特集 富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015 21 RGBワークフロー カラーマネジメントサービス RGB Workflow Color Management Service 要 旨 カラーマネジメント技術は、印刷・デザイン領域で 使用されるプリンターのカラーマネジメント技術と、 ディスプレイに用いられるカラーマネジメント技術 がある。近年は製造業でデジタル化が進んだことによ り、設計業務で大型ディスプレイやプロジェクターを 活用するなど、機器の使用方法が変化している。しか し、機器間の色が合わずにデジタル化の大きな課題と なっている。富士ゼロックスは、さまざまな機種の色 再現の環境を統一させることを目的として技術開発 を行った。この技術は、視覚特性を重視した色域圧縮 技術やモデリング技術、お客様環境を最適に構築する コンサルティングなどで構成される。ここでは、RGB ワークフローカラーマネジメントサービスの事例と して、具体的なワークフローの例を説明する。本サー ビスにより、今まで実現できなかったデジタル化や、 トータルコストの削減、新しい働き方といった価値を 提供できるものと考えている。 Abstract Color management technology deals with two different areas: printers used in printing and design, and displays. The recent progress made in digitization in the manufacturing industry has changed the usage of such devices as large displays and projectors, which are now utilized for design work. However, digitization isstill hampered by mismatching color between devices. Fuji Xerox has therefore developed a new technology aimed at creating a consistent environment to achieve color reproducibility equally on a wide range of devices. This technology consists of a gamut mapping algorithm focused on visual properties, modeling technology, and consulting technology that optimizes customer environments. This paper introduces examples of workflow based on the RGB Workflow Color Management Service, which can provide such new value as an unprecedented level of digitization, slashes in total cost, and a brand-new style of working. 執筆者 酒井 典子(Noriko Sakai) 岩渕 稔弘(Toshihiro Iwafuchi) デバイス開発本部 イメージングプラットフォーム開発部 (Imaging Platform Development, Device Development Group) 【キーワード】 カラーマネジメント、ディスプレイ、プリン ター、印刷、製造 【Keywords】 color management, display, printer, printing, manufacturing
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RGB Workflow Color Management Service - Fuji Xerox...特集 RGBワークフロー 富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015 21 カラーマネジメントサービス
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特集
富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015 21
RGBワークフロー カラーマネジメントサービス RGB Workflow Color Management Service
要 旨
カラーマネジメント技術は、印刷・デザイン領域で
使用されるプリンターのカラーマネジメント技術と、
ディスプレイに用いられるカラーマネジメント技術
がある。近年は製造業でデジタル化が進んだことによ
り、設計業務で大型ディスプレイやプロジェクターを
活用するなど、機器の使用方法が変化している。しか
し、機器間の色が合わずにデジタル化の大きな課題と
なっている。富士ゼロックスは、さまざまな機種の色
再現の環境を統一させることを目的として技術開発
を行った。この技術は、視覚特性を重視した色域圧縮
技術やモデリング技術、お客様環境を最適に構築する
コンサルティングなどで構成される。ここでは、RGB
ワークフローカラーマネジメントサービスの事例と
して、具体的なワークフローの例を説明する。本サー
ビスにより、今まで実現できなかったデジタル化や、
トータルコストの削減、新しい働き方といった価値を
提供できるものと考えている。
Abstract
Color management technology deals with twodifferent areas: printers used in printing and design,and displays. The recent progress made in digitizationin the manufacturing industry has changed the usageof such devices as large displays and projectors,which are now utilized for design work. However,digitization isstill hampered by mismatching colorbetween devices. Fuji Xerox has therefore developeda new technology aimed at creating a consistentenvironment to achieve color reproducibility equally ona wide range of devices. This technology consists of agamut mapping algorithm focused on visualproperties, modeling technology, and consultingtechnology that optimizes customer environments.This paper introduces examples of workflow based onthe RGB Workflow Color Management Service, whichcan provide such new value as an unprecedentedlevel of digitization, slashes in total cost, and abrand-new style of working.
(JapanColor2001Coated) Gamut of sRGB, AdobeRGB, and printer/printing device (Japan Color 2001 Coated)
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.9
1
0 51 102 153 204 255
輝度
/白
輝度
RGB値
sRGB コントラストが強い 中間階調の変化が大きい
中間階調の変化が大きい
sRGB
コントラストが強い
白飛びの例
黒潰れの例
髪の階調が消失
服・背景が消失
特集
RGBワークフローカラーマネジメントサービス
富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015 25
デバイスAの色域
デバイスBの色域
デバイスAの色域からデバイスBの色域への色変換例
本技術方式
色相保持方式色相保持方式
本技術方式本技術方式
色相保持方式色相保持方式
スプレイ上で表面性や質感の確認が可能となり、
モックアップの削減によるコスト低下が可能と
なる。
2.2.3 加法混色の精度
ディスプレイのようなデバイスでは、色を足
し合わせること(加法混色1))でさまざまな色
を再現することができる。たとえば、R(赤)
+G(緑)を足すと黄色を再現でき、G(緑)
+B(青)を足すと水色を再現できる。これら
のデバイスには、加法混色が担保されているデ
バイスと、加法混色が担保されていないデバイ
スが存在し、加法混色精度によって色再現が異
なる。図6に加法混色が担保されているデバイ
スと、担保されていないデバイスの色再現の違
いを示す。デバイスを構成する発光素子のR
(赤)、G(緑)、B(青)は同じだが、色を混ぜ
た場合の再現が異なる例である。たとえば、W
(白)は、加法混色が担保されているデバイス
では正しく混色される(W = R + G + B)が、
加法混色が担保されていないデバイスでは、正
しく混色されない(W ≠ R + G + B)ため、同
じ発光素子のデバイスでも再現する色が異なっ
てしまう。
3. トータルカラーマネジメント技術
「色のコミュニケーションミス」の原因であ
るデバイス間の色の差をなくすためには、デバ
イスの色域の違い、階調特性の違い、加法混色
の精度の違いを補正する色変換技術が必要であ
る。色域、階調特性が異なるディスプレイの色
を合わせるためには、色域圧縮技術(Gamut
Mapping Algorism)が非常に重要である。ま
た、加法混色の精度が悪いディスプレイの色を
合わせるためには、ディスプレイの色再現特性
を正確に把握するデバイスモデリングが重要と
なる。本章では、トータルカラーマネジメント
の要素技術である色域圧縮技術、デバイスモデ
リング技術について、詳細に説明する。
3.1 色域圧縮技術
色域が異なるデバイス間で色の印象を合わせ
る場合、表示デバイスで再現できない色変換目
標を、再現可能な「色変換目標に近い色」に変
換する必要がある。変換するにあたり、色の差
を数値化した「色差2)」という尺度を用いて、
色変換する方法がある。しかし、人間の感覚と
「色差」に差異が存在するために、「色差」が小
さい色に変換するだけでは、色の印象は合わな
い。そのため、これまで感覚的に近い印象に色
変換をする色域圧縮技術の研究がなされてきた。
色域圧縮方法の1例としては、Hue-angle
preserving minimum-dE* clipping(色相維
持色差最少‐クリッピング)方式3)といった方
法が知られている。この方式では、出力デバイ
スの色域が異なると、色味が色変換前後で変化
する不具合がある。図7に色相を統一して色域
圧縮を実施した場合の事例を示す。色相を保持
する色域圧縮方法では、青が紫に、赤がオレン
ジに色変わりしてしまう。このような課題を解
決するため、富士ゼロックスは、デバイスの色
図6 加法混色の担保・非担保デバイスの違い
Difference between devices that support and do not support additive color mixing
図7 色相維持の色再現
Color reproduction by hue-angle preserving minimum-dE* clipping
R G
B
R G
B
加法混色が担保されているデバイスで色変換
加法混色が担保されていないデバイスで色変換
色を混ぜたときの色再現が異なる
特集
RGBワークフローカラーマネジメントサービス
26 富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015
域に合わせて色の印象が近い色相に色を補正す
るアルゴリズムを開発した。色域に合わせて色
相を補正することで、どのような色域でも近い
再現を実現する。
さらに当社は、複数のディスプレイ、プロジェ
クター、プリンターの色再現特性の評価を行い、
色の印象が一致する階調因子を抽出し、階調特
性を非線形に圧縮変換する技術を開発した。従
来の線形変換方式では、彩度が低下し、薄暗い
再現となってしまうが、非線形変換方式(新た
に開発した技術)では、明るさと鮮やかさの印
象が維持され、色変換目標に近い再現を実現で
きている(図8)。そのため、色域に合わせた色
相補正と、非線形変換方式を使用した色域圧縮
技術を用いることで、マルチデバイス間でも見
た目の印象を近くすることができた。
3.2 デバイスモデリング技術
ディスプレイのようなRGB素子で再現され
る色再現特性のデバイスモデルとして、従来は
色変換マトリックス+1次元ルックアップテー
ブルが使用されてきた4)。しかし、この従来方
式のマトリックスモデルでは、加法混色法で色
予測を実施するため、加法混色が担保しないデ
バイスを用いる場合には、色の予測値と理論値
とに差が発生し、色を正確に予測することが困
難であった。当社は加法混色が担保されていな
いデバイスを用いる場合でも、高精度な色変換
を実現するため、プリンターのカラーマネジメ
ント開発で培ったデバイスモデリング技術を
ディスプレイに応用した。図9にデバイスモデ
ルの概念図の違いを示す。本技術は、混色で再
現される色を考慮した測色値と回帰式を用いて
デバイスモデルを作成する技術である。そのた
め、使用する混色のデータを効果的に選択する
ことで、色の予測値と理論値との差が小さくな
り、加法混色が担保されていないデバイスにお
いても、高精度な色変換が可能となった。従来
方式と、本技術を用いて色変換した場合の精度
検証の結果を図10に示す。本技術では、従来方
式と比較し、大幅に色の差が小さくなり、目標
に近い再現が可能となる。色の見えの違いが気
になる淡い微妙な色などにおいても、高精度な
色変換が可能となる。
3.3 トータルカラ―マネジメントのコン
セプト
本章で説明したトータルカラーマネジメント
技術により、プリンターだけでなく、ディスプ
図8 非線形圧縮変換
Nonlinear gamut mapping
線形変換(従来技術)
広い色空間の色彩分布
狭い色空間の色彩分布
トータルカラーマネジメント技術による非線形変換
広い色空間の色彩分布
狭い色空間の色彩分布
図9 デバイスモデルの比較
Comparison of device models
R
G
B
W
予測値と理想値と差が発生
*
予測値理想値
R
G
B
W
*
予測値と理想値と差は小さい
予測値 理想値
本来の階調特性
従来の予測階調特性 予測値 測色値理想値*
マトリックスモデル(従来技術) 本技術デバイスモデル
特集
RGBワークフローカラーマネジメントサービス
富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015 27
レイ、プロジェクターを含めたオフィスで使用
される機器のトータルカラーマネジメントが可
能となる。図11に当社のトータルカラーマネジ
メントのコンセプトを示す。オフィスで使用され
る機器のカラーマネジメントを実施することに
より、「色のコミュニケーションミス」が改善さ
れ、ワークフローのデジタル化が加速され、コス
ト削減やデザイン業務の効率化を実現できる。
4. サービス紹介と導入事例
4.1 RGBワークフローカラーマネジメン
トサービス
当社では、ディスプレイ、プロジェクター、
ゼログラフィ方式・インクジェット方式のプリ
ンターなど、すべての機器の色再現統一環境を
実現するためのサービスとして、RGBワークフ
ローカラーマネジメントサービス(以下CMS
サービスと称する)を開始した。CMSサービス
は、前章のトータルカラーマネジメント技術と
お客様の環境分析・構築を行うコンサルティン
グ、ディスプレイ機器の色補正を行う映像機器
で構成される。
ディスプレイ‐ディスプレイ間、ディスプレ
イ‐プロジェクター間の色補正は、ディスプレ
イ‐プリンター間の色合わせで培った色域圧縮
技術、デバイスモデリング技術を採用した。こ
れにより、異なる色域でも近い印象の色再現を
実現可能となっている。当社独自のデバイスモ
デリング技術と色域圧縮技術を使用して、3次
元色空間内の中間色も算出する。これにより、
高精度な色変換と、階調再現性を保つことが可
能となった。これらの技術をディスプレイだけ
でなく、インクジェット方式のプリンターにも
拡張して適用した。これにより、ディスプレイ
を用いたデザイン工程からプリンターによる印
刷工程まで、すべてのバリューチェーンでカ
ラーマネジメントが可能となり、上流から下流
まで一貫した色再現を実現する。CMSサービス
は、図12のように、機器の色合わせだけでなく、
お客様の環境分析やワークフローの確認を行っ
たうえで、構築環境の設計を行う。そのため、
さまざまな業種のワークフローに合わせた統一
環境の構築を行うことができる。
映像機器では、使用しているアプリケーショ
ンに依存せず、高機能ディスプレイでなくても
カラーマネジメントを可能にするため、当社の
映像伝送技術を用いて、ColorTranslator
図10 デバイスモデル技術の比較
Comparison of accuracy between matrix and Fuji Xerox modeling technology
図12 CMSサービスの流れ
Service flow of the CMS
図11 トータルカラーマネジメントコンセプト
Concept of total color management
コンサルティング
環境光分析 機器分析 業務分析診断レポート
作成設計
構築・運用
構築 運用設計保守
従来技術 本技術
色再現目標に近づく
問題のない範囲
大きい(色が異なる)
小さい(色が合っている)
特集
RGBワークフローカラーマネジメントサービス
28 富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015
TC-100A(以下ColorTranslatorと称する)
を開発した(図13)。ColorTranslatorは、各
種映像機器から出力される映像信号を色補正パ
ラメーターによって変換することで、さまざま
な映像機器で統一された環境の構築を実現して
いる。
さまざまな業種や業務にCMSサービスを導
入することで、設計業務環境、ショウルーム環
境、コンテンツ制作のデザイン環境、提案書作
成環境、一般会議室環境など、さまざまな環境
で「色のコミュニケーションミス」をなくすこ
とができるようになった。そのため、今までで
きないとあきらめていた働き方が実現できたと
いう声や、色調整時間をかけることが当たり前
と思っていた常識が変わり、本業に打ち込むこ
とができるようになったというお客様の声を頂
いている。本章では、具体的な事例として当社
のデザイン部門とアパレル業界の事例について
示す。
4.2 当社デザイン部門での事例
当社のデザイン部門では、プリンターの外観
デザインを行っている。プリンターの外観カ
ラーは、戦略的に選定しているが、カラーは形
状や表面テクスチャー(シボなど)により商品
イメージや操作性に大きく影響するため、さま
ざまな設計条件をCGソフトで再現し、デザイン
の絞り込みを行う。このとき、デザインの表示
サイズにより印象が大きく変わってしまうため、
実物大で再現し確認する。従来は、実物大を再
現した多数のモックアップによる確認や、大判
インクジェットにプリントして確認していた。
しかし、モックアップ制作には費用と時間がか
かり、大判インクジェットは色再現が異なるた
め、色調整に多くの時間を割かなければならな
かった。
これらの課題を解決するため、居室の個人
ディスプレイやプリンター、会議室の環境を統
一させるCMSサービスを導入した(図14)。会
議室については、フォルムや表面テクスチャー
の設計をデジタルモックアップとして表示でき
る環境構築を目的として、プロジェクターの機
器選定や映像のシステム構成、色再現の目標値
設定、色再現環境の構築を行った。居室につい
ては、既存機器の特性分析や色再現目標設定、
個人ディスプレイの色環境の構築などを行った。
●モニターとの接続
パソコン本体 モニターやプロジェクター
ColorTranslatorTC-100A
図13 ColorTranslator TC-100A
図14 デザイン部のCMSサービス
CMS service implemented in the design department
一貫した色に再現する様子を
ご覧いただけます
コンサルティング 構築・運用
環境光分析 機器分析 業務分析 診断レポート作成 設 計 構 築 運用設計保 守
個人の
ディスプレイ表示
共有大型
ディスプレイ表示
大判インクジェットのプリント物
プロジェクターの
出力表示
一貫した色再現を実現
複合機のプリント物
CMSサービス
特集
RGBワークフローカラーマネジメントサービス
富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015 29
また外観カラーのRGB値を決定する基本カ
ラーの作成を行った。
その結果、設計の効率化、モックアップ費用
削減、色調整工数削減の3つの効果が得られた
(図15)。以前の外観カラ―には、各自のディ
スプレイに合わせて異なるRGB値を使用して
いたが、個人ディスプレイ環境の構築と基本カ
ラー値の作成により、デザイン環境が統一され
た。これにより、複数メンバーでの業務におけ
る「色のコミュニケーションミス」や設計ミス
を低減させる環境が実現し、効率的に設計を行
うことができるようになった。
また、自席のディスプレイで設計したデータ
を会議室で表示してチーム討議を行う場合に、
設計意図と異なる色が表示されることがなくな
り、無駄な調整作業が不要となった。さらに、
会議室でのプロジェクターを用いたデジタル
モックアップ表示環境構築により、実物大のモッ
クアップ制作費用を50%削減することができた。
プリント環境では、複合機と大判インクジェッ
トプリンター、ディスプレイの色再現を統一す
ることで、大判プリントを使ったデザイン説明
資料で、設計意図を正しく伝えて議論すること
ができるようになった。これにより、従来イン
クジェットプリンターの色調整に原稿あたり半
日の工数がかかっていたが、意図したものを調
整なしで出力することが可能となった。
さまざまな効果を述べてきたが、デザイナーか
らはストレスなく本来業務を行えるようになっ
たことが、いちばんの効果であるとの声が多い。
4.3 アパレル業界での事例
アパレル業界では、衣料品のデザインを行う
場合、紙に手書きするケースやペンタブレット
などを用いて、アプリケーション上でデザイン
することが多い。手書きデザインの場合は、紙
をスキャンし、その電子画像の色調整はディス
プレイを見ながら行う。また、アプリケーショ
ンを利用する場合でも、ディスプレイを見なが
ら自身のデザインイメージを完成させる。しか
図15 当社デザイン部門でのCMSサービス導入例
Example of introducing the CMS service to our in-house design department
?
Beforeデザイン案作成 検 討
出力物
モックアップ制作
?
?
映像
多数のモックアップ
承 認
承認者
?
??
後戻り後戻り
After
デザイン案作成 検討モックアップ
モックアップ費削減
承認
承認者
Virtual Mockup
色調整なし 設計の効率化
デザイン環境統一 共通の色
色のコミュニケーションミス発生!色のコミュニケーションミス発生!
ディスプレイ画像映像
期間短縮コスト削減
色調整実施
出力物
特集
RGBワークフローカラーマネジメントサービス
30 富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015
し、デザイン画像を他のディスプレイで表示す
る場合やプリント出力すると、イメージしてい
たものと異なることが多い。この「色のコミュ
ニケーションミス」を回避するために、1つの
ディスプレイやプリンターに固定してデザイン
をする必要があり、デザインが完成するまでの
時間が長くなる。また、プリント時にはディス
プレイで見た色と異なる色で出力されるため、
プリント用に色調整が必要で、無駄な時間がか
かってしまう。これにより、納期までに十分な
デザイン検討ができないまま、あきらめてしま
うことがある。
この環境を改善するため、図16のようにプロ
ダクションプリンターのCMYKプロファイル
の作成と、複数のディスプレイの色補正、RGB
とCMYKを連携させるためのCMYKターゲッ
トプロファイルの作成・設定を行い、ディスプ
レイとプリンターの色再現環境を統一させた。
これにより、デザイン作成でプリントすると
きの後戻りがなくなり(図17)、色調整工数の
低減や出力枚数の削減などの効果が出ている。
また、デザインの提案書作成時に、同様の色再
現ができるディスプレイを用いることで、「色の
コミュニケーションミス」が低減されて、デザ
インチーム全体の制作期間が短くなり、多くの
案件に取り掛かることができ、競合他社との差
別化につながっている。
5. おわりに
本サービスは、さまざまな機器の色合わせを
行うだけでなく、機器の選定や色再現の管理を
図17 アパレル業界でのCMSサービス導入例
Example of introducing the CMS service to the clothing industry
デスプレイと出力物に色の差発生 同じ機種で再現が異なる
デザイン案作成 提案書作成
並行して作成可
デザイン案作成 デザイン決定 提案書作成 お客様提案
??
?
色のコミュニケーションミス発生!後戻り!
固定のPCでデザイン
提案書
Before
After
出力枚数減
ディスプレイと出力物色の差なし
複数のディスプレイでデザイン可能
A
BC
A
B
A
B
A
A
色のコミュニケーションミス発生!
A
BC
A
A
色再現が同じ
提案書作成期間短縮
短納期納品で他社に差別化
対応案件数増加
提案書
A
A
デザイン決定 お客様提案
A
A
ColorTranslatorColorTranslator
ColorTranslator
プリンター
CMYKプロファイル
図16 アパレルのCMSサービス
CMS service implemented in the clothing industry
特集
RGBワークフローカラーマネジメントサービス
富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015 31
行うことが可能となっている。これらを組み合
わせたサービスにより、さまざまな分野、ワー
クフローで今までと異なる働き方が実現すると
考えている。従来は、モノや人が移動して製造・
制作を行っていたワークフローに対して、各拠
点・各場所に、同じように見えるディスプレイ
環境を整備することで、モノや人が移動しなく
ても、離れた拠点のそれぞれのディスプレイを
通して確認することができ、あたかも同じ場所
で確認しているようなコミュニケーション環境
を構築することができる。
また、ディスプレイの表示への信頼性が大き
く改善することで、製造だけでなく、商品の販
売のスタイルも大きく変わることが予測される。
従来は、店舗で実物を確認しないと購入されな
かったものが、ディスプレイの表示を信頼して
購入されるスタイルに変化することが期待され
る。このように、ディスプレイ表示に頼るビジ
ネス分野を大きく進化させることで、製造や印
刷の領域におけるお客様の働き方の常識が、大
きく変化できるような価値提供を実現していく。
6. 商標について
Adobe、Photoshopは、Adobe Systems
Incorporated(アドビ システムズ社)の商
標です。
Japan Colorは、一般社団法人日本印刷学会
と一般社団法人日本印刷産業機械工業会の商
標登録です。
その他、掲載されている会社名、商品名は、
各社の登録商標または商標です。
7. 参考文献
1) 大田登: “色再現工学の基礎 ”, コロナ社,
(1997).
2) 大田登: “色彩工学”, 東京電機大学出版,
(1993).
3) I. Farup et al.: “Enhancing the SGCK Colour Gamut Mapping Algorithm”, The Second European Conference on Colour Graphics, Imaging and Vision, (2004).
4) R. S. Burns et al.: “A Generic Approach To
Color Modeling”, Color Res. Appl. 22, 318-325, (1997).
5) M. Sasaki, H. Ikegami: “The Continuous Color Prediction Model based on Weighted Linear Regression”, Program and Proceedings ICIS'02, TOKYO.
筆者紹介
酒井 典子 デバイス開発本部 イメージングプラットフォーム開発部に所属
専門分野:画像処理、画質設計
岩渕 稔弘 デバイス開発本部 イメージングプラットフォーム開発部に所属
専門分野:画像処理、画質設計
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◆アプリのご利用手順
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