1.はじめに
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本発表の要旨→海洋環境保護の観点から、船舶水中騒音に対する関心高。→欧米では、水中騒音施策が具体的に始動。→規制等対策のため、日本国としても研究を開始。→海技研で、水中騒音音源レベルを、CFDを援用して推定する方法を構築。結果は以下の通り。
→実船の水中騒音(背景雑音: 、キャビ騒音: )→海技研キャビ水槽における、水中騒音計測技術の復活
本発表内容の一部は、「海技研報告(2016), 第16巻第1号, pp.65-87」に掲載されており、海技研websiteからダウンロード可能です。
2.国際動向
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バンクーバー港湾使用料割引サービス”EcoAction Program”→海洋環境対策を講じている船舶が、サービス対象。→水中騒音については、船級notationを持つ船舶、或いは特定のデバイスを持つ船舶が対象。(2017年1月より。)
出典:http://www.portvancouver.com/environment/air-energy-climate-action/marine/
GRT: Gross Registered Tonne
省エネデバイス:”Bronze”水中騒音notation:”Gold”
2.国際動向
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生物多様性条約 (Convention on Biological Diversity: CBD)→2016年4月の補助機関会合(SBSTTA)@モントリオール→批准国に対して、以下の勧告(Suggested Recommendation)
「海棲生物に対する、水中騒音の評価ガイドライン・評価ツールキットの整備」
出典:UNEP/CBD/SBSTTA/20/5 pp.4-5
2.国際動向
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EUプロジェクト:2012年~2015年→SILENV(2009-2012): 船舶の振動騒音全般に対する、EUとしての学術的アプローチ。→AQUO(2012-2015): SILENVの後継であり、水中騒音の海棲生物に対する影響の研究を追加。→SONIC(2012-2015): AQUOから派生し、プロペラキャビテーション騒音に特化。
AQUO組織図 (Audoly et al. 2014)SILENV成果例 (Gaggero et al. 2014)
減速運航により、どの程度水中騒音が減るかのtrend line
2.国際動向
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EUプロジェクト:2012年~2015年AQUO成果例:→沿岸域の特定海棲生物(タラ)に対する、船舶雑音が及ぼし得る影響(=聴覚障害)の定量的な評価。
SONIC成果例:→船尾伴流を改善したことによる、キャビテーションパターンの変化および水中騒音への影響。
出典:Guidelines for regulation on UW noise from commercial shipping
(DNV-GL/BV 2016)
2.国際動向
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船級notation① DNV-GL: “SILENT Class Notation” (2010)② Bureau Veritas: “NR614” (2014, 2017Feb.改訂)③ RINA: “DOLPHIN” (2014)
→①②では、水中騒音の実船計測法、船種毎のnoise limit lineを規定。特に②は、EUプロジェクトの成果に基づき作成。
出典:Palomo et al. (2015)
2.国際動向
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IMO基準(非強制)MEPC.1/Circ.833 (2014)→船尾変動圧(Kpi)の振幅値を以て、水中騒音を間接的に規定
MEPC 71/16/5 (28 April 2017)→カナダが実施している水中騒音研究結果に基づき、各国に対し船舶水中騒音低減を目指した、技術的な取り組みを促す。
ISO規格 (ISO TC8/SC8/WG14)ISO WD 20233-1:水槽におけるキャビテーション騒音計測法ISO WD 20233-2:キャビテーション水槽における音源探査法ISO WD 22098:実船におけるキャビ/船尾変動圧の計測法→何れも、日本の国益を損なわないような規格とする必要あり。→海技研が中心となり、規格審議を継続中。
CB<0.65Kp1≤3kPa, Kp2≤2kPaCB>0.65Kp1≤5kPa, Kp2≤3kPa
2.国際動向
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国交省海事局 海洋・環境政策課の方針(2016年船舶基準セミナー講演資料より)
COP等では、ヒゲクジラの交信音と船舶水中騒音の周波数(低周波音)が重なることを以て、「影響がある」と思考。「対策を講ずべき」という意見あり。
船舶水中騒音に対する、科学的根拠のない規制の導入は回避すべき。日本国としては、定量的かつ科学的なデータを取得し、議論に参加していく。
3.海技研の取り組み例①
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国内研究体制の構築:船技協 水中騒音PJ(H28~)の例
海棲生物影響評価・中央水研・北大(計測・解析)・海中を伝わった音の,海棲生物に対する影響評価(クジラ反応行動調査)
水中騒音伝搬推定・東京海洋大・阪大(シミュレーション・計測)・海中で、音がどう伝わるか
水中騒音音源レベル推定・海技研(シミュレーション・計測)・どんな音が出るか(周波数・音圧)・プロペラキャビテーション
要素技術取りまとめ・船技協・予算および進捗管理
背景画像の出典:木村他 (2015)
3.海技研の取り組み例①
11
プロペラキャビテーション騒音の推定・検証プロペラキャビテーション騒音の特徴:→周波数帯域が広い。
→プロペラおよびキャビテーション気泡が、流体を排除することで生ずる圧力変動=狭帯域音(翼次成分)→キャビテーション気泡の伸縮・崩壊=広帯域音
出典:Brown (1976) CFDを援用したキャビテーション、および騒音の推定法構築
推定した音源レベルを、実船計測結果と検証
水中騒音伝搬計算への入力パラメター提供
CBD/SBSTTAへ、「水中騒音推
定ツールキット」として提案できるレベルに。
3.海技研の取り組み例①
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供試船体およびプロペラ→離島間航路の貨客船
配布不可データのため削除
3.海技研の取り組み例①
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CFDを援用したキャビテーション騒音推定システム
配布不可データのため削除
CFDソルバー: NAGISA (海技研), star-ccm+ (SIMENS)
3.海技研の取り組み例①
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CFDを援用したキャビテーション騒音推定結果
配布不可データのため削除
3.海技研の取り組み例①
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CFDを援用したキャビテーション騒音推定結果
配布不可データのため削除
Ac/AD: キャビテーション発生面積の、翼面積に対する比Kp: 受音点における圧力変動d2Vc/dt2:キャビテーション発生体積の、2階時間微分
3.海技研の取り組み例②
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キャビテーション水槽における水中騒音計測システム構築
海技研大型キャビテーション水槽第1計測部, J26動力計を使用。
J=0.6(バック面へのシートキャビテーション・翼端渦キャビテーション)、J=0.9(フェースキャビテーション)の条件を対象。
本計測例以外にも、欧州水槽試験技術委員会(HTF)の持ち回り試験に参加、計測を実施中。
水槽内伝達関数の計測についても、研究開発を予定。
3.海技研の取り組み例②
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キャビテーション水槽における水中騒音計測システム構築
試験実施日:2016年12月26日-28日
図の出典:第199研究部会 プロペ
ラ推進性能と騒音特性の推定法に関する研究 報告書 (1986)
3.海技研の取り組み例②
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キャビテーション水槽における水中騒音計測システム構築
出典:Sakamoto et al. (2016); 第199研究部会 プロペラ推進性能と騒音特性の推定法に関する研究 報告書 (1986)
4.結言
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CFDを援用した水中騒音推定システムの構築→キャビテーション計算条件そのものも、CFDで推定可能。→機関出力の差によるSPLの差を、狭帯域・広帯域共に、CFD計算で定量的に精度良く捉えることが可能。→構築したシステムは、「水中騒音評価toolkit」の一例として、CBD/SBSTTAへ提案可能。→更に計算実績を積み、計算-実船相関を構築することが必要。
キャビテーション水槽における水中騒音計測システム構築→海技研大型キャビテーション水槽で稼働開始。→キャビテーションパターンの差による、水中騒音の特性差を計測出来ている。→複数の計測を通じて、計測ノウハウ・水槽特性を把握することが必要。
謝辞
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本研究の一部は、
国土交通省”実船の流場等計測による船舶の高度性能評価システムの構築”
日本財団・ (一財)日本船舶技術研究協会”船舶水中騒音計測”
の補助により実施されました。関係各位に深く御礼申し上げます。