QbDを用いた新薬申請の 審査とGMP適合性調査 -現状及び課題- 医薬品医療機器総合機構 新薬審査第五部 松田嘉弘 品質管理部 森末政利
QbDを用いた新薬申請の審査とGMP適合性調査
-現状及び課題-
医薬品医療機器総合機構
新薬審査第五部 松田嘉弘
品質管理部 森末政利
本日の内容
審査の視点から
ICH Q8、Q9、Q10、Q11について
QbD申請の状況
審査の事例
審査における課題
調査の視点から
GMP調査とQbD
調査のポイント
調査の事例
QbDが実現すること
ICH Q8、Q9、Q10、Q11について
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ICH Q8(R2):製剤開発に関するガイドライン 平成22年6月28日付 薬食審査発第0628第1号
ICH Q9:品質リスクマネジメントに関するガイドライン 平成18年9月1日付 薬食審査発第0901004号、薬食監麻発第
0901005号
ICH Q10:医薬品品質システムに関するガイドライン 平成22年2月19日付 薬食審査発0219第1号、薬食監麻発0219第1号
ICH Q11:原薬の開発と製造(化学薬品とバイオテクノロジー応用医薬品/生物起源由来医薬品)に関するガイドライン(仮) 2012年にStep4到達見込み
Q-IWGの活動内容
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ICH Q8、Q9、Q10で述べられている、より進んだ品質保証
の考え方を促進させるための実施作業部会
(Implementation Working Group)
46個のQ&Aを作成
事務連絡(平成22年9月17日、平成23年8月29日)
日米欧3極で同じ内容のトレーニングワークショップを2010年に実施
トレーニングワークショップ資材はQ-IWGメンバーで作成(ICHのホームページからダウンロード可能)
Points to considerの作成
トレーニングワークショップの際に出された質問を基に、6項目について作成
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PMDAホームページ (www.pmda.go.jp)
QbD申請の状況(1)
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QbD品目の承認数 (2012年2月現在)
2008 2009 2010 2011
3 3 2 11
チャンピックス錠(ファイザー)
タイケルブ錠(グラクソ・スミスクライン)
リクシアナ錠(第一三共)
フェブリク錠(帝人ファーマ)
ネキシウムカプセル(アストラゼネカ) など
QbD申請の状況(2)
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審査中のQbD品目数 (2012年2月現在)
最近の傾向 実際にはリスクアセスメント及び実験計画法を踏まえ、デザインスペースを開発していても、承認申請書ではデザインスペースについては一切触れずに、複数のパラメータを幅で記載するだけのケースが増えている
→承認申請書への記載方法については引き続き検討が必要(該当するパラメータの範囲を変更する際には再度DSの検討が必要であることがわかるようにしておく必要がある)
国内企業 外資系企業
3 5
QbD申請の状況(3)
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QbD品目の対面助言数 (2012年2月現在)
2007 2008 2009 2010 2011
1 0 2 2 5
申込日を基準に累計
2010年に実施した日米欧3極でのトレーニングワークショップ
以降、QbD申請品目数、QbD相談品目数ともに増大
バイオテクノロジー応用医薬品/生物起源由来医薬品に関する
相談はこれまで2品目
最近は特にRTRTに関連する相談が多くなっている
審査の事例 リクシアナ錠(1)
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本剤は2010年に申請
RTRTが設定されている
審査の事例 リクシアナ錠(2)
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代替試験:性状、確認試験
RTRT:製剤均一性、溶出性、含量
審査の事例 リクシアナ錠(3)
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溶出性に影響する因子を特定し、DoEにより溶出性の予測モデル(溶出率計算式)を設定→RTRT
サクラ錠の例のように、実際に溶出性を数学的モデルで保証することは可能か?
審査の事例 リクシアナ錠(4)
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RTRTの溶出モデルに対する審査員の視点
溶出試験(パドル法、UV)の試験条件は適切に設定されているか?
溶出性に影響する因子の検討は適切か?
本剤の例では申請後に管理戦略の概念を変更している→変更しなければならなかった理由は?またその変更はモデルの構築にどのような影響を及ぼすのか?
モデルのバリデーション、ベリフィケーションは適切か?
ライフサイクルを通じて、モデルの検証は必須
モデルの能力は?
予測モデルとしての限界
不確実性
審査の事例 リクシアナ錠(5)
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高インパクトモデルの中でも、代替指標による出荷判定が行われるケースは、一番リスクの高いケースであると認識
本剤のケースは申請後にモデルの再構築も行われており、モデルの再構築が必要となった経緯については、審査の重要なポイントの1つとなる
審査の事例 リクシアナ錠(6)
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イノベーションの推進には、企業と行政が一緒になって取り組んでいくことが必要
今回のケースでは
再構築されたモデルは、申請時と比較して溶出性の変動因子がより網羅的にかつ体系的に検討され、抽出された各変動因子と溶出性の関係も適切に検討されたと考えられた
メンテナンスプログラムにより、モデルの継続的な維持管理と改善が適切に実施されていくものと考えられた
一方で、代替指標によって溶出性を評価することへの経験が十分得られていない状況下では、市販直後から溶出試験も併行して行っていくことで、実績を積み重ねていく必要もある
審査における課題
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品質審査員として、引き続き、以下の点に関する知識・理解を増強していく必要がある
製造プロセス
数学的予測モデル
プロセス解析工学 など
GMP調査員や外部専門家との協力
企業とのコミュニケーション
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QbDに対するPMDAの取り組み
品質審査員のGMP調査への同行
品質審査員間の定期的なミーティング
QbD申請・相談に対する部横断的な協力体制
外部専門家との協力体制(研究班への参加)
EMA-FDAのQbDパイロットプログラムへの
オブザーバー参加
QbD評価 プロジェクト
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GMP適合性調査
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QbDを用いた 製造・品質管理への調査に向けて
GMP調査とQbD(1)
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QTPP
• 製品プロファイルの設定
CQA
• 品質特性の抽出
CPP(デザインスペース)
• リスク評価
• DoE:多変数による数学的解析
管理戦略
• 工程理解、知識に基づく
開発 技術移転 商用生産
QbDの情報
• デザインスペース
• 多変量、数学的解析
スケールアップ
• 影響因子の評価結果
製造法、試験法
• 移管に際してのマスタープラン
バリデーション
• 結果考察
• QbD、数学的解析結果の検証
工程監視
• 工程管理・規格試験の結果
• 年次レビュー
• 変更管理(影響評価)
• 逸脱管理(CAPA)
技術検討
• CPPの見直し
• DOE、デザインスペース見直し
工程の検証
• 再バリデーション
工程の監視
• Lifecycle
• 知識の蓄積
GMP調査とQbD(2)
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品質照査(変更、逸脱)
知識管理として活用
技術移転
変更管理、逸脱管理の基礎的判断資料
開発部門の関与を明確化
GMP組織に位置付ける、又は
GMP部門から開発部門への作業依頼手順を整備
生産部門と開発部門の協調的作業
知識を共有し、工程理解に寄与できる体制
医薬品品質システム - Q10
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GMP
医薬品開発 商業生産 製品の終結 技術移転
治験薬
経営陣の責任
製造プロセスの稼働性能および製品品質のモニタリングシステム
是正措置及び予防措置(CAPA)システム
変更マネジメントシステム
マネジメントレビュー
医薬品品質
システム要素
知識管理
品質リスクマネジメント
達成のための
手法
調査のポイント(1)
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製造工程(デザインスペースを採用)
技術移転内容を確認
CQAs、CPPなどの設定根拠
デザインスペースに関する数学的解析結果及びDoEの検証結果
管理戦略の妥当性評価結果
管理戦略と実際の製造管理の同等性を確認
プロセスパラメータの基準値の妥当性を確認(PV計画書/報告書)
調査のポイント(2)
規格及び試験法(RTRTを採用)
最終出荷試験と代替法との相関確認した報告書
RTRTで逸脱をした場合の対応
最終出荷試験をもって替えることをしない
工程での異常時に、製造所が対応できる体制であるか
測定機器等が故障した場合の手順
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調査のポイント(3)
ライフサイクルを通じた継続的改善のためのモニタリングプランの確認
定期的品質照査
変更管理、逸脱管理
知識管理の手順
管理全般にリスク評価手法をどのように適用しているか
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調査の事例 リクシアナ錠(1)
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調査の事例 リクシアナ錠(2)
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調査の事例 リクシアナ錠(3)
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調査の事例 リクシアナ錠(4)
代替試験:性状、確認試験
RTRT:製剤均一性、溶出性、含量
CQAとして設定
デザインスペースを構築
溶出性に影響する因子を特定し、DoEにより溶出性の予測モデル(溶出率計算式)が設定
溶出性を数学的モデルで保証
プロセスバリデーションにより検証
ライフサイクルを通じたモデルの適格性を検証
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QbDが実現すること
経営層による高い品質保証の明示
高水準の技術力
リスクに応じた製造管理、及び品質管理
高度な品質システム
製品ライフサイクルを通じた高度な品質保証
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企業活動の牽引
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企業活動のグローバル化を促進する
市場の信頼性
規制当局からの信頼性
ご清聴ありがとうございました。
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http://www.pmda.go.jp/