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Title <論文>家族主義福祉レジーム諸国における育児の脱家族 化 --日本とイタリアの育児政策比較研究-- Author(s) 大木, 香菜江 Citation 京都社会学年報 : KJS = Kyoto journal of sociology (2019), 27: 45-67 Issue Date 2019-12-25 URL http://hdl.handle.net/2433/246417 Right Type Departmental Bulletin Paper Textversion publisher Kyoto University
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Title 家族主義福祉レジーム諸国における育児の脱家族 …...Title 家族主義福祉レジーム諸国における育児の脱家族

Aug 08, 2020

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Title <論文>家族主義福祉レジーム諸国における育児の脱家族化 --日本とイタリアの育児政策比較研究--

Author(s) 大木, 香菜江

Citation 京都社会学年報 : KJS = Kyoto journal of sociology (2019),27: 45-67

Issue Date 2019-12-25

URL http://hdl.handle.net/2433/246417

Right

Type Departmental Bulletin Paper

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Kyoto University

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京都社会学年報 第27号(2019)

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家族主義福祉レジーム諸国における育児の脱家族化

― 日本とイタリアの育児政策比較研究 ―

大 木 香菜江

1 問題の所在

本稿の目的は日本とイタリアにおいて、育児をめぐるケア負担がどのように社会的に配

分されているかを明らかにすることである。福祉レジーム研究において両国は「家族主義

レジーム」と位置づけられてきた。本研究では、ケア負担の社会的な配分方法に着目し、

日本とイタリアにおける育児負担の実態を量的・歴史的データから明らかにし、「家族主

義レジーム」における家族のケアの内実を解明することを目指す。

家族の子育てをサポートする体制は多様化している。例えば、育児休業制度、公的保育

サービス、子供手当などよく知られている制度がこれである。これらのシステムはいずれ

も家族の育児負担を何等かの方法で緩和することを目指している。家族が負担する育児に

かかるコストを補填したり、家族以外が子供の世話をするサービスを普及させたりと、こ

うした政策の内実は多岐にわたる。

このように様々な家族のケア負担緩和策が施行されているが、家族のケアの実態が反映

されない場面も見受けられる。昨今日本で話題となった「保育園落ちた日本死ね!!!」(1)

はその一例である。子育てと就労の両立を希望する家族が増加する中で、現行制度がこう

した社会の変容に対応できていない状況にある。

では、家族の育児をめぐる環境が刻々と変化する中で現状に即した育児負担を緩和する

方策を見出すにはどうしたらよいのだろうか。こうした問題関心の下に出発する本稿は、

日本とイタリアにおいて家族の育児をめぐるケア負担の実態がこれまでどのように変容し

てきたのか、また、現状としては家族の育児負担はどこまで軽減されているのかを把握す

(1)2016 年 2 月に匿名で投稿されたブログのタイトル。「1億総活躍社会のかけ声とは裏腹に、なかなか解消しない待機児童問題を指摘する内容で、国会でも取り上げられた。(『朝日新聞デジタル』2016.3.4)

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大木:家族主義福祉レジーム諸国における育児の脱家族化46

ることを第一の目的とする。

この第一の目的を達成するためには、これまでの福祉レジーム比較研究で用いられてき

た分析枠組みをより実態解明に適したものにする分析枠組みの修正が必要不可欠である。

この修正案を提示することが、本稿における第二の目的である。既存の分枠組みは、福祉

国家を中心に福祉システムを捉えるため、家族の福祉システム内での働きを十分にとらえ

られない。このような分析枠組みを国家ではなく家族が主だったケア提供者となる日本や

イタリアに適応させると、これらの国々は「家族主義」という一面的な分析結果に収斂し

やすくなる。

これらの目的の遂行のため、本研究は 2つの点に留意する。1つ目は、「脱家族化」概念

を用いた先行研究の検討を行い、これらの研究を発展させた実証研究を行う。「脱家族化」

概念は、「家族の責任を福祉国家または市場の働きを通じて、どの程度まで緩和できるか」

(Esping-Andersen 1999=2000: 86)を示す。脱家族化指標を用いることで、国家ばかりに

焦点をおくのではなく、家族の役割をより重視した分析が可能となる。2つ目は、こうし

た実証研究を行う際に、イタリアと日本の脱家族化の時系列的変化に着目した分析を行う

ことである。福祉レジーム研究は 1990 年代を中心に一時点からのみ得られる分析結果を

提示しており、それ以降の変化を追ってはいなかった。既存研究では家族主義的特徴を指

摘されるイタリアと日本であるが、脱家族化の様相を観察した際にどのような時系列的変

化が生じるのかを検証する。

本稿では、家族主義福祉レジーム諸国の育児の脱家族化の様相を捉えるために、以下の

ような手順をとる。まず、2節では、福祉レジーム論の中で「脱家族化」概念が着目され

た過程について説明する。その上で、脱家族化概念を用いた G. Esping-Andersen、

Sigrid Leitner、落合恵美子の 3つの研究を検討する。家族に対する育児支援策の課題をよ

り詳細に把握するため、本研究では家族のケア負担を緩和する方向を「ケアサービス」と「ケ

ア費用」の 2つに分節化する、「家族主義の多様性論」の上に分析を進める(落合 2017)。

続く 3節では、本研究で用いる方法とデータについて説明する。本研究では落合の「家族

主義の 4類型」を座標軸に見立て、その上に育児政策の内容や効果を数量化した変数を打

ち出していく。4節では、3節で示された分析結果をもとに、1990 年代から 2010 年代まで

の育児の脱家族化の移り変わりを図示する。そして、図上のこれらの変化が生じた要因を

イタリアと日本の育児政策の歴史的変遷とともに論じていく。5節では家族主義福祉レジー

ムとその他の 3つの福祉レジームとの関係について述べる。これには、家族主義的性質が

その他のレジームに比べて強いとされる先行研究を検証する狙いがある。そして、日本と

イタリアの類似点や相違点から家族主義福祉レジームの脱家族化の特徴を見出す。

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2 先行研究

2-1 福祉レジーム論と家族主義福祉レジーム

福祉レジーム論は国家・市場・家族の 3つを福祉システムを支えるアクターとし、各国

の様々な福祉制度や福祉国家それぞれの成立過程といった複雑で傾向づけにくい知見をま

とめあげることを可能にした。

福祉レジーム論は、「脱商品化」と「階層化」指標を使って「自由主義福祉レジーム」、「社

会民主主義福祉レジーム」、「保守主義福祉レジーム」の 3つのタイプを提案する。「脱商

品化」とは、「個人あるいは家族が市場の有無に関わらず社会的に認められた一定水準の

生活を維持できることがどれだけできるか」(Esping-Andersen 1990=2001: 41)を表す指

標である。アメリカのように市場ベースで福祉を提供し、脱商品化の程度が低く、階層化

の程度が高いタイプが「自由主義福祉レジーム」、反対に、スウェーデンなどの北欧諸国

のように国家主体で福祉を運営し、高度に脱商品化し、階層化が進まないのが「社会民主

主義福祉レジーム」である。そして、脱商品化と階層化の程度がこれら 2つのレジームの

中間に位置づけられるのが、ドイツを代表国とする「保守主義福祉レジーム」である。

今回の分析対象である日本やイタリアは家族主義的性格の強さが指摘されたために、3

つのレジームとは一線を画す第 4のレジーム論(2)を喚起した。まず、イタリア、ポルト

ガル、スペインは、国家の福祉システムへの介入が弱いことから、「福祉国家の南欧モデル」

だとする見方が提案された(Ferrera 1996)。また、南欧諸国の中でもイタリアの家族政策

が軟弱であるために、家族に依存した福祉システムを有するとも指摘されている(Saraceno

1994)。また、南欧と並行して東アジアについても、家族主義の強さを儒教主義に関連づ

けて「儒教主義福祉国家」と東アジア諸国をグルーピングする見方が 1990 年代に台頭し

た(Jones 1993)。その後の「東アジア福祉レジーム」の実態を分析する研究でも、儒教

主義に裏付けられた家族主義的性質を共通の特徴として東アジアが有することが主張され

た(Goodman and Peng 2003)。さらに、2010 年代においても儒教思想が福祉システムを

拡充する際の障害となっていることが問題視されている(Sung and Pascall 2016)。つまり、

家族主義福祉レジーム諸国のケア負担がその他のレジーム諸国に比べて重く、こうした負

担を家族が一身に負っていることが指摘されている。こうして家族主義的性格が強調され

る中で家族主義福祉レジームという新たなレジームが構想されたのである。

(2)Esping-Andersenは、脱家族化を用いた分析を行っても家族主義福祉レジームを 4つのレジームとする見方はせず、もともとあった 3つのレジームの中で南欧や東アジアを説明している。

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2-2 「脱商品化」と「脱家族化」

しかし、福祉レジーム論やそれに続く研究の中で家族主義福祉レジームの特異性が強調

されながらも、これらの諸国の家族が日々何を負担しており、こうした負担を緩和させる

ためには何が必要とされているのかといった具体的な問題には目が向けられてこなかっ

た。

この要因として考えられるのは、脱商品化指標が年金、失業・疾病保障などの社会保険

制度を分析するために、国家が行う福祉運営にスポットライトがあたりやすいことがあげ

られる。こうした批判は福祉レジーム論に対するフェミニスト研究者等からの批判に見つ

けることができる。Esping-Andersenがフェミニストから 90 年代に受けた指摘では、国

家と市場の関係性にのみフォーカスする福祉レジーム論を批判し、そこに家族を加えた分

析を行うべきであると主張された(Orloff 1993: O’connor 1996)。Esping-Andersenは脱

商品化を用いた分析が女性の家庭内ケアについて不十分な説明をしているというフェミニ

スト研究者等の批判を受け入れ、「家族の責任を福祉国家または市場の働きを通じて、ど

の程度まで緩和できるか」(Esping-Andersen 1999=2000: 86)を示す、「脱家族化」指標

を用いて家族に分析の焦点を当てることを提案した。

2-3 脱家族化をめぐる議論

具体的に脱家族化を用いた福祉国家比較研究がどのように取り組まれてきたのかを確認

するために 3 つの研究について論じる。まず、福祉レジーム論を提唱した Esping-

Andersenが行った脱家族化を用いた福祉国家比較研究について説明する。次に、脱家族

化比較のための新たな分析枠組みを提案した Leitnerと落合恵美子の研究を紹介する。

2-3-1 Esping-Andersenの脱家族化分析

Esping-Andersenの脱家族化分析では、福祉国家が家族に提供する様々なサポート(3)

を総体的に捉えた上で比較し、その程度が大きいものを脱家族化の進展する国家、反対に

その総量が少ない国家を家族主義化する国家とした。つまり、家族のケア負担を軽減する

ものが脱家族化である一方、家族のケア負担が過重であることは家族主義的だというよう

(3)Esping-Andersenは脱家族化を 4種類の指標で捉える。①全体としてどれだけのサービス活動が行われたか(家族サービスへの支出が GDPのなかで占める割合)、②子供のいる家族を助成するために全体としてどれだけのことが行われたか(家族手当と税控除の総合的価値)、③公的な保育ケアがどれだけ普及しているか(3歳以下の幼児に対するデイ・ケア)、④高齢者に対してどれだけのケアが提供されているか(ホームヘルパーのサービスを受ける 65 歳以上の高齢者の割合)の 4 つである(Esping-Andersen 1999=2000: 97-98)。

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に、脱家族化と家族主義を対比させて捉えている。

このようにして、先ほど示した 3つのレジームと南欧と日本を検討した結果、社会民主

主義、自由主義、保守主義福祉レジーム(4)、南欧(5)と日本の順で脱家族化がなされてい

ることが明らかとなった。また、日本と南欧は最も家族主義の強い社会であることも指摘

された(Esping-Andersen 1999=2000)。

しかし、Esping-Andersenの分析では国家と市場が供給する家族に対する社会サービス・

政策のすべてが脱家族化を目指すものであると想定している。こうした分析では、脱家族

化を達成しているか否かという二極化した結果を想定しており、どの点で家族主義的であ

り、どの点で脱家族主義的であるのかといった脱家族化に向けた解決策を講じるのに必要

不可欠な情報を得ることができない。こうした Esping-Andersenの脱家族化分析の限界

を克服しうる研究として、Leitnerと落合の家族主義の多様性論がある。

2-3-2 家族主義の多様性論

Leitnerや落合は脱家族化の中に 2 つの方向性を見出している(Leitner 2003; 落合

2017)。Leitnerは、家族以外に子育てや介護を外部化する意味で「脱家族化」する方向性

と、家族のケアを家族内部で完結させるように家族を支援する意味で「家族主義化」する

方向性の 2つを想定した(Leitner 2003)。また、落合は「脱家族化」にはケアサービスと

ケア費用の 2つの側面を市場や国家がサポートする方針があるとした(落合 2017)。この

ように、脱家族化概念の内実を 2つに分節化することで、Esping-Andersenの主張するよ

うな「脱家族化」対「家族主義」といった二項対立では捉えきれない、より具体的な家族

とケアのあり方を想定できる。

まず、Leitnerは「脱家族化」と「家族主義化」を Esping-Andersenとは異なる仕方で

定義づけ、その上で脱家族化政策やその効果を比較し、ヨーロッパ諸国を 4つの家族主義

のタイプに分類した。彼女のいう「脱家族化」とは、家族に家族の代替となるサービスを

市場や国家が提供することで、親たちを積極的に労働市場へ参入させようとすることをい

う。一方で、「家族主義化」とは、家族自身が家族の構成員のケアを行うことを支援する

ことを指す。つまり、Leitnerは、子供や高齢者の世話を家族が継続的に行えるよう、国

家や市場がサポートすることを「家族主義化」と捉えている。「家族主義化」というと、

家族支援策が貧困であるために家族により多くの負担を強いている様子を指す場合もあ

(4)オーストリア、ベルギー、フランス、ドイツ、オランダのこと。(5)イタリア、ポルトガル、スペインのこと。

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る。Esping-Andersenのいう「家族主義化」もこれと同一の意味である。しかし、

Leitnerのいう「家族主義化」とは家族自身がケア提供者となることを外部から支援する

ことで、家族のケア役割を強化することを意味する。

Leitnerは「脱家族化」と「家族主義化」の概念を用いて育児政策を対象にした実証分

析を行っている。ここから 4つの家族主義のタイプが導出される(表 1)。育児という場面

に即せば、Leitnerの「脱家族化」と「家族主義化」は以下のように説明できる。まず、

子供を保育施設に預け、育児を家庭内から外部に委託することで親のケア負担を軽減する

のは「脱家族化」である。一方で、育児給付は給付が所得の代替を果たすことになり、働

かなくとも子育てに専念できるため「家族主義化」するといえる。Leitnerは「家族主義化」

と「脱家族化」の程度を家族支援政策の内容や効果で比較し、ヨーロッパ諸国を以下のよ

うに 4つに類型化した(Leitner 2003: 358)。

(1)「選択的家族主義」では、家族自身が育児に従事することを(6)外部からサポートし、

かつ、家族が育児を行わず外部に委託することもできる。つまり、子供の育児を自身の手

で行いたいという親を支援しつつ、親が保育施設に子供を預けて働くこともできる仕組み

が「選択的家族主義」諸国にはある。Leitnerはこれが最も理想的なタイプであると論じ

ている。

(6)Leitnerは家族ケアの生じる場面を育児、高齢者介護、障害者の世話と述べている。

出典:Leitner(2003)

表 1 Leitnerの家族主義の 4類型による欧州諸国の分類結果

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大木:家族主義福祉レジーム諸国における育児の脱家族化 51

(2)「積極的家族主義」は、家族が育児を行えるように家族支援体制を整える一方で、ケ

アサービスの供給量が少なく、家族以外が育児を行う機会を得にくい。

(3)「脱家族主義」は、家族以外が育児を行うことを奨励しており、ケアサービスの供給

量が多い。一方で、家族が育児の主だった担い手になるように支援する方策はあまり取ら

れない。

(4)「消極的家族主義」では、脱家族化政策も家族主義化政策も存在しないために、育児

を担うことができる唯一の主体は自ずと家族に求められる(Leitner 2003)。

Leitnerはヨーロッパ諸国 15 か国の 1990 年代における育児(7)の家族主義の 4類型を表

1のように示している。ここで用いられる変数は 2つある。1つは「脱家族化」を表す「3

歳児以下の公的保育の利用率」である。もう 1つは、「家族主義化」を示す「給付付きの

育児休業制度の有無」である。それぞれの評価基準は以下のようになる。まず、「3歳児以

下の公的保育の利用率」が 30%以下である場合は、「脱家族化」が弱いとする一方、30%

以上である場合は、「脱家族化」が強いとする。1990 年代当時の育児休業制度の内容は、

ケアの時間権のみを保障するタイプのものと、時間権及び給付まで認めるタイプのものが

あり、給付まで認めている場合を強い「家族主義化」とし、時間権のみが認められる場合

は弱い「家族主義化」としている。

Leitnerと Esping-Andersenの脱家族化分析を比べてみると、イタリアと日本の位置づ

けが異なることがわかる。Esping-Andersenはイタリアを脱家族化に向けた取り組みに消

極的な、家族主義の強い国家と評した。つまり、Leitnerの分類でいえば「消極的家族主義」

にイタリアが相当するように論じられる。「消極的家族主義」にはイタリア以外のギリシャ、

ポルトガル、スペインなどの他の南欧諸国は当てはまっている。しかし、Leitnerの分析

によるとイタリアは「積極的家族主義」に分類されており、同じグループには保守主義福

祉レジーム諸国であるオーストリアやドイツが並ぶ。日本の位置づけについて Leitnerの

分析では触れられていないが、日本の子育ての脱家族化論を検討した研究によると、日本

は「積極的家族主義」にあるとする見解も示されている(藤間 2013)。そうすると日本の

場合も Esping-Andersenの脱家族化分析とは異なる特徴が得られていることがわかる。

つまり、脱家族化政策が不十分な状態にあるというよりも、家族主体の育児が制度的に保

持されやすい状態にあるといえる。

落合は Leitnerの定義する「家族主義化」は正確には「家族によるケアサービスの対価

を国家が支払ったり、規制によりケア時間を保障したりするという意味では、再生産コス

(7)育児分野だけでなく、高齢者介護分野、ジェンダー平等分野も類型化していた。

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大木:家族主義福祉レジーム諸国における育児の脱家族化52

トの「脱家族化」政策である」(落合 2017: 174)とし、4類型を図 1のように改めた。具

体的には、Leitnerのケアの「脱家族化」と「家族主義化」をそれぞれ「サービス」と「費

用」の 2つのタイプに分けて「家族主義の 4類型」を提案している。

育児政策の内容に即して説明すれば、「ケアサービスの脱家族化」とは、幼稚園や保育

園などの公立及び私立の保育施設や保育ママや家庭的保育などの公的及び私的な保育サー

ビスが普及することで達成される。つまり、国家の提供する保育サービスと市場で供給さ

れる保育サービスがより多くの子供に利用されることで「ケアサービスの脱家族化」は進

展する。

一方で、「ケア費用の脱家族化」とは育児休業や育児給付などの育児を行う時間やコス

トを公的に保障することを指す。また、公的資金によって保育所が運営されている場合も

「ケア費用の脱家族化」だと定義する。

落合の「家族主義の 4類型」は以下の 4つのように定義づけられる。

(1)「脱家族主義」は、育児のケアサービスもケア費用も保障されるタイプのことである。

このタイプの代表的な国家は北欧諸国であると落合は想定している。

(2)「家族主義」は、ケアサービスもケア費用も保障されないものである。「家族主義」に

類型される国々はケアサービスもケア費用も整備されていないために、家族のケアを家族

図 1 家族主義の 4類型出典:Ochiai(2017)

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大木:家族主義福祉レジーム諸国における育児の脱家族化 53

が負担するしかない。

(3)「支援された家族主義」は、「ケア費用の脱家族化」のみが実施されるものである。こ

れは、Leitnerのいうところの「積極的家族主義」と同義で、家族がケアの提供者である

ことに公的な経済的支援を行うことを意味する。

(4)「自由主義的家族主義」は、「ケアサービスの脱家族化」だけが推進されたタイプである。

Leitnerは国家と市場による「ケアサービスの脱家族化」を想定し、落合は市場主導で育

児サービスが供給されるもののみが「自由主義的家族主義」にあてはまると定義する。つ

まり、福祉レジーム論の中でも市場で社会福祉サービスを商品として供給する自由主義福

祉レジーム諸国のようなタイプを落合はここに位置づけている。

2-4 小括

以上のように家族主義福祉レジームの特性について脱家族化指標を用いて再度分析し直

す必要性について述べ、脱家族化を用いた Esping-Andersen、Leitner、落合の 3つの研

究を紹介してきた。こうした議論をさらに前進させるため、本研究では育児の脱家族化の

実証研究を行う。

まず、本研究では脱商品化指標ではなく脱家族化指標を用いて日本とイタリアを分析し、

両国の家族主義の強さや福祉国家の不在を主張するに留まる先行研究の深化を目指す。脱

商品化指標は国家中心の福祉システムを分析対象とするが、こうした分析枠組みでは、日

本やイタリアをはじめとする家族主義福祉レジーム諸国の家族のケアの実態が明らかとな

りにくい。

次に、本研究は、脱家族化をめぐる Esping-Andersen、Leitner、落合の 3つの家族の

担うケアに着目する研究もさらに発展させるために、日本とイタリアの脱家族化の時系列

的変化に着目した分析を行う。Esping-Andersenの脱家族化分析はどのような家族に対す

る社会サービスであっても、それらをすべて「脱家族化」させるものであると捉えていたが、

Leitnerや落合は「脱家族化」の方針に多様性を持たせることで、家族のケアの実相がよ

り具体的に把握されるようになった。しかし、これらの分析では、日本とイタリアを代表

国とするような家族主義福祉レジーム諸国の脱家族化の時系列的変化を捉えていない。

Esping-Andersenと Leitnerの脱家族化分析では、彼らの分析時点である 1990 年代の一

時点のみのデータを用いている。これらの既存研究は対象期間が一時点でのみ捉えられて

いるために近年までの脱家族化がどのように進められてきたのか明らかになっていない。

特に本研究の対象とする日本とイタリアは 1990 年時点では脱家族化の進展が遅れる地域

と指摘されており(Esping-Andersen 1999=2000)、その後もこうした特徴が維持されて

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大木:家族主義福祉レジーム諸国における育児の脱家族化54

いるのか、時系列的変化が生じているのかを確認する必要がある。また日本については

Leitnerの分析で対象国に含まれていなかったため、本研究では日本を含めた育児政策を

数量化したデータを用いた分析を行う。

3 方法と対象

3-1 本研究の着眼点

本研究では落合の脱家族化の理論枠組みと Leitnerの脱家族化の実証分析を活用し、家

族主義レジーム諸国の脱家族化の移り変わりを分析する。つまり、「ケアサービスの脱家

族化」と「ケア費用の脱家族化」の二方向の脱家族化概念を用いた落合の「家族主義の 4

類型」を参照し、各国の脱家族化政策の傾向を比較する方法として Leitnerの手法を参照

する。そして、Leitnerのように脱家族化政策の内容や効果を数量化し、あらかじめ定め

た類型の中に各国を位置づける。

本研究では彼女達の分析に依拠しつつ、これまでの分析よりも対象時間軸の範囲を拡大

し、対象地域を家族主義福祉レジーム諸国の日本とイタリアに定めて、以下の 2つの点に

おいて、より正確で詳細な脱家族化の時系列的変化を明らかにする。

第一に、経年で生じる脱家族化の移り変わりを明らかにするとともに、それらが生じた

要因を捉えることである。先進諸国の家族ケア負担緩和を求めるニーズは高まりを見せて

いるので、1990 年代から現代までの間に様々な対策が講じられ、脱家族化の各国の傾向も

変化している。これまでの分析では 1990 年代の一時点のみの結果を示したが(8)、1990 年

代から近年までの変化を経年で追い、その差異を国家間で比較してはいない。脱家族化の

体制が変化した背景には何等かの要因があるはずであるが、Leitnerの脱家族化の分析に

おいてはこうした部分に触れていない。そこで、本研究では 1990 年代から 2010 年代まで

に各国の脱家族化政策がどのように移行してきたのか、また、なぜそのような変更が生じ

たのかを明らかにする。

第二に、対象地域として特に日本とイタリアの育児の脱家族化に着目する。脱家族化を

用いた分析では、Esping-Andersenは両国を脱家族化の遅れた家族主義化する国家と結論

づけている(Esping-Andersen 1999=2000)。しかし、Leitnerの脱家族化の類型論の下で

は日本もイタリアも家族にとって何もかも不足するような育児政策や制度を敷いているわ

(8)Leiter(2003)は Esping-Andersen(1999 = 2000)が利用する一時点のデータをそのまま引用している部分がある。Esping-Andersenの議論が静態的であるという批判は以前からあり(宮本 2001)、それと同様に、Leitnerの議論も環境適応していないことになる。

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大木:家族主義福祉レジーム諸国における育児の脱家族化 55

けではなく、少なくとも家族が育児を行いやすいように整備しているという。このような

脱家族化分析の異なる両国の結果について検討する必要がある。

3-2 対象国

本研究では、家族主義福祉レジーム諸国の脱家族化の時系列的変化を明らかにし、かつ、

それらが生じた要因を示すために東アジアおよび南欧地域から日本とイタリアのそれぞれ

1か国ずつを中心に分析を行う。先述したように、日本とイタリアは家族主義福祉レジー

ムの中でも、脱家族化に向けた動きが遅い地域であるという共通点がある(Estévez-Abe

2015)。さらに、家族主義福祉レジーム諸国が先行研究のいうように家族主義の強い傾向

を有するのかを検討するために、福祉レジーム論の 3つのレジームと比較し、レジームご

との類似 /相違をも明らかにする。そこで、社会民主主義福祉レジームのスウェーデン、

自由主義福祉主義レジーム諸国のイギリス、保守主義福祉レジーム諸国のドイツの 3か国

のデータも同時に提示する(9)。

3-3 変数

今回の分析で用いるデータは、「3歳児以下の公的保育の利用率」と「育児休業制度によ

るケア費用の脱家族化レベル」の 2つである。前者を落合の提唱する「ケアサービスの脱

家族化」、後者を「ケア費用の脱家族化」とみる。以降これら 2つの変数について説明する。

3-3-1 「3歳児以下の公的保育の利用率」

まず、1つ目の変数である「3歳児以下の公的保育の利用率」は、国家や市場が保育サー

ビスを供給することで家族の育児負担が緩和されると考えられるため、「ケアサービスの

脱家族化」を示す変数といえる。

公的保育(10)とは、政府から経済的支援を受けた保育施設・サービスと、民間で運営さ

(9)スウェーデン、イギリス、ドイツのデータは提示するが、あくまでも日本とイタリアの二か国に絞った分析を行うため、この 3か国の実証分析は行わない。

(10)日本では幼稚園や保育園など施設型の公的保育が一般的であるが、欧州では施設型の他に保育ママや家庭的保育などの家庭を保育の場として利用するものも一般的である。このように各国で提供する公的保育の種類は様々である。OECDは “Center-based day-care(施設型保育)” と “Family day care(家庭的保育)” の 2 つを公的保育の形態として定めている(OECD 2016c)。まず、“Center-based day-care(施設型保育)” とは、国から認可を受けた保育園や幼稚園から提供される保育サービスのことで、家庭外で行われる施設型の保育のことを指す。一般的にこれらのサービスは 3歳以下の子供や未就学児に提供されている。“Family day care(家庭的保育)”は、家庭で行われる公的保育サービスのことである資格を有する。保育ママが子供のいる自宅に赴いて3、4人の子供の世話をする。これも3歳以下の子供を対象に提供される。施設型の保育は地理的な条件や定員制限などによって利用可能性が限られてしまう一方で、家庭的保育は

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大木:家族主義福祉レジーム諸国における育児の脱家族化56

れる保育施設・サービスのことをいう。つまり、国家と市場が提供する保育サービスの総

称が公的保育である(OECD 2016c)。

3歳から就学前までの年齢の子供に対する公的保育サービスの利用率は OECD加盟国の

平均が 83.8%と高いが、3歳児以下については各国に差が生じている(OECD 2016b)。家

族の代わりにこうした子供の世話をするサービスが十分に普及すれば、親の就労継続の可

能性が高まる。2001年のOECDの Employment Outlookでは、女性の就労に直結するデー

タとして加盟国全体のデータを掲載し分析している(OECD 2001)。

図 2では、公的保育を利用する 3歳児未満の子供の利用率を 1995 年から 2014 年まで経

そうした制限がなくアットホームな環境が好まれ、活用されている。

図2 1995 年から 2014 年までの「3歳児以下の公的保育の利用率」の変遷出典:OECD(2001、2016b)をもとに筆者作成注:空欄はデータなし。

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年で示した。図 2の折れ線グラフでは、1990 年代から 2010 年代にかけて右肩上がりにグ

ラフが上昇していることが分かり、国際的に利用率が高まっていることがわかる。そこで、

今回の分析では Leitnerが分析時に基準と定めた 30%ではなく、近年の「3歳児以下の公

的保育の利用率」の OECDの加盟国平均である 35%以上を「ケアサービスの脱家族化」

と定める。Leitnerの分析では「3歳児未満の公的保育の利用率」は 30%以上が高い割合

であるとされていたのは、分析時の 2000 年代の OECD加盟国の平均が 30%であったため

である。2002 年バルセロナ会議では、2010 年までに「3歳児以下の公的保育の利用率」を

33%にまで引き上げることが目標とされた(Council of the European Union 2018)。また、

2014 年の時点では、OECD加盟国の平均は 35%と上昇を見せている。そのため、本研究

では「3歳児未満の公的保育の利用率」は 35%以上をケアサービスの脱家族化が達成され

ている状態とみなす。

3-3-2 「育児休業制度における脱家族化レベル」

次に、「育児休業制度によるケア費用の脱家族化レベル」のについて説明する。育児休

業制度は子供の育児にかける時間と費用を保障する政策である。時間を保障するのは「ケ

アサービスの家族化」であるが、費用を保障するのは「ケア費用の脱家族化」である。本

論文では後者に着目して「ケア費用の脱家族化」の指標として用いることとする。ただし、

育児休業制度を利用できるのは就業するものに限られるため、本研究は「ケア費用の脱家

族化」の一部のみを扱う限定のある試論であることをお断りしておく。

日本とイタリアの15歳から 65歳の女性の労働力率は1990年代から 2010年代にかけて、

それぞれ 50%~ 60%前後と 40 ~ 60%であり、OECD平均の 60%に比較して低い(OECD.

Stat 2019)。また、育児休業制度も男性の取得率が極端に低く、女性の取得率と比べると

大きな差がある。2016 年のデータによると日本の男性の育児休業制度の利用率は 3%で女

性は 82%であり(厚生労働省 2018)、イタリアでは男性が 11%で女性が 54%あった(OECD

2019)。こうしたことを踏まえると、育児休業制度が対象とするのは育児休業制度を利用

する家族でかつ女性であることがわかる。

今回の分析に用いた資料は、OECDが 2017 年に公表した “DETAIL OF CHANGE IN

PARENTAL LEAVE BY COUNTRY(各国別育児休業制度の変遷)” である。ここには育

児休業制度の制定年度から、現在に至るまでどのように改訂がなされてきたのかが掲載さ

れている。

本研究ではこの中でも、育児休業制度がヨーロッパ及び、今回対象とした東アジア諸国

で施行され比較が可能な状態となったことを踏まえ、1990 年代以降の政策変遷に着目する。

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その上で特に、育児休業制度の中で期間と給付額の二点について述べられた記述がある。

本研究ではその二点が記述された部分を抜粋し、得点化した。

育児休業制度の期間は、両親ともに育児休業を取得した場合に一世帯が得られる休業期

間の合計を算出(11)した。育児休業制度が存在せず、家族が仕事を休んで子供のケアに専

念する時間を保障していない場合(= 0)、9か月間以下(= 1)、9か月以上 18 か月間以

下(= 2)、18 か月以上 27 カ月間以下(= 3)、27 カ月間以上(= 4)とする。

育児休業制度の給付額は、給付額が多いほどケア費用が保障されるため、「ケア費用の

脱家族化」の指標とする。本研究では休業中に就業中の所得がどの程度カバーされるのか

という観点から「ケア費用の脱家族化」を測ることとし、給付額が対象国の平均収入を代

替する割合を算出した(12)。平均所得は政策制定年度の対象国の平均収入から算出した。

このようにして、本研究では 0から 4までの 5段階で以下のように得点化した。

給付自体がない場合(= 0)、月収の 25%以下の給付(= 1)、月収の 25%以上 50%以下

の給付(= 2)、月収の 50%以上 75%以下の給付(= 3)、月収の 75%以上の給付(= 4)

期間と給付額の得点を掛け合わせたものを、「育児休業制度によるケア費用の脱家族化

レベル」とする。合計得点が高い方が「ケア費用の脱家族化」が進んでいることになる。

年代別に OECD加盟国 11 か国全(13)の平均を調べると、「育児休業制度によるケア費用の

脱家族化レベル」は、1990 年代では 2.2、2000 年代では 3.2、2010 年代では 3.9 であり、「ケ

ア費用の脱家族化」は少しずつではあるが、進んでいることがわかる。1990 年代から

2010 年代を通じた平均は 3.1 であったため、本研究では 3.1 以上を「ケア費用の脱家族化」、

3.1 以下を「ケア費用の家族主義化」とした。

3-4 方法

本研究では、落合の「家族主義の 4類型」が示された 4象限のある座標軸上に、1990 年

代から 2010 年代までの各国の脱家族化の移り変わりを表す折れ線グラフを提示する。今

回の対象国から得られた結果によると何等かの時系列的変化が観察されたため、これらが

生じた原因を育児の脱家族化政策の歴史的変遷から考察する。

(11)これは、育児休業の受給対象が世帯ごとである国と、個人単位である国とに大きく分かれるためである。一世帯ごとに取得した場合に合わせ、個人単位である国の世帯を、父親と母親がいる家族と想定し、取得可能な期間を算出している。

(12)給付方法には、どの世帯に対しても、定額で給付を行う方法と、月収に応じて給付を行っている場合の 2つがある。また、政策文の中に記載される金額はユーロやドルなど様々な通貨で記載されているため、当時の為替レートを元に通貨を揃えて算出している。

(13)11 か国は、スウェーデン、フィンランド、イギリス、フランス、ドイツ、オランダ、イタリア、スペイン、日本、韓国、台湾である。

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前節で得られた変数を各国別に、表 2にまとめ、2つの変数を「家族主義の 4類型」へ

と対象国別に 1990 年代から 2010 年代までプロットしていく。分析結果に示した図の読み

方は、図 1の「家族主義の 4類型」を座標軸と見立て、縦軸は「3歳児以下の公的保育の

利用率」、横軸は「育児休業制度によるケア費用の脱家族化レベル」とする。グラフの横

に示した矢印は、折れ線グラフにプロットしたデータの動態を示している。上に伸びる矢

印は「ケアサービスの脱家族化」を意味し、下に伸びる線は「ケアサービスの家族主義化」

を意味する。また、右に伸びる線は「ケア費用の脱家族化」、左に伸びる線は、「ケア費用

の家族主義化」を意味する。さらに、本研究ではグラフ上に脱家族化するにあたってのター

ニングポイントとなった政策や制度、政治体制の変動や経済的影響を書き記した。

4 分析結果

4-1 家族主義およびその他の福祉レジーム諸国全体の動向

図 3では、代表的な福祉レジームとされる自由主義福祉レジームのイギリス、社会民主

出典:OECD(2016a: 2016b: 2014: 1994)をもとに筆者作成 注:空欄はデータなし

表 2 「育児休業制度によるケア費用の脱家族化レベル及び 3歳児以下の公的保育の利用率一覧」

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主義福祉レジームのスウェーデン、保守主義福祉レジームのドイツと、家族主義福祉レジー

ムのイタリアと日本の 1990 年代から 2010 年代までの位置を「家族主義の 4類型」上に示

している。

イギリスは市場を中心に保育サービスを展開している「自由主義的家族主義」に、ス

ウェーデンはケア費用・サービスともに積極的に脱家族化しているため、「脱家族主義」に、

ドイツは家族が子供のケアを行うのに必要な費用を公的に支援する「支援された家族主義」

に位置づけられた。

これら福祉レジームの代表国とされる 3か国と家族主義レジーム諸国である日本とイタ

リアとを比較すると、保守主義福祉レジームであるドイツに類似する形で「支援された家

族主義」に両国があてはまる。

両国が「家族主義」ではなく、「支援された家族主義」に分類されることは予想に反す

る結果といえる。先行研究では、家族主義福祉レジーム諸国の家族支援策への消極性が指

摘されたので、「家族主義の 4類型」上に位置づけるならば、育児サービスも費用も十分

に保障されない「家族主義」に位置づけられると予想できた。しかし、分析の対象とした

1990 年代以降から 2010 年代までにおいて、イタリアと日本は一貫して「支援された家族

主義」の中に収まる形で脱家族化している。

図 3 3つのレジームと日本・イタリアの育児の脱家族化の時系列的変化

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4-1 国家別にみる育児の脱家族化の歴史的動態

4-1-1 イタリア

図 4をみると、イタリアは座標軸の右側に位置し、グラフは上に伸びたのちにユーロ危

機を契機に下に伸びる脱家族化の動態が見られた。つまり、ユーロ危機以前までは保育施

設・サービスが整備され利用者も増えていったが、その後不況の影響で保育サービスの利

用が控えられたことが図から読み取れる。

イタリアの保育サービスの拡充に勢いがつき、図 4の上向きの矢印が生じたのは、2001

年の「第二共和制(Second Republic)」の頃である。イタリア政府はこの方針の下に地方

分権化を推し進め、地方自治体にケアサービス供給の責任を求めた。この制度下では生後

3か月以上 3歳以下の子供に ”Asilo nido(ひな鳥の巣)”という保育施設が提供されるよう

になった(PERFAR 2014)。図 2では 1998 年にイタリアの「3歳児以下の公的保育の利用

率」が 6%であったが、2007 年には 28%に数値を伸ばしていることがわかる。このことか

ら「第二共和制」が一定の効果を発揮していることがわかる。しかし、その後、2009 年の

ユーロ危機の後にその値は 21%にまで低下したため、矢印は下向きに転じている。

図 4をみると、イタリアの育児の脱家族化の特徴としてケアサービスの脱家族化の遅れ

が指摘できる。「3歳児以下の公的保育の利用率」が OECD平均の 35%を超えたことはこ

図 4 「イタリアの育児の脱家族化の時系列的変化」

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れまでない。この大きな要因は、”Asilo nido” を利用できる条件が「第二共和制」以降、

各自治体によって定められ、それがイタリアの南北格差を強化してしまっていることがあ

げられる。イタリア政府統計局の調査によると、保育サービスを拡充させたのは、こうし

た政策に積極的な北部であり、南部では遅れがみられる(ISTAT 2014)。そのせいか、イ

タリアの「3歳児以下の公的保育の利用率」は 2000 年代以降も 20%前後で OECD平均の

35%と比べてもかなり低い割合である(PERFAR 2014)。

ケア費用に関して 1990 年代から現在までイタリアに動きがなかった点についてもその

要因を述べなければならない。イタリアが育児休業制度を開始したのは、1977 年であった。

80 年代の育児休業制度の内容を OECD諸国で比較すると、イタリアは早くに産前産後休

業制度と給付付きの育児休業制度を備えた国の 1つであった。そのために、「ケア費用の

脱家族化」が社会問題化されることなく、2000 年までにこうした支援の方策が変更される

ことはなかった(Knijn and Saraceno 2010)。

育児休業制度に変更がみられなかった一方で、その他の制度によって「ケア費用の脱家

族化」は進められている。今回の分析では「ケア費用の脱家族化」の変数に育児休業制度

しか用いていないが、これ以外の該当する制度として、Contributo babysitting o asili

nido(ベビーシッター及び保育施設に対する助成)がある。この制度下においては、1か

月間の産前産後休業を取得後に職場復帰する母親は、ベビーシッターや保育施設などの公

的保育サービスを 6か月間利用するための給付を受けることができる。つまり、育児休業

制度を利用するか、働いて保育サービスを利用するか選択することができる。この制度は

2013 年に導入され、2015 年までの 3年間実施された。その後、2015 年に 1 年間の延長が

決定され、さらに翌 2016 年には 2018 年までの 2 年間の延長が決定した(Istituto

Nazionale per l’Analisi delle Politiche Pubbliche 2018)。そして 2018 年には給付額がそ

れまでの月額 300 ユーロから月額 600 ユーロへと増額している(Fanpage.it 2014)。

4-1-2 日本

図 5の日本のケアサービスの脱家族化を示す上向きの矢印は、イタリアと同様に上昇傾

向にあるが、OECD平均を示すラインには届いていない。日本のケア費用の脱家族化は

1990 年代にはすでに平均を超えていたが、2010 年の民主党政権時にその傾向が強化され

たためにケア費用の脱家族化を意味する右向きの矢印が生じた。日本は 1989 年の「1・57

ショック」を契機に、ケアサービスとケア費用の脱家族化を推進させていった。ケアサー

ビスの脱家族化は 1994 年にはエンゼルプランが施行され、保育施設の増設や 3歳児以下

の「ケアサービスの脱家族化」も進展した。2000 年代になってからも「脱家族化」の方針

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は続いた。2001 年には「待機児童ゼロ作戦」が発表され、保育所・保育ママなどのケアサー

ビスが拡大した。

こうした要因には、日本が定める保育責任の所在が未だに家庭にあることがあげられる。

日本では、保育所の入所資格に「保育に欠ける」家庭が対象になると明記されている。「保

育に欠ける」とは、保育は基本的に家族が行うことを奨励していて、場合に行政機関が保

育を担うことを意味する(新川 2015)。つまり、「ケアサービスの脱家族化」を政策面では

進めようとしながらも、「家族任せ」の保育政策を施行しているといえる。

2015 年の 4 月から「子ども・子育て支援新制度」が打ち出され、「保育に欠ける」とい

う文言が「保育を必要とする」に改訂された(内閣府 2015)が、子育ての公的責任の所在

は曖昧なままである。全国保育団体連絡会(全保連)は、保護者がどのような状況であっ

ても全ての子供に保育サービスを利用させるためには、国や自治体にサービス提供の責任

があると明言するべきであるが、現行制度では認可保育所以外の小規模保育に対する公的

責任の所在は曖昧だと批判している(全保連 2015)。

次に、「ケア費用の脱家族化」は、1990 年代に整備され、2009 年の政権交代の時により

積極的に取り組まれるようになった。1992 年には給付無しの育児休業制度が、「30 人以上

図 5 「日本の育児の脱家族化の時系列的変化」

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の従業員のいる企業において」という限定付きでスタートした。1995 年にはこの制限は廃

止され、中小企業でも育児休業制度が導入された。また、給付も 25%と諸外国に比べて低

額ではあるが、なされるようになり、「ケア費用の脱家族化」も進展を見せた。2010 年の

政権交代の際には、育児休業制度も制度内容が充実する。1990 年代の育児休業の給付額は

就業前所得の 25%であったが、政権交代以降、50%から 60%と大幅な増額が行われた。

育児休業制度以外で「ケア費用の脱家族化」を達成した点としては、民主党政権時代に

実施された「子ども手当」があげられる。それまでの旧「児童手当」もケア費用を脱家族

化していたといえるが、所得制限があった。しかし、民主党政権時にその制限が撤廃され、

義務教育修了までの子供を対象に月額 1万 3000 円を支給した。つまり、2010 年代に入っ

て制度が選別的な制度がユニバーサル化したことでケア費用の脱家族化が促進したともと

れる。

5 議論

ここまで、イタリアと日本の脱家族化の 1990 年代から現在にかけての移り変わりを図

示し、こうした変化が生じた要因について脱家族化政策の内容から考察してきた。最後に

本章では、脱家族化分析を通して家族主義福祉レジーム諸国を捉え直したい。

家族主義福祉レジーム諸国は家族主義の性質が強いとされる国々であるので、「家族主

義の 4類型」上では貧相な家族支援策を展開する「家族主義」に位置づけられると予想で

きるが、本研究の結果はこうした予想とは異なるものであった。

本研究で分析対象とした家族主義福祉レジームのイタリアと日本の二か国は、保守主義

福祉レジームであるドイツと近似する「支援された家族主義」に分類された。保守主義福

祉レジームは国家、市場、家族の中でも家族が果たす役割が最も大きいとされる。

Esping-Andersenは保守主義福祉レジームの特徴として、「男性稼ぎ主モデル」を維持す

るような制度設計を組み、子供のケア責任が親にあると法的に明言したり、働く女性が不

利になるような課税をしたりというように、家族によるケアを強化しようとする性質が強

いという(Esping-Andersen 1990=2001, 1999 = 2000)。

本研究で用いた「家族主義の 4類型」によると、ドイツは「支援された家族主義」に位

置づけられるが、保守主義福祉レジームと「支援された家族主義」には親和性が見られる

とも考えらえる。なぜならば、「男性稼ぎ主モデル」を維持し、家族のケアを家庭内で完

結させるために、ケア費用を脱家族化させるという見方もできるからだ。日本とイタリア

の両国が保守主義福祉レジームに類似する形で脱家族化を進めているということは、両国

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が「男性稼ぎ主モデル」を温存するために女性が行う育児に経済的な支援を行っていると

も考えられるだろう。

また、イタリアも日本も同様に「支援された家族主義」に位置づけられたが、両国の育

児政策のターニングポイントを確認すると、そこには類似点と相違点を発見できる。

まず、イタリアと日本の育児の脱家族化の類似点の 1つ目として、ケアサービスの拡充

に遅れが見られる一方で、ケア費用の脱家族化が強化されるという特徴が発見される一方

で、保育サービスの拡充が遅れる原因には両国の相違点が見つけられる。イタリアは、南

北格差問題から保育サービスの供給に地域間格差が生じ、イタリア全体でみた供給量は低

く見積もられてしまう。日本は、待機児童問題にみられるように保育施設・サービスの不

足が生じている。また、保育の公的責任が不明瞭であることも問題視されている。

次に、ケア費用の脱家族化は 1990 年代にはある程度、脱家族化が進んでいる点も両国

で類似する。イタリアは、1970 年代にすでに給付付きの育児休業制度を整備していた。日

本も 1990 年代に育児休業制度を施行し、2010 年代には内容を充実させた。こうしたケア

費用の脱家族化を強化する傾向は 2010 年代になっても継続している。イタリアは

Contributo babysitting o asili nido(ベビーシッター及び保育施設に対する助成)を開始し、

その給付額を増やした他、日本は民主党政権時代に「子ども手当」を実施し、国内ではじ

めて所得制限のない手当を支給した。

最後に、家族主義福祉レジームである対象二か国が「支援された家族主義」内部で異な

る時系列的変化を見せながらも、同一の類型内に位置し続ける点について考察する。本研

究では 1990 年代から 2010 年代までの約 20 年間を対象に、日本とイタリアの二か国の脱

家族化の時系列的変化を捉えたが、両国がこの期間を通して異なる脱家族化の移り変わり

を示しつつも、「支援された家族主義」に居続けたことも示唆に富む。この20年間には、ユー

ロ危機とアジア金融危機、リーマンショックなどの経済危機が発生した。また、日本では

阪神淡路大震災や東日本大震災、イタリアではイタリア中部地震の被害が甚大であった。

このような社会変動の中では脱家族化に遅れることがみこまれるが、イタリアのみがユー

ロ危機に際して保育サービスの拡大が後退し、逆に日本は保育サービスも育児費用も脱家

族化した。しかし、「家族主義の 4類型」上においては、両国は「支援された家族主義」

に留まり続ける結果となり、育児政策の脱家族化の方針をレジームシフトが生じるという

ほど転換させることはなかった。なぜ、その他の国々が脱家族化の方針転換を迫られる中

で家族主義福祉レジームの両国が体制を維持したのかという疑問は残る結果となった。

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京都社会学年報 第27号(2019)

大木:家族主義福祉レジーム諸国における育児の脱家族化 67

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(おおき かなえ・博士後期課程)

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京都社会学年報 第27号(2019)

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De-familialization of Childcare in a Familialistic Welfare State:

A Comparative Research Study of Childcare Policies in Japan and Italy

Kanae OHKI

This study aims to investigate how the burden of childcare is distributed in Italian

and Japanese societies. Childcare is an issue where the public and private policy-

making spheres often overlap and clash. On the one hand, childcare is a private issue

and can be interpreted as a form of free labor in which the childcare burden is mostly

carried by women - stressing the inequalities often present in the division of household

chores. On the other hand, the topic of childcare is also a heavily politicized matter

where finding the right balance between access to family-provided and publicly

provided childcare is a challenge.

Italy and Japan are both good examples of countries where family-provided childcare

has, historically, been the most prevalent and they have, therefore, been categorized in

much previous research as having ‘familialistic’ welfare regimes - defined as

representing a policy system in which the family takes the primary responsibility for

family well-being. In contrast, changes over the past decades suggest a large-scale

trend towards ‘de-familialization’, as more childcare options are provided by the market

and public services are used to help reduce the family burden.

However, the analytical framework applied to the assessment of care needs in the

context of modern welfare regimes has often proven to be insufficient, and further

study is required on the effects of ‘de-familialization’. In order to help describe the

transition and assess the reasons behind the movement from the ‘familialistic’ system

towards ‘de-familialization’ that occurred between the 1990s and the 2010s, OECD data

from the Family Database and historical data on the Family Policy in Japan and Italy

was analyzed.

The results indicate that, in both countries, while parental leave systems have

expanded and become more widely available to parents and carers alike, the degree of

access provided to childcare-providing facilities still does not satisfy demand. These

findings support the hypothesis that the way in which current welfare regimes are

categorized may need to be reconsidered categorization of current welfare regimes is

changing.