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固定価格買取制入門 -再生可能エネルギー普及の切り札- 産業技術総合研究所 太陽光発電工学研究センター 櫻井啓一郎 ver.5.1: 2011.9.28 ときどき改訂中 http://ksakurai.nwr.jp/R/slides/WhyFIT/
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SAKURAi's workshop - 固定価格買取制入門ksakurai.nwr.jp/R/slides/WhyFIT/WhyFIT-Seminar.pdf注意(おやくそく)...

Feb 11, 2020

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Page 1: SAKURAi's workshop - 固定価格買取制入門ksakurai.nwr.jp/R/slides/WhyFIT/WhyFIT-Seminar.pdf注意(おやくそく) ・この文書は、櫻井の独断にて作成したものです。官庁や所属組織の公式見解等ではありません。・この文書に記した内容には「示唆」や「予想」が含まれます。極力、正確と思われる内容を

固定価格買取制入門-再生可能エネルギー普及の切り札-

産業技術総合研究所 太陽光発電工学研究センター

櫻井啓一郎

ver.5.1: 2011.9.28

ときどき改訂中http://ksakurai.nwr.jp/R/slides/WhyFIT/

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注意(おやくそく)

・この文書は、櫻井の独断にて作成したものです。官庁や所属組織の公式見解等ではありません。

・この文書に記した内容には「示唆」や「予想」が含まれます。極力、正確と思われる内容を記述するように心がけていますが、「誠意をもって作成した」以上の保証はできません。また、個々の製品の具体的性能を保証するものでもありません。

・櫻井が作成した図や文章についてはCreative CommonsAttribution‐NonCommercial‐ShareAlike 2.1 Japan Licenseにて公開します。また、非商用の公的文書に限っては無制限の配布を認めます。(引用源が記されているものについては、そちらのライセンスに従ってください。)

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"固定価格買い取り制"って何?

英語で「フィードインタリフ」(feed‐in tariff, FIT)。

カリフォルニア州や欧州で開発された、

再生可能エネルギー(自然エネルギー)を普及させる手法の1つ。

各国での実績から、世界で最も有効とされる手法。

「固定価格制」「電力買い取り補償制」などとも呼ばれますが、最近は「固定価格買取制」の呼び方が普及しているようです。また「全量買い取り制」も、この手法の一つです(後述)。

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経済・エネルギー・環境問題への対処が同時に進む(末尾、背景解説スライドも参照)

再生可能エネルギーの導入理由地球温暖化問題やエネルギー資源枯渇問題

→このまま放っておくと、化石燃料の利用コストが上がってしまう→どのみちいつかは対処しないといけない

再生可能エネルギーの特徴:最初はお金も手間もかかるが…

→今後、化石燃料よりも安上がりになりそう(一部では、既になっている)

→エネルギー・環境問題への対策も進む

どのみち普及は確実視される当然、競争も激しいが…

→先を越されて輸入したりすれば、大きなリスク→先に手を付けといて輸出したりすれば、大きなチャンス

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助成が無いと?再生可能エネルギーは

必要だから買って早く安くして

待てばもっと安くなるんじゃないの?

まだ買いたくないなぁ。

電力会社 企業 個人

国内でたくさん売れないと、安くできないよ。もう海外生産だ

けにしようかなぁ。

生産・流通企業

ボランティアだけでは、普及は充分進まない

開発資金

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(少し前までの)日本の状況

出典:・日本における風力発電導入量の推移[NEDO, 2008]

100

80

60

40

20

0

総設

備容

量(G

Wp)

20302020201020001990年

風力目標(3GWp)

太陽光目標 50~100GWp、検討中

↓導入実績

風力 太陽光

日本における太陽光発電と風力発電の2006年までの導入実績および目標

注:GWp = ギガワットピーク50~100GWp分の太陽光発電設備は日本の年間総発電量の約5~10%分に相当

ボランティア的な取り組みだけでは、必要な量が導入できない

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

年間

導入

設備

容量(M

Wpま

たはMWth)

日本における再生可能エネルギーの

年間導入量の推移

風力

太陽光

地熱

太陽熱(MWth)

出典: NEDO, IEA‐PVPS, ソーラーシステム振興協会,火力原子力発電技術協会集熱器面積1平方メートル=0.7kWthで換算

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助成があると?助成するから、いまのうちに買いなさい。そのかわり、電気代(税

金)は少し高くなるよ。

売れるようにするから、安く造れるようにしなさい。助成

はだんだん減らすよ。国

電力会社 企業 個人

それなら、急いで量を増やして安くしよう。そうしないと競争に

負ける。

生産・流通企業

それなら、早いうちに買った方が得だな。うちでも入

れようか。

最初はお金がかかるけど、うまくやれば価格を早く下げられる

助成金(開発資金)

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日本の状況(~2010年)

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普及と生産コスト低減を速める(早期のコスト低減が利益を生み出すため)

価格

助成開始

市場価格

実質的な生産コスト

助成分(技術開発・設備投資へ)

普及量

助成によって普及ペースを加速(技術革新促進も期待できる)

助成の目的

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太陽電池の価格動向

出典:Solar Europe Industry InitiativeIMPLEMENTATION PLAN 2010‐2012

太陽電池は累計生産量が2倍になるごとに、2割ずつ価格が低減している(化石燃料が大幅に値上がりしているにもかかわらず)

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太陽光発電の価格動向の予測例

現時点ではCdTe型がプライスリーダーだが、他の種類の太陽電池も追ってくる平均的な系統電力コストも5,6年程度で下回り始めそう

→「排出量削減コスト」はどのみちマイナスになる(それまでの間が競争激しい)

スライド:ドイツ銀行PV Status and PathwaysSolar Photovolatic IndustryApr 2009 より

(米国における予測例)

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予めインフラ改造に投資して、化石燃料によるコスト増大リスクを和らげる

コスト

年月

エネルギーコストからみた助成の目的化石燃料のエネルギーコスト・新興国の消費増大・採掘コスト増大、質の低下・CO2排出コスト

再生可能エネルギー助成時のエネルギーコスト・産業育成コスト・インフラ改造コスト・価格低下(量産効果)・性能向上・自給率向上(価格安定)

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電力会社

再生可能エネルギーの発電事業者

(個人、企業など)

電力消費者(個人、企業など)

流通・販売保守

製造

雇用税金

波及効果(経済効果)

(社会)

国外へ輸出

輸出益

国外から輸入

(資金流出になる)

助成金

助成金

助成金

助成金の流れ

社会に還元されるように制度を設計・運用する

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普及ペースの保証が利益を増やす

計画性の保証

融資条件緩和

投資加速コスト減少

普及促進効果向上

ビジネスリスク減少

経済的利益増加環境保護効果増加

・普及ペースの維持

・コスト削減ペースの維持・投資リスク減少

・融資枠増加・利率減少

・量産規模拡大・技術開発促進・利払い減少

・普及量拡大・競争力向上

・コスト削減

この流れをスムーズに→利益増加妨げる→利益減少

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分類方法はいろいろあるが、例えば下記のように分類できる。

・固定枠(quota,obligation)制 …利用する量を義務づけるRPS制とも呼ばれる。日本も以前用い、それなりに成果。

通常、グリーン電力証書(TGC)を用いる。入札(tender)制もこの範疇に入る。補助金も多くの場合は予算額が決まっているため、この範疇に入る。

設備費用の直接助成、もしくは税額控除(investment tax credit)発電量に対する税額控除(production tax investment)はFITに近い。

・自主的努力(ボランティア)個人や企業による自主的導入NGO活動や寄附などの民間基金

・フィードインタリフ (FIT) 制 (固定価格制)再生可能エネルギーの買い取り価格を法律で決める

・買い上げ価格が一定:固定型FIT(定番の形態)・電力価格に一定のプレミアムを載せる:プレミアム型FIT、もしくはFIP

余剰電力購入(net metering) も制度次第ではこの1種に分類できる

再生可能エネルギーの普及策

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助成の効果:実例比較

1990 20040

導入

量(M

W)

イギリス

ドイツ

風力発電の導入量推移

(参考:Butler, 2006Comparison of Feed in Tariff, Quota and AuctionMechanisms to Support Wind Power Developmenthttp://www.dspace.cam.ac.uk/handle/1810/131635 )

普及量でもコスト低減でも、FIT制で強力に助成した方が顕著な効果(風力資源はイギリスの方が良質であるにもかかわらず)。産業の競争力にも大差がついた。

16

電力量当

たりの

コスト

同様の設置条件で比較した風力発電の買い取り額の推移

ドイツ(FIT制)

イギリス(入札→RPS)

0

・両国の風況を揃えて比較。・ドイツは最も高額な場合のコスト、イギリスは平均。

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陸上の風力発電における各国の実績比較(2006年)

‐1 0 1 2 3 4 5 6 7 8

イタリア

イギリス

ポーランド

ハンガリー

チェコ(FIP)

ベルギー

フランス

チェコ(FIT)スウェーデン

導入者の利益分(ユーロセント/kWh)

有効

0%

5% 

10% 

15% 

20% 

25%  スペインFIT        FIP

アイルランド

ドイツ

オーストリア

リトアニアFIT(FIP)クォータ/TGC

OPTRES, 2007および欧州機構 COM(2008)19 final を元に作成有効性 = 2020年までに現実的に追加可能

な容量に対する導入量の比率

各国における費用対効果の比較(風力)

実績から言って明らかにFITの方が無駄が少ない

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固定価格買取制のしくみ

年月

エネルギーの

買い取り価格(タリフ)

一度導入してしまえば、その後一定期間は買い取り価格(タリフ)が一定

Aさん導入

(10~20年間)

後から導入した人ほど低い額になる

Bさん導入

Aさん家の買取額

Bさん家の買取額

その時導入された設備に対する買取額(設備導入コストの低減に応じて、毎年調整する)

・導入時に、その後一定期間の買い取り額が決定する(導入時点で大体の収支が見積もりやすい)

・助成額の引き下げは、導入済みの設備には影響しない・買い取り額で導入ペースを調整できる

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税金

規則

罰則

FITの方がいい結果が出る理由

RPSなど

FIT

詰まるところ、人的要因で差が出る(利益で誘う方が結局は経済的に普及が進む)

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各団体・機関の評価EPIA (欧州太陽光発電産業協会):

投資の安全性 簡素性 実績 費用対効果 複数の技術の活用FIT ○○○ ○○○ ○○○ ○○○ ○○○Quota(RPS) ××× ××× ××× ××× ×××投資補助 ○ ○○ ○ ○ ○ボランティア × ○○ × ○○○ ×××

(EPIA, Supporting Solar Photovoltaic Electricity:An Argument for Feed‐in Tariffs, January 2008)

OPTRES (Fraunhofer ISIなど欧州の6つの研究機関による評価プロジェクト):・「FITは導入されたばかりの技術への当面の助成制度として適する」

(Assessment and optimisation of renewable support schemesin the European electricity market, OPTres, Feb 2007)

IEA(国際エネルギー機関)

「フィードインタリフ制度は、陸上の風力において、高い投資安全性と、低い制度・規制面での障壁、望ましい系統連系条件を整えた上で用いられた場合、幾つもの欧州諸国において普及促進を成功させている。助成水準は穏やかで、かつグリーン電力証書(TGCs)を用いるquota制(義務付け型)を用いる諸国の同様の制度よりも安い。」 (Deploying Renewables : Principles for Effective Policies (Sep 2008) )

IEAを含め、各公的機関・NGO・団体も推奨

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FITの導入状況

世界で最も広く採用されている。

何らかの再生可能エネルギー助成策を導入している国:83(うち先進国・新興国41、途上国42)

うち、FIT採用国:少なくとも50カ国+25州/県 (2010年初頭時点)特にこの5年間で急速に採用例が増加。

(REN21, Renewables2010 Global Status Report)

他の助成策と組み合わせる例も多い。FITと併用される助成策の例:

投資補助、低利融資、税控除等

最も一般的な(かつ実績のある)助成手法

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0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

300,000

350,000

400,000

1990 1995 2000 2005 2007 2010 2020 2030 2040 2050

発電

量(GWh)

ドイツ国内の再生可能エネルギー発電量と

総電力需要に占めるシェアの推移

地熱

バイオマス

太陽光

風力

水力

60%

44%

30%

14%

3.4% 6.3%

出典:Lead Study 2008, BMURenewable Energy Sources in Figures, BMU, June 2008

予測EEG導入(2000年4月)

StrEG導入(1991年1月)

ドイツの再生可能エネルギー発電の状況

(注:この他にスペインなど国外での発電分が加わる予定)

順調に進んでいる

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導入の実例(ドイツ)・助成の費用

総額が約45億ユーロ(2008年)・電力消費量の15.1%が再生可能エネルギーに(2008)

(→17% : 2010年)・経済効果(2008):

地域経済への波及効果:288億ユーロ関連雇用約28万人

・枯渇性エネルギーの輸入量を削減価格も抑制:50億ユーロぐらいの節約?(2008)

・温暖化ガスの排出量削減割合2010年で‐26%見込み(「京都」の‐21%は既に達成)

環境保護も経済成長も実現

出典: Renewable Energy Sources in Figures, ドイツ環境省(BMU)

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日本でも再生可能エネルギー導入は利益になり得る

日本での費用と便益の見積もりたとえば日本で2030年までに日本のCO2排出削減量11~12%分の再生可能エネルギー設備を導入したら?

・2030年までの累計買取総額(電力+熱):16~29兆円標準的世帯で平均約280~500円/月系統安定化費用(2020年までの累計):1.1~4.5兆円

・経済効果:粗付加価値額(直接効果除く):

2020年までの累計:25~34兆円2030年までの累計:46~60兆円

雇用創出:46~72万人・2030年に電力の約4分の1を再生可能エネで供給(+2000億kWh)エネルギー自給率は5%→17~19%に

・年間約1.4~1.6億トンのCO2排出削減(1.4~6.3兆円/年相当)京都議定書基準年比約11~12%に相当

参考:環境省「低炭素社会構築に向けた再生可能エネルギー普及方策について(提言)」、2010年2月

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関係者ごとの負担とメリットは?

助成

(安定化コスト)

電力消費者負担:助成金利益:

低排出の電力確保雇用や経済効果設備設置者

負担:初期投資・場所・保守利益:自前の電力

預金程度の利益?

電力会社負担:系統安定化コスト

国内発電ビジネス減少利益:燃料リスク低減

新たな商機

国・行政負担:助成金

制度管理コスト

利益:エネルギー安全保障経済効果環境保護

設備製造・関連産業負担:投資とリスク増大利益:開発加速資金獲得

輸出競争力強化

関係者それぞれに負担と利益が発生全体的には利益

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太陽光発電における全量買い取りと余剰買い取りの特徴

•節電を促す効果高い•現行設備の変更不要•余剰電力が少ないケースには不向き(余剰が少ないと助成水準調整が困難)

•平均的な個人住宅向き

•節電を促す効果薄い•現行設備は配線変更工事が必要•余剰電力が少ないケースにも向く

•公共・産業用には事実上必須•屋根の狭い家庭•電力会社自身の設備、市民発電所等

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まとめ・固定価格買取(FIT)制:リスクはあるが、期待できるリターンも大きい(どの助成方法でも共通だが、実績はFITが最も良い)

代表的なリスク:・大金が絡む・電気料金が上がる・助成水準調整失敗のリスク・他国との競争・計画とのずれを逐次調整する必要性

代表的なリターン:・低排出エネルギーによる自給率向上安全保障、枯渇性燃料リスク抑制

・経済効果国内景気・雇用、輸出益、波及効果

・環境保護、国際貢献等々

何もしない:ジリ貧→行き詰まり

積極活用:リスクとチャンス

上手に利用して、チャンスを掴み取って下さい

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補足資料、Q&A(ごちゃごちゃっと)

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一般家庭にとっては?

雇用創出・景気回復原油高騰時の負担抑制電力がより低排出に発電所に出資可能に?

・毎月の電気代が少し上がる・代わりに雇用状況や景気が良くなり、エネルギーや温暖化の心配も減る・自分も発電に参加できるかも (今後の法制度次第)

平均的な一般家庭

月数十円から始まり、最大500円程度の電気料金増加(20~30年程度)

負担(例)メリット

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自宅に設置した場合は?

電力価格高騰時の影響緩和非常時の電源確保預金程度の利益?

・それなりに大きな額で、かつ長期間の負担・順調ならば、最終的に(たとえば)預金程度の利益・電力価格の上昇時や災害時のリスクを減らせる

一般家庭で自宅に設置

初期投資 150~200万円程度(回収まで例えば10~25年?)

場所を提供(屋根など)保守・点検、故障リスク

負担 メリット

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余剰電力購入(net metering)余った分だけを買い取り

電力会社

導入者

全量買い取り(ドイツ式FIT)全発電量が買い取り対象(屋根の貸借に近い形)

導入者

自家消費電力料金と売電料金を相殺

相殺する

設置者からみた買い取り範囲による違い

節電意識向上余剰が少ない場合は不利将来電気料金が上がった場合は嬉しい

余剰が少なくても収支変わらない節電意識には繋がりにくい電気料金が上がった場合は悔しい?

どちらも一長一短

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主な普及促進策の分類

RPS普及量ベース

(技術プッシュ型、quota型)

入札(tender)

グリーン電力証書制 (TGC)

fixed型 (FIT)

premium型 (FIP)

発電税額控除(PTC)

投資税額控除(ITC)/設備等の補助金

税額控除(tax credit)/補助金

価格ベース(需要プル型)

・価格ベース型と普及量ベース型(需要プル型と技術プッシュ型、FITとquota)に大別できる。・税額控除は予算枠に縛られる点でquota制の範疇だが、PTCは制度次第でFIPに近くなる(後述)。・実際には複数の手法を組み合わせたりできるため、この分類も便宜的なものである。・日本の制度については後述。

価格で制御

義務づけ量で制御

(Production Tax Credit)

(Investment Tax Credit)

(Renewable Portfolio Standard)

(Tradable Green Certificate)

参考資料例:M.Mendonca, Feed‐in Tariffs (2007)IEA, Deploying Renewables: Principles for Effective Policies (Sep 2008)

固定価格

電力料金+プレミアム

(Feed‐in Premium)

(Feed‐in Tariff)

発電量に応じた助成

資本取得への助成

導入量を義務づけ

入札を利用

固定価格買取制度 (FIT)

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FITと税額控除の比較

税額控除には2種類あり、米国などで用いられている。予算枠の制限を受ける点ではquota制に分類できるが、FITに近い形態もある。

・Investment Tax Credit (ITC):設備導入時の費用に対する控除。日本の現行の設置時の補助金制度に近い。

・Production Tax Credit (PTC):発電した電力に対する控除。財源が違うほかはpremium型のFIT(=FIP)とほぼ同様。

ITCもPTCも、財源はどちらも税金である(対して、FITは電気料金)。

米国において一定の効果。ただしこれを主体にした場合は長期計画性が欠如しやすく、効果も不十分 (IEA, Deploying Renewables)。また払い戻しが無い場合は効果が薄い。FITとの併用は可能。

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stop‐and‐goになりやすい→投資の無駄を招く

01,0002,0003,0004,0005,0006,0007,0008,000

1990

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

(推定)

年間

導入

設備

量(M

Wp)

米国の風力発電年間導入量の推移

助成(PTC)失効73~93%の減少

失効前にPTC継続連続的な成長出典:AWEA

税金主体の助成だと不安定

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投資回収年数の影響

投資回数年数によって効果が大きく変わる(助成額の合計が結局同じでも)

出典:環境省「低炭素社会構築に向けた再生可能エネルギー普及方策について (提言)」

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助成水準

普及ペース

限界ペース

計画ペース

過剰助成市場過熱価格高騰

助成不足市場縮小価格高止まり

計画ペースからなるべく外れないように調整する

助成水準による普及ペース調整

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甘やかしすぎてもダメ例:スペインの太陽光発電設備の導入量と予測

EPIA, Global Market Outlook Until 2015

過剰助成により計画を大幅超過

助成水準を急速に削減市場崩壊・再構築

タイムリーな助成水準の調整が必要

計画外の増加に国内産業が対応できず、2008年は9割以上が輸入品になってしまった(助成は少なすぎても、多すぎてもいけない)

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太陽光にはFIT(FIP)が最適

試作・実証段階(第2世代バイオ燃料など)

高コストギャップ段階(太陽光発電など)

時間/発達段階

普及量

低コストギャップ段階(陸上風力発電など)

成熟技術

研究開発の支援(融資、税控除など)

FIT/FIP

FIP、技術別のTGCなど

TGC(グリーン電力証書)、排出権取引など

IEA, Deploying Renewables: Principles for Effective Policies (Sep 2008)を元に作成

ボランタリーな需要の喚起

発達段階ごとの推奨制度(IEAによる)

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価格

(発電原価)

発電量の差に応じて買い取り価格を調節・与える利益を必要最小限に抑える

・助成費用あたりの開発資源量を最大化する

買い取り価格(条件に応じて調節)

発電原価

設置した人が得る利益(どれも必要最小限)

低コストの案件 条件が悪すぎる案件は開発しない

やや高コストの案件(建物一体型等)

(例:段階的タリフ(stepped tariff))細かい調整もしやすい

FITは助成水準の細かい調整がやりやすい=限られた助成資金をより有効に使える

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再生可能エネルギーの発電事業者

電力

電力 代金助成金

電力消費者

代金助成金

電力会社自身が運営する再生可能エネルギー設備

電力会社

・制度の透明性が高ければ、電力会社自身も参加可能・結局は再生可能エネルギーの長所を活用できる→長期的なリスクを低減できる

・国内の送配電事業は増える?・海外事業などの基礎になる?

・買い上げが義務になる・電力の流れが変わるので、系統の強化等が必要→必要な費用を開示・請求する必要性あり

・国内発電事業は減る

事業モデルが変化していく損にも得にもなり得る

電力会社にとっては?

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国内でお金をかける理由普及を進める

暫くはお金がかかる(たとえば20年間で数兆円)

色々と手間もかかる

生産量が増える性能も上がる

競争力がつく普及も速くなる

自給・輸出できる(年数兆円?)温暖化対策が速く進む

化石燃料の使用量が減る波及効果も得られる

海外で安くなるまで待つ

暫くはお金がかからない

工場が海外に逃げる国の環境に合った製品が減る

流通コストが減らない

普及が進まない国産品の競争力も落ちる

貿易赤字要因に(年数兆円?)温暖化対策が遅れる

化石燃料使用量がその分減らない波及効果もなし

比較

比較比較

巨額の資金が必要だが、助成する方が結局は経済的

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公平なの?・全ての関係者について完全に”公平”にするのは無理。・特に、化石燃料に依存する割合が高い産業は影響が大きい。それが制度の目的の一つでもあるため、これは不可避。

・ビジネスモデルの変更を迫られる例も多々発生する。

・不公平性や変化の速度を許容できる範囲に収めながらエネルギー源の変化を促すことは可能。(実例:ドイツ)・国全体では利益になる。・低所得者層や大口需要家への過大な負担も抑制可能。・助成を用いてビジネスモデルの変革を助ける。従来モデルに代わる商機をなるべく提供する。

・たとえば欧州では炭素税を雇用調整の費用に充てて、転職や再教育の助けとしている。

・基本的には、積極的に商機獲得の努力をした者ほど報われる。

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金持ち優遇なの?

・巨額の費用が必要なので、「お金持ち」(投資家)の協力は必須。投資してもらって初めて、投資家以外の人も様々な形で利益が得られる。

・ 「金持ち」が投資して利益を得ること自体は、経済の仕組みそのもの。(今から共産主義に変えるというなら別だが…)

・利益を得るにはそれなりの負担も求められる。リスクもある。負担に応じたある程度までの利益ならば、正当と言える。

→「金持ち」がある程度の利益を得るのは健全。「儲けすぎ」は監視する必要あり。

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低所得者層の負担が増えるんじゃない?電力量料金単価の例(参考:東京電力 従量電灯B、2008年4月)

約18円約23円 約24円

00

120kWh 300kWh

普及促進費用の上乗せ分(たとえば0.2~0.5円/kWh、月あたり60~150円)

月あたりの電力消費量が少ない家庭は上乗せ額が少なくなるようにする(第一段の料金を下げて逆進性を相殺することも可能)

その他の対策を利用することも可能:・低所得者層への減税・生活保護の増額

等々。いずれにせよ、対策は可能である。

これに対し、普及促進は経済・エネルギー・環境のいずれの面からも必須。かつ、他の対策だけではこれらの問題への対処が遅れ、却って経済的リスクを増す。

低所得者層への負担は化石燃料によるものより少なく、制御可能。普及を遅らせれば、却って今後の経済的な負担が増えると予想される。

参考:平成20年の燃料費調整単価0.81~1.82円/kWh(月あたり250~550円)→化石燃料価格の変動の方がずっと影響幅が大きい。しかも一律のため低所得者層により大きな影響。

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FAQ: どんなところで配慮が必要?・利害関係者同士の対話

将来計画をあらかじめ共有しておく。生産企業、電力需要家、国民、電力会社、行政機関、、

・負担も利益もなるべく公平に大口電力需要家や低所得者層への配慮、系統安定化費用への配慮輸出利益確保→国内での経済効果誘発

・生産状況に合わせて助成をこまめに調整する実際の普及ペースと、生産コストの低減に合わせて助成水準をこまめに調整。

・助成の効果を見張る必要な設備投資や技術開発が行われているかどうかチェックする。開発資金を供給するために市場価格は暫く上がるので、実質的な生産コストも見張る。

・計画性を保つ少なくても多くても無駄が増える。特に計画より少なくなるのは投資を妨げ、結局は損。

・無駄の排除と利益の最大化速やかなコスト低減と普及が全ての経済的利益を生む。これを妨げる要因はなるべく排除。各種手続きをスムーズに。非経済的障壁を除去。

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FAQ: 世界のペースとはどう合わせればいい?世界の助成水準にある程度合わせる必要がある。

・高すぎると:・金がかかりすぎる・国外からの製品が大量に流入しすぎる

(流通コストを下げるのに有効なのである程度は構わないが、市場シェアを取られすぎるのは困る)

・価格の相場が上がりすぎて他国にも迷惑をかける

・低すぎると:・国内生産が伸びず、最終的には競争に負けて衰退する→風力発電機のごとく、ほとんど輸入になれば巨額の貿易赤字要因に?

太陽光発電におけるペース:年平均3~4割ずつ生産量を拡大2~3年ごとに倍増、実質的なコスト2割減

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助成は”市場を歪める”から駄目?・既存のエネルギー源はどれも、何らかの形で助成を受けている。

・原発の立地助成金、化石燃料への補助金(途上国等)、関税免税、外交・政治的支援(軍事・戦争含む)、等々

これは国の安全保障に直結するからである。”市場を歪めるから駄目”だというのであれば、既存のエネルギーも”駄目”ということになる。

・再生可能エネルギーの多く(バイオマス等除く)では、燃料が不要のため、運転費よりも設備価格での競争の方が重要である。運転費の影響が大きい電力価格市場での競争よりも、設備価格での競争の方がコスト低減に重要。

・短期的な電力価格だけで振り落とすのは、長期的利益を無視し、問題を先送りする行為。

・市場が”歪んでる”かどうかという抽象的な理由よりも、実際に普及が進み、価格が低減し、かつ費用対効果が高いことが優先される。(そしてこれまでの実績に照らして、FITに勝る方式はない。)

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”FITだと値段が下がらない?”事実に反する主張である。たとえばドイツの太陽光発電の設備コストは、この5年で半額になっている。

出典:BSW

(ユーロ/kWp)

ドイツにおける屋根設置型の平均小売り価格の推移(規模100kWp以下、付加価値税除く)

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FAQ: 他国ではFIT終了後はどうしてるの?近年効果を上げている国では、終了後は基本的に市場販売(自由契約)のようです。

・ドイツ:EEGから外れたものは市場で販売。発電事業者がEEGを利用せずに"green"市場で売る自由も既にあるようです。https://www.bmu.de/files/pdfs/allgemein/application/pdf/eeg_kosten_nutzen_hintergrund_en.pdf

・イタリア:net metering または自由契約http://dx.doi.org/10.1016/S1471‐0846(05)70453‐4

・スペイン:25年を過ぎたら安くした額に固定http://www.energies‐renouvelables.org/observ‐er/stat_baro/observ/baro184.pdf

ただしスペインは現時点で既にFIT/FIP/自由契約の3つの形態があり、発電事業者が選べます[Mendonca, 2007]。FIT/FIPより自由契約の方が魅力的になれば、そっちに流れるものと思われます。

・ポルトガル:15年もしくは21GWh/MWpを過ぎたら"market price"http://www.energies‐renouvelables.org/observ‐er/stat_baro/observ/baro184.pdf

自家消費しきれない余剰電力分だけを売る、net meteringになる場合が多いのではないかと考えられます(櫻井私見)。

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余剰電力分を安価に売るなどの契約形態が考えられます。

ポイント:・FIT期間中に大体の投資は回収できているはず

→ 助成制度としての効率を上げるため、期間終了後の売電収入は必要最小限にすべき

・ある程度以下には減らせない・設備所有者は、自家消費できる分は自分で使いたいはず・使える限りは使って貰わないと、全体として無駄になる

考えられる形態の例: 余剰電力買い取り(net metering)制に移行

・その時の電力料金制度などとも絡む話だが、おそらく設備所有者にとっては、自家消費分の電力料金を節約できるだけで継続使用のインセンティブは十分。

・余剰分は電力会社に安価で売る(たとえば5~10円/kWh程度?)か、蓄電池が安くなっていれば溜めておいて夕方に使うのも良いのでは。

FAQ: FIT期間終了後の売電は?(家庭用太陽光)

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51

10年で4倍以上に年20兆円以上のお金が国から流出

増大する化石エネルギー輸入額

参考:日本の貿易収支2004 12兆円2005 9兆円2006 8兆円2007 11兆円2008 2兆円(財務省統計)

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原油の価格予測例(2010)

予測は難しいが、コストは増加傾向。・質の低下(オイルサンドまで採掘する例も出現)・掘削コストの上昇(北極海の海底まで採掘)・油田あたり生産量の減少などが報告されている。

「石油が安い時代は終わった」 (IEA, WEO2010)

IEA, World Energy Outlook 2010

U.S. Energy Information Administration,International Energy Outlook 2010

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背景:日本のエネルギー自給率

日本のエネルギー自給率は先進国中で最低レベル

(環境省「低炭素社会構築に向けた再生可能エネルギー普及方策(提言)」より)

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各電源の技術的特徴太陽光:○ 資源豊富でどこでも使える、昼間のピークカット、輸出産業としての実績

△ コスト高め、時間や天候で出力が左右される太陽熱:○ 直射日光さえあれば高効率、蓄熱して安定した出力

△ 広い土地、高い日照率、高い気温が求められる風力: ○ 安い

△ 出力が激しく変わる、陸上は立地厳しい(洋上なら豊富)水力: ○ 柔軟性の高い出力

△ 水資源量が限られるバイオマス: ○ 貯蔵性・柔軟性が高い、既存設備との互換性

△ 燃料調達に手間がかかる、形態によっては環境性能悪し地熱: ○ 柔軟な出力、そこそこ安い、未利用資源多い

△ 立地(?)、建設のリードタイム原子力: ○ 稼働中は安定した出力、輸出産業としての実績

△ コスト増大のリスク、枯渇性、建設のリードタイム、汚染事故化石燃料: ○ 利便性に富む

× コスト高騰のリスク(枯渇性&温暖化ガスの排出量多い)重金属等の汚染物質の排出も多い(特に原油・石炭)

どれも一長一短。“万能の電源“は無い。経済的には化石燃料のリスクが最も大きい

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再生可能エネルギー発電のシェア

新設発電所の約1/3を占めている