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パコパンパ遺跡におけるジャガー人間石彫 パコパンパ遺跡におけるジャガー人間石彫 パコパンパ遺跡におけるジャガー人間石彫 パコパンパ遺跡におけるジャガー人間石彫の発見 の発見 の発見 の発見 ◆概 略:国立民族学博物館・ペルー国立サン・マルコス大学合同調査団は、2013 8月 5 日、ペルー北高地パコパンパ遺跡の第一基壇において高さ約 1.6 メートルの石彫を 発見した。制作年代は、紀元前 800 年~前 500 年頃と考えられ、表面には、高浮き彫り技 法でジャガー的頭部と人間的な身体が組み合わされた姿が表現されていた。 形成期の遺跡で石彫を有する事例は少なく、同遺跡では、これまで 5 体の石彫が確認さ れている。しかしながら、原位置を特定できるものはなく、学術的調査で発見された石彫 として今回のものが初めてである。 ◆調査チーム:国立民族学博物館・ペルー国立サン・マルコス大学合同調査団 ◆調査リーダー:関雄二・国立民族学博物館研究戦略センター教授 TEL 06-6878-8252 e-mail: [email protected] 現地携帯 51-976954632 または 51-994719589関行動予定 6 23 日~10 5 日 ペルー滞在 10 6 日~10 20 日 トルコにて国際学会,その後帰国 ◆調査責任者:マウロ・オルデオーニェス・リビア ペルー国立サン・マルコス大学調査員 ◆資金:日本学術振興会科学研究費補助金 基盤 S 「権力の生成と変容過程から見たア ンデス文明史の再構築」 ◆遺跡の位置:ペルー北高地カハマルカ県チョタ郡 海抜 2500 メートル ◆遺跡の年代:パコパンパ I 期 紀元前 1200 年~紀元前 800 パコパンパ II 期 紀元前 800 年~紀元前 500 ◆編 年:I 期も II 期もアンデス考古学上、形成期と呼ばれる時代に属する。紀元前 3000 年~西暦紀元前後がこれにあたる。神殿における祭祀活動を中心に社会統合が図られ ていた時代。ほぼ同時代の遺跡としては、世界遺産に指定されているチャビン・デ・ワン タル遺跡や、かつて日本調査団(団長:大貫良夫東大名誉教授・加藤泰建埼玉大学副学長) が発掘し、金製品を伴う墓を複数発見したクントゥル・ワシ遺跡がある。 ◆遺跡の特徴:クントゥル・ワシ遺跡とならぶ北部高地最大の形成期神殿。緩やかに連な る自然の尾根を利用して三段のテラスが築かれ、最上段に遺構が集中する。地表面で観察 できるのは、パコパンパ II 期の遺構がほとんど。 II 期の遺構としては、30m×30mの 窪んだ広場とそれを囲むように三方に配置された低い基壇がある。アンデス考古学では、 U 字形の配置という。なお広場の四辺の中央には、階段が設けられている。窪んだ広場に 向かって右側(北側)の基壇は北基壇と呼ばれ、この上には、方形のくぼんだパティオや 小型の基壇が築かれ、何度も改築されていたことがわかっている。正面に位置する中央基 壇からは「パコパンパの貴婦人」の墓が 2009 年に発見され、2012 年には北基壇で、金や 銀製品を副葬した墓が発見され、内外で報道された。
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パコパンパ遺跡におけるジャガー人間石彫の発見パコパンパ遺跡におけるジャガー人間石彫の発見 概...

Oct 18, 2020

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  • パコパンパ遺跡におけるジャガー人間石彫パコパンパ遺跡におけるジャガー人間石彫パコパンパ遺跡におけるジャガー人間石彫パコパンパ遺跡におけるジャガー人間石彫の発見の発見の発見の発見

    ◆概 略:国立民族学博物館・ペルー国立サン・マルコス大学合同調査団は、2013 年

    8月 5 日、ペルー北高地パコパンパ遺跡の第一基壇において高さ約 1.6メートルの石彫を

    発見した。制作年代は、紀元前 800年~前 500年頃と考えられ、表面には、高浮き彫り技

    法でジャガー的頭部と人間的な身体が組み合わされた姿が表現されていた。

    形成期の遺跡で石彫を有する事例は少なく、同遺跡では、これまで 5体の石彫が確認さ

    れている。しかしながら、原位置を特定できるものはなく、学術的調査で発見された石彫

    として今回のものが初めてである。

    ◆調査チーム:国立民族学博物館・ペルー国立サン・マルコス大学合同調査団

    ◆調査リーダー:関雄二・国立民族学博物館研究戦略センター教授

    (TEL 06-6878-8252 e-mail: [email protected]

    現地携帯 51-976954632 または 51-994719589)

    関行動予定 6月 23日~10月 5日 ペルー滞在

    10月 6日~10月 20日 トルコにて国際学会,その後帰国

    ◆調査責任者:マウロ・オルデオーニェス・リビア ペルー国立サン・マルコス大学調査員

    ◆資金:日本学術振興会科学研究費補助金 基盤 S 「権力の生成と変容過程から見たア

    ンデス文明史の再構築」

    ◆遺跡の位置:ペルー北高地カハマルカ県チョタ郡 海抜 2500メートル

    ◆遺跡の年代:パコパンパ I期 紀元前 1200年~紀元前 800年

    パコパンパ II期 紀元前 800年~紀元前 500年

    ◆編 年:I 期も II 期もアンデス考古学上、形成期と呼ばれる時代に属する。紀元前

    3000年~西暦紀元前後がこれにあたる。神殿における祭祀活動を中心に社会統合が図られ

    ていた時代。ほぼ同時代の遺跡としては、世界遺産に指定されているチャビン・デ・ワン

    タル遺跡や、かつて日本調査団(団長:大貫良夫東大名誉教授・加藤泰建埼玉大学副学長)

    が発掘し、金製品を伴う墓を複数発見したクントゥル・ワシ遺跡がある。

    ◆遺跡の特徴:クントゥル・ワシ遺跡とならぶ北部高地最大の形成期神殿。緩やかに連な

    る自然の尾根を利用して三段のテラスが築かれ、最上段に遺構が集中する。地表面で観察

    できるのは、パコパンパ II期の遺構がほとんど。II期の遺構としては、30m×30mの

    窪んだ広場とそれを囲むように三方に配置された低い基壇がある。アンデス考古学では、

    U字形の配置という。なお広場の四辺の中央には、階段が設けられている。窪んだ広場に

    向かって右側(北側)の基壇は北基壇と呼ばれ、この上には、方形のくぼんだパティオや

    小型の基壇が築かれ、何度も改築されていたことがわかっている。正面に位置する中央基

    壇からは「パコパンパの貴婦人」の墓が 2009年に発見され、2012年には北基壇で、金や

    銀製品を副葬した墓が発見され、内外で報道された。

  • ◆石彫の位置

    最も低い第一基壇上。第一基壇から第二基壇に向かって昇る階段の発掘途中で確認され

    た。階段は崩落した後、大量の小石で封印された痕跡があり、石彫はこうした小石群とと

    もに出土した。図像のスタイルは、土器における図像や他の遺跡との比較から判断して、

    形成期にまちがいなく、大きさと重さから判断して、階段の上り口にもともと据えられて

    いたと考えられる。石彫は、顔を含めた腹側を下にして倒れた状態で発見された。小石群

    が目立つ中で、石彫頭部の周辺部だけに大型の切石が積まれ、また周囲には、多数のミニ

    チュア土器が奉納されている様子が検出された。こうしたことから、石彫は、階段の崩壊

    と封印の過程で意図的に倒されたものの、宗教的力を持つが故に、依然として信仰の対象

    であり続けたことが推測される。ミニチュア土器は、形成期よりも後の地方文化期、カハ

    マルカ前期(紀元後 200~500 年)に相当するところから、階段の封印と石彫の再利用は

    この時期と考えられる。

    こうした後代の人々による遺構への奉納と封印は、第3基壇上の方形半地下式広場でも

    認められ、遺跡全体で起きた現象といえる。

    ◆石彫の情報

    高さ 1.60m、幅 0.43m、厚さ 0.24m

    顔面部分は 38cm 四方の方形。目は円形、鼻はつぶれ気味であり、口は開き、牙が見え

    る。こうした猫科動物(ジャガー)的表現は、形成期に特有のものである。胸のところで

    両手を合わせている。腰には帯が彫られている。石材は石灰岩。

    ◆意義

    アンデス文明初期の社会は、一般に、国家や王国が存在する前の比較的平等的な社会と

    考えられているが、これまで日本調査団が手がけたクントゥル・ワシ遺跡の結果などを考慮

    すると、形成期の後半には、神殿で執り行う儀礼など宗教面をつかさどる集団(指導者)

    が次第に権力を掌握していったと考えられている。パコパンパ遺跡も例外ではなく、II期

    に入るとこの傾向が顕著になると考えられてきた。2009年において発見された「パコパン

    パの貴婦人」墓や 2012 年に発見された金製品や銀製品を副葬した墓もその証拠の一つで

    ある。このような神殿の活動におけるリーダーとその権力の登場は、図像にも反映される。

    社会的差異が顕在化する以前の図像は、動物の身体の部位が単独で描かれる傾向が強いの

    に対して、形成期後期以降では、人間の身体との結合が目立つようになる。リーダーが霊

    的存在と交流し、あるいは変身を遂げることで、宗教的力を発揮し始めたと解釈できよう。

    また図像を表現する媒体も、壁画のような耐久性の乏しいものから石彫へと変化する傾向

    があり、これも表象の固定化、権力の固定化とつながっていくと思われる。

    学術的発掘によりこうした石彫が発見される例は稀であり、日本が調査を開始して50

    年以上にわたって実施してきた地道な研究の成果といってもよい。

    以上

    文責 関雄二

  • 石彫

    第三基壇

    第二基壇

    第一基壇

  • ペルー、パコパンパ遺跡におけるジャガー人間石彫の発見ペルー、パコパンパ遺跡におけるジャガー人間石彫の発見ペルー、パコパンパ遺跡におけるジャガー人間石彫の発見ペルー、パコパンパ遺跡におけるジャガー人間石彫の発見

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    パコパンパ調査団1 パコパンパ調査団2

    パコパンパ調査団3 パコパンパ調査団4

  • パコパンパ調査団 5 パコパンパ調査団 6

    パコパンパ調査団7

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