos ≅θ であり,
また音波の強度を 1.0W/cm2=107 erg/cm2/sec(およそ 1cm 径で1W のパワーの音波ビーム
に相当)と仮定する.これらの仮定のもとで結合係数 κ は 1.5 cm-1となる.(2.11.24).式に
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59
よれば 2/πκ =L となるとき,いまの水の例では光路長約 L=1cm のとき効率が 100%とな
る. < 0≠Δk の場合> 入射光がブラッグ角と異なる角度で音波と交差するとき,波数ベクトルの不整合Δk はゼ
ロでなくなるので解析はもっと複雑になる.ブラッグ角とブラッグ角でない角度で光が入
射した場合のそれぞれの波数ベクトルの関係を図 2.11.5 に示す.(2.11.16)式との関係です
でに議論したように,媒質は z 軸方向に無限に広がっていると考えているので,位相不整合
の波数ベクトルは x 方向にのみ成分を持つ. (a)
θΒ
θΒ
q
k2
k1
xz
(b)
θ2
θ1
q
k2
k1
Δk
図 2.11.5 位相整合関係からみたときのブラッグ条件 まずΔk と入射角θ1の関係を求めておく.図 2.11.5(b)のベクトル関係から,x 方向と z 方
向の波数ベクトル成分には次の関係が成り立っている. kkk Δ=− 21 coscos θθ (2.11.27a) qkk =+ 21 sinsin θθ (2.11.27b) ここで kkk =≅ 21 とした.もし入射角θ1がブラッグ角に等しければ
Λ
== −−
2sin
2sin 11 λθ
kq
B (2.11.28)
となり,回折角θ2もブラッグ角に等しく,(2.11.27)式は単に Δk=0 となることを示している.
光がブラッグ角以外で入射する場合に θθθ Δ+= B1 (2.11.29a) と書くことにする.ここでΔθ<<1 とする.ここで(2.11.27b)式は θθθ Δ−= B2 (2.11.29b) であれば満たされていることがわかる.これらθ1及びθ2の値を(2.11.27a)式に代入し,コサ
イン関数をΔθについての1次の項まで展開すると θθθθθ Δ=Δ± )(sincos)cos( BBB ∓
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となり, kk B Δ=Δ− θθ )sin2( を得る.この関係と(2.11.28)式より,ブラッグ角からの入射
角のずれΔθによって生じる位相不整合Δk は次で与えられる. qk θΔ−=Δ (2.11.30)
さて,次に(2.11.19)式を任意のΔk について解く.ω2の周波数成分の電場が外から加えら
れない場合にはその解は,
⎟⎠⎞
⎜⎝⎛ Δ
+Δ−= sxskisxAkxixA sin
2cos)0(})2/1(exp{)( 11 (2.11.31a)
sxs
AkxiixA sin2
*)0(})2/1(exp{)( 12κ
Δ= (2.11.31b)
ここで
22122 )( ks Δ+= κ (2.11.32)
任意のΔk についての回折効率は次で与えられる.
}])({[sin)()0(
)()( 2/12
2122
2212
2
21
22 Lk
kA
LAk Δ+
Δ+=≡Δ κ
κ
κη (2.11.33)
0≠Δk の場合には回折効率の 大値は常に 100%以下になることがわかる.ここで位相
不整合が大きくなるにつれ効率がどのように低下していくかを調べてみる.効率η(Δk)をΔkで展開すると
+Δ
Δ+Δ
Δ+=Δ=Δ=Δ 0
2
22
21
0 )()()0()(
kk kddk
kddkk ηηηη (2.11.34)
それぞれの微分を実行し,Δk に関して 2 次までの項を取ると次の式を得る.
⎥⎥⎦
⎤
⎢⎢⎣
⎡⎟⎟⎠
⎞⎜⎜⎝
⎛−
Δ−=Δ
)sin()cos(
14
)(1)0()( 2
2
LLLkk
κκκ
κηη , (2.11.35a)
)(sin)0( 2 Lκη = (2.11.35b)
incidentbeam
diffracted beam(intensity modulated)
transduceramplitude modulatedelectrical signal
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図 2.11.6 音響光学振幅変調器(Acoustic-optic amplitude modulator)
incidentbeam
diffractedbeam
transducerelectrical signal ofvariable frequency Ω
θ1 θ2
図 2.11.7 音響光学ビーム偏向器(Acoustic-optic beam deflector).角
度θ2は加える電気信号の周波数Ωに依存する. ブラッグ型音響光学効果のもっとも一般的な利用法のひとつは図 2.11.6 に示すようなレ
ーザービームの強度変調である.そのような場合,音響変換器(Acoustic transducer)に加え
る電気信号の周波数は固定で,その振幅を変調する.この結果,音響光学効果によって生
じる回折格子の変調深さが変化し,散乱されるビーム強度が変調される. ブラッグ型音響光学効果の別の利用法はレーザービームを偏向させることである(図
2.11.7).この場合,音響変換器に加える電気信号の周波数を変化させる.この結果,音波
の波長Λが変化し,それに応じて(2.11.29b)式で与えられる回折角θ2 が制御できる. (2.11.33)式で与えられる回折効率はブラッグ角からのずれが大きくなると低下するので,こ
の手法で得られる偏向角の範囲は制限される.
θ1
L
Λ
incidentbeam
図 2.11.8 ブラッグ散乱が起こる場合の状況(λL/Λ2>>1).
(2) Raman-Nath 散乱
ブラッグ散乱では相互作用する領域の幅が十分大きく,入射した光線は非常に多数の音
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波の波面と相互作用すると仮定していた.図 2.11.8 に示すように,この条件は Λ>>1tanθL (2.11.36) である.ここでΛは音波の波長である.しかし,散乱が効率的に起るためには,入射角θ1は
同時にブラッグの条件
Λ
=2
sin 1λθ (2.11.37)
を満たす必要がある.ほとんどの場合,入射角θ1は 1 よりずっと小さく, 11 sintan θθ ≅ で
ある.(2.11.37)式を使ってθ1を消去すると(2.11.36)式は
12 >>Λ
Lλ (2.11.38)
となる.この条件が満たされればブラッグ散乱が起きる. これと逆の極限での散乱が
Raman-Nath 散乱である.
δθ
L
Λ
incidentlight
diffractedlight
図 2.11.9 Raman-Nath 散乱が起こる場合の状況(λL/Λ2<<1).
Raman-Nath 散乱を図 2.11.9 に示すような配置で説明する.光ビームが散乱素子に垂直
に近い角度で入射する。音波の存在により,その音波の波長Λの周期で媒質の屈折率は空間
的に変調されている.入射した光はこの屈折率変調の回折格子により回折される.回折光
の角度広がりは次で与えられる.
Λ
=λδθ (2.11.39)
ここで素子の厚みLは音波の複数波面による多重散乱が起きないほど十分薄いと仮定する.
この条件はブラッグ散乱の場合とは逆に次で与えられる.
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Λ<Lδθ (2.11.40) δθ を上の式から(2.11.39)式を用いて消去すると
12 <Λ
Lλ (2.11.41)
この条件はブラッグ散乱の場合の条件式とまったく逆になっていることがわかる. 次に Raman-Nath 散乱に対して数学的な説明を以下に示す.まず素子内の音波が引き起
こす密度変調は次で表されるとする. c.c.)}(exp{~ +Ω−Δ=Δ tqziρρ (2.11.42) 対応する屈折率変調は c.c.)}(exp{~ +Ω−Δ=Δ tqzinn (2.11.43)
で与えられる.屈折率変調の複素振幅Δn を密度変調の振幅Δρと次のようにして関連付ける.
ま ず , nnn ~~0 Δ+= と 書 く と
2/1~~ ε=n , εεε ~~0 Δ+= な の で ,
2/100 ε=n ,
)2/(~~0nn εΔ=Δ である.ここで誘電率の変化量 ε~Δ を 0/~~)/(~ ρργρρεε Δ=Δ∂∂=Δ e と表す
と, )2/(~~00 ρργ nn eΔ=Δ となる.したがって振幅に対しては
002 ρ
ργn
n e Δ=Δ (2.11.44)
n~Δ を複素振幅表示ではなく実数の関数として表しておいたほうが以後の解析が簡単にな
る.そこで位相の取り方を選び,次のように実関数で表すことにする. )sin(2),(~ tqzntzn Ω−Δ=Δ (2.1145) 入射波の電場は
c.c.)}(exp{),(~ +−= tkxiAtE ωr (2.11.46)
とする.音波を透過したあと,光の電場は位相がシフトする.位相シフトをφとすると
)sin()sin(2~ tqztqzLc
nLc
n Ω−≡Ω−Δ=Δ= δωωφ (2.11.47)
ここでδは次で定義され,
Lc
n ωδ Δ= 2 (2.11.48)
変 調 指 数 (modulation index) と 呼 ば れ る . し た が っ て , 透 過 し た 光 の 電 場 は
c.c.)}(exp{),(~ ++−= φω tkxiAtE r と書くことができる.あるいは
c.c.)}sin((exp{),(~ +Ω−+−= tqztkxiAtE δωr (2.11.49)
この式を見れば分かるように透過波は時間的,空間的に位相変調されている.このような
位相変調の結果を調べるために,(2.11.49)式を Bessel 関数を用いて展開する.すなわち
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Bessel 関数の恒等式
∑∞
−∞=
=l
l ilyJyi )exp()()sinexp( δδ (2.11.50)
を用いる.この式を用いると透過波は次のように表現できる.
c.c.]})()[(exp{)(),(~ +Ω+−+= ∑∞
−∞=
tllqzkxiJAtE ll
ωδr (2.11.51)
この式から透過波は周波数がω+lΩで波数ベクトルが k+lq の平面波の線形な重ね合わせで
あることが分かる.
θl
qq
kx
図 2.11.10 回折角の方向(l=2 の場合).
図 2.11.10(l=2 の場合)に示されているように l 次の回折波の成分は角度
Λ
≅≅⎟⎠⎞
⎜⎝⎛= − λθ l
klq
klq
l1tan (2.11.52)
へ放射される.l 次の回折波の強度は
22 )(δll JAI = , Lcn )/(2 ωδ Δ≡ (2.11.53)
で与えられる.この式は Raman-Nath の式と呼ばれる. 音波が定在波の場合について同様な式を導くことができる.いま音の定在波により屈折
率が次の形で変調されるとする. qztnntzn sincos2),(~
0 ΩΔ+= (2.11.54) このとき誘起される光の位相シフトは次で与えられる.
qztqztLc
n sincossincos2 Ω≡ΩΔ= δωφ (2.11.55)
また透過波の電界は
c.c.)}sincos(exp{),(~ +Ω+−= qzttkxiAtE δωr (2.11.56)
で与えられる.再び Bessel 関数の恒等式を使って上の式を因子 sinqz について展開する(因
子 sinqz の振幅はこの場合δではなくδcosΩt である).すると
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c.c.})(exp{)cos(),(~ +−+Ω= ∑∞
−∞=
tilqzkxiJAtE ll
ωδr (2.11.57)
この式から透過波はやはり平面波の重ね合わせになっていることが分かる.l 次の回折光の
散乱角は x 軸から測って
Λ
=≅λθ l
klq
l (2.11.58)
で与えられ(散乱角は進行波の場合と同じだが,周波数はωで変わらないことに注意), l 次の散乱波の強度は次で与えられる.
22 )cos( tJAI ll Ω= δ (2.11.59)
この式から分かるように l 次の各散乱成分は周波数Ωで振幅変調される.
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(Appendix A)Gauss 単位系について
Gauss 単位系では電気的量は CGS 静電単位(Electro Static Unit, 略して esu)を磁気的
量については CGS 電磁単位(Electro Magnetic Unit, 略して emu)を用いる。この単位系
では真空の誘電率ε0と真空の透磁率μ0を1とする(無次元量)。“esu 単位で”という場合は
通常 Gauss 単位を用いている。Gauss 単位系では電束密度を与える式が
EEEEPED ~~)41(~4~~4~~ επχπχπ =+=+=+≡ ee (Gauss 単位系での電束密度) (2.1)’ で表される。したがって、MKS 単位系での電気感受率とは
)(4)( )1()1( gaussianMKS ee πχχ = (無次元量) (A.1)
の関係がある。Gauss 単位系では非線形分極を次のように表す。
+++≡
+++=
)(~)(~)(~)(~)(~)(~)(~
)3()2()1(
3)3(2)2()1(
tPtPtP
tEtEtEtP χχχ (Gauss 単位系での非線形分極 )
(2.5)’ また同じ MKS 単位系でも著者によっては
+++≡
+++=
)(~)(~)(~)(~)(~)(~)(~
)3()2()1(
3)3(2)2()1(0
tPtPtP
tEtEtEtP χχχε (2.5)”
(MKS 単位系での別の非線形分極の表式 MKS2 と呼ぶことにする) と表す場合もある。それぞれの単位系の間での 2 次及び 3 次の非線形感受率の変換は
)(4103)( )2(
4)2( MKSgaussian χ
πχ ×
= (単位は cm/statvolt=cm/300V) (A.2)
)()2( )2(0
)2( MKSMKS χεχ = (単位は F/V=C/V2) (A.3)
)(4
)103()( )3(24
)3( MKSgaussian χπ
χ ×= (単位は cm2/statvolt2=cm2/3002V2) (A.4)
)()2( )3(0
)3( MKSMKS χεχ = (単位は Fm/V2=Cm/V3) (A.5)
で与えられる(MKS2 の)1(
eχ と MKS の)1(
eχ は等しい)。ここでε0=8.854 x 10-12 (単位は
F/m=C/V/m)である。
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「2 章 非線形光学」に関する教科書 (1) Robert W. Boyd, “Nonlinear Optics” (Academic Press 1992) (2) Y. R. Shen, “The Principles of Nonlinear Optics”. (John Wiley & Sons 1984). (3) Amnon Yariv, “Quantum Electronics“. ((John Wiley & Sons, Third Ed. 1989). (4) Nicolaas Bloembergen, “Nonliner Optics” (World Scientific, 1965). 参考文献 [4] J. A. Armstrong, N. Bloembergen, J. Ducuing and P. S. Pershan, Phys. Rev. Vol.127, 1918 (1962). [5] G. D. Boyd and D. A. Kleinmann, J. Appl. Phys. Vol.39, 3597 (1968)