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ダイアグラム思考— 分類と系統の世界観 —
噺役
三中 信宏MINAKA Nobuhiro
国立研究開発法人 農研機構 農業環境変動研究センター[系統体系学]東京大学大学院 農学生命科学研究科 生物・環境工学専攻[生態系計測学]
東京農業大学大学院 農学研究科[応用昆虫学]
mail: [email protected] : http://leeswijzer.org/
twitter: @leeswijzerWorld IA Day Tokyo 2017
2017 年 2 月 18 日(土)13:00 ~ 20:00東京都渋谷区恵比寿・amu
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万物は蒐集の対象である
ビュフォン 1991
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万物は蒐集の対象である
http://www.horg.com/horg/
Occlupanid
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万物は蒐集の対象である
Occlupanid: その形態と系統
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「分類する者」の側には
どのような生得的傾向が
あるのだろうか?
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『実在論と知識の自然化:自然種の一般理論とその応用』
「われわれが世界を一定の秩序において捉えることができ
るのは,世界そのものがおおむねまさしくそのような構造
を有しているからにほかならない.いいかえれば,実在の
側のあり方と,それについてわれわれが現にもちうる認識
とは,ほとんど合致するのである.もちろん部分的には,
最初にわれわれがもっていた素朴な認識を大幅に改訂しな
ければならなくなる局面も生じうる.しかし,その場合で
も,認識が実在のあり方に合致する領域は改訂を通じて増
大していく」(序章 , p. 4)
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三中信宏「誰にとって【種】は実在するのか?:「種問題」の現状と展望」第 52回日本菌学会大会シンポジウム〈菌類における「種」とは何か〉
2008 年 5月 31日(土),三重大学・三翠ホール
ヒトは生得的な分類者(classifier)
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分類する者
分類される物秩序は実在
発見できる
押しつける
秩序は観念
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第 11 回日本進化学会大会ワークショップ WB1〈ダーウィン進化論と科学史の現在〉
2009 年 9 月 3 日(水)13:30 ~ 15:00,北海道大学(札幌)
Darwin Origin (1859)
Darwin: Notebook
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エルンスト・ヘッケルによる“可視化”
Ernst Haeckel (1834–1919)
ド イ ツ の 動 物 学 者. い ち 早 く
Charles Darwin の進化学説に賛同
し,進化学・系統学・一元論哲
学の論客となる.専門は海産無
脊椎動物,とくに放散虫類とク
ラゲ類.
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エルンスト・ヘッケルによる“可視化”
Ernst Haeckel 1862. Die Radiolarien
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エルンスト・ヘッケルによる“可視化”
Ernst Haeckel 1887. Challenger Report, Vol.18
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エルンスト・ヘッケルによる“可視化”
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エルンスト・ヘッケルによる“可視化”
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エルンスト・ヘッケルによる“可視化”
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エルンスト・ヘッケルによる“可視化”
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三中信宏・杉山久仁彦『系統樹曼荼羅:チェイン・ツリー・ネットワーク』2012年 11月刊行,NTT出版,東京
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分類と系統のダイアグラムの体系
チェイン
ツリー
ネットワーク
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「パタン・ランゲージ」とダイアグラム
クリストファー アレグザンダー
[稲葉武司・押野見邦英訳]
『形の合成に関するノート/
都市はツリーではない』
(2013 年 12 月刊行,鹿島出
版会[SD 選書 263],東京)
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「パタン・ランゲージ」とダイアグラム
ツリー(tree) セミラチス(semi-lattice)出典:「都市はツリーではない」, p. 222
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「パタン・ランゲージ」とダイアグラム
アレグザンダー『都市はツリーではない』から:
・ツリー構造の単純さと比較したとき,セミラチス
構造のもつ夥しい多様性こそこの構造の複雑さを
如実に物語っている.(p. 223)
・人工の都市を組み立てているユニットはいずれもツ
リー構造となるようにつくられている.(p. 228)
・現実の都市はセミラチスであり,セミラチスとし
なければならない.(p. 229)
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「パタン・ランゲージ」とダイアグラム
中谷礼仁
『セヴェラルネス:
事物連鎖と人間』
(2005 年 1 月刊行,鹿島出版
会,東京)
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「パタン・ランゲージ」とダイアグラム
中谷礼仁『セヴェラルネス』から:
その後のツリー/セミラチスをめぐる建築界の議論
は,アレグザンダーの簡潔な説明とは反対に,必要以
上に両者を対立モデルとして扱ってきた節がある.人
間の計画はツリー的プロセスによらざるをえないので
あれば,セミラチスな都市を計画することはきわめて
困難となる.それゆえセミラチスは到達不能な単なる
理想都市として批判されてもいるのだ.(p. 182)
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「パタン・ランゲージ」とダイアグラム
中谷礼仁 2012. 「19 世紀擬
洋風建築と G. クブラーの系統
年代について」
所収:中尾央・三中信宏(編
著)『文化系統学への招待:
文化の進化パターンを探る』
(2012 年 5 月刊行,勁草書
房,東京), pp. 85-117 .
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擬順序
半順序
上半束下半束 全順序
樹状下半束
束チェイン
ツリー
ネットワーク
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マニュエル・リマ[三中信宏訳]
『THE BOOK OF TREES —
系統樹大全:知の世界を可視化
するインフォグラフィクス』
2015年 3月 10日発売,ビー・
エヌ・エヌ新社,東京.
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分類思考と系統樹思考の相互関係
対象物が同じでも,分類思考が対象間の
類似によるグループ化を目指すのに対し
て,系統樹思考は対象がたどってきた系
譜の推定を目標とする.分類と系統が整
合的かどうかは場合による.対象の多様
性を理解するにはどちらも必要である.
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分類思考と系統樹思考の相互関係
対象
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分類思考と系統樹思考の相互関係
分類
対象
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分類思考と系統樹思考の相互関係
系統
対象
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分類思考と系統樹思考の相互関係
分類 系統
対象
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分類思考と系統樹思考の相互関係
分類=系統
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分類思考と系統樹思考の相互関係
分類≠系統
×
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生物分類をめぐる科学と直感の矛盾
キャロル・キサク・ヨーン著
[三中信宏・野中香方子訳]
『自然を名づける:なぜ生物分類
では直感と科学が衝突するのか』
(2013 年 9月出版,NTT出版)
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日本進化学会第 10回東京大会(東京大学・駒場)公開講演会〈進化で日本を考える〉
2008 年 8月 23日(土),13:00 ~ 16:10
個物崇拝と普遍原理との乖離
個物 原理
記載 体系ローカルな知
識体系グローバルな
説明原理
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日本進化学会第 10回東京大会(東京大学・駒場)公開講演会〈進化で日本を考える〉
2008 年 8月 23日(土),13:00 ~ 16:10
個物崇拝と普遍原理との乖離
西村三郎『文明のなかの博物学:西欧と日本』
「個々の事物に対する強い関心・好奇心とはう
らはらに、事物全体を見通してそれを総括し、
ある理論なり体系なりをみずから構築しよう
とする意識の低さないし欠如」(p. 457)
日本の博物学の特徴(その一)
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日本進化学会第 10回東京大会(東京大学・駒場)公開講演会〈進化で日本を考える〉
2008 年 8月 23日(土),13:00 ~ 16:10
個物崇拝と普遍原理との乖離
西村三郎『文明のなかの博物学:西欧と日本』
東洋の原理的思考なるものは「陰陽思想」に
代表される超越的思弁であって、自然界を
「説明したような気分、理解したような気分」
(p.602)をもたらした点で有害だった。
日本の博物学の特徴(その二)
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日本進化学会第 10回東京大会(東京大学・駒場)公開講演会〈進化で日本を考える〉
2008 年 8月 23日(土),13:00 ~ 16:10
個物崇拝と普遍原理との乖離三浦梅園
『玄語』1723 ~ 1789
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個物崇拝と普遍原理との乖離南方熊楠
1867~ 1941 南方曼陀羅
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日本進化学会第 10回東京大会(東京大学・駒場)公開講演会〈進化で日本を考える〉
2008 年 8月 23日(土),13:00 ~ 16:10
個物崇拝と普遍原理との乖離早田文蔵
1874~ 1934 『臺灣植物圖譜・臺灣植物誌料・第拾巻』
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情報を伝えるわざ
アート(芸術・技芸・技術・学芸)
World IA Day Tokyo 20172017 年 2月 18日(土)13:00 ~ 20:00
東京都渋谷区恵比寿・amu
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World IA Day Tokyo 20172017 年 2月 18日(土)13:00 ~ 20:00
東京都渋谷区恵比寿・amu
アート
サイエンス
情報を伝えるわざ
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World IA Day Tokyo 20172017 年 2月 18日(土)13:00 ~ 20:00
東京都渋谷区恵比寿・amu
アート
サイエンス
情報を伝えるわざ
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World IA Day Tokyo 20172017 年 2月 18日(土)13:00 ~ 20:00
東京都渋谷区恵比寿・amu
アート
サイエンス
情報を伝えるわざ
わざ
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近刊のご案内(宣伝) —
三中信宏『思考の体系学: 分類と系統から見たダイアグラム論』
2017 年刊行予定[来月出ます]
春秋社, 東京.
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World IA Day Tokyo 20172017 年 2 月 18 日(土)13:00 ~ 20:00
東京都渋谷区恵比寿・amu
今日の噺をまとめると —・多様なオブジェクト(対象物)を体系化することはヒトにとって原初的
な慾望である.「分類」や「系統」はその慾望から生まれた.
・人間はオブジェクトの多様性を “可視化” しながら深く理解してきた. 過去一千年以上にわたってオブジェクトの多様性の可視化に用いられてきたグラフッィク・ツール(チェイン,ツリー,ネットワークなど)はいまなお実用的かつ有用である.
・多様性の “可視化” を目指すインフォグラフィクスは,家系・写本・図書・言語・考古学遺物・文化的様式の多様性など広範な分野で昔から利用されてきた.生物体系学における系統樹の使用はむしろ新参者といえる.
・人類がもつ分類体系化のグローバルな認知特性は,地域ごとのローカルな文化背景や社会構造によって制約されながら発現する.