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PC コンポ橋(プレキャストセグメント工法)の施工について 一般国道 238 声問ふれあい橋 稚内開発建設部 稚内開発事務所 宮葉 斗夢 川村 勝幸 江川 倫法 まえがき PCコンポ橋は、社会的要請に応える べく道路橋の省力化、コスト縮減に対応 できる工法として、開発された構造であ る。従来形の合成床版桁、PCT桁は、 現場作業が多く、型枠および鉄筋組立て 作業の煩雑さ等の問題点を抱えていた。 このような背景の中、PCコンポ橋は プレキャストセグメント工法で製作し、 床版にプレキャストPC板を使用したP C合成床版とすることで、現場施工の省 力化、PC板と主桁の同時施工を行うこ とで工期の短縮を図ることが可能である。 また、工場製作によるPC板は、床版の 耐久性に優れる特徴がある。 本文では、一般国道 238 声問ふれ あい橋におけるPCコンポ橋の施工につ いて報告する。 1.橋梁計画 1.1 はまなす拡幅の概要 一般国道 238 号は、網走市を起点とし、 稚内市に至る延長 319.7km の幹線道路で あり、道北圏域の物流、交流、医療搬送、 地域の振興に大きな役割を担っている。 はまなす拡幅は、宗谷地方の空の玄関 口である稚内空港、重要港湾である稚内 港とのアクセス強化と市街地の交通混雑 の解消、交通安全の確保を目的とした 4 車線拡幅事業である。 Tomu Miyaba Katsuyuki Kawamura Michinori Egawa 図-1位置図
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PC コンポ橋(プレキャストセグメント工法)の施 …PC コンポ橋(プレキャストセグメント工法)の施工について - 一般国道238号 声問ふれあい橋

Apr 22, 2020

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Page 1: PC コンポ橋(プレキャストセグメント工法)の施 …PC コンポ橋(プレキャストセグメント工法)の施工について - 一般国道238号 声問ふれあい橋

PC コンポ橋(プレキャストセグメント工法)の施工について

- 一般国道 238 号 声問ふれあい橋 -

稚内開発建設部 稚内開発事務所 ○ 宮葉 斗夢

川村 勝幸

江川 倫法

まえがき

PCコンポ橋は、社会的要請に応える

べく道路橋の省力化、コスト縮減に対応

できる工法として、開発された構造であ

る。従来形の合成床版桁、PCT桁は、

現場作業が多く、型枠および鉄筋組立て

作業の煩雑さ等の問題点を抱えていた。

このような背景の中、PCコンポ橋は

プレキャストセグメント工法で製作し、

床版にプレキャストPC板を使用したP

C合成床版とすることで、現場施工の省

力化、PC板と主桁の同時施工を行うこ

とで工期の短縮を図ることが可能である。

また、工場製作によるPC板は、床版の

耐久性に優れる特徴がある。

本文では、一般国道 238 号 声問ふれ

あい橋におけるPCコンポ橋の施工につ

いて報告する。

1.橋梁計画

1.1 はまなす拡幅の概要 一般国道 238 号は、網走市を起点とし、

稚内市に至る延長 319.7km の幹線道路で

あり、道北圏域の物流、交流、医療搬送、

地域の振興に大きな役割を担っている。

はまなす拡幅は、宗谷地方の空の玄関

口である稚内空港、重要港湾である稚内

港とのアクセス強化と市街地の交通混雑

の解消、交通安全の確保を目的とした 4

車線拡幅事業である。

Tomu Miyaba, Katsuyuki Kawamura, Michinori Egawa

図-1 位置図

Page 2: PC コンポ橋(プレキャストセグメント工法)の施 …PC コンポ橋(プレキャストセグメント工法)の施工について - 一般国道238号 声問ふれあい橋

ヤード設置 工場製作

沓据付 セグメント運搬

緊 張

床版工

後 片 付

横 組 工

準 備 工

落橋防止装置工

伸縮装置工

橋面工

吊り足場解体

架設桁組立

架設桁解体

主桁セグメント製作工

吊り足場組立

主桁架設工

PC板据付

支 承 工

主桁セグメント組立工

仮 設 工

図-4 PC コンポ橋の施工

1. 2 声問ふれあい橋の概要

声問ふれあい橋は、 2 級河川声問川を

跨ぐ河川橋で 2 径間の橋梁である。架橋

地点は、日本海に面する稚内市街の沿岸

部から 300m に位置する。

上部工形式は、上下線2車線を分離し

たセパレート構造としている。

上部工形式; 2 径間連結PC合成床版橋

(PCコンポ橋)

下部工形式;逆T式橋台、壁式橋脚

基礎形式 ;杭基礎

橋 長 ; 70.10m

支 間 ; 33.40m@2

1. 3 上部工形式の選定

本橋は、架橋位置が海岸線から 300m

に位置するため、塩害対策を必要とする

橋梁である。PC コンポ橋は、工場製作に

より、高強度、高品質のコンクリートを

打設できることから、塩害に対する耐久

性に優れる。

稚内の気候は、 1 年を通して風の強い

日が多く、冬期になると風雪となり、時

には暴風雪に発展することもある。この

ため、冬期間の施工を工場で行える PC

コンポ橋は、施工性・安全性・維持管理

性に優れた工法である。

本路線は現国道から 200m 上流に架橋

するため、仮橋を必要とせず、施工ヤー

ドを橋台背面に確保することができる。

以上のことから、声問ふれあい橋は、

地域性、気候等を勘案して「 PC コンポ橋」

を選定した。

2.工事内容

2. 1 工事手順

声問ふれあい橋の上部工事は、平成 16

年 11 月から 1 年で施工し、平成 17 年 11

月の供用を行うこととした。PCコンポ

橋の施工手順は、図 -4 に示すとおりであ

る。 図-2 側面図

図-3 断面図

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図-5 主桁断面とブロック長

稚内の気候は、 1 年を通して風の強い

日が多く、冬期になると風雪となり、時

には暴風雪に発展することもある。この

ため、本橋の施工は主桁製作を冬期間で

行い、雪解け 4 月から主桁架設工、床版

施工を行うこととした。(表-1 参照)

2. 2 主桁製作

主桁のブロック数は、1本当たりの重

量が 127~ 129tf となることから、主桁搬

送時のポールトレーラ積載制限を考慮し、

図 -5 のとおり 5 ブロックに分割したセグ

メントを形成する。

主桁の製作は、使用材料の管理、製作

時の管理を工場内の ISO 品質管理基準に

適用できることから、品質および環境面

の向上を実現できる。また、耐久性につ

いては、水セメント比の低減を可能な限

り低く抑制し、耐塩害性に強い密実なコ

ンクリートを形成することとしている。

本工事でのコンクリ-ト配合は、表-2 の

とおりである。

場 所 打 ち の 場 合 に 比 べ て 全 天 候 型 で

ある外、熟練工の配置や鉄筋の加工・組

立て、コンクリート打設を日常的なサイ

クル施工ができることから、主桁施工の

不具合発生確率を低く抑えることができ

る(表-3)。セグメントの1本当たりの施

工日数は、 7 日であり現場で主桁を施工

する場合に比べて、 1 本当たり 2 日以上

を短縮することができた。また、環境面

表-2 主桁の配合

示方配合

新示方配合

1022 3.25 0.0914.5±1.5

130 406 83932.0 20 45.015±2.5

混和剤

助剤

2.97 0.083

単  位  量(kg/m3)

セメント

細骨材

粗骨材

130 371 853 10384.5±1.5

s/a

(%)

SL

空気量の範囲

(cm)

Gmax

(mm)

air

(%)

35.0

粗骨材の最大寸法

細骨材率

スランプの範囲

20 45.015±2.5

水セメント比

W/C

(%)

表-1 工事工程表

平成16年 平成17年

11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月

架設桁・門型クレーン組立 移動 移動 移動撤去

工場製作 現場施工

主桁組立・架設

架設桁組立移動・解体

組立・架設工

製作工

据付工PC板工

横組工

橋面工L橋

R橋

床版工L橋

R橋

20 10 20 3131 10 20 3010 20 31 1020 10 20 3031

備 考

28 1010 20

製作

20 3110 31 20 30

支承工

準備工

主桁セグメント製作工

31 10 20

供用開始

10 20 30 1010 20 30 10 20

7日/本 × 16本 / 2ベンチ

・・・L橋の施工

・・・R橋の施工

・・・LR橋の施工

凡 例

2 622

SWPR7B N=6本PC鋼より線 12S12.7

ブロック目地CL

PC鋼材 12S12.7SWPR7B(シース 70) 700

2 644

2 600

1 300

7 000

桁 長  34 693

7 0006 346 8 000 6 346

支 間  33 395662 635

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は現場作業減少による騒音振動の縮小、

型枠廃材等の産業廃棄物減少により、環

境面への負荷も小さくなる。

表-3 主桁製作のサイクル工程

2. 3 主桁の組立て・架設

声問川は、桁下が常に満水状況にある

川であることから、クレーンによる架設

が困難であり、エレクションガーダー架

設工法(上路式架設)を採用した。

主桁セグメントは、主桁架設前の軌道

上に配置し、その軌道上でブロック分割

したセグメントを主桁に組立てる。

主桁の組立ては、桁断面に配置した凹

凸のせん断キーを合わせ、PCケーブル

の緊張を行う。

主桁組立て後、ガーダー 1 組を架設し、

その上を走行する 2 台の重量台車に桁を

載せて引出し、橋台、橋脚部に配置した

門形クレーンで横取りを行った。

本橋は幅員が大きいことから、 1 断面

当り 4 本の主桁のうち、 3 本を門型クレ

ーンで直接、定位置に架設したが、 1 本

は門型クレーンで移動した後、横取り装

置を使用して架設した。

門形クレーンの据付けは、斜角、片勾

配の影響を受けることから、常時水平に

据付けるため、径間毎、車線毎に脚部高

さ調整台を使用して対応した。L橋架設

終了後、R橋の架設は架設桁を解体・組

立てをせずに、架設桁を軌道上で後退さ

せて、組立てヤードにて横方向軌道によ

る横取り作業を行った。これにより、 2

日程度の工期短縮を図った。

写真-4 主桁の架設状況 写真-2 施工ヤード

写真-1 主桁の製作状況

写真-3 主桁の組立て状況

6日 7日1日 2日 3日 4日

養生

脱型

ブロック切離

5日底型枠清掃

鉄筋組立

シース配置

側型枠組立

コンクリート打設

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2. 4 床版の施工

床版の施工は、1000×2000×100mm の

プ レ キ ャ ス ト P C 板 を 橋 台 背 面 か ら

25~ 50tf クレーンにより敷設した後、こ

れを型枠代わりにして現場打ちコンクリ

ートを打設する。床版の施工日数は、片

側(L橋、 R 橋) 1 支間当たり 3 日で施

工し、全橋を 12 日で施工を行った。これ

は、現場打ちの床版に比べ、吊り足場の

設置、型枠の設置日数を短縮することが

でき、日数にして 20 日以上の現場作業の

省力化が可能となった。

3.PCコンポ橋の施工後の評価

声問ふれあい橋では、PCコンポ橋の

施工をすることで、現場打ちの主桁、床

版工法に比べ、施工性、環境性、耐久性、

省力化、工期に関して次のとおり評価で

きる。

1) 施工性・安全性

稚内地方の風雪、暴風雪は、天候の影

響が施工性、安全性を左右することとな

り、工場製作で行うPCコンポ橋は、施

工性や労働者の安全性が向上する。

2) 環境性

PCコンポ橋は、現場作業減少による

騒音振動の縮小、型枠廃材等の産業廃棄

物減少により、環境面への負荷も小さく

なる。

3) 耐久性

声問ふれあい橋では、工場製作により

水セメント比を 32%とし、緻密かつ高強

度の主桁コンクリートを形成することで、

耐久性が向上する。

4) 省力化

本橋の主桁、床版の施工日数は、現場

打ちに比べ、主桁で 32 日 (2 日 /1 本×16

本 )、床版が 20 日以上の工期短縮となり、

全工程で約 2 ヶ月の省力化が実現できた。

5) 工 期

冬期間の施工は、工場製作とし、現場

の作業を少なくすることで、風雪等の悪

天候に左右されず、予定とおりの供用開

始を行うことができた。

あとがき

北海道における工事は、冬期間の作業

環境、作業員の安全性、コンクリートの

打設・養生を考えれば、年間通しての施

工に制約を受けることが多い。

声問ふれあい橋は、PCコンポ橋を採

用することで、冬期間の工事を可能とし、

早期供用開始を実現させることができた。

我が国の将来は、少子高齢化により労

働力の減少が予想されると共に、公共予

算の縮小は「ノーメンテナンス橋梁」、す

なわち耐久性の向上が必要不可欠となる。

このような背景の中、PCコンポ橋のよ

うなセグメント工法は、道路橋の省力化、

コスト縮減の観点からも、今後、広く取

組んで行く必要があると考える。

最後に、本工事にご協力を頂いた地域

住民の方々、及び本橋の命名、現場見学

会、渡り初め等のイベントに積極的にご

参加を頂いた声問小学校の先生ならびに

児童の皆様に感謝し、本報告と致します。

写真-5 PC板の敷設状況