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55 まず、ANDORA'S BOX 制作のキッカケから教 えてください。 ANCHANG:じつは、今回の ANDORA'S BOX の 話の前に、個人的に趣味で僕にエフェクターを作ってく れた人がいたんですね。で、こういうのもおもしろいな と思って、ESP に“ こういうカスタム・エフェクターって 作れないかな? ”って聞いたのが最初ですね。 ANCHANG と言えば、長い間、ボスの SD-1 をブースター的に使っていましたよね? ANCHANG :そうですね。SD-1 をブースター的に使っ て、サウンドに広がりも出ていたんですけど、その個人 的に作ってもらったエフェクターを試してみたら、自分 がプロデュースして、本当に自分が出したい音を出せる エフェクターを作れないものかなと思って。そうしたら ESP も“ ぜひ、やろう ”と言ってくれたんです。 具体的には、ESP にはどういうリクエストを出 したんですか? ANCHANG:偉そうな言い方ですけど、完全プロ仕 様ということですね。これはエフェクター批判に聞こえ てしまうと嫌なんですけど、世の中にはホントにたくさ んエフェクターがあるし、実際に、僕もギターを始めた 頃からいろいろ試してきたし、今のギタリストもそうだ WeROCK 的楽器試奏会、 引き続きセックス・マシンガンズのANCHANG のシグネイチャー・ペダルを取り上げよう。ANDORA'S BOXと名付けら れたこの歪み系ペダルは、ANCHANGの理想を100%実現したものだ。 ANCHANGのインタヴューと試奏記事で、このモデルの魅力をお伝えしよう。 楽器試奏会 ここでは、約 10 年にわたって、ANCHANG の ギター・サウンドを支えてきた ESP の萬成氏が語っ てくれた、“ANDORA'S BOX” の開発秘話を紹介 しよう。 「ANCHANG も 話 し て い る よ う に、 最 初 は ANCHANG の友達が作ってきたエフェクターが あって、“ こういうことって ESP でできないの? ” っ て聞かれたことがスタートですね。ただ、ESP は ギター・メーカーだし電気部門もあるんですけ ど、スタッフの数に限りがあるんですね。だから、 ANCHANG に 1 台を作ることはできても、市販す るということを考えたら、アフター・ケアなどもあっ て量産は難しいと。そこで、ESP が販売しているブー ト・レッグに製作を依頼することになったんです。 実際の製作にあたっては、僕自身が 12 年間ぐら いセックス・マシンガンズのライヴやリハーサル、レ コーディングなどを支えてきて、ANCHANG の理 想の音はわかっているから、特に難しいことはなかっ たですね。ポイントとしては、ANCHANG 用に改 造を施して、長い間、使っていたボスの SD-1 や、 他にもボスの OD-1、あるいはチューブ・スクリーマー などを軸に、“ このエフェクターのここを採り入れて、 でも、ここは不要だ ” 的なことをブート・レッグに伝 えて、あとは各ツマミの可変域を広くしてくれという ことぐらいでした。 最初に3台試作品が上がってきて、春ぐらいから リハーサルやツアーで試してきた中で、ベストの1 台が決まり、そのまんまの仕様で市販することにな りました。配線の取り回しからパーツ選びまで、信 号のロスがないように、職人が1個1個ハンドメイド で仕上げています。ANCHANG が言っていました が、15w 程度のアンプにつないでも、ANDORA'S BOX の真価は発揮しづらいかもしれません。それに、 セールス・トーク的には、“ このエフェクターを使えば、 ANCHANG と同じサウンドが出せる! ” と言えばい いんでしょうけど、けしてそれだけじゃないし、むし ろ最初に手にした時には、使いづらいなぁと思われ るかもしれない。でも、すぐにダメだなと思わずに ツマミをいろいろ試してほしいです。ホントにブース ター的な役目もディストーションとしてのサウンドも OK ですし、シングルコイルのギターとマッチレスの ようなアンプと組み合わせてもいいと思います。 たかが 1 台の歪み系エフェクターなんですけど、 無限の可能性が秘められていると思います。ストラ トにマッチレスというようなメタルじゃない使い方も おもしろいと思います。ANCHANG のファン以外 にも試してほしいですね。ホントに自信があります から」。 ESPの担当スタッフが明かす、ANDORA'S BOXの開発秘話 “ANCHANGと同じサウンド”だけじゃない、無限の可能性を秘めています と思うんですね。でも、本気で音楽をやろうとすると使 えないものがあるんですよ。例えば、ヘヴィ・メタル系 の名前が付いている歪み系のエフェクターもよくあるし、 そういうものは確かに歪むし、中学生とか高校生が家 で弾くにはいいと思うんですよ。歪み系エフェクターを つなぐと、弾けていないのに、弾けたように聴こえます しね(笑)。僕自身がそうでしたから(笑)。 プロ仕様と言っても、かなり幅広いですよね? ANCHANG:ええ。だから、僕の出したい音というと ころで、まずはブースター的な要素は入れたいと。そし て、もっと言えば、ちゃんとしたアンプ……例えば、僕 が 使っているヒュース & ケトナーやマーシャル、メサ / ブギーなどの 50w とか 100w のアンプの足りないとこ ろを補えるエフェクターであるということですね。そう いうのが、今までの僕にとってはボスの SD-1 だったん ですよ。ただ、SD-1 は使いやすかったし、音もよかっ たけど、10 年間ぐらい使ってきて、僕の中で完成してし まったというか、さらに求めるものが出てきたんです。 さらに求めていたものとは? ANCHANG:チューブ・スクリーマー系のちょっとつ ぶれたような音ですね。僕がチューブ・スクリーマー系 でいいなと思う部分は、オーバードライブとして使うの ■問い合わせ:㈱ ESP(http://www.espguitars.co.jp) まず、率直でわかりやすい感想を言うと、か なりグッドな感触が得られたエフェクターだっ た。とくに、オーバードライブともディストーショ ンとも括りをしていないモデルだが、ブースター ~オーバードライブまでを守備範囲とする歪み を持っている。 試奏は、“ おそらく、こういう使用がベスト” と思われる、アンプで歪ませて、ブースター的 に使う方法から始めてみた。まず、気になるオ フ時の音色だが、他のエフェクターと比べても、 接続した時の音色の劣化は、ほとんど感じられ ない。同じ系統のオーバードライブと弾き比べ てみたのだが、他のモデルがローとハイの部分 がまろやかに感じたのに対し、このモデルはオ フ時でもローがしっかりと出てくれるので、“ オ ンにしてる? ” と錯覚してしまうほどだった。 続いて、エフェクトをオンにして、DRIVE ゼ ロ、LEVEL12 時 付 近、TONE11 時 付 近 で 試 奏。もともとアンプで歪ませていたサウンドが、 かなりブライトになってくれる。倍音成分も豊か で、ローの出方は秀逸。チューブ・スクリーマー を意識したとのことだが、チューブ・スクリーマー が中域寄りに特徴があるのに対して、このモデ ルはギターやアンプを原音のまま、トーンをブ ライトにして、ローの音圧を増してくれている。 コンプ感は少ない方向で、他の歪み系エフェク ターに比べると、ほとんどないように感じられ、 ピッキングのニュアンスがそのままに再現され る。逆に言えば、エフェクターをオンにしてコン プ感が得たいギタリストには、ニュアンスがそ のまま出てしまうため、ごまかしが効かないエ フェクターともいえる。 特にいい部分は、ローの出方と音圧の増し方 だ。これまでも、この方向を追求した歪み系エ フェクターは多くあったが、そっちを追求すると 倍音が出にくかったり、低音が出すぎたりしてし まっていた。しかし、このモデルは、倍音もしっ かりと増してくれ、嫌みがなく低音も音圧も増し てくれる。音のツブ立ちも、かなりいい。 好みの問題もあると思うが、中域の膨らみと コンプ感の弾きやすさを求めるならチューブ・ スクリーマー、原音に忠実でダイレクトな弾き 心地とローの押し出し感を得たいなら、断然 ANRORA’S BOX だろう。 ブースター使用で、かなり満足な結果が得ら れたが、続いて ANRORA'S BOX 単体の歪み を試してみた。アンプをクリーンにして、DRIVE をフルにすると、軽いクランチ程度の歪みが得 られる。ディストーションほどの歪みではない。 いっぽう、アンプをクランチ気味にして試すと、 DRIVE をゼロで TONE の効き幅が体感できる。 TONE がゼロだとミッドが強調され、フルだと プレゼンス的な高音のギラギラした部分が出て くれる。DRIVE をフルにすると、ヘヴィな歪み になってくれるので、オフで “ アンプのみの軽い ディストーション・サウンド ”、オンで “ ソロも OK なヘヴィ・サウンド ” というセッティングが できる。 ここまで、かなり高評価ばかり書いてきたが、 難点も挙げておこう。まず、スイッチのオン/オ フ時の音が大きい。アンプを歪ませての使用と いうのもあるが、大音量で弾くと、かなり “ バ チッ ” と出てしまう。ただ、これはバンド内で プレイしていたり、弾き続けている際に切り替 える時は、ほとんど気にならないだろう。また、 これも、どうしようもないのだが、アンプで歪 ませて DRIVE をゼロにしても、ブースター的に 使う際、大音量だとどうしてもハウリングしやす い。 これは、LEVEL を調整すれば解消するのだ が、ANRORA'S BOX は LEVEL を上げていく と、いい感じで音圧が増してくれるので、どうし ても上げたくなる。12 時から 2 時ぐらいの位置 なら、ハウリングも出にくいので、使用する際は、 そのあたりを試しつつベストのセッティングを探 してほしい。 原音に忠実なローの出方と音圧の増し方を 求めるギタリストに断然オススメ! ルのコントロールです。この出力の部分で、歪み全体が 変わってしまう。アンプ+オーバードライブというよりも、 アンプ+ブースターとして、ムダなローをカットする、お いしいところを出すために作ったエフェクターですから。 だから、ドライブ・ツマミで歪みを作るのではなく、レ ベル・ツマミで作るというのが僕の使い方ですね。そ れこそ、ドライブ・ツマミは全体を 10 とするなら、1と か2で充分です。あと、マルチを使っているギタリスト にも、一緒に使うとデジタルくささが消えると思うので オススメです。ただね……ギタリストのタッチやニュア ンス、音の輪郭がハッキリ出てくれるので……僕のヘ タさがバレてしまう(笑)。だから、この ANDORA'S BOXを使うために、ギターの練習をしましたからね(笑)。 つまり、さっきも言いましたけど、他のダメな歪み系の エフェクターのように、けしてギタリストの腕をごまかす ものじゃないんですよ。本気で使う人しか使わないでく ださいということなんです。あえて偉そうな言い方をし ますけど、ANDORA'S BOX を使えないなら、プロ・ ギタリストを辞めたほうがいいよと。 でも、このモデルのよさはなかなかわかりづらいかも しれないですけど、ホントにいい感じで潰れて、いい感 じで輪郭が出ます。ちゃんとした歪みが生まれるアンプ につないだ時に、真価が出るんです。ホントに試してほ しいですね。 輪郭をハッキリと出してくれる、 完全プロ仕様の歪みです (ANCHANG) ◎ こち ら は 通 常 版 の ANDORA'S BOX。LEVEL と TONE、 DRIVE の各ツマミのデザインが異なる以外、中の回路は初回限 定版とまったく同じ。 ウワサの歪み系ペダル、いよいよ登場 ではなく、余分なローをカットしたり、ブーストして音 の輪郭をハッキリさせるというところなんですよ。でも、 チューブ・スクリーマーそのままだと、やっぱりどこか 音が古くなってしまう。 実際に、すでにライヴなどで使ってきたそうです が、その感想は ? ANCHANG:正直言うと、使いづらいと思います。と いうのは、さっきも言ったんですけど、ちゃんとしたア ンプにつながないとこのエフェクターの良さは出ないん ですよ。僕が欲しかったのは、ライヴで使える、そして レコーディングで使えるエフェクターだった。逆に言う と、よくギターを始めたばかりの中学生や高校生が、好 きなギタリストに憧れて同じエフェクターを買って、とい うのがありますが、そういう狙いで入手すると失敗しま す(笑)。 音のキャラクターとしては、どうなんでしょうか ? やはりメタル・モデルなんですか ? ANCHANG:そこはもちろん自信があります。でも、 ブースターとして優れているので、例えば、ストラトキャ スターとジャズコーラスのようなトランジスタ・アンプと いう組み合わせでもまったく問題ないし、フェンダーの ツイン・リバーブのようなアンプだと、それこそスティー ヴィー・レイ・ヴォーンのようなサウンドが得られます。 その他に、使ってみて感じた特徴は ? ANCHANG:堅牢ということですね。ライヴで使うと いうことを考えたら、そこもバカにできないですよ。あ と、各ツマミの効き幅が広いですね。ドライブ・ツマミ の効き幅はかなり広い。それこそ、オーバードライブ的 なところからエグいファズみたいなサウンドまで OK で すね。 ANCHANG のオススメの使い方は ? ANCHANG:僕はブースター的に使っているんですけ ど、ずっとオンにして、ドライブはあまり上げずに、と いうことですね。あと、シビアに考えているのは、レベ この ANDORA'S BOX の発売を記念して、 2010 年2月 11 日に、東京・秋葉原のイケベ 楽器店の地下、クラブグッドマンでイヴェント が行なわれる。 詳細は未定だが、当日は ANCHANG 自身 が音の魅力や使い方のコツなどを伝授してくれ るかも? 最新情報は㈱ ESP のホームページ (http://www.espguitars.co.jp)で告知され るので、チェックしておこう! 発売記念イヴェントも 開催される! 54 編集部歪み担当が徹底試奏 ANCHANG (セックス・マシンガンズ) シグネイチャー・エフェクター 12 24 発売 !! ●コントロール:レベル、トーン、ドライヴ ●入出力端子:イン、アウト、DCイン ●電源:006P(9v)/ACアダプ ター ●外形寸法:82(幅)×44(高さ)×110(奥行き)mm ●重量:350g ●初回限定69台は、ドクロ・ノブ仕 様、ANCHANG直筆サイン入りの認定書付き ●12月24日発売 ESP ANDORA'S BOX ADB-1.0 ¥36,700 (初回限定69台/写真左) ¥33,600 (通常版)
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ANCHANG シグネイチャー・エフェクターが 発売!! …WeROCK的楽器試奏会、引き続きセックス・マシンガンズのANCHANG...

Jul 26, 2020

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Page 1: ANCHANG シグネイチャー・エフェクターが 発売!! …WeROCK的楽器試奏会、引き続きセックス・マシンガンズのANCHANG のシグネイチャー・ペダルを取り上げよう。ANDORA'S

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まず、ANDORA'S BOX 制作のキッカケから教えてください。ANCHANG:じつは、今回のANDORA'S BOXの話の前に、個人的に趣味で僕にエフェクターを作ってくれた人がいたんですね。で、こういうのもおもしろいなと思って、ESPに“こういうカスタム・エフェクターって作れないかな?”って聞いたのが最初ですね。ANCHANGと言えば、長い間、ボスの SD-1をブースター的に使っていましたよね?ANCHANG:そうですね。SD-1をブースター的に使って、サウンドに広がりも出ていたんですけど、その個人的に作ってもらったエフェクターを試してみたら、自分がプロデュースして、本当に自分が出したい音を出せるエフェクターを作れないものかなと思って。そうしたらESPも“ぜひ、やろう”と言ってくれたんです。具体的には、ESPにはどういうリクエストを出したんですか?ANCHANG:偉そうな言い方ですけど、完全プロ仕様ということですね。これはエフェクター批判に聞こえてしまうと嫌なんですけど、世の中にはホントにたくさんエフェクターがあるし、実際に、僕もギターを始めた頃からいろいろ試してきたし、今のギタリストもそうだ

WeROCK的楽器試奏会、 引き続きセックス・マシンガンズのANCHANGのシグネイチャー・ペダルを取り上げよう。ANDORA'S BOXと名付けられたこの歪み系ペダルは、ANCHANGの理想を100%実現したものだ。ANCHANGのインタヴューと試奏記事で、このモデルの魅力をお伝えしよう。

的楽器試奏会

 ここでは、約10年にわたって、ANCHANGのギター・サウンドを支えてきたESPの萬成氏が語ってくれた、“ANDORA'S BOX”の開発秘話を紹介しよう。 「ANCHANGも話しているように、最初はANCHANG の友達が作ってきたエフェクターがあって、“こういうことってESP でできないの?”って聞かれたことがスタートですね。ただ、ESPはギター・メーカーだし電気部門もあるんですけど、スタッフの数に限りがあるんですね。だから、ANCHANGに1台を作ることはできても、市販するということを考えたら、アフター・ケアなどもあって量産は難しいと。そこで、ESP が販売しているブート・レッグに製作を依頼することになったんです。 実際の製作にあたっては、僕自身が12 年間ぐらいセックス・マシンガンズのライヴやリハーサル、レ

コーディングなどを支えてきて、ANCHANG の理想の音はわかっているから、特に難しいことはなかったですね。ポイントとしては、ANCHANG用に改造を施して、長い間、使っていたボスの SD-1や、他にもボスのOD-1、あるいはチューブ・スクリーマーなどを軸に、“このエフェクターのここを採り入れて、でも、ここは不要だ ”的なことをブート・レッグに伝えて、あとは各ツマミの可変域を広くしてくれということぐらいでした。 最初に3台試作品が上がってきて、春ぐらいからリハーサルやツアーで試してきた中で、ベストの1台が決まり、そのまんまの仕様で市販することになりました。配線の取り回しからパーツ選びまで、信号のロスがないように、職人が1個1個ハンドメイドで仕上げています。ANCHANGが言っていましたが、15w 程度のアンプにつないでも、ANDORA'S

BOXの真価は発揮しづらいかもしれません。それに、セールス・トーク的には、“このエフェクターを使えば、ANCHANGと同じサウンドが出せる!”と言えばいいんでしょうけど、けしてそれだけじゃないし、むしろ最初に手にした時には、使いづらいなぁと思われるかもしれない。でも、すぐにダメだなと思わずにツマミをいろいろ試してほしいです。ホントにブースター的な役目もディストーションとしてのサウンドもOKですし、シングルコイルのギターとマッチレスのようなアンプと組み合わせてもいいと思います。  たかが 1台の歪み系エフェクターなんですけど、無限の可能性が秘められていると思います。ストラトにマッチレスというようなメタルじゃない使い方もおもしろいと思います。ANCHANG のファン以外にも試してほしいですね。ホントに自信がありますから」。

 ESPの担当スタッフが明かす、ANDORA'S BOXの開発秘話“ANCHANGと同じサウンド”だけじゃない、無限の可能性を秘めています

と思うんですね。でも、本気で音楽をやろうとすると使えないものがあるんですよ。例えば、ヘヴィ・メタル系の名前が付いている歪み系のエフェクターもよくあるし、そういうものは確かに歪むし、中学生とか高校生が家で弾くにはいいと思うんですよ。歪み系エフェクターをつなぐと、弾けていないのに、弾けたように聴こえますしね(笑)。僕自身がそうでしたから(笑)。プロ仕様と言っても、かなり幅広いですよね?ANCHANG:ええ。だから、僕の出したい音というところで、まずはブースター的な要素は入れたいと。そして、もっと言えば、ちゃんとしたアンプ……例えば、僕が使っているヒュース&ケトナーやマーシャル、メサ/ブギーなどの 50wとか100wのアンプの足りないところを補えるエフェクターであるということですね。そういうのが、今までの僕にとってはボスの SD-1だったんですよ。ただ、SD-1は使いやすかったし、音もよかったけど、10 年間ぐらい使ってきて、僕の中で完成してしまったというか、さらに求めるものが出てきたんです。さらに求めていたものとは?ANCHANG:チューブ・スクリーマー系のちょっとつぶれたような音ですね。僕がチューブ・スクリーマー系でいいなと思う部分は、オーバードライブとして使うの

■問い合わせ:㈱ ESP(http://www.espguitars.co.jp)

 まず、率直でわかりやすい感想を言うと、かなりグッドな感触が得られたエフェクターだった。とくに、オーバードライブともディストーションとも括りをしていないモデルだが、ブースター~オーバードライブまでを守備範囲とする歪みを持っている。 試奏は、“おそらく、こういう使用がベスト”と思われる、アンプで歪ませて、ブースター的に使う方法から始めてみた。まず、気になるオフ時の音色だが、他のエフェクターと比べても、接続した時の音色の劣化は、ほとんど感じられない。同じ系統のオーバードライブと弾き比べてみたのだが、他のモデルがローとハイの部分がまろやかに感じたのに対し、このモデルはオフ時でもローがしっかりと出てくれるので、“オンにしてる?”と錯覚してしまうほどだった。 続いて、エフェクトをオンにして、DRIVEゼロ、LEVEL12 時付近、TONE11時付近で試奏。もともとアンプで歪ませていたサウンドが、かなりブライトになってくれる。倍音成分も豊かで、ローの出方は秀逸。チューブ・スクリーマーを意識したとのことだが、チューブ・スクリーマーが中域寄りに特徴があるのに対して、このモデルはギターやアンプを原音のまま、トーンをブライトにして、ローの音圧を増してくれている。コンプ感は少ない方向で、他の歪み系エフェクターに比べると、ほとんどないように感じられ、ピッキングのニュアンスがそのままに再現される。逆に言えば、エフェクターをオンにしてコンプ感が得たいギタリストには、ニュアンスがそのまま出てしまうため、ごまかしが効かないエフェクターともいえる。 特にいい部分は、ローの出方と音圧の増し方だ。これまでも、この方向を追求した歪み系エフェクターは多くあったが、そっちを追求すると倍音が出にくかったり、低音が出すぎたりしてしまっていた。しかし、このモデルは、倍音もしっかりと増してくれ、嫌みがなく低音も音圧も増し

てくれる。音のツブ立ちも、かなりいい。 好みの問題もあると思うが、中域の膨らみとコンプ感の弾きやすさを求めるならチューブ・スクリーマー、原音に忠実でダイレクトな弾き心地とローの押し出し感を得たいなら、断然ANRORA’S BOXだろう。 ブースター使用で、かなり満足な結果が得られたが、続いてANRORA'S BOX単体の歪みを試してみた。アンプをクリーンにして、DRIVEをフルにすると、軽いクランチ程度の歪みが得られる。ディストーションほどの歪みではない。いっぽう、アンプをクランチ気味にして試すと、DRIVEをゼロでTONEの効き幅が体感できる。TONEがゼロだとミッドが強調され、フルだとプレゼンス的な高音のギラギラした部分が出てくれる。DRIVEをフルにすると、ヘヴィな歪みになってくれるので、オフで “アンプのみの軽いディストーション・サウンド ”、オンで “ソロもOKなヘヴィ・サウンド ”というセッティングができる。 ここまで、かなり高評価ばかり書いてきたが、難点も挙げておこう。まず、スイッチのオン/オフ時の音が大きい。アンプを歪ませての使用というのもあるが、大音量で弾くと、かなり“バチッ”と出てしまう。ただ、これはバンド内でプレイしていたり、弾き続けている際に切り替える時は、ほとんど気にならないだろう。また、これも、どうしようもないのだが、アンプで歪ませてDRIVEをゼロにしても、ブースター的に使う際、大音量だとどうしてもハウリングしやすい。 これは、LEVELを調整すれば解消するのだが、ANRORA'S BOXは LEVELを上げていくと、いい感じで音圧が増してくれるので、どうしても上げたくなる。12時から2時ぐらいの位置なら、ハウリングも出にくいので、使用する際は、そのあたりを試しつつベストのセッティングを探してほしい。

原音に忠実なローの出方と音圧の増し方を求めるギタリストに断然オススメ!

ルのコントロールです。この出力の部分で、歪み全体が変わってしまう。アンプ+オーバードライブというよりも、アンプ+ブースターとして、ムダなローをカットする、おいしいところを出すために作ったエフェクターですから。だから、ドライブ・ツマミで歪みを作るのではなく、レベル・ツマミで作るというのが僕の使い方ですね。それこそ、ドライブ・ツマミは全体を10とするなら、1とか2で充分です。あと、マルチを使っているギタリストにも、一緒に使うとデジタルくささが消えると思うのでオススメです。ただね……ギタリストのタッチやニュアンス、音の輪郭がハッキリ出てくれるので……僕のヘタさがバレてしまう(笑)。だから、このANDORA'S BOXを使うために、ギターの練習をしましたからね(笑)。つまり、さっきも言いましたけど、他のダメな歪み系のエフェクターのように、けしてギタリストの腕をごまかすものじゃないんですよ。本気で使う人しか使わないでくださいということなんです。あえて偉そうな言い方をしますけど、ANDORA'S BOXを使えないなら、プロ・ギタリストを辞めたほうがいいよと。 でも、このモデルのよさはなかなかわかりづらいかもしれないですけど、ホントにいい感じで潰れて、いい感じで輪郭が出ます。ちゃんとした歪みが生まれるアンプにつないだ時に、真価が出るんです。ホントに試してほしいですね。

輪郭をハッキリと出してくれる、完全プロ仕様の歪みです(ANCHANG)

◎こちらは通常版の ANDORA'S BOX。LEVEL と TONE、DRIVEの各ツマミのデザインが異なる以外、中の回路は初回限定版とまったく同じ。

ウワサの歪み系ペダル、いよいよ登場

ではなく、余分なローをカットしたり、ブーストして音の輪郭をハッキリさせるというところなんですよ。でも、チューブ・スクリーマーそのままだと、やっぱりどこか音が古くなってしまう。実際に、すでにライヴなどで使ってきたそうですが、その感想は?ANCHANG:正直言うと、使いづらいと思います。というのは、さっきも言ったんですけど、ちゃんとしたアンプにつながないとこのエフェクターの良さは出ないんですよ。僕が欲しかったのは、ライヴで使える、そしてレコーディングで使えるエフェクターだった。逆に言うと、よくギターを始めたばかりの中学生や高校生が、好きなギタリストに憧れて同じエフェクターを買って、というのがありますが、そういう狙いで入手すると失敗します(笑)。音のキャラクターとしては、どうなんでしょうか? やはりメタル・モデルなんですか?ANCHANG:そこはもちろん自信があります。でも、ブースターとして優れているので、例えば、ストラトキャスターとジャズコーラスのようなトランジスタ・アンプという組み合わせでもまったく問題ないし、フェンダーのツイン・リバーブのようなアンプだと、それこそスティーヴィー・レイ・ヴォーンのようなサウンドが得られます。その他に、使ってみて感じた特徴は?ANCHANG:堅牢ということですね。ライヴで使うということを考えたら、そこもバカにできないですよ。あと、各ツマミの効き幅が広いですね。ドライブ・ツマミの効き幅はかなり広い。それこそ、オーバードライブ的なところからエグいファズみたいなサウンドまでOKですね。ANCHANGのオススメの使い方は?ANCHANG:僕はブースター的に使っているんですけど、ずっとオンにして、ドライブはあまり上げずに、ということですね。あと、シビアに考えているのは、レベ

 このANDORA'S BOXの発売を記念して、2010 年2月11日に、東京・秋葉原のイケベ楽器店の地下、クラブグッドマンでイヴェントが行なわれる。 詳細は未定だが、当日はANCHANG自身が音の魅力や使い方のコツなどを伝授してくれるかも? 最新情報は㈱ ESPのホームページ(http://www.espguitars.co.jp)で告知されるので、チェックしておこう!

発売記念イヴェントも開催される!

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編 集 部 歪 み 担 当 が 徹 底 試 奏ANCHANG(セックス・マシンガンズ)のシグネイチャー・エフェクターが12月24日に発売!!

●コントロール:レベル、トーン、ドライヴ ●入出力端子:イン、アウト、DCイン ●電源:006P(9v)/ACアダプター ●外形寸法:82(幅)×44(高さ)×110(奥行き)mm ●重量:350g ●初回限定69台は、ドクロ・ノブ仕様、ANCHANG直筆サイン入りの認定書付き ●12月24日発売

ESP:ANDORA'S BOX ADB-1.0

¥36,700(初回限定69台/写真左)/¥33,600(通常版)