■ はじめに ベントナイトは、粘土鉱物の一種であるモンモリロナイト を主成分として、石英、クリストバライト、長石、雲母、ゼオ ライトなどのケイ酸塩鉱物を副成分とし、カルサイト、ドロマ イト、ジプサムなどの炭酸塩鉱物や硫酸塩鉱物、パイライ トなどの硫化鉱物を随伴する弱アルカリ性粘土岩の名称 である。ベントナイトの主成分であるモンモリロナイトは、低 透水性、膨潤性などの性質をもつ。このため、産業廃棄物 や放射性廃棄物の処分場における人工バリアの1つとして、 ベントナイトの利用が検討されている。 ベントナイトを人工バリアとして利用する場合、ベントナ イト中のモンモリロナイトの含有量が重要となる。ベントナ イト中のモンモリロナイト含有量は、一般的に、モンモリロ ナイトがメチレンブルーを吸着することを利用し、ベントナ イトのメチレンブルー吸着量を測定して見積もる。メチレン ブルー吸着量測定の方法は、日本では一般的に日本ベ ントナイト工業会の標準試験方法(JBAS-107-91)が用い られている(日本ベントナイト工業会, 1977)。しかしながら、 このJBAS-107-91は詳細な試験方法についての記載がな く、実際の試験方法は試験者に委ねられているのが現状 である。メチレンブルー吸着量試験は、試験の手順のわ ずかな違いが結果に大きく影響することが経験的に知ら れている。そのため、詳細な試験方法が決められていな いという現状はベントナイトを人工バリアとして用いるにあ たって大きな問題点である。本研究では、メチレンブルー 吸着量試験方法について詳細に検討し、最終的には標 準化することを目指して研究を進めている。 ■ 活 動 内 容 本研究で行われているメチレンブルー吸着量試験法の 詳細は、堀内と高木(2012)を参照されたい。試験法の大 まかな流れとしては、ベントナイトを分散溶液に分散させ、 メチレンブルー溶液を加え、ベントナイトが吸着できる最 大のメチレンブルー量(飽和吸着量)を求めるというもので ある。本研究では、試験方法について、主に以下の点を 検討した。 1.ベントナイトを分散させる溶液の検討:日本ベントナイト 工業会の標準試験方法(JBAS-107-91)には、ピロリン酸 ナトリウム溶液を分散溶液として用いる方法が記載されて いる。本研究では、ピロリン酸ナトリウム溶液のベントナイト への影響を確かめるため、純水を分散溶液として用いて 試験を行ない、ピロリン酸ナトリウム溶液を用いた場合と比 較した。純水を用いて試験を行った場合、試験時間が日 単位で経過するとメチレンブルー吸着量が大きくなること がわかった。これは、時間経過によってベントナイト中の モンモリロナイトが膨潤する(層間に水を取り込んで膨ら む)ためであると考えられる。ピロリン酸ナトリウム溶液を用 いて試験を行った場合は、時間が経過してもメチレンブル ー吸着量は変化しない。ピロリン酸ナトリウム溶液は、時間 経過によってモンモリロナイトのメチレンブルー吸着量が 変化することを防ぐ効果があることが明らかになった。 2.分散の方法の検討:試料をピロリン酸ナトリウム溶液に 分散させる際、超音波分散がよく行われる。しかし、超音 波分散機の出力によって試験結果が異なることが経験的 に知られる。本研究では、超音波分散のベントナイトへの 影響を確かめるため、超音波分散を行わずに試験を行い、 超音波分散を通常通り行った場合と比較した。超音波分 散を行わなかった場合は、超音波分散を行った場合と比 べてメチレンブルー吸着量が少なくなる傾向が見られた。 3.ベントナイトが吸着できる最大のメチレンブルー量(飽 和吸着量)の求め方の検討:飽和吸着量は、ベントナイト 分散溶液にメチレンブルー溶液を加え、溶液の1滴をろ紙 上に落としたときのメチレンブルーのハローの残存状態か ら吸着限界を判定する方法(スポット法)によって簡便に求 めることができる。しかし、スポット法による判定は、試験者 によって異なる可能性があることが経験的に知られる。ス ポット法のほかに、ベントナイト分散溶液にメチレンブルー 溶液を加え、上澄み溶液のメチレンブルー濃度を吸光光 度計によって測定し飽和吸着量を求める方法(吸光光度 法)も知られる。本研究では、個人差が少ない飽和吸着量 の求め方の検討を進めている。 ■ 参 考 文 献 日本ベントナイト工業会, 1977, 日本ベントナイト工業会標 準試験方法 ベントナイト(粉状)のメチレンブルー吸着量 測定方法(JBAS-107-91) 堀内悠, 高木哲一, 2012, 産総研におけるベントナイトの メチレンブルー吸着量測定方法, 地質調査総合センター 研究資料集, No. 555 資 源 ・ エ ネ ル ギ ー ベ ン ト ナ イ ト の メ チ レ ン ブ ル ー 吸 着 量 試 験 方 法 の 標 準 化 に 関 す る 研 究 代表発表者 三 好 陽 子 ( み よ し よ う こ ) 所 属 ( 独 ) 産 業 技 術 総 合 研 究 所 地 圏 資 源 環 境 研 究 部 門 鉱 物 資 源 研 究 グ ル ー プ 問合せ先 〒 3 0 5 - 8 5 6 7 茨 城 県 つ く ば 市 東 1 - 1 - 1 中 央 第 7 T E L : 0 2 9 - 8 6 1 - 4 0 2 1 F A X : 0 2 9 - 8 6 1 - 3 7 1 7 y o u k o - m i y o s h i @ a i s t . g o . j p ■ キ ー ワ ー ド : (1)粘土鉱物 (2)モンモリロナイト (3)放射性廃棄物地層処分 P-29 ─ 31 ─