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小児看護学実習 実習指導案 ~ガブリンチョ!悩める笑 えみ の奮闘記~ 山本美由紀 小林さおり 大島 直実 那須史寿子 吉岡 美果 小児看護学講師 吉永 純子
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小児看護学実習 実習指導案 ガブリンチョ!悩める笑の奮闘記 ·...

Feb 24, 2020

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Page 1: 小児看護学実習 実習指導案 ガブリンチョ!悩める笑の奮闘記 · 小児看護に必要な知識と技術を習得し、小児の成長発達を学び、健康上の問題を持つ小児の

小児看護学実習 実習指導案

~ガブリンチョ!悩める笑えみ

の奮闘記~

山本美由紀 小林さおり 大島 直実

那須史寿子 吉岡 美果

小児看護学講師 吉永 純子

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小児看護学実習 実習指導案

~ガブリンチョ!悩める笑え み

の奮闘記~

山本美由紀 小林さおり 大島直実

那須史寿子 吉岡美果

小児看護学講師 吉永純子

Ⅰ.はじめに

近年、核家族化・共働き世帯が増え、家庭での保育が困難となっている。その為、集団生活の場も

増え、感染症に罹る率が高い。小児は上手く症状を訴える事ができず、また生理的機能の未熟性によ

る予防能力の低さや抵抗力の弱さなどから症状が急速に進行し、重篤化しやすい特徴がある。

小児看護は、患児の援助と同時に家族の援助が必要になる。親が子どもの疾病や障がいに対して理

解し治療の意思決定をしていくための情報提供や、思いを傾聴する必要がある。さらに、患児をとり

まく環境を全体的にとらえてサポートする事が看護師の重要な役割である。

小児看護学実習における学生の『病気が患児・家族に与える影響』『小児の成長・発達段階に応じた

援助』を理解し、関わることを目的として指導案を作成したので報告する。

Ⅱ.仮説校の設定

大吉看護専門学校 3年課程

1.学校の理念

看護職として必要な知識・技術を習得し、個人や家族や地域社会特有な健康問題に対応できる看護

師の育成を目指すものである。資格を取得するための基礎的知識や技術の習得のみでなく、心身とも

に健康で調和のとれた1人の社会人として成長する事に教育の力を注ぎたい。さらに専門職業人とし

て、地域社会のニーズに対応できるよう社会性・創造性・誠実性を高めようとする心を持ち、自己の

可能性を探求し続ける態度の育成を目指している。

2.教育目的

看護師として高い倫理観のもと、必要な知識・技術・態度を身につけ、多様化するニーズに対応し

地域社会に貢献できる豊かな人材を育成する。

3.教育目標

1)人間を身体的・精神的・社会的に統合された存在として理解し、尊重できる豊かな心を養う。

2)人々の健康と生活が自然・社会・文化的環境との相互作用により幅広く影響を受けている生活者

として理解できる能力を養う。

3)人々の健康上の課題に対応するための科学的根拠に基づいた看護を実践する基礎的能力を養う。

4)健康の保持増進、疾病の予防と治療、リハビリテーション、終末期など健康や障がい、加齢に伴

う状態の変化に応じた看護を実践するための基礎的能力を養う。

5)保健・医療・福祉におけるチームの一員として他職種と共同できる基礎的能力を養う。

6)専門職業人としての共感的態度及び倫理に基づいた行動が出来るとともに生涯にわたり自己啓発

ができる能力を養う。

Ⅲ.臨地実習の目的・目標

1.目的

人間を統合された存在としてとらえ、学習した理論・知識・技術を実際に活用・理解し、看護の

実践能力を養う。

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2.目標

1)対象を全人的に理解し、個別性に応じた看護過程の展開ができる。

2)科学的根拠に基づいた看護技術の習得ができる。

3)保健・医療・福祉・教育などの医療チームのメンバーと連携して活動することの重要性が理解で

きる。

4)看護実践を通じて自己の看護観を養う。

5)看護の向上を目指し自ら探究する学習態度を養う。

Ⅳ.小児看護学実習の目的・目標

1.目的

小児看護に必要な知識と技術を習得し小児の成長発達を学ぶ。また、健康上の問題を持つ小児の

特性を理解し、家族を含めた看護を実践できる能力を養う。

2.目標

1)小児の成長・発達の特徴が理解できる。

2)健康上の問題を持つ小児や家族の状況を理解し、発達段階に応じた看護過程の展開ができる。

3)小児看護における看護技術及び、治療、介入方法を習得する。

4)入院・疾病が小児、家族へ及ぼす影響を理解し、保健、医療チームの役割について理解する。

5)小児の安全を守るために必要な看護管理の実際について理解する。

6)小児看護に携わる職業人として必要な態度を身につける。

Ⅴ.実習指導計画書

1.科目 小児看護学実習

2.実習期間

平成 25 年 6 月 6 日~19 日 (2 週間) 水曜日は学内演習

3.実習病棟名 小児病棟(小児科、小児外科・眼科・耳鼻科などの混合病棟)

4.実習単位 小児看護学実習 2 単位 (90 時間)

5.設定条件

1)病棟の規模 5)病棟の週間予定

ベッド数 40 床 看護師 38 名

2)入院患児の状況

急性期・慢性期

対象年齢:0~15 歳

3)看護体制

固定チームナーシング・受け持ち制

4)実習指導体制

師長、副師長、実習指導者 2 名

週間予定表

日 回診(毎日)

入浴(毎日)

(医師入浴許可後に限

定)

清拭、部分浴(毎日)

季節行事(七夕・夏祭り・

クリスマス)

水 体重測定

木 シーツ交換

金 病棟カンファレンス

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6)病棟設備

プレイルーム(テレビ、ビデオ、図書設備) 学習室

7)病棟の日課

6:00 起床介助 モーニングケア 時間薬投与 各種検査

7:00 朝食・朝食介助 与薬 歯磨き

8:30 申し送り

9:00 検温 回診(処置)

10:00 清拭・部分浴・洗髪

12:00 昼食・昼食介助 与薬 歯磨き

14:00 検温 入浴許可患児の入浴介助 退院予定者の退院指導 時間薬投与

16:00 申し送り

18:00 夕食・夕食介助 与薬 歯磨き

19:00 検温 イブニングケア

20:00 時間薬投与 消灯

6.受け持ち患児の設定

名前:桐生ダイゴ

性別:男児 年齢:5 歳

病名:ネフローゼ症候群

既往歴:1 歳のとき肺炎で入院

性格:活発、やんちゃ、甘えん坊、

家族背景:父親 28 歳(会社員)、母親 25 歳(専業主婦)、妹 3 歳の 4 人暮らし

両親の実家は福岡県 転勤族で周囲の協力が得られにくい

好きな遊び:キョウリュウジャーごっこ、歌やダンス

入院日:平成 25 年 6 月 4 日

受け持つまでの経過

2 週間前に咳・発熱があり、1 日だけ幼稚園を欠席した。翌日には症状が軽快し、いつも通り登

園した。2~3 日前より瞼が腫れていたが放置し、起床時に下肢の腫れがひどくなっていたため、

かかりつけ医を受診し、尿蛋白(3+)のため当院紹介にてネフローゼ症候群と診断され緊急入院と

なる。入院日よりステロイドパルス療法が開始され、本日で 3 日目となる。明日点滴抜針予定。

妹を自宅で見てくれる人もいない為、医師の許可を得て、個室で一緒に過ごしている。

病気に対する受け止め方

患児:「もうここイヤ。帰りたい。」「お菓子とジュースが欲しい。」

母親: 「今までこんな病気なんて知らなかったし、おしっこの量まで気にしたことなかったです。

急に入院になって下の子を見てくれる人がいなくて、本当に困ります。しばらく薬を飲み

続けろと言われて・・・。風邪にも気をつけるよう説明を受けました。」と話している。

7.学生のレディネス

既習学習内容:看護研究を除き、講義科目は全て終了

臨地実習体験:保育実習は 2 年次後期に終了

統合分野実習以外全ての実習は終了

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学生の個人的特徴

小那山 笑(こなやま えみ) 女性 20 歳 3 年生

両親と 3 人暮らし(実家から通っている) 一人っ子 性格は明るく素直で子供好き

学生グループメンバー

学生名 受け持ち患児

A 子(20 歳) 気管支喘息

B 男(20 歳) 急性気管支炎

C 子(20 歳) 急性胃腸炎

同じグループで実習を進めているため、まとまりがあり全員協力的である。グループメンバーは

学習能力にばらつきはなく、積極性があり小児実習への関心は高い。

学生のレディネス 既習学習 →未習学習

Ⅵ.指導方針

1.教材観

臨地実習は、人間のライフサイクルを継続的に捉え、対象理解と健康レベルに応じた看護を学ぶ

機会である。対象は、生きるための力をつける人生初期の大切な時期にある小児やその家族であ

る。小児看護に必要な知識と技術を習得し、小児の成長発達を学び、健康上の問題を持つ小児の

特性を理解し、家族を含めた看護を実施できる能力を養う必要がある。

小児ネフローゼ症候群は特発性のことが多く、急な入院や長期の入院、安静、食事療法、薬物

治療が必要となる。子どもと家族にとって、今までの安全な家庭環境から病院という不自由な環

境に変わり精神的ストレスとなる。療養環境によるストレスを少しでも軽減させ、安静を重視し

学生 1 年 2 年 3 年

前期 後期 前期 後期 前期 後期

基礎分野

専門基礎分野

基礎看護学

成人看護学

老年看護学

小児看護学

母性看護学

精神看護学

基礎看護学

成人看護学Ⅰ

成人看護学Ⅱ

老年看護学

小児看護学

母性看護学

精神看護学

統合

分野

在宅看護論

看護の統合と実践

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た遊びを取り入れた関わりが大切である。また、この時期の幼児は、ルールを守り言葉による説

明を理解できるようになっているが、好奇心や欲求不満から安静や安全が守られないこともある

ので、保護者へのインフォームドコンセントや、子どもへのインフォームドアセント及びプレパ

レーションの重要性の理解と実施が必要である。したがって、子どもへの関わり方を深めると共

に、看護者としての態度や役割について看護実践場面を通して考えることが必要である。

2.学生観

現代の学生は少子化、核家族化などの社会環境の影響を受け、人間関係を築くことに苦手意識を持

つ傾向にある。同様に子どもがどのようなものかわからずに、子どもはかわいい、楽だと思いこみ小

児実習に臨む学生もいる。また、子どもと接する経験が少ないため、子どもとのコミュニケーション

に不安や戸惑いを感じる学生も多い。

小那山さんは3学年前期であり、臨地実習も統合分野を残すのみとなった。これまでの実習では、

患者への対応も徐々にスムーズに行えるようになり、コミュニケーションには自信を持つようになっ

てきている。成績は中で事前学習も問題なく行ってきている。ただ、何事も深く考えず、行き当たり

ばったりの楽観主義な面があり、事前学習を実習の学びにつなげていくことが不十分であった。実習

も最終段階を迎えようとしているので、知識と経験を結びつけ、今後に活かせていけるような指導が

必要である。一人っ子で、会社を経営する父と専業主婦の母との3人暮らしである。自宅から通学し

ており、日常生活のことはほぼ母親に任せており、何不自由なく甘やかされて育てられている。性格

は明るく素直で前向き、子ども好きで本実習に高い意欲を示している。

3.指導観

本実習では、成長発達し続ける子どもとその家族を理解し、各健康段階にあった看護を実践するた

めの基本的な能力を養うことをねらいとしている。

小児看護実習では、対象の疾患・病態生理・病状を理解し、成長発達に配慮した看護援助が実施で

きる能力が求められる。子どもの欲求・要求通りに介入していくのではなく、その子どもの健康段階

において何が大事なのかという視点をもって看護する事が重要となる。また、子どもが嫌がる治療や

処置を、理解させ克服させるために、遊びを交えてインフォームドアセントやプレパレーションを行

うよう指導する。

子供に接する機会の少ない学生にとって、小児看護学実習は、これまでの実習以上に不安や緊張が

強いものである。したがって、指導者は実習に対する不安や緊張を緩和するような関わりを持ち、子

どもの権利擁護者として、どのような介入が子どものためになるのかを具体的に指導していく。さら

に、患児だけでなく家族への支援についても学生と共に考え、学ばせることが必要となる。

Ⅶ.実習指導計画

1.週案:第 1 週目の指導計画(6 月 6 日~6 月 10 日)

学習目標

1)小児病棟の特徴を理解する。

2)受け持ち患児の情報収集をし、患児の全体像を把握する。

3)受け持ち患児の全体像を整理し、分析し看護計画を立案できる。

4)受け持ち患児の看護計画に沿った看護が実践できる。

5)小児看護における基本技術を実践できる。

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指導目標 指導内容 指導方法・留意点

1週目

1.小児の成長・発達

と小児期の特徴を

理解する。

2.受け持ち患児及び

その家族とコミュ

ニケーションが図

れ、得た情報から全

体像が把握できる。

3.収集した情報をア

セスメントし看護

計画を立案できる。

4.受け持ち患児の成

長・発達に応じた日

常生活の援助を実

践できる。

5.小児看護における

基本技術を実践で

きる。

1)オリエンテーション

・小児科病棟の特徴的設備・患児

の療養環境の理解

・患児の特徴の理解

1)受け持ち患児の成長・発達段階

を観察し評価する

2)病態生理・検査・治療・処置

3)日常生活、基本的生活習慣の自

立状況

4)入院や健康障がいが児や家族に

及ぼす影響について

1)患児の状況から看護問題の抽出

2)看護診断名の選択

1)小児の安全を守るために必要な

環境について

2)食事の援助

3)排泄の援助

4)睡眠の援助

5) 清潔と更衣の援助

6)移動および活動の援助

7)患児の適した遊びの援助

1)バイタルサイン測定

2)身体計測

3)診察介助

4)与薬介助

5)検査・処置などの介助

・病棟内を案内し設備についてオリエ

ンテーションを実施、小児病棟の特

徴を強調する。

・病棟内の日課、受け持ち患者につい

て説明する。

・事前学習を確認する。

・患児と関わりを通して行わせる。

・家族とコミュニケーションが図れる

よう配慮する。

・カルテ等の記録物からの情報収集の

方法を説明する。

・受け持ち患児の検査スケジュール等

は事前に伝えておく。

・関連図と思考を整理しカンファレン

スでの発表の機会をもち、助言する。

・看護診断名を確認し、患児の状態に

応じた看護計画であるか確認・助言

する。

・病棟の安全管理について説明する。

・事故発生時の報告・連絡・相談の対

処方法を伝えておく。

・学生自身が感染の媒体にならないよ

う、感染予防に留意する。(必要時は

デモンストレーションの実施)

・スタッフの行う援助を見学する。

・スタッフとともに実施する。

・事前学習や技術を確認し、状況に応

じて学生に実施させる。

・援助後の学生の反応を観察し、必要

時質問をする。

・スタッフの行う援助を見学する。

・スタッフとともに実施する。

・事前学習や技術を確認し、状況に応

じて学生に実施させる。

・援助後の学生の反応を観察し、必要

時質問をする。

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2 週目指導計画(6 月 13 日~6 月 17 日)

学習目標

1)受け持ち患児の看護計画に沿った看護を実践し、評価できる。

2)地域の社会資源を理解し、継続看護の必要性が理解できる。

3)カンファレンスにおいて実習を自己評価し、学んだことを確認でき、今後の課題を明確にする。

指導目標 指導内容 指導方法・留意点

2週目

1.看護計画、日々

の計画に沿った

看護を実践し、

評価できる。

2.受け持ち患児の

成長・発達に応

じた日常生活援

助 を実 践で き

る。

3.小児看護におけ

る基本技術の実

践ができる。

4.受け持ち患児を

通して他職種と

の 連携 を理 解

し、小児看護の

役割を学ぶこと

ができる。

5.カンファレンス

において実習を

自己評価し、学

んだことを確認

することで今後

の課題を明確に

する。

1)患児の状態に応じた看護

2)受け持ち患児の記録・報告

1)小児の安全を守るために必要

な環境

2)食事の援助

3)排泄の援助

4)睡眠の援助

5)清潔と更衣の援助

6)移動および活動の援助

7) 患児に適した遊びの援助

1)バイタルサイン測定

2)身体測定

3)診察介助

4)与薬介助

5)検査・処置などの介助

1)医療チームの成員・役割・連

絡方法

2)社会的資源の活用の方法

1)カンファレンスの実施

2)実習目標達成の自己評価

3)今後の自己課題の明確化

4)実習体験の共有

・行動計画がその日の患児の状態にあ

っているかを確認し助言する。

・実践の振り返りを行う。

・計画修正について助言する。

・観察ポイントに沿って、報告・記録

ができているか確認する。

・学生が実施(環境整備の意義の関連)

・実施前後の報告・連絡・相談ができ

ているか確認する。

・学生自身が感染の媒体にならないよ

う、感染予防の実施ができているか

確認する。

・援助後の学生の反応を観察し、必要

時発問する。

・学生に実施させる。

・測定値についての学生の判断を聞く。

・実施後のフィードバック、発問する。

・受け持ち患児で経験できない技術項

目等、他の患児等で見学ができるよ

う考慮する。

・チーム間の連携の場面を見学する。

・チーム間の連携や社会的資源の活用

方法についての理解度を確認し、補

足説明する。

・小児看護の役割や小児への看護観が

深められるようディスカッションさ

せる。

・実習を振り返り、喜びや困ったこと

を問いかける。

・今後の課題について意見交換させる。

・実習終了の達成感をともに喜び評価

する。

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3.日案

時間 指導目標・内容 指導方法 留意点

6 月 6 日

実習 1 日目

9:00

10:00

オリエンテー

ションを行う

ことで患児の

療養環境を理

解できる。

患児の看護に

必要な情報の

収集ができる。

受け持ち患児

への挨拶

・情報収集の仕

・患児の看護に

必要な情報

・オリエンテーションを行う。

口頭で説明した後、病棟内を案内する。

・オリエンテーション終了後に内容が理解で

きたか確認し、不明な点があれば助言、補

足する。

・受け持ち患児について説明する。

・受け持ち患児への紹介時には、一緒に訪室

し患児に挨拶させる。

・カルテその他の記録物から、受け持ち患児

の情報を収集させる。

・分からないところは積極的に質問するよう

伝える。

・守秘義務を守るよう説明する。

・調べたい内容があれば病棟の参考資料を使

用できることを伝える。

◆実習指導者と受け持ち患児ダイゴくんへ

の挨拶

◆母親は妹を抱っこして疲れた表情で椅子

に座っている。

◆挨拶をして部屋を出た。

・学生の顔色や表情

を見て体調や緊張

度を把握する。

・患児の生活環境を

どのようにとらえ

たか確認する。

・必要に応じ記録し

ているか確認する。

・必要な事前学習は

できているか確認

する。

・発達段階をとらえ

て情報収集できて

いるか確認し、でき

るだけ学生が気づ

くことができるよ

うにする。

・指導者自ら笑顔を

心がけ、学生の緊張

をほぐすことがで

きるよう配慮する。

ダイゴ君「おはよう。」ベッドでじっと寝て

いる。

小那山さん:ダイゴ君大人

しくてかわいらしい子だ

な。何かお母さん疲れてる

みたい。でも何で妹も一緒

にいるんだろう。

小那山さん「おはようございます。今日

から、ダイゴ君と一緒に病気のお勉強し

に来た小那山笑です。よろしくお願いし

ますね。」

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時間 指導内容 指導方法 留意点

6 月 6 日

実習 1 日目

10:00

14:00

感染予防を考

えて日常生活

援助ができる。

患児の状態把

握・バイタルサ

イン測定・一般

状態の観察

日常生活援助、清潔ケア全般、感染予防、手

洗い

・ステロイド使用時の注意点を述べさせる。

・ステロイド使用時の感染予防方法について

述べさせ、実施させる。

◆午後からカルテで今までの状態など情報

収集をして、ダイゴ君の検温のため指導者

と一緒に訪室する。

・理解できるところ

は褒めて自信をつ

けさせ、次の行動へ

移しやすいよう助

言する。

指導者:「そうよね。勉強してきてるね。ど

うしても妹を見てくれる人がお家にいな

いから、九州からおばあさんが迎えに来て

くれるのを待ってるの。先生からの許可も

出てるから大丈夫なのよ。最近は核家族も

多くて、感染対策の管理が難しくなってき

てるのよ。こんなときはどんなことに気を

つけたらいいか、考えてみて。」

ダイゴ君:「うん。」

ベッドで大人しくしている。

小那山さん :やった!勉強してきてよか

った。褒められたらやる気も湧いてく

る。この指導者さんでよかった。また帰

って感染対策について考えてこよう。

小那山さん「面会制限があると聞いてい

たんですが、同じ部屋に妹さんはいても

いいんですか?」

小那山さん:「ダイゴ君、お昼からのお熱測

らせてもらうけどいいかな。」

ダイゴ君:「痛っ!やめてよ!触ったらいか

んの!」怒っている。

小那山さん:脈を測ろうと点滴の入っている

方の手を触った。

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時間 指導内容 指導方法 留意点

6 月 6 日

実習 1 日目

14:00

6 月 13 日

実習 5 日目

10:00

受け持ち患児

の状態を把握

し診断できる。

◆小那山さん検温を終える。

一般状態の観察の仕方

バイタルサイン、顔色、尿量、浮腫、機嫌、

検査データ、エコー所見、食事量、水分出納

チェック、睡眠状況

・ステロイド使用中の観察項目について述べ

させる。

・バイタルサイン、状態の報告とともに観察

項目について確認し、不足部分は助言する。

・なんでも分からないことは質問するように

伝える。

◆母親の表情が疲れている。

◆ダイゴ君はベッドの上で家から持ってき

たおもちゃを持ってキョウリュウジャーの

踊りを踊っている。

・常に指導者が見守

っていることで安

心感を与える。

・患児がリラックス

して援助が受けら

れる方法に気付か

せる。

・学生の体調や緊張

度を把握する。

・情報収集の状況を

把握するために適

宜声かけする。

・話やすい雰囲気を

かもし出すように

する。

小那山さん :しまっ

た。点滴の入っている

手を触ってしまった。

指導者:「ごめんね。大丈夫?こっちはダイ

ゴ君の大事な手だもんね。反対の手で測

っていい?」

ダイゴ君:「怖いから触らんとって。こっち

の手ならいいよ。」怒りながら話す。

6 月 8 日(水)は学内演習のため臨地実習は休みであった。

祖母が妹を迎えに来て九州の実家に帰った。

6 月 9 日(木)10 日(金)

小那山さんは、ダイゴ君が大人しい子だと思い、遊びに折り紙

とお絵かきをしようと計画を立案し、実習に臨んでいた。ダイ

ゴ君は母親の愛情を独り占めでき、機嫌良く過ごしていた。

小那山さん:何も考えず近く

にある手で脈を測ろうとし

てしまった。やっぱり点滴入

っていることは怖いんだな。

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時間 指導内容 指導方法 留意点

6 月 13 日

実習 5 日目

10:00

◆ゴミ箱にお菓子のくずが捨ててあること

に気づく。

◆お菓子の事を聞けずに検温を終え退室す

る。

・患児・家族とのコ

ミュニケーション

の方法がよくわか

らない場合は実践

モデルとなり、学ば

せる。

小那山さん:「ダイゴ君、せっかく点滴なく

なったのに、ベッドで踊ったらまた具合が

悪くなるよ。お熱測るから座ろうか。」

小那山さん :先週は大人しかったの

に。どうしたんだろう。安静にする

ように言わなくちゃ。お母さんも疲

れてるみたい・・・。

小那山さん:あれ?食事制限して

いるのにお菓子の袋が捨ててあ

る。誰が食べたんだろう。ダイ

ゴ君にあげてるのかな。

指導者:「そうなの。知らなかったわ。あり

がとう。お母さんに何か聞いてみた?」

?」

指導者:「じゃ、今から一緒に聞きに行こ

うか。まだ食事制限や水分制限もあるか

ら確認しとかないとね。」

小那山さん:「えっ!聞いてないです・・・。」

小那山さん :「バイタルサインは異常なか

ったです。でも、部屋で踊ってました。そ

れに、ゴミ箱にお菓子の袋が捨ててあった

ことが気になります。」

指導者:「よく気が付いたのに聞けなかっ

たのは何でかな?聞きづらかった?」

小那山さん:「・・・。」

小那山さん:「はい。」

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時間 指導内容 指導方法 留意点

6 月 13 日

実習 5 日目

15:00

安静度を守っ

た遊びの援助

ができる。

受け持ち患児

の看護問題を

抽出し、看護診

断ができる。

・患児の安静度とその必要性

・患児に適した遊びの援助方法の理解

◆中間カンファレンス

・疾患に伴う安静度

の必要性が理解で

きるように質問し、

不足部分は助言す

る。

・学生の気づきを肯

定し、計画・修正し

やすいよう助言す

る。

指導者とともに確認しに行くと、母親から「薬が苦いと言うので、口直しにあげま

した。」と言われた。指導者はその場で、まだ食事制限・水分制限があるので、食

べさせないように指導した。

午後からダイゴ君の遊びの援助で、折り紙とお絵かきをしようと計画していたが、

ダイゴ君は興味を示さず、ベッドで踊ったりして言うことを聞いてくれない。「楽

しいよ」と折り紙を渡そうとすると、手をパシッと叩かれ、「いや!折り紙やせん」

と言って、安静が守れない状態を繰り返していた。

A 子:「実習も半ばを過ぎましたが、立案し

た計画などで困っていることなどないです

か?」

小那山さん :「安静が必要なダイゴ君は

聞きわけがよく、大人しい性格だと思っ

ていたので、折り紙やお絵かき遊びなど

を計画に立案していました。先週は大人

しくしていたのに、今週は活気も出てき

て、私が考えてきた遊びでは満足してく

れず、ベッドで飛び跳ねたり、部屋の中

で走り回ってお母さんの言うことも聞

かないようになっています。お母さんも

付き添いに疲れていますし、私もどうし

たらいいかわからなくなってしまいま

した。」落ち込んだ様子で話す。

指導者:「そうね。小那山さん関わりを持

とうと頑張ってたよね。今までは妹が

いて、ダイゴ君も我慢してただろうし。

お母さんを独り占めできてわがままま

になっているわね。元気も出てきたし、

安静を保つのは大変になるわね。5 歳の

子がどんな遊びを好むかを考え直して

みる?」

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時間 指導内容 指導方法 留意点

6 月 13 日

実習 5 日目

15:00

6 月 14 日

実習 6 日目

15:00

小那山さん :あんなに元気なダ

イゴ君に何の遊びを考えたら

安静が保てるかわからなくて

困ってるのに。どうしよう。

6 月 14 日(火)小那山さんは絵本を持ってきて一緒に読もうとした。初め

は興味を持って一緒に読むが、すぐに飽きて踊ったり身体を動かして遊

ぼうとする。午後から、カルタをしようとするが、部屋中のあちこちへ

投げて遊んでしまう。絵本やカルタを用いたが、ダイゴ君が安静に遊ぶ

ことはできなかった。

小那山さん:「今日は絵本とカルタを持っ

てきて、安静を保つための遊びを考えて

ダイゴ君にすすめたんですが、興味持っ

てもらえませんでした。」落ち込んでいて

今にも泣きそうな表情で話している。

小那山さん:もうどうしていい

かわからん。小児実習なんて早

く終わってしまえばいいのに。

もう実習イヤだな。

指導者:自分が考えてきた遊びを受

け入れてもらえなくてだいぶ落ち

込んでるみたい。でも、ここでダ

イゴ君に合った援助を考えること

をあきらめてほしくないな。

小那山さん:「はい・・・。」

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時間 指導内容 指導方法 留意点

6 月 14 日

実習 6 日目

15:00

・個別性のある援助は

何か考えさせるよ

うにヒントを与え、

導く。

・学生の発現を尊重

しやる気が出るよ

う励ます。

指導者:「そうなの。用意してきた遊びは受

け入れてもらえんかったのね。でも、5

歳の子に合った遊びを、頑張って考えて

くれてるじゃない。ダイゴ君の好きなキ

ャラクターも知ってるし、何か考えてき

てみたらどうかな。」

小那山さん:そんなこと言われても・・・。

でも、そういえばダイゴ君はキョウリュ

ウジャーが好きだったよな。ベッドでも

踊ってたし。今度はキョウリュウジャー

で何か遊びを考えてみたらいいのかもし

れない。

小那山さん:「はい。そういえば、キョウリ

ュウジャーが好きと言っていたので、キョ

ウリュウジャーで何か考えてきます。」

少しヤル気のある表情であった。

指導者:頑張れそうな様子だな。

よかった。

6 月 15 日(水)学内演習の時間を使って小那山さんは、ダイゴ君の好きなキョ

ウリュウジャーで塗り絵と、トントン相撲、内服時にお菓子で味をごまかしてい

たことから、お菓子を食べずに内服できたらシールを貼るように、シール帳を作

成してきた。

6 月 16 日(木)指導者に修正してきた計画と作成してきたノートを遊びの援助

に取り入れてよいか確認してもらい、ダイゴ君の部屋を訪れた。

指導者:「そうね。ダイゴ君男の子だし、好

きなキャラクターの物で何か興味のある

ものだったら、楽しく遊べるんじゃない

かな。安静度にも考慮して考えてきて

ね。」

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時間 指導内容 指導方法 留意点

6 月 16 日

実習 7 日目

11:00

安静度に応じ

た遊びの計画

を 修 正 し 実

施・評価でき

る。

・患児の安静度

・修正した計画

内容

・再立案した内

容の実施・評

キーパーソン

となる母親の

心理状態を理

解し傾聴する

ことができる。

・安静度を踏まえ、発達段階に応じた遊びに

ついて理解できているか確認、質問する。

・修正内容を確認し助言する。

・遊びを学生に実施させる。指導者は遊びの

場面を見守る。

・実施に対し、学生に振り返りをさせる。

・入院に伴う家族への影響の理解。

・入院に伴う母親の負担や不安の表出を促せ

る。

・学生の顔色や表情

を見て体調や緊張

度を把握する。

・否定せずに肯定的

な態度で接する。

・学生がフィードバ

ックできるように

質問し助言する。

・受け持ち患児を取

り巻く状況の観察、

考察をさせる。

小那山さん:「ダイゴ君おはよう。今日はダイ

ゴ君にキョウリュウジャーのノートを持っ

てきたよ。キョウリュウジャーの塗り絵やト

ントン相撲が入ってるから、これで遊べばベ

ッドの上で踊るのも我慢できるかな?」

ダイゴ君にノートを見せながら話す。

ダイゴ君 :「えっ!何これ!かっこいい!

キョウリュウジャーの塗り絵とこれはシ

ール?!すごーい。どうやって作ったん?

お姉ちゃん一緒に遊ぼうよ!」目をキラキ

ラさせて興味を持って見ている。

母親:「学生さんありがとう。ダイゴの好

きなキャラで塗り絵とか、シールまで作

ってきてくれて。これで大人しくしてく

れるし、薬も上手に飲めるよね。家に帰

ってからどうやって薬を飲ませようかと

悩んでいたの。家でも薬が飲めたらシー

ルを貼るようにしてみようかな。」

と笑顔で話していた。

小那山さん:「このシールはね、お薬が苦手

なダイゴ君のために作ったんだよ。ダイ

ゴ君の病気をやっつけるには、お薬飲ま

なきゃダメだからね。お薬が飲めたらシ

ール貼れるんだよ。キョウリュウジャー

も応援してるよ。」

ダイゴ君にノートを見せながら話す。

ダイゴ君:「やったー!僕ダイゴだから頑張

るよ」ニコニコした顔でとても喜んでいた。

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6 月 17 日

実習 8 日目

15:00

◆ダイゴ君はベッド上で大人しく小那山さん

と一緒にお楽しみブック遊ぶ。

◆最終カンファレンス

時間 指導内容 指導方法 留意点

小那山さん:よかった。喜んでもらえ

て。ダイゴ君も座って遊んでくれた。

ダイゴ君の笑顔を見てお母さんも嬉

しそう。

小那山さんが作った塗り絵と、トントン相撲、シール帳でダイゴ君は安静を保つこと

ができ、内服薬もお菓子を食べずに飲むことができるようになった。今後も安静・内

服は続くため、援助を継続していく必要があることを母親に指導することができた。

小那山さん:最初考えていたのは安静が守れる 5 歳児の遊びでしたが、ダイゴ君には受

け入れてもらえませんでした。ダイゴ君の好みに合わせて安静が守れる遊びを考えた結

果、すごく喜んでもらえたし、それを見てお母さんも嬉しそうな顔をしていたので、私

も嬉しくなりました。頑張ったかいがありました。

指導者:本当にダイゴ君のお楽しみブック、すごくよく出来ていたよね。小那山さんは

初日から感染予防の必要性も気づいていたし、悩みながらも安静を保った遊びを考える

ことができましたね。5 歳の男の子なんて今まで関わりがなかったかも知れないけど、

特徴や性格をとらえて上手く関わっていけましたね。お母さんも一人で頑張って看病し

ていて大変そうだったよね。安静を守らすことや、苦い薬を飲むのを嫌がられたり、妹

さんと離れて暮らすことがお母さんにとってストレスになっていたからね。小那山さん

のおかげでお母さんの負担も減って嬉しかったんじゃないかな。ダイゴ君の事だけでな

く、ダイゴ君の家族のことを考えたサポートができていたのよ。よく頑張ったね。」

小那山さん:「お母さんが疲れているとは思っていたけど、お母さんのためにもなって

いたとは思いませんでした。私とそんな歳も変わらないのに、頑張ってて・・・。子ど

もが入院することは家族にとって大変なことなんですね。

指導者:そうですね。家族の事も考えたいい実習になりましたね。

今回の学びを活かしてこれからもぜひ頑張って下さいね。

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Ⅷ.考察

小児看護学実習では、小児看護に必要な知識と技術を習得し、小児の成長発達を学び、健康上の問

題を持つ小児の特性を理解し、家族を含めた看護を実践できる能力を養うことが重要である。

今回の対象は、現代社会の特徴である核家族で周囲の協力を得られない家庭であり、患児だけでな

く、家族へのサポートも必要とされる事例であった。また、5 歳児はある程度の理解力もあり、児が

納得できないと治療や看護に協力してくれないこともある。今まで子どもと接することのなかった学

生が『病気が患児・家族に与える影響』『小児の成長・発達段階に応じた援助』をどのように理解し、

どのように関わっていくかを見守り上手く導く必要があった。小那山さんは考えてきた遊びが患児に

なかなか気に入ってもらえず、実習に対して否定的な気持ちになった。指導者が学生の気持ちを尊重

し、できている部分と不足の部分を明らかにし、やる気が出るようなサポートをすることで患児の個

別性を取り入れた遊びを提供し、大きな喜びを感じることができた。さらには、この遊びが治療や療

養を助けることにもなり、遊びを通した看護の効果を実感する体験となった。結果として、母親の負

担を軽減することにもなり、患児を見守る家族のサポートに繋がったことを学習することができた。

「学生は様々な状況にある子供とその家族の一般的な理解は出来ていても、実習現場で出会う子供と

その家族の状況は、疾患や治療の状況や様々な状況が絡み合い、目の前で起こっている現象が一体何

なのかわからなくなってしまったり、子供や家族の置かれている現状の重大さに圧倒されてしまうこ

とがある。実習指導においては、学生は実習において体験している内容を捉えたうえで、具体的現象

を客観的に意味付けしていけるように、学生を導いていくことが求められる1)」と言われている。

また、「小児医療のなかで子どもにインフォームド・コンセントが行われることの意義については、

子ども自身が、治療の意味を理解することで、治療や処置に対して積極的な協力を得ることができる、

子ども自身が闘病生活に前向きに取り組むことができる、子ども本人、家族、医療者がそれぞれの立

場で子どもの生活や治療について語り合うことで、子どもの QOL をともに考えていくことができる

ことをめざすといわれている。2)」よって、今回私たちは小児看護において、インフォームドアセン

トとプレパレーションの重要性について学生に理解してもらいたくロールプレイに取り上げた。

小児は、入院が長期になるにつれ、徐々に積み重なったストレスから乱暴な行動に出ることがある。

行動に対して単に禁止させるのではなく、なぜ子どもが乱暴な行動に出るのかを理解し持続性のある

満足感を持てるような建設的な遊びを提供しなければならない。また幼児期後期になると子どもは、

遊びにアレンジを加えたり仲間との相互交渉関係、自我、自主性、学習、社会化により自立してくる。

それを踏まえた遊びを通して、患児との信頼関係を築き看護に繋げていくことが重要であると考えた。

学生自身も小児期から青年期の移行時にあり、自らもアイデンティティの形成という発達課題に直面

している。学生は小児に接した経験も少なく、コミュニケーション方法もデジタルツールによるコミ

ュニケーションへと変化しており、健康障がいのある子どもに関わるという小児看護学実習において

は、子どもへの苦手意識をもっていたり、知識としての理解はあっても、感情面で子どもを受け入れ

られないといった状況に直面することもある。

実習指導者は、学生が臨地実習場面で初めて経験することを考慮し、より効果的に経験できるよう

学生個々に応じた指導を行う必要性があると考えた。

Ⅸ.おわりに

今回の指導案作成にあたって、多施設から集まったメンバーと意見交換し、コミュニケーションを

図り、一つの物を作り上げるということで大きな達成感を得ることができた。今後は、臨地実習指導

者として看護のリアルな現状を見せながら、看護を好きと思えるような役割モデルとなり、学生のモ

チベーションをあげて未来の後輩育成に貢献できるよう自己啓発に努めていきたい。

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引用文献

1)川本利恵子編:臨地実習指導ナビゲーター,ユリシス・出版部,2013

2)岡田洋子他:小児看護学,医歯薬出版株式会社,1999

参考文献

1)恒松由記子他:小児がん患者へのがん告知とインフォームド・コンセント,小児内科 26(4):567

~571,1994

2)細谷亮太:がん告知とインフォームドコンセント,小児看護,17(9):1060~1065,1994

謝辞

今回実習指導案作成にあたり、ご多忙の中温かくご指導くださいました徳島文理大学保健福祉

学部 吉永純子先生をはじめ、諸先生方に心より深く感謝いたします。

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小児看護学実習評価表

大吉看護専門学校 学生氏名( )

自己評価

一人でできる

ほぼ1人でできる

助言を得てできる

助言を得てほぼできる

助言を受けてもできない

評 価 内 容 得点

5 4 3 2 1

① 小児の成長・発達を対象を通して説明できる。

② 小児の成長・発達に応じた日常生活援助ができる。

③ 小児の発達段階に応じた、コミュニケーションの方法を選択できる。

④ 受け持ち患児の疾病の病態生理・症状・解剖生理・検査・治療について説明

できる。

⑤ 受け持ち患児の成長発達段階及び発達課題を説明できる。

⑥ 受け持ち患児の特性を理解し、看護の原則を説明できる。

⑦ 入院が患児や家族に及ぼす影響を説明できる。

⑧ 受け持ち患児を理解するための必要な情報が収集できる。

⑨ 収集した情報を分析・解釈・統合し課題を抽出できる。

⑩ 根拠に基づいた個別的な看護計画を立案できる。

⑪ 立案した看護計画に沿った援助を実施できる。

⑫ 実施した援助について、患児の反応を捉えて評価・修正ができる。

⑬ 小児に特有な看護・治療について積極的に見学・体験できる。

⑭ 小児の安全を守るための必要な援助を実施できる。

⑮ 小児の身体的計測、バイタルサインの実施ができる。

⑯ 小児の診察の介助ができる。

⑰ 保健・医療・福祉・教育の連携を見学して理解できる。

⑱ 小児の権利擁護者として、倫理的行動ができる。

⑲ 自己研鑚のため、学習に主体的に取り組むことができる。

⑳ 意欲的にカンファレンスに参加し、自分の意見を言うことができる。

遅刻・早退(-1) 欠席(-2) 無断欠席(-3) 自己点 点 指導者評価 点

総評

指導者印