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第2章 気候に関連する海洋の変動 北太平洋の海面水温・表層水温 第2章 気候に関連する海洋の変動 2.1 北太平洋の海洋変動 2.1.1 北太平洋の海面水温・表層水温 北太平洋の海面水温・表層水温 診断概要 診断内容 北太平洋の海面水温・表層水温の長期変動には、エルニーニョ/ラニーニャ現象のほか に、北太平洋中高緯度の広範囲で低温化と高温化を繰り返すという十年規模の変動がある。 この変動は、北太平洋の気候に重要な役割を果たしていると考えられている。ここでは、 北太平洋の海面水温・表層水温の長期変動について、十年規模の変動に着目し診断する。 診断結果 北太平洋中高緯度では、冬平均(12~2月)の海面水温が、1976/77年に北緯40度付近を 中心に広い範囲で低下、1988/89年に北緯40度以北を中心に上昇、1998/99年に北緯40度を 境に北側で広範囲に低下、南側で広範囲に上昇した。また、2007/08年には北緯40度付近 を中心に広範囲に上昇した。これらの年には年平均の表層水温も同様に変化した。 1976/77年の変化は、アリューシャン低気圧の強化に伴う、北太平洋における海面水温 の 最 も 卓 越 す る 変 動 パ タ ー ン ( 太 平 洋 十 年 規 模 変 動 : Pacific Decadal Oscillation (PDO))であった。一方、1988/89年の変化は、北極域に寒気が蓄積される正の位相の北 極振動に関連した、主に中緯度以北で起こった一時的な変動であった。更に、1998/99年 の変化は、典型的なPDOとは海面水温分布が異なる、海面水温偏差の2番目に卓越する変動 パターンによる十年規模の変動であった。2007/08年の変化は、PDOが1976/77年と逆符号 に変化したパターンとなっているが、この変動が十年規模変動と言えるかどうかは、今後 の推移をみて判断する必要がある。 1 北太平洋の海面水温・表層水温の 基礎知識 (1)海面水温の平均分布 全球の海面水温の平均分布の特徴は 1.1 述べたとおりであるが、ここでは、北太平洋 の海面水温の平均分布の特徴を述べる。 2.1.1-1 に、 1981 年~ 2010 年の北太平洋の (a)2 月、 (b)5 月、 (c)8 月及び (d)11 月の月平均 海面水温(月別平年値)を示す。北太平洋の 海面水温は全般に低緯度で高く、高緯度で低 い。しかし、日付変更線より東の赤道域では、 南米大陸沿いに南半球高緯度から流れ込む寒 流であるフンボルト海流と、この海域で卓越 する東風によって引き起こされる湧昇の影響 で、赤道上の海面水温がその南北に比べ低く なっている。 114
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北太平洋の海面水温・表層水温第2章 気候に関連する海洋の変動 北太平洋の海面水温・表層水温 潮続流域を中心とした中緯度海域で滞留する

Feb 21, 2021

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Page 1: 北太平洋の海面水温・表層水温第2章 気候に関連する海洋の変動 北太平洋の海面水温・表層水温 潮続流域を中心とした中緯度海域で滞留する

第2章 気候に関連する海洋の変動 北太平洋の海面水温・表層水温

第2章 気候に関連する海洋の変動

2.1 北太平洋の海洋変動

2.1.1 北太平洋の海面水温・表層水温

北太平洋の海面水温・表層水温

診断概要

診断内容

北太平洋の海面水温・表層水温の長期変動には、エルニーニョ/ラニーニャ現象のほか

に、北太平洋中高緯度の広範囲で低温化と高温化を繰り返すという十年規模の変動がある。

この変動は、北太平洋の気候に重要な役割を果たしていると考えられている。ここでは、

北太平洋の海面水温・表層水温の長期変動について、十年規模の変動に着目し診断する。

診断結果

北太平洋中高緯度では、冬平均(12~2月)の海面水温が、1976/77年に北緯40度付近を

中心に広い範囲で低下、1988/89年に北緯40度以北を中心に上昇、1998/99年に北緯40度を

境に北側で広範囲に低下、南側で広範囲に上昇した。また、2007/08年には北緯40度付近

を中心に広範囲に上昇した。これらの年には年平均の表層水温も同様に変化した。

1976/77年の変化は、アリューシャン低気圧の強化に伴う、北太平洋における海面水温

の最も卓越する変動パターン(太平洋十年規模変動:Pacific Decadal Oscillation

(PDO))であった。一方、1988/89年の変化は、北極域に寒気が蓄積される正の位相の北

極振動に関連した、主に中緯度以北で起こった一時的な変動であった。更に、1998/99年

の変化は、典型的なPDOとは海面水温分布が異なる、海面水温偏差の2番目に卓越する変動

パターンによる十年規模の変動であった。2007/08年の変化は、PDOが1976/77年と逆符号

に変化したパターンとなっているが、この変動が十年規模変動と言えるかどうかは、今後

の推移をみて判断する必要がある。

1 北太平洋の海面水温・表層水温の

基礎知識

(1)海面水温の平均分布

全球の海面水温の平均分布の特徴は 1.1で

述べたとおりであるが、ここでは、北太平洋

の海面水温の平均分布の特徴を述べる。

図2.1.1-1に、1981年~2010年の北太平洋の

(a)2月、 (b)5月、 (c)8月及び (d)11月の月平均

海面水温(月別平年値)を示す。北太平洋の

海面水温は全般に低緯度で高く、高緯度で低

い。しかし、日付変更線より東の赤道域では、

南米大陸沿いに南半球高緯度から流れ込む寒

流であるフンボルト海流と、この海域で卓越

する東風によって引き起こされる湧昇の影響

で、赤道上の海面水温がその南北に比べ低く

なっている。

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第2章 気候に関連する海洋の変動 北太平洋の海面水温・表層水温

(2)海面水温・表層水温の季節変動

太平洋低緯度の西部熱帯域では、海面水温

は季節によらずおおむね25℃から30℃の範囲

にあって、季節変動の振幅も小さくなってい

る(図2.1.1-1)。一方、高緯度では振幅の大

きな季節変動がみられ、冬 (a)には1℃以下ま

で海面水温が下降するオホーツク海やア

リューシャン海域でも、夏 (c)には10℃前後ま

で海面水温が上昇する。

海域による、海面水温の季節変動の違いを

詳しくみるために、図 2.1.1-2に、 (a)2月、

(b)5月、 (c)8月及び (d)11月の月別平年値の年

平均値からの差を示す。これをみると、季節

変動の振幅が最も大きいのは、日本近海を含

む中緯度海域であることがわかる。

北西太平洋中緯度では季節風の影響を通じ

た熱の出入りによる季節変動が大きい。更に、

月平均海面水温の分布(図2.1.1-1)をみると、

北西太平洋中緯度では東西に延びる等温線が

込み合った構造が季節によらずみられている。

これは、海洋の亜熱帯循環と亜寒帯循環の境

界付近で暖水と冷水が接しているためと考え

られる。

季節変動の位相の特徴は、北緯20度以北の

日本近海を含む中高緯度の広い海域におい

て、2月から3月に海面水温が最も低くなり、

8月から9月に最も高くなっており(図2.1.1-

2)、気温の季節変動に比べると、やや遅れ

ている。

しかし、海域によっては海流(海洋の表層

循環)の影響による位相の遅れ・進みがみら

れ、例えば、春にはフィリピンの東から南西

諸島にかけての海域で亜熱帯循環(黒潮)に

より低緯度海域から暖水が補給されるため、

海面水温の上昇が先行する傾向がみられる

(図2.1.1-2(b)の赤枠)。

また、春から夏の間に補給された暖水が黒

図2.1.1-1 (a)2月、(b)5月、(c)8月、(d)11月における海面水温の月別平均値

(単位℃)

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第2章 気候に関連する海洋の変動 北太平洋の海面水温・表層水温

潮続流域を中心とした中緯度海域で滞留する

ため、秋には日本の東から日付変更線にかけ

ての海域で水温が高い状態で維持される傾向

がみられる(図2.1.1-2(d)の赤枠)。

海洋表層のうち、海面から深さ 150m前後

までは、海面を通じた熱の出入りに伴って温

度躍層の消長が季節的に繰り返されており

(季節躍層)、おおむね海面水温と同様に、

夏から秋(冬から春)にかけて最も表層水温

が高く(低く)なる季節変化を示す。しかし、

それよりも深い主温度躍層(おおむね 800m

前後までの表層及び中層)では海面を通じた

熱の出入りの影響を受けにくい。

しかし、主温度躍層付近でも、振幅は小さ

いながら、海面付近にみられる熱的な応答と

は異なる季節的な特徴(力学的な応答)がみ

られる海域もある。

この様子をみるために、図2.1.1-3に北太平

洋 の (a)2 月 、 (b)5 月 、 (c)8 月 及 び (d)11 月 の

400m深における水温の平年値( 1981年~

2010年の月別平均値)の年平均値(1981年~

2010年)からの差の分布を示す。

日本の南の小笠原近海を含む亜熱帯(黒

潮)循環の内側の海域では、冬には季節風に

伴う風応力循環が強まり、海洋表層ではエク

マン収束が起こって主温度躍層が押し下げら

れる。冬の間に押し下げられ続けた主温度躍

層は、春に最も深い位置に達するため、一定

の深さでみた場合には、春(秋)に表層水温

が高くなる(低くなる)季節変動(力学応

答)がみられる(図 2.1.1-3(b)の赤枠、 (d)の

青枠)。このような力学応答に伴う季節変動

の振幅は、例えば 400m深における水温変化

としては±1℃程度に過ぎず、海面付近の熱的

な応答による季節変動の振幅に比べると一桁

小さい。

また、熱帯域の北緯5度付近(赤道域の北

縁付近)では、東部赤道域で季節的に変化す

る風によって引き起こされた1年周期の波動

が西向きに伝搬している様子がみえる(図

2.1.1-3の青矢印)。

図2.1.1-2 (a)2月、(b)5月、(c)8月、(d)11月における海面水温の月別平均値

の年平均値からの差(単位℃)。

1℃間隔の等値線に加え、±1℃の範囲では、0.1℃間隔の補助線を描画している。

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第2章 気候に関連する海洋の変動 北太平洋の海面水温・表層水温

(3)海洋と気候変動

大気と海洋は、互いに影響を及ぼし合いな

がら様々な時間スケールで変動している。

我々は日常生活の中で、日々から季節程度の

比較的短い時間スケールの変動を実感するこ

とが多いが、更に長い時間スケールの変動も

社会に影響を及ぼす。例えば、太平洋赤道域

東部の海面水温が平年に比べて大きく上昇す

るエルニーニョ現象は、数年に一度発生し一

度発生すると1年程度持続する現象である。

エルニーニョ現象は、発生すると地球全体の

大気の流れを変え、日本を含む世界の天候に

影響を及ぼす(「 2.3エルニーニョ現象」参

照)。

北太平洋の中高緯度の海洋と大気には、更

に長い十年規模(十年から数十年周期)で変

動する現象があることが知られている。大気

は短時間で変動するため、このような長い時

間スケールの変動現象では海洋が大きな役割

を果たしていると考えられる。

近年、観測データが長期にわたって蓄積さ

れ、また、高解像度の数値モデルが開発され

たことにより、中緯度における大気と海洋の

相互作用について研究が進展している。わず

かな幅で海面水温が大きく変化する「海面水

温前線」域などでは、大気と海洋が相互に影

響しあい、これまで海洋は受動的だと考えら

れてきた中緯度においても海洋の変動が気候

に影響を与える可能性が指摘されている(田

口・野中,2010)。気候変動を監視し、仕組

みを理解するためには、海洋の変動を把握す

ることが重要である。

(4)北太平洋にみられる十年規模の海洋変

1970年代半ばに北太平洋の海洋と大気の気

候状態が大きく変化したことが1980年代に入

り 相 次 い で 報 告 さ れ た 。 Namias et al.

(1988)は長期予報の改善のために北太平洋

の海面水温の偏差の持続性を調査し、1970年

代後半から海面水温偏差がそれまでに比べて

持続しやすくなったことを明らかにした。ま

た、柏原(1987)は1977年以降アリューシャ

ン低気圧が強くなったことを指摘した。Nitta

図2.1.1-3 (a)2月、(b)5月、(c)8月、(d)11月における400m深水温月別平均値

の年平均値からの差(等値線間隔は、0.5℃)

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第2章 気候に関連する海洋の変動 北太平洋の海面水温・表層水温

and Yamada( 1989)や Trenberth( 1990)は

1977年以降北太平洋中央部の海面水温が広範

囲に低下しており、その原因を太平洋熱帯域

の海面水温の上昇と関連付けて論じた。その

後、これらの研究がきっかけとなり、太平洋

の大気海洋の長期変動の研究が盛んになった。

その結果、 1976/77年以外にも北太平洋中高

緯度で大きく海面水温が変化した時期がある

ことや、その空間的な分布の特徴及び大気変

動との関連が明らかにされた。

Tanimoto et al. ( 1993 ) 、 Zhang et al.

(1997)、Mantua et al.(1997)、White and

Cayan ( 1998 ) 、 Yasunaka and Hanawa

( 2002)は、主成分分析 1により、海面水温

に現れる十年規模の変動の空間パターンを調

べた。その結果、数年規模で変動するエル

ニーニョ現象と関連の深い太平洋赤道域を中

1主成分分析とは、海面水温などが時間変化する中

でどのような空間パターンが現れやすいかを見つけ

出す統計的手法である。現れやすい順番に第 1主成

分、第 2主成分…という。また、その時々に各空間

パターンがもととなる空間分布にどの程度含まれて

いるかを示す量を時係数という。時係数が正のとき

は対応する空間パターンとなっており、値が大きい

ほどその成分が顕著に含まれている。逆に時係数が

負のときは対応する空間パターンと正負が逆転した

空間パターンが含まれている。

心とする空間パターン、十年規模で変動する

北太平洋中央部を中心とする空間パターン、

十年規模で変動する北大西洋を中心とする空

間パターンなどが明らかになった。

Mantua et al.(1997)は、北太平洋の海面

水温を主成分分析し、第1主成分に現れる変

動 を 太 平 洋 十 年 規 模 振 動 ( PDO : Pacific

Decadal Oscillation)と名付け、その時係数を

PDO指数とした。図2.1.1-4にPDO指数を、図

2.1.1-5にPDO指数が正のとき、負のときに現

れやすい海面水温分布を示す。PDO指数が正

のときには北太平洋中央部の海面水温が低下

し、アラスカ湾からカリフォルニア沖の北米

大陸沿岸で海面水温が上昇する。PDO指数は

1925年に上昇、1947年に下降、1977年に上昇

しており、1977年の変動はPDOの変動として

みることができると指摘した。Yasunaka and

Hanawa( 2002)は大西洋における海面水温

の変動も考慮して、上記以外に 1957/58年、

1970/71年、最近では1988/89年に、北半球に

おける大気の循環場の変化を伴う大きな変化

が北太平洋の海面水温にあったことを指摘し

ている。また、Minobe( 2002)は 1998/99年

に黒潮続流域で海面水温が大きく上昇する変

化が起こっており、PDO指数にその変化が現

れていることを指摘している。

図2.1.1-5にみられるように、太平洋赤道域

におけるPDOの空間パターンは、熱帯域では

図2.1.1-4 PDO指数の経年変化

http://jisao.washington.edu/pdo/graphics.htmlより。原著論文はMantua et al.(1997)

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第2章 気候に関連する海洋の変動 北太平洋の海面水温・表層水温

エルニーニョ現象のときの分布に類似してい

る。エルニーニョ現象よりも長い時間スケー

ルで変動することから、PDOは長く持続する

エルニーニョ /ラニーニャ現象として扱われ

ることもある(例えば、Zhang et al., 1997)。

PDOと熱帯との関係については、次のような

指摘がなされている。太平洋の熱帯の海面水

温の上昇に伴う大気中の対流活動の変化で、

北太平洋から北アメリカにかけての波列状の

テレコネクションパターンである太平洋北ア

メ リ カ ( PNA ) パ タ ー ン が 励 起 さ れ 、 ア

リューシャン低気圧が強まる。これにより北

太平洋中央部で偏西風が強まると、海洋から

大気へ放出される熱が増加し、またエクマン

輸送で海面付近の南向きの流れが強化される

ことにより海面水温が低下する。一方、北太

平洋東部では、アリューシャン低気圧の東側

で暖かく湿った南風が強まることで海面水温

が上昇するため、北太平洋中央部で負偏差、

東部で正偏差の空間パターンが生ずる(Nitta

and Yamada, 1989;Miller et al., 1994;Yasuda

and Hanawa, 1997)。

北太平洋にみられる十年規模の海洋変動に

は第1主成分で説明されるPDOだけでなく、

第 2 主 成 分 と の 関 連 も 報 告 さ れ て い る

(Nakamura et al., 1997;Bond et al., 2003、

Di Lorenzo et al., 2010 ; Yeh et al.,

2011)。Bond et al.(2003)は、最近の変動

はPDOだけではうまく説明できず、北緯40度

を境として南北で逆符号に変動する第2主成

分も考慮すべきと指摘している。一方、Di

Lorenzo et al.(2008) はモデルによって再

現された北太平洋東部の海面高度偏差を主成

分分析した。海面高度の主成分分析において

も、第1主成分にはPDOに対応する変動が現れ

る。Di Lorenzo et al.(2008)は第2主成分と

し て 現 れ る 変 動 に 着 目 し 、 こ れ を NPGO

(North Pacific Gyre Oscillation) と名付けた。

Di Lorenzo et al.(2008)によると、NPGOは

カリフォルニア沿岸の塩分や栄養塩、クロロ

フィルといった化学生物成分の変動とよく一

致している(図2.1.1-6)。また、NPGOは海

面水温の第2主成分に現れる変動と強い相関

がある。図2.1.1-6にNPGOと海面水温偏差の

相関係数も合わせて示す。北太平洋の海面水

__

図2.1.1-5 PDOの正極(左)、及び負極(右)の冬季における海面水温(色)、海面気圧(等値線)、

海面の風応力(矢印)の典型的な偏差パターン

http://jisao.washington.edu/pdo/graphics.htmlより。原著論文はMantua et al.(1997)。

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第2章 気候に関連する海洋の変動 北太平洋の海面水温・表層水温

温について、PDOは中央部の広い範囲で一様

な偏差をもつ特徴があったが、NPGOは北緯

40度を挟んで南北で正負逆に変動する分布と

なることが特徴である。太平洋熱帯域では、

PDOは中部から東部にかけて偏差をもつが、

NPGOは主に中部に相関があり、東部では相

関が小さい。NPGOは、北太平洋の海面気圧

が北緯40度付近を境に南北で逆符号に変動す

る北太平洋振動(NPO)(Walker and Bliss,

1932)と対応がよく、NPOの南北構造は亜寒

帯循環と亜熱帯循環の強さに影響し、これが

北太平洋の海面水温偏差の南北で逆符号に変

動する構造を形成すると考えられている。

海面水温は大気の短い時間スケールの変動

の影響を受けやすいが、表層水温は、その影

響が小さいため時間スケールの長い大気の変

動の影響を検出しやすい。このため十年規模

といった長い時間スケールの変動を調べるに

は表層水温が有効である。

表層水温や表層貯熱量についても長周期変

動の研究が行われ、海洋内部にも十年規模の

変動が見出されている(Luo and Yamagata,

2001など)。White et al.(2003)やHasegawa

and Hanawa(2003)は表層水温データを解析

して、赤道域を含む太平洋熱帯域で、海洋貯

熱量偏差が十年規模で変動していることを明

らかにした。また、Sugimoto et al.(2003)

は、北太平洋の表層水温が、海面水温と同様

に、偏西風の変動に伴って変動し、また偏西

風位置の緯度の変動に応じて、亜熱帯循環と

亜寒帯循環の境も南北に変動していることを

示した。Hasegawa et al. (2007)は表層貯熱

量の変動が数十年かけて北太平洋を時計回り

に伝わり、その変動がアリューシャン低気圧

や黒潮、北太平洋亜熱帯モード水の長期変動

と密接にかかわっていることを示した。

図2.1.1-6 NPGO指数の時系列と対応する海面水温の分布

Di Lorenzo et al.(2008)のFigure 2のb図とFigure 4のb図を転載。上図はNPGO指数(黒線)とカリ

フォルニア沖(北緯32度、西経117度)にある観測点の海面塩分の時系列。下図はNPGO指数と海面水

温偏差の相関係数。NPGO指数とはNPGOを表す北太平洋東部の海面高度偏差の第2主成分の時系列の

こと。

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第2章 気候に関連する海洋の変動 北太平洋の海面水温・表層水温

(5)十年規模変動の影響

北太平洋の十年規模変動において中緯度で

海面水温の低い時期は、大気ではアリュー

シャン低気圧が強い時期にあたる。このため、

北米大陸西岸では、南からの暖かい風により

気温が上がり、降水量が増えることが指摘さ

れている(Mantua et al., 1997)。日本の気候

に対する北太平洋の十年規模変動の影響は、

北米大陸ほど顕著ではないが、見延(2001)

は、 1947/48年に起こった日本の平均地上気

温の大きな上昇は、北太平洋の十年規模変動

と連動していると指摘している。また、北太

平洋の十年規模変動に伴う海面水位の変動が

ロスビー波として西向きに伝播して、日本沿

岸の海面水位に影響を及ぼしている(「 1.2

海面水位」参照)。

十年規模の変動は海洋生態系にも大きな影

響を及ぼすため、十年規模変動は気候学のみ

ならず、水産資源学の分野でも広く研究され

ている。北太平洋におけるマイワシ、サケな

どの漁業資源量の変動が北太平洋の十年規模

の変動と関連しているという報告がある

(Mantua et al., 1997;安田,2001)。特にマ

イワシは日本近海で最も大量に漁獲される魚

の一つで、20世紀では1930年代と1980年代に

漁獲量がピークになった。黒潮続流域はマイ

ワシの稚仔魚の回遊経路にあたり、冬から春

にかけてこの海域の海面水温が高いと、稚仔

魚の死亡率が高くなることがわかっている。

このことから、マイワシの漁獲量とこの海域

の十年規模の水温変動との関連が指摘されて

いる(安田,2001)。

2 海面水温の監視

(1)診断に用いるデータ

気象庁では、気候解析を目的として、100

年以上にわたる全球月平均海面水温格子点

データセット(COBE-SST)を整備している

(「 1.1海面水温」参照)。ここでは 1901~

2012年のCOBE-SSTを用いて海面水温変動を

解析する。

また、大気のデータとしては、JRA-25長期

再解析データ(Onogi et al. , 2007)を使用し

た。

(2)海面水温の変動

北太平洋中高緯度の海面水温変動の特徴を

調べるため、北緯20度以北の月別海面水温偏

差格子点データ(1901年~2000年の100年平

均した月ごとの平年値をもとに、月ごとに各

格子点で平年差を算出し、更に地球温暖化に

よるトレンドを取り除くため、各月の世界全

体で平均した平年差を引いた値)を用いて主

成分分析を行い、海面水温変動のなかで寄与

の大きい第 1主成分(寄与率 21.3%)と第2主

成分(寄与率 10.4%)の時係数を求めた(図

2.1.1-7)。時係数は標準偏差で規格化してあ

る。図2.1.1-8は第1、2主成分の時係数と全球

の海面水温偏差(平年値は1981年~2010年の

30年平均)との回帰係数(標準偏差で規格化

した主成分の時係数を説明変数、各格子点の

海面水温偏差を被説明変数とする単回帰式に

おける回帰直線の傾き)である。回帰係数の

分布は時係数が正のときに特徴的な海面水温

偏差を表し、時係数が負の時はこれと正負逆

転した分布が現れやすい。北太平洋では主成

分分析の空間パターンにおよそ対応する。

第1主成分の時係数と回帰係数の空間分布

は図2.1.1-4、図2.1.1-5とよく対応しており、

PDOを表している。回帰係数の分布は、北太

平洋中央部で負、アラスカ湾からカリフォル

ニア沖にかけての北米大陸沿岸部で正となっ

ているのが特徴的である。また、日付変更線

より東の太平洋赤道域で正となっている。

第2主成分はDi Lorenzo et al.(2008)で示

されたNPGOの指数やNPGOと海面水温偏差

121

Page 9: 北太平洋の海面水温・表層水温第2章 気候に関連する海洋の変動 北太平洋の海面水温・表層水温 潮続流域を中心とした中緯度海域で滞留する

第2章 気候に関連する海洋の変動 北太平洋の海面水温・表層水温

の相関係数の分布とよく対応している(図

2.1.1-6)。回帰係数は北緯40度を境に北で負、

南で正と逆符号に分布しており、 NPGOや

Bond et al.(2003)で示された第2主成分と同

じ変動が現れていると考えられる。また、太

平洋赤道域とも相関があり、日付変更線付近

で負の分布をしている。ただし、PDOとは異

なり、赤道域東部での関連する変動は比較的

小さい。

第1主成分と第2主成分の時係数の冬季平均

の時系列を図2.1.1-9に示す。冬季の海面水温

に着目したのは、冬季は十年規模変動と密接

に関わっているアリューシャン低気圧の変動

が大きく、十年規模変動が現れやすいためで

ある。一方、夏季は大気からの影響が海面付

近に限られるため十年規模変動とは別の変動

が重なりやすい。また、第1主成分と第2主成

分による海面水温の特徴的な変動を示すため、

図 2.1.1-10に変動の大きな領域で平均した海

面水温の時系列を示す。図2.1.1-10aは北太平

洋中央部の北緯40度付近(北緯30度~北緯50

度、東経160度~西経150度;図2.1.1-8上図の

黒線で囲まれた部分)の月別平均海面水温平

年差の冬平均( 12月~ 2月)の時系列、図

2.1.1-10bは北太平洋中央部の北緯40度を境に

北側(北緯40度~北緯60度、東経170度~西

経 140度;図 2.1.1-8下図の黒い破線で囲まれ

た部分)及び南側(北緯20度~北緯40度、東

経150度~西経160度;図2.1.1-8下図の黒線で

囲まれた部分)の月別平均海面水温平年差の

冬平均の時系列である。

1の(4)で述べたように、最近数十年の

間に、北太平洋では1976/77年、1988/89年、

1998/99年に大きな気候変化があったといわ

れている。図 2.1.1-11(a)~ (c)は 1976/77年、

1988/89年、1998/99年を境とした前後10年間

平均の冬季(12~2月)の海面水温の差であ

り、変化前後の10年規模の変化を表す。

図2.1.1-7 1901年~2000年の北太平洋の月別海面水温偏差の主成分分析によって得られた

第1主成分(PDO)の時係数(上)と第2主成分の時係数(下)。

122

Page 10: 北太平洋の海面水温・表層水温第2章 気候に関連する海洋の変動 北太平洋の海面水温・表層水温 潮続流域を中心とした中緯度海域で滞留する

第2章 気候に関連する海洋の変動 北太平洋の海面水温・表層水温

(a)

(b) (a)

(b)

図2.1.1-8 1901年~2000年の北太平洋の月別海面水温偏差の主成分分析によって得られた第1

主成分(上)、第2主成分(下)の時係数と海面水温偏差の回帰係数。 実線及び破線は第1、第2主成分の変動が大きく現れる領域。

(℃)

(℃)

(a)

図2.1.1-9 北太平洋の海面水温偏差の(a)第1主成分、(b)第2主成分の時係数の冬平均(12月~2月)。

緑線はその5年移動平均。

123

Page 11: 北太平洋の海面水温・表層水温第2章 気候に関連する海洋の変動 北太平洋の海面水温・表層水温 潮続流域を中心とした中緯度海域で滞留する

第2章 気候に関連する海洋の変動 北太平洋の海面水温・表層水温

1976/77年に北太平洋中央部を中心に広い

範囲で海面水温が低下したのに伴い(図

2.1.1-10a)、PDO指数は、10年程度続いた負

の状態からその後10年以上続く正の状態に大

きく変化した(図 2.1.1-9)。 1976/77年の前

後10年間平均の海面水温の有意な差は、北太

平洋中央部の北緯40度付近を中心に広い範囲

で負、東部の北米大陸沿岸域で正、日付変更

線より東の太平洋赤道域全域で正である(図

2.1.1-11a)。この10年間平均の海面水温の差

はPDOが正の時の空間パターン(図2.1.1-8)

とよく似ている。また、1の(4)で示した、

熱帯域の海面水温がPNAパターンを通してア

リューシャン低気圧に影響し、海面水温の変

化を起こしたという説明とも整合する。これ

らのことからわかるとおり、 1976/77年前後

の変化は、PDOの符号変化に表れる十年規模

変動であった。

1988/89年に北緯 40度付近を中心に海面水

温が広範囲に上昇したのに伴い(図 2.1.1-

10a)、PDO指数は 10年程度続いた正の状態

から負の状態に大きく変化したが、負の状態

は3年程度で解消した(図2.1.1-9)。1988/89

年前後10年間平均の海面水温の有意な差は、

北緯40度付近の比較的狭い範囲で正であり、

東部の北米大陸沿岸域や赤道域では有意な差

はみられない(図2.1.1-11b)。この差はPDO

が正のときにみられる空間パターン(図

2.1.1-8)と北緯40度付近以外は似ていない。

特に赤道域で有意な差がみられず、 1976/77

年とは異なることがわかる。図 2.1.1-12は、

1988/89年の前9年間と後10年間の平均500hPa

高度平年差の冬季平均の差である((1989~

1998年の冬平均)-( 1980~ 1988年の冬平

均)、 JRA-25長期再解析データは1979年1月

からの解析で1978年12月の解析値がないため

1980 年 冬 か ら の 平 均 値 を 用 い て い る ) 。

1988/89年前後では、500hPa高度は

図2.1.1-10 (a) 北太平洋中部の北緯40度付近(北緯30度~50度、東経160度~西経150

度)、(b)北緯40度を境とした北側(北緯40度~60度、東経170度~西経140度;破線で示

す)及び南側の北緯30度付近(北緯20度~40度、東経150度~西経160度;実線で示す)の

月別平均海面水温平年差(℃)の冬平均(12月~2月)の時系列

(b)

(a)

124

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第2章 気候に関連する海洋の変動 北太平洋の海面水温・表層水温

図2.1.1-11 北太平洋における1976/77年、1988/89年、1998/99年、2007/08年を境とした前後10

年間平均の冬季(12~2月)の海面水温の変化(単位:℃)。ハッチは両側95%で有意な差で

あることを示す。ただし、2008年以降の期間は5年間平均を用いた。

(a) :(1977~1986年の冬平均)-(1967~1976年の冬平均) (b) :(1989~1998年の冬平均)-(1979~1988年の冬平均) (c) :(1999~2008年の冬平均)-(1989~1998年の冬平均) (d) :(2008~2012年の冬平均)-(1998~2007年の冬平均)

(a)

(b)

(c)

(d)

(℃)

125

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第2章 気候に関連する海洋の変動 北太平洋の海面水温・表層水温

1988/89年前後では、 500hPa高度は北極付

近で負側に変化する一方、中緯度帯では帯状

に正側に変化し、これは極域に寒気が蓄積さ

れる正の北極振動的な状況への変化を示して

いる。これらのことから、 1988/89年の変化

は、熱帯域の海面水温の変化がPNAパターン

を通してアリューシャン低気圧の強さを変化

させたことによる 1976/77年の変化とは異な

り、北極振動に関連した主に中緯度以北で起

こった一時的な変動であったと考えられる

(Yasunaka and Hanawa, 2002)。なお、第2

主成分は1988と1989年に正の傾向がみられた

が、前後ともに10年程度負の傾向が強く、変

化は一時的であった。

1998/99年に北緯 40度付近を中心とした海

面水温が上昇したのに伴い(図2.1.1-10a)、

PDO指数は、5年程度続いた正の状態から負

の状態に変わり、その後数年程度で負の状態

は 一 旦 解 消 し た が 、 再 び 2007 年 か ら 現 在

( 2013年)まで負の状態が続いている(図

2.1.1-9)。 1998/99年の前後 10年間平均の海

面水温の有意な差は、北緯40度を境に北側で

広範囲に負、南側で広範囲に正である。有意

な差ではないが、太平洋赤道域では、日付変

更線付近では負である(図2.1.1-11c)。この

差は第 2主成分の空間パターン(図 2.1.1-8)

とよく似ている。海面水温を詳細にみれば、

1998/99年に北緯 40度を境に北側で低下、南

側で上昇しており(図 2.1.1-10b)、これに

伴って第2主成分の時係数が10年程度続いた

負の状態から10年以上続く正の状態に大きく

変わったためである(図 2.1.1-9)。図 2.1.1-

13は、前後10年間の平均海面気圧平年差の冬

季平均の差である。((1999~2008年の冬平

均)-(1989~1998年の冬平均))。この差

は北緯40度付近を境に南北逆符号の構造をし

ている NPO的な構造であり、NPOは第2主成

分の形成要因と考えられている(Di Lorenzo

et al., 2008)。これらのことから、1998/99年

前後の変化は、北緯40度を境に北側で負偏差、

南側の北緯30度付近で正偏差の対で特徴付け

られる第2主成分が大きく関わった十年規模

の変化であったと考えられる。

なお、 2007/08年に北緯 40度付近を中心に

海面水温が上昇したのに伴い(図2.1.1-10a)、

PDO指数は、その後2010年を除いて負の値が

続いている(図2.1.1-9)。2007/08年の後5年

間と前10年間平均の海面水温の有意な差(図

2.1.1-11d)は、北太平洋中央部の北緯40度付

近を中心に正、東部の北米大陸沿岸域で負で

ある。有意ではないが、日付変更線より東の

太平洋赤道域で負であり、これはPDOが負の

時のパターンに似ている。図 2.1.1-14は、

2007/08年の前10年間と後5年間の冬季の平均

海面気圧平年差の冬季平均の差である。この

差はアリューシャン低気圧が弱まったことを

示しており、 1976/77の変化とは逆の大気の

変化となっている。まだ5年程度しか経って

いないこともあり、この変動が十年規模変動

として持続性があるかどうか、 1976/77年の

変化と同じような仕組みで説明し得る変化か

否か、今後の推移をみて判断する必要がある。

ま た 、 太 平 洋 熱 帯 域 に 注 目 す る と 、

1998/99年の変化以後、平均すると中部から

東部で海面水温が負偏差になっていてラニー

ニャ現象的な偏差である。一方、多くの地球

温暖化予測実験では、地球温暖化が進行する

と21世紀後半の太平洋熱帯域の海面水温はエ

ルニーニョ現象的な偏差分布に変化していく

という結果が得られている( IPCC, 2007)。

地球温暖化予測の結果とは逆の、近年のラ

ニーニャ現象的な海面水温偏差が、十年規模

の自然変動によるものかどうか、今後、注視

していきたい。

126

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第2章 気候に関連する海洋の変動 北太平洋の海面水温・表層水温

図2.1.1-12 1988/89年を境とした冬季平均(12~2月)の500hPa高度の変化((1989~1998年の

冬平均)-(1980~1988年の冬平均))(単位:m)。

ハッチは両側95%で有意な差であることを示す。

(m)

図2.1.1-13 1998/99年を境とした冬季平均(12~2月)の海面気圧の変化((1999~2008年の冬

平均)-(1989~1998年の冬平均))(単位:hPa)。

ハッチは両側95%で有意な差であることを示す。

(hPa)

図2.1.1-14 2007/08年を境とした冬季平均(12~2月)の海面気圧の変化((2008~2012年の冬

平均)-(1998~2007年の冬平均))(単位:hPa)。

ハッチは両側95%で有意な差であることを示す。

(hPa)

127

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第2章 気候に関連する海洋の変動 北太平洋の海面水温・表層水温

128

3 表層水温の監視

(1)診断に用いるデータ

気象庁では、観測船、一般船舶、アルゴフ

ロート、定置ブイなどによる現場観測データ

をもとに世界の海洋について、1950年以降の

海面から深さ 700mまでの水温の月平均格子

点データセットを作成している(「1.1.1世界

の海面水温・表層水温」参照)。ここでは海

面から深さ 700mの平均水温を用いて海洋内

部の水温変動を解析する。なお、表層水温の

観測は海面水温の観測に比べて観測数が少な

いため、1950年以降について解析を行った。

(2)表層水温の変動

海面水温でみられた十年規模の変動が、海

洋内部の表層でどのように現れているかを調

べるため、海面水温と同様に北緯20度以北の

領域で主成分分析を行った。地球温暖化によ

るトレンドを取り除くため各格子点の値から

世界全体の平均値を引くのも同様に行ってい

る。得られた時係数を図2.1.1-15に示す。第1

主成分の寄与率は 16.7%、第 2主成分の寄与

率は 9.6%だった。海面水温の主成分分析

(図2.1.1-7)と比べると、表層水温は時係数

の時間変動で短周期成分が小さく、数年から

数十年スケールの変動がより明瞭にみられて

おり、十年規模の変動をみるのに適している

ことがわかる。海洋表層は大気に比べて熱容

量が大きいため、大気の短周期変動の影響を

受けやすい海面水温よりもゆっくりと変動し

ているためである。また、客観解析で、海面

水温に比べて短周期変動の平滑化が強くなさ

れているためでもある。

第1主成分と第2主成分の変動に特徴的な表

層水温の分布として、それぞれの時係数から

図2.1.1-15 北太平洋の十年規模変動にみられる月平均表層水温偏差から求めた時係数の経年変動

北緯20度以北の北太平洋域の月平均表層水温(海面から深さ700mの平均)偏差(1950~2012年)か

ら全球平均を引いたのち主成分分析して得られた第1主成分(上)及び第2主成分(下)の時係数の経

年変動を示す。本文で着目した北太平洋の気候に大きな変化があった年を赤点線で示す。

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第2章 気候に関連する海洋の変動 北太平洋の海面水温・表層水温

129

回帰した表層水温偏差の回帰係数を図 2.1.1-

16に示す。第1主成分の回帰係数は北太平洋

中央部で負、アラスカ湾からカリフォルニア

沖にかけての北米大陸沿岸で正であり、北太

平洋ではPDOによる海面水温の回帰係数と同

じ分布をしている。時係数の経年変動も海面

水温と一致しており、表層水温の第1主成分

はPDOを反映している。ただし、表層水温で

は、北太平洋の北緯20度に沿って東西に細長

く正の係数が分布しているという特徴がある。

また、太平洋熱帯域では係数が北太平洋に比

べて小さく、特に東部の正の係数が顕著では

ないことが海面水温と異なっている。もとも

と熱帯域での表層水温の変動は中高緯度に比

べて大きくないためと考えられる。第2主成

分の時係数は海面水温の時係数と整合的であ

るが、より長周期の変動がはっきりしており、

NPGOの指数(Di Lorenzo et al., 2008)との対

応もよい。北太平洋の回帰係数は北緯40度を

挟んで南北逆符号となる分布が現れていて、

海面水温の第2主成分と同じ変動をみている

といえる。ただし、北緯40度以南にみられる

正の回帰係数は、もともと変動の大きい黒潮

続流域で大きい値となっていて、分布がやや

西に偏っている。時係数を詳細に比較すると、

表層水温の時係数は海面水温の時係数の変動

に数年遅れており、海面水温でみられた変動

が海洋内部を伝播して表層水温の変動として

現れている可能性が考えられる。また、熱帯

域では変動がもともと大きくないため、回帰

図2.1.1-16 表層水温の第1主成分と第2主成分の時係数から回帰した表層水温の回帰係数

第1主成分の時係数から回帰した回帰係数(上)と第2主成分の時係数から回帰した回帰係数(下)。

それぞれ、時係数が正のときの典型的なパターンを示す。時係数が負のときはこれと正負が逆になっ

たパターンになりやすい。統計期間は1950年から2012年。単位は℃。

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第2章 気候に関連する海洋の変動 北太平洋の海面水温・表層水温

130

係数の分布に目立った特徴はみられない。

海面水温で着目した、1976/77年、1988/89

年、1998/99年、2007/08年の変化が表層水温

にどのように現れているかを調べるために、

図 2.1.1-11と同様にそれぞれの境について、

後ろ 10年(ただし、 2007/08年については

データのある2012年までの5年)の平均表層

水温から前10年の平均表層水温を引いた差を

調べた(図2.1.1-17)。

1976/77年を境とする差は、第1主成分の分

布とよく似ており、時係数も 1976/77年を境

に負から正へと変化していることから、PDO

によって表される十年規模変動が表層水温に

も現れていることがわかる。

1988/89年の変化では海面水温と同様に北

太平洋中央部の昇温は北緯40度以北に限定さ

れている。北緯20度に沿った水温の低下はみ

られるものの、北米大陸沿岸では水温低下が

みられない。第1主成分の時係数の変化も一

時的であり、海面水温の変化を考えると、こ

の年の変化は熱帯の海面水温の影響による

PDOの変動とは考えにくい。第1主成分と第2

主成分を重ね合わせたこの期間の変動を図

2.1.1-18に示す。北太平洋中央部の昇温域が

北緯40度以北に偏るなどの特徴は第1主成分

に第2主成分を重ねることである程度再現で

きるが、日本の南の顕著な昇温などは再現で

きない。 PDOや第 2主成分の変動の影響が

あったとしても、それだけでは説明できない

変動であったといえる。また、第1主成分も

第2主成分も時係数の変化が持続していない

ため、海洋内部においても変化は一時的で

あった。

1998/99年は、北太平洋中央部の北部で水

温が低下、南部で水温が上昇した。また、カ

リフォルニア沖で水温が低下しているなど、

図2.1.1-17 1976/77年、1988/89年、1998/99年、2007/08年前後の表層水温の変化

それぞれの境の後ろ 10年の平均表層水温偏差から前 10年の平均表層水温偏差を引いた差。ただし、

2007/08年については 2008年から 2012年までの平均から 2007年までの 10年平均値を引いた差。単位

は℃。差が年々変動に対して信頼度95%で統計的に有意である海域をハッチで示す。

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第2章 気候に関連する海洋の変動 北太平洋の海面水温・表層水温

131

第2主成分の回帰係数の分布と特徴が似てい

る。第 1主成分の時係数は 1998年まで正で

あったが、1999年に一旦0近くまで値が小さ

くなった。しかし、再び徐々に正の値をとる

ようになり、 1998/99年を境とした大きな変

化はみられない。それに対して第2主成分の

時係数は負から正へと大きく変化しており、

第2主成分の変動に伴った変化であったこと

がわかる。

2008年以降、表層水温はそれまでの10年間

の平均に比べて北太平洋中央部で上昇し、ア

ラスカ湾や北緯20度に沿った海域で下降して

いて、第1主成分の空間パターンを正負逆転

させたパターンと似た分布となっている。し

かし、変化してから5年程度の観測しかない

ため、これがPDOによる十年規模変動といえ

るか否か、今後継続した監視が必要である。

以上、海面水温でみられた十年規模の変動

が、表層水温でも同様にかつ明瞭にみられ、

これらの変動に伴って海洋内部も変化してい

ることがわかった。最後に、これらの変動に

伴って実際の表層水温がどのように変動した

かをみておく。図2.1.1-19に第1主成分及び第

2主成分に関連して変動が大きな海域の平均

表層水温の時系列を示す。図 2.1.1-19上にみ

られるように、北太平洋中央部の表層水温は

第1主成分の変動とよく対応して変動してい

る。図2.1.1-19下をみると、第2主成分に関連

した南北で正負逆に変化する変動は、1990年

頃までははっきりしないが、 1990年代から

2000年代前半にかけて明瞭となり、 2007/08

年から再び不明瞭となっている。このことか

らも、1990年頃までは第1主成分に関連した

北太平洋中央部の広い範囲で起こる水温変動

が主要な変動であったが、 1998/99年を中心

に1990年代から2000年代は南北で対称的な水

温変化が主要な変動であったことがわかる。

2007/08年以降、北緯 40度を挟んだ南北で表

層水温が再び同符号傾向で変動しつつあるが、

これが継続するか否か、今後の推移をみて判

断する必要がある。

図2.1.1-18 第1主成分、第2主成分によって説明される1988/89年の表層水温の変化

表層水温の変動のうち、第1主成分によって説明されるものと第2主成分によって説明されるものを抽

出したのち、図2.1.1-17(b)と同様に1989年から1998年の平均値と1979年から1988年の平均値の差を

とったもの。単位は℃。

(℃)

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第2章 気候に関連する海洋の変動 北太平洋の海面水温・表層水温

132

4 診断

北太平洋中高緯度では、冬平均( 12~ 2

月)の海面水温が、 1976/77年に北緯 40度付

近を中心に広い範囲で低下、 1988/89年に北

緯 40度以北を中心に広範囲に上昇、 1998/99

年に北緯40度を境に北側で広範囲に低下、南

側で広範囲に上昇した。また、 2007/08年に

は北緯40度付近を中心に上昇した。これらの

年には年平均の表層水温も同様に変化した。

1976/77年の変化後は、水温が低い状態が

北太平洋中高緯度で10年程度持続した。この

期間、大気ではアリューシャン低気圧が強

まった。この状態は、正の太平洋十年規模変

動(PDO)として北太平洋の海面水温偏差の

第1主成分により説明される。一方、1988/89

年の変化による北太平洋中央部で水温が高い

状態は3年程度持続したのみであった。この

変化は、 1976/77年の変動とは違い、北極域

に寒気が蓄積される位相の正の北極振動に関

連した主に中緯度以北で起こった一時的な変

動であった。 1998/99年の変化後は、北緯 40

度を境に北側で水温が低く、南側で高い状態

が、途中で一旦解消したものの10年程度持続

した。この変化は、PDOとは海面水温分布が

やや異なるものの、海面水温偏差の第2主成

分により主に説明される北太平洋の十年規模

の変動であったと考えられる。 2007/08年の

変化後は、北緯40度付近で海面水温が高い状

態が5年程度持続しており、北米沿岸など他

図2.1.1-19 第1主成分、第2主成分に関連する変動が大きな海域の表層水温偏差の経年変化

第1主成分に関連する変動が大きい海域の平均表層水温(上)と第2主成分に関連する変動が大きい海

域の平均表層水温(下)。上図は北緯30度から北緯50度、東経160度から西経150度(図2.1.1-16上で

破線で囲った海域)の平均表層水温偏差、下図は黒線が北緯30度から北緯37度、東経140度から日付

変更線(図2.1.1-16下で黒破線で囲った海域)の平均表層水温偏差で、赤点線が北緯40度から北緯50度、東経 170度から西経 150度(図 2.1.1-16下で赤破線で囲った海域)の平均表層水温偏差。単位

は℃。本文で着目した大きな変化のあった年を赤点線で示す。

Page 20: 北太平洋の海面水温・表層水温第2章 気候に関連する海洋の変動 北太平洋の海面水温・表層水温 潮続流域を中心とした中緯度海域で滞留する

第2章 気候に関連する海洋の変動 北太平洋の海面水温・表層水温

133

の海域の海面水温分布を含めて負のPDOの状

態となっている。ただし、この変動が十年規

模変動に該当する持続性をもつかどうかは、

今後の推移をみて判断する必要がある。

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