『まるごと 日本のことばと文化』 初級2 A2 2018/11/12(月) 14:00~16:00 板橋区 文化・国際交流財団主催 山下悠貴乃(国際交流基金 日本語国際センター)
『まるごと 日本のことばと文化』初級2 A2
2018/11/12(月) 14:00~16:00
板橋区 文化・国際交流財団主催
山下悠貴乃(国際交流基金 日本語国際センター)
本日の内容
1. 『まるごと』ってどんな本?
-理念
-特徴 ~学習者が話せるようになるための工夫~
2. 『まるごと』初級2 A2の使い方(T2L4を例に)
3. 教師用リソース紹介
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• 成人学習者
• ことばと文化について学び、人とつながる
• コミュニケーション中心
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1. 『まるごと』ってどんな本?
国際交流基金が
新しい方法を取り入れて開発した日本語コースブック
・日本語にふれてみたい・気軽に楽しみたい・日本について知りたい
日本語と文化を通した人々の相互理解
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相互理解
国際交流
大人が互いの存在を認め、学び合い、みんなで楽しむクラス(コミュニティ)ひと
文化ことば
『まるごと』の理念
ことばと文化をまるごといっしょに リアルなコミュニケーションをまるごと 日本のありのままの生活や文化をまるごと
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『まるごと』の特徴~学習者が話せるようになるための工夫~
① 日本語を使用する観点でのレベル設定と目標設定
② 文型ではなく、トピックのまとまりで学ぶ
③ 「かつどう」と「りかい」:2つの学び方
④ 話す前に、十分に聞く
⑤ 豊かなインプット、レベルなりの小さなアウトプット/
自分を語るアウトプット
⑥ 学習者が自分で気づく・学ぶための工夫
①-1 日本語を使用する観点でのレベル設定
• お客さん(接するのは好意的な人々)
• 聞いて反応/単語・定型~ごくごく日常的なやりとり
• Cレベルは国際
弁護士・外交官などごく限られたニーズ。
• 自立的な市民(接するのは多様な人々)
• B1は欧州で国籍取得の条件、B2は専門的
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JF日本語教育スタンダード日本語で何ができるか(課題遂行)を重視
※ヨーロッパ言語共通参照枠(Common European Framework of Reference for Language: Learning, teaching, assessment)の略。
ヨーロッパの基準(CEFR※)と同じ
入門A1
初級A2
中級B1
初中級A2/B1
6つのレベルと
『まるごと』シリーズ
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もくひょうCan-do (行動・技能)….だい1か いいなまえですね
1自分のなまえのいみなどこじんてきなじょうほうを言ってじこしょうかいをします
2 しゅみやけいけんなど自分について少し くわしく話します
だい2か めがねをかけている人です3 だれかのふくやがいけんてきなとくちょうを 言います4 よくしらない人についていんしょうを言います….
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日本語で何ができるか(課題遂行)を重視=Can-doによる目標設定
①−2 日本語を使用する観点での目標設定
「まるごと」第1回(3)
②文型ではなく、トピックのまとまりで学ぶ
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③「かつどう」と「りかい」
2つの学び方
・どちらも主教材として作成。単独で使用可能。トピックは共有。両方を使う場合は、「かつどう」→「りかい」の順番がお勧め
・学習スタイル(体験して学ぶ 対 ナットクして学ぶ)や、
ニーズ(日常会話は日本語だが仕事や勉学は英語でよい 対 家庭で日本語を使うが知識を整理したい)で選択できる。
Can-doが目標
Can-doに必要な文型・語彙を広く学ぶ
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本と音声データがあれば
だれにでも教えられるように
・教える順番に項目が配置されています。
・方法もわかりやすく示されています。
コースブック
2. 『まるごと初級2 A2 かつどう』の使い方
<かつどう>の学習の流れ
授業で使う言語:日本語と媒介語
各課の構成 授業時間の目安:120-180分/課
②きいていいましょう
語いと場面の紹介
③ききましょう聴解話すモデルとバリエーション
⑨Can-doチェック:学習の自己評価チェックリストあり
⑤ペアで話しましょうモデル会話の流れにそって自分のことを話す
⑦かきましょう現実のタスク(カードを書く、など)
⑥よみましょう現実のタスク(カードを読む、など)
①とびら
トピックとCan-doの紹介
④はっけん(初級~)会話文から文法を意識化
⑧生活と文化日本事情と文化理解
Q. 教科書(T2L4)を開いて、それぞれの段階がどこにあるか見てみましょう 12
『まるごと』初級2A2(かつどう)トピック2 第4課
(1)「教え方のポイント」(P1~3)を読む。
自分の理解や疑問をペアで確認する。
(2)デモ1(第4課のP33、40~42)
自分だったらどう教えるか、やってみる
(3)ペアで気づいたことを話す。
(4)デモ2(第4課のP43~45)
※(2)(3)を繰り返す
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①とびら
トピックとCan-doの紹介
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②きいていいましょう語いと場面の紹介
③ききましょう聴解話すモデルとバリエーション
④はっけん会話文から文法を意識化
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④はっけん会話文から文法を意識化
③ききましょう聴解話すモデルとバリエーション
⑤ペアで話しましょうモデル会話の流れにそって自分のことを話す
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⑤ペアで話しましょうモデル会話の流れにそって自分のことを話す
⑥’⑦’メモを見て言いましょう
話せるようになるための工夫
④ 話す前に、十分に聞く
⑤ 豊かなインプット、レベルなりの小さなアウトプット/ 自分を語るアウトプット
⑥ 学習者が自分で気づき・学ぶための工夫
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インプット アウトプット気づき
第二言語習得のプロセス
気づく・わかる聞く 話す「まるごと」の流れ
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②きいていいましょう語いと場面の紹介
③ききましょう聴解話すモデルとバリエーション
④はっけん会話文から文法を意識化
インプット
気づき
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④はっけん会話文から文法を意識化
③ききましょう聴解話すモデルとバリエーション
⑤ペアで話しましょうモデル会話の流れにそって自分のことを話す
アウトプット
話せるようになるための工夫
④ 話す前に、十分に聞く
⑤ 豊かなインプット、レベルなりの小さなアウトプット/ 自分を語るアウトプット
⑥ 学習者が自分で気づき・学ぶための工夫
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インプット アウトプット気づき
第二言語習得のプロセス
気づく・わかる聞く 話す「まるごと」の流れ
音声重視
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Q. p.41「聞きましょう」の4つの会話を聞いて、気がついたことを話し合いましょう。
気づく・わかる聞く 話す「まるごと」の流れ
自然な日本語をたくさん
聞いてから会話の流れ表現
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1(037)A:ああ、のどが渇きました。飲みもの、もう飲んでもいいですか。B:まだ、飲んじゃだめですよ。みんなで乾杯してから、飲みましょう。A:あ、そうですね。B:では、みなさん、乾杯!みんな:かんぱーい。
2(038)A:ああ、おなかがすきました。この肉、おいしそうですね。もう食べてもいいですか。B:いいえ、まだ食べちゃだめですよ。肉の色が赤いですから。A:あ、まだですか。B:ええ、もう少し色が変わってから、食べてください。A:はい、色が変わってからですね。
3(039)A:ああ、いいにおいですね。ちょっとふたを取ってもいいですか。B:あ、まだ取っちゃだめですよ。もう少し待ってから、取りましょう。A:そうですか。おなかがすいた。B:ふふふ、もう少しの我慢、我慢。
4(040)A:このごはん、鍋に入れてもいいですか。B:あ、ごはんはまだ入れちゃだめですよ。肉と野菜を全部食べてから、最後に入れるんです。
A:全部食べてから?B:ええ、鍋料理は最後に、ごはんを入れて食べるんですよ。それでおいしいスープを楽しんで、終わりです。
A:ああ、そうですか。最後のごはんもおいしそうですね。
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1(037)A:ああ、のどが渇きました。飲みもの、もう飲んでもいいですか。B:まだ、飲んじゃだめですよ。みんなで乾杯してから、飲みましょう。A:あ、そうですね。B:では、みなさん、乾杯!みんな:かんぱーい。
2(038)A:ああ、おなかがすきました。この肉、おいしそうですね。もう食べてもいいですか。B:いいえ、まだ食べちゃだめですよ。肉の色が赤いですから。A:あ、まだですか。B:ええ、もう少し色が変わってから、食べてください。A:はい、色が変わってからですね。
3(039)A:ああ、いいにおいですね。ちょっとふたを取ってもいいですか。B:あ、まだ取っちゃだめですよ。もう少し待ってから、取りましょう。A:そうですか。おなかがすいた。B:ふふふ、もう少しの我慢、我慢。
4(040)A:このごはん、鍋に入れてもいいですか。B:あ、ごはんはまだ入れちゃだめですよ。肉と野菜を全部食べてから、最後に入れるんです。
A:全部食べてから?B:ええ、鍋料理は最後に、ごはんを入れて食べるんですよ。それでおいしいスープを楽しんで、終わりです。
A:ああ、そうですか。最後のごはんもおいしそうですね。
自然な日本語の特徴・間投詞・助詞のヌケ・食べてはだめ→食べちゃだめ、(~ています→~てます)など
未習語→聞き飛ばしの技能
いろいろな声(年代、性別、個性)
同じ流れで小さい違いのある会話
「交流の場」を想定した会話
(学習者も聞いて交流に参加する)、人間関係を作るための会話
Q. 音声教材の使い方について考えてみましょう。BGMありとなしをどんな目的で使い分けますか。
• BGM:場面の雰囲気や人物の気持ちを表すため。
• 目的に応じて使い分けるとよい。
場面の雰囲気や人物の気持ちをイメージする/
会話の流れや重要表現に集中する
• BGMつき音声ファイルについてhttps://www.marugoto.org/teacher/resource/elementary2_a/
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②きいていいましょう語いと場面の紹介
③ききましょう聴解話すモデルとバリエーション
④はっけん会話文から文法を意識化
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④はっけん会話文から文法を意識化
③ききましょう聴解話すモデルとバリエーション
⑤ペアで話しましょうモデル会話の流れにそって自分のことを話す
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⑧生活と文化日本事情と文化理解
日本語教室自分の回りの日本人日本文化 ※役立つサイト「まるごと+ 初級2A2」
http://a2-2.marugotoweb.jp/ja/
知る→興味→行動(ゆたかな文化体験)
異文化理解学習の学習プロセス
• 日本について知る(日本の文化とその中で生活している人々のあり方を理解する)
• 自分の文化を振り返る(自分の文化を再発見する)• クラスメイトとの意見交換(他者の考え方を知る→相互理解)• 教室外で異文化体験(もっと知り、理解し、学習を深める)
『まるごと』初級2 A2の使い方振り返りとまとめ
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★話せるようになるために
•音声重視:話す前にたくさん自然な日本語を聞く
•帰納的学習:用例観察→ルールの発見
★学習者の声を引き出すには?
•自分のことを伝えたいという欲求を満たす(トピックや内容が学習者にとって身近、話したいこと)
•協働学習:ペア、グループ、クラス
インプット アウトプット
3.教師用リソース紹介
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• 「まるごと」サイトhttps://www.marugoto.org/教材(音声や語彙インデックスなど)、教え方のポイント など…※音声は基本的にダウンロード。
CD購入→http://marugotonihongo.jp/cd/
• みんなの教材サイト教室活動のアイディアやイラストなどの素材※今回取り上げた素材:「JFS読解活動集」
学習者向けのリソース
• まるごと+
• まるごとのことば
• まるごと日本語オンラインコース
「まるごと」関連のe-learning一覧
https://www.marugoto.org/e-learning/
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教室からの声
JF日本語講座の講師より
• 学習者は話すのをこわがらない。
• 学習者は耳がよい。(よく聞くことが
できる)
• 受講生どうし、仲が良い。
• 講座を継続して受ける人が増えた。
• 欠席が減った。
• 異文化理解学習を利用して地元社
会に貢献できた。
• 教師の役割を再考(学習者の自律
性)。
…..
学習者より
• その場面に必要な語彙や文法が選ばれている。その場面を乗り切る事ができるようになる。(スペイン)
• トピックが実用的。以前勉強したトピックも繰り返し出てくるが、難易度がスパイラルに上がっていくので、学びに広がりと深さが出る。(中国)
• まず文法説明があるのではなくて、ことばを実際に使ってみて気づく、という方法になっているのがとても良い。(コロンビア)
・・・・・・
★学習者の声→https://www.marugoto.org/about/voice/