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き:平成 27 11 13 日(金) と ころ:SCAT 会議室 当センターの賛助会員企業などから 35 名が参加されました。 今回は、「IoT のアライアンスの動向および求められる技術の状 況」をテーマにご講演いただきました。 本講演の内容は、本号の SEMINAR REPORT にて掲載してい ます。 平成27年度SCAT研究助成応募状況 IN ACTIVITY 第96回テレコム技術情報セミナー 講演 1 IoT/M2M の技術標準化、業界アライアンス動向 日立製作所(株) 情報・通信システム社 IoT ビジネス推進統括本部 事業主管 木下 泰三 氏 講演 2 IoT&インダストリアル・インターネットの動向と コミュニケーションモデルへの対応 Industrial Internet Consortium 日本代表 一般社団法人日本 OMG 代表理事 吉野 晃生 氏 平成 27 年度 SCAT 研究助成については、研究費助成と国際会議助成は 9 1 日から 10 31 日まで、研究奨励金は 10 1 日か 11 30 日まで募集を行い、研究費助成には 64 件、国際会議助成には 34 件、研究奨励金には 17 件の応募がありました。現 在、研究助成審査委員会による厳正な審査が行われており、平成 28 3 月に採用対象を決定する予定です。 SCATLINE Vol.99 January, 2016 1
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Apr 04, 2020

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● と き:平成27年11月13日(金)

● ところ:SCAT会議室

当センターの賛助会員企業などから 35 名が参加されました。

今回は、「IoTのアライアンスの動向および求められる技術の状

況」をテーマにご講演いただきました。

本講演の内容は、本号のSEMINAR REPORTにて掲載してい

ます。

平成27年度SCAT研究助成応募状況

IN ACTIVITY

第96回テレコム技術情報セミナー

講演1:IoT/M2Mの技術標準化、業界アライアンス動向

日立製作所(株)

情報・通信システム社 IoTビジネス推進統括本部

事業主管 木下 泰三 氏

講演2:IoT&インダストリアル・インターネットの動向と

コミュニケーションモデルへの対応

Industrial Internet Consortium 日本代表

一般社団法人日本OMG代表理事

吉野 晃生 氏

平成27年度SCAT研究助成については、研究費助成と国際会議助成は9月1日から10月31日まで、研究奨励金は10月1日か

ら 11月 30日まで募集を行い、研究費助成には 64件、国際会議助成には 34件、研究奨励金には 17件の応募がありました。現

在、研究助成審査委員会による厳正な審査が行われており、平成28年3月に採用対象を決定する予定です。

SCATLINE Vol.99 January, 2016

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ここ 1 年半ぐらいの間、様々なメディアで IoT/M2M の動向

について色々と騒がれていますが、いったい今はどのような状

況にあるのか、今後どのよう対処していけばよいのか、おそら

く各社お悩みのことと思います。当社でも昨春あたりから、ま

ずは世界の動向をきちんと整理して、よく見定めて、どこの企

業を追いかけて、どこの企業と連携して、あるいは深く関わっ

ていくのがよいのかということで、戦略を練るための整理を始

めたところです。当然ながら日々変化していくものであって、

本日お話できることは最新の状況ではないかもしれませんが、

とりあえず 2015 年の夏頃までの状況をお話させていただきた

いと思います

図 1は、IoTによる将来市場を示したものです。資料出典の

シスコでは、Internet of Everything(IoE)という呼び方をして

いて、最近ではWeb of Things(WoT)など、色々な呼ばれ方

をしています。他には、2000年頃のユビキタスと同じではない

かと言う人もいます。図1の左側は、全業種に影響、インパク

トがあって、関わり合いができてくるので、広い視野で見渡さ

ないといけないということを示しています。一方、あまりにも

広範囲の業種に関係があるものなので、当社、当業界はどのよ

うに対処すればよいのか、というような質問が出てくる気もし

ます。

通信事業者の立場で見ると、日本の人口は1億数千万人、世

界の人口は 70 億人と数に上限がありますが、物の数で定義す

ると、はるかに大きな数になります。図 1の右側は、1人あた

り 10 個程度の物を持っていて、ネット人口 50 億人に対して

10 倍すると業界全体で 500 億個になるということで、一応業

界でのコンセンサスは取れています。最近では、2035 年頃の

M2Mあるいは IoTのターゲットデバイス数は、さらに増えて1

人あたり150個あるいは200個ぐらいになるという予測もされ

ています。したがって、図1のカーブが正しいかどうかは確と

は分かりかねますが、まずは人口と同数、それから人口の 10

倍となって、さらには人口の100倍のオーダーになってくるだ

ろうと言われています。

図1 IoT/M2Mによる将来市場

一方、Industrie 4.0と Industrial Internet Consortium(IIC)は、

欧米の特に製造業分野における改革ということで、大きな取り

上げ方をされています。Cyber Physical System(CPS)は第4

次産業革命ということで、このあたりは色々なところで語られ

ています(図2)。

今日までは、ヘルスケア、オートモーティブ、インダストリ

ーなどの各業界では、それぞれの IoTソリューションが構築さ

れてきたのですが、昨今は業界ごとの垂直統合から、どちらか

というと業界をまたぐ水平統合に移りつつあるという状況です。

IoT/M2Mの技術標準化、業界アライアンス動向

SEMINAR REPORT

SCATLINE Vol.99 January, 2016

日立製作所(株)

情報・通信システム社

IoTビジネス推進統括本部

事業主管

木下 泰三 氏

はじめに

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図2 CPSによる第4次産業革命

業界ごとにプラットフォームが異なるのは同然のことなので

すが、ベンダーの立場からすると、できるだけ共通のプラット

フォームであってほしいものです。共通のものを構築して、異

なる業界でも同じものが売れるなら当然利益率も上がるという

ことで、やはり横方向に共通化を図りたくなります。もう一つ、

技術な面でもきちんと標準化しておけば、どのレイヤーも同じ

インタフェースで作れるので、どの業界でも共通に使えてとて

も都合がよいということで、バーチカルとホリゾンタルは常に

せめぎ合っている状況です(図3)。

図3 IoT/M2Mでの標準化・アライアンス活動の特長

活動の特長の一つ目は、今までは上流から下流までの業種の

バーチカルなソリューションによるエコシステムが協業という

形で構築されてきたのですが、徐々に縦方向から横方向の仲間

づくりに変わりつつあるということです。

二つ目は、バーチカルの団体が横方向の連携にも進出してみ

ようということで、少しは動きがあるということです。

三つ目は、ホリゾンタルの団体とバーチカルの団体との相互

交流がようやくのことで始まり、縦方向だけ、横方向だけでは

統一的な標準は作れないので、最近になってコンセンサスを得

るためのインターワーキングの流れが出てきたということです。

最後四つ目は、標準化活動に携わっていて思うのですが、欧

米は経営戦略と研究開発がペアで、例えば、企画部門や事業部

門の企画サイドの方と、研究所のエンジニアやリサーチャーな

どの技術のわかる方の2人ペアで参加されるケースが多いです。

これに対して日本は、どうも技術者だけが参加して、技術興味

本位だけで標準化を語ってしまうケースが多いようです。ここ

で申し上げたかったことは、標準化というのはエコシステムの

協業を行うための一つのきっかけに過ぎないということです。

欧米の標準化の動きは、何も技術標準を作ることが目的ではな

く、色々なエコシステムを事業において組み合わせていくため

のきっかけになるので活動しているということです。

これが本日申し上げたいことの要点の一つです。

図4は、技術標準化と業界アライアンスをきちんと整理する

ために描いたものです。図4左側最下段のエンドデバイスから

センシング信号が発せられます。その上は狭域ネットワーク層、

無線中心のいわゆるパーソナル・エリア・ネットワークです。

そこは工場の現場だったり、ビルだったり、農場だったりする

わけです。そこから上は通信事業者の広域ネットワーク層を介

してプラットフォーム層、即ちクラウドであり、その上に業種

別のアプリケーション層が重なるということで、このシステム

図の上層から下層まで、業界ごとのソリューションとなってい

ます。一部は、狭域ネットワーク層を介さずに、エンドデバイ

スから直接広域ネットワーク層につなぐようなケースもありま

す。

図4 技術標準化と業界アライアンスの位置付け

図4右側に書き並べたのが、色々とある標準化、アライアン

スの中のごく一部です。1 割にも満たないほどの、割と注目株

が並べてあります。なお、oneM2MやSG20は全インタフェー

スを扱っていますが、無理やり一つの層にソーティングしてい

ます。他の標準化と比較した上で、一番中心的活動エリアであ

ろうということで、そこに載せています。IEEE802も同様です。

業界アライアンスの方は、本当は縦割りなのだから、本来な

ら図4右上の方に書き並べるべきなのですが、どちらかという

と業界別のアライアンスが載せてあり、ピア・トゥ・ピアのデ

バイスインタフェース中心のアライアンスを下に並べた関係上、

このような書き方にしています。

標準化団体は、実際にはこの 10 倍ほどあって、団体内には

Working Group(WG)、Study Group(SG)、Technical Committee

(TC)などの色々な集まりがあります。図4はまとめであって、

次章以降にもう少し具体的に説明していきたいと思います。

図5は、バーチカルの団体とホリゾンタルの団体の2つの側

面でまとめてみたものです。ホリゾンタルの団体、すなわち技

術標準化の方は、通信・インターネット系の標準、電気・産業

系の標準、それからピア・トゥ・ピアあるいはスマートデバイ

ス系インタフェースの標準の大きく 3 つに分類できます。通

信・インターネット系は、さらにピュアな通信系と、どちらか

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というとインターネット系の標準化に分けられます。電気・産

業制御系は、オートメーション、ファクトリーオートメーショ

ン系の標準と、対峙する 2 つの標準化団体の International

Organization for Standardization ( ISO )や International

Electrotechnical Commission(IEC)があります。ピア・トゥ・

ピア系は、IEEE 系とそれ以外のオープン系の標準化団体とで

大きく3つに分けられます。技術標準化の方は、都合6分野と

なります。

バーチカルの団体、すなわち業界アライアンスの方は、少々

分けづらいところがありますが、ざっくりと3グループにクラ

スタ分けされます。一つは、異業種が組んでエコシステムを推

進するタイプ、もう一つは、自社開発のものをデファクト・ス

タンダードにすべく仲間を集うタイプ、それから、同業種が同

じ分野でチームを組んで進めていくタイプの3つです。

図5 技術標準化と業界アライアンスの分類

以下、技術標準化動向の注目すべきところを順次説明したい

と思います。

(1) 通信・インターネット系

通信・インターネット系の標準は、oneM2M, ITU-T, 3GPP,

GSMA/eSIM, IETF, W3Cで、図6の赤字で示したところが、今

現在注目しておかないといけないと思っている標準化です。

図6 通信・インターネット系の標準化

ITU-Tは、もっとも古くからM2M標準化に取り組んでいて、

全部で10数個のSGで検討してきましたが、新たに設置した

SG20に IoT検討の場を統合しました。2015年10月に第1回

の会合が持たれました。

3GPPは、Machine Type Communication(MTC)というこ

とで、携帯電話のリリース13にてM2M系の仕様を作成してい

ます。

Internet Engineering Task Force(IETF)では、今までM2M

向けの標準を個別に作成してきたという経緯があります。

World Wide Web Consortium(W3C)では、WoTの標準化

活動を 2015年 5月から再開しています。これはどちらかとい

うと、セマンティクス、HTMLに関することです。

oneM2Mは、2015年11月第1週に第20回目の会合があり

ました。世界各国の標準化団体が手を結んで、以前の携帯電話

のときのような世界に2つ以上の標準を作ってはいけない、必

ず一つのユニークな標準を作るという強い意志を込めて、one

という呼び方をすることとなりました(図 7)。1年半~2年ぐ

らい前から議論を始めて、ようやく 16~17 回目の会合にてリ

リース1が標準化されました。内容は基本的にはリクワイアメ

ント、アーキテクチャ、セキュリティー、プロトコル、デバイ

スマネジメントの5つで、ベーシックな標準を打ち立てました。

参加者間で解釈に多少の違いはあるにしても、基本的にこの 5

つの方式に則っていれば、oneM2Mの IoT/M2M標準に準拠し

ていることになります。

図7 OneM2M

現在、2016 年春のリリース 2 に向けて、オプショナルな標

準をもう少し詳細に詰めているところです。正式な標準として

リリースされたのは、今のところ図8の標準が最初ということ

になります。

図8 OneM2M技術仕様

IoT/M2Mの技術標準化動向

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ITU-Tでは再統合されてSG20となり、過去からの経緯を引

きずって、図 9に示すように大きく 6つのQuestionを立てて

整理・統合し、このあいだジュネーブにて会合を持ったばかり

です。良いものはどしどし取り入れていくということで、

oneM2M, W3Cと連動しながら、デジュールの世界標準を決め

ていこうとしています。おそらく 1年半~2年後にはリリース

1 が発行されるのではないかと思っています。これはジュネー

ブ国連本部横で開かれる由緒正しい標準化なので、この場でき

ちんと裏書きされることは、とても重要な意味を持つのではな

いかと思っています。

図9 ITU-T SG20

3GPPでは携帯電話の標準を次々と作成していますが、リリ

ース13のマシンタイプコミュニケーションは200 kbps以下と

なっています(図10)。普通なら4G, 5Gとますますビットレー

トが高くなっていくものと思っていましたが、実は低い方も考

慮しているのです。これにはまさしく M2M向きの非常に小さ

なデータではあるが、相当数のアクセスが同時に集中するよう

なケースにきちんと対応できるネットワークにしようという意

図が見えます。リリース13以降、要するに5G以降では、こと

のほか IoTを意識しているのです。

図10 3GPP MTC

Embedded SIM(eSIM)は、すでにGSM Association(GSMA)

で標準化されており(図 11)、日本でも総務省が 2016 年春か

ら解禁しますが、ホワイトSIMということで、通信事業者の縛

りがない状態で提供されます。例えば、ホワイトSIMを入れた

カーナビを車に搭載し、その後ユーザーがこのSIMの通信事業

者を自由に選ぶことができます。最近、カーシェアリングが結

構はやっていますが、車を借りたときにSIMを自由に書き換え

られるとなると、eSIMは意外とM2Mに向いている方式なのか

もしれません。Mobile Virtual Network Operator(MVNO)にも

とても受けがよく、eSIMはM2M向きの標準の一つであると考

えられています。

図11 GSMA/eSIM

IETFは、今まで6LoWPAN, ROLLなどの標準を作ってきま

したが、メモリ容量等の資源が限られているデバイス向けのプ

ロトコルを議論するワーキンググループということで、

Constrained RESTful Environments(CoRE)があります(図

12)。検討内容を簡潔に述べると、http のオーバーヘッドは、

どんなペイロード長であっても100 byteほどになり、たとえ1

byte, 2 byte のデータを送るのにもこれだけのオーバーヘッド

が付くので、それを2~4 byte程度にして、プロトコルをとて

も軽くするというものです。プロトコル名は、Constrained

Application Protocol(CoAP)と言います。

図12 IETF(4WG概要)

W3C は、現在インタレストグループの段階ですが、セマン

ティクス、HTML5をM2Mでも使うことを目標にして、リファ

レンス・アーキテクチャーから着手しているところです。イン

ダストリー分野ではシーメンスがセマンティクスの議長になっ

て意欲的に活動していますが、工場内ではこのデータ構造はと

ても重要なので、そういった意図のあらわれではないかと思い

ます。このあいだ札幌で会合があり、次の段階へと進んでいる

と聞いています(図13)。

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図13 W3C(WoT:Web of Things)

通信・インターネット系の標準で注目しておく必要があるの

は、概ね以上の3, 4つほどです。

(2) 電気・産業制御系

工場分野での標準としては、IEC, ISO, Joint Technical

Committee 1(JTC-1)の標準があります(図14)。ITネットワ

ーク系の方には見慣れないものかもしれませんが、IEC TC65

がPLCネットワークにて有名な標準です。TC65は色々なとこ

ろで見受けられますが、シーメンスのPROFINET、三菱電機の

CC-Linkなどの有名なPLCネットワークは、この標準に準拠し

ています。

図14 電気・産業制御系

Industrie 4.0である以上、PLCネットワークよりも上位レイ

ヤーの標準も作る必要があるので、例えば、工場・工場間をつ

なぐ、あるいは工場・クラウド間をつなぐということで、新た

に SG8 が設置されました。いま課題が設定されたところなの

で、おそらく 2~3 年かけて標準化していくことになると思い

ます。これはまさしくスマートファクトリー分野の標準、すな

わち本命の標準なのですが、標準作成までには暫らく時間を要

すると思います。

他には、コネクティビティ、セキュリティー分野があり、こ

れはSC65A, WG10というデジタルファクトリーの標準にて議

論されることになります。

IECと ISOには同じような標準があり、これを整理するため

のジョイント・テクニカル・コミッティということで、WG10

が設立されました。両者間を取り持つリファレンスを整理する

標準化です。

IECは、デジュール中のデジュール組織、たいそう大きな組

織なので、プロセスを踏みながらきちんと検討を進めている団

体です。TC65 だけでもとても大きな団体となっています(図

15)。PLCのネットワークについては、SC65, WG10あたりで

決められてきた経緯があります。日本電気計測器工業会

(JEMIMA)が日本の代表として議論に参加しています。

図15 IEC TC65(プロセス制御)

スマートファクトリー分野の新しい動きは SG8 で議論され

ていて、組織のハイアラーキーは図 16 ようになっています。

これに対応する日本の委員会は、JEMIMAを中心に組織されて

います。国内委員会にてしっかりと議論して、意見を統一して、

日本国案として投票にかけるという、まさしくデジュールの世

界の様相となっています。

一方、将来も見据えて、「ファクトリー・オブ・ザ・フューチ

ャー」ということで、あるべき姿をホワイトペーパーにまとめ

ています。SG8では、このペーパー見合いで進めている段階に

あります。まだ技術論まで議論が深まっていませんが、Industrie

4.0、スマートファクトリーの本来の形を定義して、課題が何で

あるかをきちんと明確にすることが SG8 のミッションなので

す。

図16 IEC SMB/SG8, MSB

ジョイント枠としては、WG7がセンサーネット、WG9がビ

ッグデータ、WG10が IoTとなります。色々な標準化組織の IoT

関連150~160の標準を調べましたが、細かくは480ほどの標

準規格の記述があって、それらを比較調査して 27 のリファレ

ンス・アーキテクチャーにまとめました。27でもとても多いよ

うな気がしますが、これら論文がまとめて出されていることか

ら、参照するに値する重要な標準であるといえます(図17)。

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図17 ISO/IEC/JTC-1

米国の民間業界団体に International Society of Automation

(ISA)というのがあります(図18)。工場内で無線を使おうと

すると、金属が多くて電波が飛びにくいです。この環境下でデ

ータがきちんと届くようにするには、相当ロバストな無線を使

う必要があります。ISA100 で標準化されたもので、先んじて

業界団体が作成したことから、後から IECが正式な標準のナン

バリングしたものです。ロバストな無線プロトコルの標準には、

この ISA 標準と Wireless Highway Addressable Remote

Transducer(Wireless HART)標準の2つがあります。

図18 工業用無線(ISA100.11a)

(3) P2Pスマートデバイス I/F系

三つ目の標準カテゴリーは、ピア・トゥ・ピアのスマートデ

バイス系です(図 19)。これは IEEE 系と業界団体系に分けら

れます。IEEE系は、よくご存じの 802.11や 802.15の無線標

準です。その一段上のシステムレイヤーの IoTアーキテクチャ

は、約 1 年半遅れで oneM2M と同じ歩みをスタートさせてい

ます。思ったよりスピーディーに議論が行われていて、良いも

のはどしどし取り入れていっているので、キャッチアップして

いくものと思われます。注目株の一つとして IEEE.2431という

のがあります。

デバイスマネジメントとしては、モバイル系のデバイスマネ

ジメントの Open Mobile Alliance-Device Management

(OMA-DM)、固定系のデバイスマネジメントの Broadband

Forum-Technical Report 069(BBF-TR069)など比較的有名な

ものがあります。これはこれで立派に標準規格なので、例えば、

oneM2Mはこれを参照することで、自らのデバイスマネジメン

トとしています。

図19 P2P・スマートデバイス I/F系

IEEE2413 で注目すべきことは、シーメンスがエディターを

していることです。WoT に関しては、シーメンスは W3C や

IEEE の場でけっこう積極的に活動しているようです。デジュ

ール系組織のIECでの標準作成は、かなりの時間を要するので、

スピーディーに世界標準にしていくために、このような動きを

しているということです。

IEEE802は、図 20に示すように、よくご存知の無線フィジ

カルレイヤーの標準化です。従来の標準の伝送距離は、概ね100

~200 m オーダーが多かったのですが、最近の傾向としては、

伝送距離をキロメートルオーダーにしたいということで、

802.11ah が長距離、低消費電力、かつ低ビットレート、

802.15.4k が低ビットレート、数キロメートルの伝送距離とな

っています。この 802.11ah, 802.15.4kの 2つの標準は、概ね

キロメートルオーダーの IoT/M2M 向けの無線として注目され

ています。

図20 IEEE802.11、802.15.4/15.1

IEEE1888 は、日本初の標準ということで比較的有名なので

すが、どちらかと言うと、ビルのマネジメントに使い易いよう

な標準を作成しています(図21)。OMA-DMは、モバイル系端

末のマネジメントですが、その標準をそのまま持ち込んで、標

準のプロトコル、アーキテクチャにバインディングして、管理

標準に当てはめてしまうというものです(図22)。BBFやOpen

Service Gateway initiative(OSGi)も、同様に部品として、現

状のままバインディングするものです(図23)。

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図21 IEEE1888

図22 OMA-DM

図23 BBF, OSGi

以上がいわゆるホリゾンタル系の技術標準、インタフェース

を決めていく流れです。

続いて、業界アライアンスの動向について最近の流れを整理

してみました。

(1) 異業種エコシステム系

Industrie 4.0, Digital Manufacturing & Design Innovation

(DMDI), Alliance for IoT Innovation(AIoT)、IoT World Forum

(IoTWF)などが挙げられます。図 24 に赤字で示していると

ころがポイントで、中心になって活動している企業名、活動内

容などです。

図24 異業種エコシステム系

Industrie 4.0 は、ドイツの企業が中心となってサイバーフィ

ジカルで、どちらかというと自動車産業を活性化しようという

動きです。IIC と異なる点は 2 つあり、一つはアカデミックが

かなり参加していること、もう一つは標準化を活動の中心に据

えていることです。IIC は標準化にはこだわっていないが、

Industrie 4.0 はここでの標準を世界標準に持っていくことを目

指しています。ここが大きく違う点だと認識しています(図25)。

図25 Industrie 4.0

Digital Manufacturing & Design Innovation(DMDI)は、シカ

ゴを拠点とした米国版の IICです。ボーイング、キャタピラー、

ハネウエルなどの優秀な企業が参加しています(図26)。

図26 DMDI

IoT/M2Mの業界アライアンス動向

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シカゴ大学というインダストリー系に結構強い大学も加わっ

ているので、色々とテストベッドを実施してみようということ

です。

Alliance for IoT Innovation(AIoTI)は、どちらかというと技

術標準の集まりです。過去の活動をもう一度整理し直してワー

キングの形で進めようということで、最近発足したばかりの団

体です。Industrie 4.0の標準を支えている面もあり、図27に示

すようなワーキングWG1~11で審議して物事を決めていって

います。

図27 AIOTI

IoT World Forumは、IICボードメンバー5社の内3社、シス

コ、インテル、IBM が参加していますが、IIC とは独立な企業

団体です(図 28)。IoTの 7 レイヤーを決めて、リファレンス

モデルによるテストベッドを実施したり、集まって会議を開い

たりして盛り上げています。

図28 IoT World Forum

(2) リーダー企業中心系

リーダーとなる企業が中心となって推進しているグループで

す(図 29)。All Seen Alliance(ASA), Open Interconnect

Consortium(OIC), Thread Group, HomeKitなどが挙げられま

す。

ASAは、Linux Foundationが主催する団体です。クアルコム

は、携帯電話、スマートフォンのチップをほぼ全て手中に収め

たので、次はありとあらゆるものに展開していきたいというこ

とで、例えば、家電もクアルコムチップに変えて行こうという

ことです(図30)。

クアルコムは、ALLJoynというフレームワークを開発し、オ

ープンソース化しました。ASAのメンバーには、結構デジタル

家電系の企業が多いです。ALLJoynは、マルチOS、マルチ言

語で動作し、コアミドルライブラリー、アプリケーションレイ

ヤーがあって、色々なモジュールが一つのパッケージになって

います。クアルコムは、ALLJoynを IoTのプラットフォームに

しようということです。

OIC は、よく ASA と対峙する形で示されますが、どちらか

というとピア・トゥ・ピアの標準化団体なのです(図31)。

図29 リーダー企業中心系

図30 ASA

図31 OIC

プラグ&プレイの団体であるUniversal Plug and Play(UPnP)

とも協調しながら、ピア・トゥ・ピアのインタフェースを決め

るべく参加を募っています。

注目すべきことは、シスコ、GE、インテルの 3 社が参加し

ていて、これは先ほどの IoT World Forumでもあったように、

IICボードメンバー5社の内の3社です。IICでは標準化には手

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を出さないということでしたが、主要3社がOICに参加してい

るので、実は IIC の標準を裏から支えているのではないかとい

う噂もあります。しかし、あくまでもピア・トゥ・ピアの団体

として、ASAと対峙しながら歩んでいるのです。

ASA, OICどちらも、マルチOS、マルチ言語のオープンソー

スで進めるという意味で、この2つは同じ方向性を持った団体

のようです。

Thread Groupは、グーグルが中心企業です(図32)。グーグ

ルはネストというホームコントローラーの会社を買収しました

が、家庭にある情報機器を全てこのホームコントローラーに繋

いで、世界中の家庭の情報を集めるというのを目論んでいます。

ここには多くの企業が参入していて、もはやこれはグーグルワ

ールドとして進められています。

図32 Thread Group

HomeKitは、アップルが中心企業です(図33)。例えば、リ

モコン端末やスマートフォンに iOSを搭載して、スマートホー

ムということで、アップルがグーグルに対抗するものとして進

めています。

図33 HomeKit

(3) 同業種・同分野チーム系

同じ業界の同じ業種で、仲間づくりをして進めて行こうとい

うものです(図34)。

わかり易いところでは、医療業界です。他の業界と違って、

独立性の高い業界です。昔からコンティニュア・ヘルス・アラ

イアンスという相互接続の標準化を進めていて、IoT を啓蒙し

つつ、自らも標準も決めていました。Personal Connected

Health Alliance(PCHA)の医療のチームは、今般oneM2Mと

も連携して、標準はoneM2Mに準拠するということです。

新世代 M2M コンソーシアム(NGM2M)は、どちらかとい

うと足回りであるゲートウェイから下位レイヤーのベンダーが

中心になって、IoT のニーズを色々と探索しながら啓蒙してい

る団体です。

Industrial Value Chain Initiative(IVI)とVirtual Engineering

Community(VEC)は、インダストリー系です。経産省のバッ

クアップの下で活動しています。それから、通信事業者系のア

ライアンスとして、M2M World Alliance, Bridge Alliance, Global

M2M Associationがあります。

図34 同業種・同分野チーム系

新世代 M2Mコンソーシアムは、幾つかのアプリ寄りのワー

キングとプラットフォームの技術ワーキングで構成されていま

す(図35)。oneM2M標準化委員会にPartner Type2として加

入し、連携しながら M2M市場の活性化を図ろうという団体で

す。

図35 新世代M2Mコンソーシアム

IVIは、経産省のものづくり支援の下で行なわれており、おも

しろいのは、標準を作成するためではなく、工場の現場の改善

を目的とした活動です(図 36)。本当に必要なのは何かという

観点からもう一度見直そうということで、37個の課題を抽出し、

その課題を解決するアドホックな会合を持ちました。実際、ア

ウトプットは有意義に活用できて、その標準が必要ということ

なら標準化すればよく、必要でないならガイドラインとすれば

よいということで、緩やかなリファレンスモデルと言われてい

ます。これが最近、我が国の色々なコンソーシャルな動きに繋

がってきているようです。

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図36 IVI

M2M World Alliance, Bridge Alliance, Global M2M

Associationは、どれも通信事業者の連合です(図37)。このア

ライアンスは、世界各国にあるサイトからクラウドまでデータ

を取り込むにはローミングが必要となるので、月額料金が概ね

500円以下でないとペイしません。ローミングするたびに 100

円ずつ課金というようなわけにいかないので、安くあげるため

に、日本の通信事業者のドコモ、au、ソフトバンクはこれらア

ライアンスに加入しています。当然、各国のSIMコントロール

が必要となるので、ジャスパー、テレノール、アクシーダなど

のコントロール・プラットフォームを使用しています。

図37 通信キャリアグローバルアライアンス

以上、少々乱暴な整理方法になったかもしれませんが、いわ

ゆるホリゾンタルの技術標準とバーチカルのアライアンスをま

とめたものです。

通信・インターネット系のレイヤーと電気産業制御系のレイ

ヤーの定義を合わせようとすると、前者は概ね TCP/IPの 5レ

イヤーやOSIの7レイヤーで整理できるのですが、後者は誰に

聞いても、どうも4レイヤーしかなさそうです。とてもわかり

辛いので、両者をマッピングしながら新しいレイヤーモデルを

作りました。デバイスネットワーク、ゲートウェイマネジメン

ト、セキュリティー、プロトコル、リファレンス・アーキテク

チャー、ハイレベル・マネジメントの6レイヤーです。ハイレ

ベル・マネジメントが経営層に近いところ、デバイスネットワ

ークがセンサーの部分であって、間のところがネットワークや

セキュリティーとなります。

IoT に必要な標準を通信・インターネット系と電気産業制御

系に分けて示すと、図38のようになります。前者にはoneM2M,

IEEE2413, IEEE802, W3Cなどがあり、後者にはTC65, Open

Platform Communications-Unified Architecture(OPC-UA),

WG10などがあります。OPC-UAは、Industrie 4.0のネットワ

ーキングの本命ではないかと言われています。WG10は、ハイ

レベル・マネジメントに分類されます。

図38 通信技術と電気制御技術のレイヤー比較

企業のビジネススタイルには色々なタイプがあり、マイクロ

ソフトや SAP のような OS/アプリ、IBMのようなプラットフ

ォーム、GE やシーメンスのような装置、インテルやクアルコ

ムのようなチップなどにタイプ分けされます(図 39)。経営系

パッケージを持っていることで、解析アプリから入って上下に

領域を広げていくとか、プラットフォームを中心に上下に広げ

ていくとか、デバイス系のコアを取り払ってしまって横方向に

分野に広げていくとか、ビジネス戦略には色々なやり方があり

ます。水平から入って垂直に向かうのか、垂直から横展開する

のか、方法は色々あると思いますが、業種ごとのアプローチが

あるのだろうと思います。

図39 各社のビジネススタイル分類

オープンソースが今はやりのアプローチです。囲い込みして

他にはわからなくするのではなく、積極的に公開して皆でよい

ものに仕上げていく、いわゆるコミュニティー型というのが最

近のはやりです。図 40 上段に示す標準化は、コミュニティー

まとめと今後の課題

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型で進めています。下段のデジュール系もありますが、オープ

ンにされない部分もあって、その代わり特許に関しては、リー

ズナブルな相互ライセンスフィーでやり取りします。コンソー

シアムはその中間で、完全なオープンソースとはいえないが、

緩やかなチームを組んで仲間を増やしていくやり方です。オー

プンソース型が多くなってきているのが最近の傾向のようです。

図40 OSSコミュニティーの普及進化

図41は、標準化団体の関連を示したものです。IICと Industrie

4.0 は両巨頭ということで、この 2 つを図の中心に描いていま

す。業界アライアンスと技術標準化で大きな違いがあるので、

図の左側と右側に分けて描いています。Generic/Dedicated

Software Development が オ ー プ ン ソ ー ス 系 、

General/Dedicated Business がコンソーシャル系、Standards

がデジュール系となります。IEEE2413 やW3C は、他の団体

との関係を示す線を描いていませんが、実際には色々な団体と

インターワーキングしています。oneM2Mは、オープンソース

系から色々と標準を取り入れようとしています。ピア・トゥ・

ピア系は互いに競合しているので、どこかに取り込まれてしま

っています。ダークホース的なのが図 41 左下のアライアンス

で、まだ歩みは遅くこれからなのですが、対峙する中での仲介

的な役割になる可能性もあると思っています。

図41 標準化・アライアンス団体の関連図

Industrie 4.0がドイツ中心であるのに対して、IICは比較的オ

ープンで、幅広く連携を受け入れようとしている気がします。

自ら標準化は行わないので、連携が取り易いのかもしれません。

テストベットに関しては、標準ありきではなく、どの分野で

どのように役に立つのかが重要です。IIC におけるテストベッ

ドの動きを図 41 右下に整理しました。このテストベッドに有

効なのはASAであったり、oneM2Mであったりするわけです。

一つ重要なこととしては、標準化の議論を進めていると、し

だいに論点がプロトコルやセキュリティーに移っていきます。

基本的なところは概ねコンセンサスが得られて、多少のバリエ

ーションはあるものの、全体としてはまとまっていくものと考

えています。

ここ数年来、ビッグデータとして何もかもクラウドに吸い上

げてしまうのが時流だったのが、本当にそれでよいのかという

考えに至り、エッジコンピューティングが少し見直されてきて

います。図 42 の左側がエッジ、右側がクラウドで、色々なデ

ータがクラウドに吸い上げられていきますが、全で流してしま

うとトラフィックが激増してしまいます。消費電力も増大しま

す。アプリケーションによってはエッジで処理できるものもた

くさんあり、一次フィルタリング、エッジアナリティクスを行

って、データ量を絞るのがもっともバランスが取れています。

アプリケーションを見ながら自由にコントロールして、賢くさ

ばくのがエッジコンピューティングです。自律分散と共生の世

界とか、エッジとクラウドの世界とか、色々な言い方をされて

いますが、今後このあたりの技術が標準化されていくのではな

いかと思っています。

図42 クラウドからエッジコンピューティングへ

以上、ホリゾンタル、バーチカル両面からの整理にてお話さ

せていただきました。

技術標準化は、通信・インターネット系、電気制御系、ピア・

トゥ・ピア系で大きく3グループ、それぞれに2つずつ計6分

野に分けられて、未だ乱立、乱戦模様を呈しています。通信・

インターネット系ではoneM2M、電気・制御系では IECのSG8

とJTC-1、ピア・トゥ・ピア系では IEEE2413あたりが注目す

べきところです。レイヤーとしては、リファレンス・アーキテ

クチャー他5項目が必要で、これら互いのギャップアナリシス

をきちん統合整理する必要があります。

業界アライアンスは、異業種エコシステム系、リーダー企業

中心系、同業種・同分野チーム系の3グループで、これらは群

雄割拠の乱戦模様にあるという状況です。異業種エコシステム

ではIICとIndustrie 4.0、リーダー企業中心系ではASAとOIC、

同業種・同分野チーム系では IVI あたりがメジャーな団体にな

っていくものと思われます。

全体的な特徴としては、やはりシーメンスがキー企業であっ

て、ホームグラウンドである IECの標準化以外にも色々と顔を

出していて、スピーディーな世界標準の獲得を目指しています。

通信の7レイヤーと電気制御の4レイヤーは、きちんとマッピ

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ングをしていかないと、工場の現場の人達が ITを語れなかった

り、IT 部門の人達が工場に行って IT の良さを語れなかったり

するので、これはとても大事ことだと思います。

やはり OSS コミュニティー型が最近の傾向であると思いま

す。

標準化団体どうし喧嘩しているようでも、今年の夏以降イン

ターワーキングで統合していこうという動きが始まっています。

団体数が絞られていく、あるいは統合されていくのではないか

と思います。

技術の方向性は、研究課題がまだたくさん残されていると思

いますが、エッジコンピューティングが今後の課題の一つにな

ると思っています。

図43が以上のまとめです。

図43 まとめ

本講演録は、平成27年11月13日に開催されたSCAT主催「第96回テレコム技術情報セミナー」のテーマ、「IoTのアライアンス

の動向および求められる技術の状況」の講演内容です。

*掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます。

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本日は、アカデミックな話ではなく、現在、インターネット

の世界がどの方向に向かって動いているかという話を中心に、

私なりの視点で私見を交えてお話したいと思います。一般的な

情報は最小限に止めて、色々な会合や市場の状況を踏まえて、

見解の一つということでお話させていただきたいと思います。

最初に、インダストリアル・インターネットの変革のコアが

何であるかについて考えてみたいと思います。これは、時間と

空間と情報の変革であろうと捉えています。

時間というのは、全部接続されるわけだから、当然ながらリ

アルタイム性があります。空間というのは、事業空間の根本的

な変革だろうと思っています。エリアを超えて、事業範囲を超

えて、国という枠を超えて、あるいはアプリケーションの範囲

を超えてということです。情報については、情報の範囲の変革

だと思います。実社会の範囲が従来のデジタルの世界だけでな

く、単純に言ってしまえば、オプティカルな世界も含めてあら

ゆる情報に対する連携ができてくるということです。サイバー

空間の考えも、全てを一つのところで処理するのではなく、ビ

ッグデータにより、アメーバー的な広がりを持つネット世界に

変わってくるのではないかと思っています。本日は、そのよう

な視点で捉えてみたいと思います。

もう一つは、これはもっとも難しいところですが、ビジネス

モデルの感覚が変わるだろうと思っています。要するに、ビジ

ネスの価値観の変革です。このことは後でお話します。かなり

辛口な話になると思います。

発想の原点としては、これは言い古されている話ですが、ド

イツのインダストリー4.0 にしてもインダストリアル・インタ

ーネット・コンソーシアム(IIC)にしても、インダストリアル・

インターネットの目的はとてもシンプルなものです。ドイツの

成長が止まって、このままでいくと、これから伸びてくるであ

ろう中国やインドに世界のイニシアチブを取られてしまう。従

って、GDPをいかにしてグロスモードに切り替えて、日本は比

較的まだいい方ですが、全く解決できていない失業問題をどう

やって解決するのかという視点からです。これに対処するため

のタスクワークの結果、出てきたのがインダストリアル・イン

ターネットなのです(図1)。このあと色々お話しますが、GDP

グロスへの貢献は大いに期待できるものの、本当に雇用機会の

増加に繋がるのかという話となると、疑問を持たれている方が

けっこう多いという状況なのです。

図1 Industrial Internetの戦略発想の原点

(イノベーションと生産性の低下と回復)

もっとも厳しい話として、1995年からの過去20年間に日本

がイニシアチブを失った大きな産業は、半導体、家電産業、携

帯電話、インターネット・サービスプロバイダー及び情報産業

が挙げられます(図2)。かつて日本の産業の1/3ほどを占めて

いた産業が輝きを失ったと言えると思います。これらには共通

点があります。ある時期成功し過ぎたこと、日本のビジネスサ

イズはとても大きいので国内でトップになれば世界のトップ 3

やトップ5に入れること、基本技術がデジタルであること、さ

らに、世界の産業構造の変革への対応がたいそう遅れたことな

どです。それから、現場レベルでのグローバルスタンダードの

勉強はしていても、それを具体的に取り上げる現場のスピード

IoT&インダストリアル・インターネットの動向と コミュニケーションモデルへの対応

SEMINAR REPORT

SCATLINE Vol.99 January, 2016

Industrial Internet Consortium

日本代表

一般社団法人日本OMG

代表理事

吉野 晃生 氏

はじめに

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感が先進国の中では一番遅いことが挙げられると思います。日

本は過去 20 年間で、けっしてコスト、機能、品質のすべての

ことで負けたわけではないのです。要するに、世界のビジネス

モデルの変革に対して、柔軟に対応できなかったことが非常に

大きな課題であったと思います。

今日の日本を支えている最大の産業は自動車です。電気自動

車や自動運転などの大きな産業変革が向こう5年、10年間で起

きるとして、日本の自動車メーカーが世界のトップの座をキー

プするには、産業構造の変革に対するリーダーシップあるいは

大きなバリューをもって進めて行くことが必要であり、現在

色々なディスカッションが成されているようです。

図2 過去20年~15年間で日本が失った

イニシアチブエリア

IICとインダストリー4.0とを簡単に比較してみたいと思いま

す。この分野でどういうところに大きな効果があるかというと、

ご存知の方もおられるかもしれませんが、図3はゼネラル・エ

レクトリックとアクセンチュアが中心になって2年前からまと

めたケーススタディです。航空機産業の燃料費改善や、もっと

も分かり易いところでは、図3中央のヘルスケアです。人が一

生の間でヘルスケア産業に支払う金額は、全収入のおおよそ

10%で、これだけの額をこの産業に貢献していると言われてい

ます。これは医療費だけではなく、会社等を通して支払ってい

る保険料など、すべてを含めた金額です。生産性が 1%上がる

と如何ほどの利益を生むのかというと、例えば、ヘルスケアは

63ビリオンダラーなので、円換算では6.3兆円ほどになります。

他には、日本は世界で最も効率のよい鉄道になっていますが、

米国や欧州では鉄道に対する再評価がなされています。例えば

米国では、西海岸と東海岸を結ぶと数千キロの距離があり、こ

れに対する効率を考えると膨大なコストを生みます。後は天然

ガスの対応も挙げられています。

図3 経済産業全般に及ぶコスト削減と

成長市場の機会

日本の企業で今一番有名なのは、コマツのネットワークです。

これはすばらしいシステムなのですが、パートナー企業として

ゼネラル・エレクトリックを選んだのであって、日本企業がど

うして選ばれなかったのかを真摯に受け止める必要があると思

います。ヘルスケアでは、今春ソフトバンクが1万台のケアロ

ボットを生産・販売するというビジネスモデルを示しましたが、

残念ながら、生産は全て台湾のメーカーに発注しました。こう

いった流れの中で、日本はいかにして立ち向かっていくのかが、

非常に大きな課題になるだろうと捉えています。

ドイツのインダストリー4.0 は、シーメンス、ABB、ボッシ

ュ、それからアカデミックスを中心に進められていますが、基

本的には製造業を中心とする改革なので、まずはデジタルファ

クトリーということで捉えられていただくと分かり易いと思い

ます(図 4)。IICは製造業も含めて、産業全体を捉えて新規ビ

ジネスを手がけようとしているのだと思います。インダストリ

ー4.0 はドイツ中心の動きなので、オープン性にはいささか課

題があると思いますが、IIC は完全にオープンで行なおうとし

ています。

図4 Industry 4.0

(シーメンス社を中心に)

IICとインダストリー4.0が現在どのような状況になっている

かというと、お互い目指すところは同じで、両者はとても意欲

的にコミュニケーションしています。要するに、物事がうまく

運べばよいわけで、お互い角突き合わせないで、仲良く連携し

て拡大していこうということで話を進めています。

第一ステップは、同分野におけるテクニカルタームが微妙に

違うので、まずはそのあたりから互いに協業して、世界の基盤

に対して貢献していこうとしています。そのために、IIC はド

イツに IICドイツチームという団体を設立して、IICとインダス

トリー4.0 がより緊密にコミュニケーションできる体制を整え

ようとしています。2015年9月から活動を始めました(図5)。

図5 Industry 4.0と Industrial Internet

Consortiumの比較

Industrial Internetの背景と目指すもの - Industrial 4.0との比較 -

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インダストリー4.0 の中心企業というとシーメンスやボッシ

ュですが、両社はきっぱりと割り切っていて、両分野を融合さ

せるということで、どちらにも足を突っ込んで活動しています。

後ほどお話しますが、ボッシュはおそらく実証実験において、

現在もっとも活発に活動している企業だと思います。

IICについて簡単にご紹介したいと思います。IICの加入数は

逐次増えていますが、現在210社強でグローバルな集まりとな

っています(図6)。参加メンバーは一般企業、ベンチャー中小

企業、それに非営利団体/アカデミックメンバーと大きく3つ

に分類され、基本的にはベンチャー中小企業がもっとも重要で

あると考えています。それというのも、IIC は新規分野の開拓

なので、ベンチャー中小企業が持っている技術力、エネルギー

資力が非常に重要ということで、この分類に対して大いに手厚

く対応しようとしています。現在日本からの参加メンバーは、

日立、東芝、三菱電機、富士電機、富士通、NEC、富士フィル

ムです。トヨタは米国の販売会社が参加しています。さらに

2015 年 9 月にルネサスが参加しているので、現在日本から 9

社の参加メンバーとなっています。

図6 IICの最新状況

IIC のアクティビティーとしては、基本的にはソート・リー

ダーシップ活動であって、要するに全体のまとめ役です。具体

的に言うと、IoT 分野における色々なテクノロジー、ガバメン

ト、インダストリー、ビッグデータなどが現在とても複雑に入

り組んでコミュニケーションしているので、それらに対するニ

ュートラルなゲートウェイ機能をまずは提供しようというのが

最初の目的です(図 7)。IICのゲートウェイ機能により、参加

メンバーがこの分野における様々な問題をよりスムーズに対処

できる形に持って行くことを目指しています。

図7 IICの目的

標準化団体との関係としては、各分野の標準化団体と

Document of Understanding(DOU)を締結して連携していま

すが、IIC にて色々と検討して出てきた標準化に関するリコメ

ンデーションは、全て各エリアの標準化団体にそのまま渡すの

であって、実際にそれが標準化されて世界標準に向かっていく

かどうかは、それぞれの標準化の専門部隊に任せることに徹し

ています(図8)。

図8 IICと標準化組織の関係

ボードミーティングを中心に、まずは基本方針を立てること

から始めます。全体会議の頻度は四半期に1回の割合で開催し

ています。会合で出されるテーマは、セキュリティー、テクノ

ロジーなど約40のワーキンググループで検討されていますが、

主なグループを図9に示します。マーケティング・ワーキング

グループには、ヘルスケア、エナジー、リテールなど、テクノ

ロジー・ワーキンググループには、アーキテクチャー、コネク

ティビティー、インダストリアルアナリシスなど、イノベーシ

ョン・ワーキンググループには、ユースケース、インテリジェ

ントなどがあります。セキュリティー・ワーキンググループは

全体の半分ぐらいを占めていて、他にはテストベッド・ワーキ

ンググループ、ビジネス・ソリューション・イネーブルメント・

ワーキンググループがあります。

図9 IIC Working Groups

ここで注目してほしいのは、テストベッド・ワーキンググル

ープのインダストリアル・インターネット・リファレンス・ア

ーキテクチャー(IIRA)です。実証実験というのは1社で行な

うケースもありますが、ほとんどのケースは複数の企業が自ら

のノウハウ、ソリューション、技術を互いに連携して、新しい

分野を開拓しようということで集まっています。例えば、複数

の企業が連携するときの基本的なコミュニケーション、技術的

なレベルのディスカッションに対するバイブルとして、100ペ

ージほどのリファレンス・アーキテクチャーを作成して、これ

を基に具体的な実証実験が行われています。IIC のホームペー

ジからダウンロードできるはずなので、ご興味がおありでした

ら参考にしていただけると幸いです。

テクノロジー・ワーキンググループのセキュリティーチーム

は、全体会議と同時に概ね年4回各国の参加者が集まって会議

Industrial Internet Consortiumについて

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を開いています。それ以外のワーキングチームは意外と小さく

て、数名から数 10 名のグループで活動していて、電話会議あ

るいは E メールで具体的に検討を進めています。IIC のメンバ

ーであれば、どなたでも歓迎です。会合の参加者には、情報を

取りにくるのではなく、どんな些細なことでもよいから色々ア

イディアを出すことが期待されています。

現在オープンにされているテストベッドは4つ、現在検討さ

れているテストベッドはトータルで 20 を超えました。日本の

企業で 100%オープンに紹介されているテストベッドは、富士

通のケースで、工場のラインコントロールシステムです。他に

は、テストベッドのレベルには至っていないのですが、NECが

前回の IoTコングレスのときに、顔のリコグニションシステム、

空港のリコグニションを通して新しいアプリケーションにチャ

レンジをしていると聞いています。

IIC としては、リファレンス・アーキテクチャーを作成しま

した。2015年12月は無理なので、翌年1月から2月にかけて

最大の関心事のセーフティ・アンド・セキュリティーに対する

リファレンスノーティスをリリースして、メンバーの参考にし

てもらう方向で動いています。これであらかたのベースはでき

上がったので、これからは実証実験をいかに大きくするか、ボ

リュームを増やすか、色々なケースをいかにして取り込んでい

くかに全力投球しようとしています。

どのようなテストベッドが行われているかの興味も重要です

が、もっとも重要なのは、例えば、どのような形でモデリング

しようとしているのか、どのようなビジネスに取り組もうとし

ているかのリファレンスとして、ぜひとも見ていただきたいと

思っています。それがこの後の話のメインテーマとなります。

図10と図11はマイクログリッドのケースです。

図10 IIC Track & Trace Testbed

図11 IIC Testbed: Communication and Control

図10はボッシュ、シスコ、テックマヒンドラ、図11はナシ

ョナルインスツルメンツ、シスコ、RTI が連携しています。自

社のアプリケーションを推進するとき、大概は最低 2~3 社が

連携して、自社にはないところを連携することで実証実験を推

し進めていますが、日本では意外とこれが難しいのです。日本

の場合、製品開発、製造販売からメンテナンスまで、1 社にて

一気通貫で行なっているビジネスモデルがほとんどです。それ

ゆえ、このような連携による実証実験を行なう文化は、ほとん

どの企業にはないのが実状です。このような状況にいかに対処

するかは、とても大きな課題になるだろうと思っています。

IIC発足以来2015年9月で1年半となるので、バルセロナの

IoT ソリューション・ワールド・コングレスにて大々的なプレ

ゼンテーションを行ないました(図 12)。その後、9 月末に日

経 BPが東京ビッグサイトで大々的なセレモニーを行ないまし

た。バルセロナでは出展企業数89社、来場者5,000~6,000ほ

ど、セッション数 83、テストベッド 11 でしたが、89 社の内

20社が IICのベンチャー中小企業で、自社製品のデモンストレ

ーションを行なっていました。他にはGE, IBMなどが見受けら

れました。1社で行なっている企業はどこもなく、例えば、HP

はゲートウェイをナショナルインスツルメンツと連携して、自

社は分散クラウドを手がけるなど、どこもマルチカンパニー連

携にチャレンジしていました。

各企業のプレゼンテーションは、全部で100幾つかのレポー

トが提出されました。ポイントとしては、戦後わが国はものづ

くり、品質重視、課題解決型で良い物は売れるという時代を経

験しましたが、過去 20 年間においてはインターネットを中心

にした時代に少々乗り遅れてしまったようです。

図12 IoT Solutions World Congress

16-18 Sep.2015

そこで次のステップとしては、インターネットがパーソナル

クラウドであったのがさらに大きく拡大したとき、戦略発想と

変革の展望を見直さないといけないということで、日本の企業

との接点、あるいは IIC における多くの企業との連携において

見聞きしたことの考察をここで差し挟みたいと思います。

今後システムがどのように変わるかという見通しですが、対

応例の一つとして、実証実験は図 13 のようなシステム構成で

行われます。ゲートウェイ・クラウド一つをとっても、これを

ディストリビューテッド・クラウドがいかにしてエッジコンピ

ュータという形で捉えることができるのか。トポロジーとして

は至ってシンプルなのですが、その実プロジェクトとなると、

開発はマルチで動き出します。ビッグデータのスクリーニング

はどのレベルのクラウドで扱うのかとなると、あれこれ考えよ

うはありますが、全体としてとても大きなネットワークとなり

ます。これをセキュリティーの観点で捉えると、あるレベルで

のセキュリティーあるいはサイバー攻撃に対して、どのように

Industrial Internet Consortium Testbed

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対応したらよいのか、かつ、そのレベルでのデータの動きのセ

キュリティーにどのように対処するべきかという大きな課題が

あるわけです。

図13 Industry 4.0のTestbed開発と

実Project開発への考察

例えば、今日の自動車産業には自動運転という課題がありま

すが、自動車産業ではシステムをどのように捉えればよいのか。

例えば、インターネットにあたるのは専用回線でもよく、ワイ

ヤーハーネスでもよいわけです。そうなると自動車では、図13

左端のネットワーク部分はワイヤーハーネスなのかもしれませ

ん。自動車には 40 個以上ものマイクロチップが搭載されてい

て、これらチップからのデータは運転席あたりで集められて、

次のネットワーク部分に送られるのであって、運転席がゲート

ウェイ・クラウドのレベルに当たるのかと思います。また、セ

キュリティーについても、外部からサイバー攻撃された場合、

事故を起こすかもしれない、盗難に遭うかもしれないとなると、

データセキュリティーはどこのレベルで考えたらよいのかとい

う話になります。

企業という視点で見た場合、それぞれの部分を提供している

企業が連携してシステムを構築するのであって、1 社で全体を

手がけるケースはほとんどないだろうと思われます。そのとき、

例えば、ゲートウェイを提供している企業は、どのような方法

でシステム・インテグレーションに対処するのか。また、通信

事業者は、自社が有するセキュリティー対応を今後どのような

方法で保障していくのか。通信事業者を中心とした標準化の動

きは色々ありますが、今後非常に大きな観点での決定項目や変

革項目の拡大が図られるのではないか考えています。

基本的にパイロット・プロジェクトはシングルシステム構成

ですが、実プロジェクトはシステム・オブ・システムズの環境

になると考えています。要するに、ビジネスモデルを考えなけ

ればいけないと思っています。ビジネスモデルとしては、異な

る企業、事業部、業種、地域間で共通の基準、パラメーターで

コミュニケーションして、連携共有する双方が共通の基準を提

供して、ベンチマークできるものです。そして、ビジネス開発

の途中でコスト、リスク、問題点、可能性などの評価ができる

共通の価値観、基準を持つことです。さらに、環境の変化への

対応力、柔軟性、即応力を持つことも必要です。このビジネス

モデルを考える上で、モデルベース・システムズエンジニアリ

ング(MBSE)*1が話題に上っています(図14)。なお、当Object

Management Group(OMG)は、ビジネス・プロセス・モデリ

ング(BPM)*2の標準仕様を提供しています。

このMBSEやBPMが今後日本で推進されていくのかどうか

はわかりませんが、推進するとしても問題があります。ボッシ

ュや IBMやシーメンスにしても、シンプルな実証実験などすで

に行っていません。次のステップに移行しているか、MBSEを

推進しています。実証実験の次のステップ、リアルシチュエー

ションになったとき、欧米ではシステム・オブ・システムズの

エンジニアリングスタンスが具体的にでき上がっているので、

もはや意識しないで自動的に移行できます。ところが、日本は

今の延長線上で進めていくケースがとても多いので、今後この

分野のプロジェクト開発の推進、世界のリーダーシップという

観点からは、日本はとても大きな問題を抱えているのではない

かと危惧しています。

図14 Industrial InternetにおけるMBSEの考察

もう一つ、システムプロジェクト開発という視点で捉えると、

複雑系システムの開発基盤としては、例えば、トレーサビリテ

ィ、インターコネクティビティ、インテグリティ、アダプタビ

リティ、コミュニケーション・ケイパビリティ、メンテアビリ

ティ、それから垂直統合から水平統合への変革というような当

たり前のことを、昨今の日本の産業界では実現するのが非常に

難しい状況にあるのではないかと憂慮しています。

一つの例ですが、標準化の話としては、多くの日本企業は標

準化に対して情報は取りに行くけれども、標準化への提案はあ

まりトップのサポートが得られていないようです。色々な方と

お話しましたが、提案力を持っている方はたくさんおられるよ

うですが、提案を進めるためのトップの支援がないようです。

そこで一つの考えとしては、今般の IoTやインダストリアル・

インターネットの流れの中で、お互い協同してぜひとも経営者

の視点を変えていきたいと思っています。

それでは、各業界の IoTやインダストリアル・インターネッ

トの取り組み状況について、ご紹介したいと思います。

自動車産業については、日本は安倍首相が 2020 年までに自

動運転のパイロット事業を実施すると明言しています。欧州は

ボーダフォンとポルシェが連携してモデル事業を手がけていま

す。米国はオバマ大統領がグランドチャレンジというのを掲げ

ていて、その中のキープロジェクトとして自動運転が入ってい

ます。トヨタは IIC に参加しているので、中心メンバーとして

このプロジェクトに加わっているはずです。これで基本設計、

組込マイコン、ワイヤーハーネスなどに対する考え方が、おそ

らく変わってくるのではないかと思います。

*1 製品やサービスなどのシステムの開発を成功に導くことを目的として、システム開

発の全体最適を図るための技法とそのためのプロセスの定義

*2 ある目的にそって仕事の過程を抽象化する手法で、関係者間での共通認識の手助け

になるもの

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今般、経済産業省と総務省が連携して、2 週間ほど前に IoT

推進協議会というのを立ち上げました。この流れをどのように

捉えるかは、今後大きな課題なるだろうと思っています。ここ

でポイントとなるのは、この協議会が製造業中心ということで

す。自動車産業を見据えた場合、おそらくこの2省だけでは役

不足です。例えば、自動運転テストを行なうには、通信の総務

省と自動車製造の経済産業省、さらにもう一つ重要な道路使用

許可の国土交通省が加わらないと、自動運転テストが実施でき

ないです。医療のこととなると厚生労働省がいないとさっぱり

前に進まないし、ぜひとも厚生労働省と国土交通省にも連携に

加わってほしいと思います。

しかし、自動車産業本体、OEM メーカーは、インダストリ

アル・インターネットにはあまり興味を持っていないようです。

BMW、メルセデスベンツ、フォルクスワーゲンは IICに参加し

ていません。日本はホンダ、日産、マツダを含めて主だった企

業は参加していません。ようやくGMとフォードが興味を示し

始めたところです。それでも、各社実働部隊の人達は、トップ

から長中期的な取組みについて説明を求められて、IoT 領域の

拡大には少しずつ対応していく必要があると思い始めているよ

うに感じられます。

もっとも、自動車産業を支えるティア 1、ティア 2のメーカ

ーは、IoT にいかに対応していくべきかよくは分かっていない

ようで、対応はまだこれからというところです。米国もまだこ

れからであり、現在リーダーシップを取っているのはボッシュ

です。本日ご参加の皆様方も、この分野でかなり重要な位置づ

けを占められていると思いますが、本格的な取り組みが必要で

あるとは捉えられていないと思います。先般のフォルクスワー

ゲン事件がどのように影響するかですが、事件の中核は組込ソ

フトが発端となっていますが、自動車業界の IoTインダストリ

アル・インターネットに対する方向性は、ソフトウェアの信頼

性の観点から変わってくるのだろうと推測しています。

精密工業界については、精密工業をどのように捉えるかとな

ると、カメラやロボティクスも含めて考えると、IoT における

オプティカルデータの取り扱いは難しいです。事業分野の拡大

という視点で検討が開始されましたが、今日の日本のロボティ

クスは、ほとんどが生産ラインの支援です。例えば、旋盤用の

ロボット。要するに、ほとんどが単機能型ロボットです。ロボ

ット間の連携、例えば、インターフェースに対するポジショニ

ングができる企業はどれぐらいあるのか、ロボティクスをネッ

ト連携させるだけのアーキテクチャーになっているのかとなる

と、ほぼゼロなのだろうと思います。そのあたりの間隙をつい

て出てきたのが、先ほどのインダストリー4.0 のシーメンスの

話だと思っています。

2015 年 3 月、経済産業省が中心になって、ロボット革命イ

ニシアティブ協議会(Robot Revolution Initiative)を発足しまし

た。この協議会は、次世代ロボティクス取組みのプラットフォ

ームなのですが、やはりポイントとなるのは、ロボティクスに

おける技術力、グローバルなビジネスモデル提案力です。どの

ように貢献できるのかという視点でのディスカッションは、ま

だこれからだと聞いています。

IoT 分野を補充していかなければいけないというのが、精密

機械工業界の現状なのだろうと思います。精密機械工業の分野

ではドイツと日本は双璧であり、ビジネスモデルや営業戦略な

どでうまく連携をすれば、IoT の中心的なメンバーとしてイニ

シアチブを取っていくだけの力を発揮できるのではないかと、

実は期待しているところです。

情報産業をどのように捉えるかですが、日本の情報産業が向

かっている先は、おそらく、情報産業と同じぐらいの人員が組

込ソフト業界で活躍されるようになってくるのではないかと思

っています。組込ソフトとセンタークラウドの連携部分の境界

が徐々になくなってくるような気がします。情報処理システム

がビッグデータを処理するだけでなく、全体のデータの流れの

マネジメントあるいは境界を交通整理するだけの力を持てるか

どうかが、キーファクターになるだろうと推測しています。

今から20年前にスタートしたドイツのエスエイピー(SAP)

は、今も IIC で活躍しているのですが、ある意味彼らが成功し

たのは、ビジネスモデルで成功したのです。明らかに彼らは、

今の新しいインダストリアル・インターネットの世界で新しい

ビジネスモデルへの模索を開始したのではないかと捉えていま

す。この流れの中でどのように変貌を遂げるのか、皆様方もよ

くよく注目されて、ビジネス連携に向けて注意深く見守ってい

かれるのがよろしいのではと思っています。

半導体業界については、部品業界をどのように捉えるかとい

う視点でお話しようと思います。最初に、半導体業界の雄の一

つインテルですが、バルセロナでのディスカッションを色々聞

いていると、同社はパソコンの分野だけではなく、おそらく全

分野でプリ CPU なるものが必要になってくると見ており、イ

ンダストリアル・インターネットを絶好の機会と捉えているよ

うに思います。

それでは、他の半導体メーカーはどうかというと、やはりイ

ンダストリアル・インターネットにおけるビジネスチャンスが

拡大すると予測していて、それをどのように捉えていくかで試

行錯誤し始めているのですが、未だ先が見えていないようです。

今までのパーツメーカーの戦略は、どうしてもサプライヤーで

あって、言われたことに対して物を提供する立場です。やむを

得ない部分はあると思いますが、サプライヤーの立場でするべ

きことはするとして、いかにしてビジネスパートナーに変革し

ていくかが今後の大きな課題であると推測しています。

ビジネスパートナーになるための条件は何かというと、基本

的にはオープン&クローズ戦略が明確なことです。何でもかで

もできるというのではなく、ここまでは完全にオープンで、こ

こから先はクローズあるという形で、ビジネスモデルが明確に

グローバルな提案活動ができることです。従来型の大手企業へ

のサプライヤーから、いかに脱却するかにかかっています。現

在、パーツメーカーも結構 IIC に参加されていますが、これら

メーカーもテストベッド、実行ベースの中で、サプライヤーか

らパートナーへと自らが新しい提案者となるべく、IIC を変革

の場として捉えている企業は結構多いのではないかと見て取っ

ています。

日本はどうしても製造業中心に物事を考えてしまいますが、

ビジネスモデルとして扱い易いのは意外と製造業以外にあると

思っています。具体的に言うなら、流通業、建設・土木業など

で、国内でもっともビジネスモデルの可能性があるのは、あん

がい農業かもしれません。農業でこれに近いことを実現してい

て世界のトップにいるのは、オランダとデンマークです。

地方創生の要としての可能性を考えるに、日本の農業労働従

事者の大半は 65 歳以上であるという流れの中で、モデルをう

まく構築して、新しいビジネスモデルを作れないのか。ヨーロ

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ッパは畑作栽培で水耕栽培ではないので、日本の水耕栽培のビ

ジネスモデルを構築できるとグローバル対応できるのではない

でしょうか。それから、ビジネスモデルを考えるとき、やはり

製造業としての工場、生産ラインを中心に考えてしまいますが、

インダストリー4.0 は正にその中核を成すものですが、それと

は異なるビジネスモデルを考えることです。ぜひチャレンジさ

れた方がよろしいのではないかと思います(図15)。

図15 IoT Solutions Case Study of Agriculture

色々な分野でビジネスチャレンジするとき、常に日本以外の

ところに展開できるかどうかを前提条件として、モデリングす

る必要があると考えています。例えば欧州の場合、あちらは一

国ではないので、自動的にグローバルなビジネスモデルがスタ

ートします。日本は島国でそれなりのビジネスボリュームがあ

るので、まずは国内でのビジネスを考えてしまいます。そうす

ると、新しいアプリケーション分野での要求事項がどれだけあ

るのかをトップに説明できないケースがたくさん出てきて、時

間の経過とともに事業がシュリンクしてしまうことが多々ある

状況です。このような悪弊をいかにして断つかは、非常に難し

い課題であると理解しています。

各業界の状況について色々とお話しましたが、図 16 がその

まとめです。

図16 Industrial Internet Innovationの

目指す方向の考察

インダストリアル・インターネット・イノベーションの目指

す方向は、基本戦略としてはニュービジネスモデルとアーキテ

クチャーの提案、実現・実証となります。変革推進への価値観

の基盤となるのは、オープンイノベーション、オープンコラボ

レーションの推進です。これは格好よく言うのは簡単ですが、

実行するのはとても難しいです。それから、あらゆるサービス

のビジネスモデル・イノベーションにビジネスチャンスがある

ということです。製造業がものづくりをやめるのではなく、も

のづくりを基盤にしていかにサービス業に転換していけるかと

いうことです。難しいのは潜在的ニーズの開発、掘り起しです。

顧客のニーズに応える、新たな課題に応えることが前提条件と

なりますが、そこにはない潜在的なニーズの開発、掘り起しの

できることが、新しいものづくりにとって最も重要なことだと

思います。アドバンスト・マニュファクチャリングというのは、

インダストリー4.0 と同じ考え方だと捉えていただければよろ

しいです。

ものづくりの製造業をサービスモデルへと転換し、一企業が

単独で行なうビジネスから様々な分野、事業、エリアを超越し

た連携ビジネスが必要になってきます。本日ご出席の皆様は大

企業の方が多いと思いますが、事業部間の連携ですら大きな壁

にぶち当たって困るようなケースが多いのではないかと思いま

す。おそらくビジネスサイズは、従来の一桁も二桁も大きく設

定しないといけないと思います(図17)。

図17 IoT & Industrial Internetによる変革

それでは、どうしたらよいかとなると、自社のノウハウ、技

術、バリューに対するオープン&クローズ戦略のビジネスモデ

ルの準備を進めてください。私の知り得る限りでは、対応でき

ている企業はほとんどないです。次に、事業のモデリング化に

よる相手企業とのベンチマークができることです。相手が評価

できなければ自分も評価されないわけで、自分を評価できるだ

けの整理ができていれば、その評価基準で相手を見極めること

ができます。それから、技術、設計レベルでのコミュニケーシ

ョンが可能な基盤整備とシステムの可視化です。これは日本の

技術者のレベルが高いだけに非常に難しいと思います。さらに

は、中長期を見据えての国際標準の活用と戦略的な選択ですが、

先進国の中で世界標準をピックアップするのが一番遅いのは日

本であるというのが、海外における我が国の評価です。また、

産学の一層の緊密な連携が必要なのですが、絶対にクローズに

してしまってはいけません。グローバルに、オープンに、連携

を示せるように持っていかないといけません。そうしないと、

過去 20 年間の結果の延長線上になってしまうと危惧していま

す(図18)。

図18 Industrial Internet Business

推進&展開への課題

日本の産業界における Industrial Internet 推進の課題

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最後に日本OMGの宣伝です。現在私は、日本 IICのトップ

と IIC の日本マーケティング代表をやらせてもらっています。

日本の窓口機能として、シンポジウムやワークショップなど

色々と支援活動を継続していますが、IIC では具体的な支援活

動は行ないません。そこで、具体的な支援活動する窓口として

インダストリー・インターネット・インスティテュートを設立

し、皆様方のサービスビジネスを支援するということで、ただ

いま走り始めたところです(図19)。

現在色々なタスクが走っており、そのタスクの延長線上だけ

では世界の情勢に伍していくには遅れる部分があると危惧して

おります。その辺りの現状を真摯に受け止めて、ビジネスチャ

ンスとして生かせて、世界貢献ができる絶好の機会が与えられ

たとして、ぜひともインダストリー・インターネット・インス

ティテュートを活用していただきたいと願っております。

図19 日本OMGの IIC活動支援

また、何か当方にご質問等ありましたら、できるだけ速やか

にお答えするつもりですので、よろしくお願い致します。

問い合わせ先:[email protected]

日本OMG & IIC窓口としてのサービス &支援活動

本講演録は、平成27年11月13日に開催されたSCAT主催「第96回テレコム技術情報セミナー」のテーマ、「IoTのアライアンス

の動向および求められる技術の状況」の講演内容です。

*掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます。

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