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国内航空貨物特集 CARGO JUNE 2008 25 厳しさ増す周辺環境 07 年度(07 年4月~ 08 年3月)の国内航 空貨物輸送量(本誌集計、全日空・日航・ ギャラクシーエアラインズ・スカイマーク4社の 合計)は、06 年度比 1.9 %増の 95 万 1719 ㌧ だった。プラスとなったものの、あくまでギャ ラクシーエアラインズが2年度目で路線を拡 張したことが主な要因。大手2社の動向は、 全日空が 1.3 %増、日航が 1.8 %減となっ た。スカイマークは昨年 12 月で貨物営業か ら撤退したため、大きく実績を落とした。 ここ数年の国内航空貨物の重量(本誌 集計)をみていくと u02年度=約78万 8000 ㌧u03 年度=約 82 万 4400 ㌧u04 年 度=約87万3800㌧ u05 年度=約 90 万 9800 ㌧ u06 年度=約 93 万 4300 ㌧。04 年 度のように、記録的な台風の襲来など不 安定な天候が生鮮貨物に打撃を与えたケ ースなど、国内航空貨物は天候にも大きく 左右される。 また旅客優先の機材繰りに伴う機材小 型化で、コンテナを搭載できる路線が減少 CARGO JUNE 2008 24 特集 2 国内航空貨物業界はここ数年、荷主のコスト削減要請、原油価格高騰などの逆風を受けており、航空会社やフ ォワーダーの苦戦が続く。航空会社の国内航空貨物部門の収益規模は横ばいで推移しており、マーケットはすで に頭打ち、との声も一部に聞かれる。一方で通信販売需要の高まりから、宅配貨物の迅速配送が求められ、航空 輸送が活用されるといった動きもある。フォワーダーは宅配貨物の強化とともに、特殊貨物輸送や個人情報保護関 連サービスに注力するなど新機軸を求めてチャレンジを続けている。さらに 2010 年 10 月の羽田再拡張を商機と とらえ、国際・国内の一貫輸送サービスの提供を目指す動きも出始めている。国内航空貨物業界の動向を追う。 (稲垣 健、井上昭憲、葉山明彦、安野耕史) 拡大する宅配需要、フォワーダーは特殊輸送も 機材小型化の逆風も羽田再拡張を商機とする声 特集 2 国内航空貨物特集 05 年度に 90 万㌧突破、07 年度 95 万㌧ 新規会社の動向に注目、変化の兆しも 国内航空貨物輸送量(本誌集計)は、05 年度に 90 万㌧を突破して以降、微増の水準で推移しており、07 年度 は約 95 万㌧となった。全日本空輸(ANA)や日本航空インターナショナル(JAL)の大手2社が取り扱いの大半 を占めていることに変わりはないが、日本で唯一、国内航空貨物専門に事業展開しているギャラクシーエアラ インズ(GXY)の動向も注目されている。需要拡大が続く宅配貨物の取り込みがより重要性を増すとともに、ス ターフライヤーと福山通運の提携など、新規航空会社の新たな動きも出始めた。また、羽田再拡張をにらんだ 動きもある。国内航空貨物業界に変化の兆しが少しずつ見え始めている。 SECTION1 マーケット概況 〈地域別概況〉 ANAグループ JALグループ ギャラクシー スカイマーク 北海道 92.9 102.4 全増 関東・東北 100.9 98.5 552.4 67.6 中部 100.3 108.5 近畿・中国・四国 102.1 95.0 全増 全減 九州・山口 104.7 101.0 557.1 81.3 沖縄 104.2 90.2 579.9 ※地域別は出発重量の前年度比(単位=%)を表記 ※SKYは 12 月末で貨物から撤退 表1 07年度の国内航空貨物実績(本誌集計、速報) ANAグループ JALグループ ギャラクシー スカイマーク 合計 全体(㌧) 462,666 450,476 27,703 10,874 951,719 前年度比(%) 101.3 98.2 922.0 73.9 101.9
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Jul 05, 2020

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国内航空貨物特集

CARGO JUNE 2008 25

厳しさ増す周辺環境

07年度(07年4月~08年3月)の国内航

空貨物輸送量(本誌集計、全日空・日航・

ギャラクシーエアラインズ・スカイマーク4社の

合計)は、06年度比1.9%増の95万1719㌧

だった。プラスとなったものの、あくまでギャ

ラクシーエアラインズが2年度目で路線を拡

張したことが主な要因。大手2社の動向は、

全日空が1.3%増、日航が1.8%減となっ

た。スカイマークは昨年12月で貨物営業か

ら撤退したため、大きく実績を落とした。

ここ数年の国内航空貨物の重量(本誌

集計)をみていくとu02年度=約78万

8000㌧u03年度=約82万4400㌧u04年

度=約87万3800㌧u05年度=約90万

9800㌧u06年度=約93万4300㌧。04年

度のように、記録的な台風の襲来など不

安定な天候が生鮮貨物に打撃を与えたケ

ースなど、国内航空貨物は天候にも大きく

左右される。

また旅客優先の機材繰りに伴う機材小

型化で、コンテナを搭載できる路線が減少

CARGO JUNE 200824

特集 2

国内航空貨物業界はここ数年、荷主のコスト削減要請、原油価格高騰などの逆風を受けており、航空会社やフ

ォワーダーの苦戦が続く。航空会社の国内航空貨物部門の収益規模は横ばいで推移しており、マーケットはすで

に頭打ち、との声も一部に聞かれる。一方で通信販売需要の高まりから、宅配貨物の迅速配送が求められ、航空

輸送が活用されるといった動きもある。フォワーダーは宅配貨物の強化とともに、特殊貨物輸送や個人情報保護関

連サービスに注力するなど新機軸を求めてチャレンジを続けている。さらに2010年10月の羽田再拡張を商機と

とらえ、国際・国内の一貫輸送サービスの提供を目指す動きも出始めている。国内航空貨物業界の動向を追う。

(稲垣 健、井上昭憲、葉山明彦、安野耕史)

拡大する宅配需要、フォワーダーは特殊輸送も機材小型化の逆風も羽田再拡張を商機とする声

特集 2

国内航空貨物特集

05年度に90万㌧突破、07年度95万㌧新規会社の動向に注目、変化の兆しも

国内航空貨物輸送量(本誌集計)は、05年度に90万㌧を突破して以降、微増の水準で推移しており、07年度

は約95万㌧となった。全日本空輸(ANA)や日本航空インターナショナル(JAL)の大手2社が取り扱いの大半

を占めていることに変わりはないが、日本で唯一、国内航空貨物専門に事業展開しているギャラクシーエアラ

インズ(GXY)の動向も注目されている。需要拡大が続く宅配貨物の取り込みがより重要性を増すとともに、ス

ターフライヤーと福山通運の提携など、新規航空会社の新たな動きも出始めた。また、羽田再拡張をにらんだ

動きもある。国内航空貨物業界に変化の兆しが少しずつ見え始めている。

SECTION1 マーケット概況

〈地域別概況〉

ANAグループ JALグループ ギャラクシー スカイマーク

北海道 92.9 102.4 全増 ―

関東・東北 100.9 98.5 552.4 67.6

中部 100.3 108.5 ― ―

近畿・中国・四国 102.1 95.0 全増 全減

九州・山口 104.7 101.0 557.1 81.3

沖縄 104.2 90.2 579.9 ―

※地域別は出発重量の前年度比(単位=%)を表記※SKYは12月末で貨物から撤退

表1 07年度の国内航空貨物実績(本誌集計、速報)

ANAグループ JALグループ ギャラクシー スカイマーク 合計

全体(㌧) 462,666 450,476 27,703 10,874 951,719

前年度比(%) 101.3 98.2 922.0 73.9 101.9

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国内航空貨物特集

便の廉価な商品や郵便商品などの競争は

激しい状況にある。なお、郵便事業会社

の商品「ゆうパック」は今年4月から一部、

航空貨物としての取り扱いが開始された。

コンテナ詰めのゆうパックが貨物として

計上され始めたもので、これに該当するゆ

うパックは全日空、日本航空の国内航空

貨物取扱量の約1割を占めることになりそ

うだ。その意味では08年度は、実績上は

前年度との比較で1割分が上乗せされる

ことになる。

一方、航空各社の機材小型化や運賃値

上げ、陸上輸送ネットワークの発達もあっ

て、国内航空貨物を扱うフォワーダーの経

営環境も厳しさを増している。宅配貨物は

増加傾向にあるものの、北海道や沖縄な

ど一部仕向地を除き、一般国内航空貨物

は頭打ち傾向にある。「昔のように航空輸

送は早いというイメージだけでは、顧客獲

得につながらない」「独自商品を開発でき

なくては必ず先細りになる」─国内フォ

ワーダー首脳は、こう口をそろえる。

国内航空輸送だけにとらわれない事業

展開が求められており、ジュラルミンケース

を活用した個人情報輸送の需要開拓や、

荷主の出荷計画に合わせたロジスティクス

事業を加味するなど、生き残りを懸けた戦

いを強いられている。

スターフライヤーと福山が提携

新規航空会社とフォワーダーの新しい取

り組みが今年3月に明らかになった。スタ

ーフライヤーと福山通運の提携がそれ。ス

ターフライヤーが運航する羽田~北九州

線(1日11便)の旅客機ベリースペースを

福山通運が独占使用することなどが柱。

福山通運は同スペースを活用することで、

首都圏と九州間の翌日配達サービスの強

化につなげる考えで、両社は今年7月に

協業を開始する計画だ。

スターフライヤーの機材はA320型で貨

物はバラ積み。福山通運は土・日曜日、

祝祭日を除く羽田~北九州線のスペース

を活用する。1便あたり2~3㌧の貨物搭

載が可能で、1日あたり片道20~30㌧程

度のスペースを活用することになる。さら

に両社は将来的には貨物専用機による航

空貨物事業展開の可能性も視野に入れて

いるという。現状、具体的なフレーター導

入計画はないが、国内・国際航空貨物事

業への共同参入も目指す。

また新規航空会社の貨物案件としては、

スカイネットアジア航空が昨年11月末、全

日本空輸と協業して貨物事業に参入した。

羽田~宮崎線(1日7便)のベリースペース

を全日空に提供しているもので、営業など

は全日空が手掛けている。一方、スカイマ

ークは昨年末に自社による貨物営業から

撤退。貨物事業に関しては現在、日航に

一部スペースを提供するに留まっている。

羽田再拡張踏まえた新戦略も

国内航空貨物業界の注目は10年10月

末に供用開始が予定されている羽田再拡

張だ。第4滑走路が供用されることで、昼

間時間帯(午前6時~午後11時)の発着枠

が現行の年間30.3万回から40.7万回に拡

大する。増加分約11万回のうち、国内線

へは約8万回が振り分けられる予定だ。さ

らに深夜早朝時間帯(午後11時~午前6

時)に関しては、年間発着枠4万回のうち

1万回が国内線に割り振られる予定だ。

航空会社、フォワーダーともに羽田発着

路線への貨物搭載に着目している。羽田

発着の深夜貨物便の拡大も想定されるほ

か、羽田を中継拠点として、国内~国際貨

物の一貫輸送サービスの強化、それに伴

う新規需要開拓を目指す航空会社やフォ

ワーダーもある。

例えば宅配便最大手のヤマトホールデ

ィングスは羽田空港対岸の工場跡地に大

規模なロジスティクスセンターを開設する計

画だ。同拠点を羽田国際化への対応施設

とするとともに、国内~国際貨物の中継拠

点として活用する構え。すでに航空会社

やフォワーダーは羽田を活用した新たに事

業展開に向けて戦略を練り始めている。

CARGO JUNE 2008 27

特集 2

している。国内航空貨物輸送は、一部機

材を除き旅客機のベリースペースを活用し

ており、旅客マーケットは以前の大量輸送

時代から中小型機による多頻度・少量輸

送時代に移行している。機材小型化が国

内航空貨物業界への逆風となっている。

03年9月にスタートし、05年8月末に猶

予期間が終了、全面施行となった大型トラ

ックのスピード規制も、当初見込まれてい

たほどの航空輸送シフトにはつながらなか

った。荷主の輸送コスト削減要請の高まり

とともに、トラック会社も出荷前倒しに対し

てさまざまな対策を施したことが要因と見

られている。

さらに、昨今の原油高は国内航空貨物

業界にも大きく影響している。日航と全日

空の大手2社は、原油価格高騰などを背

景に国内航空貨物運賃改正に踏み切っ

た。4月1日から日航は一律10%値上げ。

全日空は新運賃体系を導入し、乗り継ぎ

便で割安感を出したが、概ね10%程度の

値上げが見込まれている。日本航空の国

内貨物運賃改定は約25年ぶり、全日空は

8年ぶり。両社は、フォワーダーや荷主に

対して、それぞれ新運賃体系について理

解を求めているところだ。

宅配貨物が底上げ

厳しさが増す環境の中で、国内航空貨

物を増加させた背景には、宅配貨物の取

り扱いが伸びていることが上げられる。

全日空は03年11月に羽田~新千歳間で、

旅客便のベリースペースを活用した深夜貨

物便の運航を開始。04年7月には羽田~

佐賀線も開設し、後に深夜便へのフレータ

ー導入にも踏み切った。ヤマト運輸と提携

して、宅急便配送のスピードアップにつな

げるなど、宅配貨物を軸とした新施策が見

られ始めた。

さらに06年10月に運航を開始したSGホ

ールディングスのギャラクシーエアラインズは業

界に大きなインパクトを与えた。従来のトラッ

ク輸送の料金水準で翌日配送地域を拡大

することをコンセプトに、羽田~北九州、羽

田~那覇線でフレーター運航を開始。現在、

フレーターネットワークは羽田、北九州、那覇

に加えて札幌、関西にも広がっている。

航空貨物運送協会(JAFA)がまとめた

07年度の国内利用航空運送実績を見て

も、国内利用航空全体の件数実績は06年

度比2.3%増にとどまるものの、国内航空

宅配便は10.2%増と、宅配貨物の伸びが

際だっている。

ただし、国内航空宅配は特定の大手会

社が牽引けんいん

している側面がある。大手宅配

CARGO JUNE 200826

羽田空港

スターフライヤー

【国内航空宅配便】【国内利用航空】

2007年度件件  数

前年比% トン重  量

前年比% 個個  数

前年比%4月 4,091,270 103.0 62,583 99.3 2,812,247 113.7

5月 4,103,408 107.0 60,313 104.2 2,646,076 110.7

6月 4,202,146 104.6 60,768 104.1 2,983,229 112.6

1Q 12,396,824 104.8 183,664 102.4 8,441,552 112.4

7月 4,647,403 105.1 67,919 106.5 3,495,128 108.0

8月 4,247,474 103.7 66,953 103.0 3,009,312 110.1

9月 4,098,990 97.6 65,147 98.5 2,815,371 108.1

2Q 12,993,867 102.2 200,019 102.6 9,319,811 108.7

上期計 25,390,691 103.5 383,683 102.5 17,761,363 110.4

10月 4,258,566 102.5 67,147 99.7 2,941,413 113.0

11月 4,236,988 102.2 65,377 101.1 2,993,204 109.9

12月 5,600,307 100.0 78,425 99.7 4,030,434 104.3

3Q 14,095,861 101.4 210,949 100.1 9,965,051 108.4

1月 3,838,459 102.1 55,321 101.7 2,456,748 106.2

2月 4,109,930 102.7 59,172 103.7 2,725,724 111.4

3月 4,321,096 98.1 66,597 97.9 2,871,524 118.4

4Q 12,269,485 100.8 181,090 100.9 8,053,996 112.1

下期計 26,365,346 101.2 392,039 100.5 18,019,047 110.0

合計 51,756,037 102.3 775,722 101.5 35,780,410 110.2

表2 07年度国内利用航空実績(JAFAまとめ)

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国内航空貨物特集

どの費用削減を含めて推進していく。関

西空港では今年度から業務委託先をキャ

セイ関西ターミナル・サービス(CKTS)に

変更し、運営体制を見直した。このほか

関西と那覇で各1機昼間駐機させている

ため、月1回の羽田のA整備ではフェリー

運航を行い、費用がかさんでいる。A整

備自体は09年度から自営化する方向で検

討を加えているが、こうしたムダを極力排

除していく方針で、さまざまな点の見直し

を検討していく。

同社は早期には黒字化することを目標

としている。08年度は原油価格続騰など

で黒字化は微妙だが、収支均衡に近づく

よう努力していくという。なお、国際線進

出は、08年度は特に予定しておらず、国内

貨物に専念していく。

全日本空輸

国内~国際一体の貨物取扱に注力

沖縄ハブや羽田再拡にらみ体制整備

全日本空輸の07年度の国内貨物取扱

量は06年度比1%増の46万2000㌧。国

内貨物の総需要に伸び悩み感があるもの

の、07年度末には若手社員を中心に増収

プログラムを作成するなど、国内貨物需要

の取り込み、新規需要創出を目指した取

り組みを進めている。同時にコンテナへ

の搭載率向上などより効率的な事業運営

に取り組んでいる。スカイネットアジア航空

と貨物事業で提携しており、スカイネットの

スペースを利用した貨物販売を手がけて

いる。現在、宮崎線で同事業を手がけて

おり、生鮮貨物で需要があるという。

国内航空貨物傾向は、一般混載が減少

傾向にある一方で宅配貨物が伸びてい

る。また深夜フレーター便は「羽田→佐賀

→関空→海外」で運航しているほか、羽田

~新千歳で旅客便(B777型)のベリーを

活用した深夜便を運航している。

今年4月には運賃改訂を実施した。全

国を10区分のゾーンに分類。ゾーンの組

み合わせごとに一律の運賃額を設定した

もの。平均して10%前後の値上げとなる

が、乗り継ぎ便で割安となるなどのメリッ

トも提供している。

全日空は現行約1100億円の貨物事業

収入(国際・国内、郵便を含む)を11年度

には2300億円に拡大する方針だ。貨物事

業拡大を進めるために営業部門の充実を

図っている。従来は東京、名古屋、大阪の

みだった販売部を北海道や九州、沖縄に

も置き部長を配置した。販売推進部は日

本を含む世界全体の営業を見る役割を担

っている。海外でも貨物営業専門スタッフ

の配置を推進している。国際と国内を一

貫した流れととらえ、内際一体の観点で貨

物事業を拡大していく方針だ。これは沖縄

ハブ構想も念頭に置いた施策だ。

また、10年の羽田再拡張をにらみつつ、

羽田を中継拠点した国際~国内の貨物取

り込みを進めていく考えだ。羽田~上海・

虹橋線、羽田~ソウル・金浦線、羽田~香

港線の旅客便ベリーを活用した貨物搭載

も手がけている。これら国際貨物と国内

線を接続することで貨物事業拡大を進め

ていく方針だ。沖縄ハブ構想のなかでは

那覇~成田、那覇~羽田、那覇~関空の

フレーター路線も視野に入れる。今年4月

に設立された日本通運や近鉄エクスプレ

スなどとの合弁会社である「オールエクス

プレス」の事業展開も絡めた形で貨物事

業拡大を目指す。

貨物本部販売推進部の宮紳介部長は

「羽田再拡張、沖縄ハ

ブ構想などをにらみな

がら、内際一体の観

点で貨物拡大を図っ

ていく。国内旅客、国

際旅客とともに事業の

3本柱の1つとして期

待に応えることができ

る体制作りを進めてい

く」、また同部の近藤

哲哉主席部員は「新し

い貨物需要を創出して

いくためのさまざまな

施策を手がけていく」

と語る。

CARGO JUNE 2008 29

特集 2

ギャラクシーエアラインズ

08年度も2機8便体制を基本に運営

地方の販売強化と業務効率化目指す

就航2年目のギャラクシーエアラインズ

の07年度貨物輸送実績は、A300-600型

フレーター2機・4路線(羽田~北九州、同

~那覇、同~新千歳、関西~新千歳の各

往復)で、日航のコードシェア搭載分を除

き約2万7700㌧(年末の関西~北九州線

運航分を含む、郵便は含まず)だった。07

年度は4月から東京~札幌、関西~札幌

線の2路線を開始し、路線を倍に広げた。

4月早々航空機に地上支援機器(GSE)

が接触する事故があって1カ月近く1機体

制を余儀なくされたが、その後は点検体

制を強化し安定した運航を実施、最終的

に就航率を98%として目標を達成した。

佐川急便の翌日配達地域の拡大に沿っ

て宅配貨物の搭載量を大きく増加させる

一方、メーカーにも拡販するなど販売分野

を広げた結果、路線によっては収支がとれ

つつある。

08年度は2機で1日8便の体制を基本

的に堅持し、販売の拡充と諸コスト削減

を含めた業務効率化を

深化させる。若佐照夫

社長は「増機も検討課

題ではあるが、最も需

要のある羽田空港では

現状、発着枠増加が望

めない。また、2機でも

1日10~12便を組め

なくはないが、新路線を開設するより現路

線の地方発を販売強化するのが先決」と

しており、現行体制を基本に運営していく。

日本の国内航空貨物の貨物構成をみる

と、地方発は生鮮貨物の比率が多いが、

ギャラクシーの運航時間帯からすると市場

入れ生鮮貨物を運ぶのは難しい。このた

め宅配貨物の強化はもとより、メーカーの

地方工場から出荷される部品などを取り

込んでいく方向だ。

業務効率化では外注業務や運航経費な

CARGO JUNE 200828

機材小型化の一方でフレーター路線増加も国際・国内一体型の戦略で新機軸見いだす

現在、国内航空貨物事業を展開している主だった航空会社は、全日本空輸と日本航空インターナショナル、

ギャラクシーエアラインズの3社。機材小型化に伴うスペース減少の一方で、ギャラクシーエアラインズはフ

レーター運航路線を増やしている。全日空や日航インターも国際・国内一帯型の貨物輸送戦略を進めるなど、

新たな展開も見え始めた。航空会社3社の動向をレポートする。

SECTION2 航空会社編

若佐社長

宮部長

近藤主席部員

GXYのA300-600F

Page 4: 24 - Daily-Cargo · 国内航空貨物特集 cargo june 2008 25 厳しさ増す周辺環境 07年度 (07年4月~08年3月) の国内航 空貨物輸送量 (本誌集計、

国内航空貨物特集

近鉄ロジスティクス・システムズ

北海道・九州など4社合併で新体制

東京ターミナルでロジスティクス強化

近鉄ロジスティクス・システムズ(KLS)、

近鉄エクスプレス北海道、近鉄エクスプレ

ス九州、近鉄エコロジスティクスの4社は今

年3月に合併し、国内航空貨物事業の新

体制を構築した。北海道、九州各社は人

材確保や地域事業拡大などを目的に分社

化したが「当初の目標は達成した。KLS

に一本化することで経営資源の選択と集

中を行い、国内航空貨物の需要開拓に努

めていく」(安河正史社

長)と強調する。

近鉄ロジスティクス・

システムズは「東京ター

ミナル」(東京都品川区

八潮)に本社や国内貨

物のハブ機能、保管加

工機能を置いている。

同ターミナルの敷地面積は約1万6000㎡。

地上5階建て(事務所棟5階、倉庫棟4階)

で、延床面積は2万7800㎡。倉庫棟の1・

3階は空調倉庫になる。羽田空港までわ

ずか6kmしか離れていない都心型複合

施設だ。

倉庫棟では、半導体や精密機器、メディ

カル関連などのロジスティクス事業を手掛

けている。安河社長は「今年7月には新規

顧客にロジスティクスサービスを提供する。

CARGO JUNE 2008 31

特集 2

日本航空インターナショナル

優先取り扱いなど新商品で需要創出を

品質重視、内際接続貨物拡大を

日本航空インターナショナルは昨年5月に

本社貨物郵便本部傘下の「国内貨物郵便

事業部」を設立した。国内貨物郵便の販売

政策、空港でのオペレーションを1つの組織

で手がける体制となり、羽田空港の西側貨

物地区の日航上屋にオフィスを置く。同オ

フィスには東京空港支店貨物郵便部も同居

している。国内貨物郵便事業部の石坂明

部長は「国内貨物の企画・マーケティング機

能、空港オペレーションを1カ所に集約する

ことで、顧客ニーズに的確、迅速に対応す

る体制になった」と説明する。

グループの国内貨物の関連組織として

は、ジャルカーゴセールス(JCS)の国内貨物

郵便販売企画部、東日本国内貨物郵便販

売部、北海道販売部、中部販売部、西日本

販売部、九州販売部、沖縄販売部がある。

07年度の国内貨物取扱量は06年度比

2%減の約45万㌧。貨物の取扱比率(重

量ベース)は宅配約30%、生鮮約25%で、

そのほかB2Bの一般貨物やB2Cのダイレ

クトメールなど。福岡~沖縄、東京~札幌、

関空~福岡など機材の小型化が進み供給

スペースは3%減だった。スペース減をギ

ャラクシーやスカイマークとのコードシェア

で補完している。石坂部長は「物流動向と

しては宅配貨物の需要が伸びている一方

で、生鮮貨物やB2Bの一般貨物は弱含み」

と説明する。

郵便を合わせた07年度売上は約380億

円。ゆうパックは4月から貨物としての取

り扱いだが、一部(バラ積みのゆうパック)

は6月まで郵便としての取り扱い猶予期間

を延長している。郵便の貨物化に伴い、貨

物取扱実績は1割前後

上がる見通しだ。また

今年4月から国内線貨

物運賃を一律10%上

げた。石坂部長は「荷

主、フォワーダーの理解

を得るべく努力してい

るところ」と話す。

08年度は引き続き機材小型化が進み、

供給量は07年度比3%減の見通し。ギャ

ラクシーやスカイマークとのコードシェアで

スペースを補うなどして、貨物取扱量の減

少は食い止める構えだ。さらに空港施設

や人員配置についてより効率的な運用を

図り、コスト削減につなげる。同時にフォワ

ーダーとも施設、オペレーションの共有化

による効率化が可能かどうかを探っていく。

品質向上策としては、これまで成田や関

空、中部、福岡の国際貨物施設で取得し

たISO9001を、07年度に羽田においても

取得した。国内貨物の最重要基幹空港と

して品質向上に向け先陣を切った形だ。

CS向上では、危険物取り扱いに関する

専用ダイヤルを設定して、質問・疑問に対

応するなどCS向上に向けた取り組みも進

めている。

取扱量の拡大策では、優先取り扱い、

生鮮などの特殊取り扱いなど新商品を含

めた様々な工夫で新規需要拡大を図って

いく方針。昨年10月からは、当初は見送

っていた加熱式弁当の輸送も開始した。

第3者機関のチェックを踏まえ、安全性を

確認し、梱包などに工夫を加えて実施し

ている。

さらに羽田国際線を活用した形で、羽田

を中継拠点とした国内~国際貨物需要を

取り込む。10年10月の羽田国際化を前に

した段階で、現行の羽田国際線を利用し

た形で国内線と国際線の接続による貨物

取扱量の拡大につなげる。すでに実施し

ている羽田~上海・虹橋線、羽田~ソウ

ル・金浦線、今年7月に開始する羽田~香

港線で同施策に取り組む。

CARGO JUNE 200830

生き残りかけ独自商品開発個人情報輸送やロジス強化

過去に例のない原油高による燃料費の高騰で航空各社は国内フォワーダーに運賃値上げを提示。フォワー

ダーによると、遠隔地を除き、陸上輸送に比べて時間的にも差別化の難しい地域では、一般国内貨物輸送の

運賃単価下落が続いているという。国内貨物便を運航する航空会社はあるものの、旅客優先の機材編成で、深

夜早朝帯の投入機材はコンテナを搭載できない小型機に移行していることも、国内航空貨物輸送には大きな

マイナス要因だ。日本全国に張り巡らされた高速交通網を利用することで、陸上輸送でも航空輸送に負けない

スピード感あるサービスを提供している。一方で、国内航空貨物フォワーダーは特殊ケースを活用した個人情

報輸送の需要開拓や、荷主の出荷計画に合わせてロジスティクス事業を加味するなど、生き残りを懸け独自

商品を打ち出している。国内主要フォワーダー各社の事業戦略をリポートする。

SECTION3 フォワーダー編

石坂部長

安河社長

近鉄ロジスの集配車両羽田西側貨物地区の上屋施設