Transcript
平成23年度後学期生徒指導論(教育学部)
13
生徒理解
富田英司
愛媛大学教育学部
1
「学校」へ行かないという選択肢
• ホームスクーリング
• フリースクール
– サポート型,適応指導教室,通信制,全寮制等
• 適応指導教室の活用
– 市町村の教育委員会が設置,教員が実務担当– 松山市「松山わかあゆ教室」など
– 登校日数としてカウントされる
– 1992年から小中では校長の判断により出席扱い
• 「保護者と学校の連携が十分に取れていること」や「訪問で対面指導ができること」など
– 2010年から高校でも一部出席扱いに
2
教育基本法(平成十八年十二月二十二日法律第百二十号)
(義務教育)
第五条 国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。
2 義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する
能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。
3 国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、そ
の水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。
4 国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料を徴収しない。
3
学校教育法(昭和二十二年三月三十一日法律第二十六号)
第二章 義務教育
第十七条 保護者は、子の満六歳に達した日の翌日以後
における最初の学年の初めから、満十二歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを小学校又は特別支援学校の小学部に就学させる義務を負う。ただし、子が、満十二歳に達した日の属する学年の終わりまでに小学校又は特別支援学校の小学部の課程を修了しないときは、満十五歳に達した日の属する学年の終わり(それまでの間において当該課程を修了したときは、その修了した日の属する学年の終わり)までとする。
4
アセスメントとは
「見立て」とも言われ、解決すべき問題や課題のある事例(事象)の家族や地域、関係者などの情報から、なぜそのような状態に至ったのか、児童生徒の示す行動の背景や要因を、情報を収集して系統的に分析し、明らかにしようとするものである。(略)アセスメントを行うに当たっては、校内で組織的対応を行うことが重要である。例えば、暴力行為には、思春期の心理、発達の課題、児童虐待や薬物の影響、友人関係など様々な要因が考えられる。その理解により指導方法が異なるので、要因を情報に基づいて的確に明らかにすることなどが重要である。
(生徒指導提要, P104)
5
アセスメントのポイント(伊部, 2008
)• 家庭環境:家族構成,保護者の性格・教育方針,親
子関係,夫婦関係,経済状況,きょうだい関係,力のあるところ,援助を必要とするところ
• 学校環境:友人関係,教師との関係,学習状況,学校生活全般(休み時間,保健室,給食,各授業中,部活,登下校等)
• 地域環境:家族,本人を支える資源の有無
• 本人自身:学力・体力・運動能力,性格,好き嫌い,こだわり,得意・不得意等,発育状況,日常生活(睡眠時間,起床,就寝時間,食事,入浴等),発達障害,虐待の有無,自尊感情,人への信頼感
6
アセスメントのための具体的手法
– アンケート– 観察法(自然観察,参与観察,組織的観察)– 面接法– 心理検査法
• 知能検査(面接法と質問紙法)• 質問紙法による性格検査(Y-G性格検査等)• 作業検査法(内田クレペリン精神作業検査)• 投影法(質問紙タイプもある:ロールシャッハ,TAT)• 社会測定的技法(ソシオメトリー)
– ソシオメトリック・テスト» 結果の表示:ソシオグラム,ソシオマトリックス
– ゲス・フー・テスト
– 児童生徒の提出物の利用• ポートフォリオや日記等
面接法のバラエティ(生徒指導提要を一部改変)
• 代表的な相談形態
–個別相談
–グループ相談
–チーム相談
–呼出し相談
–チャンス相談
–定期相談
–自発相談 など
• 代表的な相談媒体
–対面相談
–電話相談
–手紙相談
–FAX相談
–メール相談 など
8
ソシオメトリーを利用する際の留意点
a)テストの結果は,ある時点における特定の側面からみた人間関係にすぎない.
b)目的を明確にし,その結果を生かすように利用する.
c)あくまで指導のための手段であり,差別や偏見を助長しないように配慮する.
d)テストを行うこと自体が,集団の人間関係に影響を及ぼす可能性を考慮する.
アセスメントの注意点
• 身体的,心理的,社会的側面等,複数面を考慮
• 一般的理解と個別理解
• 客観的理解と共感的理解
• 正しいアセスメントはあり得ない
• 絶え間ない仮説検証の過程:一度きりではない
• 問題行動の原因や要因が理解できなくても,問題解決することはある
• 診断やラベル貼りではなく,問題解決のための資料収集と分析が目的
• 心理検査の実施は専門家に依頼する
• 組織的対応と保護者とのラポールが基盤
10
滋賀県教育委員会スクールソーシャルワーク的学校不適応支援事業
1. アセスメントとプランニングを重要視
2. ケース会議の定期的開催
3. B-PDCAサイクルの採用
– “B”:ベーシックアセスメント
4. ベースシートの活用
– 支援の共通認識や情報収集,記録作成,SSW概念の意識化に役立つ
11
生徒理解を歪ませる人間の特性
• ステレオタイプ
• 初頭効果
• ハロー効果
• 寛容効果
• 対比効果
発達障害とは
• 発達障害:成長発達期において,なんらかの遅れや偏りが長期的に持続する状態.基本的に治らない.
–精神遅滞(ダウン症なども含む)
–学習障害(LD)
–広汎性発達障害(自閉症)
•アスペルガー症候群
•高機能自閉症
–注意欠陥多動性障害(ADHD),など。
自閉症について
• 1943年にカナーが発表
• 正しくは「広汎性発達障害」
• 病名を診断することの意味– 病名は社会制度であり,医師のみが診断できる。
– 社会では,病名がつくことで,それを支援する福祉が受けられるようになっている。
広汎性発達障害(自閉症)自閉症ってどんな症状?
• 社会性の障害:– 他者とのやりとりが苦手.
– 他者の意図や感情が読み取りにくい.
– 目が合わない.
• 言語の障害:– ことばの発達が遅れる.
– オウム返し.
– 会話が一方的.
• こだわり行動:– 興味の偏りと決まりきったパターンへの固執
その他の特徴:知覚・認知の障害
• 知覚情報が歪んだり、欠損して、意味が把握できない
• 歪んで受け止めた情報を基に行動しているため、行動の異常が生じる
• 知覚低下ばかりでなく、知覚過敏も認められる(平衡感覚、触覚、視覚、固有知覚、など)
例)音に過敏、偏食、まぶしがる、痛みに鈍感
よくある誤解
• 家庭教育が原因 →×
• お母さんが悪い →×
• 他人に興味がない →×
• 治ることもある →×
• 自分の殻に閉じこもっている →×
• 仕事に就くことはできない →×
サヴァン症候群
• キム・ピーク– レインマンの主人公,レイモンドのモデル– ダスティン・ホフマンが彼と出会って衝撃を受け,「レインマン」という映画を制作した
• 数千冊の本を丸暗記していて,全米の幹線道路,都市の市外局番,郵便番号も記憶している。
• どの年であっても,どの日が何曜日が当てられる。
• 古い曲であっても,題名,作曲された年月日,初演日,作曲者の生誕地,誕生日,死亡日まで覚えている。
その他の特徴:自閉症の発症率など
• 一万人に4-5人と言われていた(自閉症)
• 最近では自閉症とその関連障害は1万人に121人、その7割は知的障害を伴わない(アスペルガー障害)と報告されている
• 男児に多く、女児の4~5倍
• 3歳以前に発症
高機能自閉症(アスペルガー症候群)
• オーストリアの精神科医アスペルガーが報告(1944)
• 言語の障害や知的障害が軽い(IQが70以上)
• 対人行動の障害と、行動、興味及び活動の制限が見られる
• 言葉の背景にある情緒やニュアンスを理解しにくい
• 二次的な自尊感情の傷つき、集団不適応が起こりやすく、いじめの被害者になりやすい
高機能自閉症も含めた自閉症の子への対応
• 個人の持つ認知の特性を理解し,それにあわせた教育方法を常に開発していく
• 基本にある認知障害、知覚障害に合わせた対応
– 例:絵カードを用いる、手順書を用意する、聴覚過敏に対応して耳栓を使う、など.
• 一次障害と二次障害:早期からの対応で二次的な発達障害・適応障害を予防
• 養育者、保育士、教師等へのガイダンスによって、周囲の理解を得る
課題と来週の授業
• 教師としての対応に関する不安
– 教科書を参照し,自分が教師になった場合どのような生徒指導上のトラブルや対応に不安を覚えるか400字~800字でまとめて下さい.
– 提出:submissionet@googlegroups.com
– Eメールの本文として
– 締切:来週の水曜日
• 来週
– これまでの総復習とテストの予告
– テストは2月17日
– 2月10日は研究大会のため休講
22
top related