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* 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター 地圏資源環境研究部門 〒 305-8567 茨城県つくば市東 1-1-1 中央第 7 Research Institute for Geo-Resources and Environment (GREEN), Geological Survey of Japan (GSJ), National Institute of Advanced
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モンドの安定領域である高圧,高温条件下で焼結した。PDC 素材の組成は,Miess and Rai(1996)や Paggett et al.(2002)等が示した一般的な組成(ダイヤモンド粒径が 4 ~ 30 µm,Co 含有量が 6 ~ 11 vol%)を参考に設定した。焼結後の PDC カッター素材は直径 8.2 mm のカッター形状に加工(以下,開発品 A という)する一方で,市販されている PDC カッター素材を同様の寸法・形状に加工した。Fig. 2 に加工後の PDC カッターの外観を示す。市販の PDC カッター素材は,一般掘削用途における耐摩耗性重視型から 1 種類および耐衝撃性重視型から 1 種類を選定した。なお,PDC カッター素材そのものの耐久性を把握することを目的に,PDC カッターにはチャンファ加工を施していない。ここで,チャンファとは PDC カッター素材のダイヤモンド層外周の面取りのことである。
これらの PDC カッターを用いて掘削耐久試験を行うために,タングステン等を主成分とする金属粉を焼結し作製したビットボディに,それぞれの PDC カッターを8 個ロウ付けした外径 66 mm,内径 44.8 mm のコアビット(以下,66 mm コアビットという)を作製した。Fig.
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Fig. 3 Configuration of a 66 mm core bit.
Fig. 4 Relationship between drilled length and bit weight in durabil-ity tests using 66 mm core bits.
Fig. 5 Relationship between drilled length and bit torque in durabil-ity tests using 66 mm core bits.
3 に,66 mm コアビットの仕様および概要を示す。PDCカッターのバックレーキ角およびサイドレーキ角は既往の研究(唐澤ほか,1991)を参考に,ともに -10° とした。なお,ロウ付け過程における650 ℃までの加熱によって PDC 素材に変化が生じてないことを別途確認した。
掘削耐久試験に用いた掘削試験装置は,掘削速度を一定に保つ等の自動制御機構を装備し,いずれも最大値でビット荷重 294 kN,トルク 2.94 kN·m,ビット回転数500 rpm,掘削流体流量 220 L/min の能力を有する。岩石供試体は幅 500 mm,奥行 500 mm,高さ 800 mm の稲田花崗岩であり,その一軸圧縮強度は約 220 MPa である。1 個の岩石供試体で長さ 0.75 m の孔を 16 孔掘削したが,岩石供試体間の強度のばらつきを考慮し,2 丁の 66 mm コアビットで 8 孔ずつ掘進しながら試験を進め,1 丁につき 96 m を掘進した。掘削耐久試験中は自動制御システムによって掘削速度を 7 cm/min で一定に保ち,ビット荷重およびビットトルクを連続的に計測した。また,掘削長 6 m 毎に PDC カッターのチッピングや摩耗状況を観察した。
Fig. 4 および Fig. 5 に,開発品 A,耐衝撃性重視型および耐摩耗性重視型,計 3 種類の PDC カッターを有する 66 mm コアビットに関して,掘削長に対するビット荷重およびビットトルクの変化を示す。Fig. 4 に示すように,掘削が進むにつれて 66 mm コアビットの掘削性能は低下し,掘削速度を一定に保つために必要なビット荷重は増加している。Fig. 4 から,開発品 A を装着した66 mm コアビットが他よりも低いビット荷重によって一定の掘削速度を維持できたことがわかる。Fig. 5 に示
すビットトルクも掘削長が増すとともに増加する傾向であるが,その中でも耐摩耗性重視型のビットトルクが最も大きく,開発品 A と耐衝撃性重視型に大差は見られなかった。掘削長の増大に伴って PDC カッターの摩耗が進展するとビットトルクが増大することが報告されている(Karasawa et al., 2016)。
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Fig. 6 66 mm core bit equipped with PDC cutters, Type-A, after durability test using Inada granite (drilled length is 96 m).
Fig. 6 に 96 m 掘削後の開発品 A を装着した 66 mm コアビットの写真を示す。カッター (a) ではダイヤモンド層に顕著なチッピングが見られ,また肉眼で確認できる程度の大きなクラックが発生した。カッター (b) では,チッピングのみならず PDC カッターに生じた摩耗面が超硬合金層にまで及んでいることが確認された。このダイヤモンド層のクラックは掘削中の衝撃疲労によって生じたと考えられるため(Kanyanta et al., 2014),地熱井掘削用には PDC 素材の耐衝撃性能の向上が必要であると考えられる。ここで,Fig.4 の結果から,仮に開発品A の耐衝撃性を向上させた PDC カッターを用いて同様の試験を行った場合,ビット荷重が増加する可能性が示唆される。坑井掘削用ビットには,掘削速度のみならずビット荷重やビットトルクに関しても妥当な範囲であることが求められるため,耐衝撃性と耐摩耗性とのバランスを考慮しつつ,PDC カッターの改良を進めることが重要である。
石油井および地熱井の掘削においては,多くの場合最終孔径が 8-1/2” である。8-1/2”PDC ビットに装着される PDC カッターの直径はその大部分で 8.2 mm よりも大きく,例えば直径 13.44 mm でチャンファ加工を施された PDC カッターが搭載されている。そこで,径が大きい PDC カッターの製造技術の確立を視野に入れながら,耐衝撃性能の向上と耐摩耗性能との両立を意図した PDC 素材で直径 11 mm の PDC カッターを上記の方法で新たに焼結し,チャンファ加工を施した。これを開発品 B という。また,開発品 A と同じ PDC 素材で,開
発品 B と同じ寸法・形状に加工した PDC カッターを製作した。このチャンファ加工を施した PDC カッターを開発品 C という。さらに,耐衝撃性重視型の市販品を,開発品 B と同じ寸法・形状に加工した PDC カッターを用意した。以上 3 種類の PDC カッターを 8 個ずつ装着した,外径 71 mm,内径 44.8 mm のコアビット(以下,71 mm コアビットという)3 丁を作製し,66 mm コアビットと同様の掘削耐久試験を実施した。コアビットの外径を 71 mm に変更したのは,PDC カッターの直径を8.2 mmから 11 mmに変更したことにより,ビットボディの寸法を大きくする必要が生じたためである。
開発品 B と開発品 C,ならびに市販品の PDC カッターを装着した 71 mm コアビットそれぞれについて,ビット荷重と掘削長の関係を Fig. 7 に示す。いずれの 71 mmコアビットも掘削長の増加につれてビット荷重は増加する傾向にあるが,市販品の PDC カッターで最もビット荷重が大きく,開発品 C のビット荷重は開発品 B のそれに比べて概して小さい。また,開発品 B および開発品 C を装着したコアビットは掘削速度 7 cm/min を維持した状態の下でいずれも掘削長 162 m に到達した。その一方で,市販品の PDC カッターを装着したコアビットは,掘削長 140 m 付近でビット荷重が急増し 80 kNを超えたため,掘削長 144 m で掘削耐久試験を中止した。66 mm コアビットによる掘削耐久試験の結果と比較すると,掘削長の増大に伴う 71 mm コアビットのビット荷重の方が概して大きい。これは,コアビット径ならびに PDC カッター径が大きくなったためと考えられる。
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Fig. 7 Relationship between drilled length and bit weight in durabil-ity test using 71 mm core bits.
Fig. 8 71 mm core bit equipped with PDC cutters, Type-B, after du-rability test using Inada granite (drilled length is 162 m).
Fig. 9 3D CAD modeling of 6-1/4” PDC bit.
Fig. 8 に 162 m 掘削後のコアビット(PDC カッターは開発品 B)の写真を示す。ダイヤモンド層には小さなチッピングや摩耗が見られるものの,66 mm コアビットによる掘削耐久試験で観察されたような大きな欠損は見られなかった。また,この欠損状況は開発品 C でも同様であった。
開発品 A および開発品 C におけるチッピング等の欠損状況を比較すると,チャンファ加工を施すことによってカッターの欠損が抑制され,掘削耐久性が向上していると考えられる。また,耐衝撃性の向上を意図したPDC 素材の組成を有する開発品 B のビット荷重は,耐衝撃性重視型の市販品のそれよりも小さく,開発品 Cより僅かに大きいものの,開発品 C と概ね同等の掘削耐久性を示したと考えられる。
Fig. 13 Relationship between bit weight and rate of penetration (R. O. P.) for Inada granite in drilling tests (Laboratory experiment ①) by Bit 6Q-B (solid lines) and Bit 6Q-K (broken lines) before durability test.
Fig. 14 Relationship between bit weight and R. O. P. for Inada granite in drilling tests (Laboratory experiment ③) by Bit 6Q-B (solid lines) and Bit 6Q-K (broken lines) after durability test.
Fig. 15 Relationship between drilled length and bit weight for Inada granite during Laboratory experiment ② and after Laboratory experiment ③ .
本研究で作製した直径 8.2 mm の PDC カッターを搭載した 66 mm コアビットによる掘削耐久試験では,ダイヤモンド層に顕著なチッピングや肉眼で確認できる程度の大きなクラック,超硬合金層にまで及ぶ摩耗面が観察された。しかし,新たに作製した耐衝撃性能の向上と耐摩耗性能との両立を意図した直径 11 mm の PDC カッターにチャンファ加工を施し,71 mm コアビットによる掘削耐久試験を実施したところ,ダイヤモンド層には小さなチッピングや摩耗が見られたものの,66 mm コアビットによる掘削耐久試験時のような大きな欠損は見られず,PDC カッターの掘削耐久性が向上したと考えられた。
Kanyanta, V. et al. (2014) Impact fatigue fracture of polycrystalline diamond compact (PDC) cutters and the effect of microstructure, International Journal of Refractory Metals and Hard Materials, 46, 145–151.
Karasawa, H. et al. (2016) Experimental results on the effect of bit wear on torque response, International Journal of Rock Mechanics and Mining Sciences, 84, 1-9.
Anonymous (2006) Roller cones vs. diamonds: a reversal of roles, Oil & Gas Journal, 104 (7), Supplement.
Miess, D. and Rai G. (1996) Fracture toughness and resistance of polycrystalline diamond compacts, Materials Science and Engineering, A209, 270-276.
Paggett, J. W. et al. (2002) Residual stress and stress gradients in polycrystalline diamond compacts, International Journal of Refractory Metals & Hard Materials, 20, 187-194.
Radhakrishnan , V. et al. (2016) Conical Diamond Element Technology Delivers Step Change in Directional Drilling Performance, IADC/SPE-180515-MS.
Sustainable Japan Network (2012) サンディア国立研究所ら,地熱発電向けダイヤモンドビットの性能向上めざす,http://sustainablejapan.net/?p=1343, 2017/04/17 アクセス.
Scott, D. (2015) A bit of history: Overcoming early setbacks, PDC bits now drill 90%-plus of worldwide footage, Drilling Contractor/Innovating While Drilling, 71 (4), 60-68.
Schilling, J. et al. (2016) Innovative Conical Diamond Element Bit Significantly Reduces Drilling Cost of Laterals, IADC/SPE-180499-MS.