1 極性反転パルス放電 -オゾン生成や絶縁診断への応用- 愛媛大学大学院理工学研究科 准教授 門脇 一則 2011.1.14 つなぐしくみ 新技術説明会
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極性反転パルス放電-オゾン生成や絶縁診断への応用-
愛媛大学大学院理工学研究科
准教授 門脇 一則
2011.1.14つなぐしくみ 新技術説明会
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研究背景(その1)ナノ秒極性反転パルス放電という特殊な物理現象に関する基礎研究を続けてきた。
(1) 極性反転時に生ずる非平衡プラズマを利用した省エネ型のオゾン生成装置や排ガス処理装置の開発
キーワード:高電圧ナノ秒パルス,非平衡プラズマ,極性反転,ストリーマ,オゾン
この物理を利用して,環境保全に役立つ技術を創出できないか?
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-V0で充電された同軸ケーブルの一端を直接接地すると,もう一端の電圧は,-V0から+V0へ急激に反転する。
• 通常のインパルス試験よりも低い電圧で,ケーブルの部分放電劣化が引き起こされる。
排ガス処理に利用したらいいんじゃなかろか‥‥
• 見方を変えると・・・• 低い電圧でも放電(衝突電離)してくれる。
昔(8年以上前)電力用高電圧ケーブルの絶縁設計に関する研究をしていたときのこと
新技術の基となる研究成果・技術
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パルスパワー(パルス電力)の定義
直流や交流と比べてパルスは省エネルギー
その時間だけ電圧を加えればよい → パルス放電
電圧を加え放し,電流を流し放しでは電気のムダ遣い
プラズマを形成するのに要する時間はたった10-8秒
静電エネルギー,磁気エネルギーあるいは運動エネルギーなどの形で貯蔵されたエネルギーを時空的に圧縮することにより得られる大電力のことを,総称してパルスパワーと言う。
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従来技術の問題点
パルスの波高値が充電電圧の半分しかない。
極性反転繰り返しパルス発生回路の場合
往復する進行波が繰り返し極性反転するため,最大波高値は充電電圧の2倍に達する。
-V0から+V0もしくは0から+2V0の電圧振動が,容易
に衝突電離現象を引き起こす。
終端がインピーダンス整合されたナノ秒パルス形成線路の弱点
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新技術の特徴・従来技術との比較
印加電圧と放電開始確率の関係
極性反転時の反応器の等価回路
極性反転パルス
従来法
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実験装置の概要
実験結果の一例(交流放電処理との比較)
反応器の内部構造
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(独)科学技術進行機構 技術移転支援センター事業
「つなぐしくみ」
採択課題名「ナノ秒極性反転パルス放電によるディーゼル排ガス中NOXの高効率除去」
期間:2008年8月~2009年7月
実用化を目指した最近の活動
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過去の取り組み事例と課題
• ディーゼル機関からのNOx除去や微粒子の除去。
• 工業排水の脱色やし尿の脱色
• 食物種子の生育制御
• 滅菌処理や漂白処理。
・先行技術の実用化(尿素ステーション)・事業化における自動車業界特有の難しさ
・処理速度,処理効率ともに不十分
・学術的根拠が不十分
・先行技術(オゾン処理)に対する優位性を見出せない
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戦略上の反省点• プラズマ応用が実用化されていない分野への挑戦
・自動車排ガスの浄化
・有機物を含んだ産業廃水の浄化
・生化学分野への応用
• プラズマの利用実績のある分野への技術導入が先決
・オゾン発生装置
・プラントからの排ガス処理システム
→大気・排ガス分野 1,321億円 (前年度比113.6%)
2006年4月の改正大気汚染防止法施行を受け,製造業大手を中心に揮発性有機化合物(VOC)処理装置への需要が拡大。
(株)富士経済マーケット情報 (https://www.fuji-keizai.co.jp/market/07009.html) より
むずかしい
実績を作るためには
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市場動向調査(つなぐしくみの支援による)
出典 2007 水資源関連市場の全貌と将来予測((株)富士経済)
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市場動向調査(つづき)
出典 2007 水資源関連市場の全貌と将来予測((株)富士経済)
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市場動向調査(つづき)オゾン発生装置に関する出願件数推移時系列マップ
愛媛大学1 1 1 1
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新たな提案 極性反転パルスだからできる無電極化
ガラスに完全に覆われた電極間での放電光の静止写真
上部(水電極側)
からの撮影
50pps極性反転パルス(2.5kV)印加時
60Hz正弦波交流(2.5kVmax)印加時
両電極がガラスに覆われていても極性反転の瞬間に放電が容易に広がる。
→電極の摩耗が無いので
メンテナンス性能が向上する。
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結果
反応器外観 反応器断面図
16試験条件 原料:乾燥空気 流速:0.5L/min 温度:室温
結果の一例
AC60Hz AC60Hz
反転パルス100pps
電圧とオゾン生成効率との関係電圧とオゾン濃度との関係
反転パルス100pps
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研究体制と計画
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研究背景(その2)極性反転パルス放電の環境保全技術への応用研究を進める一方で,・・・
キーワード:矩形波パルス,PWM制御,インバータサージ,絶縁劣化,部分放電
(2) パワーエレクトロニクス用電気部品の絶縁特性評価装置の開発
電気材料の信頼性評価技術に流用できないか?
愛媛大学の電気自動車
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交流モータの絶縁試験(部分放電検出)は,確立されいる。ところが
ハイブリッドカーや電気自動車に用いられるインバータ駆動モータの場合,インバータサージと呼ばれる急峻なパルス電圧が高頻度で発生する。このような状況下を想定した絶縁試験規格は無い。
IEC(国際電気標準会議)においてヨーロッパ各国の専門家や企業により規格化が進行中。
電気学会でも調査専門委員会が発足
H21年度に,第一次共同実験がスタート
研究背景(その2)
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従来技術とその問題点
・部分放電現象を統計的に調べるには,特殊な電源,高価なオシロスコープとセンサが必要。しかも作業に手間がかかる。
6研究機関による第一次共同実験でわかったこと
・インバータサージは極性反転パルス電圧とそっくり。
うちの極性反転パルス電源をPC制御できるようにして,センサと組み合わせれば,安価でラクな評価装置ができるぞな・・・・
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繰り返しパルス印加時の部分放電検出システムの構築
PC制御型極性反転パルス電源の外観
放電光カウンティングシステムとの組み合わせにより,部分放電開始電圧の自動測定を実現した。
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本技術に関する知的財産権
• 発明の名称 :放電発生装置
• 出願番号 :特開2004-146318• 出願人 :愛媛大学
• 発明者 :門脇一則、木谷 勇
• 発明の名称 :部分放電回数測定装置
• 出願番号 :特開2009-053036• 出願人 :愛媛大学
• 発明者 :門脇一則、西本 榮