平成29年度 宇治川での発電実証実験 プロジェクト活動報告 平成30年3月 宇治市地球温暖化対策推進パートナーシップ会議 (eco ット宇治) 再生可能エネルギー推進グループ 水車プロジェクトチーム 京都国立博物館蔵『柳橋水車図』
平成29年度
宇治川での発電実証実験
プロジェクト活動報告
平成30年3月
宇治市地球温暖化対策推進パートナーシップ会議
(eco ット宇治)
再生可能エネルギー推進グループ
水車プロジェクトチーム
京都国立博物館蔵『柳橋水車図』
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ecoット宇治・水車プロジェクトチームは、平成29年、多くの方々の協
力を得て塔の川(宇治川)において木製水車による発電実証実験に取り組みま
した。
台風等の影響で宇治川での実証実験は実施にいたりませんでしたが、ここ
に、その活動報告をさせていただきます。
宇治市は地球温暖化対策として「宇治市地球温暖化対策推進パートナーシッ
プ会議(愛称:ecoット宇治)」を立ち上げ活動を展開しています。
その中で「温室効果ガスの削減のための5つのテーマ」として以下を設定し
ています。
その1:省エネルギーの推進
その2:再生可能エネルギーの導入推進
その3:緑化対策の推進
その4:循環型社会づくりの推進
その5:交通面での推進
宇治市第 2次地球温暖化対策地域推進計画
はじめに
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平成28年に再生可能エネルギー推進グループ(以下、再エネグループ)が
結成され活動を始めました。
約1年の模索の結果、多くの市民に再生可能エネルギーについて知っていた
だく事、馴染んでいただく事を目的として、平成29年の活動は宇治川におい
て水車による発電の公開実験と、それに関連した講座を開催することにしまし
た。
実験を行う水車はプロジェクトチームを立ち上げ自ら製作して行うことにし
ました。
製作する水車の主な仕様はつぎのとおりとしました。
水車方式:腰掛け方式(水車の中間に川の段差を利用して水を流し込む方式)
サイズ:直径80cm
発電方式:DC発電
プロジェクトの会議風景
再生可能エネルギー推進グループの結成
水車プロジェクトチームの発足
水車発電実験の提案書 工程表
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eco ット宇治の限られた予算から捻出してもらった金額では大幅に資金不足
が想定されていたため、仕様を切り詰め、かつ、関係する方々の援助を当てにし
た予算構成でスタートしましたが、やはり限界があることは明らかでした。
そこで、環境活動に助成をしている夏原グラントに申請したところ、幸いに
も助成が決まりました。
旧京都市立伏見工業高等学校で教鞭をとられていた足立先生は水車製作の専
門家で、その教えを受けました。
先生からは「市民の皆さんへのアピールが目的であり、そのためにはサイズ
が小さすぎる。発電能力の観点から水車方式は上掛け方式とし、また、発電機は
ハブダイナモにすべきだ」と指導されました。
この結果、水車仕様は以下のようになりました。
水車方式:上掛け方式
(上流部から水を引き込み15mの導水路から流し込む方式)
サイズ:直径100cm
発電方式:ハブダイナモ(AC発電)
この変更により夏原グラントの助成を入れても、資金が不足することになっ
てしまいました。
はて、資金は?
足立先生の指導
【夏原グラントとは】
アルプラザなどを展開している平和堂が創設した「平和堂財団環境保全活動助成事
業」のことで、助成の対象は、滋賀県内または京都府内で実施される「琵琶湖および
その流域の自然環境の保全活動」で、水質保全、森林・里山保全、水源の森保全、河
川環境保全、湖岸(葦原)保全、生物多様性保全等、内容が先進的で他の団体のモデル
となるものとしています。
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このような状況の中、夏原グラントのセミナーで「様々な団体があるけれど
資金面はどうしているのか」とお尋ねしたところ、「助成金のみで運営している
団体よりも目的別寄付で運営している団体の方が継続性が高い」との助言を受
けました。
そこで、関係者を通じて「塔の川で発電実験を行いたいので」と寄付の呼びか
けをしたところ、沢山の寄付が寄せられ、予算的に全く問題がなくなりました。
ご寄付いただきました各位には厚くお礼申し上げます。
当初の予定通り、以下の公開講座を開催し、多く市民の参加を得ました。
第1回 「知ろう!再エネのパワー!」
日 時:平成29年8月26日(土) 10時~12時
場 所:宇治市生涯学習センター
内 容:
・身近な再エネ利用
(講師 京都府地球温暖化防止活動推進センター 根岸 哲生 氏)
・水車による水力発電の魅力
(講師 水車アドバイザー 足立 善彦 氏)
参加人数:42名
感 想:受講者が興味深く聞いてくださいました。特に水車に関する講義
は満足度が高かった様子です。
第2回 「作ろう!木製水車!」
日 時:平成29年10月14日(土) 10時~12時
場 所:宇治市生涯学習センター
内 容:木製水車概要説明、イルミネーションパネル概要説明、木製水車
完成作業、イルミネーション点灯確認
参加人数:29名
感 想:点灯実験では歓声が上がりました。ただ、「もっと製作に加わり
たかった」という声も多くあげられました。
公開講座の開催
寄付が寄せられました
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前述しましたが「第3回:発電しよう!宇治川の水車!」は台風などの影響で
実現できませんでした。
水車の設計も完了し、いよいよ製作となりました。
製作する主なものは木製水車であり、木材の加工が必要ですが、大型の部材
を家庭ではなかなか作れません。そこでご協力いただいたのがecoット宇治
の事業所会員の(株)永谷木材さん。作業場所や加工機材の提供をいただき作
業がはかどりました。
さらに講座に参加されたメンバーが部材加工や組み立てに参加いただき大き
な力となりました。
このように、多くのご協力のお蔭で水車が完成しました。
第1回と第2回の講座風景
講座募集ならびに公開実験を行うお知らせ
水車製作に新たな助っ人が
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水車設計図
水車製作のようす
木材を加工し、組み立てます
新聞にも掲載
(左・洛南タイムス H29.8.30)
宇治市史には上記の他多数記載有
(上・宇治市史)
古来、宇治は水車の名所と
して有名であった。とくに、
瀬の早い宇治川の流れと、激
しくまわる沿岸の水車とが
合体したとき、それはしばし
ば風雅のモチーフとなって
いる。(中略)さて、我が国の
水車だが、それはどうやら宇
治の里人によって作られた
のが始まりらしい。(後略)
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イルミネーションは「宇治市宣伝大使:ちはや姫」の画像をLED200球
で光らせるものですが、発電能力が低い場合も想定し、省エネルギー方式とし
ました。その結果、配線が複雑になり、担当された女性メンバーは相当な苦労
を余儀なくされました。
イルミネーションパネルも完成しました
イルミネーションの回路図の一部 イルミネーションパネルとその制作風景
完成は夜でした 思わず万歳
(右・城南新報 H29.10.1)
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水車方式を上掛けにした関係から長さ15mの導水路との組み合わせで発電
実験行うために、仮設の導水路と水車ならびにイルミネーションパネルを組み
合わせ試運転を陸上で行いました。
実験予定であった10月21日、延期した10月28日は、ともに台風の影
響を受け、実証実験は中止を余儀なくされました。
平成30年度は、宇治川での発電実験を再チャレンジする予定です。また、
あわせて関連の講座も開催します。
これらを実施するには資金が不足しており、夏原グラントに「継続助成」を
申請いたしました。
導水路の製作と発電のための試運転
宇治川の放流量の変化:急激に増水し、長期間にわたって減水しなかった
試運転の風景
実証実験は中止となりました
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実験予定場所は、下図の会場配置図にある橘橋下流の落差工と呼ばれる階段
状のところで、平成30年度の実験予定地でもあります。
実験予定場所です
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水車実証実験事業には助成や寄付・事業推進に多くの方々からご協力いただ
きました。
協力いただきました皆さまは以下のとおりです。
この紙面を借りて厚くお礼申し上げます。
また、ここには表示していませんが多くの市民の皆さまにもご協力をいただ
きましたこと、真にありがとうございました。
ご協力いただいた皆さま方
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平成29年11月26日(日)に宇治市生涯学習センター・宇治市産業会館
で「宇治環境フェスタ」が開催され、産業会館前の駐車場で水車の実演展示を
行いました。
実演展示は仮設のプールを作り、ecoット宇治事業所会員の(株)マキノ
デンキさんから提供いただいたリチウムイオン蓄電池ユニットを太陽光発電で
充電し、その電力で排水ポンプを稼働させ、約1トンの水を循環して連続運転
の実演を行いました。
宇治環境フェスタで水車の展示を行いました
水車実演の風景:子供たちも寄り、賑わいました
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さて、今までは平成29年度の報告でしたが、平成30年には再チャレンジ
の宇治川での発電実験を行うことはお伝えしています。
私たちは台風でできなかったことをやらねばと思いましたが、それだけやれ
ばいいのか、との声が聞こえてきました。
そうです、私たちのグループの目的は再生可能エネルギーで次世代により良
いエネルギー社会をつくることに少しでも貢献することでした。
水車プロジェクトの発足に際して、この事業ができたら、次は宇治市のどこ
かで小水力発電への道を開こうと話し合っていました。
宇治市には宇治川をはじめとした河川、そこから派生した農業用水路、下水
道など小水力発電に適した河川・水路があります。
これらの中から小水力発電に適した場所を平成30年度には調査を行う予定
にしています。
適地に再エネ施設を設置し、稼働させ、エネルギーの地産地消、地域に産業
を興せないかを市民の皆さんや行政・事業者の皆さんと探っていきたいと願っ
ています。市民や事業者の皆さんからの情報提供やいろんな形でのご協力をお
願いいたします。
宇治のどこかで小水力発電を・・・そして、まちづくりを!
出典:公益社団法人 宇治市観光協会・宇治市観光イラストMAP
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平成29年度の決算は以下のとおりです。
ここに記載の資金提供者ならびに、物心両面でご協力いただいた皆様に改め
て厚くお礼申し上げます。
平成29年度決算
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平成30年度は宇治川での発電実験などを行うとともに、完了後、年度を越
えて宇治川系列での小水力発電事業の計画の推進のための調査を行う予定にし
ています。
平成30年度の収入で未確定部分があり、寄付を募らせていただきますので
市民・事業者の皆さまから寄せられることを期待しています。
平成30年度の予算
平成29年度
塔の川での発電実証実験プロジェクト活動報告
平成30年4月発行
発行・編集 宇治市地球温暖化対策推進パートナーシップ会議
(eco ット宇治)
再生可能エネルギー推進グループ
水車プロジェクトチーム
連絡先 宇治市市民環境部環境企画課内
〒611-8501 京都府宇治市宇治琵琶33番地
電話 (0774)22-3141 番(代)
MAIL [email protected]