http://www.aist.go.jp/ 2. これまでの検討 1. 研究の目的 4. 色素の光安定性の評価 6. 光照射による変換効率の変化 7. まとめ 〇舩木 敬・小野澤 伸子・佐山 和弘 産業技術総合研究所 太陽光発電研究センター 機能性材料チーム 色素増感太陽電池の耐久性向上を目指した ルテニウム錯体色素の開発 色素増感太陽電池の模式図 レッドダイ ブラックダイ 代表的なルテニウム錯体色素 : 透明導電膜付ガラス : 酸化チタン(TiO 2 ) : 色素 : 対極(白金やカーボン) 電解液 対極e - I 3 - I - I - I - e - 太 陽 光 N N N N Ru O O O HO O O O OH N N TiO2 C S C S TiO 2 微粒子(粒径20 nm) に色素が吸着 e - e - I - I 3 - I - I - 太陽光 多孔質酸化チタン膜のSEM像 色素増感太陽電池は従来の太陽電池に比べて安価に製造できるなどの利点から、次世代の太陽電池として期待されており、さらなる高性能化をめざした研究が 進められている。色素増感太陽電池の長寿命化と高効率化を同時に満たす指針を見出すためには、高い安定性を持つ色素の開発や劣化のメカニズムの解明が必 要である。 我々は、色素安定性や変換効率の更なる向上を目指し、近赤外光を利用できる新規ルテニウム錯体色素を設計・合成し、電池性能を評価している。 多くのルテニウム錯体色素の配位子は ポリピリジンとイソチオシアナト(NCS)基 単座配位子のNCS基は色素の中で最も不安定な部分 N N NCS N NCS N Ru Bu 4 NO 2 C COOH Bu 4 NO 2 C COOH NCS N N N Ru NCS HOOC Bu 4 NO 2 C Bu 4 NO 2 C NCS + NBu 4 高性能ルテニウム錯体色素の開発 ① モル吸光係数の向上 ② 幅広い光吸収(可視光+近赤外光) ③ エネルギー準位のチューニング ④ 安定性の向上 高耐久化 高効率化 N N N N Ru NCS HOOC HOOC HOOC N N N N Ru NCS HOOC HOOC HOOC O O シクロメタル化錯体 ピリジンカルボキシラト錯体 Angew. Chem. Int. Ed., 2012, 51, 7528. Chem. Lett., 2009, 38, 62. 10.4% 10.7% 10%以上の変換効率を示す近赤外色素を多数開発 有機色素とのハイブリッド N N N N Ru NCS HOOC HOOC HOOC N F3C CF3 N S COOH CN 高い安定性を持つ近赤外色素を開発 Chem. Lett., 2013, 42, 1371. 11.1% • T. Funaki et al., Chem. Lett., 2009, 38, 62. • T. Funaki et al., Chem. Lett., 2012, 41, 647. N O O NCS N N N Ru HOOC HOOC HOOC 構造 修飾 ブラックダイ(Eff: 9.6%) N O O N N N O O Ru HOOC HOOC HOOC FT28(Eff: 9.7%) FT19(Eff: 6.5%) 二座配位子の導入 (NCS基を一つ含む) 三座配位子の導入 (NCS基を含まない) NCS N N N Ru NCS HOOC Bu4NO2C Bu4NO2C NCS + NBu4 0.6 0.7 0.8 0.9 1 0 1 2 3 4 5 6 レッドダイ ブラックダイ FT28 FT19 変換効率が変化した割合 時間(h) 光照射(加速試験)による変換効率の変化 FT19で高い光安定性 しかし 変換効率の向上が課題 3. 本研究で新たに合成した色素 T. Funaki et al., Inorg. Chem. Commun., 2014, 46, 137. FT102 FT90 FT117 FT118 N O O N N N Ru HOOC HOOC HOOC N O O N N N Ru HOOC HOOC HOOC F3C N O O N N N Ru HOOC HOOC HOOC N O O N N N Ru HOOC HOOC HOOC F CF3 O • 新たな三座配位子の導入 • ドナー性が大きいシクロメタル化配位子 • 置換基導入により、エネルギー準位の微調整が可能 構造修飾(置換基の導入) エネルギー準位の調整 色素 TBP /M J sc /mA cm -2 V oc /V ff /% IPCE max /% FT102 0.1 9.1 0.53 0.66 3.2 47 FT118 0.1 11.7 0.55 0.69 4.4 54 FT90 0.1 16.2 0.62 0.64 6.5 63 FT117 0.1 18.3 0.62 0.63 7.2 68 FT19 0.05 17.4 0.64 0.71 6.5 71 ブラック ダイ 0.5 19.0 0.71 0.71 9.6 70 電池性能の評価 色素を吸着した光電極に疑似太陽光を照射(420 nm以上) 光励起により生じる色素の不安定な状態が長い 色素の不安定な状態の時間を積算すると 2時間の光照射が最大で屋外設置の太陽電池の10年に相当 (R. Kato et al., Energy Environ. Sci., 2009, 2, 542) 色素 吸着 電池にする 前に光照射 セル 作製 色素 吸着 セル 作製 光照射 UVカットフィルター 疑似太陽光 電池での耐久性評価 今回検討した加速試験 電子の流れ Eox ECB 対極 電気化学ポテンシャル 光 色素 Eredox ヨウ素 レドックス Eox* ECB 多孔質TiO2 電気化学ポテンシャル 光 色素 Eox Eox* 電極上の色素 の再生時間: -ms 0 0.5 1 1.5 400 500 600 700 800 0h 2h 4h Abs Wavelength/nm レッドダイ ブラックダイ NMRスペクトル NMRスペクトル 0 0.4 0.8 1.2 1.6 400 500 600 700 800 900 0h 2h 4h Abs Wavelength/nm NMRスペクトル NCSの部分が 壊れている? 吸収スペクトルは 極大で規格化 吸収スペクトルは 極大で規格化 0 h 6 h NMRスペクトル 0 0.5 1 1.5 2 400 500 600 700 800 900 0h 2h 4h Abs wavelength/nm スペクトルに 変化なし 0 0.5 1 1.5 2 400 500 600 700 800 900 0h 2h 4h Abs 波長(nm) NMRスペクトル 吸収スペクトルは 極大で規格化 吸収スペクトルは 極大で規格化 • 三座配位子のフェニルピリジンカルボキシラト誘導体 を有する新規シクロメタル化ルテニウム錯体を合成し、 色素としての性能を評価した。 • 配位子の構造修飾により、変換効率を向上することが 出来た。 • 今回検討した色素の中では、FT117が最も高い7.2% の変換効率を示した。 • NCSを含まない色素では基準色素などのNCSを含む 色素とは、光劣化のメカニズムが異なることが示唆さ れた。 • 今後、色素の光安定性の評価を詳細に検討するとと もに、更なる光電変換効率の向上を目指して構造修 飾の最適化を検討する予定である。 TiO 2 レッドダイやブラックダイなどNCSを含む色素 NCSを含まない色素 ← 色素の吸着状態が変化? 会合しながら弱く 吸着している色素 TiO 2 との化学結 合が切れる? NCS 結合基 NCSの異性化や置換反応 O 2 O 2 0.6 0.7 0.8 0.9 1 0 1 2 3 4 レッドダイ ブラックダイ FT117 FT19 変換効率が変化した割合 時間(h) 色素を吸着した電極に光照射し電池を作製 FT117は光劣化していないが、変換効率が減少 NCSを含まない色素はレッドダイやブラックダイとは 劣化のメカニズムが異なる?(詳細な検討が必要) FT117 FT19 5. 光照射によるスペクトルや色の変化 セル中の色素 の再生時間: 100 ns