平成29年7月3日発行 第245号 発行:一般社団法人 長崎県保育協会 長崎市茂里町3番24号 長崎県総合福祉センター 3F TEL.095-846-8871 No. 発行人 西 川 義 文 編集人 山 口 進太郎 購読料 一 部 55円 245 2017.7 皆さんこんにちは。今回﹁ほいくだより﹂に私の考えを述べさせていただく機会を頂戴し、若輩者の私が、と緊張しております。普段全く違う分野で生きておりますので迷いましたが私の強みである母乳育児についてお話させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。私が母乳育児に関心を持ったのは22 歳で助産師として社会に出て授乳困難例を多くみるようになってからです。それまでは、出産後母親が子どもに授乳することは当然で、自然の摂理くらいに思っていました。ところが、妊娠出産の次にくる問題の一つに授乳があったのです。もちろん何の問題もなく過ごされる方もいらっしゃいます。しかし、生まれたばかりの赤ちゃんがおっぱいを上手に含んでくれない、うまく乳頭を赤ちゃんの口に入れてあげられないといったことから始まり、おっぱいが痛い、出ない、出すぎるといった困りごとに直面する方も多くおられます。ほとんどの方が病院や産院で出産される昨今、授乳がうまくいくかどうかは病院・産院選びにかかっているところがあります。産後の入院期間は多くが7日未満です。その間にホルモンの分泌が変化し子宮が元に戻ろうとしますし、母乳を出そうと体が変化していきます。ホルモンの影響で心身に変化が現れる時期です。私は若い頃、入院中のお母さんが授乳する際に直面する問題をどのように解決すれば良いか分からず、いつも先輩助産師に教えて貰っては試すことの繰り返しをしていました。しかし、一向に良くならないケースもありました。そこで疑問に思った私は母乳育児のことを学ぶしかないと思い当時の﹁助産婦雑誌﹂のなかにあった長野県にある諏訪マタニティクリニックの乳房管理学の長期研修を受けることにしました。そこではデータをしっかりとり、その方の状態を根拠をもって把握し必要な手立てをとっていきます。短い入院期間で望まれる母乳育児に向けてしっかりサポートする体制です。私は当時27 歳でしたがここで助産師としてどうあるべきかを学びました。例えばお母さん方からしっかり話を聴くこと、知ったかぶりではその方のことを知ることはできません。それからお母さんが運転席で運転されるのを助手席からサポートするような24 時間仮免許運転中の運転席と助手席の関係であることなどです。皆さん、当然でしょ?と思われましたか。私も今はそう思います。でも当時はできておらず目からうろこだったのです。今では起きている現象がどういう理由によるものでお母さんの望まれる内容に沿ってどういう方法をとったら良いかを一緒に考えていくことができます。少しは使い物になる助産師になりました。そんな私が少し気になることがあります。入院中から根拠のない食事制限をされているケースがあることです。おっぱいが詰まりやすいので乳製品はだめよとか和食中心にしましょうといった内容です。入院中は具体的に説明しながらサポートされているのでしょうが、退院後御自宅でそうしなければならないと極端な考えになられている方がたくさんおられます。食道と乳腺体組織という乳汁を作るところは直結しているわけではありません。極端に制限することは要らないのではないでしょうか。他にも、痛くても授乳し続けることや硬くなった乳房をもみほぐすといった行為もあります。生活に影響がある制約や制限は科学的根拠に基づいた説明と理解の上に成り立つべきです。そういうことを考えても自分の望む出産育児をサポートしてくれる人に巡り合うことって大切になってきますね。母乳育児はとても素晴らしいものですが、たかが母乳されど母乳です。例えばテレビを見ながらただ母乳をあげるのであれば母乳に代わる物をしっかり目を見て話しかけながら授乳する方が良いことは誰もが考えられることでしょう。また、どんなに頑張っても母乳が足りないまたはほとんど母乳が出ない人は2割弱程になります。ということは2割弱以上の方がどんなに頑張っても母乳育児はうまくいかないことになります。母乳育児の素晴らしいところは赤ちゃんとのスキンシップに始まりアイコンタクト等を通し信頼関係を築いていくこと、栄養補給と免疫の授受、お互いの満足感を満たすことなど数えればきりがないほどです。しかし、母親が母乳をあげることに代わることはその価値を大きく下げることなくでき得ることです。本来の母乳育児の目的は目に見えない母乳も一緒にあげることなのですから。そして望んだような結果にならなかったとしても目に見えない母乳育児ができたと自信をもって保育者としての人生を生きていかれますように陰ながら応援しています。そんなサポーターが必要なときにそばにいることを忘れないでください。紙面を通して母乳育児について話す機会をくださった多くの皆様に深く感謝いたします。ありがとうございました。7月、梅雨明けと同時に、子ども達は、園庭へ飛び出してゆきます。片手に、虫とり網、もう片手に虫カゴの﹁虫とりスタイル﹂で。園庭には、バッタ、トンボ、カエル、カニ・・・▼子ども達の目は、大人よりも、だんぜん早く、様々な生き物を発見します。次々につかまえ、バケツのなかでカエルを泳がせてみたり、バッタの足をひっぱってみたり、あげく、虫カゴのなかで死なせてしまったりということも。一見、大人の私達から見ると、かわいそうで残酷に映ることが多々あります。見ているだけでもツライときもありますよね▼そのような子どもと生き物の関係について、ある講演会で講師の先生は、次のように語られました▼﹃私たち大人はそのような行動を止めたくなります。ですが、ここで一つ大切なことがあります。残酷に扱っているように見えるその行いは、子どもの場合と、大人が考えていることでは意味合いが全く異なってくるという一面があるということです。残酷に映る子ども達の行いのなかで、彼らは命を学ばせていただいているのです。足をもいでしまい心にチクッとする痛みを感じたり、かわいがっているつもりで死なせてしまったり。たくさんの死というものに立ち会わせてもらいながら、知識としてではなく命︵経験︶に触れさせてもらっているのです。これは言葉で100ぺん教えても育つものではありません。そして、私たち大人の役割は、そのような場面に遭遇したとき、子どものそばで、その﹁死んでしまった命﹂を大切に扱う姿勢を示してあげることではないでしょうか。一緒にお墓を作ってみたり、その命に手を合わせてみたり﹄というように語られました▼幼児期における、命の学び方について、考えさせられるお話でした。︵K M ︶松川 美代 助産師 昭和39年生まれ 長崎県立口加高校卒業 南大阪看護専門学校、奈良県立 医科大学附属看護専門学校助 産学科卒業 奈良県、東大阪市の病院産婦人科 勤務後諏訪マタニティクリニック で乳房管理法の長期研修修了 長崎県央看護学校で6年母性看 護学の専任教員として勤務 島原半島で訪問看護を始めて 13年目となる 目に見えない母乳育児を目指して母乳育児について母乳育児への関心直面する問題点少し気になることたかが母乳されど母乳