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Jan 05, 2016
コンクリートとは?セメントとは?
コンクリート工学研究室岩城 一郎
コンクリートとは?コンクリート 骨格材(骨材)をマトリックス(Matrix:母体となる材料)で結
合し,一体化したもの. 通常のコンクリート:マトリックスとしてセメントを用いたもの
(セメントコンクリート) 他にアスファルトコンクリート,レジン(樹脂)コンクリート等セメントコンクリート(以下,コンクリート) 全体の 7割を占める骨材(細骨材,粗骨材)の隙間をセメントペ
ーストで満たす. セメントペーストで骨材を結びつけ,コンクリート全体を一体化用語 セメントペースト:水+セメント モルタル:水+セメント+細骨材 コンクリート:水+セメント+細骨材+粗骨材+α(混和材
料) (全国版のニュースですら,セメントとコンクリートの違いが認
識されていない.)
セメントの歴史 コンクリートの発達≒セメントの発達 セメントのようなもの:古代エジプト,ギリ
シャ・ローマ時代から存在,主として石材と石材の接着用( 5000 年前の中国でも発見)
1700 年代中期 John Smeaton :水硬性(水と反応して硬化する性質)石灰を発見→ James Parker :ローマンセメントを発明
1824 年: Joseph Aspdin が,ポルトランドセメントを発明→特許(ポルトランドセメントの歴史:180 年)
1875 年:我が国でも製造開始→我が国のセメントの 歴史: 130 年(鉄筋コンクリート 100 年程度,プレストレストコンクリート 50 年程度)
ポルトランドセメントとは?ポルトランドセメント:石灰石,粘土,
その他を焼成し,粉砕したもの.石灰石(主成分: CaCO3 )と粘土(主と
して Si :シリカ, Al , H2O ),若干の酸化鉄(セメントの鉄分 Fe の補給,溶融点を下げる)を混合: 1450℃ 前後に焼成(半溶融状態)→クリンカー(石ころ状)を粉砕→粒度を調整→(このままでは急結性を示すため,)緩結材として 3-4% の石こう( CaSO4 )添加
三浦尚著:土木材料学(改訂版),コロナ社
セメント工場
予熱装置
実線:原料の流れ点線:気体の流れ
1450℃冷却機
(社)セメント協会 HPより
セメントの製造工程
生成化合物の種類4 種類C3S (3 CaO ・ SiO2 :エーライトまたはアリッ
ト)C2S ( 2CaO ・ SiO2 :ビーライトまたはベリッ
ト)C3A (3 CaO ・ Al2O3 :アルミネート相)
C4AF ( 4CaO ・ Al2O3 ・ Fe2O3 :フェライト相)
表 2.1 参照強度発現水和熱,化学抵抗性,乾燥収縮→耐久性
ポルトランドセメントの種類普通ポルトランドセメント早強ポルトランドセメント超早強ポルトランドセメント中庸熱ポルトランドセメント低熱ポルトランドセメント耐硫酸塩ポルトランドセメント(白色ポルトランドセメント)表 2.2,表 2.3参照
ポルトランドセメントの種類早強性←早強性← →低→低
水和熱水和熱超早強←早強←普通→中庸熱→低熱
↓耐硫酸塩性耐硫酸塩性耐硫酸塩
普通ポルトランドセメント:最も汎用性の高いセメント (一般的な構造物,全体の約 7割)
早強ポルトランドセメント:普通よりも早く強度が出るセメント (工場製品,寒冷地)
超早強ポルトランドセメント:早強よりもさらに早く強度が出るセメント (緊急工事用)
中庸熱ポルトランドセメント:普通に比べ,水和熱の発生を小さくしたセメント (ダム等マスコン)
低熱ポルトランドセメント:中庸熱よりもさらに発熱を抑制したセメント(マスコン)
耐硫酸塩ポルトランドセメント:硫酸塩に対する抵抗性を高めたセメント (硫酸塩を多く含む環境:海水,温泉,下水,工場廃水,化学工場等)
(白色ポルトランドセメント:色が白いため,これに顔料を加えることにより種々の色のコンクリートを作ることができる.)
混合セメント( 1)混合セメント ポルトランドセメントに他の材料を混合したセメント 高炉セメント 鉄鉱石から鉄を採取する際に発生する廃棄物(高炉スラ
グ)を急冷し,微粉砕したもの(高炉スラグ微粉末)を混合.置換率によって A種から C種まで.主として B種を使用(表 2.4参照)
潜在水硬性:それ自身では水硬性をもたないが,セメントと水との反応によって生じた Ca(OH)2による刺激によって水和反応を起こし,硬化する性質.
高炉セメントコンクリートの性質:初期強度は小さい(特に低温下で顕著),長期強度は大きい(ただし,十分に水分を供給した場合).海水(塩化物,硫酸塩)に対する抵抗性が大きい.水密性が高い.緻密な細孔組織.
シリカセメント 反応しやすいシリカ( SiO2)を含むポゾランをポルトラ
ンドセメントに混合したセメント
混合セメント( 2)フライアッシュセメント石炭火力発電所から発生する灰のうち,微細な粒子を集塵機で集めたもの(フライアッシュ:ポゾランの一種)を混合.
ポゾラン反応:それ自身では水硬性を持たないが,セメントの水和反応で生じた Ca(OH)2と水があるとこれらと反応し,硬化する.(一般に,潜在水硬性とは区別される)
フライアッシュセメントの性質:初期強度は小さい,長期強度は大きい.水密性,化学抵抗性が高い.フライアッシュの粒形は球状なため,一般にコンクリートの流動性がよくなる.(→悪い場合もある.未燃炭素の影響)
セメントに関する最近のトピックス セメント製造に伴う環境負荷:天然資源の消費,焼
成に伴う燃料の消費・ CO2 の排出 グリーン購入法の施行に伴う,混合セメント(高炉
セメント,フライアッシュセメント)の需要拡大 エコセメント:都市ゴミ焼却灰,下水汚泥を主原料
にしたセメント.廃棄物問題を解決する一手段として,最近注目.原料となる廃棄物の影響でセメントには約1%の塩素が含まれるので,用途は鉄筋を使わないコンクリート分野が主流→速硬エコセメント.最近では脱塩素技術が進歩し、より通常のセメントに近いものも開発→普通エコセメント http://www.taiheiyo-cement.co.jp/zero-hai/ecoc/index.html
その他特殊セメント:超速硬セメント等
セメントの水和反応
水和反応:セメント化合物(C3S,C2S,C3A,C4AF)が水(H2O)と反応し,水和物(C-S-H,Ca(OH)2,エトリンガイト等)を生成
C-S-H:結晶質の低い水和物(ゲル), Ca(OH)2:結晶質
三浦尚著:土木材料学 (改訂版),
コロナ社
セメントの物理的性質密度:普通ポルトランドセメント( OPC)で
約 3.15g/cm3
比表面積(粉末度): OPCで約 3000cm2/g凝結:セメントペーストのこわばりの状態
(流動性が失われていく状態),始発と終結,始発前:まだ固まらない状態,終結後:硬化
強さ:決められた砂(標準砂),配合(W/C= 0.5), 方法により得られたモルタルの圧縮強度で評価