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2019 年度日本トライボロジー学会功績賞受賞者
野坂 正隆 君
野坂正隆氏は宇宙航空研究開発機構(JAXA)にてロケットエンジン研究
開発センター長を歴任し宇宙機器の真空潤滑技術の研究や液体水素酸素ター
ボポンプの高速軸受軸シールの極低温潤滑技術の研究開発に尽力し日本の
基幹ロケットの LE-5LE-7 エンジンや将来高性能エンジンの開発に貢献した
また東京大学教授としてDLC膜の摩擦フェイドアウトに関する研究発展に
尽力した研究成果は本学会誌を中心に多くの学会誌に公表しその功績に対
して多数の賞を受賞した本学会からは技術賞を 2回論文賞を 2回受賞して
いるさらに本学会の理事(2003~2004)評議員(2005~2009)およびトラ
イボロジー懇談会員長(2003~2004)を務めるなど本学会の発展に貢献した 野坂氏
三科 博司 君
三科博司氏は1980 年に東京工業大学大学院理工学研究科博士課程を修了し
工学博士の学位を授与された同年理化学研究所に入所金属を中心に摩擦
摩耗の基礎研究に取り組まれ1983 年から 1984 年にかけてアメリカ航空宇
宙局ルイス研究センターで真空中の半導体と金属の摩擦特性の研究に従事され
た1997 年に千葉大学工学部電子機械工学科に移られてからもトライボロ
ジーの研究と教育に尽力された三科氏の研究は摩耗素子が生成する摩耗の
素過程から摩耗粉が発生するまでの凝着摩耗の摩耗粉生成過程の解明さらに
摩擦表面の物理化学的性質と摩耗現象のつながりを究明することに特徴があり
これらの研究により論文賞を 2件受賞されている本会においては1998 年度
から 2011 年度まで摩耗研究会の主査をされ摩耗シンポジウムの開催「摩擦
摩耗試験機とその活用」の編集など主導的な役割を果たされた理事 2期を務
められトライボロジーおよび本会の発展に多大な貢献をされた
三科氏
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2019 年度日本トライボロジー学会功績賞受賞者
134071134071岡 武雄 君
134071134071岡武雄氏は1963 年に富山大学文理学部理学科を卒業後通商産業省工業
技術院機械試験所(後に機械技術研究所に改称)に入省同基礎機械部機械要
素課長同極限技術部精密機構研究室長を務められた退職後は東京農工大学
明治大学で工業教育に携わられると同時にTHK 株式会社で技術の実用化に
も努められた一貫して転がり軸受の性能向上評価に係る研究に取り組まれ
産業界から強い要請のある軸受の異常診断技術についてAE法に発生位置標
定という独自技術を加えて損傷発生原因の特定に寄与されたことにより1991
年に慶應義塾大学より博士号を授与されたこれに関連して産学官連携型の研
究会を組織運営し軸受鋼における非金属介在物の評価法研究会等に発展さ
せた本会理事を 2期務められたほか転がり疲れ研究会とメンテナンスト
ライボロジー研究会主査を務められるなどトライボロジー分野および本会に
多大な貢献をされた
134071134071岡氏
Ali Erdemir 君
ALI ERDEMIR 博士は1977 年にイスタンブール工科大学(トルコ)を卒業
し1986 年にジョージア工科大学(米国)で材料科学工学の PhD学位を授与さ
れた1987 年にアルゴンヌ国立研究所(Argonne National Laboratory(米国))
年より International Tribology Council の President として世界のトライボロ
ジーコミュニティを牽引してきている重要人物でもある
氏はかねてより日米間のトライボロジスト交流を積極的に働きかけ近年は
毎年日米両学会の会長等首脳陣の意見交換交流が持たれるに至った数年に
わたる協議の結果双方の学会誌論文誌の広報をお互いの会員に行うことや
ITC Sendai 2019 における STLE-JAST 共催の Young Tribologists セッション
など具体的な両学会間の交流が開始されたこのように氏は国際化をはじめと
する各種 JAST活動の活性化に大きく貢献をされた
Erdemir 氏
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2019 年度日本トライボロジー学会論文賞受賞者
大久保 光 君(東京理科大学 大学院工学研究科)
田所 千治 君(埼玉大学 大学院理工学研究科)
平田 祐樹 君(東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所)
佐々木 信也 君(東京理科大学 大学院工学研究科)
大久保氏 田所氏 平田氏 佐々木氏
In Situ Raman Observation of the Graphitization Process of Tetrahedral Amorphous CarbonDiamond-Like Carbon under Boundary Lubrication in Poly-Alpha-Olefin with an OrganicFriction Modifier
P S Suvin(National Institute of Technology Karnatakaoacute Surathkaloacute India)Satish V Kailas(Indian Institute of Scienceoacute Bangaloreoacute India)
P S Suvin
Study and Comparison of Lubricity of Green and Commercial Cutting Fluid UsingTool-Chip Tribometer
A lubricant is a substance introduced between surfaces in mutual contact to reduce friction whichultimately reduces the heat generated when the surfaces move Liquid lubricant designed specifically formetalworking processes such as turning drilling milling etc is known as cutting fluids (CF) Cuttingfluid is a blend or combination of oil emulsifier and additives mostly derived from chemicals orpetroleum products However it has got many side effects as it is toxic and harmful to environmentduring its disposal Hence vegetable based cutting fluid or green cutting fluid (GCF) is being developedand gaining importance with time Properties of these cutting fluids are dependent on the nature of thebase-oil nature of surfactants and the properties of water used to make the CF These fluids act on thenascent surfaces generated during cutting to form a low friction boundary layer as they slide past thecutting toolWe propose a unique tool-chip tribometer (TCT) in which these boundary layers formed by the actionof lubricants on freshly cut surfaces can be generated and their tribological properties alone studied inisolation This equipment can be used to study the fundamental mechanisms of the lubrication usingemulsions on nascent surfaces and can be used in optimizing the composition of such fluids The scope ofthis work is to assess different cutting fluids in this tool-chip tribometer The tribological performances ofmetal cutting on nascent surfaces are compared Unlike in the conventional methods of assessing thelubricity of cutting fluids using cutting tests here the friction has been evaluated separately from cuttingforces
グラフェンは sp11085301108530結合により平面上に六角形状に配列した炭素原子からなる二次元分子である極めて高い電子移動度や光透過度から半導体材料や透明電極としての応用が期待されておりまた優れた機械的強度化学的安定性を持つことから磁気ディスク等の極薄潤滑保護膜としての研究が進められている高品位なグラフェンを大規模に合成する方法として加熱したNiCu 等の触媒金属膜上で原料となる炭化水素ガスを熱分解させてグラフェンを合成する熱 CVD法が最も広く用いられているしかしこの手法で合成したグラフェンを機能性材料として用いるためには触媒膜上から目的とする基板上へと複雑なプロセスを経て転写する必要がありグラフェンを実用化する上での大きな障壁となっているこのため任意の基板上へとグラフェンを直接合成する手法が研究されておりこれまでに極めて薄い触媒膜を用いてグラフェンを合成した後に触媒を加熱蒸発させグラフェンのみを基板上に残す方法や金属蒸気を触媒として利用する方法等が報告されているが大面積にわたって均一にグラフェンを合成することは困難であるとされている本研究では基板上に炭素イオンを注入した Ni 膜と Cu 膜を積層してアニーリングすることで基板上へのグラフェンの直接合成を試みた
10486591048659104868110486811048655104865511085301108530基板上にスパッタ成膜したNi 膜にプラズマ利用イオン注入法を用いてメタンイオンを注入しさらにその上にCu膜をスパッタすることで炭素を含むNi 膜と Cu膜の積層膜を生成しこれを真空中にて 850でアニーリングすることによってグラフェンを基板と積層膜の界面に生成したNi 膜の厚みを 50nm150 nmCu 膜の厚みを 50nm350 nmと変化させ合計 4通りのサンプルを作成した積層膜をエッチングして取り除いたのち基板上に形成されたグラフェン膜をラマン分光分析法を用いて評価したNi 膜の厚みが比較的薄いサンプルについては欠陥を含む複層のグラフェンが基板全面にわたって合成されていたのに対しNi 膜が厚いサンプルについては微弱な非晶質炭素のピークが観測されたこの成膜メカニズムとしてはNi と Cu 中での炭素固溶度の違いによるものが考えられNi よりも CuおよびNiCu 合金の方が炭素固溶度が小さいためアニーリングによってNi と Cu が相互拡散し合金を形成するにつれて炭素が界面付近に集中しNiCu 合金の触媒作用によってグラフェンが合成されたものと考えられる本研究ではNi と Cu を積層した触媒膜を用いて触媒膜と基板上の界面に直接大面積のグラフェンを合成することに成功した任意の基板上に転写プロセスを用いることなく直接グラフェンを形成することができる本手法は表面保護膜の形成手法として有意義であると考えられる
対象論文トライボロジー会議 2019 春 東京 B25
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2019 年度日本トライボロジー学会学生奨励賞受賞者
大内 春花 君(東京理科大学 大学院工学研究科)
大内氏ZDDP と無灰摩擦調整剤併用による ZDDP 錯体構造変化がトライボロジー特性へ与える影響
本研究は ZDDP と無灰 FM併用時の潤滑機構の解明を目的に摩擦面に形成されるトライボフィルムの特性と摩擦挙動との関係を考察したものであるしゅう動部品における要求性能を満たすために潤滑油添加剤の組合せや配合割合が重要となる個々の添加剤の機能は明らかになっているが複合添加した場合相乗効果が発現する場合と互いの効果を阻害する場合があり効果の解明はあまり進んでいない実際に使用される潤滑油は複合添加油であるためより高性能な潤滑油の開発には添加剤間の相互作用機構の解明が必要不可欠となるジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)はトライボフィルムを摩擦面に生成し耐摩耗性向上に寄与する添加剤である一方で高摩擦化をもたらし無灰摩擦調整剤(無灰FM)との併用による摩擦低減が試みられているがその潤滑機構は不明な点が多いそこでZDDPと無灰 FM併用時の潤滑機構を解明するためZDDP 単独添加油と ZDDP10486191048619無灰 FM複合添加油により形成されたトライボフィルムの特性を調査した無灰 FM はグリセリンモノオレート(GMO)とタロウジエタノールアミン(TDEA)を用いたSRV摩擦試験の結果よりZDDP + TDEA複合添加油が最も低摩擦を示したXPS 元素分析結果よりZDDP単独添加油と ZDDP + GMO複合添加油のトライボフィルムは上層は Pが Sよりも高濃度で存在したが下層は S が P よりも高濃度で存在したZDDP10486191048619TDEA 複合添加油の場合は常に Sが P よりも高濃度で存在した 10486541048654104865310486531048658104865811085311108531110852911085291109522110952211085601108560 分析結果よりZDDP 単独添加油と ZDDP10486191048619GMO 複合添加油中では中性塩として ZDDP は存在したがZDDP10486191048619TDEA複合添加油中では塩基性塩に変化していた以上より複合添加する無灰FMの種類によって ZDDPの錯体構造が変化しZDDP単独添加の場合と深さ方向の組成が異なる性質のトライボフィルムを形成することで摩擦挙動に影響を与えたと考えられると結論付けた
年より International Tribology Council の President として世界のトライボロ
ジーコミュニティを牽引してきている重要人物でもある
氏はかねてより日米間のトライボロジスト交流を積極的に働きかけ近年は
毎年日米両学会の会長等首脳陣の意見交換交流が持たれるに至った数年に
わたる協議の結果双方の学会誌論文誌の広報をお互いの会員に行うことや
ITC Sendai 2019 における STLE-JAST 共催の Young Tribologists セッション
など具体的な両学会間の交流が開始されたこのように氏は国際化をはじめと
する各種 JAST活動の活性化に大きく貢献をされた
Erdemir 氏
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2019 年度日本トライボロジー学会論文賞受賞者
大久保 光 君(東京理科大学 大学院工学研究科)
田所 千治 君(埼玉大学 大学院理工学研究科)
平田 祐樹 君(東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所)
佐々木 信也 君(東京理科大学 大学院工学研究科)
大久保氏 田所氏 平田氏 佐々木氏
In Situ Raman Observation of the Graphitization Process of Tetrahedral Amorphous CarbonDiamond-Like Carbon under Boundary Lubrication in Poly-Alpha-Olefin with an OrganicFriction Modifier
P S Suvin(National Institute of Technology Karnatakaoacute Surathkaloacute India)Satish V Kailas(Indian Institute of Scienceoacute Bangaloreoacute India)
P S Suvin
Study and Comparison of Lubricity of Green and Commercial Cutting Fluid UsingTool-Chip Tribometer
A lubricant is a substance introduced between surfaces in mutual contact to reduce friction whichultimately reduces the heat generated when the surfaces move Liquid lubricant designed specifically formetalworking processes such as turning drilling milling etc is known as cutting fluids (CF) Cuttingfluid is a blend or combination of oil emulsifier and additives mostly derived from chemicals orpetroleum products However it has got many side effects as it is toxic and harmful to environmentduring its disposal Hence vegetable based cutting fluid or green cutting fluid (GCF) is being developedand gaining importance with time Properties of these cutting fluids are dependent on the nature of thebase-oil nature of surfactants and the properties of water used to make the CF These fluids act on thenascent surfaces generated during cutting to form a low friction boundary layer as they slide past thecutting toolWe propose a unique tool-chip tribometer (TCT) in which these boundary layers formed by the actionof lubricants on freshly cut surfaces can be generated and their tribological properties alone studied inisolation This equipment can be used to study the fundamental mechanisms of the lubrication usingemulsions on nascent surfaces and can be used in optimizing the composition of such fluids The scope ofthis work is to assess different cutting fluids in this tool-chip tribometer The tribological performances ofmetal cutting on nascent surfaces are compared Unlike in the conventional methods of assessing thelubricity of cutting fluids using cutting tests here the friction has been evaluated separately from cuttingforces
グラフェンは sp11085301108530結合により平面上に六角形状に配列した炭素原子からなる二次元分子である極めて高い電子移動度や光透過度から半導体材料や透明電極としての応用が期待されておりまた優れた機械的強度化学的安定性を持つことから磁気ディスク等の極薄潤滑保護膜としての研究が進められている高品位なグラフェンを大規模に合成する方法として加熱したNiCu 等の触媒金属膜上で原料となる炭化水素ガスを熱分解させてグラフェンを合成する熱 CVD法が最も広く用いられているしかしこの手法で合成したグラフェンを機能性材料として用いるためには触媒膜上から目的とする基板上へと複雑なプロセスを経て転写する必要がありグラフェンを実用化する上での大きな障壁となっているこのため任意の基板上へとグラフェンを直接合成する手法が研究されておりこれまでに極めて薄い触媒膜を用いてグラフェンを合成した後に触媒を加熱蒸発させグラフェンのみを基板上に残す方法や金属蒸気を触媒として利用する方法等が報告されているが大面積にわたって均一にグラフェンを合成することは困難であるとされている本研究では基板上に炭素イオンを注入した Ni 膜と Cu 膜を積層してアニーリングすることで基板上へのグラフェンの直接合成を試みた
10486591048659104868110486811048655104865511085301108530基板上にスパッタ成膜したNi 膜にプラズマ利用イオン注入法を用いてメタンイオンを注入しさらにその上にCu膜をスパッタすることで炭素を含むNi 膜と Cu膜の積層膜を生成しこれを真空中にて 850でアニーリングすることによってグラフェンを基板と積層膜の界面に生成したNi 膜の厚みを 50nm150 nmCu 膜の厚みを 50nm350 nmと変化させ合計 4通りのサンプルを作成した積層膜をエッチングして取り除いたのち基板上に形成されたグラフェン膜をラマン分光分析法を用いて評価したNi 膜の厚みが比較的薄いサンプルについては欠陥を含む複層のグラフェンが基板全面にわたって合成されていたのに対しNi 膜が厚いサンプルについては微弱な非晶質炭素のピークが観測されたこの成膜メカニズムとしてはNi と Cu 中での炭素固溶度の違いによるものが考えられNi よりも CuおよびNiCu 合金の方が炭素固溶度が小さいためアニーリングによってNi と Cu が相互拡散し合金を形成するにつれて炭素が界面付近に集中しNiCu 合金の触媒作用によってグラフェンが合成されたものと考えられる本研究ではNi と Cu を積層した触媒膜を用いて触媒膜と基板上の界面に直接大面積のグラフェンを合成することに成功した任意の基板上に転写プロセスを用いることなく直接グラフェンを形成することができる本手法は表面保護膜の形成手法として有意義であると考えられる
対象論文トライボロジー会議 2019 春 東京 B25
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2019 年度日本トライボロジー学会学生奨励賞受賞者
大内 春花 君(東京理科大学 大学院工学研究科)
大内氏ZDDP と無灰摩擦調整剤併用による ZDDP 錯体構造変化がトライボロジー特性へ与える影響
本研究は ZDDP と無灰 FM併用時の潤滑機構の解明を目的に摩擦面に形成されるトライボフィルムの特性と摩擦挙動との関係を考察したものであるしゅう動部品における要求性能を満たすために潤滑油添加剤の組合せや配合割合が重要となる個々の添加剤の機能は明らかになっているが複合添加した場合相乗効果が発現する場合と互いの効果を阻害する場合があり効果の解明はあまり進んでいない実際に使用される潤滑油は複合添加油であるためより高性能な潤滑油の開発には添加剤間の相互作用機構の解明が必要不可欠となるジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)はトライボフィルムを摩擦面に生成し耐摩耗性向上に寄与する添加剤である一方で高摩擦化をもたらし無灰摩擦調整剤(無灰FM)との併用による摩擦低減が試みられているがその潤滑機構は不明な点が多いそこでZDDPと無灰 FM併用時の潤滑機構を解明するためZDDP 単独添加油と ZDDP10486191048619無灰 FM複合添加油により形成されたトライボフィルムの特性を調査した無灰 FM はグリセリンモノオレート(GMO)とタロウジエタノールアミン(TDEA)を用いたSRV摩擦試験の結果よりZDDP + TDEA複合添加油が最も低摩擦を示したXPS 元素分析結果よりZDDP単独添加油と ZDDP + GMO複合添加油のトライボフィルムは上層は Pが Sよりも高濃度で存在したが下層は S が P よりも高濃度で存在したZDDP10486191048619TDEA 複合添加油の場合は常に Sが P よりも高濃度で存在した 10486541048654104865310486531048658104865811085311108531110852911085291109522110952211085601108560 分析結果よりZDDP 単独添加油と ZDDP10486191048619GMO 複合添加油中では中性塩として ZDDP は存在したがZDDP10486191048619TDEA複合添加油中では塩基性塩に変化していた以上より複合添加する無灰FMの種類によって ZDDPの錯体構造が変化しZDDP単独添加の場合と深さ方向の組成が異なる性質のトライボフィルムを形成することで摩擦挙動に影響を与えたと考えられると結論付けた
In Situ Raman Observation of the Graphitization Process of Tetrahedral Amorphous CarbonDiamond-Like Carbon under Boundary Lubrication in Poly-Alpha-Olefin with an OrganicFriction Modifier
P S Suvin(National Institute of Technology Karnatakaoacute Surathkaloacute India)Satish V Kailas(Indian Institute of Scienceoacute Bangaloreoacute India)
P S Suvin
Study and Comparison of Lubricity of Green and Commercial Cutting Fluid UsingTool-Chip Tribometer
A lubricant is a substance introduced between surfaces in mutual contact to reduce friction whichultimately reduces the heat generated when the surfaces move Liquid lubricant designed specifically formetalworking processes such as turning drilling milling etc is known as cutting fluids (CF) Cuttingfluid is a blend or combination of oil emulsifier and additives mostly derived from chemicals orpetroleum products However it has got many side effects as it is toxic and harmful to environmentduring its disposal Hence vegetable based cutting fluid or green cutting fluid (GCF) is being developedand gaining importance with time Properties of these cutting fluids are dependent on the nature of thebase-oil nature of surfactants and the properties of water used to make the CF These fluids act on thenascent surfaces generated during cutting to form a low friction boundary layer as they slide past thecutting toolWe propose a unique tool-chip tribometer (TCT) in which these boundary layers formed by the actionof lubricants on freshly cut surfaces can be generated and their tribological properties alone studied inisolation This equipment can be used to study the fundamental mechanisms of the lubrication usingemulsions on nascent surfaces and can be used in optimizing the composition of such fluids The scope ofthis work is to assess different cutting fluids in this tool-chip tribometer The tribological performances ofmetal cutting on nascent surfaces are compared Unlike in the conventional methods of assessing thelubricity of cutting fluids using cutting tests here the friction has been evaluated separately from cuttingforces
グラフェンは sp11085301108530結合により平面上に六角形状に配列した炭素原子からなる二次元分子である極めて高い電子移動度や光透過度から半導体材料や透明電極としての応用が期待されておりまた優れた機械的強度化学的安定性を持つことから磁気ディスク等の極薄潤滑保護膜としての研究が進められている高品位なグラフェンを大規模に合成する方法として加熱したNiCu 等の触媒金属膜上で原料となる炭化水素ガスを熱分解させてグラフェンを合成する熱 CVD法が最も広く用いられているしかしこの手法で合成したグラフェンを機能性材料として用いるためには触媒膜上から目的とする基板上へと複雑なプロセスを経て転写する必要がありグラフェンを実用化する上での大きな障壁となっているこのため任意の基板上へとグラフェンを直接合成する手法が研究されておりこれまでに極めて薄い触媒膜を用いてグラフェンを合成した後に触媒を加熱蒸発させグラフェンのみを基板上に残す方法や金属蒸気を触媒として利用する方法等が報告されているが大面積にわたって均一にグラフェンを合成することは困難であるとされている本研究では基板上に炭素イオンを注入した Ni 膜と Cu 膜を積層してアニーリングすることで基板上へのグラフェンの直接合成を試みた
10486591048659104868110486811048655104865511085301108530基板上にスパッタ成膜したNi 膜にプラズマ利用イオン注入法を用いてメタンイオンを注入しさらにその上にCu膜をスパッタすることで炭素を含むNi 膜と Cu膜の積層膜を生成しこれを真空中にて 850でアニーリングすることによってグラフェンを基板と積層膜の界面に生成したNi 膜の厚みを 50nm150 nmCu 膜の厚みを 50nm350 nmと変化させ合計 4通りのサンプルを作成した積層膜をエッチングして取り除いたのち基板上に形成されたグラフェン膜をラマン分光分析法を用いて評価したNi 膜の厚みが比較的薄いサンプルについては欠陥を含む複層のグラフェンが基板全面にわたって合成されていたのに対しNi 膜が厚いサンプルについては微弱な非晶質炭素のピークが観測されたこの成膜メカニズムとしてはNi と Cu 中での炭素固溶度の違いによるものが考えられNi よりも CuおよびNiCu 合金の方が炭素固溶度が小さいためアニーリングによってNi と Cu が相互拡散し合金を形成するにつれて炭素が界面付近に集中しNiCu 合金の触媒作用によってグラフェンが合成されたものと考えられる本研究ではNi と Cu を積層した触媒膜を用いて触媒膜と基板上の界面に直接大面積のグラフェンを合成することに成功した任意の基板上に転写プロセスを用いることなく直接グラフェンを形成することができる本手法は表面保護膜の形成手法として有意義であると考えられる
対象論文トライボロジー会議 2019 春 東京 B25
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2019 年度日本トライボロジー学会学生奨励賞受賞者
大内 春花 君(東京理科大学 大学院工学研究科)
大内氏ZDDP と無灰摩擦調整剤併用による ZDDP 錯体構造変化がトライボロジー特性へ与える影響
本研究は ZDDP と無灰 FM併用時の潤滑機構の解明を目的に摩擦面に形成されるトライボフィルムの特性と摩擦挙動との関係を考察したものであるしゅう動部品における要求性能を満たすために潤滑油添加剤の組合せや配合割合が重要となる個々の添加剤の機能は明らかになっているが複合添加した場合相乗効果が発現する場合と互いの効果を阻害する場合があり効果の解明はあまり進んでいない実際に使用される潤滑油は複合添加油であるためより高性能な潤滑油の開発には添加剤間の相互作用機構の解明が必要不可欠となるジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)はトライボフィルムを摩擦面に生成し耐摩耗性向上に寄与する添加剤である一方で高摩擦化をもたらし無灰摩擦調整剤(無灰FM)との併用による摩擦低減が試みられているがその潤滑機構は不明な点が多いそこでZDDPと無灰 FM併用時の潤滑機構を解明するためZDDP 単独添加油と ZDDP10486191048619無灰 FM複合添加油により形成されたトライボフィルムの特性を調査した無灰 FM はグリセリンモノオレート(GMO)とタロウジエタノールアミン(TDEA)を用いたSRV摩擦試験の結果よりZDDP + TDEA複合添加油が最も低摩擦を示したXPS 元素分析結果よりZDDP単独添加油と ZDDP + GMO複合添加油のトライボフィルムは上層は Pが Sよりも高濃度で存在したが下層は S が P よりも高濃度で存在したZDDP10486191048619TDEA 複合添加油の場合は常に Sが P よりも高濃度で存在した 10486541048654104865310486531048658104865811085311108531110852911085291109522110952211085601108560 分析結果よりZDDP 単独添加油と ZDDP10486191048619GMO 複合添加油中では中性塩として ZDDP は存在したがZDDP10486191048619TDEA複合添加油中では塩基性塩に変化していた以上より複合添加する無灰FMの種類によって ZDDPの錯体構造が変化しZDDP単独添加の場合と深さ方向の組成が異なる性質のトライボフィルムを形成することで摩擦挙動に影響を与えたと考えられると結論付けた
P S Suvin(National Institute of Technology Karnatakaoacute Surathkaloacute India)Satish V Kailas(Indian Institute of Scienceoacute Bangaloreoacute India)
P S Suvin
Study and Comparison of Lubricity of Green and Commercial Cutting Fluid UsingTool-Chip Tribometer
A lubricant is a substance introduced between surfaces in mutual contact to reduce friction whichultimately reduces the heat generated when the surfaces move Liquid lubricant designed specifically formetalworking processes such as turning drilling milling etc is known as cutting fluids (CF) Cuttingfluid is a blend or combination of oil emulsifier and additives mostly derived from chemicals orpetroleum products However it has got many side effects as it is toxic and harmful to environmentduring its disposal Hence vegetable based cutting fluid or green cutting fluid (GCF) is being developedand gaining importance with time Properties of these cutting fluids are dependent on the nature of thebase-oil nature of surfactants and the properties of water used to make the CF These fluids act on thenascent surfaces generated during cutting to form a low friction boundary layer as they slide past thecutting toolWe propose a unique tool-chip tribometer (TCT) in which these boundary layers formed by the actionof lubricants on freshly cut surfaces can be generated and their tribological properties alone studied inisolation This equipment can be used to study the fundamental mechanisms of the lubrication usingemulsions on nascent surfaces and can be used in optimizing the composition of such fluids The scope ofthis work is to assess different cutting fluids in this tool-chip tribometer The tribological performances ofmetal cutting on nascent surfaces are compared Unlike in the conventional methods of assessing thelubricity of cutting fluids using cutting tests here the friction has been evaluated separately from cuttingforces
グラフェンは sp11085301108530結合により平面上に六角形状に配列した炭素原子からなる二次元分子である極めて高い電子移動度や光透過度から半導体材料や透明電極としての応用が期待されておりまた優れた機械的強度化学的安定性を持つことから磁気ディスク等の極薄潤滑保護膜としての研究が進められている高品位なグラフェンを大規模に合成する方法として加熱したNiCu 等の触媒金属膜上で原料となる炭化水素ガスを熱分解させてグラフェンを合成する熱 CVD法が最も広く用いられているしかしこの手法で合成したグラフェンを機能性材料として用いるためには触媒膜上から目的とする基板上へと複雑なプロセスを経て転写する必要がありグラフェンを実用化する上での大きな障壁となっているこのため任意の基板上へとグラフェンを直接合成する手法が研究されておりこれまでに極めて薄い触媒膜を用いてグラフェンを合成した後に触媒を加熱蒸発させグラフェンのみを基板上に残す方法や金属蒸気を触媒として利用する方法等が報告されているが大面積にわたって均一にグラフェンを合成することは困難であるとされている本研究では基板上に炭素イオンを注入した Ni 膜と Cu 膜を積層してアニーリングすることで基板上へのグラフェンの直接合成を試みた
10486591048659104868110486811048655104865511085301108530基板上にスパッタ成膜したNi 膜にプラズマ利用イオン注入法を用いてメタンイオンを注入しさらにその上にCu膜をスパッタすることで炭素を含むNi 膜と Cu膜の積層膜を生成しこれを真空中にて 850でアニーリングすることによってグラフェンを基板と積層膜の界面に生成したNi 膜の厚みを 50nm150 nmCu 膜の厚みを 50nm350 nmと変化させ合計 4通りのサンプルを作成した積層膜をエッチングして取り除いたのち基板上に形成されたグラフェン膜をラマン分光分析法を用いて評価したNi 膜の厚みが比較的薄いサンプルについては欠陥を含む複層のグラフェンが基板全面にわたって合成されていたのに対しNi 膜が厚いサンプルについては微弱な非晶質炭素のピークが観測されたこの成膜メカニズムとしてはNi と Cu 中での炭素固溶度の違いによるものが考えられNi よりも CuおよびNiCu 合金の方が炭素固溶度が小さいためアニーリングによってNi と Cu が相互拡散し合金を形成するにつれて炭素が界面付近に集中しNiCu 合金の触媒作用によってグラフェンが合成されたものと考えられる本研究ではNi と Cu を積層した触媒膜を用いて触媒膜と基板上の界面に直接大面積のグラフェンを合成することに成功した任意の基板上に転写プロセスを用いることなく直接グラフェンを形成することができる本手法は表面保護膜の形成手法として有意義であると考えられる
対象論文トライボロジー会議 2019 春 東京 B25
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198
2019 年度日本トライボロジー学会学生奨励賞受賞者
大内 春花 君(東京理科大学 大学院工学研究科)
大内氏ZDDP と無灰摩擦調整剤併用による ZDDP 錯体構造変化がトライボロジー特性へ与える影響
本研究は ZDDP と無灰 FM併用時の潤滑機構の解明を目的に摩擦面に形成されるトライボフィルムの特性と摩擦挙動との関係を考察したものであるしゅう動部品における要求性能を満たすために潤滑油添加剤の組合せや配合割合が重要となる個々の添加剤の機能は明らかになっているが複合添加した場合相乗効果が発現する場合と互いの効果を阻害する場合があり効果の解明はあまり進んでいない実際に使用される潤滑油は複合添加油であるためより高性能な潤滑油の開発には添加剤間の相互作用機構の解明が必要不可欠となるジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)はトライボフィルムを摩擦面に生成し耐摩耗性向上に寄与する添加剤である一方で高摩擦化をもたらし無灰摩擦調整剤(無灰FM)との併用による摩擦低減が試みられているがその潤滑機構は不明な点が多いそこでZDDPと無灰 FM併用時の潤滑機構を解明するためZDDP 単独添加油と ZDDP10486191048619無灰 FM複合添加油により形成されたトライボフィルムの特性を調査した無灰 FM はグリセリンモノオレート(GMO)とタロウジエタノールアミン(TDEA)を用いたSRV摩擦試験の結果よりZDDP + TDEA複合添加油が最も低摩擦を示したXPS 元素分析結果よりZDDP単独添加油と ZDDP + GMO複合添加油のトライボフィルムは上層は Pが Sよりも高濃度で存在したが下層は S が P よりも高濃度で存在したZDDP10486191048619TDEA 複合添加油の場合は常に Sが P よりも高濃度で存在した 10486541048654104865310486531048658104865811085311108531110852911085291109522110952211085601108560 分析結果よりZDDP 単独添加油と ZDDP10486191048619GMO 複合添加油中では中性塩として ZDDP は存在したがZDDP10486191048619TDEA複合添加油中では塩基性塩に変化していた以上より複合添加する無灰FMの種類によって ZDDPの錯体構造が変化しZDDP単独添加の場合と深さ方向の組成が異なる性質のトライボフィルムを形成することで摩擦挙動に影響を与えたと考えられると結論付けた
グラフェンは sp11085301108530結合により平面上に六角形状に配列した炭素原子からなる二次元分子である極めて高い電子移動度や光透過度から半導体材料や透明電極としての応用が期待されておりまた優れた機械的強度化学的安定性を持つことから磁気ディスク等の極薄潤滑保護膜としての研究が進められている高品位なグラフェンを大規模に合成する方法として加熱したNiCu 等の触媒金属膜上で原料となる炭化水素ガスを熱分解させてグラフェンを合成する熱 CVD法が最も広く用いられているしかしこの手法で合成したグラフェンを機能性材料として用いるためには触媒膜上から目的とする基板上へと複雑なプロセスを経て転写する必要がありグラフェンを実用化する上での大きな障壁となっているこのため任意の基板上へとグラフェンを直接合成する手法が研究されておりこれまでに極めて薄い触媒膜を用いてグラフェンを合成した後に触媒を加熱蒸発させグラフェンのみを基板上に残す方法や金属蒸気を触媒として利用する方法等が報告されているが大面積にわたって均一にグラフェンを合成することは困難であるとされている本研究では基板上に炭素イオンを注入した Ni 膜と Cu 膜を積層してアニーリングすることで基板上へのグラフェンの直接合成を試みた
10486591048659104868110486811048655104865511085301108530基板上にスパッタ成膜したNi 膜にプラズマ利用イオン注入法を用いてメタンイオンを注入しさらにその上にCu膜をスパッタすることで炭素を含むNi 膜と Cu膜の積層膜を生成しこれを真空中にて 850でアニーリングすることによってグラフェンを基板と積層膜の界面に生成したNi 膜の厚みを 50nm150 nmCu 膜の厚みを 50nm350 nmと変化させ合計 4通りのサンプルを作成した積層膜をエッチングして取り除いたのち基板上に形成されたグラフェン膜をラマン分光分析法を用いて評価したNi 膜の厚みが比較的薄いサンプルについては欠陥を含む複層のグラフェンが基板全面にわたって合成されていたのに対しNi 膜が厚いサンプルについては微弱な非晶質炭素のピークが観測されたこの成膜メカニズムとしてはNi と Cu 中での炭素固溶度の違いによるものが考えられNi よりも CuおよびNiCu 合金の方が炭素固溶度が小さいためアニーリングによってNi と Cu が相互拡散し合金を形成するにつれて炭素が界面付近に集中しNiCu 合金の触媒作用によってグラフェンが合成されたものと考えられる本研究ではNi と Cu を積層した触媒膜を用いて触媒膜と基板上の界面に直接大面積のグラフェンを合成することに成功した任意の基板上に転写プロセスを用いることなく直接グラフェンを形成することができる本手法は表面保護膜の形成手法として有意義であると考えられる
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大内 春花 君(東京理科大学 大学院工学研究科)
大内氏ZDDP と無灰摩擦調整剤併用による ZDDP 錯体構造変化がトライボロジー特性へ与える影響
本研究は ZDDP と無灰 FM併用時の潤滑機構の解明を目的に摩擦面に形成されるトライボフィルムの特性と摩擦挙動との関係を考察したものであるしゅう動部品における要求性能を満たすために潤滑油添加剤の組合せや配合割合が重要となる個々の添加剤の機能は明らかになっているが複合添加した場合相乗効果が発現する場合と互いの効果を阻害する場合があり効果の解明はあまり進んでいない実際に使用される潤滑油は複合添加油であるためより高性能な潤滑油の開発には添加剤間の相互作用機構の解明が必要不可欠となるジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)はトライボフィルムを摩擦面に生成し耐摩耗性向上に寄与する添加剤である一方で高摩擦化をもたらし無灰摩擦調整剤(無灰FM)との併用による摩擦低減が試みられているがその潤滑機構は不明な点が多いそこでZDDPと無灰 FM併用時の潤滑機構を解明するためZDDP 単独添加油と ZDDP10486191048619無灰 FM複合添加油により形成されたトライボフィルムの特性を調査した無灰 FM はグリセリンモノオレート(GMO)とタロウジエタノールアミン(TDEA)を用いたSRV摩擦試験の結果よりZDDP + TDEA複合添加油が最も低摩擦を示したXPS 元素分析結果よりZDDP単独添加油と ZDDP + GMO複合添加油のトライボフィルムは上層は Pが Sよりも高濃度で存在したが下層は S が P よりも高濃度で存在したZDDP10486191048619TDEA 複合添加油の場合は常に Sが P よりも高濃度で存在した 10486541048654104865310486531048658104865811085311108531110852911085291109522110952211085601108560 分析結果よりZDDP 単独添加油と ZDDP10486191048619GMO 複合添加油中では中性塩として ZDDP は存在したがZDDP10486191048619TDEA複合添加油中では塩基性塩に変化していた以上より複合添加する無灰FMの種類によって ZDDPの錯体構造が変化しZDDP単独添加の場合と深さ方向の組成が異なる性質のトライボフィルムを形成することで摩擦挙動に影響を与えたと考えられると結論付けた
グラフェンは sp11085301108530結合により平面上に六角形状に配列した炭素原子からなる二次元分子である極めて高い電子移動度や光透過度から半導体材料や透明電極としての応用が期待されておりまた優れた機械的強度化学的安定性を持つことから磁気ディスク等の極薄潤滑保護膜としての研究が進められている高品位なグラフェンを大規模に合成する方法として加熱したNiCu 等の触媒金属膜上で原料となる炭化水素ガスを熱分解させてグラフェンを合成する熱 CVD法が最も広く用いられているしかしこの手法で合成したグラフェンを機能性材料として用いるためには触媒膜上から目的とする基板上へと複雑なプロセスを経て転写する必要がありグラフェンを実用化する上での大きな障壁となっているこのため任意の基板上へとグラフェンを直接合成する手法が研究されておりこれまでに極めて薄い触媒膜を用いてグラフェンを合成した後に触媒を加熱蒸発させグラフェンのみを基板上に残す方法や金属蒸気を触媒として利用する方法等が報告されているが大面積にわたって均一にグラフェンを合成することは困難であるとされている本研究では基板上に炭素イオンを注入した Ni 膜と Cu 膜を積層してアニーリングすることで基板上へのグラフェンの直接合成を試みた
10486591048659104868110486811048655104865511085301108530基板上にスパッタ成膜したNi 膜にプラズマ利用イオン注入法を用いてメタンイオンを注入しさらにその上にCu膜をスパッタすることで炭素を含むNi 膜と Cu膜の積層膜を生成しこれを真空中にて 850でアニーリングすることによってグラフェンを基板と積層膜の界面に生成したNi 膜の厚みを 50nm150 nmCu 膜の厚みを 50nm350 nmと変化させ合計 4通りのサンプルを作成した積層膜をエッチングして取り除いたのち基板上に形成されたグラフェン膜をラマン分光分析法を用いて評価したNi 膜の厚みが比較的薄いサンプルについては欠陥を含む複層のグラフェンが基板全面にわたって合成されていたのに対しNi 膜が厚いサンプルについては微弱な非晶質炭素のピークが観測されたこの成膜メカニズムとしてはNi と Cu 中での炭素固溶度の違いによるものが考えられNi よりも CuおよびNiCu 合金の方が炭素固溶度が小さいためアニーリングによってNi と Cu が相互拡散し合金を形成するにつれて炭素が界面付近に集中しNiCu 合金の触媒作用によってグラフェンが合成されたものと考えられる本研究ではNi と Cu を積層した触媒膜を用いて触媒膜と基板上の界面に直接大面積のグラフェンを合成することに成功した任意の基板上に転写プロセスを用いることなく直接グラフェンを形成することができる本手法は表面保護膜の形成手法として有意義であると考えられる
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大内 春花 君(東京理科大学 大学院工学研究科)
大内氏ZDDP と無灰摩擦調整剤併用による ZDDP 錯体構造変化がトライボロジー特性へ与える影響
本研究は ZDDP と無灰 FM併用時の潤滑機構の解明を目的に摩擦面に形成されるトライボフィルムの特性と摩擦挙動との関係を考察したものであるしゅう動部品における要求性能を満たすために潤滑油添加剤の組合せや配合割合が重要となる個々の添加剤の機能は明らかになっているが複合添加した場合相乗効果が発現する場合と互いの効果を阻害する場合があり効果の解明はあまり進んでいない実際に使用される潤滑油は複合添加油であるためより高性能な潤滑油の開発には添加剤間の相互作用機構の解明が必要不可欠となるジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)はトライボフィルムを摩擦面に生成し耐摩耗性向上に寄与する添加剤である一方で高摩擦化をもたらし無灰摩擦調整剤(無灰FM)との併用による摩擦低減が試みられているがその潤滑機構は不明な点が多いそこでZDDPと無灰 FM併用時の潤滑機構を解明するためZDDP 単独添加油と ZDDP10486191048619無灰 FM複合添加油により形成されたトライボフィルムの特性を調査した無灰 FM はグリセリンモノオレート(GMO)とタロウジエタノールアミン(TDEA)を用いたSRV摩擦試験の結果よりZDDP + TDEA複合添加油が最も低摩擦を示したXPS 元素分析結果よりZDDP単独添加油と ZDDP + GMO複合添加油のトライボフィルムは上層は Pが Sよりも高濃度で存在したが下層は S が P よりも高濃度で存在したZDDP10486191048619TDEA 複合添加油の場合は常に Sが P よりも高濃度で存在した 10486541048654104865310486531048658104865811085311108531110852911085291109522110952211085601108560 分析結果よりZDDP 単独添加油と ZDDP10486191048619GMO 複合添加油中では中性塩として ZDDP は存在したがZDDP10486191048619TDEA複合添加油中では塩基性塩に変化していた以上より複合添加する無灰FMの種類によって ZDDPの錯体構造が変化しZDDP単独添加の場合と深さ方向の組成が異なる性質のトライボフィルムを形成することで摩擦挙動に影響を与えたと考えられると結論付けた
グラフェンは sp11085301108530結合により平面上に六角形状に配列した炭素原子からなる二次元分子である極めて高い電子移動度や光透過度から半導体材料や透明電極としての応用が期待されておりまた優れた機械的強度化学的安定性を持つことから磁気ディスク等の極薄潤滑保護膜としての研究が進められている高品位なグラフェンを大規模に合成する方法として加熱したNiCu 等の触媒金属膜上で原料となる炭化水素ガスを熱分解させてグラフェンを合成する熱 CVD法が最も広く用いられているしかしこの手法で合成したグラフェンを機能性材料として用いるためには触媒膜上から目的とする基板上へと複雑なプロセスを経て転写する必要がありグラフェンを実用化する上での大きな障壁となっているこのため任意の基板上へとグラフェンを直接合成する手法が研究されておりこれまでに極めて薄い触媒膜を用いてグラフェンを合成した後に触媒を加熱蒸発させグラフェンのみを基板上に残す方法や金属蒸気を触媒として利用する方法等が報告されているが大面積にわたって均一にグラフェンを合成することは困難であるとされている本研究では基板上に炭素イオンを注入した Ni 膜と Cu 膜を積層してアニーリングすることで基板上へのグラフェンの直接合成を試みた
10486591048659104868110486811048655104865511085301108530基板上にスパッタ成膜したNi 膜にプラズマ利用イオン注入法を用いてメタンイオンを注入しさらにその上にCu膜をスパッタすることで炭素を含むNi 膜と Cu膜の積層膜を生成しこれを真空中にて 850でアニーリングすることによってグラフェンを基板と積層膜の界面に生成したNi 膜の厚みを 50nm150 nmCu 膜の厚みを 50nm350 nmと変化させ合計 4通りのサンプルを作成した積層膜をエッチングして取り除いたのち基板上に形成されたグラフェン膜をラマン分光分析法を用いて評価したNi 膜の厚みが比較的薄いサンプルについては欠陥を含む複層のグラフェンが基板全面にわたって合成されていたのに対しNi 膜が厚いサンプルについては微弱な非晶質炭素のピークが観測されたこの成膜メカニズムとしてはNi と Cu 中での炭素固溶度の違いによるものが考えられNi よりも CuおよびNiCu 合金の方が炭素固溶度が小さいためアニーリングによってNi と Cu が相互拡散し合金を形成するにつれて炭素が界面付近に集中しNiCu 合金の触媒作用によってグラフェンが合成されたものと考えられる本研究ではNi と Cu を積層した触媒膜を用いて触媒膜と基板上の界面に直接大面積のグラフェンを合成することに成功した任意の基板上に転写プロセスを用いることなく直接グラフェンを形成することができる本手法は表面保護膜の形成手法として有意義であると考えられる
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2019 年度日本トライボロジー学会学生奨励賞受賞者
大内 春花 君(東京理科大学 大学院工学研究科)
大内氏ZDDP と無灰摩擦調整剤併用による ZDDP 錯体構造変化がトライボロジー特性へ与える影響
本研究は ZDDP と無灰 FM併用時の潤滑機構の解明を目的に摩擦面に形成されるトライボフィルムの特性と摩擦挙動との関係を考察したものであるしゅう動部品における要求性能を満たすために潤滑油添加剤の組合せや配合割合が重要となる個々の添加剤の機能は明らかになっているが複合添加した場合相乗効果が発現する場合と互いの効果を阻害する場合があり効果の解明はあまり進んでいない実際に使用される潤滑油は複合添加油であるためより高性能な潤滑油の開発には添加剤間の相互作用機構の解明が必要不可欠となるジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)はトライボフィルムを摩擦面に生成し耐摩耗性向上に寄与する添加剤である一方で高摩擦化をもたらし無灰摩擦調整剤(無灰FM)との併用による摩擦低減が試みられているがその潤滑機構は不明な点が多いそこでZDDPと無灰 FM併用時の潤滑機構を解明するためZDDP 単独添加油と ZDDP10486191048619無灰 FM複合添加油により形成されたトライボフィルムの特性を調査した無灰 FM はグリセリンモノオレート(GMO)とタロウジエタノールアミン(TDEA)を用いたSRV摩擦試験の結果よりZDDP + TDEA複合添加油が最も低摩擦を示したXPS 元素分析結果よりZDDP単独添加油と ZDDP + GMO複合添加油のトライボフィルムは上層は Pが Sよりも高濃度で存在したが下層は S が P よりも高濃度で存在したZDDP10486191048619TDEA 複合添加油の場合は常に Sが P よりも高濃度で存在した 10486541048654104865310486531048658104865811085311108531110852911085291109522110952211085601108560 分析結果よりZDDP 単独添加油と ZDDP10486191048619GMO 複合添加油中では中性塩として ZDDP は存在したがZDDP10486191048619TDEA複合添加油中では塩基性塩に変化していた以上より複合添加する無灰FMの種類によって ZDDPの錯体構造が変化しZDDP単独添加の場合と深さ方向の組成が異なる性質のトライボフィルムを形成することで摩擦挙動に影響を与えたと考えられると結論付けた
グラフェンは sp11085301108530結合により平面上に六角形状に配列した炭素原子からなる二次元分子である極めて高い電子移動度や光透過度から半導体材料や透明電極としての応用が期待されておりまた優れた機械的強度化学的安定性を持つことから磁気ディスク等の極薄潤滑保護膜としての研究が進められている高品位なグラフェンを大規模に合成する方法として加熱したNiCu 等の触媒金属膜上で原料となる炭化水素ガスを熱分解させてグラフェンを合成する熱 CVD法が最も広く用いられているしかしこの手法で合成したグラフェンを機能性材料として用いるためには触媒膜上から目的とする基板上へと複雑なプロセスを経て転写する必要がありグラフェンを実用化する上での大きな障壁となっているこのため任意の基板上へとグラフェンを直接合成する手法が研究されておりこれまでに極めて薄い触媒膜を用いてグラフェンを合成した後に触媒を加熱蒸発させグラフェンのみを基板上に残す方法や金属蒸気を触媒として利用する方法等が報告されているが大面積にわたって均一にグラフェンを合成することは困難であるとされている本研究では基板上に炭素イオンを注入した Ni 膜と Cu 膜を積層してアニーリングすることで基板上へのグラフェンの直接合成を試みた
10486591048659104868110486811048655104865511085301108530基板上にスパッタ成膜したNi 膜にプラズマ利用イオン注入法を用いてメタンイオンを注入しさらにその上にCu膜をスパッタすることで炭素を含むNi 膜と Cu膜の積層膜を生成しこれを真空中にて 850でアニーリングすることによってグラフェンを基板と積層膜の界面に生成したNi 膜の厚みを 50nm150 nmCu 膜の厚みを 50nm350 nmと変化させ合計 4通りのサンプルを作成した積層膜をエッチングして取り除いたのち基板上に形成されたグラフェン膜をラマン分光分析法を用いて評価したNi 膜の厚みが比較的薄いサンプルについては欠陥を含む複層のグラフェンが基板全面にわたって合成されていたのに対しNi 膜が厚いサンプルについては微弱な非晶質炭素のピークが観測されたこの成膜メカニズムとしてはNi と Cu 中での炭素固溶度の違いによるものが考えられNi よりも CuおよびNiCu 合金の方が炭素固溶度が小さいためアニーリングによってNi と Cu が相互拡散し合金を形成するにつれて炭素が界面付近に集中しNiCu 合金の触媒作用によってグラフェンが合成されたものと考えられる本研究ではNi と Cu を積層した触媒膜を用いて触媒膜と基板上の界面に直接大面積のグラフェンを合成することに成功した任意の基板上に転写プロセスを用いることなく直接グラフェンを形成することができる本手法は表面保護膜の形成手法として有意義であると考えられる
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2019 年度日本トライボロジー学会学生奨励賞受賞者
大内 春花 君(東京理科大学 大学院工学研究科)
大内氏ZDDP と無灰摩擦調整剤併用による ZDDP 錯体構造変化がトライボロジー特性へ与える影響
本研究は ZDDP と無灰 FM併用時の潤滑機構の解明を目的に摩擦面に形成されるトライボフィルムの特性と摩擦挙動との関係を考察したものであるしゅう動部品における要求性能を満たすために潤滑油添加剤の組合せや配合割合が重要となる個々の添加剤の機能は明らかになっているが複合添加した場合相乗効果が発現する場合と互いの効果を阻害する場合があり効果の解明はあまり進んでいない実際に使用される潤滑油は複合添加油であるためより高性能な潤滑油の開発には添加剤間の相互作用機構の解明が必要不可欠となるジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)はトライボフィルムを摩擦面に生成し耐摩耗性向上に寄与する添加剤である一方で高摩擦化をもたらし無灰摩擦調整剤(無灰FM)との併用による摩擦低減が試みられているがその潤滑機構は不明な点が多いそこでZDDPと無灰 FM併用時の潤滑機構を解明するためZDDP 単独添加油と ZDDP10486191048619無灰 FM複合添加油により形成されたトライボフィルムの特性を調査した無灰 FM はグリセリンモノオレート(GMO)とタロウジエタノールアミン(TDEA)を用いたSRV摩擦試験の結果よりZDDP + TDEA複合添加油が最も低摩擦を示したXPS 元素分析結果よりZDDP単独添加油と ZDDP + GMO複合添加油のトライボフィルムは上層は Pが Sよりも高濃度で存在したが下層は S が P よりも高濃度で存在したZDDP10486191048619TDEA 複合添加油の場合は常に Sが P よりも高濃度で存在した 10486541048654104865310486531048658104865811085311108531110852911085291109522110952211085601108560 分析結果よりZDDP 単独添加油と ZDDP10486191048619GMO 複合添加油中では中性塩として ZDDP は存在したがZDDP10486191048619TDEA複合添加油中では塩基性塩に変化していた以上より複合添加する無灰FMの種類によって ZDDPの錯体構造が変化しZDDP単独添加の場合と深さ方向の組成が異なる性質のトライボフィルムを形成することで摩擦挙動に影響を与えたと考えられると結論付けた
グラフェンは sp11085301108530結合により平面上に六角形状に配列した炭素原子からなる二次元分子である極めて高い電子移動度や光透過度から半導体材料や透明電極としての応用が期待されておりまた優れた機械的強度化学的安定性を持つことから磁気ディスク等の極薄潤滑保護膜としての研究が進められている高品位なグラフェンを大規模に合成する方法として加熱したNiCu 等の触媒金属膜上で原料となる炭化水素ガスを熱分解させてグラフェンを合成する熱 CVD法が最も広く用いられているしかしこの手法で合成したグラフェンを機能性材料として用いるためには触媒膜上から目的とする基板上へと複雑なプロセスを経て転写する必要がありグラフェンを実用化する上での大きな障壁となっているこのため任意の基板上へとグラフェンを直接合成する手法が研究されておりこれまでに極めて薄い触媒膜を用いてグラフェンを合成した後に触媒を加熱蒸発させグラフェンのみを基板上に残す方法や金属蒸気を触媒として利用する方法等が報告されているが大面積にわたって均一にグラフェンを合成することは困難であるとされている本研究では基板上に炭素イオンを注入した Ni 膜と Cu 膜を積層してアニーリングすることで基板上へのグラフェンの直接合成を試みた
10486591048659104868110486811048655104865511085301108530基板上にスパッタ成膜したNi 膜にプラズマ利用イオン注入法を用いてメタンイオンを注入しさらにその上にCu膜をスパッタすることで炭素を含むNi 膜と Cu膜の積層膜を生成しこれを真空中にて 850でアニーリングすることによってグラフェンを基板と積層膜の界面に生成したNi 膜の厚みを 50nm150 nmCu 膜の厚みを 50nm350 nmと変化させ合計 4通りのサンプルを作成した積層膜をエッチングして取り除いたのち基板上に形成されたグラフェン膜をラマン分光分析法を用いて評価したNi 膜の厚みが比較的薄いサンプルについては欠陥を含む複層のグラフェンが基板全面にわたって合成されていたのに対しNi 膜が厚いサンプルについては微弱な非晶質炭素のピークが観測されたこの成膜メカニズムとしてはNi と Cu 中での炭素固溶度の違いによるものが考えられNi よりも CuおよびNiCu 合金の方が炭素固溶度が小さいためアニーリングによってNi と Cu が相互拡散し合金を形成するにつれて炭素が界面付近に集中しNiCu 合金の触媒作用によってグラフェンが合成されたものと考えられる本研究ではNi と Cu を積層した触媒膜を用いて触媒膜と基板上の界面に直接大面積のグラフェンを合成することに成功した任意の基板上に転写プロセスを用いることなく直接グラフェンを形成することができる本手法は表面保護膜の形成手法として有意義であると考えられる
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16
198
2019 年度日本トライボロジー学会学生奨励賞受賞者
大内 春花 君(東京理科大学 大学院工学研究科)
大内氏ZDDP と無灰摩擦調整剤併用による ZDDP 錯体構造変化がトライボロジー特性へ与える影響
本研究は ZDDP と無灰 FM併用時の潤滑機構の解明を目的に摩擦面に形成されるトライボフィルムの特性と摩擦挙動との関係を考察したものであるしゅう動部品における要求性能を満たすために潤滑油添加剤の組合せや配合割合が重要となる個々の添加剤の機能は明らかになっているが複合添加した場合相乗効果が発現する場合と互いの効果を阻害する場合があり効果の解明はあまり進んでいない実際に使用される潤滑油は複合添加油であるためより高性能な潤滑油の開発には添加剤間の相互作用機構の解明が必要不可欠となるジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)はトライボフィルムを摩擦面に生成し耐摩耗性向上に寄与する添加剤である一方で高摩擦化をもたらし無灰摩擦調整剤(無灰FM)との併用による摩擦低減が試みられているがその潤滑機構は不明な点が多いそこでZDDPと無灰 FM併用時の潤滑機構を解明するためZDDP 単独添加油と ZDDP10486191048619無灰 FM複合添加油により形成されたトライボフィルムの特性を調査した無灰 FM はグリセリンモノオレート(GMO)とタロウジエタノールアミン(TDEA)を用いたSRV摩擦試験の結果よりZDDP + TDEA複合添加油が最も低摩擦を示したXPS 元素分析結果よりZDDP単独添加油と ZDDP + GMO複合添加油のトライボフィルムは上層は Pが Sよりも高濃度で存在したが下層は S が P よりも高濃度で存在したZDDP10486191048619TDEA 複合添加油の場合は常に Sが P よりも高濃度で存在した 10486541048654104865310486531048658104865811085311108531110852911085291109522110952211085601108560 分析結果よりZDDP 単独添加油と ZDDP10486191048619GMO 複合添加油中では中性塩として ZDDP は存在したがZDDP10486191048619TDEA複合添加油中では塩基性塩に変化していた以上より複合添加する無灰FMの種類によって ZDDPの錯体構造が変化しZDDP単独添加の場合と深さ方向の組成が異なる性質のトライボフィルムを形成することで摩擦挙動に影響を与えたと考えられると結論付けた
グラフェンは sp11085301108530結合により平面上に六角形状に配列した炭素原子からなる二次元分子である極めて高い電子移動度や光透過度から半導体材料や透明電極としての応用が期待されておりまた優れた機械的強度化学的安定性を持つことから磁気ディスク等の極薄潤滑保護膜としての研究が進められている高品位なグラフェンを大規模に合成する方法として加熱したNiCu 等の触媒金属膜上で原料となる炭化水素ガスを熱分解させてグラフェンを合成する熱 CVD法が最も広く用いられているしかしこの手法で合成したグラフェンを機能性材料として用いるためには触媒膜上から目的とする基板上へと複雑なプロセスを経て転写する必要がありグラフェンを実用化する上での大きな障壁となっているこのため任意の基板上へとグラフェンを直接合成する手法が研究されておりこれまでに極めて薄い触媒膜を用いてグラフェンを合成した後に触媒を加熱蒸発させグラフェンのみを基板上に残す方法や金属蒸気を触媒として利用する方法等が報告されているが大面積にわたって均一にグラフェンを合成することは困難であるとされている本研究では基板上に炭素イオンを注入した Ni 膜と Cu 膜を積層してアニーリングすることで基板上へのグラフェンの直接合成を試みた
10486591048659104868110486811048655104865511085301108530基板上にスパッタ成膜したNi 膜にプラズマ利用イオン注入法を用いてメタンイオンを注入しさらにその上にCu膜をスパッタすることで炭素を含むNi 膜と Cu膜の積層膜を生成しこれを真空中にて 850でアニーリングすることによってグラフェンを基板と積層膜の界面に生成したNi 膜の厚みを 50nm150 nmCu 膜の厚みを 50nm350 nmと変化させ合計 4通りのサンプルを作成した積層膜をエッチングして取り除いたのち基板上に形成されたグラフェン膜をラマン分光分析法を用いて評価したNi 膜の厚みが比較的薄いサンプルについては欠陥を含む複層のグラフェンが基板全面にわたって合成されていたのに対しNi 膜が厚いサンプルについては微弱な非晶質炭素のピークが観測されたこの成膜メカニズムとしてはNi と Cu 中での炭素固溶度の違いによるものが考えられNi よりも CuおよびNiCu 合金の方が炭素固溶度が小さいためアニーリングによってNi と Cu が相互拡散し合金を形成するにつれて炭素が界面付近に集中しNiCu 合金の触媒作用によってグラフェンが合成されたものと考えられる本研究ではNi と Cu を積層した触媒膜を用いて触媒膜と基板上の界面に直接大面積のグラフェンを合成することに成功した任意の基板上に転写プロセスを用いることなく直接グラフェンを形成することができる本手法は表面保護膜の形成手法として有意義であると考えられる
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2019 年度日本トライボロジー学会学生奨励賞受賞者
大内 春花 君(東京理科大学 大学院工学研究科)
大内氏ZDDP と無灰摩擦調整剤併用による ZDDP 錯体構造変化がトライボロジー特性へ与える影響
本研究は ZDDP と無灰 FM併用時の潤滑機構の解明を目的に摩擦面に形成されるトライボフィルムの特性と摩擦挙動との関係を考察したものであるしゅう動部品における要求性能を満たすために潤滑油添加剤の組合せや配合割合が重要となる個々の添加剤の機能は明らかになっているが複合添加した場合相乗効果が発現する場合と互いの効果を阻害する場合があり効果の解明はあまり進んでいない実際に使用される潤滑油は複合添加油であるためより高性能な潤滑油の開発には添加剤間の相互作用機構の解明が必要不可欠となるジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)はトライボフィルムを摩擦面に生成し耐摩耗性向上に寄与する添加剤である一方で高摩擦化をもたらし無灰摩擦調整剤(無灰FM)との併用による摩擦低減が試みられているがその潤滑機構は不明な点が多いそこでZDDPと無灰 FM併用時の潤滑機構を解明するためZDDP 単独添加油と ZDDP10486191048619無灰 FM複合添加油により形成されたトライボフィルムの特性を調査した無灰 FM はグリセリンモノオレート(GMO)とタロウジエタノールアミン(TDEA)を用いたSRV摩擦試験の結果よりZDDP + TDEA複合添加油が最も低摩擦を示したXPS 元素分析結果よりZDDP単独添加油と ZDDP + GMO複合添加油のトライボフィルムは上層は Pが Sよりも高濃度で存在したが下層は S が P よりも高濃度で存在したZDDP10486191048619TDEA 複合添加油の場合は常に Sが P よりも高濃度で存在した 10486541048654104865310486531048658104865811085311108531110852911085291109522110952211085601108560 分析結果よりZDDP 単独添加油と ZDDP10486191048619GMO 複合添加油中では中性塩として ZDDP は存在したがZDDP10486191048619TDEA複合添加油中では塩基性塩に変化していた以上より複合添加する無灰FMの種類によって ZDDPの錯体構造が変化しZDDP単独添加の場合と深さ方向の組成が異なる性質のトライボフィルムを形成することで摩擦挙動に影響を与えたと考えられると結論付けた
グラフェンは sp11085301108530結合により平面上に六角形状に配列した炭素原子からなる二次元分子である極めて高い電子移動度や光透過度から半導体材料や透明電極としての応用が期待されておりまた優れた機械的強度化学的安定性を持つことから磁気ディスク等の極薄潤滑保護膜としての研究が進められている高品位なグラフェンを大規模に合成する方法として加熱したNiCu 等の触媒金属膜上で原料となる炭化水素ガスを熱分解させてグラフェンを合成する熱 CVD法が最も広く用いられているしかしこの手法で合成したグラフェンを機能性材料として用いるためには触媒膜上から目的とする基板上へと複雑なプロセスを経て転写する必要がありグラフェンを実用化する上での大きな障壁となっているこのため任意の基板上へとグラフェンを直接合成する手法が研究されておりこれまでに極めて薄い触媒膜を用いてグラフェンを合成した後に触媒を加熱蒸発させグラフェンのみを基板上に残す方法や金属蒸気を触媒として利用する方法等が報告されているが大面積にわたって均一にグラフェンを合成することは困難であるとされている本研究では基板上に炭素イオンを注入した Ni 膜と Cu 膜を積層してアニーリングすることで基板上へのグラフェンの直接合成を試みた
10486591048659104868110486811048655104865511085301108530基板上にスパッタ成膜したNi 膜にプラズマ利用イオン注入法を用いてメタンイオンを注入しさらにその上にCu膜をスパッタすることで炭素を含むNi 膜と Cu膜の積層膜を生成しこれを真空中にて 850でアニーリングすることによってグラフェンを基板と積層膜の界面に生成したNi 膜の厚みを 50nm150 nmCu 膜の厚みを 50nm350 nmと変化させ合計 4通りのサンプルを作成した積層膜をエッチングして取り除いたのち基板上に形成されたグラフェン膜をラマン分光分析法を用いて評価したNi 膜の厚みが比較的薄いサンプルについては欠陥を含む複層のグラフェンが基板全面にわたって合成されていたのに対しNi 膜が厚いサンプルについては微弱な非晶質炭素のピークが観測されたこの成膜メカニズムとしてはNi と Cu 中での炭素固溶度の違いによるものが考えられNi よりも CuおよびNiCu 合金の方が炭素固溶度が小さいためアニーリングによってNi と Cu が相互拡散し合金を形成するにつれて炭素が界面付近に集中しNiCu 合金の触媒作用によってグラフェンが合成されたものと考えられる本研究ではNi と Cu を積層した触媒膜を用いて触媒膜と基板上の界面に直接大面積のグラフェンを合成することに成功した任意の基板上に転写プロセスを用いることなく直接グラフェンを形成することができる本手法は表面保護膜の形成手法として有意義であると考えられる
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大内 春花 君(東京理科大学 大学院工学研究科)
大内氏ZDDP と無灰摩擦調整剤併用による ZDDP 錯体構造変化がトライボロジー特性へ与える影響
本研究は ZDDP と無灰 FM併用時の潤滑機構の解明を目的に摩擦面に形成されるトライボフィルムの特性と摩擦挙動との関係を考察したものであるしゅう動部品における要求性能を満たすために潤滑油添加剤の組合せや配合割合が重要となる個々の添加剤の機能は明らかになっているが複合添加した場合相乗効果が発現する場合と互いの効果を阻害する場合があり効果の解明はあまり進んでいない実際に使用される潤滑油は複合添加油であるためより高性能な潤滑油の開発には添加剤間の相互作用機構の解明が必要不可欠となるジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)はトライボフィルムを摩擦面に生成し耐摩耗性向上に寄与する添加剤である一方で高摩擦化をもたらし無灰摩擦調整剤(無灰FM)との併用による摩擦低減が試みられているがその潤滑機構は不明な点が多いそこでZDDPと無灰 FM併用時の潤滑機構を解明するためZDDP 単独添加油と ZDDP10486191048619無灰 FM複合添加油により形成されたトライボフィルムの特性を調査した無灰 FM はグリセリンモノオレート(GMO)とタロウジエタノールアミン(TDEA)を用いたSRV摩擦試験の結果よりZDDP + TDEA複合添加油が最も低摩擦を示したXPS 元素分析結果よりZDDP単独添加油と ZDDP + GMO複合添加油のトライボフィルムは上層は Pが Sよりも高濃度で存在したが下層は S が P よりも高濃度で存在したZDDP10486191048619TDEA 複合添加油の場合は常に Sが P よりも高濃度で存在した 10486541048654104865310486531048658104865811085311108531110852911085291109522110952211085601108560 分析結果よりZDDP 単独添加油と ZDDP10486191048619GMO 複合添加油中では中性塩として ZDDP は存在したがZDDP10486191048619TDEA複合添加油中では塩基性塩に変化していた以上より複合添加する無灰FMの種類によって ZDDPの錯体構造が変化しZDDP単独添加の場合と深さ方向の組成が異なる性質のトライボフィルムを形成することで摩擦挙動に影響を与えたと考えられると結論付けた
グラフェンは sp11085301108530結合により平面上に六角形状に配列した炭素原子からなる二次元分子である極めて高い電子移動度や光透過度から半導体材料や透明電極としての応用が期待されておりまた優れた機械的強度化学的安定性を持つことから磁気ディスク等の極薄潤滑保護膜としての研究が進められている高品位なグラフェンを大規模に合成する方法として加熱したNiCu 等の触媒金属膜上で原料となる炭化水素ガスを熱分解させてグラフェンを合成する熱 CVD法が最も広く用いられているしかしこの手法で合成したグラフェンを機能性材料として用いるためには触媒膜上から目的とする基板上へと複雑なプロセスを経て転写する必要がありグラフェンを実用化する上での大きな障壁となっているこのため任意の基板上へとグラフェンを直接合成する手法が研究されておりこれまでに極めて薄い触媒膜を用いてグラフェンを合成した後に触媒を加熱蒸発させグラフェンのみを基板上に残す方法や金属蒸気を触媒として利用する方法等が報告されているが大面積にわたって均一にグラフェンを合成することは困難であるとされている本研究では基板上に炭素イオンを注入した Ni 膜と Cu 膜を積層してアニーリングすることで基板上へのグラフェンの直接合成を試みた
10486591048659104868110486811048655104865511085301108530基板上にスパッタ成膜したNi 膜にプラズマ利用イオン注入法を用いてメタンイオンを注入しさらにその上にCu膜をスパッタすることで炭素を含むNi 膜と Cu膜の積層膜を生成しこれを真空中にて 850でアニーリングすることによってグラフェンを基板と積層膜の界面に生成したNi 膜の厚みを 50nm150 nmCu 膜の厚みを 50nm350 nmと変化させ合計 4通りのサンプルを作成した積層膜をエッチングして取り除いたのち基板上に形成されたグラフェン膜をラマン分光分析法を用いて評価したNi 膜の厚みが比較的薄いサンプルについては欠陥を含む複層のグラフェンが基板全面にわたって合成されていたのに対しNi 膜が厚いサンプルについては微弱な非晶質炭素のピークが観測されたこの成膜メカニズムとしてはNi と Cu 中での炭素固溶度の違いによるものが考えられNi よりも CuおよびNiCu 合金の方が炭素固溶度が小さいためアニーリングによってNi と Cu が相互拡散し合金を形成するにつれて炭素が界面付近に集中しNiCu 合金の触媒作用によってグラフェンが合成されたものと考えられる本研究ではNi と Cu を積層した触媒膜を用いて触媒膜と基板上の界面に直接大面積のグラフェンを合成することに成功した任意の基板上に転写プロセスを用いることなく直接グラフェンを形成することができる本手法は表面保護膜の形成手法として有意義であると考えられる
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2019 年度日本トライボロジー学会学生奨励賞受賞者
大内 春花 君(東京理科大学 大学院工学研究科)
大内氏ZDDP と無灰摩擦調整剤併用による ZDDP 錯体構造変化がトライボロジー特性へ与える影響
本研究は ZDDP と無灰 FM併用時の潤滑機構の解明を目的に摩擦面に形成されるトライボフィルムの特性と摩擦挙動との関係を考察したものであるしゅう動部品における要求性能を満たすために潤滑油添加剤の組合せや配合割合が重要となる個々の添加剤の機能は明らかになっているが複合添加した場合相乗効果が発現する場合と互いの効果を阻害する場合があり効果の解明はあまり進んでいない実際に使用される潤滑油は複合添加油であるためより高性能な潤滑油の開発には添加剤間の相互作用機構の解明が必要不可欠となるジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)はトライボフィルムを摩擦面に生成し耐摩耗性向上に寄与する添加剤である一方で高摩擦化をもたらし無灰摩擦調整剤(無灰FM)との併用による摩擦低減が試みられているがその潤滑機構は不明な点が多いそこでZDDPと無灰 FM併用時の潤滑機構を解明するためZDDP 単独添加油と ZDDP10486191048619無灰 FM複合添加油により形成されたトライボフィルムの特性を調査した無灰 FM はグリセリンモノオレート(GMO)とタロウジエタノールアミン(TDEA)を用いたSRV摩擦試験の結果よりZDDP + TDEA複合添加油が最も低摩擦を示したXPS 元素分析結果よりZDDP単独添加油と ZDDP + GMO複合添加油のトライボフィルムは上層は Pが Sよりも高濃度で存在したが下層は S が P よりも高濃度で存在したZDDP10486191048619TDEA 複合添加油の場合は常に Sが P よりも高濃度で存在した 10486541048654104865310486531048658104865811085311108531110852911085291109522110952211085601108560 分析結果よりZDDP 単独添加油と ZDDP10486191048619GMO 複合添加油中では中性塩として ZDDP は存在したがZDDP10486191048619TDEA複合添加油中では塩基性塩に変化していた以上より複合添加する無灰FMの種類によって ZDDPの錯体構造が変化しZDDP単独添加の場合と深さ方向の組成が異なる性質のトライボフィルムを形成することで摩擦挙動に影響を与えたと考えられると結論付けた
グラフェンは sp11085301108530結合により平面上に六角形状に配列した炭素原子からなる二次元分子である極めて高い電子移動度や光透過度から半導体材料や透明電極としての応用が期待されておりまた優れた機械的強度化学的安定性を持つことから磁気ディスク等の極薄潤滑保護膜としての研究が進められている高品位なグラフェンを大規模に合成する方法として加熱したNiCu 等の触媒金属膜上で原料となる炭化水素ガスを熱分解させてグラフェンを合成する熱 CVD法が最も広く用いられているしかしこの手法で合成したグラフェンを機能性材料として用いるためには触媒膜上から目的とする基板上へと複雑なプロセスを経て転写する必要がありグラフェンを実用化する上での大きな障壁となっているこのため任意の基板上へとグラフェンを直接合成する手法が研究されておりこれまでに極めて薄い触媒膜を用いてグラフェンを合成した後に触媒を加熱蒸発させグラフェンのみを基板上に残す方法や金属蒸気を触媒として利用する方法等が報告されているが大面積にわたって均一にグラフェンを合成することは困難であるとされている本研究では基板上に炭素イオンを注入した Ni 膜と Cu 膜を積層してアニーリングすることで基板上へのグラフェンの直接合成を試みた
10486591048659104868110486811048655104865511085301108530基板上にスパッタ成膜したNi 膜にプラズマ利用イオン注入法を用いてメタンイオンを注入しさらにその上にCu膜をスパッタすることで炭素を含むNi 膜と Cu膜の積層膜を生成しこれを真空中にて 850でアニーリングすることによってグラフェンを基板と積層膜の界面に生成したNi 膜の厚みを 50nm150 nmCu 膜の厚みを 50nm350 nmと変化させ合計 4通りのサンプルを作成した積層膜をエッチングして取り除いたのち基板上に形成されたグラフェン膜をラマン分光分析法を用いて評価したNi 膜の厚みが比較的薄いサンプルについては欠陥を含む複層のグラフェンが基板全面にわたって合成されていたのに対しNi 膜が厚いサンプルについては微弱な非晶質炭素のピークが観測されたこの成膜メカニズムとしてはNi と Cu 中での炭素固溶度の違いによるものが考えられNi よりも CuおよびNiCu 合金の方が炭素固溶度が小さいためアニーリングによってNi と Cu が相互拡散し合金を形成するにつれて炭素が界面付近に集中しNiCu 合金の触媒作用によってグラフェンが合成されたものと考えられる本研究ではNi と Cu を積層した触媒膜を用いて触媒膜と基板上の界面に直接大面積のグラフェンを合成することに成功した任意の基板上に転写プロセスを用いることなく直接グラフェンを形成することができる本手法は表面保護膜の形成手法として有意義であると考えられる
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2019 年度日本トライボロジー学会学生奨励賞受賞者
大内 春花 君(東京理科大学 大学院工学研究科)
大内氏ZDDP と無灰摩擦調整剤併用による ZDDP 錯体構造変化がトライボロジー特性へ与える影響
本研究は ZDDP と無灰 FM併用時の潤滑機構の解明を目的に摩擦面に形成されるトライボフィルムの特性と摩擦挙動との関係を考察したものであるしゅう動部品における要求性能を満たすために潤滑油添加剤の組合せや配合割合が重要となる個々の添加剤の機能は明らかになっているが複合添加した場合相乗効果が発現する場合と互いの効果を阻害する場合があり効果の解明はあまり進んでいない実際に使用される潤滑油は複合添加油であるためより高性能な潤滑油の開発には添加剤間の相互作用機構の解明が必要不可欠となるジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)はトライボフィルムを摩擦面に生成し耐摩耗性向上に寄与する添加剤である一方で高摩擦化をもたらし無灰摩擦調整剤(無灰FM)との併用による摩擦低減が試みられているがその潤滑機構は不明な点が多いそこでZDDPと無灰 FM併用時の潤滑機構を解明するためZDDP 単独添加油と ZDDP10486191048619無灰 FM複合添加油により形成されたトライボフィルムの特性を調査した無灰 FM はグリセリンモノオレート(GMO)とタロウジエタノールアミン(TDEA)を用いたSRV摩擦試験の結果よりZDDP + TDEA複合添加油が最も低摩擦を示したXPS 元素分析結果よりZDDP単独添加油と ZDDP + GMO複合添加油のトライボフィルムは上層は Pが Sよりも高濃度で存在したが下層は S が P よりも高濃度で存在したZDDP10486191048619TDEA 複合添加油の場合は常に Sが P よりも高濃度で存在した 10486541048654104865310486531048658104865811085311108531110852911085291109522110952211085601108560 分析結果よりZDDP 単独添加油と ZDDP10486191048619GMO 複合添加油中では中性塩として ZDDP は存在したがZDDP10486191048619TDEA複合添加油中では塩基性塩に変化していた以上より複合添加する無灰FMの種類によって ZDDPの錯体構造が変化しZDDP単独添加の場合と深さ方向の組成が異なる性質のトライボフィルムを形成することで摩擦挙動に影響を与えたと考えられると結論付けた
グラフェンは sp11085301108530結合により平面上に六角形状に配列した炭素原子からなる二次元分子である極めて高い電子移動度や光透過度から半導体材料や透明電極としての応用が期待されておりまた優れた機械的強度化学的安定性を持つことから磁気ディスク等の極薄潤滑保護膜としての研究が進められている高品位なグラフェンを大規模に合成する方法として加熱したNiCu 等の触媒金属膜上で原料となる炭化水素ガスを熱分解させてグラフェンを合成する熱 CVD法が最も広く用いられているしかしこの手法で合成したグラフェンを機能性材料として用いるためには触媒膜上から目的とする基板上へと複雑なプロセスを経て転写する必要がありグラフェンを実用化する上での大きな障壁となっているこのため任意の基板上へとグラフェンを直接合成する手法が研究されておりこれまでに極めて薄い触媒膜を用いてグラフェンを合成した後に触媒を加熱蒸発させグラフェンのみを基板上に残す方法や金属蒸気を触媒として利用する方法等が報告されているが大面積にわたって均一にグラフェンを合成することは困難であるとされている本研究では基板上に炭素イオンを注入した Ni 膜と Cu 膜を積層してアニーリングすることで基板上へのグラフェンの直接合成を試みた
10486591048659104868110486811048655104865511085301108530基板上にスパッタ成膜したNi 膜にプラズマ利用イオン注入法を用いてメタンイオンを注入しさらにその上にCu膜をスパッタすることで炭素を含むNi 膜と Cu膜の積層膜を生成しこれを真空中にて 850でアニーリングすることによってグラフェンを基板と積層膜の界面に生成したNi 膜の厚みを 50nm150 nmCu 膜の厚みを 50nm350 nmと変化させ合計 4通りのサンプルを作成した積層膜をエッチングして取り除いたのち基板上に形成されたグラフェン膜をラマン分光分析法を用いて評価したNi 膜の厚みが比較的薄いサンプルについては欠陥を含む複層のグラフェンが基板全面にわたって合成されていたのに対しNi 膜が厚いサンプルについては微弱な非晶質炭素のピークが観測されたこの成膜メカニズムとしてはNi と Cu 中での炭素固溶度の違いによるものが考えられNi よりも CuおよびNiCu 合金の方が炭素固溶度が小さいためアニーリングによってNi と Cu が相互拡散し合金を形成するにつれて炭素が界面付近に集中しNiCu 合金の触媒作用によってグラフェンが合成されたものと考えられる本研究ではNi と Cu を積層した触媒膜を用いて触媒膜と基板上の界面に直接大面積のグラフェンを合成することに成功した任意の基板上に転写プロセスを用いることなく直接グラフェンを形成することができる本手法は表面保護膜の形成手法として有意義であると考えられる
対象論文トライボロジー会議 2019 春 東京 B25
65-04-功績賞 Page 16 200330 1342 v360
16
198
2019 年度日本トライボロジー学会学生奨励賞受賞者
大内 春花 君(東京理科大学 大学院工学研究科)
大内氏ZDDP と無灰摩擦調整剤併用による ZDDP 錯体構造変化がトライボロジー特性へ与える影響
本研究は ZDDP と無灰 FM併用時の潤滑機構の解明を目的に摩擦面に形成されるトライボフィルムの特性と摩擦挙動との関係を考察したものであるしゅう動部品における要求性能を満たすために潤滑油添加剤の組合せや配合割合が重要となる個々の添加剤の機能は明らかになっているが複合添加した場合相乗効果が発現する場合と互いの効果を阻害する場合があり効果の解明はあまり進んでいない実際に使用される潤滑油は複合添加油であるためより高性能な潤滑油の開発には添加剤間の相互作用機構の解明が必要不可欠となるジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)はトライボフィルムを摩擦面に生成し耐摩耗性向上に寄与する添加剤である一方で高摩擦化をもたらし無灰摩擦調整剤(無灰FM)との併用による摩擦低減が試みられているがその潤滑機構は不明な点が多いそこでZDDPと無灰 FM併用時の潤滑機構を解明するためZDDP 単独添加油と ZDDP10486191048619無灰 FM複合添加油により形成されたトライボフィルムの特性を調査した無灰 FM はグリセリンモノオレート(GMO)とタロウジエタノールアミン(TDEA)を用いたSRV摩擦試験の結果よりZDDP + TDEA複合添加油が最も低摩擦を示したXPS 元素分析結果よりZDDP単独添加油と ZDDP + GMO複合添加油のトライボフィルムは上層は Pが Sよりも高濃度で存在したが下層は S が P よりも高濃度で存在したZDDP10486191048619TDEA 複合添加油の場合は常に Sが P よりも高濃度で存在した 10486541048654104865310486531048658104865811085311108531110852911085291109522110952211085601108560 分析結果よりZDDP 単独添加油と ZDDP10486191048619GMO 複合添加油中では中性塩として ZDDP は存在したがZDDP10486191048619TDEA複合添加油中では塩基性塩に変化していた以上より複合添加する無灰FMの種類によって ZDDPの錯体構造が変化しZDDP単独添加の場合と深さ方向の組成が異なる性質のトライボフィルムを形成することで摩擦挙動に影響を与えたと考えられると結論付けた
グラフェンは sp11085301108530結合により平面上に六角形状に配列した炭素原子からなる二次元分子である極めて高い電子移動度や光透過度から半導体材料や透明電極としての応用が期待されておりまた優れた機械的強度化学的安定性を持つことから磁気ディスク等の極薄潤滑保護膜としての研究が進められている高品位なグラフェンを大規模に合成する方法として加熱したNiCu 等の触媒金属膜上で原料となる炭化水素ガスを熱分解させてグラフェンを合成する熱 CVD法が最も広く用いられているしかしこの手法で合成したグラフェンを機能性材料として用いるためには触媒膜上から目的とする基板上へと複雑なプロセスを経て転写する必要がありグラフェンを実用化する上での大きな障壁となっているこのため任意の基板上へとグラフェンを直接合成する手法が研究されておりこれまでに極めて薄い触媒膜を用いてグラフェンを合成した後に触媒を加熱蒸発させグラフェンのみを基板上に残す方法や金属蒸気を触媒として利用する方法等が報告されているが大面積にわたって均一にグラフェンを合成することは困難であるとされている本研究では基板上に炭素イオンを注入した Ni 膜と Cu 膜を積層してアニーリングすることで基板上へのグラフェンの直接合成を試みた
10486591048659104868110486811048655104865511085301108530基板上にスパッタ成膜したNi 膜にプラズマ利用イオン注入法を用いてメタンイオンを注入しさらにその上にCu膜をスパッタすることで炭素を含むNi 膜と Cu膜の積層膜を生成しこれを真空中にて 850でアニーリングすることによってグラフェンを基板と積層膜の界面に生成したNi 膜の厚みを 50nm150 nmCu 膜の厚みを 50nm350 nmと変化させ合計 4通りのサンプルを作成した積層膜をエッチングして取り除いたのち基板上に形成されたグラフェン膜をラマン分光分析法を用いて評価したNi 膜の厚みが比較的薄いサンプルについては欠陥を含む複層のグラフェンが基板全面にわたって合成されていたのに対しNi 膜が厚いサンプルについては微弱な非晶質炭素のピークが観測されたこの成膜メカニズムとしてはNi と Cu 中での炭素固溶度の違いによるものが考えられNi よりも CuおよびNiCu 合金の方が炭素固溶度が小さいためアニーリングによってNi と Cu が相互拡散し合金を形成するにつれて炭素が界面付近に集中しNiCu 合金の触媒作用によってグラフェンが合成されたものと考えられる本研究ではNi と Cu を積層した触媒膜を用いて触媒膜と基板上の界面に直接大面積のグラフェンを合成することに成功した任意の基板上に転写プロセスを用いることなく直接グラフェンを形成することができる本手法は表面保護膜の形成手法として有意義であると考えられる
対象論文トライボロジー会議 2019 春 東京 B25
65-04-功績賞 Page 16 200330 1342 v360
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2019 年度日本トライボロジー学会学生奨励賞受賞者
大内 春花 君(東京理科大学 大学院工学研究科)
大内氏ZDDP と無灰摩擦調整剤併用による ZDDP 錯体構造変化がトライボロジー特性へ与える影響
本研究は ZDDP と無灰 FM併用時の潤滑機構の解明を目的に摩擦面に形成されるトライボフィルムの特性と摩擦挙動との関係を考察したものであるしゅう動部品における要求性能を満たすために潤滑油添加剤の組合せや配合割合が重要となる個々の添加剤の機能は明らかになっているが複合添加した場合相乗効果が発現する場合と互いの効果を阻害する場合があり効果の解明はあまり進んでいない実際に使用される潤滑油は複合添加油であるためより高性能な潤滑油の開発には添加剤間の相互作用機構の解明が必要不可欠となるジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)はトライボフィルムを摩擦面に生成し耐摩耗性向上に寄与する添加剤である一方で高摩擦化をもたらし無灰摩擦調整剤(無灰FM)との併用による摩擦低減が試みられているがその潤滑機構は不明な点が多いそこでZDDPと無灰 FM併用時の潤滑機構を解明するためZDDP 単独添加油と ZDDP10486191048619無灰 FM複合添加油により形成されたトライボフィルムの特性を調査した無灰 FM はグリセリンモノオレート(GMO)とタロウジエタノールアミン(TDEA)を用いたSRV摩擦試験の結果よりZDDP + TDEA複合添加油が最も低摩擦を示したXPS 元素分析結果よりZDDP単独添加油と ZDDP + GMO複合添加油のトライボフィルムは上層は Pが Sよりも高濃度で存在したが下層は S が P よりも高濃度で存在したZDDP10486191048619TDEA 複合添加油の場合は常に Sが P よりも高濃度で存在した 10486541048654104865310486531048658104865811085311108531110852911085291109522110952211085601108560 分析結果よりZDDP 単独添加油と ZDDP10486191048619GMO 複合添加油中では中性塩として ZDDP は存在したがZDDP10486191048619TDEA複合添加油中では塩基性塩に変化していた以上より複合添加する無灰FMの種類によって ZDDPの錯体構造が変化しZDDP単独添加の場合と深さ方向の組成が異なる性質のトライボフィルムを形成することで摩擦挙動に影響を与えたと考えられると結論付けた