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平成17年度 学位論文 高等学校情報B「モデル化とシミュレーション」の実習における コミュニケーション学習支援システムの開発に関する研究 兵庫教育大学 学校教育研究科 学校教育専攻 教育方法コース MO4030G 藤原雅彦 1
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学校教育専攻 教育方法コース MO4030Grepository.hyogo-u.ac.jp/dspace/bitstream/10132/1557/1/ZB1030101… ·...

Jun 08, 2020

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平成17年度 学位論文

高等学校情報B「モデル化とシミュレーション」の実習における

 コミュニケーション学習支援システムの開発に関する研究

   兵庫教育大学

   学校教育研究科

学校教育専攻 教育方法コース

   MO4030G    藤原雅彦

1

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はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…  1

第1章 普通教科「情報」の設置とモデル化とシミュレーション…  4

 1.1 情報教育の変遷と普通教科「情報」の設置の経緯・…  4

 1.2 普通教科「情報」・・・・・・・・・・・・・・・・…  7

  1.2.1 普通教科「情報」のねらい・・・・・・・・…  7

  1.2.2 普通教科「情報」の問題点・・・・・・・・…  8

  1.2.3 普通教科「情報B」の目標・・・・・・・・…  9

 1.3 単元「モデル化とシミュレーション」・・・・・・・… 11

  1.3.1 「モデル化とシミュレーション」の扱い・・・…  11

  1.3.2モデルの種類と解決方法・・・・・・・・・・…  12

  1.4 単元「モデル化とシミュレーション」における

       従来の学習指導・・・・・・・・・・・・・・…  16

第2章  モデル化とシミュレーションの学習活動・・・・・・…  18

 2.1 モデル化とシミュレーションの見方・考え方・・・…  18

 2.2 コミュニケーション学習と授業計画・・・・・・・…  22

  2.2.1 コミュニケーション活動・・・・・・・・・…  22

  2.2.2 モデル化とシミュレーションの授業計画案・…  25

2

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 1 2

章...

3  

3

 Qu OQ

  34

0   0

33..

  OQOQ

 実習のための学習環境・・・・・・・・・・・・・・…  36

 学習支援のための教育的機能・・・・・・・・・・…  36

 コミュニケーション学習支援システムの開発・・・…  43

2.1 コミュニケーション学習支援システムの開発

     と使用環境・・・・・・・・・・・・・・・…  43

2.2 システムの全体構成・・・・・・・・・・・・…  43

2.3 HT肌の作成・9・・・・・・・・・・・・・…  47

 システムのインターフェイス・・・・・・・・・・・…  50

 システムの評価・・・・・・・・・・・・・・・・・… 61

おわりに・・・・・・・・・・・・・・…  ...。.。。。。

引用文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…  。..

参考文献・・・・・・・・・・…  9・・・・・・・・・…

・64

・65

・65

3

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はじめに

 普通教科r情報」では目標を「情報および情報技術を活用する

ための知識と技能を習得し,情報に関する科学的な見方や考え方

を養うとともに,社会の中で情報および情報技術が果たしている

役割や影響を理解させ,情報化の進展に対応できる能力と態度を

育てる」としている[文部省2000].この目標の中の「情報およ

び情報技術を活用するための知識と技能を習得」は「情報活用の

実践力」と「情報の科学的な理解」に,「情報に関する科学的な

見方や考え方を養う」は「情報の科学的な理解」に,「社会の中

で情報および情報技術が果たしている役割や影響を理解させ」は

「情報社会に参画する態度」に対応している.「情報活用の実践

力」「情報の科学的な理解」「情報社会に参画する態度」という情

報教育の3っの観点をバランスよく育成することが求められて

いる.情報の科学的な理解を中心的に扱う「情報B」では目標と

して「問題解決においてコンピュータを効果的に活用するために

技術の進展に左右されない基本的な考え方や方法を科学的に理

解させる」ことが示されている[文部省2000].

 r情報B」の特徴は問題解決の科学的な考え方や方法としてモ

デル化とシミュレーションが取り入れられていることである.こ

のモデル化とシミュレーションの指導に対して「考え方や方法を

理解させる」こととr実際の問題解決に活用できるようにする」

ことが示されている[文部省2000].具体的な学習内容として「時

間的な経過によって変化する現象」と「不規則に変化する現象」

が示されている[文部省2000].「時間的な経過によって変化す

る現象」とは入出力関係が時問関数として定まる現象である。

             ・1・

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「不規則に変化する現象」とは確率的な事象を持つ現象のことで

ある.

 すなわちモデル化とシミュレーションでは実際の問題解決に

活用するために身の回りの現象を用いながら動的なモデルと確

率的なモデルについて学習を行う.「時間的な経過によって変化

する現象」をモデルとして抽象的に表現する方法はいくつかある

が,現象の中の蓄積量と変化量に注目してモデル化するシステム

ダイナミクスを考える.システムダイナミクスは問題を各要素と

要素問の関係として捉えモデル化を行う。

 システムダイナミクスを学校教育へ適応する研究は既に欧米

ではいくつかの国で行われている[島田俊郎1994].日本ではこ

れまでモデル化の学習内容を取り扱う教科がなかったため,研究

は少ない.

 確率的なモデルを扱う手法にはモンテカルロ法がある.モンテ

カルロ法とは確率分布と乱数を用いてモデル化とシミュレーシ

ョンを行う手法である.

 システムダイナミクスを用いたモデル化とシミュレーション

について,南勉[1998]は総合的な学習の時問を用いて教材の開発

と実践を行っている.中野勝之[2001]はより専門的にモデル化と

シミュレーションのカリキュラムの開発を行っている.これらの

研究ではモデル化とシミュレーションの学習に実習を取り入れ

て行っている.これらの研究では学習者は仲間とのコミュニケー

ションは積極的には行われずに独自にモデル化とシミュレーシ

ョンを行っている.そのためモデルを作成することに重点が置か

れ,他者と意見を交わしながら考え方の違いを認識したり,作成

             一2・

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したモデルの妥当性の検証を十分に行うことはなされていない

ため,必ずしもモデル化とシミュレーションの見方や考え方が定

着し,妥当な問題解決を行える段階まで学習できているとは言い

難い.

 そこで本研究ではモデル化とシミュレーションの単元で実習

を中心として仲間や教師と意見を交わしながら学習を行い,問題

解決の科学的な方法を学習する授業計画案を考察し,学習者が考

えた見方や考え方について学習者同士でコミュニケーションを

行いながら検証するための学習環境システムを開発することを

目的とする.

 本論文の構成を以下の通りとする.

 第1章r普通教科情報の設置とモデル化とシミュレーション」

では情報教育の変遷や高等学校普通教科「情報B」の狙いやモデ

ル化とシミュレーションにおける見方や考え方について述べる.

 第2章「モデル化とシミュレーションの学習活動」ではモデル

化とシミュレーションにおいて見方や考え方を育成するために

体験的な活動が不可欠であり,問題解決を行うために学習者同士

のコミュニケーション活動をおこないながら学習活動を行うこ

とについて述べる.

 第3章「学習支援システムの開発」では実際に授業展開する際

の学習環境において必要な教育的機能にっいて述べ,この教育的

機能の実装について述べる.

一3・

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第1章普通教科「情報」の設置とモデル化とシミュレーション

1.1 情報教育の変遷と普通教科「情報』の設置の経緯

 近年の情報社会ではものと同様に情報に価値がおかれ,様々な

情報があらゆる所に存在する.情報は受け取る人によって価値が

変化し,ある人にとっては重要だが他の人にとっては重要でない

という情報も多く存在する.情報を適切に扱い,よりよい情報活

用を目指すためには,情報を取捨選択し,必要な情報へ加工し,

発信する情報活用能力が不可欠になっている[菅井勝雄2002].

このような背景から2003年施行の学習指導要領では高等学校に

2単位必修とした普通教科「情報」が新設され,情報教育の場が

設けられた.

 我が国における情報教育は1969年の理科教育および産業教育

審議会での「高等学校における情報処理教育の推進について」に

示され,高等学校の専門教科を対象とした「情報処理能力」の育

成を図るr情報処理教育」が始まった.しかし,このころの情報

は個人で扱うのではなく企業や官公庁のような大きな拠点とな

る場所にしかなかった.

 1980年代になると諸外国ではパソコンを学校教育に導入し教

育の情報科を図ることになる.このころになると社会において情

報が集中型から分散型へと移行してきており,これを受けて目本

においても1985年に情報化社会に対応すべく初等中等教育のあ

り方に関する調査研究協力者会議による中間報告が提出され,小

学校・中学校・特殊教育諸学校にパソコンを導入し「情報処理能

力」の育成を目指すr情報教育」に取り組むことになった.学校

にコンピュータが導入されたことにより,児童生徒が情報活用や

             ・4一

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問題解決の道具として利用できるようになった.この情報教育の

取り組みと関連し中学校技術・家庭科に「情報基礎」が選択領域

として設定されている.

 1990年代になると情報・通信技術が急速に発展し,情報の分

散化から情報のネットワーク化へと変容している.情報のネット

ワーク化により地球規模の相互コミュニケーション活動が可能

になり,多くの情報を得ることができるようになった.1991年

に文部省は「情報教育に関する手引き」を示し,この中で「情報

活用能力」として次の4つの柱を提示した.

 ①情報の判断・選択・処理・創造の能力

 ②情報化社会の特質と人間との関わり合いの理解

 ③情報の重要性の認識と責任の理解

 ④情報科学の基礎と手段の理解および基本的な能力

さらに,1994年のインターネットを活用する100校プロジェ

クトなどによりコンピュータが急速に各学校に普及するにつれ

体系的な情報教育の必要性が生まれてきた.

 1996年7,月に中央教育審議会はr21世紀を展望した我が国

の教育のあり方にっいて」という答申を行った,答申では情報社

会に生きる子どもたちにどのような教育が必要か述べられ,教育

の改善・充実のためにコンピュータや情報通信ネットワークをど

のように生かしていくかという観点から,情報化に対応した教育

を推進することにっいて次の4点が示された.

 ①情報教育の体系的な実施

 ②情報機器,情報通信ネットワークの活用による学校教育の質

  的改善

             一5・

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 ③高度情報通信社会に対応する「新しい学校」の構築

 ④情報社会のr影」の部分への対応

 この答申を踏まえ1997年に,情報化の進展に対応した初等中

等教育における情報教育の推進等に関する調査研究協力者会議

(以下,情報教育調査研究協力者会議)は第1次報告「体系的な

情報教育の実施に向けて」をまとめた.この調査研究協力者会議

では体系的な情報教育について,小・中・高等学校それぞれの児

童・生徒の発達段階に応じて体系的に育成することを提言してい

る[文部省2000].高等学校では「普通教育に関する教科として

「情報」を設置し,その中に科目を複数設定する」としている[文

部省2000].これを受けて1998年の教育課程審議会答申におい

て「高等学校においては,情報手段の活用を図りながら情報を適

切に判断・分析するための知識・技能を習得させ,情報社会に主

体的に対応する態度を育てることなどを内容とする教科「情報」

を新設し必修とすることが適当である」とされ,普通教科「情報」

が設置されることが決まった.

 これを受けて新学習指導要領では「情報」2単位が必修化され,

2003年度から段階的に施行されるに至った.

一6一

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1.2 普通教科「情報」

1.2.1 普通教科「情報」のねらい

 1998年8月の情報教育調査研究協力者会議の最終報告では,情

報教育の目標として「情報活用の実践力」「情報の科学的な理解」

「情報社会に参画する態度」の3っの観点が示されている[文部

省1998].この中で,「課題や目的に応じて情報手段を適切に活

用することを含めて,必要な情報を主体的に収集・判断・表現・

処理・創造し,受け手の状況などを踏まえて発信・伝達できる能

力」がr情報活用の実践力」として示され,r情報活用の基礎と

なる情報手段の特性の理解と,情報を適切に扱ったり,自らの情

報活用を評価・改善するための基礎的な理論や方法の理解」がr情

報の科学的な理解」として示され,「社会生活の中で情報や情報

技術が果たしている役割や及ぽしている影響を理解し,情報モラ

ルの必要性や情報に対する責任について考え,望ましい情報社会

の創造に参画しようとする態度」がr情報社会に参画する態度」

として簡潔に示された。これら3つの観点を相互に関連づけて,

3つの観点をバランスよく育てることが大切である.

 普通教科「情報」では「情報及び情報技術を活用するための知

識と技能の習得を通して,情報に関する科学的な見方や考え方を

養うとともに,社会の中で情報及び情報技術が果たしている役割

や影響を理解させ,情報化の進展に主体的に対応できる能力と態

度を育てる」としている[文部省2000].この目標の中に記載さ

れている「情報及び情報技術を活用するための知識と技能を習

得」は「情報活用の実践力」と「情報の科学的な理解」に,「情

報に関する科学的な見方や考え方を養う」はr情報の科学的な理

             一7一

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解」に,「社会の中で情報および情報技術が果たしている役割や

影響を理解させ」はr情報社会に参画する態度」に対応している.

3つの観点が相互に関連しながら,総合的に「情報化の進展に主

体的に対応できる能力と態度」を育成することが求められている

[文部省2000].

1.2.2 普通教科r情報」の問題点

 学習指導要領の改訂に伴い2003年度から普通教科「情報」が

実施されている.目本情報教育開発協議会が2003年に行った普

通教科「情報」の実施に関するアンケートによると75%もの学

校がr情報活用の実践力3に主眼をおいたr情報A」を採択して

いる.高等学校学習指導要領解説情報編によると,「「情報活用

の実践力」は小・中・高等学校段階において各教科やr総合的な学

習の時問」の学習活動でコンピュータや情報通信ネットワークを

用いて適切かつ積極的に活用することを通して育成しなければ

いけない。」[文部省2000]と述べられ,小学校段階から体系的に

r情報活用の実践力」をつけることが示されている.

 近年,情報通信ネットワーク社会の陰の部分も大きく取りざた

されている.情報倫理という言葉とともに情報を選択することの

重要度が増してきている.現在の情報社会においてあらゆる所に

情報が存在しており,生徒は情報に囲まれながら生活を行ってい

る.この身近にある情報の危うさを知り,うまく活用することが

必要である⊂情報教育学研究会2000].情報の危うさが身近にあ

るからこそ「情報社会に参画する態度」はできるだけ早期の学習

が必要と考える.

             ・8一

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 2005年度以降に高等学校に入学する生徒は現在施行されてい

る中学校技術・家庭科の技術分野「B情報とコンピュータ」にお

いて,コンピュータの操作や活用を中心として情報活用の基礎的

な理論や方法について望ましい情報社会の創造に参画する態度

を学習していることになる[文部科学省2004].つまり高等学校

に入学する段階の生徒はすでに「情報活用の実践力」や「情報社

会に参画する態度」について最低限の学習していることになって

いる.

 以上を考慮すると,小・中学校の情報教育が定着していくに従

って高等学校で情報の3つの観点をバランスよく学習するため

にはr情報の科学的な理解」を学ぶ必要がある.普通教科r情報」

においては特にr情報の科学的な理解jを中心としたr情報B」

で学ぶことが必要と考える.

1.2.3 普通教科「情報B」の目標

 普通教科「情報Bjでは目標を「コンピュータにおける情報の

表し方や処理の仕組み,情報社会を支える情報技術の役割や影響

を理解させ,問題解決においてコンピュータを効果的に活用する

ための科学的な考え方や方法を習得させる」としている[文部省

2000].問題解決においてコンピュータを効果的に活用するため

の科学的な考え方や方法を学ぶために,身近な問題解決に当ては

めて考え方や方法の習得を図る.普通教科「情報B」では身近な

問題解決の考え方や方法を中心的に学習する単元としてモデル

化とシミュレーションがある.モデル化とシミュレーションの単

元では身の回りの現象を対象にモデル化とシミュレーションを

             ・9・

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行い,問題を解決することにより,科学的な考え方や方法を生徒

に理解させ,実際の問題解決に活用できるようにすることを目的

としている.

 本研究では普通教科「情報B」のコンピュータを活用した問題

解決においてモデル化とシミュレーションの見方や考え方につ

いて学習していく.この見方や考え方にっいてコミュニケーショ

ン活動を中心とした実習を行うための学習環境について考える.

・10・

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1.3 単元「モデル化とシミュレーション」

1.3.1 モデル化とシミュレーションの扱い

 モデル化とシミュレーションの単元はデータベースとの選択

領域であり,教科書によってその取り扱い方法はかなり異なる.

そこで目本情報教育開発協議会のアンケート調査において採用

率の高い実教出版,目本文教出版,第一学習社,数研出版,啓林

館の5つの教科書においてモデル化とシミュレーションの取り

扱いについて検討した結果,以下の理由から実教出版の教科書を

主として取り扱っていくこととする.

●普通教科「情報B」のなかで最も多く採用されている.

●学習指導要領に最も沿った形で作成されている.

●各社の教科書の中で最も深く科学的に取り扱っている.

 本研究においてモデル化とは対象となる事象の特徴を何らか

の形で抽象化して表現する方法である.モデルには実物を縮小し

たような具体的モデルなども存在するが,ここで述ぺるモデルは

図的モデルや数式モデルのような抽象的なモデルを対象として

いる[平井一正1994].

 モデルを作成するには対象となる問題を検討し,本質を見極め

る必要がある.学習者は今までの体験をもとにしたり,獲得して

いる知識,アイデアを基に要素と要素間の関係を見いだす.体験

や知識を基にするため,同一の問題をモデル化するときでもモデ

ルを作成する目的やモデルを作成する人の視点や経験が異なれ

ば異なったモデルが生まれる.そこで問題の条件に応じて,解決

方法の中から最も妥当と思われるものを選択する.問題解決の手

             一11・

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法であるモデル化とシミュレーションの見方や考え方を学習す

ることで問題解決にコンピュータを活用し,科学的な考え方や方

法を習得させる。モデル化とシミュレーションの見方や考え方を

身にっけさせるために実習を中心とした学習活動を設定し,学習

支援を行う.

1.3.2 モデルの種類と解決方法

 モデル化とシミュレーションでは問題をシステムとして捉え

抽象化してモデルを作成する.ここでのシステムとはある目的を

達成するために,複数個の要素が有機的に結合された集合のこと

である[平井一正1994].抽象化するモデルにはいくつかの種類

が存在するが,種類は分類方法によって異なる.次の表1.1に

モデルの分類方法と種類の表を記す。

・12一

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表1.1 モデルの分類方法と種類

分類方法 モデルの種類 説明

モデルの表形式

数学モデル

的モデルミュレーショ  ー“ンモアノレ

数式,論理式などによるモデル

的表現によるモデルミュレーション用語によるモデル

モデリング目的

機能モデル

造モデル画モデル

価モデル

測モデル

システムの機能を調べるためのモデル

ステムの構造を明らかにするモデル画,スケジューリングを目的とするモル機能,コスト,信頼性,時間などシステ

評価を表すモデルステムの未来値を予測するモデル

システムの性

静的モデル

的モデル

定的モデル率的モデル型モデル線形モデル続時間モデル散時間モデル

クロモデル

クロモデル

入出力関係が同時時点で定まるモデル

出力関係が時間関数として定まるモル確定的な性質を持つモデル

率的な性質を持つモデル出力関係が線型関係であるモデル出力関係が線型でないモデル間的に連続な動作をするモデル定の時間の刻み時間ごとに動作するデル

ステムを瞬間的・微視的に捉えたモデレシステムを長期的・巨視的に捉えたモデ

                    [浅居喜代治1979]

 この分類の中で普通教科「情報B」では具体的な学習内容とし

て「時問的な経過によって変化する現象」と「不規則に変化する

現象」として示されている[文部省2000].これら2つはそれぞ

れ,時間的に連続して蓄積量が変動するような事象を対象とした

動的モデルと,確率的に変動する事象を対象とした確率的モデル

に対応している.

・13・

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 動的モデルをモデル化する手法にシステムダイナミクス(SD)

と呼ばれる方法がある,システムダイナミクスは現代社会の現象

における要素間の因果関係をフィードバックの概念で捉え,シス

テムの構造を明らかにする手法である[浅居喜代治1986].これ

は1950年初めにJ.W.Forresterによって開発された概念であり

複雑で非線形的で多重フィードバックのあるようなシステムを

シミュレーションするために開発された[浅居喜代治1986].シ

ステムダイナミクスは身の回りの社会的現象をシステムとして

捉えてそれを基に問題解決を行うものである.実教出版の教科書

ではこのシステムダイナミクスの考え方が取り入れられている.

 システムダイナミクスを学習する上では「現象の構造と振る舞

いの関係」と「基本的構造」の2つの概念が重要である[正司和

彦2001].r現象の構造と振る舞いの関係」の学習では現象を起

こす要素とその時間の関係がどのように関わっているかを数量

的・構造的に理解することが重要である[正司和彦2001]。また,

シミュレーションを行うことで振る舞いを明確にすることが可

能になる。これによりr現象の構造と振る舞いの関係」を理解す

ることが可能になる.「基本的構造」とは様々な分野の現象で観

察されるr典型的な現象の振る舞いをもたらす基本的な現象の構

造のパターン」を指す.モデル化とシミュレーションの学習の中

では「変化の速さが一定の場合」「変化の速さが蓄積量に比例す

る場合」「変化の速さが目標値と蓄積量との差に比例する場合」

という動的なモデルの基本的な構造がそれに該当する.基本的な

構造を知り,社会的現象をこれら基本的構造の組み合わせたシス

テムとして捉え,様々な考え方を用いて問題解決へと導く.問題

             一14・

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解決の見方や考え方を学ぶことで,現象の振る舞いや構造といっ

た本質を見極め,解決へと導くための能力を育成することができ

る.

 次に確率的モデルについて考える.確率的モデルとは要素の中

に不確定なものが含まれたモデルである.確率的モデルでは不確

定な事象が起こる頻度を確率分布として得ることが重要である.

この頻度とコンピュータで発生させた乱数用いることで確率的

な要素を模擬的に表現できるからである.この方法はモンテカル

ロ法と呼ぱれ,ランダムにサンプルを決定することで不確定要素

を表現する[宮武修1960].乱数ではランダムに数値を出すため,

乱数を発生させた数が少ない場合に偏りが起こる可能性がある.

この不確定要素のシミュレーションの信頼度を上げるためには,

乱数のデータ数を多く用いることでデータの精度を上げること

ができる.モンテカルロ法では乱数を使用するため,容易に乱数

を発生させることができるコンピュータがよく使用されている.

確率的モデルの本質を見極めるためにモンテカルロ法の手法を

学習する.

一15・

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1.4 単元「モデル化とシミュレーション」における従来の学

習指導

 「モデル化とシミュレーション」の単元は学習指導要領の中で

r問題のモデル化とコンピュータを利用した解決」の内容として,

rア モデル化とシミュレーション」「イ 情報の蓄積・管理と

データベース」として位置づけられている[文部省2000],しか

し,「実習は生徒の実態に応じア,イのいずれかを選択して扱う

ことができる」としているため[文部省2000],モデル化とシミ

ュレーションを取り上げている学校は普通教科「情報B」を取り

上げた学校の中の25%と少ない[目本情報教育開発協議会2004].

これは教師が十分なモデル化とシミュレーションの理解と指導

経験がないことのほかに,十分な体験に基づくモデル化とシミュ

レーションの学習を行わせるために,学習者のレベルにあった実

習をすることが難しいことにも原因がある.この原因には見方や

考え方を身につけさせるための方法が一般的に普及しておらず,

問題解決を個別に行い,解決方法が正しいかを検証することまで

は行われていない.

 モデル化とシミュレーションでは実習を主体とした授業展開

を行う必要があるが,実習を主体とした授業を行った研究として

南勉[1998],中野勝之[2001]がある.これらの研究ではシステム

ダイナミクスの考え方を採用し,南は総合的な学習の時間におい

てモデル作成ソフト(以下Stellaと記す)を用いて授業を行って

いる.中野は専門教科rモデル化とシミュレーション」において

カリキュラム開発を行っている.作成したカリキュラムに従い,

動的なモデルについてStellaを用いて体験的に学習させている.

              一16一

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 このStellaを用いた体験的な学習は,それぞれの学習者が独

立してモデルを作成し,見方や考え方について考える学習形態を

取っている.しかしモデル化とシミュレーションの学習を普通教

科「情報B」で初めて行う学習者が見方や考え方を身にっけるた

めに,互いの見方や考え方について議論したり,質問できる場の

設定が必要である.コミュニケーション活動を行う中で学習者が

見方や考え方の変容を記録し,後に自らの考え方の変容を見るこ

とができるようにする。この学習者の考え方の変容の記録により

教師が学習者の理解について適切に把握することが可能になる,

加えて初めてモデルを作成する学習者に対してモデルの作成を

支援する必要もある.

・17・

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第2章 モデル化とシミュレーションの学習活動

2.1 モデル化とシミュレーションの見方・考え方

 モデル化とシミュレーションの学習における目標は,モデル化

 とシミュレーションの見方や考え方を身につけさせ,身の回り

の問題解決に活用できるようにすることである[文部省2000].

実際の問題解決に役立てるためには実習を中心とした学習を取

り入れることが必要である.モデル化とは問題の要素を抜き出し,

要素同士の関係を明らかにして図や数式に表現することである

[平井一正1994].問題解決のためにモデルを作成し,モデルを

コンピュータなどでシミュレーションし,目的に照らし合わせて

モデルのパラメータを変更して検証し問題解決を行う.このモデ

ル化とシミュレーションの流れを図2.L1に示す.

  圃-靭 モデルの妥当性

について検証

シミュレーション

   シミュレーションの結果

問題解決

    図2.L1 モデル化とシミュレーションの流れ

 モデルの作成においては,問題の捉え方やモデル作成者の経験

や考え方によって,1っの問題に対して異なったモデルが作られ

             一18一

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る.作成された複数のモデルの中から妥当なモデルについて検証

することが重要となる.

 動的モデルを作成する場合では,見方や考え方である蓄積量や

変化の速さなどの要素を抽出し,要素と要素間の関係について議

論を行い,妥当性を検証することが重要になる.動的モデルの場

合の「見方」とは,モデル化をする際に学習課題の中から蓄積量

を抽出することであり,この蓄積量を決定づける変化の速さを抽

出することである.「考え方」とは,これらの要素同士の因果関

係を明らかにして図や数式に記述し,妥当性を検証することであ

る.動的モデルでは,システムダイナミクスの考え方にしたがっ

て要素間の関係を図2.L2に示すような図記号を用いることで

図に数式的意味合いを持たせて表現する[正司和彦20001.動的

モデルを作成する上で基本となる要素には時問経過によって蓄

積していくものを「蓄積量」として,時間経過によって蓄積量の

変化を単位時問あたりの変化で表したものを「変化の速さ」,変

化の速さを決定する上で必要な要素として「その他の要素」,こ

れらの要素の関係を「情報の流れ」で表す.これら4つの要素を

用いることで動的な事象を表現することが可能である.

蓄積量 変化の速さ その他の要素

  れ

r繊

      図2.1.2基本的な要素の図記号

動的モデルを作成するためには,初めに蓄積量について着目す

            一19一

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る.蓄積量は学習課題の中から時間的に増減するものでありこれ

に着目する.次に蓄積量に対する単位時問あたりの変化量に着目

する.この単位時間あたりの変化量が「変化の速さ」である.動

的モデルの「害虫が発生し,単位時問あたり10%ずつ増加する.

この現象を表すモデル」の例を図2.L3に示す.

増加速度 害虫の数

増加率

         図2.1.3 モデルの構築

 この図では害虫の数が蓄積量である.蓄積量であるr害虫の数」

と「増加率」が「変化の速さ」を決定する要素であり,図中では

「増加速度」として表している.増加速度を数式モデルで表現す

ると0.1X「害虫の数」となる.

 次に不規則な現象の確率的な性質を調べてモデル化する確率

的なモデルの場合について考える.確率的要素を含む現象をモデ

ル化し,さらにシミュレーションする一般的な手法としてモンテ

カルロ法がある.ここではモンテカルロ法を用いてモデル化とシ

ミュレーションを行う.

①学習課題から確率的な現象を見つけ,測定データから相対度

             ・20・

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 数の分布すなわち確率分布を求める.

②確率分布を基に累積確率を求め,これに[0,1)の範囲で発生さ

 せた乱数を当てはめ,確率的な現象に類似したデータを得る.

 [0,1)とは(0〈=xく1)のことである.

 確率的モデルの場合は,初めに現象を観測し測定データから確

率分布を求める必要がある.確率現象の中にある特定の事象が起

こる頻度のことである。確率的モデルの場合には初めに確率分布

を見いだすことがr見方」にあたる.さらに[0,1)の乱数を用い

て現実の確率分布に類似した現象を作り出してこのデータから

問題を解決することがr考え方」にあたる.

 これらの作成するモデルには作成者が問題の捉え方や意図に

よって見方や考え方がモデルに大きく反映される.作成者の見方

や考え方によって同じ問題であっても異なったモデルが作成さ

れる[平井一正1994].この作成された複数のモデルの中から問

題に対して最も妥当なものを検証し探すことが重要である.検証

を行うことで他によい解決策があるのか,モデルが正しいかを検

証することになるからである.作成したモデルの妥当性を検証す

るには,様々な視点から意見を述べ問題解決へと導く必要がある

様々な視点から意見を述べることで異なった視点から問題を捉

え目的に基づいてモデルを検証することができるからである.そ

こで学習者同士が異なった視点から問題を捉え,学習者がコミュ

ニケーション活動を行い,モデルの見方や考え方,妥当性にっい

て議論を行う.

・21一

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2.2 コミュニケーション学習と授業計画

2.2.1 コミュニケーション活動

 本研究では学習者に問題解決の手法としてモデル化とシミュ

レーションの考え方を身につけさせるために,学習を支援するシ

ステムを導入する.学習者は作成するモデルの見方や考え方につ

いて学習ファイルに書き込み,これを基にしてコミュニケーショ

ンを行い,モデルの見方や考え方について検証する.検証するこ

とによって学習者は自らの学びを振り返る機会を得る.他者と考

え方を検証する場としての学習支援システムを構築することに

する.』

 モデル化とシミュレーションの単元におけるコンピュータを

活用した教材開発の研究として南はモデル化とシミュレーショ

ンの学習を「導入」「基本」「発展」「応用」という4つの段階に

分けている,南の学習では学習者は1台のコンピュータに2人を

基本として,それぞれのコンピュータで独立して学習を行う.し

かしこの方法では初めてモデルを作成する学習者が正しい見方

や考え方を持っているか,その見方や考え方が妥当なものである

のか,同じコンピュータを使っている学習者同士でしか検証でき

ず,他の多くの見方や考え方を知ることができない.

 モデル化とシミュレーションの見方や考え方を育成するため

には学習者が複数の学習者とモデル化とシミュレーションの見

方や考え方について議論することが重要になる.正司和彦[2004]

は問題解決の熟達化をするために「子どもひとりで知識を獲得し

て知識を組み立てる行為として捉えるのではなく,子どもは学習

共同体の一員として役割を持ちお互いを認識し,他者に支えられ

             一22一

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ながら知識を共有し獲得していく過程として捉える」と述べてい

る.この学習では学習者が個別にモデル化とシミュレーションの

見方や考え方を学習し獲得するのではなく,学習者同士が互いに

自らの意見として見方や考え方にっいて述べ,意見を学習者同士

で議論することが他者に支えられながら知識を共有し獲得して

いく過程であると考える。この知識の共有を円滑に行うためにモ

デル化とシミュレーションの見方や考え方について議論を行う.

モデル化とシミュレーションの見方や考え方であるモデル図を

学習者が共有できるようにする.

 本研究では授業計画に南の学習の流れを取り入れ,加えてコン

ピュータによるコミュニケーションを行うことができるように

学習ファイルと掲示板を用いた学習支援システムを開発し、導入

する.この学習支援システムの概要を図2.2.1に示す.

一23・

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        ド     ず       コ    げ ゴ    や ゆ     ヒ ドル

    端宥購灘    ’一』r「「 廷「’戯         ア      の     コ    「 3 ・一・聴

学習者A(学習ファイルの閲覧)

   ㌧∫r籍げF■占‘督”、

   、          f、「 、■           げ     や    「 唱 、         、  ら

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学習者B(掲示板の閲覧)

インターネツト

Webサーバ

データベース(DB)

学習支援システム

      図2.2.1学習支援システムの概念図

 学習者は各端末のコンピュータからブラウザを用いてインタ

ーネットを介してWebサーバにアクセスを行う.このWebサーバ

を通してデータベースにアクセスを行う。データベースはユー

ザ・グループDB,学習ファイルDB,掲示板DB,学習課題DBとい

う4つのファイルを持っている.

 ユーザ・グループDBはユーザの名前などデータの管理を行う

データベースである.

 学習ファイルDBには学習者のモデル図を作成する上での考え

方などを蓄積できるようにする.

 掲示板DBでは学習ファイルの根拠を基にして学習者同士がモ

デルの見方や考え方についてやモデルの妥当性ついて議論する.

 学習課題DBには学習者がモデル化とシミュレーションを行う

学習課題が記録されている.

              ・24・

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2.2.2 モデル化とシミュレーションの授業計画案

 南の学習の流れに基づき授業の展開を考える.南の授業の展開

に加えて,学習者同士のコミュニケーション活動に注目し,見方

や考え方を深めることができるように授業展開を変更した授業

計画案を以下に示す.

 モデル化とシミュレーションの学習の第1段階は導入の段階

である.導入はモデルとはどのようなものかを学習する段階であ

り,学習者の身近な問題を扱い,学習に興味を持つような学習課

題を設定する.学習者はモデル化とシミュレーションが問題解決

の一つの手法として利用されていることを知る.

 第2段階ではモデルの作成について学習する段階である.モデ

ルの基本的な構造を知り,それぞれの学習者がモデルを作成する.

ここで対象となるモデルは実教出版の教科書に則して,時間的に

変化する現象に関しては「変化の速さが一定の場合」,「変化の速

さが合計量に比例する場合」,「変化の速さが目標値と合計量の

差に比例する場合」とし,これに加えて確率的な現象としてはr不

規則な現象を含む場合」とする.これらの基本的な構造のモデル

を学習しながらモデルの基本的な見方や考え方について学習を

行う.

 第3段階では第2段階で学習したモデルの基本的な構造の理

解を深めるために学習支援システムを用いて実習を行う.基本的

な構造についてモデルを作成する演習を行いながら,基本モデル

の振る舞いについてシミュレーションの結果を基に確認する.学

習者は要素の設定や考え方について他の学習者とコミュニケー

ションを行いながら,モデルの基本的な構造について理解を深め

             ・25一

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る.コミュニケーション活動では同じ学習課題を共有した学習者

が,どのモデルが妥当であるか議論を行うことで,モデル化の手

順や方法にっいて学習を行う.

 第4段階では,教師は学習者が今まで学習したことを用いて解

けるレベルの学習課題を複数設定し,学習者グループで学習課題

を検討させる.学習は互いに意見を出し合いながら解決を行う.

また,学習者に社会や身のまわりの事例を問題として設定し,モ

デル化とシミュレーションの方法を用いて問題解決させる演習

を設定する.事前に設定した学習課題や学習者が設定した学習課

題を解く中でモデル化とシミュレーションの見方や考え方を実

生活に活用できるようにする段階として設定する。

 以上に述べたモデル化とシミュレーションの学習を基にした

授業計画案を表2.1に示す.

・26・

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表2.1 授業計画案

配当 学習 学習項目 学習内容 学習

時問 段階 形態

2 第1 問題の解 モデル化とシミュレーションが実 座学段階 決方法 際の問題解決の手法として利用さ

れていることについて知らせる.

● モデル化の概念を述ベモデル化とはどういったものであるのかを示す.

● モデル化の手順としてモデル化がどういった段階を踏んで行われるのかを示す.

● どういった種類のモデルがあるのかにっいて知らせ,それぞれの手順を踏まえながらモデルを作成させてみる段階へと進める.

シミュレーションを行う意義につ 座学

いて理解を促し,シミュレーションの手順を示す.

4 第2 モデル化 時間的に変化する現象について説 座学段階 の方法に 明を行い,この現象の見方や考え

ついて学 方を捉えられるようにする.ぶ 時間的に変化する基本的な現象に

ついて示す.

● 変化の速さが一定の場合● 変化の速さが合計量に比例す

る場合● 変化の速さが目標値と合計量

に比例する場合

・27・

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学習課題の中に不規則な現象があ 座学

る場合,類似した状況をコンピュ一タで作り,不規則な現象を模擬的に作り出す.そのためのモンテカルロ法について知らせ,その見方や考え方にっいて学ばせる.①起こる事柄に対して度数を記

録する

②度数を集計することで事柄の起こる確率を求める

③集計結果から累積値を求め,それを基に乱数に従った値を出す

④コンピュータで発生させた乱数を用いて累積確率を求める

7 第3 コ ンヒ。ユ 問題解決の手法としてモデル化と 実習

段階 一タによ シミュレーションの見方や考え方るシミュ の理解を深めるために学習支援シレーショ ステムを用いて実習を行なわせン活動を る.

行い,見方 ここでは基本的な構造をもつモデや考え方 ルを作成させシミュレーションをについて 行わせる.身につける. ● 変化の速さが一定の場合

(水量の変化)

(プリンタの印刷)

● 変化の速さが合計量に比例する場合(預金金額の時問的変化)(人口の変化)

(携帯電話の加入者)(チェーンメール)

● 変化の速さが目標値と合計量に比例する場合(エアコンによる温度変化)(トイレタンクの水量)(車とバイクの速度)

このモデルやシミュレーションの結果を基にモデルの見方や考え方について議論したりパラメータを変更し,その結果について議論し,違いを検証させる.

・28・

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確率的な要素を含む問題解決について,第2段階で学習した見方や考え方を深める.学習課題から確率分布を設定しコミュニケーション活動をしながら見方や考え方について議論し検証させる.

● サイコロのモデル● 天気予報のモデル● コインの出るパターン

3 第4 モデル化 今までの学習を基に複合的な学習 実習

段階 とシミュ 課題の問題解決を行い,解決方法レーショ について議論を行なわせる。また,ンの応用 学習者自身が学習課題を設定でき

るようにする.

 次に実習を始める第3段階について詳しく述べる.第3段階で

は学習支援システムを用いてモデルの基本構造の理解を深める.

第2段階で学習した基本的な構造のモデルに対してモデルを作

成しシミュレーションを行う.モデルを作成する演習を行いなが

ら,自らの考え方が正しいのかを学習者同士で議論を行う.第3

段階では学習者にとって身近な問題を適切に設定し問題解決を

行う.そこでシステムには複数の学習課題を記録しておき,学習

者の興味関心によって学習課題を選択させて解決させる.設定し

た学習課題すべてを行う必要はなく,学習者の興味や理解度に応

じて教師や学習者自身が選択できるようにする.理解度の高い学

習者に対して教師が学習課題の中の数値を変更することができ

るようにする.学習者はこの数値の変更によってシミュレーショ

ン結果がどのように影響を受けるかを理解させる.また,学習課

題の設定条件を追加することでモデルがどのように変更され,そ

             一29一

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の結果シミュレーション結果にどのように影響を与えるかを理

解させる.この変更を繰り返すことで学習課題の中の数値やモデ

ルの設定条件の変更によってモデルやシミュレーション結果に

対してどのように影響するのか学習者は予測することが可能に

なる.そこで教師は学習課題の中の数値の変更を行ったり,設定

条件を追加できるようにする,この変更したモデルによってシミ

ュレーション結果を予測できるようになると学習者自身が学習

課題を設定する際に,問題解決を行うために必要な要素について

予測して問題を設定できるようになる.ここで扱う学習課題は学

習者が生活に関わる身近な問題について設定する.システムに始

めに登録している学習課題を表2.2にまとめ,それぞれの詳細に

ついて次に示す.

        表2.2 初期登録している学習課題

1分間に6リットルの水を入れたとき,初期水量を2リ舜ルの場合に

変化の速さが一定 は水量はどのように変化するかシミュレーションしようの場合 学校のプリンタは1分間で100枚印刷できる.学校のプリンタ

の印刷枚数をシミュレーションしよう美希さんは10000円を年利8%で複利預金した.金額の変化をシミュレーションしてみようA市の人口は現在25600人です.1年間に人口の12%の人が増え人口の8%の人が減少します.このとき10年後には人口は何人になっているでしょうか

変化の速さが合計に比例する場合

A社の携帯電話の加入者は現在12800人です.1月に3%ずっ増する場合の加入者の増減についてシミュレーションしてみよ

γワ

次のようなメールが来た. 「このメールを5人の人に送ると幸福が訪れます.」全員がこのメールに従うとすると1ヶ月後には何人の人がこのメールを受け取りますか現在の室温と温度設定の差に比例して冷暖房を行うエアコンを部屋に設置したとき,温度変化を0.3として室温変化をシミュレーションしよう

変化の速さが目標と合計量に比例

水洗トイレのタンクは常に一定の水がたまっている.この水量変化をシミュレーションしてみよう

する場合車とバイクがある.車は最高速度が150km/h,加速力は0.5とする.バイクは最高速度が120km/h,加速力は0.8とする。この2つの乗り物でどちらの方がどれだけ速いかシミュレーションしてみよう

一30一

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確率的な事象を含む  場合

サイコロの目の出る確率を調べよう晴れ,曇り,雨,雪の天気の予想を確率的に行おうコインを投げて表が出ればx軸方向に1移動,裏ならy軸方向

1移動する,このとき,10回後に(5,5)座標にいる確率をシュレーションしよう

 初めに「変化の速さが一定の場合」の問題として2つの学習課

題を示す.「1分間に6リットルの水を入れたとき,初期水量を2リット

ルの場合には水量はどのように変化するかシミュレーションしよ

う」.

 この学習課題は第2段階で扱い,教科書に記載された問題であ

る.この学習課題を第3段階に入れたのは,学習者は一度モデル

を作成しており,システムの操作に集中できると考えたためであ

る.この学習課題でのコミュニケーション活動は操作に慣れるた

めのものである.

 「学校のプリンタは1分間で100枚印刷できる.学校のプリン

タの印刷枚数をシミュレーションしよう」.

 この学習課題は学習者の理解度に合わせて学習課題を変更で

きるように学習者に身近な問題として設定する.この問題では学

習者が第2段階で学習した基本的なモデルの事例であるかどう

かを考えてモデルを作成することを想定している.コミュニケー

ション活動もモデルの基本形に関する見方について話し合うこ

とを想定している.

 次に「変化の速さが合計量に比例する場合」として4つの学習

課題を示す.この学習課題は蓄積量からフィードバックがある場

合である.この構造を持つ現象での蓄積量や変化の速さの設定っ

いて理解し,パラメータを変更したときの影響について知ること

一31・

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を目的とする.

 r美希さんは10000円を年利8%で複利預金した.金額の変化

をシミュレーションしてみよう」.

 この学習課題は教科書に載っている問題である.この問題の解

答例は教科書に記載されている.学習者が問題の見方や考え方が

わからず,他の学習者もわからないために支援がうまくできない

ことが予想されるときに教師がこの学習課題を選択できるよう

にする.学習者はこのモデルに対する教科書の見方を見て「なぜ

蓄積量を預金金額とおいているのかな?」といった疑問を持った

り,質問を行うことが想定される.

 rA市の人口は現在25600人です.1年問に人口の12%の人が

増え人口の8%の人が減少します.このとき10年後には人口は

何人になっているでしょうか」.

 「A社の携帯電話の加入者は現在12800人です,1月に3%ず

つ増加する場合の加入者の増減についてシミュレーションして

みよう」.

 「次のようなメールが来た.「このメールを5人の人に送ると

幸福が訪れます.」全員がこのメールに従うとすると1ヶ月後に

は何人の人がこのメールを受け取りますか」.

 これら3っの学習課題では蓄積量からのフィードバックとそ

の他の要素によって変化の速さが決定される.変化の速さが何に

よって決定するのかを考えることが重要となる.よってコミュニ

ケーション活動では「変化の速さは蓄積量と関係があるの?」,

「変化量=蓄積量×他の要素だよね.」といったコミュニケーショ

ンが起こることを想定する.この学習課題で学習者が作成するモ

             ー32・

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デルの例を図2.2.2に示す.

預金金額利子金額

利率

図2.2.2 変化の速さが合計量に比例する場合

 次に「変化の速さが目標値と合計量に比例する場合」として3

つの学習課題を示す.このモデルにも蓄積量からのフィードバッ

クがある.蓄積量と変化の速さを決定する要素とその関係を知り,

モデルの形状について理解することが重要になる.加えてパラメ

ータを変更したときに,どのような動きをするかを理解を得られ

るようにする.

 「現在の室温と温度設定の差に比例して冷暖房を行うエアコ

ンを部屋に設置したとき,温度変化を0.3として室温変化をシミ

ュレーションしよう」.

 この学習課題は教科書に例題として示され,解答の手順も記載

されている.この学習課題は,学習者がモデルの見方や考え方が

わからず,他の学習者からの支援もうまく行われないと予想され

る場合に教師が選択するように設定する.学習者はこの教科書を

読んで「なぜ蓄積量を温度と置き,変化の速さを決定する要素に

は何があるのか?」といった見方や考え方に関する質問ができる

ようなコミュニケーション活動を行うことを想定している.

             一33・

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 「水洗トイレのタンクは常に一定の水がたまっている.この水

量の変化をシミュレーションしてみよう」.

 「車とバイクがある。車は最高速度が150km/h,加速力は0.5

とする.バイクは最高速度が120km/h,加速力は0.8とする.こ

の2っの乗り物でどちらの方がどれだけ速いかシミュレーショ

ンしてみよう」.

 この2つの学習課題では蓄積量には限界が存在し,限界を超え

ない範囲で増減する.蓄積量の増減を決定する変化の速さが蓄積

量からのフィードバックによって決まることを理解しモデルを

作成する.ここではr蓄積量が目標値に近いほど変化の速さは小

さくなるね.」といった学習者同士のコミュニケーション活動が

行われることを想定している.この学習課題で学習者の作成する

モデルの例を図2.2.3に示す.

    温度変化

温度変化率

温度差

設定温度

図2.2.3 変化の速さが目標値と合計量に比例する場合

次に確率的なモデルの学習課題を3つ示す.

            一34・

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 「サイコロの目の出る確率を調べよう」。

 「晴れ,曇り,雨,雪の天気の予想を確率的に行おう」.

 「コインを投げて表が出ればx軸方向に1移動,裏ならy軸方

向に1移動する.このとき,10回後に(5,5)座標にいる確率をシ

ミュレーションしよう」 .

 この確率的モデルの学習課題では不規則におこる現象を特定

し,その現象の起こる頻度を観測して確率分布を求める必要があ

る.この確率分布を見つけ出すことが見方に当たる.次にこの確

率分布にコンピュータで発生させた乱数を当てはめることで問

題解決を行う.これが考え方にあたる,コミュニケーションでは

r乱数を確率分布にどのように対応させるのか.」といった質問

が起こることを想定する.

 第3段階ではモデルの基本構造について理解を深める段階で

ある。ここでは学習課題を解決するためにコミュニケーション活

動をモデルの見方や考え方について質問したり,モデルの設定に

ついて議論することを想定している.コミュニケーションを行う

中でモデルの作成方法やモデルの作成手順について深化し,モデ

ルを作成できるようにする.

 第4段階に入るとモデル化する対象が複雑な問題を対象とす

るため学習者の見方や考え方によって様々なモデルが学習者に

よって作られる,多くのモデルの中から学習課題の目的に照らし

て最も妥当なモデルについて議論したり,見方や考え方について

検証を行う.検証を行う場としてコミュニケーションの場が用い

られる.

             ・35・

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第3章 実習のための学習環境

3.1 学習支援のための教育的機能

 モデル化とシミュヒーションの学習では,見方や考え方を身に

つけ,実際の問題を科学的に解決する必要があることを第2章で

述べた.このモデル化とシミュレーションの見方・考え方を定着

させるためには,体験的な学習を行うことが重要である.2.2

では実習を中心としたモデル化とシミュレーションの学習をお

こなうことを示した。この実習を中心とした学習に必要となる学

習支援を行う環境について示す.

● 「モデルを作成し,蓄積できる機能」

 学習課題の表現を容易にするために図を用いて抽象化する.モ

デルを図に表現するために用いる基本的な要素の図記号を3.L1

に示す,

変化の速さ その他の要素

  れ

       3.L1 基本的な要素の図記号のモデル

 3.L1に示した図記号は実教出版の教科書に沿った図形にして

いる.モデルを作成するために用いる図記号は用意したメニュー

バーからドラッグアンドドロップすることで容易に作成できる

ようにする.モデルを作成するための機能として図3.1.2のよう

なGUI(Graphical User Interface)を実装する.

              一36・

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○鵬

精報の流れ

アイコンのドラッグ&ドロッブ

      ロ

図3,L2 モデル作成のイメージ

● 「モデルの見方や考え方にっいて書き込み,蓄積できる機能」

 第2段階までで学習したモデルを作成するための見方や考え

方について学習者が理解しながらモデルを作成しているかどう

かを教師が確認できるようにモデル作成の各段階でシステム操

作の意図について記述させる.たとえば動的モデルについてモデ

ルを作成させる場合に学習者が蓄積量や変化の速さなどの要素

を設定した際に,学習者が設定した理由や根拠を記述させるよう

にする.記述した内容についてシステムは学習者IDと問題に関

連させて登録順に保存しておく.

 見方や考え方の根拠の記述を見た学習者は作成意図を踏まえ

て客観的にモデルを見ることができる.この客観的に見ることで

モデルの問違いを見出したり,より妥当なモデルを作り出すこと

             ・37・

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も可能である.他者とのコミュニケーションやモデルを客観的に

見て自らの見方や考え方が変わり,モデルに修正を加える場合に

はモデルを修正する意図も記録できるようにする.モデルを変更

するたびに見方や考え方について記録することで,この記録を見

た人は学習者の見方や考え方の変容を蓄積し把握できる.教師も

学習者の見方や考え方を常に把握できるため,その都度適切な支

援を行うことが可能になる.このモデルの見方や考え方を蓄積す

る様子を図3.L3に示す

蓄積量を水量とした理由

変化の速さをO Oとした理由

この問題では水量が:増加する様子を

 、  、  、

“思の蓄積

図3.L3 モデルの見方や考え方の蓄積

● 「モデル図の作成を支援する機能」(help機能)

 学習者に対してモデルを容易に作成しできるように支援を行

っても作成する方法にっいて理解が得られていない場合にはモ

デルの作成を支援することができない.第2段階で行った例題と

その解答例をテキストとして,モデルの作成を行う画面から立ち

上げられるようにし,モデルの基本的な構造別に表示する.第2

段階の例題と解答例を見ることで,モデルの作成方法が全くわか

らない学習者が参照することで全体的なモデル化の手順がわか

るようにする,

             ・38・

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 モデル化の途中で次の作成手順がわからなくなった学習者に

対しては,モデル化の手順を追って順に示しモデル化の道筋を示

すようにする.モデル化の手順について次の手順だけ知りたい学

習者にとって,次に何を行えばよいか,わからない部分だけ知る

ことができるようにする.

● 「コミュニケーションの内容を蓄積する機能」

 モデル化とシミュレーションの見方や考え方を基に作成した

学習ファイル上の自らのモデルが正しいか,見方や考え方につい

て妥当かどうかを検証する必要がある.本指導案では検証の作業

をコンピュータ上で他の学習者とコミュニケーションを取りな

がら行なわせる.コンピュータ上でのコミュニケーション活動は

関口実[2004],陶山紀宏[20031などが行っている.これら2つの

研究では学習者は自らの考えを学習ファイルに示すことができ

ない学習者に対して,他の学習者や教師から支援を受ける場とし

て掲示板が使用されている.掲示板上で学習課題を共有している

学習者同士で考えを相互に吟味し検討させることで,学習者は知

識を獲得し知を再構築していく.

 コミュニケーション活動では学習者の見方や考え方である学

習ファイルを相互に参照できるようにする.学習ファイルを見ら

れるようにすることでコミュニケーションを行う相手の考え方

にっいて,発言した学習者の意図について学習ファイルを参照し

ながら議論を行えるため,より深い議論を行うことができる.ま

た考えを相互に閲覧しながら議論することにより新たなアイデ

アを創造することもできる.モデルを作成できなかった学習者も,

             ・39・

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作成途中の学習ファイルを示しながら疑問や質問を掲示板上で

投げかけることで,他の学習者から支援を受けることができる.

コミュニケーション活動を会話ではなく掲示板で行うことによ

りコミュニケーションの内容を記録し蓄積することができる.掲

示板上でのコミュニケーションの内容を記録することで会話を

非同期的な学習活動とでき,学習者は自らの思考するぺ一スに合

わせて意見を考えてコミュニケーション活動を行うことができ

る.普段なかなか発言できない学習者も非同期なコミュニケーシ

ョンの場合にはコミュニケーションに参加でき意見を述べられ

るような配慮を行っている.非同期コミュニケーションを行うこ

とで同期コミュニケーションヘ参加する自信につなげることが

できるとも考える.

 掲示板ではコミュニケーション活動が蓄積されていくため,疑

問が生じた場合に過去に同じ疑問を持った学習者がいたのか,い

たらどのように解決したのか,掲示板の記録を読むことで疑問を

解決することも可能である.以上のような意図や目的を想定し本

研究においてもこれを活用し,モデルの見方や考え方についてコ

ンピュータの掲示板上でのコミュニケーションを学習者に行わ

せる.コミュニケーション活動のイメージを図3.L4に示す.

・40・

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0 ●

掲示板

 O O

  ‡学習ファイル

この問題で蓄積量を水量といたんだけど?

まこ、 、 か

  ↓  ‡

習ファイル

デルの晃方 や考え方●9■■●■●●o・◎■g o

,■o●鱒■o・o o o o9

変化の速さが違うね,

んでそう考えたの?モデルの見方

や考え方●9900■o嬬顧■●瞼■・

』●●o■■●●⇔●o●●

900

図3.1.4 コミュニケーション活動のイメージ

● 「教師や学習者が学習課題を追加したり,学習者の理解度に

 応じて学習課題の数値を変更,条件の追加ができる機能」

 システムには事前にモデルの基本的な構造を設定している.モ

デル化とシミュレーションの学習では身近な生活に役立つ問題

解決能力の育成をねらいとしているため,学習者の興味や関心に

よって学習課題を設定する必要がある.そこで第3段階では教師

が学習者の興味や関心を基に学習課題を追加できる機能を持た

せる.しかしすべての学習課題の中から興味関心のあるものだけ

を解決させるのではなく,教師が学習段階に応じてモデルの基本

的な構造ごとに学習課題を表示し,その中で学習者が選択できる

ようにする.そこで学習課題の基本的な構造ごとに学習課題を選

択して表示できるようにする,この機能により教師が順序立てた

             ・41一

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通りに,つまり簡単な構造を持つ学習課題から複雑な構造を持つ

学習課題の順に学習者は学習を行う.また,学習者の理解度に合

わせて学習課題を変更する機能も作成する.学習課題を変更する

ためには学習課題データベースの中の課題のフィールドを変更

する必要がある,しかし変更すると元の学習課題が消えてしまう

ため,学習課題の数値の変更や設定条件の追加を行う場合には新

しく学習課題を追加する形式をとる.第4段階では初めに入力さ

れている学習課題に加え,教師や学習者の興味や関心に応じて学

習課題を追加することができるようにしている.この学習課題の

数値の変更や設定条件の追加、学習課題を蓄積する様子を図

3.L5に示す.

問題の蓄積

o o

諜の翻豫を入糠憾棚   物防の場合には水量はどのよ

糊㎜o o

うに変化するかシミュレーションしよう

60リットルの容器に入れる

) 欄  鵬

変化の速さが合計量に比例

金金額の時間的変化

獅 追加         問題の迫加

      6      0      一

学習者

変化の遽さが合酬

0の変化

図3.1.5 学習課題の数値の変更や設定条件の追加、

     学習課題を蓄積する様子

          一42・

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3.2 コミュニケーション学習支援システムの開発

3.2.1 コミュニケーション学習支援システムの開発と使用

環境

 これら3.1で示したような教育的機能を付加したシステムの

開発を行う.このシステムの開発にあたってはデータベースソフ

トであるFileMakerとMySQLを用いた.これらを用いた理由とし

てFileMakerは関口や陶山などが掲示板を用いた研究の実績が

あり,この技術を活用した.MySQLはモデルを作成するという動

的なコンテンツをWeb上で表現するJabaとの連携を図るために

用いた.JabaはWeb上で使用できるプログラムであり,これら

を使いWeb上で動かすことができるシステムを作成する,現在の

一般的な学校ではコンピュータネットワークが整備され,LAN

(LocalAreaNetwork)を用いてインターネットにアクセスする

ことができるようになっている.そのためサーバをネットワーク

に配置し,データベースを管理するように設計し,Webアプリケ

ーションとして実装することでネットワークを介した学習支援

システムを構築することが可能になる.また学習者が使用するク

ライアント側のコンピュータではシステムのGUIがWebPageとし

て表示されるため,これを閲覧するためには通常使用しているブ

ラウザを用いればよく,ソフトを追加して用意する必要はない.

3.2.2 システムの全体構成

 3.1で示したような教育的機能を実現するようなシステムを

構成するためには,モデルを作成する学習ファイルとコミュニケ

ーションを行う掲示板上を学習者が相互に移動できる必要があ

             ・43一

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る.学習者とコミュニケーションを行う学習支援システムの概念

図を図3.2。1に示す.

 クライアント表示画面

ログイン

インターネットトップ             r諾鋳驚

習課題の提示 ● ●

学習者A

 (学習ファイルの閲覧)学習ファイルの編集

掲示板

学習ファイルの閲覧

学習課題の追加 Wi馳サーバ

ユーザ認証用幽ブロクラム

学習フ7イル用b』ブロクラム

灘Wbhブロクラム 学習課題用bhブロクラム

 一ループ

B

学習ファイル

 DB掲示板

B学習課題

B

DB管理システム

図3.2.1 コミュニケーション学習支援システムの概念図(詳細)

 学習者は各クライアントコンピュータでWebブラウザを使用

し,インターネットを介してサーバに用意したプログラムにアク

セスする.サーバ上のプログラムは学習支援システムを介してそ

れぞれのデータベースから必要な情報を取得したり,データベー

スにデータを追加や編集をする.データベースにはユーザ・グル

ープデータベース,学習課題データベース,学習ファイルデータ

ベース,掲示板データベースを用意しておく.

 ユーザ・グループデータベースには学習者の名前とパスワード

があらかじめ記録されている.この名前をログイン名として主キ

ーに設定し,他のデータベースとの連携をユーザIDによって行

             ・44一

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う.このデータベースに入っているフィールドを図3.2.2に示す.

          ユ』サID           当麓          パスワード

図3.2.2 ユーザ・グループデータベースのフィールド

 学習課題データベースにっいては事前に第2章で示した授業

計画案の第3段階の実習で行わせる学習課題を登録しておく.こ

れらの学習課題とは別に第4段階で行わせる学習課題を教師が

データベースに追加,編集できるようにしておく.

 学習課題データベースには図3.2.3のようなフィールドを用

意している.登録目,登録時刻のフィールドはデータベースの整

理するために利用する.登録番号は学習課題を選択する際に使用

する.名前のフィールドにはログインした名前が自動的に入力さ

れ,教師が設定した学習課題か学習者が設定した学習課題かを判

別する.学習課題を追加する場合にはモデルの種類のフィールド

には「変化の速さが一定」「変化の速さが合計量に比例」「変化の

速さが目標値と合計量に比例」「確率的なモデル」のどの見方や

考え方を適応すれば解くことができるかラベルを付けておく.問

題の内容のフィールドには問題文を入力する.

瑚登綴o墾

  ‘鳶モ…Fルの㎜

陶■備

図3.2.3 学習課題データベースのフィールド

         ー45・

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 学習ファイルデータベースにはモデル図作成の画面で作成さ

れたモデル図と,その作成時の各操作について関連づけられたモ

デル化のための見方や考え方の組み合わせの記述が記録されて

いく.学習者に提示される学習ファイル編集用画面のHTML文書,

学習ファイルのWebプログラムにより作成される.学習ファイル

編集用画面は教師があらかじめ設定しておいた例題用のファイ

ルヘのリンクが埋め込まれており,学習者は第2段階の例題と解

答例を参照しながら学習ファイルを作成することができる.

 学習ファイルデータベースには図3.2.4のようなフィールド

を用意する.登録目,登録時刻,登録番号,名前はファイルの整

理や判別のために使用する.要素設定の考え方のフィールドには

学習者が要素を設定した際に,なぜこの要素を設定したのか理由

を書かせるフィールドとして用意する.また作成したモデルを記

録するフィールドとしてモデルというフィールドを設定する.モ

デルのフィールドにはモデル図のデータそのものを入力するわ

けではなくモデル図のあるアドレスを記録させる.

  蜘  登墨磯鎖一

  謝墾1   窃麓饗纂慶定o考え方

   モデル

 図3.2.4 学習ファイルデータベースのフィールド

 次に掲示板データベースには,学習者同士が行ったモデルの見

方や考え方についての議論が蓄積されていく.

 学習ファイルに提示される掲示板の画面は掲示板用のWebプ

             ー46・

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ログラムにより作成されるが,投稿記事の編集領域には学習ファ

イル閲覧用プログラムヘのリンクが埋め込まれている.学習者は

学習ファイル閲覧用プログラムヘのリンクを利用し,意見や質問

等の発言内容と見方の根拠や理由となる学習ファイルを関連さ

せて掲示板上に投稿できる.

 掲示板データベースには図3.2.5のようなフィールドを用意

する.登録目,登録時刻のフィールドは学習者の投稿目時を記録

する.登録番号,識別番号,表示番号のフィールドはデータベー

スの整理するために利用する.名前のフィールドにはシステムに

ログインしたときの名前が自動的に入力される.チャット内容の

フィールドには学習者の見方が入力される.

 翌翻日登鱒欝登鋒○畢

墜”o弓

轟鵜畢

轍 名曽チ・?輔

図3.2.5 掲示板データベースのフィールド

3.2.3 HTMLの作成

 コミュニケーション学習支援システムではログイン後すべて

の機能にリンク付けをおこなったトップページにアクセスする.

このトップページからは学習ファイル,掲示板,学習課題の作成,

基本的なモデルの解答事例,学習課題の選択するぺ一ジヘと移動

できる.これらのぺ一ジを作成にはMicrosoftWindowsに標準装

             一47一

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備されているテキストエディタを用いた.これらのHTMLファイ

ルの中でトップページ,基本的なモデルの解答事例,学習課題の

選択するぺ一ジはHTMLタグのみで作成する.

 コミュニケーション活動を行う掲示板にっいて述べる.この掲

示板上で必要なぺ一ジには「投稿された内容を表示するぺ一ジ」

(chat_a1Lヒtm1),「投稿を行うぺ一ジ」(chatjnput.htm1,

chat_input_re.htm1)がある.「投稿された内容を表示するぺ一

ジ」ではデータベースから送られてきたデータの登録の種類を読

み取る.この登録の種類によって新規投稿か返信かを判別する.

ここでの判断にしたがってデータベースから掲示板上に表示さ

せる内容も若干異なる.次に「投稿を行うぺ一ジ」について述ぺ

る.この投稿には新規投稿と返信投稿がある.これらの違いはデ

ータベースに記録時に新規投稿のぺ一ジから送信されたものに

はnew,返信投稿のぺ一ジから送信されたものにはreを記録し

判別する.

 学習ファイルの場合には要素が入力されたときにどのような

意図でその要素を設定したのか見方や考え方を記入するもので

ある.学習ファイルの中で「見方や考え方を蓄積するぺ一ジ」

(learn_all.html),r見方や考え方の記録を行うぺ一ジ」

(1earnjnput.htm1)がある.ここでは登録を行うのはモデルの作

成者のみである.そこで掲示板の新規投稿のみを使用し,記録す

ることを行う.

 学習課題の作成には「学習課題を蓄積するぺ一ジ」

(probrem_a1Lhtml),「学習課題の追加を行うぺ一ジ」

(probrem_input.htm1)がある.学習課題の追加を行う場合には,

             ・48一

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追加する学習課題が今まで学習してきたどの構造を用いれば解

決することができるかを同時に入力する.このときの入力を容易

にするために入力はチェックボックスを用いる.チェックボック

スを用いることで複合的な構造を持つ学習課題の場合に,解決す

るために必要な見方や考え方を複数選択できる.この基本的な構

造を設定することにより,教師が学習者の学習の進み具合や理解

度に応じて学習課題を提示でき,徐々に難易度の高い問題を提示

することができる.

・49・

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3.3 システムのインターフェイス

 次に学習者に表示する画面を示す.始めにシステムで表示する

画面の全体の概要を3.3.1に示す.

10幽

トッブ

学習課題選択コミュニケーション

 活動の場学習課題追加

学習ファイルの作成コミュニケーション

 活動の場

H吻

図3。3.1 システム画面の全体の概要

 システムを利用する際には初めにログインをする必要がある.

ユーザに提示されるログイン画面を図3.3,2に示す.ログイン画

面に入力されたログイン名とパスワードをユーザ・グループDB

へと送られユーザ名とパスワードについて判別を行う.この様子

を図3.3.3として示す.ログイン後,ユーザは自分のrログイン

名」「パスワード」を学習ファイルを個別に編集したり,掲示板

へ意見を投稿するために使用する.ログインを行うと図3.3.4の

トップ画面へと移動する.

・50・

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ログイン名

パスワード

    b顧 瀬瞬

図3.3.2 ログイン画面

インターネット

クライアント表示画面

    ⊇tlき= 0 ●     闘)

    学習者A    ログイン

W馳サーバ

ユーザ認証用

W馳ブロクラム

 グルーブ

  DB

DB管理システム

図3&4を表示へ

図3.3.3 ログイン画面とデータベースの関係

 ログインが終わると次にトップ画面が現れる.このトップ画面

を図3.3.4に示す.トップ画面はコミュニケーション学習支援シ

ステムの各画面へ移動できる起点となるぺ一ジであり,それぞれ

の各画面を持つぺ一ジヘリンク付けがされている.

・51・

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図3.3.4 トップ画面

 次に学習課題選択の画面を図3.3.5に示す.学習課題選択の画

面に表示される学習課題は事前の教師からの設定により限定さ

れたものが提示される.なお,教師がログインしたときのみに表

示される設定画面で,モデルの基本的な構造に対応するラベルを

選択しておくことにより,学習者に提示する学習課題の限定を行

うことができる,学習者は教師の事前の設定により制限された学

習課題の中から,学習者は興味関心に応じて学習課題を選択する.

学習者への表示画面と学習課題DBの関係を図3.3.6に示す.学

習者が学習課題の登録番号を入力しサーバに送信すると,Webプ

ログラムはその登録番号を持つ学習課題を学習課題DBから抜き

出す.同時にログイン名も用いて学習ファイルDBから学習課題

に対応する学習ファイルを抜き出す.新規の場合についてもこれ

             一52一

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に各要素を設定していく。各要素をドラッグアンドドロップする

と同時にモデルの見方や考え方を記入するテキストボックスが

下に現れる.テキストボックスに記入した内容は「見方や考え方

を記入する場」と書かれた上段のフィールドに蓄積される.モデ

ル作成の途中で次の手順がわからない学習者に対してモデル化

の手順をhelp機能として提示できるようにする.どのようなモ

デルを作成すればいいのかわからない学習者に対して第2段階

で行った学習課題の解答例を提示できるようにする.またモデル

の作成途中で様々な疑問が起こることも考えられる.そこで他の

学習者に質問することができるように掲示板へのリンクも設定

している.

 見方や考え方を追加や変更を行った場合にはWebサーバを通

じて学習ファイルDBに記録し,記録した内容を学習者の画面へ

反映させている.この情報の流れを図3.3.8として示す.

・54一

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回圃凹

ドラッグ&ドロヅヲ

に対応しr磯示

 掲示振へのリンク

    圃塊団

モデル作鮒

図3.3.7 学習ファイル編集画面

インターネット

クライアント表示画面

● ●

物吻剛 晒サーバ

学習フ7イル用W馳ブロクラム

学習者A

モデルの作成 ルイ》DB轄

DB 理システム

図3.3,8 学習ファイル更新時の情報の流れ

    ・55・

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 次に掲示板について示す。掲示板の画面を図3.3.9に示す.コ

ミュニケーション活動として見方や考え方について疑問や質問

を新規投稿する.投稿に対する返信は新規投稿の内容の右に表示

される「返信」のリンクを押すことで新規投稿のフレームが返信

投稿のフレームに変わる.返信内容を書き投稿することで返信内

容が新規投稿の上に蓄積されていく.新規投稿には投稿番号が投

稿順に蓄積されていく。返信の場合には投稿番号にはre:が入力

され返信であることを示す.掲示板ではコミュニケーション活動

を行う中で発言者の見方や考え方を知ることで発言者の意図を

理解することができる.コミュニケーションを活発に行うために

発言者の見方や考え方である学習ファイルを参照,閲覧すること

ができるようにする.学習ファイルを閲覧することで発言者の見

方や考え方を理解しやすくなり議論が活発になると考える。この

掲示板の画面とデータベースの関係図を図3.3.10として示す.

            コミュニケーシ増ン話動の唱    発言者の学習ファイルヘの’監ノク

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遍僑のマーク

  卿こすると.ホ釦置,コ解*量6温λ逡霞・曜過絢眉マ憐サこと,7・で3う.               り

 躍炉らo                                    o

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輔湘

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    図3.3.9

         . .         .1 』』

』劃趣』      ]

        二一門一r 「「” ~鰯一障一

掲示板の画面のインターフェイス

    ・56一

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インターネット

ミ板の投稿内容を反映

クライアント表示画面

o o

〉   学習者A   掲示板画面

柵示板の投稿情報   W凶サーバ

     \W馳ブロクラム

掲示板

DB

DB理システム

図3.3.10 掲示板の画面とデータベースの関係図

 掲示板から他の学習者の見方や考え方を知るために他の学習

者の学習ファイルを図3.3.9から参照することができる.参照し

た学習ファイルのインターフェイスを図3.3.11に示す.ここで

は学習者が他の学習者のモデルを勝手に変更ができないように

する必要がある.他の学習者の学習ファイルを変更できないよう

にするためにモデルの操作を行うアイコンの部分を表示させな

いようにする.この情報の流れとDBとの関係を図3.3.12として

示す.

・57一

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一菖附

           見方や噂爆記入サる燭

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2006/Ol’,520』G50   こ¢糊で刷騨圃睡=と咤盛こ塊区てし鰍岡3オqg』『まっご達1b碗}

図3.3.11他の学習者の学習ファイルを参照したときのイン

     ターフェイス

インターネット

他の学習者の学習フ7イル翼求

クライアント表示画面

的)

W臆サーオ

W画プロクラム

学習者A

掲示板画面

学習ファイル用

Wb』ブロクラム

掲示板

DBルイ路轄

理システ

図3.3.12 他の学習者の学習ファイルを参照したときの情報の

      流れ

 最後に学習課題の追加画面のインターフェイスを図3.3.13に

             ・58一

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示す.学習活動で使用する学習課題には3つのものがある.1つ

は事前にシステムに入力してあるもの,1つは教師が学習者の理

解度や興味,関心によって追加,変更するもの,最後に学習者が

自らの興味や関心によって設定する問題である.システムでは学

習課題を追加する画面から追加する情報を学習課題DBへ送り,

Webプログラムで追加した学習課題を反映させて学習者の画面に

表示する.この様子を図3.3,14として示す.

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図3.3.13 学習課題の追加画面のインターフェイス

・59・

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            インターネット

                        学習課題の追加を反映

クライアント表示画面             W山サーバ                  \

 O●  弩凱、                W画プログラム

)    学習者A    学習課題の追加画面        学習課題

                      DB

                    DB 理システム

  図3.3.14 学習課題を追加する際の情報の流れ

一60・

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3.4 システムの評価

 本研究ではモデル化とシミュレーションの見方や考え方を知

り,実際の問題解決へ活用できるようにするために実習を中心と

してコミュニケーションを行いながら学習できる学習環境の開

発を行った.この作成した学習環境を実際に普通教科r情報」を

教える教員に見てもらった.このときのコメントや改善点につい

て示す.

 評価をお願いした教員は主に普通教科「情報A」を教えている

教員であるが「情報B」にも精通している.

●学習課題ごとにコミュニケーション活動の場を設定した方が

 よい,

 学習者がコミュニケーションを行う時に学習課題によって見

方や考え方が異なるため学習課題によってコミュニケーション

活動の場自体を分けた方がよいという指摘を受けた.システムで

はコミュニケーション活動を行う場へはトップページからと学

習ファイルを関連づけている.トップページからコミュニケーシ

ョンの場へ移動する際には学習課題の内容を超えた疑問や質問

ができる場として設定し,学習課題の見方や考え方などの内容に

関する疑問やコミュニケーションは学習課題選択後のコミュニ

ケーションの場で行う.学習課題によってコミュニケーションの

場を設定することでコミュニケーション活動を活発に行えるよ

うにする。

・61一

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●様々な理解度の学習者がいるため,それぞれに応じた援助が

 必要である.

 実習に入る際には学習者の理解度に差ができていると思われ

る.そこで学習者の理解度に応じて手助けを行えるようにする必

要がある.この内容に関しては学習環境システムの中にヘルプ機

能で対応できる.理解度の高くない学習者にはモデルの基本的な

構造を見られるぺ一ジを設定したり,モデル化の手順を1ステッ

プごとに提示できるようにしている.また,モデルを作成する上

で生じた疑問や質問を行える場も設定している,理解度の高い学

習者に対しては学習課題を変更してシミュレーションに与える

影響について予測させる.学習者の理解度に応じた学習方法を考

慮しいくつかの援助を設定した.

●学習が進むとモデルの見方や考え方の記載が多くなってくる

 が,多くなればモデルのどの部分に対するコメントかすぐに

 判断できなくなる.

 システムではモデルを作成する上でアイコンを設定すること

で見方や考え方であるアイコンを設定した理由について記述し

蓄積していく.見方や考え方の設定理由を記述する際にモデルと

コメントの対応が明確な方がよいという指摘を受けた.モデルを

作成する際には図記号を用いるが,この図記号を設定した際に見

方や考え方の記録するコメント欄が出現する.このときに設定し

た図記号が他の色などで示されて記録するとコメント文を見る

だけで,どの動作に対する見方や考え方かが明確になるという指

摘を受けた.そこでモデル図を記録する際には最後に設定したア

             ・62一

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イコンの色を変えて保存できるようにする.

●モデル図と同時に考え方を書かせることは有用であるが,生

 徒はシミュレーション結果を早く見たいために飛ばすことも

 考えられる.

 確実に見方や考え方を身にっけさせるためにはモデルの見方

や考え方を記述し検証を行う必要がある.しかし学習者の中には

見方や考え方の記述をせずにシミュレーション結果を重視し,試

行錯誤的にシミュレーションすることが考えられる.実際の問題

解決には要素が複雑に関係しているため,モデル化の目的と照ら

し合わせてどこまでモデル化する必要があるのか,シミュレーシ

ョンの結果が妥当かを他者と検証するために,見方や考え方の説

明を行う必要がある.見方や考え方を学習する段階では見方や考

え方について記述し,見方や考え方を定着させることが重要にな

る.学習が進み十分に見方や考え方について理解を得られれば,

見方や考え方をについて記述する必要はなくなる.このためシス

テム的に必ず見方や考え方を入力しなければいけないようにす

ることは行わない.

 そこで見方や考え方が定着していない学習者,モデル図とコミ

ュニケーションとの関係についてうまく説明できない学習者に

対して教師は学習者の考えを表現できるようにするためのアド

バイスとして見方や考え方の理由を書くように助言を行うこと

にする.

・63一

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おわりに

 本研究では高等学校普通教科「情報B」モデル化とシミュレー

ションにおいて,身の回りの現象を通じて問題解決の見方や考え

方の育成するために,教科書を基本としていくつかの学習段階を

設定した授業計画案を作成し,実習を中心とした学習をおこなう

ための学習環境の開発を行った.

 初めてモデルを作成する学習者が容易にモデルを作成でき,モ

デルを作成する上での見方や考え方にっいて理解を得られるこ

とを目指してモデルを作成するシステムを構築した.モデルを作

成するためにモデル化の手順を示すガイド機能やコミュニケー

ション活動を行いモデル化とシミュレーションの見方や考え方

について議論する場を設定した.コミュニケーション活動は学習

者の疑問を解消したり,議論の中から新しいアイデアが生まれる

場として作成した.モデルの見方や考え方の変容や学習者のコミ

ュニケーション活動を蓄積し,学習者の考え方の変容が客観的に

把握できるようにした.

 確率的な現象を含むモデルについてはシステムに実装すると

ころまで至っていないが,確率的な現象を表現する要素のアイコ

ンを用意することで,学習者がモンテカルロ法の考え方に従って

モデル図上に確率的な要素を設定することが可能である,開発し

たコミュニケーション学習支援システムについては,今後授業の

場面で使用し,学習者の変容について検証を行う.

一64一

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謝辞

 本研究を進めるにあたり,兵庫教育大学教育方法コースの正司

和彦教授をはじめ,金丸晃二助教授,天根哲治助教授,黒岩督助

教授,伊藤博之講師,掛川淳一助手,総合学習系教育コース森廣

浩一郎助教授の諸先生方に終始懇切丁寧なご指導をいただきま

した.ここに深く感謝申し上げます.

 またシステムの評価をしていただいた方々にも深くお礼を申

し上げます.

 ここに,2年間の大学院での研修成果として修士論文をまとめ

ることができました.特に正司研究室においては研究に対する姿

勢を学ばせていただきました。また,同研究室にともに在籍され

た方々から,数多くのご示唆をいただき感謝の念にたえません.

今後一層の精進で学恩に応え,教育に携わっていきたいと思いま

す.

2005年12月20目

   藤原 雅彦

一67・