骨の形態・荷重支持機能の 変化の予測に基づく 骨粗鬆症の骨折 … · 骨の形態・荷重支持機能の 変化の予測に基づく ... 骨再構築則

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骨の形態・荷重支持機能の

変化の予測に基づく

骨粗鬆症の骨折リスク評価

龍谷大学 理工学部機械システム工学科

講師 田原 大輔

2016/03/03 新技術説明会

本技術の概要

本法は,骨の医用画像を基に計算機上に構築した

モデルに対し,骨粗鬆症の重篤度に対応する

骨の再構築のバランスを設定した形態変化の

シミュレーションを行う技術である.

骨梁内の生体アパタイトの配向性を反映した

応力解析を基に,骨折リスクを評価できる.

従来技術とその問題点

現状の骨密度診断技術は,目の前の患者の骨を評価する

方法であり,将来的な骨折リスクの予測はできない.

骨折が力学的現象であるにも関わらず,力学に基づく

評価ができていない.

骨粗鬆症における将来的な骨形態変化の予測,それに

伴う転倒時等の非日常荷重作用時の骨折リスクの評価,

骨の強度の異方性を考慮した荷重支持特性の評価が

できる新しい方法の確立が必要.

新技術の特徴

骨粗鬆症の重篤度を考慮した骨形態の力学的・

時間的変化の予測と,骨折リスクの定量的提示が

できる.

機能的に適応していない方向からの荷重に対する

骨の脆弱性の評価と可視化ができる.

力学的な適応構造を提示可能な骨の再構築理論に

より,一般的な構造物への形状最適化等への

技術応用が期待できる.

健常骨

骨粗鬆症

(骨粗鬆症財団HPより)

骨粗鬆症

骨折リスクの予測が重要な課題

骨密度量の低下により, 骨折リスクが高まった病態.

(日本機械学会編, コロナ社, 1999より)

骨芽細胞 破骨細胞骨梁

骨梁骨

皮質骨 海綿骨

骨梁形態は,骨再構築における

骨形成と骨吸収の活動の平衡状態

(バランス)により変化する.

骨吸収骨形成

新技術の位置付け

田原ほか, 臨床バイオ, (2008), 7-14. D. Tawara et al., JMBBM (2010), 31-40.

FEMモデル

応力分布

骨梁骨椎体

形態の時間的変化

将来の形態

骨折リスクの提示

形態に起因する

応力分布の変化

骨再構築の平衡状態の変化

骨梁形態

(骨密度)

骨折リスク

の増大

応力

状態

形態変化を考慮した骨梁骨の

力学的特性評価が必要

骨折リスクの長期的予測骨粗鬆症

骨梁骨の力学的再構築シミュレーション手法(*) 例えば,T. Adachi, et al., (2001), J. Bio. Eng., 403-409.

新技術

従来技術

dcΓ= ln局所的な応力の不均一性

(骨吸収)

(骨形成)

0m0Γ

0Γ 0m

における応力

周囲における平均応力cd x:cc x:

:Ll 力学刺激量感知径

骨再構築則

再構築の駆動力

s

sd dslw

dslw=

)()(

cxxl

)(lw

Ll0

1

l骨髄液 重み関数

0

再構築駆動力 と応力不均一性 の関係m Γ

uΓ Γ

m

骨形成

骨吸収

( ))(Fm

骨梁m

開始閾値

例えば,T. Adachi, et al., (2001), J. Bio. Eng., 403-409.

骨梁骨内の応力一様化

骨梁形態変化

骨再構築シミュレーションにおける骨梁の形態変化

応力解析に基づき,

骨梁表面の応力不均一性を算出

骨吸収骨形成

骨吸収

骨梁

ボクセル要素の

付加・除去

応力解析

応力不均一性の評価

モデル形態の変化

繰り返し

計算

形態変化

シミュレーション

形態変化

ブタ海綿骨モデルによる解析

CT分解能:64 m

サイズ: 4.7 mm立法内の海綿骨

力学刺激量感知径:lL=10 voxel

ヤング率:20 GPa (骨梁)

ポアソン比:0.30

モデル上下に剛体板を付加

FEM繰り返し回数:30 step

骨吸収と骨形成の開始閾値 (l と u)を変化0

uΓlΓ

Γ

m

骨形成

骨吸収

l u

Case 1 -0.2 0.5

Case 2 -1.0 0.5

Case 3 -0.5 0.2

Case 4 -0.5 1.0

骨梁voxelモデル

10 MPa

骨梁形態変化を解析

xyz

Step 10 Step 20 Step 30l u

Case1 -0.2 0.5

Case2 -1.0 0.5

Case3 -0.5 0.2

Case4 -0.5 1.0

モデルの形態変化 相当応力 (MPa)0 100

0u

l Γ

m

骨形成

骨吸収

横断面

計算step

voxe

l 数の

変化

率(%

)

30201000

25

50

75

100

125

150

Case 1

Case 2

Case 3

Case 4

モデル内voxel数の変化

骨梁骨の

力学的適応機能

初期の応力

不均一性

骨再構築に

より均一化

特徴的な形態変化パターンの取得が可能

l = -5.0,u = 4.0(*)

(*) 安達,坪田他,(2000),機論,66, 1640-1647

骨粗鬆症を想定した骨梁形態の予測

健常例と骨粗鬆症例の再構築条件の検討

応力分布を基にした骨折リスク評価

健常例

0u

m

骨形成

骨吸収

骨粗鬆症例

骨粗鬆症:骨密度値が成人平均の

70%以下(日本骨代謝学会基準)

総ボクセル数

骨吸収閾値(l)のみを変化させ,

健常例のボクセル数の70 %以下と

なる条件を検討.

l = -0.5,u = 4.0 1,232,163 (69.8%)

総ボクセル数

1,766,466

相当応力(MPa)0 100

累積ヒストグラムによる評価

応力分布のヒストグラムを

高応力側からの累積表示により評価 田原ほか, 臨床バイオ, (2008), 7-14.

骨折に関連する高応力の

存在割合に着目できる.

骨粗鬆の程度により,

相対的な比較・評価が可能.

特徴 0

0.5

1

1.5

2

2.5

1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 41 43 45 47 49 51

応力値

存在

割合

0%

100%

応力値

分布

累積表示

020406080

100

0 25 50 75 100

安全域注意域危険域

020406080

100

0 25 50 75 100

骨梁形態と骨折リスク相当応力

(MPa)0 100存

在割

合(%

)

モデル内発生応力 (MPa)

存在

割合

(%)

..............................

..............................

288

1842

健常例

骨粗鬆症例

骨粗鬆症例: 形態変化に起因して荷重分散が十分に

達成されず,骨折リスクが高くなる.

外力の負荷方向と応力分布

xyz健常例

10 MPa

骨粗鬆症例

10 MPa10 MPa

10 MPa

断面図 断面図

断面図 断面図

相当応力(MPa)0 100

外力の負荷方向の差による高応力の存在割合の比較

0%

20%

40%

60%

80%

100%

0 25 50 75 100

存在

割合

(%)

モデル内発生応力 (MPa)

骨粗鬆症例(横荷重)

健常例(横荷重)

骨粗鬆症例(縦荷重)

健常例(縦荷重)

骨粗鬆症例の体積減少に伴う高応力の存在割合の変化

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

5.0% 10.0% 15.0% 20.0% 25.0% 30.0% 35.0%

存在

割合

体積(骨量)減少率

横 75MPa横 100MPa縦 75MPa縦 100MPa

骨再構築で適応した方向からの

負荷に対する高応力の発生

転倒時などの非日常荷重作用時の骨折リスクが高い.

現状の診断法である骨量増減の単純な評価のみでは,

骨折に密接に関連する高応力の存在割合を捉えられない.

アパタイト(BAp)結晶配向を考慮した荷重支持特性の解析

マルチスケール応力解析の

統合シミュレータを開発

JST CREST (2003.10~2007.3)シミュレーション技術の革新と実用化基盤の構築『生体骨医療を目指したマルチプロフェッショナル・シュミレータ』

HE

マルチスケール応力解析

2値化処理

20

30

40

50

60

0

0.3

5

0.7

1.0

5

1.4

1.7

5

2.1

2.4

5

2.8

3.1

5

3.5

3.8

5

4.2

4.5

5

X-Direction mm

Filling r

ate

%

①②

モルフォロジー分析

高解像度X線CT ボクセルモデル

ユニット

セル

均質化法

重合メッシュ法

BAp 配向性(材料の異方性)

c

aa

均質化

ミクロ応力

EH

均質化法とBAp結晶配向の反映方法

Voxelmodel

ミクロな不均質な構造の

平均化したマクロな機械的特性を

与える計算手法

Simulator: DoctorBQ(Quint Corp.)

c

aa

Load

Load

xy

z

最小主応力 1 の方向

等方性として仮定 E = 10 GPa

= 0.4

異方性モデル

E1 = 20 GPa(*), E2 = E3 = 10 GPa = 0.4

Uniaxial stress

(*) Bonfield W, et al., Nature 270, 453-454, 1977.

BAp結晶配向による

材料異方性

均質化法

0.00E+00 4.00E+03 8.00E+03

z

y

x

マクロなヤング率 (MPa)

方向

0 4.0 103 8.0 103

健常例と骨粗鬆症例のマクロ剛性の比較

xyz

健常例 骨粗鬆症例

マクロ剛性の変化

小 x, y 方向

大 z 方向

健常例■:w/o BAp■:w/ BAp

■ : w/o BAp■ : w/ BAp骨粗鬆症例

BAp 結晶配向

骨再構築により

力学的に適応した

骨梁形態のマクロ剛性

影響

想定される用途

現状の骨密度診断に代わる患者別の将来的な

骨折リスクの変化の予測・診断

積極的な力学刺激付与により骨形成を促進する

ための新しい治療法・機器・デバイスの開発

機械・構造物における形状・位相最適化,

設計指針探索分野への応用・展開

実用化に向けた課題

骨再構築シミュレーションにおいて,骨粗鬆症の

重篤度に対応した骨形成・骨吸収の具体的な

バランスの同定・設定が必要.

X線マイクロCTの被曝量の観点から,現段階で

生きたヒトの骨への直接的な適用は難しい.

本法における指標と,臨床用CTから得られる

情報や骨密度量との対応付けが必要.

企業への期待

骨用デバイスを開発する企業には,デバイスの固定性や

生体適合性と密に関連するデバイス周囲の骨再構築の

予測の評価に有用であり,共同研究への発展を希望.

積極的な力学刺激付与により骨形成を促進する医療機器を

開発する企業には,刺激付与方法の検討に本技術が有用.

骨粗鬆症等を対象とした骨形成・骨吸収抑制薬剤を

開発する製薬会社には,薬剤効果の予測に本技術が

応用できる可能性あり.

機械・構造物の最適設計を必要とする現場に,力学的

適応を達成した構造を得ることができる骨再構築則が

構造最適設計手法の1つとして応用可能.

本技術に関する知的財産権

発明の名称 :骨折リスク評価のための

コンピュータの作動方法

特許番号 :第5829921号

出願人 :龍谷大学

発明者 :田原 大輔,堀川 武

お問い合わせ先

龍谷大学

知的財産アドバイザー 櫻井 雄三

TEL 077 - 543 - 7832

FAX 077 - 543 - 7772

e-mail chizai@ad.ryukoku.ac.jp

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