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呼吸理学療法と排痰補助装置
Ⅰ.呼吸理学療法の目的
小児での呼吸理学療法の目的は、気道の確保、換気の促進、排痰の促進である。
病態・症状別の呼吸理学療法の目的を図 1に示す。小児で認めやすい上・下気道の
狭窄による気道の閉塞、無気肺による肺容量の低下、肺炎・咳嗽能力の低下による分
泌物貯留の予防もしくは改善を目的に呼吸理学療法を行う。
病態 症状 目的
図 1 病態・症状別の呼吸理学療法の目的
気道の閉塞
肺容量の低下
分泌物貯留
気道の確保
無気肺・低酸素
排痰の促進
上・下気道狭窄
換気の促進
肺炎・咳嗽低下
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Ⅱ.呼吸理学療法の対象
田村らの全国アンケート調査では、生後 1年以内に気管切開、持続的気道陽圧
法、マスク換気(酸素療法のみ除く)などの広義の人工呼吸管理をしながら NICU
(neonatal intensive care unit:新生児集中治療室)および GCU(growing care
unit:新生児治療回復室)から退院した児の基礎疾患の分類は、先天異常と極低出
生体重児が最も多く、次に新生児仮死と染色体異常であった。生後 1年以内に間歇
的陽圧式人工呼吸管理を行いながらNICUおよびGCUから退院した児の基礎疾患
の分類も同様であった 1)。また、欧米では PICU(pediatric intensive care unit:小
児集中治療室)の抜管困難のほとんどが神経筋疾患である 2) とされる。つまり、人工呼
吸管理で在宅へ退院する児は、NICUおよび GCUでは知的障害を伴う重症心身障
害、PICUでは神経筋疾患が多い。
在宅人工呼吸管理を行っている小児は全員呼吸理学療法の対象となる。重症心身
障害では気道病変、易感染、嚥下障害による誤嚥、体位変換制限などにより、神経筋
疾患では経年的な咳嗽能力低下により肺内分泌物が貯留しやすくなる。肺内分泌物
が貯留すると人工呼吸管理で充分な換気が得られず低酸素状態に陥りやすい。呼吸
理学療法を行うことで在宅での人工呼吸器管理は維持できる。
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Ⅲ.呼吸理学療法の評価
在宅人工呼吸器管理の呼吸理学療法の評価を表 1に示す。
表 1 在宅人工呼吸器管理の呼吸理学療法の評価
評価項目の中でも聴診は肺内の分泌物の貯留状態をより的確に評価できるサイン
である。日本肺音研究会は、副雑音を大きく 4 つに分類し、かつカタカナ表記を推奨
している。英語でなくカタカナで書くことは、多職種のスタッフがスペルで悩むことがな
く、全員が間違えずに書けて分りやすいことがその理由とされる。ただし、吸気性喘鳴
(ストライダー)など慣用的に使用されているものは、そのまま使用される場合が多い。
4つの主たる副雑音の発生について、以下に概説する(表 2)。
1.ロンカイ
ロンカイは低調性の連続性副雑音で、気管壁の分泌物がガスの移動で震えること
によって発生する。したがって、太目の気管支を音源に、吸気呼気どちらか、あるいは
両相で聴取される。以前は「いびき音」という別名が存在した副雑音である。
2.ウィーズ
ウィーズは細い末梢気道の狭窄部分をガスが通過するときに発生する高調性の連
続雑音で、喘息発作のときに聴取できる特徴的な副雑音もこれらに属する。末梢気道
の径が小さくなる呼気に聴取されやすいが、吸気にも聴取される。
3.コースクラックル
バイタルサイン 心拍数、呼吸数、酸素飽和度、意識レベル
人工呼吸器 各換気パラメーター、グラフィックモニター
聴診 吸気性喘鳴、ロンカイ、ウィーズ、コースクラックル、ファインク
ラックル、呼吸音減弱
視診 浅速呼吸、 陥没呼吸、呼気延長、胸郭の拡張不全、過膨張
触診 分泌物の位置、胸郭の拡張不全、過膨張
吸引 分泌物の量・色・性状
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コースクラックルはブツブツという低調な音の集合である断続性雑音である。別名、
「水泡音」と呼ばれるように、気管支内を泡の膜が移動したり、破れたりするときに発生
する。吸気および呼気どちらでも聴取され、肺炎や肺水腫のときに出現する。
4.ファインクラックル
ファインクラックルは高調性の断続性雑音で、閉塞していた末梢気道や肺胞が吸気
で拡張する際のパチパチという高い音の集合であり、吸気にしか聴取されない副雑音
である。以前は「捻髪音」「ベルクロラ音」とも呼ばれていた音である。
肺内に分泌物が貯留した際に聴取される副雑音は、主にロンカイとコースクラックル
である。ロンカイは粘稠な分泌物、コースクラックルは水っぽい分泌物が貯留している
ことを示唆する音である。中枢気道に近い部分の分泌物の振動で発生するロンカイで
は、音の最強点(良聴取部位)は気管や太い気管支に近い部位で聴取されることが多
い。このために気管吸引で吸引可能な場合が多く、その性状を確認できる。
これに対して、コースクラックルは末梢の気管支で聴診されやすく、気管吸引では
性状が確認しにくく、吸引操作では改善できないことが多い。コースクラックルやロンカ
イは聴診だけでなく、胸部の平手触診で分泌物の振動を触知できる場合が多く、より
正確に貯留部位を推定して、最適なドレナージ体位を検討する。
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表 2 副雑音の聴診と音源・病態
一方、吸気性喘鳴(ストライダー)は上気道狭窄を疑う聴診所見である。吸気性喘鳴
を聴取し、シーソー様呼吸(陥没呼吸)、努力性呼吸、胸郭拡張不全、呼吸音減弱が
ある場合には、窒息の危険性がないかをまず検討し、直ちに原因検索と対応を開始
する。
★ 副雑音:大きく 4つに分類
1.連続性雑音
a. 低調性雑音 : ロンカイ
聴診 : 吸気呼気でのグー、ブー、ブルブル
音源 : 気管、太目の気管支壁に存在する分泌物
病態 : 肺炎・咳嗽低下
b. 高調性雑音 : ウィーズ
聴診 : 吸気呼気でのヒュー、ギュー
音源 : 末梢気管支の狭窄部分を通過する音
病態 : 下気道狭窄(末梢気道の閉塞)
2.断続性雑音
a. 低調性雑音 : コースクラックル
聴診 : 吸気呼気でのブツブツ、バチバチ
音源 : 気管支内を泡の膜が移動したり、破れたりする音
病態 : 肺炎・咳嗽低下
b. 高調性雑音 : ファインクラックル
聴診 : 吸気でのパチパチ、プチプチ
音源 : 末梢の気管支・肺胞が拡張する音
病態 : 下気道狭窄(末梢気道の閉塞)
****************************************************
吸気性喘鳴(ストライダー)
聴診 : 吸気でのヒューヒュー
音源 : 上気道の狭窄部分を通過する音
病態 : 上気道狭窄
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重症の呼吸不全では、分泌物貯留の所見が前面に出やすいが、そのような場合に
は心拍数・呼吸数・酸素飽和度などのバイタルサイン、人工呼吸器の換気パラメータ
ーやグラフィックモニターにもその影響が反映されている場合が多い。したがって、こ
れらと併せて総合的に病態を把握することが大切である。
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Ⅳ.呼吸理学療法の方法
在宅人工呼吸管理の呼吸理学療法の方法を表 3 に示す。呼吸理学療法の方法
は、基本的呼吸理学療法として、体位変換(含む、ポジショニング)(図 3)、吸引、体位
ドレナージ(図 4)3)、スクイージング(図 5)、咳介助、エアスタック(図 6)がある。排痰補
助装置として、MI-E(mechanical insufflation-exsufflation:機械的陽圧陰圧療
法)、IPV(intrapulmonary percussive ventilation:肺内パーカッション換気)、
BCV(biphasic cuirass ventilation:陽・陰圧体外式人工呼吸器)、HFCWO(high
frequency chest wall oscillation:高頻度胸壁振動法)がある。英国胸部疾患学会
の「筋力低下のある小児の呼吸マネジメントガイドライン(英国ガイドライン)」では、呼
吸筋力低下のある小児(神経筋疾患)での基本的呼吸理学療法として、体位ドレナー
ジ、軽打法、振動法、排痰補助装置として IPV、HFCWO、MI-E などの有用性を報
告している 4)。人工呼吸管理を行っている小児では、軽打法・振動法で肺が虚脱しや
すい 5)、新生児を対象とした「NICU における呼吸理学療法ガイドライン」では、軽打
法・振動法で脳障害や肋骨骨折のリスクが高いなど報告 6)があり、日本では小児での
軽打法・振動法の積極的な実施は推奨していない。基本的呼吸理学療法では、換
気・排痰の促進のために軽打法・振動法と代わって、体位ドレナージ、スクイージング
(排痰介助)を用いることが多くなっている。また、英国ガイドラインでは、神経筋疾患
での咳を増強するために、徒手での咳介助、エアスタックの実施を推奨している 3)。
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表 3 在宅人工呼吸管理の呼吸理学療法
<基本的呼吸理学療法> 呼吸理学療法の目的
■体位変換‐ポジショニング(図 3) 定期的に体位を変換する。主な体位は背臥位・側臥位・腹臥位・座位である。体位変換
の際は、頸部の位置を工夫し気道の確保、リラックスした姿勢を調整する。
・気道の確保
・換気の促進
・排痰の促進
■吸引
吸引圧(mmHg)は新生児 60~80、乳幼児 80~120、学童 150、カテーテルサイズ(Fr)
は新生児 6-7、乳幼児 7~10、学童 10~12が目安。口→鼻→気管の順で 10秒以内で
実施する。
・排痰の促進
■体位ドレナージ(図 4)
肺内で分泌物が貯留または換気が低下している肺野を一番高くした姿勢を保持する。
頭低位の体位は避ける。
・換気の促進
・排痰の促進
■スクイージング(図 5) 肺内で分泌物が貯留または換気が低下している肺野に相当する胸郭を呼気時に徒手的
に圧迫する。
・換気の促進
・排痰の促進
■咳介助
咳に合わせて胸郭や腹部を徒手的に圧迫する。
・排痰の促進
■エアスタック(図 6) 蘇生バックや従量式の NPPVの一回換気を数回溜めて最大強制吸気量を得る。
・換気の促進
<排痰補助装置>
■MI-E(mechanical insufflation-exsufflation:機械的陽圧陰圧療法) マスクまたはカニューレに回路をつなぎ、気道に陽圧を加えた後、急速に陰圧にシフト
する。
・換気の促進
・排痰の促進
■IPV(intrapulmonary percussive ventilation:肺内パーカッション換気) マスクまたはカニューレに回路をつなぎ、エアロゾール吸入の高波動で肺内を直接パー
カッションする。
・換気の促進
・排痰の促進
■BCV(biphasic cuirass ventilation:陽・陰圧体外式人工呼吸器) キュイラスを胸腹部に装着し、キュイラス内に陰圧をかけ胸郭を拡張し、バイブレーション
により胸郭を振動させる。
・換気の促進
・排痰の促進
■HFCWO(high frequency chest wall oscillation:高頻度胸壁振動法)
ベスト・ラップを胸郭に装着し、ベスト・ラップに送るエアーパルスの高頻度胸壁振動に
より胸壁を振動させる。
・換気の促進
・排痰の促進
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図 4 体位ドレナージ 3)
体位を 20~30分保持するまたはスクイージング、排痰補助装置を併用する。
図 3 体位変換(ポジショニング)
*補装具制度により各児に合ったポジショニング用具を作成し、容易に多様な
体位が保持できるようにする。
腹臥位 座位
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図 5 スクイージング
吸引前もしくは吸引時に実施する。
体位ドレナージを併用する。
吸引時では、10秒以内に 2~3回の
素早い圧迫を実施する。
図 6 エアスタック
2人で実施すると安全かつ効果的に
実施できる。
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Ⅴ.呼吸理学療法の手順
呼吸理学療法の手順を図 7 に示す 7~9)。その手順は大きく重症心身障害と神経筋
疾患に分けられる。協力が得られない神経筋疾患は重症心身障害の範疇に入る。
重症心身障害と神経筋疾患の日常的な呼吸理学療法は、ともに定期的な体位変
換およびポジショニング、吸引または咳による排痰で充分である。
次に、努力性呼吸、聴診でロンカイ・コースクラックル・呼吸音減弱が継続する場合
には、重症心身障害では体位ドレナージにスクイージング、排痰補助装置を併用し実
施する。
これに対して神経筋疾患では、科学的検証が多く存在し、咳の CPF(cough peak
flow:最大流速)、肺活量、酸素飽和度によって選択する療法が異なる。咳介助、エア
スタック、排痰補助装置のいずれを選択するかは患者能力の評価に基づいて決定さ
れる。たとえば、神経筋疾患では排痰に有効な CPF を得るためには MIC
(maximum insufflation capacity:最大強制吸気量)は 1,500mL以上に維持する
ことが重要 10)である。肺活量低下が年齢予測値より低下するのは肺コンプライアンスと
胸郭の可動性(拡張性)低下が疑われることが判明している 11)。また、定期的な MI-E
およびエアスタックの実施は、肺コンプライアンス・胸郭可動性が改善し MIC に影響
する 10,12) と報告され、MI-Eおよびエアスタックが推奨されている。
重症心身障害おいても、エビデンスは明確に示されないものの、肺コンプライアン
ス・胸郭の可動性(拡張性)を維持・改善することは重要であり、1日2~3回、蘇生バッ
クで充分な吸気を送り、肺・胸郭の拡張を実施する。
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重症心身障害
2~3時間毎に体位変換を実施、ポジショニングで気道確保、リラックス
咳の最大流速が低下している場合
(12 歳以上で 270L/min 以下)、徒
手での咳介助を実施
徒手での咳介助によっても、排痰が
困難な場合、あるいは肺活量が
2,000mL 以下、または%肺活量が
50%未満の場合、エアスタック後、
咳介助を実施
徒手での咳介助、エアスタックで排
痰が困難な場合、呼吸器感染時に
酸素を使わず SpO2<95%の場合、
排痰補助装置を実施
努力性呼吸、聴診でロンカイ・コー
スクラックル・呼吸音減弱が継続す
る場合、体位ドレナージおよび排痰
介助後に吸引を実施
1 日に 2~3 回、蘇生バックを用い
て充分な吸気を送り、肺・胸郭を拡
張する
分泌物貯留が原因で、普段から
SpO2 低下が認められ、肺炎・無気
肺を反復する児の場合、体位ドレ
ナージおよび排痰補助装置を実施
努力性呼吸、聴診でロンカイ・コースクラックル・呼吸音減弱が確認される
場合は吸引または咳を実施
神経筋疾患
図 7 呼吸理学療法の手順 7~9)
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Ⅵ.排痰補助装置
在宅で使用できる排痰補助装置は、MI-E、IPV、BCV、HFCWO である。各種排
痰補助装置の概要を表 4-1・2に示す。
在宅で人工呼吸管理を行っている場合、排痰補助装置の使用で診療報酬が請求
できるのはMI-Eである。IPV、BCVは人工呼吸器と同等機器のために、人工呼吸器
管理を行っている場合は、診療報酬は請求できない。HFCWO は診療報酬での設定
がなく、在宅使用ではレンタルを手配する。
英国のガイドラインでは、神経筋疾患児で、どの呼吸理学療法を実施しても分泌物
の移動が困難、持続的な無気肺が発生した場合に対して IPVや HFCWOの実施を
考慮するとしている 4)。ただし、そのような状況では入院での実施となる。
在宅で人工呼吸管理を行っている場合に使用する MI-E は、日本では多機種から
選択が可能である。MI-Eの比較 8,13)を表 5に示す。知的障害を有する重症心身障害
児は、排痰に協力が得られにくいため、MI-Eの設定はオートモードで実施される 14)。
MI-E を著者らが使用した際の印象は、MIC が健常に近いと、最大吸気呼気流量
が少ない装置では、力不足、優しい、咳が弱い(充分吸えない感覚)、陰圧がかかる吸
気時の圧波形の立ち上がりがゆっくり、陰圧(吸気圧)が設定圧に達しない、陽圧から
陰圧へのシフトが緩やかと感じるなど、適応と設定を考慮した使用が求められる。
排痰補助装置を実施する際は、装置実施の刺激で気道が狭窄する、分泌物が気
管に移動し気道閉塞を起こす可能性があり、気道トラブルに対応すべく適切な救急処
置の環境を準備する 4)。在宅で装置を使用する際は、装置の設定を一定とし、実施回
数も生活状況に合わせた頻度とすることが継続のポイントである。
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表 4-1 各種排痰補助装置の概要
療法
機械的陽圧陰圧療法
(mechanical
insufflation-exsufflation:
MI-E)
肺内パーカッション換気
(intrapulmonary
percussive
ventilation:IPV)
陽・陰圧体外式人工呼吸器
(biphasic cuirass
ventilation:BCV)
高頻度胸壁振動法
(high frequency chest
wall
oscillation:HFCWO)
機種(販売元)
★カフアシスト E70 (フィリップス・レスピロニクス)
★コンフォートカフプラ
ス (パシフィックメディコ)
★ミニペガソⅡ (エア・ウォーター)
★パルサー (チェスト)
★パーカッションベンチ
レーター (パーカッショネアジャパン)
★RTXレスピレータ (アイ・エム・アイ)
★HRTX (パシフィックメディコ)
★スマートベスト (東機貿)
機能
モード(マニュアル・オート・
バイブレーションなど)、陽圧・
陰圧、吸気・呼気流量、
吸気・呼気時間、休止時
間など
パーカッション頻度、作
動圧、呼気終末陽圧(PEEP
圧)、医療ガス(酸素・空気)
モード(持続陰圧・コントロー
ル・トリガ・シンクロ・クリアラン
ス)、呼吸回数、陰圧・陽圧、
吸気・呼気時間比(I:E 比)
モード(マニュアル・プログラ
ム)、周波数、作動時間、
駆動圧、ベストまたはラ
ップ
設定
■販売元標準
陽圧陰圧最大:
±35~40cmH2Oを目安
に 10~15cmH2Oから増
加
吸気呼気:1~3秒間
休止:0~3秒間
4-5回/セット
セット間休息:20~30秒
間
1-数セット/日
■八雲病院標準
陽圧陰圧:±55cmH2O
吸気呼気:1.5秒間
休止:1秒間
■販売元標準
パーカッション頻度:
NEUTRAL(12:00)
作動圧:
成人(30kg 以上)30-40psi
小児(新生児除く)20-30psi
15-20分間/セット
4-8セット/日
胸壁の振動を確認しなが
ら作動圧を 10-20psi から
徐々に上げ、実施時間を
延ばす
より効果的なパーカッシ
ョン頻度 EASY(分泌物
流動化促進)と HARD(排
痰促進)を 1-3分間ずつ
交互に数回行い、最後に
パーカッション頻度を
NEUTRL に戻す
■販売元標準
喀痰改善:
クリアランスモード(バイブ
レーションとコフを交互に 5 セッ
ト)
バイブレーション:3分間
振動数:600回/分
陰圧:-8cmH2O
コフ:1分間
陰圧:-18cmH2O~
-25cmH2O
陽圧:+9 cmH2O~
+12cmH2O
陰圧:陽圧=1:2
I:E比=5:1
1.6kgの新生児~90kgを
超える成人まで利用可
■販売元標準
成人:
周波数:13Hz(周波数 13Hz
で分泌物の粘弾性が低下する)
駆動圧:40
5-15分間/セット
サイズ:
ベスト SS(胸囲 41-51cm)
~XL(122-132cm)
ラップ S(胸囲 43-64cm)~
XXL(137-168cm)
■長野県立こども病院標準
オートモード:幼児:
陽圧陰圧:±20-30cmH2O
最大吸気呼気流量
吸気:1秒間
呼気:0.5-1秒間
休止:0.5-1秒間
オートモード:学童:
陽圧陰圧:±30-40cmH2O
最大吸気呼気流量
吸気:1-1.5秒間
呼気:0.8-1.5秒間
休止:0.8-1.5秒間
バイブレーション症例別
1 分間×3 回(または 3 分間×1
回)/セット
2-3セット/日
体重:10kg以上
パーカッション頻度:
急性期・乳幼児・易緊張:
FULL EASY
他:NEUTRAL
作動圧:乳幼児:20-25psi
作動圧:学童:30-35psi
(最大 40psi)
PEEP 圧:5psi
5-10分間/セット(呼吸抑
制しやすい児は1分間×3回/セッ
ト)
2-3セット/日
体重:3kg以上
クリアランスモード
バイブレーション:3分間
振動数:600回/分
陰圧:-10cmH2O
コフ:1分間
陰圧:-10cmH2O~
-20cmH2O
陽圧:+5cmH2O~
+10cmH2O
I:E比=5:1
4分間/セット
2-3セット/日
体重:3kg以上
マニュアルモード
周波数:10-13Hz
駆動圧:幼児:10
駆動圧:学童:20
5-10分間/セット
2-3セット/日
ラップ
体重:10kg以上
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表 4-2 各種排痰補助装置の概要
療法
機械的陽圧陰圧療法
(mechanical
insufflation-exsufflation:
MI-E)
肺内パーカッション換気
(intrapulmonary
percussive
ventilation:IPV)
陽・陰圧体外式人工呼吸器
(biphasic cuirass
ventilation:BCV)
高頻度胸壁振動法
(high frequency chest
wall
oscillation:HFCWO)
注意(取説記載)
■禁忌
嚢胞のある肺気腫の既往、
気胸、気縦隔の疑い
■慎重
人工呼吸による肺損傷、不
整脈や心不全のある患者
は原則として行わないが、
行う場合はモニターで慎
重に行う
■禁忌
未処置の緊急性気胸
■慎重
神経筋疾患、気胸履歴、
肺切除手術直後、肺エア
リーク、肺出血、呼吸器
系異常、血行動態不安定、
心臓疾患疑い、心臓血管
不全、嘔吐がひどい、助
骨骨折、肺塞栓、気管内
の肉芽、気縦隔、肺嚢胞
■禁忌
気道閉塞している患者、使
用の際バイタルなどの変化
で悪影響が出る
■禁忌
米国呼吸療法学会臨床
標準的ガイドライン
(1991)に準ずる
診療報酬
排痰補助装置加算:1800
点/月(人工呼吸を行っている入
院中の患者以外の神経筋疾患など
の患者)
在宅人工呼吸指導管理
料:2800点/月(在宅人工
呼吸を行っている入院中の患者
以外の患者に対して、在宅人工呼
吸に関する指導管理を行った場
合)
人工呼吸器加算:陽圧式
人工呼吸器:7480点/月 (気管切開口に介した陽圧式人
工呼吸器を使用した場合)
人工呼吸器加算:人工呼
吸器:6480 点/月(鼻マ
スク又は顔マスクを介した人工
呼吸器を使用した場合)
在宅人工呼吸指導管理料:
2800点/月(在宅人工呼吸を行
っている入院中の患者以外の患者に
対して、在宅人工呼吸に関する指導
管理を行った場合)
人工呼吸器加算:陰圧式人
工呼吸器:7480点/月(陰
圧式人工呼吸器を使用した場合)
請求不可
レンタルで使用
その他
酸素投与ができないため、
実施により酸素飽和度が
低下する場合、実施時間を
短く頻回に行う、実施後、
酸素投与・蘇生バックを行
うなど工夫する。
人工呼吸器と同等で、長
時間使用により自発呼吸
を抑制する場合がある。
時間を短く頻回に行う、
実施後、酸素投与・蘇生
バッグを行うなど工夫す
る。
生理的な換気様式のため循
環動態へ好影響を及ぼしや
すい。
患者の体格に合ったキュイ
ラスの選択が重要である。
新生児・乳児は頭部の振
動が大きく高リスクで
ある。
ベストまたはラップを
着用する際は胸元に手
が入る程度の圧で使用
する。
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表 5 MI-Eの比較 8,13)
製品名 カフアシスト E70 コンフォート
カフプラス
ミニペガソⅡ
パルサー
販売元 フィリップス
・レスピロニクス
パシフィック
メディコ
エア・ウォーター チェスト
モード オート
マニュアル
オシレーション:
60-1200/回
振幅圧力
1-10cmH2O
カフトラック
オート
マニュアル
パーカッサー:
10-600/分
パーカッションラップ
オート
マニュアル
パーカッション:
50-300/分
オートシンク
イージースタート
オート
マニュアル
バイブレーション:
180-600/分
トリガー
最大
陽圧・陰圧
±70cmH2O ±60cmH2O ±50cmH2O ±60cmH2O
最大
吸気・呼気流量
10.0L/秒 10.0L/秒 2.6L/秒 2.0L/秒
吸気・呼気時間 0.0-5.0秒 0.0-5.0秒 0.0-9.9秒 0.0-5.0秒
休止時間 0.0-5.0秒 0.0-5.0秒 0.0-9.9秒 0.0-5.0秒
入力電力 100-240VAC 100-240VAC 100-240V 100-240V
寸法
H×W×D(mm)
231×292×190 288×212×330 220×240×260 210×240×330
重量 4.3kg 6.4kg 4.4kg 3.9kg
バッテリー あり なし あり なし
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Ⅶ.排痰のコツ
1.排痰は気道の確保→換気の促進→排痰の促進の順を考慮すると効果的
まず気道を確保し、末梢気道まで換気を促し、肺の隅々まで空気を入れることで、
十分な呼気が確保されて排痰は促進される。
気管・気管支粘膜の繊毛活動に問題のある重症心身障害でも、普段は定期的な体
位変換およびポジショニングのみで、換気不均等の是正、体位ドレナージ効果を期待
でき、肺内の分泌物は自然に中枢気道に移動してくる。効果的な排痰のためには、排
痰手技や装置の実施を優先するのではなく、気道の確保、換気の促進を最も重視す
る。また排痰を促す際は、分泌物の性状に注意を払い、必要であれば加湿および水
分コントロールを行う。
2.嚥下障害を認める場合、唾液を誤嚥しない姿勢を保持する
重症心身障害では、嚥下障害で唾液を誤嚥しやすい。そのため、普段から唾液を
誤嚥しにくい姿勢を保持することで、肺炎・気管支炎、無気肺の予防に努める。側臥
位での唾液の誤嚥予防のための工夫を図 8 に示す。完全側臥位(90 度)で、上体を
拳上せずにベッドは平らとし、後頭部側をタオルなどで拳上し、顔を若干下向きするこ
とで、咽頭に向かわず口腔外へ出る唾液が増加する。
体位変換では背臥位・側臥位・腹臥位・座位を行うが、座位の際は唾液の多くを誤
嚥する可能性があるため、座位保持の実施後には必ず腹臥位を採用し、肺内に誤嚥
した唾液の排痰を促す。
図 8 側臥位での唾液の誤嚥予防のための工夫
後頭部拳上
顔を若干下向き
完全側臥位(90度)
ベッドは平ら(上体拳上しない)
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3.気管吸引を実施する最適なタイミングはロンカイ
気管吸引の適応となる状態とそのアセスメントを表 6 15)に示す。ルーチンに吸引した
り、頻回に吸引したりすることは合併症の発生が懸念されるため、気管吸引のタイミン
グに注意を払う。
表 6 気管吸引の適応となる状態とそのアセスメント 14)
気管吸引を実施する最適なタイミングは、肺内の分泌物が末梢気道から中枢気道
へ移動し、ロンカイが聴診されたり、喀痰の振動を触知できたりするときである。無用の
気管吸引や長すぎる吸引時間は、低酸素状態や無気肺を惹起する。したがって、吸
引カテーテルの先端まで分泌物が移動しているのかを評価することが大切である。
重症心身障害で聴診されやすいコースクラックルの多くは、気管支レベルに存在す
る分泌物に起因し、吸引できない位置にあることが多い。気管吸引で除去不可能な肺
内分泌物の貯留は、スクイージングや咳介助、排痰補助装置を行うか、酸素飽和度低
下に影響しない場合は深追いせず、吸引可能な位置まで移動するまで待つ。また、
気管支レベルの分泌物は、蘇生バッグで充分な吸気を送った後、急速にバッグの手
を放すと陰圧が高まり、MI-Eのような作用機序で移動が促されることも多い。
嚥下障害を認める場合、常に咽頭で唾液貯留しているために吸気呼気の喘鳴(水
っぽいゼコツキ音)が聴取できる症例が多い。その際の吸引は背臥位でなく側臥位で
行うと、吸引刺激で唾液を誤嚥しそうになることを防ぎ、唾液を十分に吸引することが
できる。
① 努力性呼吸が強くなっている(呼吸数増加、浅速呼吸、陥没呼吸、補助筋
活動の増加、呼気延長など)
② 視覚的に確認できる(チューブ内に分泌物が見える)
③ 胸部聴診で気管から左右主気管支にかけて分泌物の存在を示唆する副
雑音が聴取される。または、呼吸音減弱が認められる。
④ 気道分泌物により咳嗽が誘発されている場合であり、咳嗽に伴って気道分
泌物の存在を疑わせる音が聴こえる(湿性咳嗽)。
⑤ 胸部を触診しガスの移動に伴った振動が感じられる。
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4.肺・胸郭のコンプライアンスや可動性(拡張性)の維持・改善で換気促進
聴診で呼吸音の低下を認めても、分泌物貯留が原因でない場合も多い。すなわ
ち、気道狭窄や肺コンプライアンス・胸郭の可動性(拡張性)の影響で、換気そのもの
が低下していることも少なくない。呼吸理学療法では、排痰にこだわりすぎず、気道の
確保、換気の促進が重要であることを意識する。換気の促進のために、神経筋疾患で
はエアスタック、重症心身障害では蘇生バックで充分な吸気を送り、胸郭の拡張を実
施する。
さらに、排痰を効果的に実践するには、定期的に胸郭全体をスクジージングし、胸
郭の可動性(拡張性)を維持・改善するモビライゼーション(図 9)や胸郭周辺の肩・腰
周辺のストレッチを行うことも有効である。
図 9 胸郭のモビライゼーション
定期的にスクジージングを胸郭全体に行うことで胸郭の可動性(拡張性)を維持・改善する。
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Ⅷ.呼吸理学療法の注意点
呼吸理学療法はある程度の負担を児に強いるが、児が不快な状態で呼吸理学療
法を実施すると、有効な結果を得られない。たとえば、児が啼泣したり全身が緊張した
りすると、気道が狭窄し、胸郭が硬くなり、聴診で吸気性喘鳴や呼吸音減弱が確認さ
れることがある。このような状況では、肺の隅々まで充分に空気が入らず、分泌物の移
動も困難になる。したがって、児にストレスを与えないために、姿勢の工夫、基本的な
呼吸理学療法や排痰補助装置の適切な設定によって負担軽減を図ることが大切であ
る。
在宅人工呼吸管理の小児は呼吸予備能が非常に低く、乱暴で不適切な呼吸理学
療法は児に致命的な結果を容易にもたらす。侵襲的な呼吸理学療法の実施は十分
に評価を行い、適応を見極めたうえで必要最小限の実施を心掛ける。
実施する際も児に多大なストレスをかけないよう細心の注意を払う。呼吸理学療法
中は、モニタリングや呼吸状態(無呼吸、徐脈発作など)の観察を行い、必要に応じて
吸入酸素濃度を上げるなどの対応を図る。適切に呼吸理学療法を行うことで在宅での
人工呼吸器管理は維持でき、症状・病態の維持・改善に大きく貢献する。
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図 10 各種排痰補助装置の紹介
カフアシスト E70
(フィリップス・レスピロニクス)
コンフォートカフプラス
(パシフィックメディコ)
ミニペガソⅡ
(エア・ウォーター)
パルサー
(チェスト)
RTX レスピレータ
(アイ・エム・アイ)
パーカッションベンチレーター
(パーカッショネアジャパン)
HRTX
(パシフィックメディコ)
スマートベスト
(東機貿)
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【参考文献】
1)田村正徳:厚生科研「重症の慢性疾患児の在宅での療養・療育環境の充実に関
する研究」班 NICU 長期入院児全国調査結果.周産期新生児誌.2015;51:
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2)石川悠加:小児期発症の神経筋疾患の急性期を含めた呼吸ケアガイドライン.小
児 NPPV の手引き.鈴木正之 監.志馬伸朗 編.東京,メディカルビュー社,
2012,pp58-64.
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メディカ出版,2015,pp96-115.
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