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「湖沼底質環境・調査手引き」(案) ~小川原湖の底質調査結果から言えること~ 平成21年3月 国土交通省 東北地方整備局
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「湖沼底質環境・調査手引き」(案) - MLIT「湖沼底質環境・調査手引き」(案) ~小川原湖の底質調査結果から言えること~ 平成21年3月

Jul 28, 2020

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「湖沼底質環境・調査手引き」(案)

~小川原湖の底質調査結果から言えること~

平成21年3月

国土交通省 東北地方整備局

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はじめに

わが国では、湖沼等の閉鎖性水域で富栄養化の進行が著しく、環境基準の達成状況が河川、海

域等に比べ依然として低く顕著な改善傾向が見られず、湖沼の水質改善が急務となっている。こ

のような状況から、平成 18 年 4 月には湖沼水質保全特別措置法(湖沼法)が改正、施行された。

湖沼の富栄養化は流入負荷の増加が主要な原因ではあるが、湖内での植物プランクトンの発生

による有機物量の増加、それに伴う底泥の悪化、悪化した底泥からの栄養塩の回帰など二次汚濁

(内部負荷)の影響が無視しえない。流入負荷の削減が直ちに二次汚濁の抑制に結びつかないこ

とが、湖沼の水質改善を難しくしている大きな要因ともなっている。

内部負荷の一つである底質からの栄養塩類の回帰については、湖沼の水質形成メカニズムの解

明や底質に関連する対策の評価などに合わせ検討が行われているが、個別事例に留まり一般化さ

れていない。一方、底質調査に関する参考図書はいくつか散見されるが、発刊から四半世紀以上

経過していたり、海域を想定したものであったりといった状況にある。

このような中、東北地方整備局が管轄する小川原湖では近年水質悪化が懸念され、シジミの斃

死やシラウオ、ワカサギの成長不良等、水質障害とみられる現象が発生しており、平成 20 年度か

らは「小川原湖水環境整備事業」もスタートした。

このような背景を踏まえ、本手引きは既存資料と小川原湖における底質調査結果をベースに、

底質の調査方法や結果の解釈及び土壌の取り扱いに際しての法体系などを取りまとめ、底質に関

する現象の理解を促し、現場の用に供することを目的に取りまとめたものである。また、資料編

には手引きとりまとめのベースとなった小川原湖底質調査の概要とともに、本編では触れられな

かった湖沼の流動や水質予測モデルに関する事項等々を補足資料としてとりまとめた。なお、国

土交通省の湖沼技術研究会でも湖沼の陸水学的メカニズムに関する検討が続けられている。その

成果が公表された段階では本手引きと合わせ活用にされたい。

本手引きのとりまとめにあたっては、専門家からなる「湖沼の底質環境に関する検討会」を平

成 19 年 3 月に設置し、これまでに4回の検討会が開催された。精力的にご審議いただいた東座長

をはじめとするメンバー各位のご尽力に深く感謝します。

平成 21 年 3 月

東北地方整備局 河川部 河川環境課

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手引き書に寄せて

河川とつながる湖沼では、その流域の人為的な物質負荷によって、程度の差はあるものの、多

く場合富栄養化の問題をはらんでいる。これは、流水環境である河川あるいは開放系である海域

とは異なる、閉鎖性水域の宿命的問題でもある。本来このように生物生産が盛んな水域は、適度

な栄養塩の流入によって豊かな漁場が形成され、人々の暮らしに大きなエコロジカルサービスを

もたらす。しかしながら、それは意外なほどデリケートなバランスの上に成立しており、過剰な

栄養塩負荷は過剰な生物生産を引き起こし、その生産物の多くは形を変えてその場に貯留され、

その後の生態系に大きな影響を与えてしまう。

湖底に降り積もった有機物は、底質環境を変化させ、さらには二次的に水質環境にも大きな問

題を引き起こすため、その状況把握には十分に科学的調査が必要であり、その結果に基づいた監

視や管理が不可欠となる。このような状況において、研究を主体とした調査は、個々の研究者が

個々の目的において 善の方法を用い展開されているものの、例えば国内全体の湖沼環境を把握

し、監視・管理するような調査手法の確立には至っていない。

本検討会は、現段階において湖沼の底質環境の総合的な把握にはどのような調査が必要である

かについて、科学的な背景は当然のことながら、実務者レベルにおける汎用性・実用性について

も意識し検討した。また、汽水湖である小川原湖をモデルとして、そこで行なわれた調査を元に

議論を展開した。従って、本書の内容は網羅的な調査研究マニュアルとはなっていない。しかし

ながら、管理あるいは調査担当者にとって、目的別の調査項目決定、結果の解釈あるいは調査に

際しての重要な留意点に関し、参考となるように心がけて構成した。

森・川・里・海を一貫でとらえた新たな流域管理は、その歩みを始めたばかりである。湖沼の

視点から本書がその一助となれば幸いであるし、これを機会にさらなる検討が進められることを

期待したい。

平成 21 年 3 月

湖沼の底質環境に関する検討会

座長 東 信行

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「湖沼の底質環境に関する検討会」名簿

旧メンバー 事務局

松川 正彦 前国土交通省東北整備局 河川部 河川環境課 課長 梅森 雄一 前国土交通省東北整備局 高瀬川河川事務所 技術副所長

佐々木 一夫 前国土交通省東北整備局 東北技術事務所 技術副所長 阿部 徹 前河川環境管理財団 研究第2部 部長

国土交通省東北整備局 河川部 河川環境課 国土交通省東北整備局 高瀬川河川事務所 調査・品質確保課 国土交通省東北整備局 東北技術事務所 品質調査課

座 長 東 信行 弘前大学 農学生命科学部 生物生産科学科 准教授 梅田 信 東北大学 大学院工学研究科 准教授 藤原 広和 八戸工業高等専門学校 建設環境工学科 准教授

長崎 勝康 青森県 水産総合研究センター内水面研究所 主任研究員 宮﨑 伸一郎 国土交通省東北整備局 河川部 河川環境課 課長 藤原 政幸 国土交通省東北整備局 高瀬川河川事務所 技術副所長 佐藤 和徳 国土交通省東北整備局 東北技術事務所 技術副所長 久保田 一 河川環境管理財団 研究第2部 部長 天野 光歩 ㈱建設技術研究所 東京本社河川部 次長 百目木 信悟 ㈱建設環境研究所 技術本部 副本部長

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目 次

1.概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

1.1 手引きの目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

(1)手引きの適用/(2)湖沼の水環境と底質との関わり

1.2 手引き活用にあたっての留意事項・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4

(1)本手引きの性格/(2)ダム湖の特性と手引き適用にあたっての留意事項

1.3 手引きの構成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9

2.底質環境調査計画の考え方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11

2.1 底質環境調査の分類と概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11

(1)本手引きにおける底質環境調査の位置づけ/(2)底質環境調査計画の概要

2.2 底質環境調査計画の立案・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16

2.2.1 調査地点の配置・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16

(1)底質環境マップの活用/(2)主要な調査地点の配置について/ (3)現場観測項目と物理・化学性状項目の関係/(4)底質の物理・化学性状調査の深度方向の調査について

2.2.2 調査項目の選定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23

(1)底質調査に係る項目とその分類/(2)底質に関連する現場観測項目/(3)有機汚濁関連項目の相関性/ (4)底質等と生物の生息環境との関係

2.2.3 調査時期・頻度の設定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30

(1)底質の物理・化学性状の季節変化特性

3.底質環境調査方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32

3.1 現場観測項目の測定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32

(1)泥種/(2)色相/(3)臭気/(4)ORP(酸化還元電位)

3.2 底質の物理・化学性状調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37

(1)試料の採取/(2)試料の調整/(3)試料の運搬/(4)分析方法

3.3 溶出速度試験・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41

(1)試料の採取/(2)試料の運搬/(3)実験方法/(4)溶出速度の算出

3.4 沈降量・沈降物質調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50

(1)試料の採取/(2)水質調査/(3)沈降速度の算出

4.底質環境調査結果の見方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 56

4.1 底質の物理・化学性状調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 56

(1)底質のバラツキについて/(2)含水率、強熱減量と含有量の関係について

4.2 溶出速度試験・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 59

(1)溶出速度について/(2)溶出速度と底質との関係/(3)溶出速度と DO との関係/ (4)溶出速度と水温との関係/(5)パラメータについて

4.3 沈降量・沈降物質調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 65

(1)沈降速度について/(2)調査地点と沈降速度の持つ意味合い/ (3)小川原湖における沈降特性と地点特性との関係/ (4)小川原湖における上層と底層の沈降速度の関係/(5)パラメータについて

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5.底質・土壌に係わる法体系と試験方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 70

5.1 底質・土壌調査に係わる関連法令の概要・・・・・・・・・・・・・・・・ 70

5.2 各基準項目と試験方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 73

(1)試験方法の流れ/(2)基本的な試験方法(試料前処理方法)の違い/(3)各試験工程の概要

【別冊 資料編】

第一編 底質に関連する情報

1.湖沼の流動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

2.水質予測モデルにおける底質の取り扱い・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4

3.底質・土壌に係わる法令等の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9

第二編 小川原湖の情報

1.小川原湖の特徴・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15

2.小川原湖における底質調査の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19

3.小川原湖のヤマトシジミと底質の関係・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34

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1.概要

1.1 手引きの目的

(1)手引きの適用

底質環境に係る調査はその目的からおおよそ図 1.1 のように分類される。本手引きでは、図

1.1 のうち湖沼等の閉鎖性水域における『富栄養化関連調査』に係る各種底質環境調査への適

用を想定する。

また、本手引きの対象者は、湖沼等の水環境の改善を担う部署の実務担当者を想定する。す

なわち、富栄養化関連調査における底質に関する調査計画の作成、調査結果の解釈等に係る者

を想定している。

底質環境監視調査

<目 的> :底質の有機汚濁、有害物質による汚染等の監視

<調査内容>:同一地点での定期的な調査が原則

<主な評価指標>:底質の環境基準等

富栄養化関連調査

<目 的> :水環境や生物生息場と底質環境との係りの把握及び底質からの栄養

塩溶出等水質予測モデルのパラメータを取得

<調査内容>:底質分布を含む現況調査

物質循環把握調査(水質予測モデルのパラメータ取得)

生物生息域を考慮した底質環境調査 等

<主な評価指標>:水環境への底質の影響度、生物生息場としての適性度等

浄化・処理関連調査

<目 的> :底質の汚染状況(有機汚濁、有害物汚染)に応じた浄化対策を検討

するための資料を取得

<調査内容>:対策量や工法を検討するための浄化・処理対策調査

処理土壌の処分やその有効活用を検討するための有効活用調査等

<主な評価指標>:底質環境基準を含む各種底質・土壌関連の法令等

図 1.1 底質関連調査の分類

本手引きは既存資料と小川原湖における底質調査結果をベースに、底質環境の調査方

法や調査結果の解釈にあたっての留意事項及び土壌の取り扱いに際しての法体系など

を取りまとめることによって、今後、河川管理者が湖沼等における水質管理の一環とし

て底質環境を取り扱う場合の参考資料として活用されることを目的とする。

(本手引きの対象)

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1)底質環境監視調査の概要

底質環境監視調査は公共用水域等を対象に底質環境の状況を定期的に調査し、底質中の有機

物や重金属等の状況とその変化を監視するために実施される目的から水質の定期調査と合わせ

実施されていることが多い。

調査は、底質の有機物質の指標となる項目並びに重金属等の有害物質に関する項目とともに

物理的性状(含水率、粒度組成等)を表す項目が対象となる。調査頻度は底質の堆積速度やそ

の変化の速度を考慮し年1~2回程度の頻度で実施されている。

2)富栄養化関連調査の概要

富栄養化現象の解明と対策を検討する上では、栄養塩類等を対象とした水域の物質循環を解

明し、堆積と溶出のメカニズムを把握することが必要となる。数値解析モデル等を用いて水域

の現象を再現、予測する際には底質と水中との物質交換は重要なファクターとして取扱われ、

溶出試験結果等はそのための基礎資料となる。

また、湖底は底生生物にとっての生息場であり、底質悪化はこれら底生生物の減少をもたら

すことになる。特に、水産有用種が生息する場合には社会・産業的にも大きな影響を伴う。生

息場としての底質環境は富栄養化関連調査として重要な課題である。

なお、小川原湖は現在まさに中栄養から富栄養のレベルに移行しつつあり、高塩分層や底泥

の中に貯蓄されたリンの溶出が促されることによる負荷影響が大きいとされている(図 1.2 参

照)。このような背景をも踏まえ、本手引きでは底質の視点から富栄養化現象を捉えるための手

引きとした。

図 1.2 小川原湖における底泥溶出の湖内水質への影響模式

出典:高瀬川河川事務所 HP

3)浄化・処理関連調査の概要

底質の浄化・処理対象は有害物質と富栄養化による有機汚泥が想定される。対策はそれぞれ

の汚染メカニズムを踏まえて選択されるが、富栄養化に関連する対策としては底泥からの栄養

塩回帰の抑制を目的とする「底質の除去」、「栄養塩の低含有量土砂による覆土」、「DO 供給」な

どがある。対策検討に当たっては物質循環に関する調査情報が役立つ。

このように、底質の性状とその分布は工法やその規模を決定する上で不可欠な情報であり、

また底質の処理・処分法を検討するうえでも重要な情報となる。

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(2)湖沼の水環境と底質との関わり

湖沼等における富栄養化現象は、植物プランクトンの異常増殖による現象として顕在化する

ことが多い。窒素やリンは水域において植物プランクトンの増殖に不可欠な物質であることか

ら栄養塩と呼ばれるが、これらが過剰に存在すると富栄養化現象を引き起こす原因となる。

植物プランクトンに利用される栄養塩は主に陸域から流入するが、植物プランクトンが動物

プランクトンを始めとする高次の動物に捕食されず死滅すると、その一部は微生物等により分

解され再び植物プランクトンに利用可能な栄養塩となる。水中で分解されず残ったものは沈降

し、湖底に堆積して底質の有機物量を増加させるとともに、底質中で分解されて栄養塩が水中

へと再び回帰する。さらに、有機物はその分解過程で酸素を消費することから、底層水の貧酸

素化の原因となる。栄養塩のうちリンは貧酸素化するほど底泥から水中に回帰する量が増加す

ることが知られている。したがって、底層の貧酸素化により水中の栄養塩濃度が更に増加する

ことになる。このように栄養塩等の物質がその形態を変化させながら環境中を循環することを

物質循環と呼ぶ。

湖底堆積物は陸域からその水域に直接排出され、あるいは河川等を通じて流入し堆積したも

のと、水域内で植物プランクトンを起源として沈殿堆積したものに分かれる。これらの物質は

水域内では懸濁物質として、あるいは懸濁物質に吸着されて存在したものが、懸濁粒子の沈降

特性と水の流動によって選択的に分布域を決定されている。つまり、流速の速い水域では比重

が大きく粒子が粗い底質が分布し、流速の遅い水域では比重が小さく粒子の細かい底質が分布

する。さらに、微細になるほど物質の吸着量が多くなるため、細かい粒子で構成される底質ほ

ど汚染物質の含有量が高くなる傾向がある。

底泥からの栄養塩の溶出については、窒素は水温が高いと、リンは嫌気状態で溶出量が多く

なるといわれるが、その他の要因との関係など詳細については明確にされていない。溶出によ

る湖内水質への影響は、底層の高い濃度の栄養塩が植物プランクトンの発生する表層に回帰す

ることで生じ、湖盆形状、流況によって左右される。

底質の巻き上がり

(影響因子:風・魚類・底生生物等)

底質からの溶出

(影響因子:水温・DO・微生物等)

浮遊物質の

沈降

沈水植物による

水質浄化

流入河川からの流入

潮汐

底質における

酸素消費

抽水植物による

水質浄化

塩分密度躍層(通年)

水温躍層(夏季)

底生生物

(貝類等)

植物プランクトン

栄養塩動物

プランクトン

図 1.3 湖沼の水環境における底質の影響のイメージ

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1.2手引き活用にあたっての留意事項

(1)本手引きの性格 本手引きは既存資料と小川原湖における限られた底質調査結果を元に取りまとめたものであ

る。したがって、小川原湖から得られた底質挙動特性が当てはまらない湖沼には必ずしもその

まま適用することは出来ない。この点については小川原湖と当該湖沼の特性比較及び湖沼特性

と底質の富栄養化影響との関係(表 1.1)などを参考に判断願いたい。

また、現在、国土交通省の湖沼技術研究会では全国の主要湖沼を対象に陸水学的メカニズム

の科学的な解明が試みられている。湖沼技術研究会の成果が公表された段階では本手引きと合

わせ活用にされたい。

本手引きは、当該湖沼の地形、水理・水文、及び水質特性等を十分理解した上で活用す

るものとする。

湖沼技術研究会の概要

湖沼技術研究会は、湖沼の水質汚濁等の課題に対応するため、多くの研究対象となっており、か

つ、直轄事務所が設置されている湖沼(網走湖、小川原湖、霞ヶ浦、琵琶湖、中海・宍道湖が研究

対象)をフィールドとして平成 11 年度に設置された。これまでに、以下の成果が公表されている。

・ 「湖沼管理のための流動機構調査」平成 15 年 3 月 湖沼技術研究会

・ 「湖沼における水理・水質管理の技術」平成 19 年 3月 湖沼技術研究会

底質ワーキングは、湖沼技術研究会において立ち上げたワーキングの一つである。現在、底質ワ

ーキングは、底質調査方法の改善、統一のための提案を行うことを目的として検討を重ねている。

主な検討項目を以下に示す。

・ 湖沼の管理段階に応じた底質調査の組み立て方

・ 底質調査方法の改善、精度向上

【流入負荷量ワーキング】

検討内容:流入負荷量の把握方法

L-Q 式の精度向上 等

【底質ワーキング】

検討内容:底質調査方法の改善 等

湖沼技術研究会

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なお、小川原湖では近年水質悪化が懸念され、シジミの斃死やシラウオ、ワカサギの成長不

良等、水質障害とみられる現象が発生しており、平成 20 年度からは「小川原湖水環境整備事業」

もスタートした。本手引きは、このような背景を踏まえ、小川原湖において平成 18~19 年にか

けて集中的に実施した底質調査結果及び既往の底質調査結果と底質に関わる既存資料をベース

に取りまとめたものである。

出典:高瀬川河川事務所 HP

図 1.4 (2) 冬季小川原湖の成層構造 図 1.4 (1) 夏季小川原湖の成層構造

【小川原湖の特徴】※詳細は、資料編の第二編 第1章に記載

・汽水湖に分類される自然湖沼である。

・広さは 60km2を越え我が国で 11 番目の広さを持つ。

・平均水深は約 11m、 大水深 25mとダム湖に比べると浅い。

・滞留時間はほぼ年 1回程度とダム湖に比べ長く、鉛直方向には水温、塩分による顕著

な躍層が形成されている。

・夏季の水温躍層と年間を通して存在する塩分密度躍層によって 2~3 の層構造が形成

される。塩分密度躍層の下では貧酸素状態が継続している。

・河川流、塩水流入、吹送流、内部静振などの複雑な湖内流動が、水環境や底質環境に

影響を及ぼしている。

・湖水質のレベルは中栄養から富栄養のレベルに移行しつつある状況にある。

・リン負荷収支に占める底泥からの溶出の割合が高い。

・日本におけるヤマトシジミの主産地の一つである。

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表 1.1 湖沼特性と底質の富栄養化影響との定性的関係

化学的・物理的栄養塩回帰の要因 湖沼特性 栄養塩含有量

溶出 拡散 巻き上げ 溶存酸素状態 小川原湖の特徴

平均水深

・水深が浅い

ほど栄養塩含

有量は多い傾

向にある

・水深が浅い

ほど好気性有

機分解による

リンの溶出傾

向が強い

・水深が浅い

ほど拡散距離

が短い

・水深が浅い

ほど吹送流等

による巻き上

げの影響を受

け易い

・水深が浅い

ほど好気状態

になりやすい

平均水深は約

11m である。

水深 0~10m 程

度の湖棚部と水

深20m程度の湖央

部とに大きく分

けられる。

滞留時間

・滞留時間が

長いほ ど沈

降・堆積が進

- - - - 滞留時間は約

1年であり長い。

流域栄養

塩負荷

・流域栄養塩

負荷が大きい

ほど栄養塩含

有量が多い傾

向にある

- - - - 流入河川水の

栄養塩は長期的

に上昇傾向にあ

る。

成層化 状態

- ・成層湖では

嫌気に伴うリ

ンの溶出が起

り易い

・成層湖では

拡散による影

響を受けにく

・成層湖では

まきあげによ

る影響を受け

にくい

・温度成層化

につれて溶存

酸素の成層化

の傾向にある

成層湖であり、

水温、塩分、溶存

酸素による顕著

な躍層が形成さ

れている。 出典:環境庁 底質汚濁改善対策調査報告書(一部改変)

図 1.5 小川原湖の位置

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(2)ダム湖の特性と手引き適用に当たっての留意事項

自然湖沼とダム湖の特徴は表 1.2 のように整理されるが、自然湖沼とダム湖では一見似かよ

っていても、必ずしも同義の淡水生態系であるといえない。ダム湖の底質環境を把握する際に

は、ダム湖の滞留時間を踏まえた流下方向のエリア区分と水温躍層や底層の貧酸素域の形成標

高に留意して調査域を設定することが重要となる。

表 1.2 ダム湖と自然湖沼の特徴 (Ryder1978 改変)

特徴 要因

ダム湖 自然湖沼(氷河湖)

湖岸 不安定 安定

水位 大きく不規則な変動 自然

回転率 速い 遅い

水温成層 不規則 自然様式、二循環/年

イオン組成 変わりやすい 比較的予測可能

沈殿速度 速い 遅い

濁度 高い 低い

放流位置 さまざまな深度 表面

有機物の蓄積 速い 遅い

主要な栄養塩形態 他生性、後に自生性 自生性

成長戦略 速い 定常的

生物の移入・消滅速度 速い 遅い

出典:ダム湖の陸水学 平成 16 年 7月 生物研究社(一部改変)

ダム湖は一般的に細長く、四方から水が溜まる自然湖沼と異なり、水の流出口がある位置か

ら離れた場所に一本の大きな川が流入し、水や栄養塩を受け入れる。ダム湖の上流から下流に

向かって湖盆の幅や深さが変化するとともに河川としての特徴は消失する。このように、ダム

湖では流水の滞留時間が短いことと相まって水平方向の流れが相対的に重要な役割を果たして

おり、大部分の自然湖沼では水温成層による鉛直勾配が支配的であることに比べダム湖の大き

な違いになっている。また、ダム湖は集水域の下流端に位置するため懸濁物質の流入量が多く

常に出水により新鮮な土砂が供給される。(ダム湖の陸水学 平成 16 年 7 月 生物研究者)

ダム湖は水平方向の流れに着目すると、河川の流入域からダムサイトまでの流下方向で物理

的、化学的、生物的特性を異にする流水帯、遷移帯、止水帯の三つのゾーンに分けられるとさ

れる(図 1.6 参照)。流水帯は、比較的狭く、良く混合され、流速は河川より緩やかになるが、

相当量のシルト、粘土、有機物粒子といった微細懸濁態粒子を運ぶ輸送力は十分にある。流水

帯は一般に浅く流入してくる有機物の分解で酸素消費が行われても、良く混合されるので好気

的環境が維持される。遷移帯では、懸濁物の沈殿が顕著で、光の透過は増加する。このため、

有機物の生産が大きくなる。止水帯は、自然湖沼の生態系の特徴を示し、無機態微粒子の沈殿

量は少なく、有機物の生産量が分解量を上回る。

図 1.6 に示した模式図の過程で、ダム湖下流部で水分含有量の高い有機物と栄養塩に富んだ

底泥の蓄積がおきることになる。ダム湖の栄養塩は、河川から流入してくる量が大きな部分を

占めるが、外部からの流入による供給が少ないときには、同じダム湖内でも、場所によって底

泥からの栄養塩の溶出がもつ生態学的な重要度には大きな差が見られる。

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図 1.6 ダム湖のエリア区分と物質の変化(イメージ)

出典:ダム湖の陸水学 平成 16 年 7月 生物研究社(一部改変)

※注 ダム湖の滞留時間によっては 3 つのエリアに明確に分かれないことがある。

なお、ダム湖の底質を含む水環境の特性については、以下のものを参考とするとよい。

・「ダム湖の陸水学」平成 18 年 3 月 生物研究社

・「改訂 ダム貯水池水質調査要領」 平成 8年 1月 財団法人ダム水源地環境整備センター

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1.3 手引きの構成

本手引きは5章と資料編から構成されている。このうち、2章~4章は既往資料と小川原湖に

おける底質調査結果をベースにとりまとめたものである。

なお、資料編は手引きとりまとめのベースとなった小川原湖底質調査の概要と、本編ではふれ

られなかった湖沼の流動、水質モデルに関する事項等を補足資料としてとりまとめたものである。

本編手引き各章の概要と活用の場面を以下に示す。

2章 底質環境調査計画の考え方

2章では富栄養化関連調査に係る底質環境調査計画の内容について概説するとともに、小川原

湖における底質挙動特性等から調査地点、調査項目及び調査時期・頻度の選定等、調査計画立案

時の考え方を示した。

3章 底質環境調査方法

3章では実際に底質環境調査を実施するあたり、容易に調査結果を比較検討出来るように現地

や試験室で配慮すべき事項を調査方法の留意事項として示した。なお、留意事項は既存の指針、

マニュアルを参考にしつつ小川原湖における経験なども踏まえとりまとめた。

4章 底質環境調査結果の見方

4章では代表的な底質関連の調査項目である物理・化学性状調査、溶出速度試験、沈降量・沈

降物質調査について、小川原湖におけるデータを事例に調査結果を解釈する際の留意事項を示し

た。

5章 底質・土壌に係わる法体系と試験方法

5章では行政現場での参考として底質・土壌に係わる法体系の概要を示すとともに、法によっ

て異なる含有量や溶出といった基準値の理解を容易にするため試験方法の概要を示した。

本手引きは、以下の5章と資料編より構成される。 1章 概要(目的、留意事項、構成) 2章 底質環境調査計画の考え方 3章 底質環境調査方法 4章 底質環境調査結果の見方 5章 底質・土壌に係る法体系と試験方法

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図 1.7 手引きの構成

底質・土壌に係わる法

体系と法によって異な

る試験方法の違いなど

の概要を理解する。

5.底質・土壌に係わる法体系と

試験方法

5.1 底質・土壌調査に係わる

関連法令の概要

5.2 各基準項目と試験方法

底質環境調査の結果や

データを解釈する際の

留意事項を理解する。

4. 底質環境調査結果の見方 4.1 底質の物理・化学性状調査

4.2 溶出速度試験

4.3 沈降量・沈降物質調査

本手引きの目的と

対象、構成を理解する。

1. 概要 1.1 手引きの目的

1.2 手引き活用にあたっての留意事項

1.3 手引きの構成

底質環境調査を実施す

るにあたり、現地や試

験室で配慮すべき事項

を理解する。

3. 底質環境調査方法 3.1 現場観測項目の測定

3.2 底質の物理・化学性状調査

3.3 溶出速度試験

3.4 沈降量・沈降物質調査

底質環境調査計画の内

容と、調査計画立案時

の考え方を理解する。

2.底質環境調査計画の考え方 2.1 底質環境調査の分類と概要

2.2 底質環境調査計画の立案

2.2.1 調査地点の配置

2.2.2 調査項目の選定

2.2.3 調査時期・頻度の設定

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2.底質環境調査計画の考え方

本章では富栄養化関連調査に係る底質環境調査計画の内容について概説するとともに、小川原

湖における底質挙動特性等から調査地点の配置、調査項目及び調査時期・頻度の選定等、調査計

画立案時の考え方を示した。

2.1 底質環境調査の分類と概要

湖沼の底質環境に係る富栄養化関連調査は、現況把握から予測・評価そして対策といった富

栄養化現象の検討段階と富栄養化現象そのものの内容によって異なってくる。本手引きでは、

下記の3つの調査を基本とし、調査計画の考え方を示した。 ①底質現況調査 底質環境の現況を面的に把握、評価するための調査

②底質に係る物質循環把握調査 底質に係る物質交換量の把握とあわせて水質予測モデルのパラメータを取得するため

の基礎資料を得る調査

③生物生息域を考慮した底質環境調査 生物の生息場と底質環境との関わりを把握する調査

表 2.1 底質環境調査と調査項目の関係

調査項目 底質調査の分類

現場観測 物理・ 化学性状

物質循環 生物

①底質現況調査 ◎ ◎ - -

②底質に係る物質循環

把握調査 ○ ○ ◎ ○※1

③生物生息域を考慮し

た底質環境調査 ○ ○ ○※2 ◎※2

※1:②底質に係る物質循環把握調査の生物調査は、漁獲等により物質が直接系外へ大量に搬出される湖

沼などで状況に応じて実施する。実施にあたっては、物質循環において指標となる生物を選定する

ことが重要であり、詳細については学識者等に相談するとよい。

※2:③生物生息域を考慮した底質環境調査では、湖沼の底質に関係する代表的な生物を調査対象とする

ことは当然であるが、生息環境について総合的に把握することが重要である。その意味から調査の

詳細については学識者等に相談するとよい。

注)◎は各調査計画での重点項目である。

調査項目の詳細は 2.2.2 節を参照されたい。

なお、本手引きでは表 2.1 の調査項目の視点から、調査方法や結果の見方を主に取りまとめ

たものである。ただし、生物に関する調査の詳細については、本手引きの対象外とした。

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(1)本手引きにおける底質環境調査の位置づけ

底質環境に係る富栄養化関連調査とは、湖沼において詳細な富栄養化調査が必要と判断され

た後に実施する調査であり、底質環境監視調査(定期的な調査)とは別の調査である。富栄養

化関連調査を底質現況調査、底質に係る物質循環把握調査、生物生息域を考慮した底質環境調

査の 3 つとした。本手引きにおける底質環境調査(富栄養化)の位置づけと、それぞれの調査

の目的を以下に示す。

図 2.1 本手引きにおける底質環境調査(富栄養化)の位置づけ

①底質現況調査

対象湖沼において富栄養化の詳細な調査が必要となった場合、公共用水域等における定期

的な調査(底質環境監視調査)をベースに、底泥の堆積状況とその物理・化学的性状を面的、

深度方向に調査し、底質環境の現況を把握する。ここでいう「富栄養化について詳細な調査

が必要になった場合」とは、湖沼が富栄養化の傾向、水質障害の発生、漁業被害の発生等に

より、そのメカニズムを把握、対策を実施するために湖沼の底質を把握する必要性が高まっ

たことを意味する。 ②底質に係る物質循環把握調査

底質は水域の物質循環から見ると、物質の堆積と溶出のバランスにより成り立つ循環の一

過程である。富栄養化現象の解明と対策検討に必要な物質交換量を把握するための基礎資料

(水質予測モデルのパラメータ取得を含む)を得る。

③生物生息域を考慮した底質環境調査 湖底は底生生物にとっての生息場であり、底質悪化はこれら底生生物に変化をもたらすこ

とになる。そこで、生物の生息場と底質環境との関わりを富栄養化現象の観点から把握する。

底質環境監視調査( [ ]) 定期的な調査 毎年

富栄養化の傾向水質障害の発生漁業被害の発生

富栄養化について詳細な調査が必要

湖沼における底質の全体把握

【① 】 底質現況調査

物質交換量を把握するための基礎資料を得る

【② 】 底質に係る物質循環把握調査

( )生物 水産有用種等 の生息場と底質環境との関わり把握

【③ 】 生物生息域を考慮した底質環境調査

、 、 、富栄養化 水質障害 漁業被害等のメカニズムの把握 対策の検討

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(2)底質環境調査計画の概要

当該湖沼の調査計画を立案するにあたっては、表 2.2 及び図 2.2 に示した底質環境調査計画

の概要を参考に、湖沼特性を加味して検討されたい。

底質に係る物質循環把握調査における調査項目として示したDO消費速度試験、安定同位体

分析、微生物分析については本手引きで記述していない。これらの項目を実施する場合、DO

消費速度試験については「底質の調査・試験マニュアル 改訂第三版 平成 15 年 3 月 社団法

人底質浄化協会」(以下、「底質の調査・試験マニュアル」という)を、安定同位体分析、微生

物分析については専門家や学識者等に相談するとよい。

【参考】

・安定同位体分析

安定同位体比を用いて、生態系の食物連鎖構造や物質循環について、底泥ではその起源などの

知見を得ることが出来る。これは、炭素同位体比(δ13C)は植物の光合成(水域では植物プラン

クトンか付着藻類か)で決まるが「食べる食べられる」関係ではあまり変わらないため「食物源

の情報」を示すのに対し、窒素同位体比(δ15N)は「食べる食べられる」関係で上昇するため、

「栄養段階」を示すことが基礎になっている。

参考図書:「流域環境評価と安定同位体」 平成 20 年 2 月 京都大学学術出版会 等

・微生物分析

光合成を通じて生産された有機物や水域に負荷された有機物のかなりの部分は一旦微生物体内

に取り込まれその後エネルギー源として利用される。微生物としてはメタン細菌、脱窒菌、硫酸

還元菌等々があるがこれらの微生物活性を測定することによって無機化活性を測定することが出

来る。無機化活性は季節的には高水温期に、地理的には栄養の豊富な岸近くで大きくなる。

この測定技術としては、微生物活性を定量的に測定することが可能な「ETS活性測定」が有

効である。

参考図書:「地球環境調査計測事典 第3巻 沿岸域編」 平成 15 年 11 月 株式会社フジ・テ

クノシステム 等

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表 2.2 底質環境調査計画の概要

調査名 目的 調査地点(場所) 主な調査項目 調査時期・頻度 摘要

① 底質現況調査

・底質環境の現況を

面的に把握、評価す

・湖沼全体を把握するた

め面的調査を行う。

・調査の目的に応じて、

深度方向の調査も実施

する。

・現場観測

・底質の物理・化学性状

・底質の季節変化特性を

踏まえ、調査時期・頻度

を設定する。

・面的な調査では労力軽減

とコスト削減のために現

場観測項目を主に活用し、

含有量調査のコストを軽

減する。

・事前の底質環境マップ作

成は調査計画の立案や結

果の評価に有効である。

・底層水質も合わせて把握

することが望ましい。

② 底質に係る物

質循環把握調

・底質に係る物質交

換量を把握するた

めの基礎資料を得

る。

・底質現況調査結果等を

踏まえ、湖沼の特性毎の

代表的な箇所で調査を

行う。

・現場観測

・底質の物理・化学性状

・溶出速度試験

・沈降量・沈降物質調査

・DO消費速度試験

・安定同位体分析

・微生物分析

・溶出速度試験は、水

温・塩分躍層や貧酸素水

塊の形成時期を考慮し

て設定する。

・沈降量・沈降物質調査

は、流入量や生物生産の

季節変化を考慮して設

定する。

・水質予測モデルのパラメ

ータ取得が主な目的とな

る。

・試験結果の評価のため現

場観測、底質の物理・化学

性状なども合わせ行う。

③ 生物生息域を

考慮した底質

環境調査

・生物の生息場と底

質環境との関わり

を把握する。

・底質現況調査結果等を

踏まえ、生物の生息場を

中心に調査を行う。

・現場観測

・底質の物理・化学性状

・生物の現存量

・底質以外の環境要素

(底層の水質など)

・対象とする生物の生活

史を踏まえ、調査時期・

頻度を設定する。

・対象とする生物の生息状

況、生態情報等を踏まえ調

査計画を立案する。

・対象とする生物によって

調査内容が異なってくる。

※青字:本手引きでは、詳細な解説や結果の見方についてはふれていない。

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② 底質に係る物質循環把握調査

 底質に係る物質交換の各要素を測定し物質交換量把握の基礎資料を得る

底泥からの栄養塩溶出量( 、 酸化還元状況 水温に

)よる違い

底泥への沈降量

水中及び底泥の有機物分解量

系外への移動量

試験対象試料の基本性状

・リンの溶出量※3・・・・・・D・T-P,D・PO4-P

・窒素の溶出量※3・・・・・・ ・ D T-N,NH4-N,NO

2-N,NO

3-N

・有機物の溶出量※3・・・・・・ ・ ・ D COD,D TOC

・・・・・・・実験環境の管理 pH,DO,ORP

・・・・・・・沈降物質の重量 SS,強熱減量(VSS)

・沈降物質 の性質※4

・・・・・・栄養塩 T-N,NH4-N,NO2-N,NO3-N,      T-P,PO4-P

・・・・・・ ・有機物 COD,D COD,TOC

・・・・・・クロロフィル 、フェオフィチン生物体 a

・底泥の微生物活性※3・・・・・・ ETS活性

・・・・・・・湖底の堆積物の起源 安定同位体比

( )・・・・・・・酸素消費量 DO消費速度試験 DO,COD,TOC

・・・・・・・水の流出入に伴う移動量 栄養塩項目を中心として

・直接採取による移動量※5・・・・・・ 、 漁獲量 生物体としての              N,P現存量

①・ 底質現況調査の項目を実施※6

③ 生物生息域を考慮した底質環境

調査

 生物の生息場と底質環境との関わりを把握する

生物の現存量

底質現況調査

底質以外の環境要素との関係

・・・・・・ 、・生物生態情報の把握 文献調査 学識者等への             ヒアリング

・・・・・・・生物の現存量の季節変化 生物の生活史の把握

・・・・・・ 、・生物の生息域調査 生息場環境 現存量

・・・・・・・生物の現存量調査 単位あたりの生息量

、 、DO底層の水温 塩分 など※7

調査名 目的 把握する事項 調査項目の構成例

:※3 調査の目的に応じて調査項目を選定する

① 底質現況調査

 底質環境の概況を面的に把握する

簡便な現場観測により面的概況を把握

主要地点を対象とした物理・化学性状項目等

による現況の把握

・・・・・・・五感による総合指標項目 泥種,臭気,色相,粒度

・・・・・・・器機による把握 ORP(酸化還元電位),pH

・・・・・ ( )・物性の把握 含水率 又は含水比 ,粒度分布※1,比重

・・・・・・・有機物含有量の把握 強熱減量,COD,TOC(有機炭素)

・・・・・・・栄養塩含有量の把握 T-N,T-P 2※

①・ 底質現況調査の項目を実施※6

:※4 調査の目的に応じて性質の項目を選定する

:※7 生態情報を考慮して項目を設定

・・・・・・・還元状況の把握 硫化物:※1 底泥の巻き上がりが水環境に大きな影響を及ぼす湖沼では必要となる: (※2 必要に応じて各形態 NH

4-N,NO

2-N,NO

3-N,PO

4)-P も調査する

:※5 漁業等により系外への移動量が多い場合に実施する

、「 」※6:調査地点において 底質現況調査 と同様の調査を実施する

※生物に関する調査は、生物の生息環境を総合的にとらえることが必要である。ここでは、全体の一部しか調査項目を記載して

いないので、実際には、目的に合わせて調査項目を設定することが必要である。詳細については学識者等に相談するとよい。

図 2.2 湖沼における底質環境調査の構成フロー

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2.2 底質環境調査計画の立案

2.2.1 調査地点の配置

■調査地点配置の考え方

①底質現況調査

・湖沼全体の底質状況を把握するため面的に調査地点を配置する。

・面的な調査は、調査地点数が増え、費用が嵩張る。このため、面的に調査を実施する項目は

現場観測項目を中心とし、底質の物理・化学性状調査は主要な地点で実施する。また、調査

の目的に応じて、深度方向の地点も実施する。

・主要な地点とは、湖央部、流入部、流出部とし、その他、湖沼の特性に応じて地点を追加す

る。なお、底泥の堆積メカニズムは、4.3 節を参照願いたい。

・調査地点配置の目安としては、「国土交通省の湖沼技術研究会の底質ワーキング」(以下、「底

質ワーキング」という)での統一調査手法を参考にするとよい。

現場観測項目 :メッシュ状に 1.5~3.0km 間隔

底質の物理・化学性状項目:2~3メッシュごとに1ヶ所程度

②底質に係る物質循環把握調査

・物質循環を把握するための調査地点は、底質現況調査結果等を踏まえ、湖沼の特性毎の代表

的な箇所とする。基本的には底質現況調査における主要な地点と同様とし、必要に応じて調

査地点を追加する。

・現場観測及び底質の物理・化学性状調査は、物質循環を把握するための調査地点と同様とし、

必要に応じて調査地点を追加する。

③生物生息域を考慮した底質環境調査

・底質現況調査結果、既存の生物調査結果等を踏まえ、生物の生息場を中心として調査地点を

配置する。

・但し、対象とする生物の生態特性によって調査地点が異なってくることから、詳細について

は、学識者等に相談するとよい。

■底質調査地点の配置にあたっての留意事項

・調査地点の配置にあたっては、底質環境マップを活用するとよい(図 2.3 参照)。底質環境

マップは、底質調査計画立案において調査地点の設定の基礎資料として活用することを目的

に作成する。また、底質調査結果の解釈や評価の基礎資料としても有用である。

・湖底地形が谷や崖のような箇所では、少しのずれで泥種や含有量が大きく変わることがあり、

このような箇所に調査地点を配置することは好ましくない。調査地点の配置時には湖盆地形

図を必ずチェック(下記参照)する。なお、現在では調査地点へはGPSにより精度よく船

を移動させられるが、例え作業中アンカーを打っても船が風や流れで地点をある程度は移動

してしまうことを念頭に調査地点を配置する必要がある。(4.1 節参照)

<湖盆地形図の確認事項>

・調査地点が崖のような箇所となっていないか。

・調査地点が谷部といった湖底地形が変化しやすい箇所となっていないか。

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(1)底質環境マップの活用

湖沼における底質環境は、流水の流出入状況、湖盆形態に大きく影響を受ける。また、調査

結果の評価に当たっては親水や漁業等、湖沼の利用状況を考慮する必要がある。このようなこ

とから、底質調査に当たっては既存資料を活用して事前に底質環境マップを作成することを推

奨する。

底質環境マップには以下の情報を記載するものとする。例を図 2.3 に示したが、作成に当た

っては湖沼地形図、環境情報図を基図とするとよい。また、既往の水質・底質調査結果が得ら

れている場合にはそれらも活用する。

1)地形:湖盆地形、流入河川、流出口

2)利用状況:親水利用箇所、漁業権指定状況、主要漁場、法・条例指定状況等

3)各種観測所や施設:水位・流量観測所、水質自動観測所、水門・閘門、取水施設等

4)水質・底質・流況:流入水質、流量、水温躍層の形成、泥種・泥色・泥臭、湖流等

5)周辺環境:主要な周辺環境、水辺環境等

6)その他

・調査地点が流入河川や潮汐に伴う流れの影響を極端に受けやすい箇所となっていない

か。

・調査地点の基本的考え方は、「河川水質調査要領(案)参考資料 平成 17 年 3 月 国土交通

省」(以下、「河川水質調査要領」という)、「改訂新版 建設省河川砂防技術基準(案)同解

説 調査編」(以下、「河川砂防技術基準」という)等を参考にするとよい。

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図 2.3 底質環境マップの例

流出

流入

0

1

2

3

4

5

S56

S58

S60

S62

S64

H3

H5

H7

H9

H11

H13

H15

BO

D(m

g/L)

0

10

20

30

40

50

60

1994

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

日流

量(

×10

6m3)

流入

水質

流量

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(2)主要な調査地点の配置について

底質現況調査における主要な地点とは、湖央部、流入部、流出部とする。これは、底質が流

入河川との距離、 深部の位置、湖盆形態によって、その分布特性が異なるためである。主要

な地点の配置にあたっては、湖内への流入・流出、塩水の流入状況、躍層(水温、DO、塩分)

形成状況と湖盆形態を考慮するとよい。 湖底堆積物は陸域からその水域に直接排出され、あるいは河川等を通じて流入し堆積したも

のと、水域内で植物プランクトンを起源として沈殿堆積したものに分かれる。これらの物質は

水域内では懸濁物質として、あるいは懸濁物質に吸着されて存在したものが、懸濁粒子の沈降

特性と水の流動によって選択的に分布域を決定されている。つまり、流速の速い水域では比重

が大きく粒子が粗い底質が分布し、流速の遅い水域では比重が小さく粒子の細かい底質が分布

する。このように、堆積メカニズムを踏まえて調査地点を設定していく必要がある。

なお、小川原湖のデータによると図 2.4 に示すとおり、COD、T-Nは、湖央部で高く、

上流部、下流部で低くなる傾向が見られる。これは、一般的に湖央部は水深が深く、躍層が形

成されるため、躍層下では水温が低く、溶存酸素がないため有機物の酸化分解が遅く、また、

流入、流出に比べ、流れが弱いことからプランクトンによる有機物が沈積しやすいためと考え

られる。なお、強熱減量もCOD、T-Nと同様な傾向になるものと考えられるが、上流部で

も高くなる傾向が見られる。

一方、T-Pについては、流入部で高く、下流部に近づく程、値が低くなる傾向がある。こ

れは、水中の土粒子と結合したリンが、流入河川から湖沼に流入することで流速の低下に伴い

沈降が促進され、流入部に近いほどT-P含有量が高くなるものと考えられる。

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20

図 2.4 底質の平面分布(小川原湖)

※この図のデータは、小川原湖で過去に実施された様々な調査結果を単純に流入部、湖央部、流出部の3つのエ

リアに区分したものである。

※強熱減量の異常に高い値については、試料の調整段階で木片、貝殻、動植物片などの異物の除去が不十分であ

った可能性が考えられる。

(3)現場観測項目と物理・化学性状項目の関係

湖沼全体の底質環境を簡便に把握するのには、現場観測項目(泥種、色相、臭気等)を活用

するとよい。また、既に現場観測データがある場合においては、物理・化学性状調査地点を配

置する際に役立つ。

底質環境は、図 2.5 に示すとおり現場観測項目(泥種、色相、臭気)によって、おおまかに

類型化(流入部、湖央部、流出部)される。これは、図 2.4 で示したように底質の物理・化学

性状項目の平面分布特性との関連性が見られる。

0

50

100

150

200

0 1 2 3 4

COD(

mg/g)

上流部 湖心部 下流部流入部 湖央部 流出部

高い

0

1

2

3

0 1 2 3 4

T-P(

mg/g)

流入部 湖央部 流出部

高い

低い

0

20

40

60

80

0 1 2 3 4

強熱

減量

(%)

上流部 湖心部 下流部流入部 湖央部 流出部

高い

0

2

4

6

8

10

12

14

0 1 2 3 4

T-N(

mg/g)

流入部 湖央部 流出部

高い

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21

泥 種 臭 気 色 相

図 2.5 現場観測項目の平面分布(小川原湖)

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22

(4)底質の物理・化学性状調査の深度方向の調査について

湖底堆積物中における有機物や栄養塩含有量濃度は図 2.6 に示すように、表層から深度方向

に向かって濃度変化があり、特に 30cm程度まではその変化が大きいことに留意する必要があ

る。なお、深度方向の濃度変化は調査域によって項目間に差が見られる。

底質の物理・化学性状調査は通常表層泥を分析の対象とするが、上記の挙動を踏まえ代表地

点においては底質現況調査の一環として深度方向の調査を数年に 1 度程度は実施しておく必要

がある。

図 2.6 底質の物理・化学性状の深度方向変化(小川原湖)

※小川原湖における底質調査の概要を資料編の第二編 第2章に記載しているので参考にするとよい。

J

T-P

A G24

含水率

強熱減量

T-N

0cm

10cm

20cm

30cm

40cm

50cm

0 50 100含水率(%)

0cm

10cm

20cm

30cm

40cm

50cm

0 10 20 30強熱減量(%)

0cm

10cm

20cm

30cm

40cm

50cm

0 2 4 6 8 10 12T-N(mg/g)

0cm

10cm

20cm

30cm

40cm

50cm

0.0 1.0 2.0T-P(mg/g)

0cm

10cm

20cm

30cm

40cm

50cm

0 50 100含水率(%)

0cm

10cm

20cm

30cm

40cm

50cm

0 10 20 30強熱減量(%)

0cm

10cm

20cm

30cm

40cm

50cm

0 2 4 6 8 10 12T-N(mg/g)

0cm

10cm

20cm

30cm

40cm

50cm

0.0 1.0 2.0T-P(mg/g)

0cm

10cm

20cm

30cm

40cm

50cm

0 50 100含水率(%)

0cm

10cm

20cm

30cm

40cm

50cm

0 10 20 30強熱減量(%)

0cm

10cm

20cm

30cm

40cm

50cm

0 2 4 6 8 10 12T-N(mg/g)

0cm

10cm

20cm

30cm

40cm

50cm

0.0 1.0 2.0T-P(mg/g)

小値 平均値 大値

流入部 湖央部 流出部

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23

2.2.2 調査項目の選定

■調査項目選定の考え方

①底質現況調査

・底質現況調査は、面的な調査となることから簡易で安価な調査である現場観測項目を主とし

て実施し、主要な地点で底質の物理・化学性状調査を実施する。

・現場観測項目とは、泥種、臭気、色相、ORP(酸化還元電位)、粒度等である。

・含水率、強熱減量、COD、T-N、T-P等の項目は相互の関連性が高いことから、相関

を考慮して調査項目の選定を行うとよい。

②底質に係る物質循環把握調査

・溶出速度試験では、水質予測モデルで用いられるパラメータの項目は、一般的に、窒素、リ

ン、CODであり、これらの項目について実験水の水質を経時的に分析することで溶出速度

を算出する。

・溶出速度試験結果の評価のため、現場観測、底質の物理・化学性状などについても合わせて

調査を行う。項目は、溶出速度試験の項目及び底質現況調査の考え方を踏まえ選定するもの

とする。

・沈降量・沈降物質調査では、水質予測モデルで用いられるパラメータの項目は、一般的に、

SS、COD、窒素、リン、クロロフィルaであり、これら項目についてセジメントトラッ

プした沈降物の分析を行うことで沈降速度を算出する。

・沈降量・沈降物質調査結果の評価及び沈降速度を算出するため、セジメントトラップ設置水

深における水質分析も合わせて行う。項目は、沈降量・沈降物質調査と同様とし、必要に応

じて、そこの水を評価するために、生活環境項目、富栄養化関連項目を追加する。

・物質循環の観点から漁業が盛んな湖沼においては、漁獲に伴う N,P の系外への移動量も把握

する必要がある。

③生物生息域を考慮した底質環境調査

・生物の生息環境と係わる項目を主体として調査を実施する。なお、底質等と生物の生息環境

との関係を参考として表 2.5 に示しているが、具体的には学識者等に相談するとよい。 ■底質調査項目の選定にあたっての留意事項

・底質と底層水質は、お互い影響しあうことから、底質を評価するためには、底層水質も合わ

せて把握することが望ましい。項目は、生活環境項目、富栄養化関連項目等となる。

・調査項目の選定にあたっては、項目間の相関、予算(分析単価)等を考慮して調査項目を選

定するとよい。

・調査項目の選定にあたっては、「河川水質調査要領」、「河川砂防技術基準」を参考にすると

よい。

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24

(1)底質調査に係る項目とその分類 底質調査に係る項目とその分類を表 2.3 に示す。それぞれの項目の意味合いは以下のとおり

である。詳細については、「河川水質調査要領」等を参照するとよい。

①現場観測関連

現場観測関連項目の泥種、臭気、色相などは有機汚濁環境関連項目と関係が見られ、現場

観測関連項目を調査することで、底質の汚濁の概況を知ることができる。なお、泥種、色相、

臭気、ORP(酸化還元電位)等については現場観測により簡易に把握することができる。

また、pHやORP(酸化還元電位)は、底泥の酸化還元状態や溶出の程度を判断する項

目であり、水と接する底泥表面の化学的状況を判断できる。

②底質の物理・化学性状関連

底質の物理・化学性状関連項目のうち有機汚濁の項目は、有機汚濁の程度を判断する項目

である。含水率は有機汚濁、栄養塩の項目との関係が見られる。栄養塩の項目は水域の富栄

養化に大きく影響するため湖沼等の閉鎖水域では調査項目として選定する。底泥の還元状態

が進むと水中の硫黄化合物や硫酸イオンが還元されて、硫化水素を発生するとともに金属と

結合して硫化物となる。このため、底泥還元状態の推移の基礎資料となる。海水の混入する

水域などでは硫化物含有量が多くなるため項目として選定する。 ③物質循環関連

物質循環関連項目は、各試験、調査等により調査項目が異なる。しかし、基本的には窒素、

リン、有機物関連の項目が中心となる。なお、物質循環の観点から漁業が盛んな湖沼におい

ては、漁獲に伴う N,P の系外への移動量も把握する必要がある。

表 2.3 底質調査に係る項目と分類

分類 細分類 主な調査項目(赤字は主要な項目)

五感による総合指標項目 泥種、臭気、色相、粒度※ 現場観測関連

器機による項目 pH、ORP(酸化還元電位)

基本物性 含水率(又は含水比)、粒度分布、比重

有機汚濁 強熱減量、COD、TOC(有機炭素)

栄養塩 窒素、リン

底質の物理・化

学性状関連

硫化物 硫化物

底泥溶出速度試験 リン溶出量:D・T-P,D・PO4-P

窒素溶出量:D・T-N,NH4-N,NO2-N,NO3-N

有機物溶出量:D・COD,D・TOC

底泥の微生物活性:ETS 活性

実験環境の管理:pH,DO,ORP

沈降量・沈降物質調査 沈降物質の重量:SS、強熱減量(VSS)

沈 降 物 質 の 性 質 : T-N,NH4-N,NO2-N,NO3-N,

T-P,PO4-P,COD,D・COD,TOC,クロロフィル,フ

ェオフィチン

底泥の堆積物の起源:安定同位体比

酸素消費速度試験 DO,COD,(TOC)

物質循環関連

系外への移動 水の流出入:栄養塩項目中心

直接摂取:漁獲量,生物体としての N,P 現存量 ※粒度は、現場にてスリツブシ試験にて実施する(3.1 節参照)。

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25

○栄養塩関連項目の調査の意味 窒素、リンは植物プランクトン等の生物体を構成する元素であり、植物プランクトン等の増殖

に不可欠なものである。このため、窒素、リンの量とその物質循環を把握することは富栄養化現

象の解析に不可欠となる。窒素とリンについての湖沼における物質循環の模式図を図 2.7 に、水

中における窒素とリンの形態を表 2.4 に示す。

図 2.7 窒素とリンの湖沼における物質循環と調査項目との模式

表 2.4 水中における窒素とリンの形態

無機態(I-N,I-P※) 有機態(O-N,O-P)

溶解性

(D・T-N、

D・T-P)

溶解性無機態窒素(NH4-N,NO2-N,NO3-N)

溶解性無機態リン(D・PO4-P) ・栄養分として植物プランクトンに取り込

まれる。 ・NH4-N、D・PO4-P は、主に流入河川、生物の排泄、死滅分解、底泥からの溶出により供給される。

・NH4-N は、酸化状態で硝化により NO2-N、NO3-N に変化する。

・NO3-N は脱窒菌によって N2ガスとなる。

溶解性有機態窒素(D・O-N)

溶解性有機態リン(D・O-P) ・D・O-N は、バクテリアや動物の補食をとおして分解されアミノ酸や尿素として存在する。

・D・O-P は、主に有機リン系農薬類、工場排水、排泄物などとして存在する。

粒子性

(P・T-N、

P・T-P)

粒子性無機態リン(P・PO4-P)

※粒子性無機態窒素はほとんど存在しない。

・P・PO4-P は、鉄などの金属に吸着して存在

しているものが多い。

粒子性有機態窒素(P・O-N)

粒子性有機態リン(P・O-P) ・主に植物プランクトンなどの水中生物

またはその死骸の成分として存在する。

※I-Pは、PO4-P の他に重合リン酸態リンが含まれるが、加水分解してその大部分が PO4-P の形で存在する。

底泥では、有機態栄養塩の堆積、その後、微生物等による分解が進む。

底泥の表層部が還元状態になると、栄養塩(NH4-N、D・PO4-P)の溶出が起こる。

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26

○生物からみた物質循環の視点 生物からみた物質循環としては、鳥や魚の捕食及び漁業による系外への持ち出しが挙げられ

る。特に、漁業が盛んな湖沼では、物質循環に大きな役割を与えている。すなわち、ヤマトシ

ジミなど漁業対象種の漁獲に伴い系外に栄養塩

を持ち出すこととなり、物質循環を検討する上

では、無視できない量となっている。宍道湖の

事例では、河川からの窒素供給量の約 15%がヤ

マトシジミの成長に使われている。

したがって、漁業が盛んな湖沼では、漁業に

伴う系外への持ち出しについても調査項目とす

ることが必要である。

図 2.8 宍道湖全体での窒素収支(8月)

(2)底質に関連する現場観測項目

一般的に、泥種、臭気、色相、ORP(酸化還元電位)といった現場観測項目は、汚濁の概

況を知ることができる項目である。ORPは底泥からの栄養塩や金属の溶出と関係がある項目

である。小川原湖でのデータで見てみても、底質の現場観測項目は、底質の物理・化学性状項

目との関連性が見られる。 底質の物理・化学性状調査まで実施できない時は、現場観測項目だけでも実施することは有

効である。この場合には、既往の物理・化学性状データと現場観測項目を整理しておくことで、

汚濁の程度を推定することができる。

図 2.9 現場観測項目と底質のCODとの相関(小川原湖)

※小川原湖における底質調査の概要を資料編の第二編 第2章に記載しているので参考にするとよい。

砂 シ

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

CO

D(m

g/g

)

無 土

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

CO

D(m

g/g)

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

CO

D(m

g/g)

平均値

出典:食物連鎖を利用した水質浄化技術 山室真澄 地質ニュース 520 号

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27

(3)有機汚濁関連項目の相関性 有機汚濁関連項目の項目間の相関を図 2.10 に示す。有機汚濁関連項目は、相互の関連性が高

い。

図 2.10 項目間の相関(小川原湖)

※小川原湖における底質調査の概要を資料編の第二編 第2章に記載しているので参考にするとよい。

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0 5 10 15

T-N(mg/g)

T-P(mg/g)

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0 50 100 150

COD(mg/g)

T-P(mg/g)

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

10.0

12.0

0 50 100 150

COD(mg/g)

T-N(mg/g)

0

5

10

15

20

25

30

35

0 50 100

含水率(%)

強熱

減量(

%)

0

20

40

60

80

100

120

140

0 50 100

含水率(%)

COD(mg

/g)

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

10.0

12.0

0 50 100

含水率(%)

T-N(mg

/g)

T-P(mg

/g)

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0 50 100

含水率(%)

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0 10 20 30 40

T-P(%)

強熱減量(%)

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

10.0

12.0

0 10 20 30 40T-N(mg/g

強熱減量(%)

0

20

40

60

80

100

120

140

0 10 20 30 40

COD

(mg/g)

強熱減量(%)

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28

(4)底質等と生物の生息環境との関係 底質は、その場の長期にわたる環境特性の蓄積が性状を特徴づけることが多く、水質のよう

に、気象条件等の外的要因によって急激に変化するものではない。このため、湖底を主体的な

生息場とする生物は、底質と密接な関係を常に保っており、これらの生物の出現状況を把握す

ることは、底質を評価する際の指標としても有効となる。

表 2.5 には、小川原湖の代表的な底生生物の底質と生息環境との関係を示したが、出現生物

は水域ごとに異なるため、生物調査にあたっては、地元の研究者や学識者等に相談するとよい。

【貝 類】

一般に、底質との係わりが も取り上げられる底生生物である。

種によって好む底質環境は様々であるが、小川原湖の代表種であるヤマトシジミを例に

取ると、夏場でも溶存酸素濃度が高い水準を保つ浅い湖岸部(湖棚部)を生息場としてい

る。また、有機物の少ない粗めの砂や礫を主体とした底質を好み、シルト・粘土質の底質

では持続的な生息や再生産活動が難しいことが知られている。

なお、小川原湖のヤマトシジミと底質との関係については、別途、資料編の第2章にも

記載しているので参考にするとよい。

【魚 類】

小川原湖の代表的な魚類としては、全国有数の漁獲量を誇るシラウオやワカサギがあげ

られる。これらの成魚は中層を遊泳しているため、底質との係わりは少ないが、湖底の環

境は産卵場として非常に大切となる。そこで、シラウオとワカサギについて、産卵場と底

質環境との関係について整理した。

産卵場として好適な環境は、ヤマトシジミとほぼ同じであり、水深 3m 以浅の湖岸で、か

つ砂や礫の割合が高い砂地である。

なお、湖底には昆虫類(ユスリカ類)や貧毛類(イトミミズ類)といった小型の底生生物が

多数生息しており、これらは底生魚類や大型の甲殻類等の餌資源として重要であり、湖沼底層

部の生態系を支えている。また、底泥からの栄養塩類の回帰現象との関係も研究されるほど底

質との関係は深い生物である。昆虫類や貧毛類は出現種が比較的多く、その生息環境は多様で

あることから、表 2.5 には特定種を取り上げなかった。しかし、これらを調査対象にする場合

には、学識者等に相談するとよい。

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29

表 2.5 底質等と生物の生息環境との関係

※ 表中の[ ]内は、研究対象となっているフィールドを示すが、文献中に研究フィールドが明記されていない場合は、「一般知見」として表記した。

※ 使用文献名は巻末に記載

○ △ ○ × ○ ×

○ × ○ △

○ △ ○ ○

○ × ○ ×

不明

[大阪府淡水魚試(場内実験)]

その他

硫化水素濃度

高 い低 い

水 温

低 い

塩 分

高 い 低 い

 (30℃まで生息可能)

・成魚の適正水温範囲:0~18℃45)

・産卵盛期水温:5~8℃45)

・産卵盛期水温:6℃47)

高 い

・塩分2.5‰以下でふ化までは問題なし48)

・水温25℃以上に達すると斃死しやすい35)

[宍道湖]

[小川原湖][小川原湖]

・淡水に近い状態で生息できる25)

 影響がある21, 31)

・約10℃を下回ると底質にもぐって冬眠する25, 29)

・高温域への急激な温度変化は生残に大きな

・成貝と稚貝の温度耐性は同程度21, 31)

・生存可能な範囲:0~32℃21, 31)

[宍道湖]

・塩分0~22psuでは生存に影響なし21, 22)

・生息可能な範囲:1.5~22psu21, 30)

・稚貝は高塩分に弱い21, 30)

[宍道湖]

・水温28℃下では3mg/L以上の濃度で14日以内

 に全滅21, 26)

・硫化水素濃度0.5mg/L以下では影響なし21, 26)

・成貝と稚貝の硫化水素耐性は同程度21, 26)

・分布と生息密度は貧酸素が重要な制限要因

 となっている27)

[兵庫県水試(室内実験)]

・ふ化可能塩分範囲:0~34.4‰45)

[一般知見]

不明

 (15℃前後が奇形が少ない)

・正常ふ化水温範囲:4.8~20.0℃43)

・ふ化可能水温範囲:3.5~23.0℃43)

・成魚は海水から淡水まで生息可能44)

・ふ化可能塩分範囲:0~31.9‰44)

[兵庫県水試(室内実験)]

[一般知見]

・貝類の他種より塩分耐性が強い34)

不明

[(室内実験][一般知見]

浅 い 深 い 細かい 中 粗い

湖岸部(湖棚) 湖央部 シルト・粘土 砂 礫

貝 類 ヤマトシジミ ○ × × ○ ○ × ○ ○ ×

カラスガイ ○ × ○ ○ × ○ ×

イシガイ

魚 類 シラウオ ○ × × ○ ○ × ○

[産卵場]

ワカサギ ○ △ × ○ ○ × ○

不明

不明

[大阪府淡水魚試(場内実験)]

 柳の細根にも産卵46)

・産卵基質は河床の礫が主体46)

[一般知見]

・粒径2~3mmの砂礫底に産卵45)

 れなかった38)

[高梁川(岡山県)]

[一般知見] [一般知見]

<稚貝(体長2mm以下)>

・30日間、水温28℃下の実験では、

 DO濃度1.5mg/L以上で生存に支障なし21, 22, 28)

・水温が20℃以下に低下すると、無酸素状態

 でも健康状況に影響ない21, 28)

物理環境    底質環境等

  ベントス

水 深

多 い少ない

有機物量(強熱減量)粒 度

化学環境

高 い低 い

・水深2~8m33) ・底質は泥質が中心で、多少砂が混じる程度

 まで生息34)

・粒径0.25mm以上の砂が90%以上占める40)

[福島県内水面]

・産卵基質は砂礫が多く、流木や渓畔に生える

[中海・宍道湖]

・産卵場は湖岸39)

[一般知見]

 多く産卵46)

・稚魚は湖岸部に広く分布、中央部では少ない39)

[一般知見]

[水産用水基準]

・DO濃度6mg/L以上42)

不明

溶存酸素濃度

 り重量は少なくなる傾向25)

・強熱減量が大きければ、個体数、単位面積当た

・好適環境:強熱減量5%以下21, 22)

・生息限界:強熱減量14%21, 22)

<成貝>

<稚貝(体長2mm以下)>

 分布39)

・粒径0.25~1.00mmの砂地で産卵41)

[涸沼]・水深5m以浅の湖棚の生息密度が高い29, 32)

・水深約3m以浅の湖棚部に高密度に生息22)

<成貝>

・生息限界:シルト・粘土含有率54%以下23)

[小川原湖]

・生息限界:シルト含有率5%以下23, 24)

 る有機物の少ない場所で行われている35)

・稚貝の繁殖は、ヘドロの少ない場所、いわゆ

・成貝と稚貝の無酸素耐性は同程度21, 28)

・生息限界:強熱減量3%以下24)

[小川原湖]

[宍道湖]

・好適環境:強熱減量8%以下、COD5mg/g未満23)

[涸沼]

[宍道湖]

・短期的な酸素不足にはかなり耐えられる25, 29)

[小川原湖]

・生息限界:シルト・粘土含有率50%22)

・含有率40%以上では現存量少ない19,20)

[宍道湖]

・好適環境:飽和度80%以上21, 22)

・好適環境:シルト・粘土含有率10%以下21, 22)

・生息限界:飽和度50%以上21, 22)

[小川原湖][小川原湖]

・水深10m付近まで生息を確認19, 20)

[宍道湖]

 ⇒夏場の嫌気化層は8~10m付近であり、

  ヤマトシジミと嫌気化層との関係は大

  きい

[高梁川(岡山県)]

・稚魚は湖岸部に広く分布、中央部でも相当量

[中海・宍道湖]

・シルト・粘土の割合が高い場所では卵は発見さ

[小川原湖]

・砂泥底に産卵36)

[網走湖]

 場を形成37)

・粒度が中粒砂以上で占められる場所に産卵

 発見37)

・産卵場は湖岸39)

・粗粒砂-細礫の割合が高い場所で多くの卵を

[水産用水基準]

・DO濃度6mg/L以上42)

・水深1mくらいの浅瀬に産卵36)

・水深2~3m以浅の砂地に産卵40)

[一般知見]

[福島県内水面]

・水深30~40cm、流速0.1m/s前後の場所に

・水深2~3mまでの砂地に産卵41)

・水深1~3mの砂礫底に産卵45)

<凡 例>

○:生息に適している条件 △:生息は可能であるが、あまり適さない条件 ×:生息に適していない条件

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30

2.2.3 調査時期・頻度の設定

■調査時期・頻度の設定の考え方

①底質現況調査

・小川原湖でのデータから、底質の季節変化特性は見られなく、季節変化は小さい。

・このため、調査時期は底質環境の悪化しやすい夏季を原則とし、調査頻度は1回/年でよい。

②底質に係る物質循環把握調査

・溶出速度試験の調査時期(採泥時期)は、底層の水環境(水温、DO、塩分等)を考慮し、

溶出のし易い時期と溶出のしにくい時期の2時期での実施を原則とする。具体的には、水温

躍層や貧酸素層が形成される夏季と循環期の冬季となる。なお、明確な水温躍層や貧酸素層

が形成されない湖沼では、夏季で代表することも可能である。

・沈降量・沈降物質調査では、外部からの流入物質と湖内で生じた物質(植物プランクトン等)

の合わされたものが沈降量として測定される。調査の主目的が湖内で生じた物質の沈降量を

把握することにあるため、植物プランクトン量が多い夏季を主に、外部からの流入物質の影

響が比較的少ない冬季を従として実施する。

③生物生息域を考慮した底質環境調査

・対象とする生物の生活史を踏まえ、調査時期、頻度を設定するものとし、具体的には学識者

等に相談するとよい。

■調査時期・頻度の設定にあたっての留意事項

・降雨時には流入河川から懸濁物質が湖内に流入し、流速の低下に伴って湖底に沈殿する。沈

降量・沈降物質調査の実施時期として、降雨量の多い時期には流入河川の影響を受けること

から、このような時期は避ける方が望ましい。また、海水が湖へ流入する湖沼では、春や秋

の潮位差が大きくなる時期には影響を受けやすいことから、同様に避けた方が望ましい。

(4.3 節参照)

・調査時期・頻度の設定にあたっては、「河川水質調査要領」、「河川砂防技術基準」等を参考

とするとよい。

Page 38: 「湖沼底質環境・調査手引き」(案) - MLIT「湖沼底質環境・調査手引き」(案) ~小川原湖の底質調査結果から言えること~ 平成21年3月

31

(1)底質の物理・化学性状の季節変化特性

小川原湖でのデータから、底質の物理・化学性状の季節による変化は見られなく、季節によ

る影響は小さいと言える。このため、調査時期は底質環境の悪化しやすい夏季を原則とし、調

査頻度は1回/年でよい。

図 2.11 に示す小川原湖での調査結果は、柱状採泥による試料の表層から深度 5cm までを混合

したものである。ちなみに、エクマンバージ採泥器では一般的に深度 10cm 程度までの泥を採取

できる。また、「改訂版 底質調査方法とその解説 社団法人日本環境測定分析協会」、「河川砂

防技術基準」では柱状試料の場合 10cm 程度の厚みの泥を試料としている。

通常、湖沼における底泥の堆積速度は一般的に年数 mm 程度といわれていることから、深度

5cm でもかなりの年月経過した土までも混合したこととなる。この様なことから結果的に季節

変化を捉えにくくしているものと考えられる。

なお、生物関連調査で実施されている酸化層、還元層での状況を把握するために底泥厚 1cm

程度の間隔での調査をする場合には、季節変化が得られやすいものと考えられ、調査の目的に

よっては、調査時期・頻度を考慮する必要がある。

図 2.11 底質の物理・化学性状の季節変化(小川原湖)

※小川原湖における底質調査の概要を資料編の第二編 第2章に記載しているので参考にするとよい。

変動係数:0.05 変動係数:0.08 変動係数:0.23

変動係数:0.02 変動係数:0.23 変動係数:0.13

変動係数:0.04 変動係数:0.12 変動係数:0.12

流出部

湖央部

流入部

平均値

0

20

40

60

80

100

11/20 1/18 6/6 8/21

含水

率(%

)

平均値

0

20

40

60

80

100

11/21 1/19 6/7 8/22

含水

率(%

)

平均値

0

20

40

60

80

100

11/20 1/17 6/6 8/23

含水

率(%

)

平均値

0

10

20

30

40

50

11/20 1/18 6/6 8/21

強熱

減量

(%)

平均値

0

10

20

30

40

50

11/21 1/19 6/7 8/22

強熱

減量

(%)

平均値

0

10

20

30

40

50

11/20 1/17 6/6 8/23

強熱

減量

(%)

平均値

0.0

1.0

2.0

3.0

11/20 1/18 6/6 8/21

T-P

(mg/

g)

平均値

0.0

1.0

2.0

3.0

11/21 1/19 6/7 8/22

T-P

(mg/

g)

平均値

0.0

1.0

2.0

3.0

11/20 1/17 6/6 8/23

T-P

(mg/

g)

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32

3.底質環境調査方法

3章では実際に底質環境調査を実施するにあたり、容易に調査結果を比較検討出来るようにす

るために現地や試験室で配慮すべき事項を調査方法として示した。なお、調査方法は既存の指針、

マニュアルを参考にしつつ小川原湖における経験なども踏まえとりまとめた。

3.1現場観測項目の測定

現場観測項目は、五感によるものと、計測器を利用するものに分けられる。本手引きでは、

五感によるものは観測結果の客観性を保持するため、基準指標を設けて実施することを基本と

する。同様な考え方を採用している例として、「底質の調査・試験マニュアル 社団法人底質

浄化協会」(以下、「底質の調査・試験マニュアル」という)の抜粋を以下に示す。

なお、現場での詳細については、「国土交通省の湖沼技術研究会の底質ワーキング」(以下、

「底質ワーキング」という)で検討されている(「底質ワーキング」については 4頁参照)。そ

の一環として実施された統一調査の方法を本手引きでは踏襲するものとする。また、色相、臭

気は判定基準の統一が、ORP(酸化還元電位)は計測方法の統一が検討されているので、成果

が公表された段階では本手引きと合わせて活用にされたい。

現場観測項目の調査方法(調査・試験マニュアルより抜粋)

<色相>

・色相は、色標(標準土色帖、日本色研色名帖等)を用いて記録することで、より客観

的なデータを取得できる。

・色相は、乾燥、酸化などの状態変化により変色することが多いため、底質採取後、速

やかに観察する必要がある。

<臭気>

・臭気は、「JIS K 0102-2008 工場排水試験方法」に示されている臭気の分類及び種類

の例を用いて表現を統一するとよい。

・臭気は、採泥から時間が経つと臭気が放散し、臭気がわかりにくくなることがあるの

で、現場で速やかに測定する必要がある。

<ORP(酸化還元電位)>

・ORP は、空気に触れるとすぐに変化してしまうため、現地ですみやかに測定すること

が原則である。

・やむをえず持ち帰る場合には、密閉容器にすきまがないように十分の量を入れ、乱さ

ないようにして空気との接触を避ける。

・現場用 ORP 計(白金電極)を用い、電極を底質に直接挿入して測定する。電極と底質

の接触を良くするために試料をたたいてやると良い。

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33

(1)泥種 泥種は、見た目で、砂、砂泥、泥、シルト、粘性土等の粒径の分類や混入物等を記載する。 泥種と底泥の有機物含有量との関係がある程度見られることから、底質の状況を簡易に面的

に把握するのに有益な情報である。 特に、「底質ワーキング」での統一調査では、スリツブシ試験により、泥種(砂分、シルト分、

粘土分)の状況を記録することとしている。本手引きでもこの手法を推奨する。

出典:「底質ワーキング」での「平成 20 年度湖沼底質統一調査計画(案)」

粒度の調査方法

粒度は、以下に示すスリツブシ試験により、砂分、シルト分、粘土分の存在を確認し、記

録する。 なお、スリツブシ試験により、砂分、シルト分、粘土分のうち2つ以上が確認された場合

は、その割合の高いものから順に判別し、たとえば砂とシルトの2種類が存在していてシル

トの割合が も高い場合には「砂混じりシルト」と記録する。 なお、粒径区分の定義は以下のとおりである。

礫 >2mm

粗砂 2~0.2mm

細砂 0.2~0.02mm

シルト 0.02~0.002mm

粘土 <0.002mm

スリツブシ試験

砂分、シルト分、粘土分の割合を見積もるために行う。少量の試料を指の間ですりつ

ぶすが、必要があれば水の中で行う。ざらざらしたり、きしんで引っかかる感じにより

砂分の存在が分かる。この操作で判別しにくい場合は、この試験を耳のそばで行うか、

歯で行えば、砂はきしむのではっきりわかる。 粘土質の土はさわった感じがぬるぬるして、指にくっついて離れない。かわいた状態

では洗わない限り落とせない。 シルト質の土は、さわるとやわらかくて粉のような感じがする。指についた土は、か

わいた状態でたやすく落とすことができる。 出典:「土質試験法」(第1回改訂版)土質工学会編

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(2)色相 泥の色相は、泥種、酸化・還元などの底質の状態によって変化し、色相と底泥の有機物含有

量との関係がある程度見られることから、底質の状況を簡易に面的に把握するのに有益な情報

である。 色標(標準土色帖、日本色研色名帖等)を用いて記録することで、より客観的なデータを取

ることが重要である。

図 3.4 標準土色帖

出典:http://www.fujihira.co.jp/ 富士平工業(株)

また、「底質ワーキング」での統一調査では、写真撮影などの留意点を示しているので参考と

するとよい。

出典:「底質ワーキング」での「平成 20 年度湖沼底質統一調査計画(案)」

(3)臭気

泥の臭気も色相、泥種と同様に、底泥の有機物含有量との関係がある程度見られることから、

底質の状況を簡易に面的に把握するのに有益な情報である。

臭気は、「工場排水試験方法 JIS K 0102-2008」に示されている臭気の分類及び種類の例を

用いて表現を統一するとよい。

泥色の調査方法 泥色は、「新版 標準土色帖(農林水産省農林水産技術会議事務局監修)」の色見本を参考

に Munsell 表示(「5YR3/1」等)及び土色名(「黒褐」等)を記録する。なお、泥色の判別は、

水の透視度の測定方法と同様に、太陽を背にするなど直射日光を避けた状態で行うこととす

る。

また、試料をバットに入れ、色見本を並べデジタルカメラで撮影する。

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35

表 3.1 臭気の分類と種類例

臭気大分類 臭気の種類 芳香性臭気 メロン臭、すみれ臭、キュウリ臭、芳香臭など 植物性臭気 藻類臭、青草臭、木材臭、海草臭など 土臭、かび臭 土臭、沼沢臭、かび臭など 魚貝臭 魚臭、肝油臭、はまぐり臭など 薬品性臭気 フェノール臭、タール臭、油臭、塩素臭、硫化水素臭、薬品臭など 金属性臭気 かなけ臭、金属臭など 腐敗性臭気 ちゅうかい臭、下水臭、豚小屋臭、腐敗臭など 不快臭 魚臭、豚小屋臭、腐敗臭などが強烈になった不快なにおい

出典:「工場排水試験方法 JIS K 0102-2008」

また、「底質ワーキング」での統一調査では、臭いの程度の記載方法、具体のにおいの表現を

記載しているので参考とするとよい。

泥臭の調査方法

泥臭は、JIS 規格を参考に、以下の臭気の分類と種類より「臭気の種類」をひとつ選定し、

その名称を記録する。

また、臭いの程度(強、弱、微)についても「強○○臭」、「弱○○臭」、「微○○臭」のよ

うに記載する。

泥臭の判断の参考として、具体的なにおいの表現による臭気の分類を以下に示す。

臭気の分類と種類の一例

臭気の大分類 臭気の種類

(0)無臭 無臭

(1)芳香性臭気 メロン臭、すみれ臭、きゅうり臭、芳香族など

(2)植物性臭気 藻臭、青草集、木材臭、海草臭など

(3)土臭、かび臭 土臭、沼沢臭、かび臭、(ドブ臭)など

(4)魚貝臭 魚臭、肝油臭、はまぐり集など

(5)薬品性臭気 フェノール臭、タール臭、油臭、油脂臭、パラフィン臭、塩素臭、

硫化水素臭、クロロフェノール臭、薬局臭、薬品臭など

(6)金属性臭気 かなけ臭、金属臭など

(7)腐敗性臭気 ちゅうかい臭、下水臭、豚小屋臭、腐敗臭など

※1( )は、出典に記載がないものの、過去の調査結果との継続性の観点から今回追記した臭気の

種類である。

※2出典の資料には(8)不快臭の記載があるが、これらは(1)~(7)の臭気を「強○○臭」とすれば表現

できると考えられるためここでは削除した。

出典:JIS K 0102(工場排水試験方法)、下水試験方法

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出典:「底質ワーキング」での「平成 20 年度湖沼底質統一調査計画(案)」

(4)ORP(酸化還元電位)

ORPは、底泥の酸化還元状態や溶出の程度を判断する項目である。リンは、嫌気状態(還

元状態)になると溶出が起こりやすくなる。また、底泥中の金属の硫化物が分解して硫化水素

の発生や重金属の溶出が起きる。 なお、「底質ワーキング」での統一調査では、ORPの具体的な計測手法について記載してい

る。本手引きでもこの手法を推奨する。

出典:「底質ワーキング」での「平成 20 年度湖沼底質統一調査計画(案)」

底泥のORPの測定方法 現地において採取した底泥のORPを、ポータブルのORPセンサーにより、試料の採取

直後に測定する。

エックマンバージ採泥器による採取試料は、バットにうつし、表泥にセンサーを1cm 程度

浸した後、10 分程おいて数値が安定してから結果を記録する。

コアサンプルは、採取後、泥が空気に触れないように、採取したままの状態(水を抜かな

い状態)で表泥センサーを1cm 程度浸した後、10 分程おいて数値が安定してから結果を記録

する。

具体的なにおいの表現による臭気の分類(参考)

具体的なにおいによる分類 小分類 大分類

(1) 1) きゅうりのにおい。 きゅうり臭 芳香性臭気

1) わかめ等のにおい。 海草臭 植物性臭気

2) 草のにおい。 青草臭 植物性臭気 (2)

3) ヒノキ、スギ等のにおい。 木材臭 植物性臭気

1) 土臭いにおい。 土臭 土臭、かび臭

2) 水田に水を張ったようなにおい。 沼沢臭 土臭、かび臭

3) かびくさいにおい。 かび臭 土臭、かび臭 (3)

4) 排水溝のにおい。 ドブ臭 土臭、かび臭

1) 生臭さのまじった魚のにおい。 魚臭 魚貝臭

2) 生臭さのまじった潮のにおい。貝くさいにおい。 はまぐり集 魚貝臭 (4)

3) 塩気のない油ののった秋刀魚を焼いたにおい。 肝油臭 魚貝臭

1) たまごの腐ったようなにおい。 硫化水素臭 薬品性臭気

2) 塩素、カルキのにおい。 塩素臭 薬品性臭気

3) アスファルト舗装工事のにおい。 タール臭 薬品性臭気 (5)

4) 病院等の薬品くささ。 薬品臭 薬品性臭気

(6) 1) 鼻血かでたときのように金属のようなにおい。 金属臭 金属性臭気

1) 清掃が行き届かない(公衆)トイレのようなにおい。 下水臭 腐敗性臭気

2) 生ゴミのにおい。 ちゅうかい集 腐敗性臭気

3) 家畜や動物園のにおい。 豚小屋臭 腐敗性臭気 (7)

4) 何ゴミの腐ったようなにおい。 腐敗臭 腐敗性臭気

※本表は、文献等からの転載ではなく今回独自に記載したものである。

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3.2 底質の物理・化学性状調査

底質の物理・化学性状調査のための試料採取等については、「改訂新版 建設省河川砂防技

術基準(案)同解説 調査編 社団法人日本河川協会編」(以下、「河川砂防技術基準」という)

に具体的な記述があるが、必ずしも徹底されていない。 そこで、本手引きは、「河川砂防技術基準」の遵守を第一とする。以下に「河川砂防技術基

準」における当該ヶ所の抜粋を記載した。

なお、「河川砂防技術基準」や「改訂版 底質調査方法とその解説 社団法人日本環境測定

分析協会」(以下、「底質調査方法とその解説」という)では表層泥の定義の記述がない。これ

ら書籍には柱状試料の場合 10cm 程度の厚みの泥を対象とする記述がある。また、エクマンバ

ージ採泥器では一般的に深度5~10cm 程度までの泥を採取できる。このことから、本手引きで

は、表層泥の採泥厚は 10cm 程度までとした。

但し、底質をモデル化する場合や生物関連調査で実施されている酸化層、還元層を把握する

場合などでは、底泥を 1cm 程度の厚さで詳細に含有量を調査することもある。

試料の採取方法(河川砂防技術基準より抜粋)

<試料の採取>

・底泥は原則としてエクマンバージ型採泥器、コアサンプラーまたは、これに準ずる採

泥器を用いて採取する。

・基本的には表層試料でよいので、その場合にはエクマンバージ型採泥器が も一般的

である。

・採泥は同一地点について3回以上行い、それらを混合して底泥試料とする。

・エクマンバージ型採泥器の採泥方法は、表層付近の試料が撹乱されてしまう場合があ

るので、特に表層の不撹乱試料を採取する場合は、コアサンプラー等の表層泥をでき

るだけ撹乱することが少ない採泥方法を採用する。

・柱状試料の場合には1地点1回の採泥でも差し支えない。

<試料の調整>

・採取した底泥は原則として清浄なホーロー製のバット※に移し、30 分間静置して、そ

の上澄液を捨てる。

※試料に影響を与えない他の容器を用いても良い。

・次に、木石、貝殻、動植物片などの異物を除いたのち均等に混合し、適切な量を試験

室に持ち帰る。

・採泥時の試料の調整方法は、採泥した適切な量を四分法でその 500~1000g を清浄な

ポリビンまたは、ポリエチレン袋に入れて試験室に持ち帰る。

・ただし、不撹乱試料を採取する場合、あるいは、柱状試料から分析用試料をとるとき

の採取量が少ない場合はこの限りでない。 <試料の運搬> ・試験室に持ち帰る間の運搬中おおび、分析するまでの間は原則として4℃程度で保存

する。

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(1)試料の採取 底泥の採取方法は、基本的な形式によって、ドレッジ式採泥器、グラブ式採泥器、柱状採泥

器の 3 種に分けられる。表層泥を対象とする場合、エクマンバージ型採泥器等のグラブ式が比

較的簡単に採泥できる。

表 3.2 採泥器の長所・短所

採泥方法 名 称 長 所 短 所

ドレッジ式 熊田型 粒子が粗くても採取可 撹乱試料しかとれない

エクマンバージ型 小型で操作性が良い 微表層が撹乱しやすい 砂質の採取は困難

スミス・マッキンタ

イヤ型 操作性が良いがエクマ

ンバージ型より大きい 微表層が撹乱しやすい 砂質の採取も可能

グラブ式

港研式 小型で操作性が良い 大ざっぱな分析用

押し込み型、重力型、

衝撃型等 不撹乱試料が確実に得

られる。 装置が大がかり 大型船が必要

柱状式 (コアサン

プラー) ダイバーによる採泥 不撹乱試料が確実に得

られる。 人力では砂質の採取が

困難 出典:「底質の調査・試験マニュアル」

図 3.1 エクマンバージ型採泥器

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(2)試料の調整 採取した泥は、分別・ふるいを実施する必要がある。有機汚濁関連項目は、一般的に泥の異

物(木石、貝殻、動植物片等)の除去を行い、2mm のふるいを通過したもののみを試料として

試験対象とする。なお、有機汚濁関連項目以外については、底質・土壌の試験方法は、法令に

よって取り扱いが異なるため、詳細は 5章を参照すること。

図 3.2 エクマンバージ型採泥器による採泥

(3)試料の運搬

採取後できるだけ早く試験に供することが望ましい。エクマンバージ型採泥器等により採取

した表層泥は、泥面が空気とふれない状態にし、暗所で冷蔵状態(4℃)で運搬する。 また、コアサンプラーにより採取し、そのまま不撹乱試料として運搬する場合には、一般に

は上澄水が入ったまま立てた状態で暗所で冷蔵状態(4℃)で運搬する。

図 3.3 コアサンプラー運搬状況(冷蔵車搬入前)

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(4)分析方法 湖沼、ダム等における定期調査や富栄養化関連調査に係る底質の分析方法を表 3.3 に示す。

表 3.3 分析方法一覧表

項 目 試験方法

強熱減量 改訂版 底質調査方法とその解説 Ⅱ 4

COD 改訂版 底質調査方法とその解説 Ⅱ20

総窒素 改訂版 底質調査方法とその解説 Ⅱ28

総リン 改訂版 底質調査方法とその解説 Ⅱ19

硫化物 改訂版 底質調査方法とその解説 Ⅱ17

鉄 改訂版 底質調査方法とその解説 Ⅱ10

マンガン 改訂版 底質調査方法とその解説 Ⅱ11

カドミウム 改訂版 底質調査方法とその解説 Ⅱ 6

鉛 改訂版 底質調査方法とその解説 Ⅱ 7

6価クロム 改訂版 底質調査方法とその解説 Ⅱ12.3

ヒ素 改訂版 底質調査方法とその解説 Ⅱ13

総水銀 改訂版 底質調査方法とその解説 Ⅱ 5.1

アルキル水銀 改訂版 底質調査方法とその解説 Ⅱ 5.2

PCB 改訂版 底質調査方法とその解説 Ⅱ15

チラウム H5環境庁告示 65 付表 7

シマジン H5環境庁告示 65 付表 8

チオベンカルブ H5環境庁告示 65 付表 8

セレン H5環境庁告示 65 付表 2

酸化還元電位 河川水質試験方法(案) 5.4

粒度組成 JIS A 1204

出典:改訂 ダム貯水池水質調査要領 平成 8年 1月 (財)ダム水源地環境整備センター(一部改変)

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41

3.3 溶出速度試験

溶出速度試験とは、底泥に含有された汚濁物質が液中に溶出する過程を実際の水環境に近い

条件下で再現し、汚濁物質の溶出速度を測定することをいう。

溶出速度試験の実施にあたっての留意事項を以下に示す。

<試料の採取>

・溶出速度試験では、底泥と直上水を柱状試料として同時に採取した試料とする。

・採泥方法としては、柱状採泥器を用いるものとダイバーによる方法がある。

・柱状採泥器を用いる場合は試料の調整、試水量確保などの点から内径 10cm 以上のものを用

いる。

・試料は、実験条件を考慮して必要本数採泥するが、別途、予備試料や直上水も採取しておく

とよい。

<試料の運搬>

・採泥後できるだけ早く試験に供することが望ましい。

・一般には上澄水が入ったまま立てた状態で暗所で冷蔵状態(4℃)で運搬する。

<実験方法>

・底泥厚さと溶出速度の関係からカラム中の底泥の厚さは、30cm を基本とする。

・サンプリングによる水位低下から直上水の 小厚は 50cm とする。

・直上水のろ過の有無については、当面、過去の試料との連続性や現地状況を考慮して選定す

る。

・実験ケースは、一般的に酸素と水温条件を設定して実施するケースが多い。但し、窒素であ

れば底泥の T-N 含有量、リンであれば直上水の NO3-N でも溶出が左右されるので、状況に応

じて考慮する必要がある。(4.2 節参照)

<溶出速度の算出>

・多くの場合、程度の差はあれ、当初非安定期ともいえる予備期間が現れその後に安定した溶

出過程に入る。溶出速度の計算は、この安定した溶出曲線の部分で行う。

・溶出速度試験にあたっては、「湖沼環境調査指針 社団法人日本水質汚濁研究会編」(以下、

「湖沼環境調査指針」という)、「底質の調査・試験マニュアル」等を参考にするとよい。

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42

(1)試料の採取

採取方法としては柱状採泥器を用いるものとダイバーによる方法(底質の調査・試験マニュ

アル・社団法人底質浄化協会)がある。ダイバーによる試料の採取方法を以下に示す。採泥に

際しては、透明度が悪く、水温が低いなど作業環境が良好でない場合が多く、ダイバーの技術

と経験が必要となる。

図 3.4 ダイバーによる不撹乱試料の採取(イメージ図)

図 3.5 ダイバーによる不撹乱試料の採取方法

②ゴム栓で上面に蓋をしてコアサンプラーをゆっくり引き上げる。

①コアサンプラーを底泥に打込む

底泥をダイバーによりアクリル製コアサンプラーを用いて底質を乱さないように底泥を採取する。

③コアサンプラーが底泥から水中に上がる5~10cm 程前で底泥に手を入れてゴム栓を用いて下面に蓋を当てる。

下面のゴム栓をゆっくり挿入しながら上面のゴム栓のゴムを少し開けコアサンプラー内の水を追い出す。

④コアサンプラーを持って浮上する。

船上に引き上げた後コアサンプラーを縦に置き、船体に固定する。

①挿入 ②上蓋をする

③アクリル管を引き抜き下蓋をする

④引き上げ

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43

図 3.6 アクリル製柱状採泥器 図 3.7 不撹乱柱状採泥器(HR 型)

出典:(株)離合社カタログ

図 3.8 底質の不撹乱試料採取時の状況

(2)試料の運搬

採取後できるだけ早く試験に供することが望ましい。運搬に際しては、直射日光を遮断した

状態で、試験室に搬入する。なお、試料は冷蔵車などを用い低温保冷状態で運搬する。 (3)実験方法 1)試料の前処理 (ⅰ)カラム中の底泥の厚さ

試験用のカラムは、現地で採泥したアクリルコアをそのまま用いる。試験室においては、

外部から観察を行い亀裂等の無いサンプルを恒温室内で試験温度に調整し試験用とする。そ

の際底泥の厚さを揃えるようにする。底泥中に含まれる汚濁物質量は小川原湖でも表層で

溶出実験用コア ゴム栓

高さ:100cm

ゴム栓

泥の高さ:20~40cm

内径:10cm 以上

採泥管:アクリル管、内径11×長50cm

重 錘:5 kg×2個

寸 法:17×17×全長160cm

重 量:約 15kg

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44

も高く、深度が増すと減少する。特に表層から 20~30cmまではその変化が大きくなってい

る(図 3.9 参照)。このように汚濁物質の含有量が深度方向に一定でないため試料の厚さによ

って溶出量に差が生じることが予想される。

図 3.9 窒素とリンの深度方向の底質(小川原湖)

※小川原湖における底質調査の概要を資料編の第二編 第2章に記載しているので参考にするとよい。

図 3.10 は中海における底泥厚とリンの溶出速度との関係であるが、「調査・試験マニュア

ル」ではこの図から試料の厚さの標準を30cmとしている。本手引きでもこれを基本とする。

ただし、霞ヶ浦では 15~20cmでの試験も行われていることを考慮し、現地の状況によって

は 30cmが確保できない場合は 低でも 15~20cmは確保するものとする。

図 3.10 中海における底泥厚とリンの溶出速度との関係

出典:底質の調査・試験マニュアル

小値 平均値 大値

T-P

流入部 湖央部T-N

0cm

10cm

20cm

30cm

40cm

50cm

0 2 4 6 8 10 12T-N(mg/g)

0cm

10cm

20cm

30cm

40cm

50cm

0.0 1.0 2.0T-P(mg/g)

0cm

10cm

20cm

30cm

40cm

50cm

0 2 4 6 8 10 12T-N(mg/g)

0cm

10cm

20cm

30cm

40cm

50cm

0.0 1.0 2.0T-P(mg/g)

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(ⅱ)直上水の厚さ

直上水の汚濁物質の濃度(平均値)C(㎎/㎥)と溶出速度R(㎎/㎡)及び直上水の厚さH

(m)の関係式から直上水が厚くなると、汚濁物質の濃度が小さくなることがわかる。

C=R/H

したがって、あまり直上水を厚くすると、濃度が定量限界以下の値になり分析が出来なく

なる。また、直上水をあまり薄くすると、サンプリングによる水位低下が問題となる。直上

水の 小厚は 50cmとする。(底質の調査・試験マニュアル)

(ⅲ)直上水の処理

直上水については、一度取り出し、ろ過後再び戻す方法と、そのまま試験を行う方法が現

在混在して行われている。そのまま試験を行う方法は現地状況をより正確に反映しているが、

水中に懸濁物質が多い場合、試験中に懸濁物質の沈降によって溶出試験結果に影響を及ぼす

ことも考えられる。現在、どちらの方法を用いるか明確に規定されたものが無いため、それ

ぞれでの現地の状況を判断して個別に実施せざるを得ない。

直上水をろ過しないで溶出速度試験を行う場合は、直上水だけ(泥無し)での試験も実施

し、溶出速度試験結果の解釈の参考資料とすることも考えられる。

なお、直上水処理の有無については、必ず記録しておく必要がある。直上水を入れ替える

場合の作業フローを参考として図 3.12 に示す。

図 3.11 溶出速度試験の実施状況

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調査現場から搬入されるもの(①、②)

図 3.12 試料の前処理のフロー(水の入れ替え有りの場合)

直上水で満たされている

底泥 40 ㎝以上

ゴム栓

ゴム栓

① ②

直上水 60ℓ

① 実験室に搬入後は輸送等で底泥の表面が乱

れている(又はまき上がっている)ため半

日~1日 4℃暗室に保管

上部のゴム栓を外し、サイフォン

式で直上水を抜き取る。

各装置の直上水量を一定にするた

め、下部のゴム栓を外し、底泥厚

を揃える。(ゴム栓がアクリルパイ

プ内に入る長さは事前に測ってお

く)その後ゴム栓をする。

直上水の入る部分のアクリルパイプ

の内壁を消毒用エタノールで拭く (細菌の影響を防ぐ)

サイフォン式でろ過済の直上水をまき上がらないように

入れる。

② 直上水 60ℓ(20ℓポリ×3本)

ろ過(0.45μm ろ紙)

ろ液は消毒用エタノールで洗浄済

の 20ℓポリに保管。

実験開始まで 4℃の暗室で保管

好気性 嫌気性 直上水をアクリルパイプに

入れる直前に 15~30 分エア

ーストーンをつけて N2 曝気

をする。

好気性 嫌気性

N2ガスによる曝気 空気又は酸素による曝気

ガス

N2

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2)溶出速度試験の条件設定 溶出速度試験の実験ケースは、酸素条件、水温条件で設定することが多い。なお、溶出速度

と各種条件との関係については「4章 底質環境調査結果の見方」で記述しているので条件設

定の参考にするとよい。特に、窒素であれば底泥の T-N 含有量、リンであれば直上水の NO3-N

でも溶出が左右されるので、状況に応じて考慮する必要がある。

<酸素条件>

実験目的によって設定(採水時の DO、年間を通しての DO の状況などを踏まえ設定)する。

嫌気条件の場合は、DO<1mg/L 以下とする。特に、リンは嫌気状態になると底層からの溶

出が顕著になることから、 大の溶出速度を求めるのであれば、嫌気の条件での試験が必要

となる。なお、嫌気条件での試験の場合、全て設置後、外部との接触を遮断するために水面

に流動パラフィンをのせる必要がある。

好気条件の場合は、現地の状況を踏まえた DO を設定することとなるが、DO 飽和度 100%(常

時エアーを注入)で実施する場合が多い。

<水温条件>

実験目的によって設定(採取時の水温、夏季・冬季の水温など)する。

水温の管理としては、恒温室又は恒温槽による方法があり、恒温室は条件の温度に設定し

た部屋の中で、恒温槽は条件の温度に設定した水槽の中で実施するものである。

一般に、水質予測モデルでは水温 20℃での溶出速度をパラメーターとして与え、水温の変

化に伴う溶出速度の変化は、温度補正係数で対応している。温度補正係数を求めるためには、

2温度条件以上での試験結果が必要となる。このことから、水温 20℃を 1ケースとして、も

う 1ケースを現地などの水温条件として設定するケースが多い。

<試験期間と分析頻度>

対象水域や底質の状況によって一義的には設定できないが、2 週間から 1 ヵ月くらいの期

間とする。分析頻度は試験初期においては、底質と水とのなじむまでの期間を見るために密

にとるのが望ましい。

<観測項目> 試験中は、水温計、DO計、ORP計による直上水の観測をするとよい。これら項目は、

溶出速度に影響を与える項目であることから把握しておくことが望ましい。

例えば、初期、1日、2日、4日、7日、14 日、21 日、28 日の計 8回

好気条件:エアーポンプで常時エアーを注入、常時撹拌

DO を制御する場合は窒素と酸素を一定の割合で混合したガスを

用いる

嫌気条件:窒素ガスを注入して嫌気状態を保つ、底質を乱さないように常時

循環混合

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48

<分析項目>

分析項目は、有機汚濁項目、栄養塩項目を対象とする。

図 3.13 溶出速度試験のフロー

・試料採取用のアクリル管は底泥から 10 ㎝の

所で固定する

・好気用曝気ポンプで底泥から 15 ㎝のところ

にエアーストーンがくるように設置する。

(底泥を巻き上げないように空気量を調整)

<好気性>

・試料採取用のアクリル管は底泥から 10 ㎝の

所で固定する。

・嫌気用循環ポンプで直上水を 2 日で入れ替

える(循環)流速で流す。

吸い口は底泥から 5㎝

吐き出し口は水面から 5㎝程度

<嫌気性>

P

5cm

10cm

5cm

70cm

30cm

100cm

内径 約20㎝

全て設置後水面に流動パラフ

ィンを 3cm 以上のせる。(外部

との接触を遮断)

70cm

30cm

100cm

Pシリカゲル 活性炭

内径 約20㎝

15cm

10cm

モレキュラシーブ5A

綿

ポンプを ON にして

実験をスタートする

サイフォン式で採水した試料は

0.45μm ろ紙でろ過した後、分析

試料とする。

例えば、pH、DO、ORP、D-COD、D-TOC、

D-T-N、NH4-N、NO2-N、NO3-N、D-T-P、D-PO4-P

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(4)溶出速度の算出 溶出速度試験で定期的に採水・分析した物質の濃度から溶出量を算出する。各回の溶出量は

それまでのサンプリングによる溶出量を補正して算出する必要がある。溶出量の算出式を以下

に示す。 R=

上記の式によって求めた溶出量を経時変化図として表すと、必ずしもきれいな溶出量曲線が

得られるわけではない。多くの場合、程度の差はあれ、当初非安定期ともいえる予備期間が現

れその後に安定した溶出過程に入る。溶出量の計算ではこの安定した溶出曲線の部分で行う。 溶出速度は溶出量の経時変化である溶出量曲線の勾配を意味し、これは底泥の表面から1日

当たり、単位面積当たり、何㎎の溶出物質が出てくるかを表す。

図 3.14 溶出量曲線と計算対象期間

出典:底質の調査・試験マニュアル

R :溶出量(mg/㎡)

V :初期の直上水量(ℓ)

Vn :n回目の採水量(ℓ)

Cn :n回目の濃度(ℓ)

A :底泥断面積(㎡)

n-1 回 n回

(mg/㎡)

時間 溶出 予備期間

溶出量

安定溶出期間

溶出速度

∑(V-∑Vn-1)(Cn-C n-1)

A

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3.4 沈降量・沈降物質調査

沈降量・沈降物質調査とは、沈降物質をある期間水中または水底に固定した容器で採取し、

その量と質を測定・分析することによって、湖沼へ外部から流入または湖内で生じた物質の沈

降量を測定することをいう。

沈降量・沈降物質調査の実施にあたっての留意事項を以下に示す。

<試料の採取>

・セジメントトラップの設置水深は、調査対象湖沼の水深と補償深度※との関係、水温躍層の

位置、塩淡境界層の有無等を考慮の上、調査目的を踏まえ設定する。

※補償深度とは、光合成生物の光合成と呼吸の大きさが一致する深さであり、透明度のほぼ 2 倍に近い

ところとなる。湖沼では植物プランクトンの鉛直分布の下限にあたる。

・セジメントトラップは、口が広めのポリビン等の容器をかごに入れたものなどが簡便で扱い

やすい。なお、容器は、内径の 3倍以上の高さのものを用いる。

・セジメントトラップの設置と撤収及びポリビンの回収はダイバーにより行う。セジメントト

ラップは水平に設置する必要があり、ダイバーにより確認、調整する。

・沈降物の採取期間は、セジメントトラップでの捕捉量と捕捉された沈降物の分解による減少

を考慮して 1~2週間程度とする。

・採取した試料の分析は、通常は含有量分析できるほどの量の沈降量とならないことから、セ

ジメントトラップのポリビン内の水質濃度を分析し、ポリビンの容量を掛けることで沈降量

に換算する方法とする。

<水質調査>

・沈降速度の算出にあたっては、セジメントトラップ設置時の水質濃度が必要となるため、設

置と同時に同じ設置水深の湖水を採水・分析する。

・また、セジメントトラップ回収時の水質調査も実施するとよい。

・分析項目は、沈降量・沈降物質調査の項目及びそれらの溶存態とする。

<沈降速度の算出>

・沈降速度には 2種類あり、物質収支の検討には「沈降量(堆積速度)g/m2/日」、水質シミュ

レーションでは主に「沈降速度 m/日」が用いられる。

・溶出速度試験にあたっては、「湖沼環境調査指針」等を参考にするとよい。

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(1)試料の採取 セジメントトラップの設置は、広口のポリビンをかごに入れたものなどが簡便で扱いやすい。

設置時には、ポリビンに設置対象水深の湖水又は蒸留水を入れておき、設置後、ダイバーによ

りポリビンの蓋を開けるとともに水平状態について確認、調整する。ポリビンの回収時は、ダ

イバーにより蓋を閉めた後、引き上げるものとする。

沈降物の採取期間はセジメントトラップでの捕捉量と捕捉された沈降物の分解による減少を

考慮して1~2週間程度とする。湖沼環境調査指針では、経験的に沈降物の多い湖では1~2

日以上、沈降物の少ない湖では 10 日以上と記載されており、汚濁水域では短時間でもよいが、

比較的清浄な水域ではより長い調査期間が必要となる。

沈殿物については以下の項目などが分析対象となり、基本的にはポリビン内の水質濃度を分

析する。

目印の黄色マーカーは 4方向に設置する。

図 3.15 沈降量・沈降物質調査におけるセジメントトラップの設置概要

20m 20m

20m

20m

20m 20m 20m

20m

20m

プロトンブイ ボンデン ボンデン

18m

※Cm

2m

アンカー25K シンカー30K シンカー30K

ロープ:※Bm

ロープ:15m

耐圧ブイ 8B

セジメント ロープ:4m

耐圧ブイ 10B セジメント

ロープ:17mセジメント

ロープ:※Am ロープ:5m

ロープ:30m 耐圧ブイ 10B

分析項目:例えば COD、SS、VSS、TOC、T-N、T-P、クロロフィル a、フェオフィチン

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図 3.16 セジメントトラップの設置方法

※事前にセジメントトラップを設置する層

の水を採水し、容器内に入れておく。

※土のう着底後、ダイバーによりセジメント

トラップ内のポリビンの蓋を開けるとと

もにセジメントトラップの水平状態につ

いて確認、調整する。

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図 3.17 セジメントトラップの詳細

図 3.18 セジメントトラップの設置状況

平面図

立面図 断面図

内径:33㎝

内径:48.5㎝

内径:30㎝

内径:33㎝

セジメントトラップ図

※ 採水用の2Lポリビン(茶色)を使用トラップは2Lポリ9本使用

内径:33㎝

内径:30㎝

内径:48.5㎝

ポリビン(2L)立面図 平面図

内径:12㎝

高さ:24㎝

内径:7.5㎝外径:12cm 口径:7.5cm

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(2)水質調査 沈降速度の算出にあたっては、セジメントトラップ設置時の水質濃度が必要となるため、設

置と同時に同じ設置水深の湖水を採水・分析する。また、湖水の水質変化を把握するために、

セジメントトラップ回収時の水質調査も実施するとよい。

分析項目は、沈降量・沈降物質調査の項目と及びそれらの溶存態とし、採水・分析方法は「改

訂 ダム貯水池水質調査要領 平成 8 年 1 月 財団法人ダム水源地環境整備センター」等を参

考にするとよい。

(3)沈降速度の算出

沈降速度には以下の 2種類があり、物質収支の検討には a.の沈降量が水質シミュレーション

では主に b.の沈降速度が用いられる。沈降速度の求め方の概念図を図 3.19 に示す。

a.沈降量[堆積速度]:単位時間、単位面積当たりの沈降量(g/m2/日)

b.沈降速度:単位時間当たりの沈降距離(m/日)

図 3.19 沈降速度の概念図

a.沈降量[堆積速度](mg/m2/日)

単位時間、単位面積当たりに沈降したセジメントの量を沈降量とし、以下の式から算出

する。 w(mg/m2/日)=W(mg)÷A(m2)÷設置期間(日)

C(g/m3)

沈殿量 L(g)

沈降水深

H(m)

経過日数

(日)

面積 A

(m2)

沈降

分析項目:例えば COD、D-COD、SS、VSS、TOC、T-N、NH4-N、NO2-N、NO3-N、

T-P、PO4-P、クロロフィル a、フェオフィチン

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w:単位時間、単位面積当たりに沈降したセジメントの量(mg/m2/日)

A:セジメントトラップの底面積

ここでWは沈降物の量であり、以下の式から算出される。

W(g)=Cs(mg/L)×V(L)÷1000

W:沈降物の量(g)

Cs:セジメントトラップ内の水質濃度(mg/L)

※設置時におけるポリビン内の水を設置対象水深の湖水とした場合は、その分を差し引い

た水質濃度とする。蒸留水の場合は、このままとする。

V:セジメントトラップの容積

b.沈降速度(m/日)

沈降速度は沈降量から以下の式で算出される。

v(m/日)=w(mg/m2/日)÷( Caq(mg/L)×1000(L/m3) )

v:沈降速度(m/日)

Caq:セジメントトラップ設置時の水質(mg/L)

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4.底質環境調査結果の見方

4章では代表的な底質関連試験項目である含有量試験、溶出速度試験、沈降量・沈降物質調査

について、小川原湖におけるデータを事例に調査結果を解釈する際の留意事項を示した。

4.1 底質の物理・化学性状調査

(1)底質のバラツキについて

1)特にバラツキが大きい地点における要因

水質の変動に比べると、総じて底質の変動は大きい。小川原湖において特に変動の大きい

地点について見てみると、主に、以下のような要因が考えられる。 ・G地点:この地点は湖底地形が崖の直ぐ脇であり、調査時において少しの地点のずれ

で泥種や含有量が変わる可能性が高いものと考えられる。 ・H地点:この地点は谷部といった湖底地形が変化しやすい場所にあたっており、採取

地点の再現性が悪くバラツキが大きくなりやすいものと考えられる。

図 4.1 調査地点毎の変動比

底質の物理・化学性状調査結果の見方についての留意事項を小川原湖における事例から以下

に示す。

・底質の値は、同一地点でも変動が大きい。そのため、分析値の単純な大小関係での評価は慎

重を要する。

・特に、バラツキの大きい地点については、調査地点の問題も含まれている可能性が高いので

留意する必要がある。すなわち、湖底地形が谷や崖のような箇所では、少しのずれで泥種や

含有量が大きく変わることがありバラツキが大きくなりやすい。

・底泥含有量の値は、変動が大きいが、その中でも含水率は比較的安定している項目であり、

長期的な変化傾向を見る項目として適している。

・含水率と含有量の関係から、含水率 40%~50%が底質悪化の目安になるものと判断できる。

・なお、強熱減量は調査地点を適切に設定することで、長期的な変化傾向を見るための項目に

なりうる。

0

2

4

6

8

10

12

14

含水率(%) 強熱減量(%) COD(mg/g) T-N(mg/g) T-P(mg/g)

変動

比(最

大値

/最

小値

流入部 湖央部 海との流出入部

G 地点G地点

H地点

H 地点

H 地点

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57

図 4.2 調査地点毎の底質の変動要因(小川原湖)

2)バラツキを抑える方法

バラツキを抑える方法は、同一地点で複数のサンプル(3サンプル以上)を採泥し、それ

らを混合するなど、「改訂新版 建設省河川砂防技術基準(案)同解説 調査編」(以下、「河

川砂防技術基準」という)での底質調査の留意事項を遵守するものとする。

また、1)のように、湖底地形によりバラツキが大きくなりやすい地点の場合、現地点と

その周辺データの相関を検証し、必要に応じて、新たに地点を設定することも考えられる。

G 地点

H 地点

-10

0

10

20

30

2 3 4 5 6

水深

(m)

0         1        2         3        4km

G 地点

横断図

H 地点は谷部といった湖底地形が変化

しやすい場所にあたるため、採取地点

としての再現性が悪くバラツキが大き

くなりやすいものと考えられる。

G地点は湖底地形が崖の直ぐ

脇であり、調査時において少

しの地点のずれで泥種や含

有量が変わる可能性が高い

ものと考えられる。

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58

(2)含水率、強熱減量と含有量の関係について

含水率と他の有機汚濁関連項目(強

熱減量、COD、T-N、T-P)は比較的関

連性が高く、含水率が概ね40%~50%

の箇所で変曲点が見られ、それ以上で

は含有量が急に高くなる傾向を示し

ている。含水率 40%~50%以上が底

質悪化の目安になるものと判断でき

る。なお、一般的に、含水率が高い底

泥は粒径が小さくなる傾向にある。こ

れは、粒径が小さい方が表面積の割合

が大きくなり水分を多く含みやすく

なるためである。粒径が細かいと、当

然、有機物、栄養塩等の含有量が多く

なり、したがって、含水率が高いと有

機汚濁関連項目の含有量は高くなる。

また、強熱減量と他の有機汚濁関連

項目については、COD 以外は比較的関

連性が高い。また、含水率以外につい

は強熱減量が 10%の箇所で変曲点が

見られるものの、含水率と他の有機汚

濁関連項目との関係ほどは明確では

ない。

図 4.3 含水率、強熱減量と有機汚濁関連項目との関係(小川原湖)

※小川原湖における底質調査の概要を資料編の第二編 第2章に記載しているので参考にするとよい。

0

5

10

15

20

25

30

35

0 50 100

含水率(%)

強熱

減量(

%)

0

20

40

60

80

100

120

140

0 50 100

含水率(%)

COD(mg

/g)

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

10.0

12.0

0 50 100

含水率(%)

T-N(mg

/g)

T-P(mg

/g)

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0 50 100

含水率(%)

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0 10 20 30 40

T-P(%)

強熱減量(%)

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

10.0

12.0

0 10 20 30 40

T-N(mg

/g)

強熱減量(%)

0

20

40

60

80

100

120

140

0 10 20 30 40

COD

(mg

/g)

強熱減量(%)

0

20

40

60

80

100

0 10 20 30 40

含水率(%)

強熱減量(%)

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59

4.2 溶出速度試験

(1)溶出速度について

湖沼の富栄養化は流入負荷の増加が主要な要因であるが、湖内での植物プランクトンの発生

による有機物量の増加、それに伴う底泥の悪化、悪化した底泥からの栄養塩の回帰など二次汚

濁(内部負荷)の影響が無視しえない。流入負荷の削減が直ちに二次汚濁の抑制に結びつかな

いことが、湖沼の水質改善を難しくしている大きな要因ともなっている。 このような理由から、湖沼における富栄養化の原因を解明し、予測や対策を実施していく上

で、底泥からの溶出の実態を把握するために溶出速度試験が行われている。

底泥からの溶出機構は以下のように考えられており、溶出速度に影響を与える主な要因とし

ては、対象物質の含有量、水温、DO、NO3-N が挙げられる。

溶出速度試験とは、底泥から水中へ回帰する栄養塩等の物質の回帰速度を測定するものであ

る。調査結果は、底泥に係わる予測や対策を検討する際に用いられる。 溶出速度試験結果を解釈する際の留意事項を小川原湖の事例から以下に示す。

<リンの溶出速度>

・I-P の溶出速度は、底層水の DO、NO3-N や底泥の有機物含有量によって値が大きく異なる。

水温、T-P 含有量との関係は見られない。

・I-P の溶出は、DO が嫌気化すると顕著となる。但し、DO が嫌気化しても水中に NO3-N が残っ

ていると溶出が抑えられる。

・水中の NO3-N は、有機物含有量が多いほど無くなるのが早い。すなわち、嫌気化しており有

機物含有量が高い場合には、NO3-N が早く無くなることで I-P の溶出が早まる。

<窒素の溶出速度>

・I-N の溶出速度は、窒素含有量、水温の状況によって値が大きく異なる。DO との関係は特に

見られない。

・水温よりも窒素含有量の方が溶出速度へ与える影響が顕著である。

・溶出速度試験結果の一般的解釈にあたっては、「底泥-水間の物質移動に関する調査 独立

行政法人土木研究所 研究成果」(以下、「底泥-水間の物質移動に関する調査」という)、「湖

沼環境調査指針 公害対策技術同友会」(以下、「湖沼環境調査指針」という)等を参考にす

るとよい。

Page 67: 「湖沼底質環境・調査手引き」(案) - MLIT「湖沼底質環境・調査手引き」(案) ~小川原湖の底質調査結果から言えること~ 平成21年3月

60

(Ⅰ) :水中の動物の排泄

(Ⅱ) :有機物砕屑の自己分解および微生物分解

(Ⅲ) :有機物砕屑および微生物を餌とする動物及びそれらを餌とする動物の排泄

(Ⅳ) :湖底からの物理化学的条件変化による溶出

(Ⅴ) :風による底泥のまい上がり

A :直接堆積および溶存物質の吸着・沈降

B :作用をうけながらの沈降

C :堆積

図 4.4 湖での物質循環モデル

出典:湖沼環境調査指針

底泥からの溶出機構(「底泥-水間の物質移動に関する調査」より抜粋)

①底層水 DO 濃度が低下すると、表層近くの底泥が好気状態から嫌気状態になり、有機

物の嫌気分解が生じて、溶解性 TOC 濃度が上昇する。

②間隙水中のPO4-P濃度は、ほぼ溶解性TOC濃度と同様の傾向を示す。これは有機物(TOC)

生成による還元力によってリン酸の金属塩が還元され、PO4-P の溶出をもたらすため

と考えられる。

③間隙水中の PO4-P 濃度が高まった場合でも、底層水中に NO3-N が存在すれば、底泥の

極く表面が還元状態とならず、この部分での金属酸化物等への吸着が生じて、底層水

への溶出が抑えられる。

④間隙水中の NH4-N 濃度は、水温が上昇すると有機物の分解により全体的に増加し、拡

散により底層水へ輸送される。

⑤塩化物イオン濃度が普段低い場所の底泥が、濃度の高い水に触れると、底泥から NH4-N

が溶出しやすい。

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61

(2)溶出速度と底質との関係 I-P の溶出速度は、T-P 含有量との関係は特に認められない。

I-N の溶出速度は、T-N 含有量との関係が認められ、含有量が多いほど溶出速度が大きくなる

傾向がある。

図 4.5 溶出速度と底質との関係(小川原湖)

(3)溶出速度と DO との関係

I-P の溶出速度は、DO との関係が認められ(図 4.6 参照)、嫌気条件の方が溶出速度は大きく

なる。但し、溶出速度のバラツキが大きく、この要因は直上水中の NO3-N 濃度にあるものと考

えられる。すなわち、嫌気条件でも NO3-N が存在する時(図 4.7、4.8 参照)には、リンの溶出

が抑えられているためである。

また、嫌気条件での I-P の溶出速度と底質の COD、強熱減量との関係より、有機物の含有量

の値が高い場合には、I-P の溶出速度が大きくなる傾向が見られる(図 4.9 参照)。これは有機

物の分解によりNO3-Nの酸素の消費が進み、早くNO3-Nが無くなることによるものと考えられる。

なお、これらの現象はメカニズムとしてORP(酸化還元電位)との関係であり、酸化状態

であれば I-P の溶出は抑えられ、O2や NO3-N などが無くなり還元状態になると I-P が溶出して

くることとなる。

I-N の溶出速度は、DO との関係は不明である。

-5

0

5

10

15

20

25

0 0.5 1 1.5 2 2.5

T-P含有量(mg/g)

I-P溶

出速

度(m

g/m

2/日

)

-40

-20

0

20

40

60

80

100

0 2 4 6 8 10 12

T-N含有量(mg/g)I-

N溶

出速

度(m

g/m

2/日

)

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62

図 4.6 溶出速度と実験水 DO との関係(小川原湖)

図 4.7 直上水中の NO3-N 濃度とリン溶出速度の関係(小川原湖)

-5

0

5

10

15

20

25

好気条件 嫌気条件

I-P溶

出速

度(m

g/m

2/日

)

底質含有量○: 0mg/g≦T-P<0.7mg/g○:0.7mg/g≦T-P<1.4mg/g○:1.4mg/g≦T-P<2.1mg/g

-40

-20

0

20

40

60

80

100

好気条件 嫌気条件

I-N

溶出

速度

(mg/

m2/日

)

底質含有量○: 0mg/g≦T-N< 4mg/g○: 4mg/g≦T-N< 8mg/g○: 8mg/g≦T-N<12mg/g

-1.5

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5

2

0日 5日 10日 15日 20日 25日 30日

I-P

(mg)

0.00

0.10

0.20

0.30

0.40

0.50

0.60

0.70

NO

3-N

(mg/

L)

PO4-P NO3-N

-0.2

0

0.2

0.4

0.6

0.8

0日 5日 10日 15日 20日 25日 30日

I-P

(mg)

0.00

0.10

0.20

0.30

0.40

0.50

NO

3-N

(mg/

L)

PO4-P NO3-N

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

0日 5日 10日 15日 20日 25日 30日

I-P

(mg)

0.00

0.10

0.20

0.30

0.40

0.50

0.60

NO

3-N

(mg/

L)

PO4-P NO3-N

■実験初期から NO3-N が無いケースでの I-P の溶出状況(嫌気条件)

■実験期間中 NO3-N が途中で無くなるケースでの I-P の溶出状況(嫌気条件)

■実験期間中 NO3-N が存在しているケースでの I-P の溶出状況(嫌気条件)

I-P

I-P

I-P

NO3-N が無くな

るとリンが溶出

してくる。

NO3-N が存在してい

るためリンが溶出

してこない。

NO3-N が無いため

初からリンが溶出

している。

NO3-N

NO3-N

NO3-N

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63

図 4.8 I-P 溶出速度と実験水 NO3-N との関係 図 4.9 I-P 溶出速度と強熱減量との

(小川原湖) 関係(小川原湖) (4)溶出速度と水温との関係

I-P の溶出速度は、水温との関係は特に認められない。

I-N の溶出速度について、同じ T-N 含有量のグループでの水温条件別の溶出速度を見ると、

4mg/g≦T-N<8mg/g では水温条件 5℃での溶出速度が も高く、10℃~20℃では同等の溶出速度

となっている。0mg/g≦T-N<4mg/g では水温条件 5℃~15℃、25℃で概ね同等の溶出速度となっ

ている。

一方、同じ水温条件で見ると、T-N 含有量が高い程、溶出速度も高くなる傾向を示している。

以上より、I-N の溶出速度は、一般に水温との関係があると言われているが、小川原湖のデ

ータでは、水温との明確な関係は、認められない。むしろ、T-N 含有量との関係の方が明確で

ある。

図 4.10 溶出速度と実験水水温との関係(小川原湖)

※データは嫌気条件のみ ※データは嫌気条件のみ

-5

0

5

10

15

20

25

0 5 10 15 20 25 30

実験水のNO3-Nが0mg/Lになった日数

I-P

溶出

速度

(mg/

m2/日

)

最終日までNO3-Nが存在

※データは嫌気条件のみ

-5

0

5

10

15

20

25

0 5 10 15 20 25 30

強熱減量(%)

I-P

溶出

速度

(mg/

m2/日

)

-40

-20

0

20

40

60

80

100

0 5 10 15 20 25 30

水温条件(℃)

I-N

溶出

速度

(mg/

m2/日

)

底質含有量○: 0mg/g≦T-N< 4mg/g○: 4mg/g≦T-N< 8mg/g○: 8mg/g≦T-N<12mg/g  :各含有量の平均値

-5

0

5

10

15

20

25

0 5 10 15 20 25 30

水温条件(℃)

I-P溶

出速

度(m

g/m

2/日

)

底質含有量○: 0mg/g≦T-P<0.7mg/g○:0.7mg/g≦T-P<1.4mg/g○:1.4mg/g≦T-P<2.1mg/g

同じ水温条件では、T-N

含有量が多いほど I-N 溶

出速度は大きくなる。

同じ含有量のグループで

は、I-N 溶出速度と水温と

の関係は見られない。

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64

(5)パラメータについて 溶出速度のパラメータは、水質予測モデルにおける底泥からの栄養塩等の溶出のパラメータ

として用いられる。

実際には、水質予測モデルでは、再現計算を実施し、実測値に合うようにパラメータを設定

することとなるが、試験結果のパラメータは初期パラメータとして設定し、 終的には、試験

結果と異なる値を採用することも多い。

これは、底泥の含有量はバラツキが大きいため、当然、溶出速度のパラメータもバラツキが

あるものと考えられる。また、水質予測モデルは、湖沼等での現象を擬似的にモデル化したも

のですべての現象をモデル化しているわけではないことから、それらの現象のしわよせが、パ

ラメータに影響を与えることも考えられる。

表 4.1 にパラメータ事例の一覧を示す。なお、水質予測モデルにおける底質の取り扱いにつ

いて資料編の第一編 第2章に記載しているので参考にするとよい。

表 4.1 パラメータ事例一覧(溶出速度)

出典:湖沼工学 平成 2年 3月 山海堂

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65

4.3 沈降量・沈降物質調査

(1)沈降速度について

湖沼の物質循環における沈降に関する事項は、図 4.11 に示すとおりであり、大まかには、流

入してきた栄養塩は、土粒子に吸着し直ぐに沈降するもの、植物プランクトン等に摂取される

もの、そのまま流出されるものに大きく分けられる。植物プランクトン等に摂取されたものは、

死滅後、沈降し湖底に堆積する。また、条件によっては、水中に回帰してくる。

沈降速度は、この物質循環のうち、流入した物質の沈降(A)、プランクトン等の沈降(B)、

プランクトン等が死滅又は分解した物質の沈降(C)の速度を測定するものである。

なお、水質予測モデルで用いる物質循環に関する沈降速度は、プランクトン等の沈降(B)

やプランクトン等が死滅又は分解した物質の沈降(C)を用いることとなる。

沈降量・沈降物質調査とは、流入してきた物質及び一次生産により発生した物質(プランク

トン等)の沈降量を調査し、沈降速度を算出するものである。調査結果は、富栄養化に係わる

予測や対策を検討する際に用いられる。 沈降量・沈降物質調査結果を解釈する際の留意事項を小川原湖の事例から以下に示す。

・沈降速度は、湖内への流入、塩水の流出入と湖盆形態に影響を受けていることから、結果の

解釈にあたってはこれらの状況を踏まえておく必要がある。

・平常時における湖沼の SS 沈降速度は、数 m/日程度以下を示し、これには、土粒子の他に、

プランクトン等の内部生産物質も含まれている。また、SS の沈降速度が 10m/日程度以上の

場合には、流入河川又は塩水の流出入による影響を受けている可能性が考えられる。したが

って、これらを踏まえ、沈降速度の結果を解釈する必要がある。

・上層と底層の沈降速度は、ほぼ同様の傾向にあり、調査目的を踏まえ、調査深度を設定する

必要がある。

・沈降量・沈降物質調査の結果の一般的解釈にあたっては、「湖沼環境調査指針」等を参考に

するとよい。

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66

(Ⅰ) :水中の動物の排泄

(Ⅱ) :有機物砕屑の自己分解および微生物分解

(Ⅲ) :有機物砕屑および微生物を餌とする動物及びそれらを餌とする動物の排泄

(Ⅳ) :湖底からの物理化学的条件変化による溶出

(Ⅴ) :風による底泥のまい上がり

A :直接堆積および溶存物質の吸着・沈降

B :作用をうけながらの沈降

C :堆積

図 4.11 湖での物質循環モデル

(2)調査地点と沈降速度の持つ意味合い

湖沼は、大きく分けると、流入部、湖央部、流出部に分けられる。湖沼によっては小川原湖

にように流出部において海水の流入が見られる湖もある。この3エリアについて沈降速度の持

つ意味について以下に概説する。 1)流入部

流入部は、一次生産による物質(植物プランクトン等)の沈降よりも、河川等から流入す

る物質の沈降が著しくなる。特に、降雨に伴い流入河川の流量が増えたような場合には流入

物質の影響が顕著となる。したがって、沈降速度は大きくなりやすい。 栄養塩については、窒素よりも土粒子に吸着するリンの沈降が著しくなる。

2)湖央部 湖央部は、一次生産による物質の沈降が主体となる。すなわち、プランクトン等及びプラ

ンクトン等が死滅又は分解した物質の沈降速度を捉えることとなる。

出典:湖沼環境調査指針

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植物プランクトンの生産は、有光層(光合成ができる層であり、透明度の2倍程度と言わ

れている)で行われ、ここでの沈降速度は、植物プランクトンを主体とした沈降速度になる。

一方、無光層では主に植物プランクトンが死滅・分解した物質の沈降速度となる。 3)流出部

海水の流入がない流出部は、湖央部の考え方と同様となる。 海水が流入する流出部は、流入部と同様に、流入する物質の沈降の影響を受けることとな

る。また、潮汐の状況(大潮、小潮)によりその受ける程度は異なる。

図 4.12 沈降量・沈降物質調査地点と沈降物のイメージ

(3)小川原湖における沈降特性と地点特性との関係

流入部での沈降速度 10m/日以上の値は、調査期間中 30mm/日程度以上の降雨があり、流入

河川の影響を受けたものと考えられる。

湖央部は、流入河川及び流出河川からの流出入の影響を受けにくいことから、全体的に沈降

速度は安定して小さい。

流出部は、塩水の流出入があるため周期的に流れが発生している。このため、流れの速い春

や秋などの潮位差の大きい時期の場合には、粒径の大きい物質の流入の可能性があり、沈降速

度が大きくなるものと推察される。

平常時の沈降速度は、どの地点も 5m/s 程度以下と考えられ、10m/s 程度以上の場合には、流

入河川又は塩水の流出入による影響を受けているものと考えられる。

植物プランクトン等流入河川より運ばれてくる沈降物

潮汐により運ばれてくる沈降物

死滅・分解した植物プランクトン等

流入

流出

有光層

セジメントトラップ

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図 4.13 地点別の沈降速度(小川原湖) (4)小川原湖における上層と底層の沈降速度の関係

上層と底層の沈降速度は、ほぼ同様の傾向にあり、調査の目的を踏まえ、調査深度を設定す

る必要がある。

図 4.14 水深 5m と底上 2m の沈降速度の関係(小川原湖)

0

5

10

15

20

25

0 1 2 3 4

水深

5m

SS(m

/日

)

流入河川の

影響範囲

湖央部

流出入口

調査期間中、30mm/日程

度以上の降雨があり、その

影響を受けたと推察され

る。

調査期間が秋季の

も塩水の流入しやすい

時期と重なっていたこ

とから、その影響を受

けたと推察される。

0

5

10

15

20

25

0 5 10 15 20 25

水深5m SS(m/日)

底上

2m

SS(m

/日

)

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69

(5)パラメータについて 沈降速度のパラメータは、水質予測モデルにおける水中物質の沈降のパラメータとして用い

られる。

実際には、水質予測モデルでは、再現計算を実施し、実測値に合うようにパラメータを設定

することとなるが、調査結果のパラメータは初期パラメータとして設定し、 終的には、調査

結果と異なる値を採用することも多い。

これは、湖沼等における流れは複雑であり、それを一つの沈降速度で表現するため、調査結

果と採用値が異なることも考えられる。

表 4.2 にパラメータ事例の一覧を示す。なお、水質予測における底質の取り扱いについて資

料編の第一編 第2章に記載しているので参考にするとよい。

表 4.2 パラメータ事例一覧(沈降速度)

出典:湖沼工学 平成 2年 3月 山海堂

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70

5.底質・土壌に係わる法体系と試験方法

5章では行政現場での参考として底質・土壌に係わる法体系の概要を示すとともに、法によっ

て異なる含有量試験や溶出試験といった基準値の理解を容易にするため試験方法の概要を示し

た。

5.1 底質・土壌調査に係わる関連法令の概要

底質・土壌調査の目的別の関連法令の全体構成を図 5.1 に、底質・土壌調査の目的と法令の概

要を表 5.1 に示す。

現状の底質環境調査に係る法令等としては、環境汚染の状況、規制物質の状況、開発行為に必

要なアセスメント、定期観測の計画に関連して、「底質の暫定除去基準」、「ダイオキシン類対策特

別措置法」、「土壌の汚染に係る環境基準」、「環境影響評価法(底質、土壌)」、「河川砂防技術基準

(案)調査編(底質)」などがある。

底質の処理と利用に係る法令等としては、底質の汚染の有無の確認、浚渫土の処理、海洋投入

処分計画に関連して、「底質の暫定除去基準」、「ダイオキシン類対策特別措置法」、「土壌汚染対策

法」、「建設発生土利用技術マニュアル[第3版]」、「海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律」

などがある。

汚染への対応に係る法令等としては、「底質の処理・処分等に関する指針」、「土壌汚染対策法」、

「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」などがある。

これらの法令等の詳細については、各法令等の出版物を見て頂きたい。また、資料編に「底質・

土壌に係わる法令等の概要」について整理してあるので参考にするとよい。

底質・土壌調査の関連法令は、土壌の汚染に係る環境基準、底質の暫定除去基準、ダイオキ

シン類対策特別措置法、土壌汚染対策法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律、海洋汚染及び

海上災害の防止に関する法律等があり、これらを行為で区分すると、大きくは以下の3つに分

けられる。

(1) 現状の底質環境調査に係るもの

(2) 底質の処理と利用に係るもの

(3) 汚染への対応に係るもの

これら関連法令は、対象項目や行為の種別等で複雑に関連しており、底質・土壌調査を実施

する場合には、これら関連法令を理解しておく必要がある。特に、法令によって分析方法が異

なる(5.2 節参照)ため、法令に合致した分析方法を採用しないと調査結果を利用できないこ

とになるので注意が必要である。

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71

図 5.1 底質・土壌調査の目的別関連法令の全体構成

底質環境の把握(基準となる法令)

開発行為に必要な アセスメント

環境影響評価法 (底質,土壌)

底質の暫定除去基準

ダイオキシン類対策特別措置法

土壌の汚染に係る 環境基準

底質の浚渫及び浚渫土の処理

底質の暫定除去基準

ダイオキシン類対策 特別措置法

土壌汚染対策法

浚渫土の処理

開発行為の内容や地域

特性に応じて、左記の法

令基準等から必要な項

目を調査

建設発生土利用技術 マニュアル[第3版]

底質が有害物質に汚染されていた場合の対応

その他汚染土壌の処理

底質の処理・処分等に 関する指針 土壌汚染対策法

自治体の残土条例

自治体の環境条例

海洋投入処分を計画

海洋汚染及び海上災害

の防止に関する法律

廃棄物に遭遇した場合

廃棄物の処理及び 清掃に関する法律

定期観測の計画

底質及び水質汚濁の現状

から、左記の法令基準等

や関係する水質項目から

必要な項目を選定して調

河川砂防技術基準(案) 調査編(底質)

建設発生土等の有効 利用に関する行動計画

浚渫土砂の海洋投入 及び有効利用に関する

技術指針

現状の底質環境調査

底質の処理と利用

河川水質調査要領 ダム貯水池水質調査要領

堰水質調査要領

土壌汚染対策法の指定区

域にならない場合も、搬出

する汚染土壌は、法に従っ

た処理が望ましい

浚渫土は建設発生土で

あり、廃棄物ではない

法令等で底質・土壌に基

準がある項目

汚染への対応

底質の汚染の有無の確認

法令による規制物質 の状況

環境汚染の状況 法

条例

要領、指針、マニュアルなど

底質の暫定除去基準

(水銀、PCB)ダイオ

キシン類特別措置法の基

準値を超えた場合

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72

表 5.1 底質・土壌調査の法令の概要

※1:「底質調査方法(昭和 60 年 9 月 8日付け環水第 127 号)」は、環境省(旧環境庁)で定めたものであり、河川、ダム、湖沼の底質の試験方法として一般に用いられている。

※2:「ダイオキシン類に係る底質調査測定マニュアル(平成 20 年 3 月、環境省水・大気環境局水環境課)」は、底質中のダイオキシン類濃度に関して調査を行う場合に活用され

ることを目的として策定されたものである。

定期観測等の計画

環境基準 環境影響評価有害物質汚染水銀、PCB

ダイオキシン汚染

水質汚濁搬出する汚染土壌に該当する場合

農用地土壌に転用する場合

建設発生土の利活用

終処分海洋投入処分(海面埋立)

法令等

土壌の汚染に係る環境基準

環境影響評価法 底質の暫定除去基準

ダイオキシン類対策特別措置法

河川砂防技術基準(案)調査編

土壌汚染対策法 農用地の土壌の汚染防止等に関する法律

建設発生土利用技術マニュアル

廃棄物の処理及び清掃に関する法律

海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律

対象例外を除くすべての土壌

底質・土壌 底質 公共用水域の水底の底質

底質 土壌汚染基準を超える汚染土壌

田に限る(表層15cm)

建設発生土 終処分場に搬入する廃棄物

投入できる水底土砂等

項目の概要

揮発性有機化合物(VOC)、重金属、農薬

揮発性有機化合物(VOC)、重金属、農薬、水質汚濁物質

水銀、PCB ダイオキシン類 重金属水質汚濁物質 揮発性有機化合物(VOC)、重金属、農薬

砒素銅(カドミウム)

- 揮発性有機化合物(VOC)、重金属、農薬

重金属

溶出基準 - - - - 溶出基準 - - 溶出基準 溶出基準

(農用地基準) - 含有量基準 含有量基準 - 含有量基準 含有量基準 - - -

定期観測 - - - 常時監視あり - 常時監視あり - - -

試験方法の規定

前処理法、分析法

- 底質調査方法などによる(※1)

前処理方法、分析方法

前処理方法、分析方法

- 前処理方法、分析方法

前処理方法、分析方法

試料採取の規定はない

- 試料採取の規定がある

試料採取の規定がある

- - -

調査密度の規定はない

- 調査密度の規定がある

調査密度の規定がある

- - -

備考

・環境基準の達成に努めるための行政目標・基準を超過した場合、土対法の適用の有無を検討する・農用地基準は含有量である

・事業の場所、内容に合わせて項目や方法を選定する

・基準を超える場合は、対策を検討(浚渫、掘削、封じ込めまたは無害化)・底質の処理、処分等に関する指針(施工管理基準)

・基準を超える場合は対策を検討(浚渫、原位置固化、覆砂)・底質の処理、処分等に関する指針(施工管理基準)

・堰水質調査要領では健康項目の分析方法を土壌環境基準によるとしている

・指定区域からの搬出に適用・運搬方法・処理処分先・建設発生土が土対法の指定基準を超過する場合は、指定区域に準じて適用することが望ましい

・カドミウムは米が基準で、土壌分析は基準値を持たない・農用地における土壌中の重金属等の蓄積防止に係る管理基準

・土対法の引用・土質確認

・浚渫土は建設汚泥に当たらず、建設発生土なので廃棄物としては搬入できない(覆土としては利用可能)・基準値は土対法の第2溶出基準に反映されている

・陸上発生土の海洋投入処分は難しい

底質を処理・利用(浚渫)するための底質調査

廃棄物に遭遇した場合底質環境の把握(基準となる法令)

法令による規制物質 底質の性状の確認

試料採取法などの規定

目的

現状の底質環境調査

基準値

底質調査方法による(※1)

ダイオキシン類に係る底質調査測定マニュアルによる(※2)

・河川水質調査要領・ダム貯水池水質調 査要領・堰水質調査要領

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5.2 各基準項目と試験方法

(1)試験方法の流れ

底質及び土壌の試験方法は、試験に供する前段階としての「分別・ふるい」や「乾燥」、試験

水を作成するための「溶出」や「溶解」、試験水を定量するための「分析」の 3つの工程に分け

ることが出来る。同じ測定項目でも、測定の目的(準拠する法令等)によりこれらの試験方法

は異なり、これらに準じた測定を行う必要がある。表 5.4 に適用法令と試験方法及び基準値の

一覧を示す。 なお、河川・ダム・湖沼の底質

の試験方法として一般に用いられ

ている「底質調査方法」は、試験

方法の規定のみで基準値は設定さ

れていないが、比較の意味で表

5.4 に示した。また、環境影響評

価法による底質や土壌の試験は、

開発行為の内容や地域特性により

準拠する法令等が異なり、各々の

目的に応じた試験方法を選定し測

定を行うことになる。

図 5.2 底質及び土壌の試験方法の流れ

試料の採取

①試験に供する前段階の工程 [分別・ふるい]、[乾燥]

②試験水を作成するための工程 [溶出]、[溶解]

③試験水を定量するための工程 [分析]

試験結果

■試験方法

底質及び土壌の試験方法についての留意事項等を以下に示す。

・底質及び土壌の試験分析は、試験に供する前段階としての「分別・ふるい」や「乾燥」、試

験水を作成するための「溶出」や「溶解」、試験水を定量するための「分析」の3つの工程

に分けることができる。

・同じ測定項目でも、測定の目的(準拠する法令等)により、これらの試験方法が異なり、こ

れらに準じた測定を行う必要がある。

・分析方法は、各分析項目について複数の方法が認められていることが多く、環境省告示やJ

IS(日本工業規格)によるものが多い。ただし、分析方法により定量範囲や定量下限値が

異なり、検液に適した分析方法を用いることが重要である。

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(2)基本的な試験方法(試料前処理方法)の違い 底質・土壌の分析では試料の前処理方法により、①蒸留水による振とう溶出、②弱酸・弱ア

ルカリによる振とう溶出、③強酸・強アルカリにより全量を溶解後分析する全量分析、の大き

く 3つの試験方法に分けることが出来る。その後の分析方法は比較的類似のケースが多く、特

に溶出試験法では、溶出後の試料を水質分析と同じ方法で計測する。

表 5.2 基本的な試験方法の分類

法律等 試験方法の目的 単位 前処理方法

土壌の汚染に係る環境基準

土壌汚染対策法(指定基準)

土壌汚染対策法(第二溶出基準)

廃棄物の処理及び清掃に関する法律、海

洋汚染及び海上災害の防止に関する法律

(判定基準)

地下水や海水に溶

け出すことを想定

mg/L

蒸留水による振とう

溶出

土壌汚染対策法(指定基準)※1 体内等の条件下で

溶け出すことを想

mg/kg

弱酸・弱アルカリに

よる振とう溶出

土壌汚染対策法(自然的原因)※2

農用地の土壌の汚染防止等に関する法律

底質の暫定除去基準

mg/kg

強酸・強アルカリに

より全量を溶解

ダイオキシン類対策特別措置法※3

全量分析

pg/g 溶媒抽出

※1:土壌汚染対策法での含有量基準の試料前処理は、1規定塩酸による振とう溶出であり、いわゆる含有量と

は異なる酸溶出試験である。これは、胃酸での溶解を想定したためとされている。

※2:土壌汚染対策法で「自然的原因での汚染」を判定する場合に含有量を基準としているが、この場合の含有

量試験は底質調査方法などの全量分析になっている。

※3:底質のダイオキシン分析は、底泥から直接に溶媒抽出しており、全量分析になっている。毒性等級(TEQ)

への換算は、測定濃度に毒性等級係数を乗じて pg-TEQ/g として表示する。

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(3)各試験工程の概要

ここでは、各試験工程の意義と適用する法令等での取り扱いについて概説する。

なお、試験方法の詳細については、表 5.4 に示す測定方法の出典を参照されたい。

1)分別・ふるい 試験対象とする底質及び土壌の異物(小石、貝がら、小枝、木の葉等)の除去や粒径を分別

する工程である。異物の除去は分析に供する試料を均質に調整するための分別作業であり、ど

の程度の分別を行なえばよいかは採取現場の状況に照らし合わせて実施する。粒径によるふる

いを必要とするのは、粒径の大小により分析値が異なることによる部分が大きいと考えられる。

これは、比表面積(一定容量あたりの表面積の割合)の違いによるものと考えられ、一般に粒

径が小さいほど大きな分析値となる。

海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律で埋立場所への船舶からの排出を目的とする場

合(昭和 48 年環告 14 号)には有姿のまま採取し、小石等の異物を除去後の試料を対象とする。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律で埋立処分を目的とする場合(昭和 48 年環告 13 号)には

粒径 5mm 以下のものについては有姿のまま、それ以外のものについては粒径 0.5~5mm に粉砕

した試料を対象とする。また、揮発性物質を対象とする場合も、出来る限り大気に触れないこ

とを前提としているためふるいの工程はない。

以上の目的以外の場合は、2mmのふるいを通過したもののみを試料とし試験対象とするの

が一般的である。

2)乾燥

ふるい後の底質及び土壌の湿潤試料を乾燥する工程である。乾燥により揮散する恐れのある

項目については一般的に乾燥は行わない。(乾燥減量の加熱乾燥とは異なるので注意を要す

る。)

試験方法の前処理として乾燥が定められているのは、土壌汚染に係る環境基準(平成 3年環

告 46 号)や土壌汚染対策法の試験方法を定めた平成 15 年環告 18 号、19 号、及び農用地の土

壌の汚染防止等に関する法律に関する試験方法で、いずれも風乾である。また、ダイオキシン

類対策特別措置法(ダイオキシン類に係る底質調査測定マニュアル)でも風乾である。他に、

底質調査方法(昭和 63 年環水管 127 号)も項目により乾燥が定められ、加熱乾燥により揮散

しない重金属等については乾燥減量測定後の試料の使用も認められている。

一方、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律で埋立場所への船舶からの排出を目的とす

る場合(昭和 48 年環告 14 号)や、廃棄物の処理及び清掃に関する法律で埋立処分・海洋投入

処分を目的とする場合(昭和 48 年環告 13 号)、及び底質の暫定除去基準(昭和 63 年環水管 127

号に準じた試験)では、乾燥は特に定められていない。

なお、試験方法に乾燥の工程はないが、試験結果を表示するときに乾燥重量あたりで表示す

る場合(たとえば、底質の暫定除去基準の水銀、PCB)は、別途、加熱乾燥による乾燥重量を

求める必要がある。

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3)溶出・溶解

溶出及び溶解は、前処理として も重要な工程であり、(1)で述べたように試験方法の目的

により大きく異なり、使用する溶媒、pH、溶解(振とう)条件、試料と溶媒の比率が厳密に

定められている。表 5.3 に底質調査方法と土壌汚染対策法の重金属の分析における溶出・溶解

工程の比較を示す。底質調査方法とは、一般的な河川や湖沼の底質調査方法として環境省が定

めた(昭和 63 年環水管 127 号)ものである。

一般に、水で溶出する場合は溶出量、酸・アルカリまたは有機溶媒で溶出・溶解する場合は

含有量といわれている。ただし、土壌汚染対策法のように弱い酸等を用いた場合には溶け出す

のは一部であり、強い酸等を用いた含有量(底質調査方法)より小さい値となる傾向がある。

土壌汚染対策法の含有量基準は体内で胃酸により溶け出すことを想定している

表 5.3 底質調査方法と土壌汚染対策法の重金属の分析における溶出・溶解工程の比較

法律等 測定方法の出典 測定方法

の種類 使用する溶媒

溶解(振とう)

条件

試料と溶媒の

比率

含有量 硝酸+塩酸 熱板上加熱 適量 底質調査

方法 昭和 63 年環水管 127 号

溶出量 pH の規定なし 室温で 4時間

振とう 3%で溶出

平成 15 年環告 19 号 含有量 1mol/l 塩酸 室温(25℃)で

2 時間振とう 3%で溶出

土壌汚染

対策法 平成 15 年環告 18 号

(平成 3年環告 46 号) 溶出量

pH5.8-6.3

の純水

常温(20℃)で

4 時間振とう 10%で溶出

4)分析

前処理により調整した検液について、目的とする項目を測定することを分析という。分析方

法は、各分析項目について複数の方法が認められていることが多く、環境省告示や JIS(日本

工業規格)によるものが多い。

ただし、分析方法により定量範囲や定量下限が異なり、検液に適した分析方法を用いること

が重要である。

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表 5.4 底質に係る基準値

2.ダイオキシン類対策特別措置法

8.農用地の土壌の汚染防止等に関する法律

ダイオキシン類による大気の汚染、水質の汚濁(水底の底質の汚染を含む)

及び土壌の汚染に係る環境基準(改正環告46号平成14年7月22日)

農用地の土壌の汚染防止等に関する法律施行令(昭和46

年6月政令204)

(農用地基準を除く) (水底の底質) 含有量基準 溶出基準

埋立処分が可能

(陸上及び海面埋立) (陸上の管理型処分場相当) (陸上の安定型処分場相当)

溶出量 含有量 含有量 含有量 溶出量 含有量 含有量

乾燥風乾(揮発性物質は対

象外)風乾 風乾しない

熱乾燥(カドミウム等の重金属)

湿試料(カドミウム等の重金属)

風乾 風乾

ふるい2mm(揮発性物質は対

象外)2mm 2mm 2mm 0.5~5mm(試料の粉砕後) 2mm 2mm

振とう方法・分解方法

常温、常圧、6時間(揮発性物質はヘッドス

ペース法4時間)

水銀:硝酸+硫酸+過マンガン酸カリウム分解→硫

酸酸性

硝酸+塩酸で大部分が溶けるまで(カドミウム等の

重金属)

室温、4時間(カドミウム等の重金属)

室温(25℃)、2時間カドミウム:硝酸+硫酸で澄明になるまで、銅:30℃,1時間、砒

素:30℃,30分

検液 5.8~6.3PCB:アルカリ溶融→ヘ

キサン抽出希塩酸 pHの規定なし

1mol/L塩酸(六価クロム、全シアンは異なる)

pH5.8~6.3(海面埋立は7.8~8.3)

pH7.8~8.3カドミウム:上記と同組成、銅:0.1mol/L塩酸、砒素:1mol/L塩

検液固形分・重量体積比

10%かつ500ml以上 - 湿重量10g 適量で調整 3%かつ500ml以上 3%,試料6g以上 10%かつ500ml以上 3%かつ500ml以上カドミウム:適量で調整、銅・砒素:

試料10g,検液50.0ml

ろ過・精製等メンブランフィルター

孔径0.45μmクロマトグラフ等による精製

水銀:還元気化、PCB:ヘキサン抽出

ろ紙5B ろ紙5Cメンブランフィルター

孔径0.45μm乾燥ろ紙(5B)

平成3年環告46号ダイオキシン類に係る底質調査測

定マニュアル平成15年環告19号

農令47号(カドミウム)、総令66号(銅)、総令31号(砒素)

(一般)水底土砂 特定水底土砂

カドミウム 0.01 mg/L以下 - ○ ○ 150mg/kg以下 0.01mg/L以下 0.3mg/L以下 0.3 mg/L以下 0.01 mg/L以下 0.1 mg/L以下 ※

全シアン 検出されないこと - ○ 50mg/kg以下 検出されないこと 1mg/L以下 1 mg/L以下 不検出 1 mg/L以下 -

有機燐 検出されないこと - - 検出されないこと 1mg/L以下 1 mg/L以下 不検出 1 mg/L以下 -

鉛 0.01 mg/L以下 - ○ ○ 150mg/kg以下 0.01mg/L以下 0.3mg/L以下 0.3 mg/L以下 0.01 mg/L以下 0.1 mg/L以下 -

六価クロム 0.05 mg/L以下 - ○ 250mg/kg以下 0.05mg/L以下 1.5mg/L以下 1.5 mg/L以下 0.05 mg/L以下 0.5 mg/L以下 -

砒素 0.01 mg/L以下 - ○ ○ 150mg/kg以下 0.01mg/L以下 0.3mg/L以下 0.3 mg/L以下 0.01 mg/L以下 0.1 mg/L以下 土壌1kgにつき15mg以上

総水銀 0.0005mg/L以下 25ppm以上 ○ ○ 15mg/kg以下 0.0005mg/L以下 0.005mg/L以下 0.005 mg/L以下 0.0005mg/L以下 0.005mg/L以下 -

アルキル水銀 検出されないこと - ○ ○ - 検出されないこと 検出されないこと 不検出 不検出 不検出 -

PCB 検出されないこと 10ppm以上 ○ - 検出されないこと 0.003mg/L以下 0.003 mg/L以下 不検出 0.003mg/L以下 -

ジクロロメタン 0.02 mg/L以下 - - 0.02mg/L以下 0.2mg/L以下 0.2 mg/L以下 0.02 mg/L以下 0.2 mg/L以下 -

四塩化炭素 0.002 mg/L以下 - - 0.002mg/L以下 0.02mg/L以下 0.02 mg/L以下 0.002 mg/L以下 0.02 mg/L以下 -

1,2-ジクロロエタン 0.004 mg/L以下 - - 0.004mg/L以下 0.04mg/L以下 0.04 mg/L以下 0.004 mg/L以下 0.04 mg/L以下 -

1,1-ジクロロエチレン 0.02 mg/L以下 - - 0.02mg/L以下 0.2mg/L以下 0.2 mg/L以下 0.02 mg/L以下 0.2 mg/L以下 -

シス-1,2-ジクロロエチレン 0.04 mg/L以下 - - 0.04mg/L以下 0.4mg/L以下 0.4 mg/L以下 0.04 mg/L以下 0.4 mg/L以下 -

1,1,1-トリクロロエタン 1 mg/L以下 - - 1mg/L以下 3mg/L以下 3 mg/L以下 1 mg/L以下 3 mg/L以下 -

1,1,2-トリクロロエタン 0.006 mg/L以下 - - 0.006mg/L以下 0.06mg/L以下 0.06 mg/L以下 0.006 mg/L以下 0.06 mg/L以下 -

トリクロロエチレン 0.03 mg/L以下 - - 0.03mg/L以下 0.3mg/L以下 0.3 mg/L以下 0.03 mg/L以下 0.3 mg/L以下 -

テトラクロロエチレン 0.01 mg/L以下 - - 0.01mg/L以下 0.1mg/L以下 0.1 mg/L以下 0.01 mg/L以下 0.1 mg/L以下 -

1,3-ジクロロプロペン 0.002 mg/L以下 - - 0.002mg/L以下 0.02mg/L以下 0.02 mg/L以下 0.002 mg/L以下 0.02 mg/L以下 -

チウラム 0.006 mg/L以下 - - 0.006mg/L以下 0.06mg/L以下 0.06 mg/L以下 0.006 mg/L以下 0.06 mg/L以下 -

シマジン 0.003 mg/L以下 - - 0.003mg/L以下 0.03mg/L以下 0.03 mg/L以下 0.003 mg/L以下 0.03 mg/L以下 -

チオベンカルブ 0.02 mg/L以下 - - 0.02mg/L以下 0.2mg/L以下 0.2 mg/L以下 0.02 mg/L以下 0.2 mg/L以下 -

ベンゼン 0.01 mg/L以下 - - 0.01mg/L以下 0.1mg/L以下 0.1 mg/L以下 0.01 mg/L以下 0.1 mg/L以下 -

セレン 0.01 mg/L以下 - 150mg/kg以下 0.01mg/L以下 0.3mg/L以下 0.3 mg/L以下 0.01 mg/L以下 0.1 mg/L以下 -

ふっ素 0.8 mg/L以下 - 4000mg/kg以下 0.8mg/L以下 24mg/L以下 - 3 mg/L以下 - 15 mg/L以下 -

ほう素 1 mg/L以下 - 4000mg/kg以下 1mg/L以下 30mg/L以下 - - - - -

有機塩素化合物 - - - - - - 塩素として1 mg/L以下 塩素として40 mg/kg以下 - -

銅又はその化合物 - - ○ - - - - 0.14 mg/L以下 - 3 mg/L以下 土壌1kgにつき125mg以上

亜鉛又はその化合物 - - ○ - - - - 0.8 mg/L以下 - 5 mg/L以下 -

ベリウム又はその化合物 - - - - - - 0.25 mg/L以下 - 2.5 mg/L以下 -

クロム又はその化合物 - - ○ - - - - 0.2 mg/L以下 - 2 mg/L以下 -

ニッケル又はその化合物 - - - - - - 0.12 mg/L以下 - 1.2 mg/L以下 -

バナジウム又はその化合物 - - - - - - 0.15 mg/L以下 - 1.5 mg/L以下 -

フェノール類 0.2mg/L以下 - - -

含水率 - - ○(乾燥減量) - - - 85%以下(陸上埋立) - - - -

油分 - - - - - - 15 mg/L以下 - - -

- 150pg-TEQ/g以下 - - - - 3ng/g以下 10pg/L以下 - -

・土壌環境基準と同値

・油分はS51総令5号

昭和48年環告14号

・特定水底土砂:当該項目の廃掃法の海洋投入基準を超過する土砂

海底の浚渫土

平成15年環告18号(平成3年環告46号)

常温、常圧、6時間(揮発性物質はヘッドスペース法4時間)

pH7.8~8.3

グラスファイバーフィルター孔径1μm

3%かつ500ml以上(無機性水底土砂)、10%かつ500ml以上(無機性以外の水底土砂)

グラスファイバーフィルター孔径1μm

埋立場所等への船舶からの排出が可能(海洋投棄)

溶出量

なし

有姿のまま採取し、小石等の異物を除去

農用地土壌対策を講じる超過基準

5.土壌汚染対策法土壌汚染対策法施行規則(平成14年12月環令29号)

指定基準

土壌からの溶出による地下水汚染の危険

金属等を含む産業廃棄物に係る判定基準を定める省令(昭和48.2.17総令5)第二溶出基準

海洋投入処分が可能措置が必要となった土壌の処分場所を決める

判断基準

7.海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律

海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施行令第5条第1項に規定する埋立場所等に排出しようとする金属等を含む

廃棄物に係る判定基準を定める総理府令(昭和48.2.17 総令6)

適用法令

6.廃棄物の処理及び清掃に関する法律

浚渫・封じ込め等の対策が必要

粉じん等の飛散などによる直接摂取の危

険性

1.土壌の汚染に係る環境基準

平成3年8月環境庁告示第46号

可及的速やかに達成されるように努める・達成されている水域に

合っては維持に努める

3.底質の暫定除去基準

昭和50年10月環水管119号

- -

4.底質調査方法(基準値は設定されていない)

有機溶媒による抽出

昭和63年環水管127号

基準値の意味維持することが望まし

測定方法の種類

10%かつ500ml以上

2mm(揮発性物質は対象外)

風乾(揮発性物質は対象外)

pH5.8~8.3

溶出量

常温、常圧、6時間(揮発性物質はヘッドスペース法4時間)測

定方法

昭和48年環告13号

常温・常圧で6時間(揮発性物質はヘッドスペース法4時間)

特に定めず

溶出量

メンブランフィルター孔径0.45μm

前処理方法

測定方法の出典

農用地(田に限る)

・カドミウムは土壌基準値はないが分析法は規定されている・乾燥重量当たり・表層15cmまでが対象

公共用水域の水底の底質

土壌(自然由来を除く)海洋投入できる無機性の汚泥

底質 埋立処分できる汚泥

・ダイオキシン類試験は厚告192号,乾燥重量

・含水率基準は施行令第6条第一項第三号ヘ

・浚渫土(建設発生土)に適用はない.汚染土壌では土対法第二溶出基準が同値

ダイオキシン類

・乾燥重量当たり・全シアン、六価クロムの前処理は異なる・鉄、マンガン、硫化物、全窒素、全リン、COD、BHC等の分析法も規定されている

・特別管理産業廃棄物海洋投入処分は禁止

2mm

・乾燥重量当たり・全シアン、六価クロムの前処理は異なる・鉄、マンガン、硫化物、全窒素、全リン、COD、BHC等の分析法も規定されている

・乾燥重量当たり・BHCの分析法も規定されている

備 考

・農用地に係る含有量基準がある

・乾燥重量あたり ・乾燥重量あたり

人の健康の保護に関わる有害物質

対象物 土壌

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◆参考図書

1) 「改訂新版 建設省河川砂防技術基準(案)同解説 調査編」社団法人日本河川協会編

2) 「河川水質調査要領(案)参考資料」平成 17 年 3 月 国土交通省河川局河川環境課

3) 「底質の調査・試験マニュアル 改訂第三版」平成 15 年 3 月 社団法人底質浄化協会

4) 「湖沼環境調査指針」公害対策技術同友会

5) 「改訂版 底質調査方法とその解説」社団法人日本環境測定分析協会

6) 「工場排水試験方法 JIS K 0102:2008」平成 20 年 3 月 20 日改正 日本工業標準調査会

7) 「改訂 ダム貯水池水質調査要領」平成 8年 1月 財団法人ダム水源地環境整備センター

8) 「底質汚濁改善対策調査(淡水域)報告書」昭和 57 年度 環境庁

9) 「ダム湖の陸水学」平成 16 年 7 月 生物研究社

10) 「流域環境評価と安定同位体」平成 20 年 2 月 京都大学学術出版会

11) 「地球環境調査計測事典 第3巻 沿岸域編」平成 15 年 11 月 株式会社フジ・テクノシス

テム

12) 「湖沼管理のための流動機構調査」平成 15 年 3 月 湖沼技術研究会

13) 「湖沼における水理・水質管理の技術」平成 19 年 3 月 湖沼技術研究会

14) 「湖沼工学」平成 2年 3月 山海堂

15) 「新編 湖沼調査法」平成 7年 11 月 株式会社講談社

16) 「湖沼調査法」昭和 62 年 12 月 株式会社古今書院

◆参考文献

17) 「底泥-水間の物質移動に関する調査」平成 13 年~17 年 独立行政法人土木研究所

18) 「食物連鎖を利用した水質浄化技術」 山室真澄 地質ニュース 520 号

◆底質等と生物の生息環境との関係(表 2.5)使用文献一覧

19) 小川原湖漁業調査報告書(総合解析編 1,2),青森県水産総合研究センター内水面研究所

20) 平成14~18年度のヤマトシジミ現存量調査報告書,青森県水産総合研究センター内水面研究

21) 宍道湖におけるヤマトシジミ Corbicula japonica PRIME と環境との相互関係に関する生理

生態学的研究, 1997, 中村幹雄, 北海道大学水産学博士論文

22) 日本のシジミ漁業-その現状と問題点-, 2000, 中村幹雄 編著, たたら書房, 266.

23) 涸沼におけるヤマトシジミ稚貝の分布と底質環境, 2008, 山崎幸夫・須能紀之・根本隆夫, 茨

城内水試研報 Vol.41, 25-31.

24) 茨城県涸沼におけるヤマトシジミ稚貝の分布と底質環境, 2007, 山崎幸夫・須能紀之・根本

隆夫, 日本陸水学会第 72 回大会講演要旨

25) 小川原湖における水質・底質環境およびヤマトシジミの生息状況について, 2006, 久保田光

彦・藤原広和・長崎勝康・吉田由孝・細井崇, 海岸工学論文集, 第 53 巻(2006), 1091-1095.

26) ヤマトシジミの硫化水素耐性, 中村幹雄・品川明・戸田顕史・中尾繁, 1997, 水産増殖

Vol.45 No.1, 17-24.

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79

27) 宍道湖および中海産二枚貝 4種の環境耐性, 中村幹雄・品川明・戸田顕史・中尾繁, 1997, 水

産増殖 Vol.45 No.2, 179-185.

28) ヤマトシジミの貧酸素耐性, 中村幹雄・品川明・戸田顕史・中尾繁, 1997, 水産増殖 Vol.45

No.1, 9-15.

29) 小川原湖の水理環境とヤマトシジミの繁殖について, 石川忠晴, 2001, ながれ 20(2001),

346-353.

30) ヤマトシジミの塩分耐性, 中村幹雄・安木茂・高橋文子・品川明・中尾繁, 1996, 水産増殖

Vol.44 No.1, 31-35.

31) ヤマトシジミの温度耐性, 中村幹雄・品川明・中尾繁, 1996, 水産増殖 Vol.44 No.3,

267-271.

32) 小川原湖におけるヤマトシジミの繁殖環境について, 鶴田泰士・石川忠晴・西田修三・成田

舞・藤原広和, 2002, 土木学会論文集 No.705/Ⅱ-59, 175-187.

33) レッドデータブックとちぎ.

34) 福井県の絶滅のおそれのある野生動物 福井県レッドデータブック(動物編).

35) 希少魚の保護増殖試験 ニッポンバラタナゴ保護増殖試験 ドブガイの増殖に関する研究

-3, 矢田敏晃, 1990, 大阪府立淡水魚試験場業務報告 No.24, 118-128.

36) 小川原湖におけるシラウオの産卵場, 榊昌文・片山知史・鶴ヶ崎昭彦・沼辺啓市, 2008, 水

産増殖 Vol.56 No.1, 139-140.

37) 湖沼資源の増加利用開発調査研究 網走湖産シラウオの資源変動と解析に関する基礎的研

究, 北海道水産ふ化場, 2004, 北海道立水産ふ化場事業成績書 Vol.2002, 143-149.

38) 湖沼資源の増殖利用開発調査研究 3 網走湖産シラウオの資源変動と解析に関する基礎的研

究, 北海道水産ふ化場, 2005, 北海道立水産ふ化場事業成績書 Vol.2003, 141-146.

39) 中海・宍道湖水域特産資源管理対策事業 ワカサギ・シラウオ資源調査, 川島隆寿・山根恭

道・鈴本博也, 1991, 島根県水産試験場事業報告 Vol.1989, 147-153.

40) 岡山県高梁川におけるシラウオの産卵場, 千田哲資, 1973, 魚類学雑誌 Vol.20 No.1,

25-28.

41) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚, 水野信彦・川那部浩哉, 1989, 山と渓谷社, 720.

42) 水産用水基準(2000 年版), 平成 12 年 12 月, 社団法人日本水産資源保護協会.

43) シラウオのふ化飼育実験-Ⅱ 水温とふ化との関係について, 丹下勝義, 1968, 水産増殖

Vol.16 No.2, 81-86.

44) シラウオのふ化飼育実験-Ⅲ, 丹下勝義・竹田文弥, 1968, 昭和 43 年兵庫県立水産試験場報

告.

45) 新版魚類学(下), 落合明・田中克, 1986, 恒星社厚生閣, 1140.

46) Ⅵ.湖沼漁業開発研究 2.ワカサギ漁業開発研究 (1)ワカサギ産卵場調査, 渋谷武久・平

川英人・広瀬充・成田薫, 2003, 福島県内水面水産試験場事業報告 Vol.2001, 46-49.

47) ワカサギの漁業生物学, 佐藤隆平, 1954, 水産増殖業書 Vol.5.

48) ワカサギ人工受精卵の孵化ならびに孵化仔魚の生残に対する飼育水の塩分の影響, 岩井寿

夫・長間弘宣, 1986, 水産増殖 Vol.34, 85-102.

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「湖沼底質環境・調査手引き」(案)

資 料 編

平成21年3月

国土交通省 東北地方整備局

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目 次

第一編 底質に関連する情報

1.湖沼の流動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

(1)湖沼における流動の要素・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 (2)河川流の概要(湖沼への流入と、湖沼からの流出)・・・・・・・・・ 1

2.水質予測モデルにおける底質の取り扱い・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4

(1)水質予測モデルの概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4

(2)水質予測モデルでの底質の取り扱い・・・・・・・・・・・・・・・・ 4

(3)底質に関するパラメータ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8

3.底質・土壌に係わる法令等の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9

3.1 底質・土壌に係わる法と底質との係わり・・・・・・・・・・・・・・ 9

3.2 底質・土壌に係わる法体系・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12

第二編 小川原湖の情報

1.小川原湖の特徴・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15

(1)概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15

(2)水質・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16

(3)小川原湖の水理(成層)特性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17

(4)小川原湖の湖内流動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17

(5)小川原湖水環境整備事業の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18

2.小川原湖における底質調査の概要・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・ 19

2.1 定期底質調査の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19

2.1.1 調査の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19

2.1.2 調査結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20

2.2 平成 18 年度秋~平成 19 年度夏 4季調査の概要・・・・・・・・・・・ 21

2.2.1 調査の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21

2.2.2 調査結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25

(1)底質の外観・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25

(2)底質の物理・化学性状調査結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26

3.小川原湖のヤマトシジミと底質の関係・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34

(1)水深との関係・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34

(2)粒度との関係・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35

(3)水質との関係・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37

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・ああ

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資-1

第一編 底質に関連する情報

1.湖沼の流動

湖沼の底質を形成する物質は、まず流入する河川から湖沼へ運ばれ、湖沼の中でその流れにの

って移流・拡散しながら、沈降し湖沼底に堆積する。すなわち、湖沼における物質がどのように

移流・拡散・沈降するかを大きく支配するのは、湖沼の流動であると言える。したがって底質を

考える際には湖沼の流動を念頭に置いておく必要がある。なお、ここでは汽水湖を含む自然湖沼

を主な対象として記述するが、淡水湖において見られる流動についてはダム湖にも同様にみられ

る現象と考えて良い。 本手引き(本編)では、湖沼の流動について触れていないので、本章でその概要について示し

た。

(1)湖沼における流動の要素 湖沼の流動は表 1.1 に示す様な様々な要因から生じる流れがある。湖沼の流動の要因となる

ものとしては、河川流(湖沼への流入、湖沼からの流出)、風、水温・塩分による密度の違い、

潮汐、気圧の変化などがあげられる。これらの原因と、湖沼自体の地形的条件(緯度、周囲の

地形)や湖の形状(湖岸形状、湖盆形状)の条件が重層して、複雑な流れのパターンを生み出

す。

次に、湖沼の流動を決める基本的な要因である河川流について示す。

(2)河川流の概要(湖沼への流入と、湖沼からの流出)

河川流(すなわち湖沼への流入と、湖沼からの流出)は、湖沼の流動を決める基本的な要因

である。湖沼への流入部、湖水からの流出部では、流出入による流れが も支配的であり、流

量、水位、平面形状や湖盆形状などの要因によって流れが大きく変化する。

流入部では、湖の形状(湖岸形状、湖盆形状)に応じて流速が低下しながら流入する。ここ

で生じる流れは流入水の水温(密度)や流量、後述する湖水の成層状況に応じて変化する。河

川から流入する土砂及び土砂に吸着した物質は湖内に流入して流速が遅くなることによって沈

降する。沈降速度の大きいもの(粒径が大きいもの)がすぐに沈降・堆積するため、流れの大

きさと土砂の粒径に応じた分布で堆積する事になる(図 1.1)。

図 1.1 河川から流入した物質の沈降(イメージ)

出典:湖沼における水理・水質の管理の技術

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資-2

また、流入量、流出量は、“大きい、小さい”によって湖内の流速の大きさも変わるので、

湖内流動を決める重要な要素である。また流入量、流出量の大小は湖沼の水の入れ替わり具合

(回転率)にも関係する。それによって次に述べる水温や塩分の差がもとになって生じる密度

成層の状況が変わる事も考えられる。

海域の近くに河口部があり塩水の流入のある汽水湖では、海域の潮位変化に影響を受ける。

潮位変化の も基本的な要因である潮汐は、太陽と月の引力によって半日周潮といわれる約 12

時間や日周長といわれる約 24 時間周期の水位変動が生じる現象である。太陽と月の位置によっ

て大潮(潮の干満差の大きい状態で、新月や満月の前後数日間)や小潮(潮の干満差の小さい

状態で、月の形状が半月になる上弦や下弦の前後数日間)が生じる。塩水遡上も、潮汐の状況

で変化するので、海域に近い汽水湖では海側の潮汐も湖沼の流動を考える上で見逃してはなら

ない。

その他、潮位の変化は低気圧による吸い上げによる高潮(たかしお)や風波やうねりにより

高い潮位などが生じるなど、気象と潮位変化の状況にも留意する必要がある。

図 1.2 に汽水湖における河川流入・流出と塩水の進入のイメージを示す。

河川流入( ) 淡水

塩水進入

( )低気圧 吸い上げ

潮汐

風波

流出

( )湖沼 汽水湖 海域 図 1.2 汽水湖における河川流入・流出と塩水の進入

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資-3

表 1.1 流動の要素

流動の要素 成 因 概 要 底質との関係 河川流(湖沼への流入、湖沼からの流出)

流出入による流れ 湖沼への流入部、湖水からの流出部では、流出入による流れが も支配的であり、流量、水位、平面形状や湖盆形状などの要因によって流れが大きく変化する。海と接する汽水湖では、海域の潮位変化に影響を受ける。

河川から流入する土砂及び土砂に吸着した物質は湖内に流入して流速が遅くなることによって沈降する。沈降速度の大きいもの(粒径が大きいもの)がすぐに沈降・堆積するため、流れの大きさと土砂の粒径に応じた分布で堆積する事になる。

風による流れ(吹送流など) 風の湖面に生じる摩擦応力(せん断応力)及びこれによって生じる水面勾配

湖面上に風が吹くと、風の摩擦応力(せん断応力)のために、表面水は風の方向に引きずられて動き出す。風が湖面を吹くことによって生じるので、この流れを吹送流(すいそうりゅう)という。吹送流は風が強いほど、吹走距離が長いほど大きくなる。

浅い湖沼では風によって生じる波による流動の影響が直接湖底に達し、底泥の巻き上がりが湖内水質に大きな影響を与える場合がある。

水温による密度成層と密度流 湖内の鉛直の水温差(密度差)湖内水温と流入水の水温差(密度差)

水温が高ければ密度は小さく軽くなり、水温が低ければ(4℃までは)密度は大きく重くなる。水温差があるときには、上層は暖かく軽い水、下層は冷たく重たい水という層構造が生じる。これを水温成層あるいは水温による密度成層とよぶ。

流入水の水温と湖内水温の違いによって、河川水の流入する層、すなわち同時に流入する物質が流入する層が異なるので、堆積して底質を形成する過程に影響を与える。

塩分による密度成層と密度流 淡水と塩水の密度差 海域に近く、潮汐や風波などによって塩水が遡上し湖沼へ塩水の流入があるような汽水湖の場合、上層に淡水、下層に塩水といった2層構造の塩分による密度成層が形成される。同じ温度の淡水と海水なれば当然塩分のある海水の方が密度が大きいので、水温差が無くても、淡水と海水(塩水)があると2層構造、すなわち密度成層が生じることになる。

湖内下層に重たい塩水層が形成される汽水湖では、上層と下層の交換がなく、表層からの酸素の供給がないので、底質による酸素消費による低酸素化が進む場合がある。

静振と内部振動 急に風がやんだり、低気圧の急激な通過によって生じる気圧の変化

急に風がやんだり、低気圧の急激な通過によって気圧の変化が大きいときには、それらの変化が引き金となって、湖表面が振動する現象が生じる現象を静振(せいしゅ)あるいは表面静振とよぶ。水温や塩分による密度成層がある場合には密度躍層を境にした面が振動する場合がある。これを内部振動あるいは内部静振とよぶ。

表面静振は湖岸部で大きな変動になり、堆積に大きな影響を与える。 内部静振では、境界面に乱れが生じるので底質から回帰した物質が乱れ

によって上層に運ばれる。

河川流入( ) 淡水

塩水進入

( )低気圧 吸い上げ

潮汐

風波

流出

( )湖沼 汽水湖 海域

暖かい河川水の流入 冷たい河川水の流入水温

水深

( )暖かい水 軽い

( )冷たい水 重い

( )暖かい水 軽い

( )冷たい水 重い

暖かい河川水 冷たい河川水

風風等による水平往復流

浮泥層の形成

( )波と乱れ 乱流

、浮泥層の巻き上げ 拡散

【 】 弱風時 【 】 強風時

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資-4

2.水質予測モデルにおける底質の取り扱い

富栄養化現象の解析には、水質予測モデルが必要となる。本手引き(本編)では、水質予測の

実施に必要なパラメータを得るための底質調査等について記載したものであり、解析段階の水質

予測モデルについては記載していない。

本章では、底質調査の理解を深めて頂くため、水質予測モデルにおける底質の取り扱いについ

て記載した。

(1)水質予測モデルの概要

水質予測モデルは、空間的には「ボックスモデル」「鉛直一次元モデル」、「一次元多層モデ

ル(鉛直二次元モデル)」、「三次元モデル」に分類される。また、対象水質項目からは、窒素・

リン等の物質収支を解析する「物質収支モデル」と、植物プランクトン等の挙動も扱う「生態

系モデル」に分類される。(表 2.1)。

(2)水質予測モデルでの底質の取り扱い

水質予測モデルでの底質の扱いは、水質予測モデルの境界(負荷)条件として扱っている場

合が大部分であるが、手賀沼(2002 松梨他)、湯ノ湖(1988 細見他)や霞ヶ浦(2007)の事例

のように水質モデルと底質モデルを結合したモデルとして扱っているものもある。

(水質予測モデル) (水質.底質予測モデル)

図 2.1 水質予測モデルでの底質の扱いの概念図(水質予測モデル及び水質.底質予測モデル)

(水質予測モデル) (水質予測モデル)溶出 沈降 DO消費 溶出 沈降 DO消費

・・・底質一定 (底質予測モデル)・・・底質変化

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資-5

表 2.1 数値シミュレーションモデルの種類

モデルの 種類

特 徴 適用できる湖沼の条件 計算対象 利 点 欠 点 現象、対策の

適用実績

ボックス モデル

・水域を縦断方向に複数のボッ

クスに分け、各ボックス内で

の流入出に伴う水質変化を計

・水理量は収支のみ

・水質は各ボックスの平均値

・1 ボックス内での水質分布が一様

とみなせる

・流動の時間変化の影響をある程度

無視できる

・水質のボックス内平均値

・水表面における熱交換

・物質収支(流入出+沈降)

・ボックスが複数の場合、縦断

方向の移流・拡散も考慮可能

・底質からの負荷は考慮可能

・計算時間が短い

・長期的な水質予測が可能

・全層混合を仮定しているため、

成層化する湖沼には適さない

・1BOX 内での水質分布を表現で

きない

・流動変化の影響は考慮しにくい

・富栄養化(アオコ)

・浚渫効果予測

鉛直 一次元 モデル

・水域を層に分割し、水理、水

質量の鉛直分布を計算

・水理・水質量は層平均値

ボックスモデルに加え、

・比較的小規模で湖沼内の流動・水

質の水平分布が一様とみなせる

・湖沼形状がシンプル

ボックスモデルに加え、

・水理、水質量の鉛直分布

・計算時間が短い

・長期的な水理・水質量予測

が可能

・平面的な水質変化の把握が不可

・局所的な現象が表現しにくい

・富栄養化(アオコ)

・曝気循環施設の効

果予測

平面 二次元 モデル

・水域を水平方向にメッシュ分

割し、水理・水質量の分布を

計算

・水理・水質量はメッシュごと

に求められるが、鉛直方法の

分布は一様とみなしている。

ボックスモデルに加え、

・鉛直方向の水質分布が一様とみな

せる湖沼(例えば、広く浅い淡水

湖)

・入り江があるような、形状が比較

的複雑な湖沼

ボックスモデルに加え、

・水理、水質量の水平分布

・3 次元計算よりも計算が速

い。

・中期(1~数 10 年)的な水

理・水質量予測が可能

・鉛直方向の水質変化が表現でき

ないため、成層化する湖沼には

適さない。

・富栄養化(アオコ)

・浚渫の効果予測

・導水事業の影響評

鉛直 二次元 モデル

・水域を縦・横断・鉛直方向に

メッシュ分割し、水理・水質

量の縦断・鉛直分布を計算

・水理・水質量はメッシュごと

に求められるが、横断方向の

分布は一様とみなしている

鉛直 1次元モデルに加え、

・形状が河川のように細長く、横断

方向の水質分布が一様とみなせ

る湖沼(例えば、ダム湖など)

・支川が枝分かれするような、形状

が比較的複雑な湖沼でもある程

度適用可能

・水理、水質量の縦断および鉛

直分布

・3 次元計算より計算が速い

・中期(1~数 10 年)的な水

理・水質量予測が可能。

・成層を制御するような対策

を検討できる。

・横断方向の水質変化が表現でき

ない

・吹送流など水平方向に分布が生

じる流動を表現できない

・富栄養化(アオコ)

・塩水による密度流

三次元 モデル

・水域を縦断・横断・鉛直方向

にメッシュ分割し、水理・水

質量の 3 次元分布を計算。

・水理・水質量の 3 次元的な分

布が求められる

鉛直 2次元モデルに加え、

・水平方向、鉛直方向に水質分布が

生じる湖沼(例えば、密度流の生

じる湖沼、水深の大きな湖沼な

ど)

・平面形状が複雑なもの

鉛直 2次元モデルに加え、

・水理、水質量の 3 次元分布

・現象の 3次元的把握が可能

・局所的な水理・水質特徴が

表現できる

・密度流や風による流れなど

を考慮できる。

・より複雑な湖内対策施設の

配置計画検討が可能。

・3次元メッシュ分割を行うため、

膨大な計算時間を要する

・中~長期計算には不向き

・富栄養化(アオコ)

・青潮

・塩水による密度流

・浚渫の効果予測

・密度成層の制御

出典:湖沼における水理・水質管理の技術(一部改変)

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資-6

物質収支から見た底質の取り扱いとしては、「底泥からの栄養塩類の溶出」、「底泥による DO 消

費」、「懸濁物質の沈降」が一般的であり、その他として「底質の巻き上げ」、「脱窒」等が考慮さ

れている。(図 2.2)

また、底質に関する水質項目は、窒素類、リン類、DO、COD、TOC 等である。(図 2.3)

(水質予測モデル) (水質.底質予測モデル)

図 2.2 水質予測モデルの概念図(水質予測モデル及び水質.底質予測モデル)

図 2.3 栄養塩類の分類と底質での取り扱い

出典:水質調査の基礎知識

出典:湖沼工学 平成 2年 3月 山海堂

出典:手賀沼における流動・水質・底質の時空間変動シミ

ュレーションと底泥からの栄養塩溶出の水質への影響

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資-7

水質予測モデルでの底質のモデル化は、水温の関数、DO の関数等として表現されている。ま

た、底泥中の間隙水との拡散現象として扱っているモデルもある。

表 2.2 水質予測モデルでの底質のモデル化

底泥からの溶出 (窒素、リン類、COD)

底泥の DO 消費

懸濁物質の沈降 (窒素、リン類、COD、TOC、SS、濁度、クロロフィル a、植物プランクトン)

その他

【一定値】 年間平均値等一定値を与える (mg/m2/d)

【一定値】 年間平均値等一定値を与える (mgO2/m

2/d)

【一定値】 年間平均値等一定値を与える (m/d)

■脱窒 ※4 【一定値又は

水温との関数】a又は a×T1.2 a:脱窒速度(mg/m2/d)T:水温(℃)

【水温との関数】※1 a×θ(T-20) a:20℃溶出速度

(mg/m2/d)θ:定数(1.05 程度) T:水温(℃)

【水温との関数】※2 a×θ(T-20) a:20℃DO 消費速度

(mgO2/m2/d)

θ:定数(1.20 程度)T:水温(℃)

■底泥の巻き上げ (SS、濁度)

【湖流や風波等による底面せん断力から算定】

- -

【DO との関係(無機態 リンの沈降)】

無機態リンの鉄との結合による沈降(好気状態のとき)

【水温、DO との関数】※2a×θ(T-20)/(4×DO+1) a:20℃溶出速度

(mg/m2/d)θ:定数(1.05 程度) T:水温(℃) DO:DO 濃度(mg/L)

又は、DO 濃度により a 値設定値変更

- - -

【水温,DO,NO3-Nとの関数(無機態リンの溶出)】※2a×θ(T-20)×fD fD=1.0/(4×DO+1) NO3-N≦0.05mg/L

fD=0 NO3-N>0.05mg/L a:20℃溶出速度

(mg/m2/d)θ:定数(1.05 程度) T:水温(℃) DO:DO 濃度(mg/L)

- - -

【間隙水との拡散で表現】※3 b×θ(T-20) b:拡散係数(m2/d) θ:定数(1.03 程度)

【間隙水との拡散で表現】※3 b×θ(T-20) b:拡散係数(m2/d)θ:定数(1.03 程度)

- -

出典 ※1:中村ら,小川原湖富栄養化モデルについて,建設省東北地方建設局管内技術研究発表会,vol.33,pp.76-81,1981

※2:日建設計,平成 10 年度小川原湖水質変化予測業務報告書,平成 11 年 3月

※3:平成 16 年度湖沼水質保全対策・総合レビュー検討調査報告書,環境省水環境部(国立環境研究所)

※4:松梨ら,手賀沼における流動・水質・底質のシミュレーションと底泥からの栄養塩溶出の水質への影響,土木学

会論文集,No.712/Ⅱ-60,161-173,2002.8

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資-8

(3)底質に関するパラメータ

パラメータの事例について以下に示す。 表 2.3 パラメータ事例一覧(沈降) 表 2.4 パラメータ事例一覧(溶出)

出典:湖沼工学 平成 2年 3月 山海堂

出典:湖沼工学 平成 2年 3月 山海堂

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資-9

3.底質・土壌に係わる法令等の概要

本手引き(本編)において、底質・土壌に係わる法体系と試験方法を示した。ここでは本編に

示した法令等の概要を示した。

3.1 底質・土壌に係わる法と底質との係わり

本編に示したように、底質に関する法令及び基準は、「1.現状の底質環境調査」、「2.底質

を処理・利用(浚渫)するための底質調査」、「3.廃棄物に遭遇した場合」の3つに分類され

る。これら底質に関連する法令の概要及び底質(建設事業)との係わりについて表 3.1 に示す。

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資-10

表 3.1 (1) 底質・土壌に係わる法と底質との係わり(1/2)

法令等 概 要 底質(建設事業)との係わり

土壌の汚染に

係る環境基準

環境基本法において、人の健康を保護し及び生活環境を保全するうえで

「維持することが望ましい基準」として告示されており、行政上の目標基

準である。

事業範囲や管轄範囲おいて、その状況を把握するこ

とが求められる。

環境影響

評価法

事業の実施が環境に及ぼす影響を、調査・予測・評価を行うとともに、

環境保全措置の検討と評価することを定めている。底質に係わる調査対象

として、水質・底質・土壌があるが環境影評価法自体には基準値は設けら

れていない。

事業を行うに当たって、底質に悪影響を与える恐れ

がある場合、もしくは底質の浚渫など底質を移動する

ことにより底質が他の場所に悪影響を与える場合が

考えられる。

底質の暫定除

去基準

(底質の処理

・処分等に関す

る指針)

公共用水域の水質汚濁、魚介類汚染等の原因となる汚染底質の除去等の

基準として、水銀を含む底質及びPCBを含む底質の暫定除去基準を定め

ている。 基準値以上であれば、浚渫、封じ込め等の所要の対策を講じる必要があ

る。所要の対策を講じる際は、「底質の処理・処分等に関する指針」に基

づき、二次公害が発生しないように慎重に配慮する必要がある。

事業範囲や管轄範囲において、その状況を把握する

ことが求められる。基準値以上であれば同指針に従っ

て対策を講じる必要がある。

ダイオキシン

類対策特別措

置法

ダイオキシン類による環境の汚染の防止及びその除去等をするため、大

気・水質・底質・土壌の基準を定めるとともに、必要な規制、汚染土壌に

係る措置等を定めている。 ダイオキシン類の現在の発生源は、ほぼ廃棄物焼却炉に限られるため、

容易に発生源を推定することができる。

事業範囲や管轄範囲において、その状況を把握する

ことが求められる。基準値以上であれば同法に従って

措置をとる必要がある。 またダイオキシン類の現在の発生源は、ほぼ廃棄物

焼却炉に限られるため、流域に存在する廃棄物焼却炉

により、汚染された土壌が流入し堆積することで、底

質にダイオキシン類が含まれることとなる。

現状の底質環境調査

河川砂防技術

基準(案)

調査編

基準値はないが、底質の分析方法として「底質の調査方法」などを、採取

方法として「河川水質調査要領」および「堰水質調査要領」を参考文献とし

て示している。なお、堰水質調査要領では健康項目の分析方法を土壌環境

基準によるとしている。

底質の調査を実施するに当たっての調査方法の参

考文献となる。

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資-11

表 3.1 (2) 底質・土壌に係わる法と底質との係わり(2/2)

法令等 概要 底質(建設事業)との係わり

土対法(土壌汚

染対策法)

環境保全上、遵守すべき基準を定め、基準が超過している場合の措置も

示している。つまり、土壌環境基準や地下水環境基準を達成するための実

効法としてみなすことができる。ただし環境基準と異なり、その適用範囲

は同法により指定された地域に限定される。

取得した用地で事業を行う場合、または国有地を売

却する際等に、浄化対策が必要か否かを判断したり、

対策が必要となった土壌の処分場所を決める場合の

判断をする際の基準となる。 農用地の土壌

の汚染防止法

この法律は、農用地の土壌の特定有害物質による汚染の防止及び除去並

びにその汚染に係る農用地の利用の合理化を図るために必要な措置を講

ずることにより、人の健康をそこなうおそれがある農畜産物が生産され、

又は農作物等の生育が阻害されることを防止し、もって国民の健康の保護

及び生活環境の保全に資することを目的として施行されている。

対象土壌が農用地に適用可能か否かを判断する基

準を示しているため、浚渫土を農用地に転用すること

を検討する際に判断基準となる。

底質を処理・利用(浚渫)するた

めの底質調査

建設発生土利

用基準(技術マ

ニュアル)

建設工事に伴い副次的に発生する土砂や汚泥の土質特性に応じた区分

基準及び各々の区分に応じた適用用途標準等を示すことにより、発生土の

適正な利用の促進を図ることを目的とする。その解説として技術マニュア

ルがある。

底泥等を道路の盛土や河川築堤に利用しようとす

る場合に、その用途の判断基準となる。

廃掃法(廃棄物

の処理及び清

掃に関する法

律)

この法律は、廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、

収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすること

により、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的として施行

されている。

底泥等を埋立、海洋投入、高規格堤防などに利用す

ることを検討する際に、判断基準となる。 なお、通達により浚渫土は廃棄物でないことが示さ

れている。

廃棄物に遭遇した場合の底質調査

海防法(海洋汚

染等及び海上

災害の防止に

関する法律)

「廃掃法」では、廃棄物の処理( 終処分)の一形態として埋立処分を

認め、その埋立については、陸上埋立処分、水面埋立処分を問わず「廃掃

法」で埋立処分の基準を定めているが、船舶から海域への廃棄物の排出に

ついては「海防法」が適用される。 この法律は、船舶、海洋施設及び航空機から海洋に廃棄物等を排出する

こと等を規制し、船舶交通の危険の防止のための措置を講ずることによ

り、海洋汚染等及び海上災害を防止し、あわせて海洋汚染等及び海上災害

の防止に関する国際約束の適確な実施を確保し、もつて海洋環境の保全等

並びに人の生命及び身体並びに財産の保護に資することを目的として施

行されている。

浚渫土などを船舶から海域に排出する場合に、基準

値以下であるかを確かめる必要がある。

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資-12

3.2 底質・土壌に係わる法体系

底質・土壌に係わる法を扱う上で、それぞれの法どうしの関係や、対象物質の違いを理解し

ておくことは重要である。特に平成 15 年に新たに施行された土壌汚染対策法は他の法との関係

を理解することが難しい。よって、本説では土壌汚染対策法と他の関連法令との関係を示す。

(1)環境基本法に基づく環境基準と土壌汚染対策法の関係

環境基本法に基づく「土壌汚染」の適用範囲と基準は、図 3.1 のように整理できる。

環境基本法第 16 条に基づく土壌に対する環境基準として、土壌汚染により地下水が汚染さ

れ飲用等により人の健康に問題が生じるという観点から、「土壌の汚染に係る環境基準」(土壌

環境基準,平成 3年)と「地下水の汚染に係る環境基準」(地下水環境基準,平成 11 年)が定

められている。土壌環境基準と地下水環境基準は、環境行政において目標とする基準であり、

どちらも達成期間については定められていない。

土壌汚染対策法は、土壌環境基準や地下水環境基準を達成するための実効法とみなすこと

ができる。人の活動によって環境被害が生ずる土壌汚染による公害に対して、環境保全上、遵

守すべき基準を定め、規制の措置を示したもので、主に人為的原因の土壌汚染を管理、措置す

ることを目的としている。

土壌環境基準は、環境基本法に基づく達成目標であるので、土壌汚染対策法の指定区域の

適用を受けない場合、土壌環境基準を満たしていなくても法的な規制はない。しかし、公共性

が高く、将来的にも管理責任が問われる場合、土壌汚染対策法の指定区域の適用を受けない場

合でも、環境基準値を満足する努力が必要である。

図 3.1 法に基づく「土壌汚染」の範囲

環境基本法に基づく ・土壌環境基準/地下水環境基準

土壌汚染対策法での ・指定基準/地下水基準

あらゆる土壌(土地)

法対象となる土地

環境を維持すべき目標

環境基準を達成するための

改善に必要な法規制

※ 参考 「環境基本法 第十六条(平成五年十一月十九日法律第九十一号)」 政府は、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について、それぞれ、人

の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準を定めるものとする。

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資-13

(2)土壌汚染対策法と関連する法律・マニュアル等の対象物質と適用範囲

土壌汚染対策法と同様に法的規制のある各法律及びマニュアル類の対象とする汚染物質を

表 3.2 に、各法律及びマニュアル類の包含関係を図 3.2 に示す

表 3.2 各法律及びマニュアル類の対象とする汚染物質

汚染物質 特定有害 物質

自然的 重金属

ダイオキ シン類

廃棄物 油汚染

(油膜,油臭)

汚染種別 人為的 汚染

自然的 汚染

人為的 汚染

人為的 汚染

人為的 汚染

土壌汚染対策法 ◎

建設工事で遭遇する地盤汚染

対応マニュアル ◎ ○ ○

建設工事における自然由来の

重金属汚染対応マニュアル ◎

ダイオキシン類特別措置法 ◎

建設工事で遭遇するダイオキ

シン類汚染土壌対策マニュア

ル ◎

廃棄物及び清掃に関する法律 ◎

終処分場跡地形質変更ガイ

ドライン ○ ○ ◎

油汚染対策ガイドライン ◎

主たる対象を◎で示す。

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土壌汚染に関係する三つの法律は、対象物質や対象事業などが異なり、重複はしない

事業での対応では「建設工事で遭遇する地盤汚染対応マニュアル」が も広範に対応する。

図 3.2 各法律及びマニュアル類の包含関係

<法律・マニュアル類の包含関係>

油汚染対策 ガイドライン

廃掃法(跡地形質変更

の施行ガイドライン)

油臭・油膜(生活

環境)を対象

凡例 :各法律を示す

:各マニュアルを示す

掘削ズリからの酸性

水(汚染水)を含む

建設工事で遭遇するダイオキシン

類汚染土壌対策マニュアル

ダイオキシン類 対策特別措置法 廃棄物及び清掃

に関する法律

土壌汚染対策法 建設工事で遭遇する 地盤汚染対応マニュアル

建設工事における自然由来の

重金属汚染対応マニュアル

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資-15

第二編 小川原湖の情報

1.小川原湖の特徴

本手引き(本編)は既存資料と小川原湖における限られた底質調査結果を元に取りまとめた

ものである。したがって、小川原湖から得られた底質挙動特性が当てはまらない湖沼には必ず

しもそのまま適用することができない。この点については小川原湖と当該湖沼の特性比較及び

湖沼特性と底質の富栄養化との関係などを参考に判断願いたい。 本章は、本編で書ききれなかった小川原湖の特徴について記載した。

(1)概要

小川原湖は、青森県上北郡の東方、太平洋に近く位置し、入り江の一部が海面低下と湾口

の砂丘の発達により形成された海跡湖である。湖面積は 63.2km2と我が国第 11 番目、平均

水深約 11m、最大水深 25mの汽水湖である。流入河川の主なものは高瀬川(七戸川)、砂土

路川、姉沼川などであり、いずれも湖の西南部ないしは南部から流入し、流出口は北東部の

高瀬川であり、約7kmで太平洋に注いでいる。湖の滞留時間はほぼ年 1回である。海面水

位が湖水位より高くなる時期には、海水が高瀬川を通って湖に逆流することがあり、小川原

湖の水質や生物に大きな特色を与えている。なお、小川原湖は日本におけるヤマトシジミの

主産地の一つであり、シラウオ、ワカサギの漁獲量では日本一となっている。

図 1.1 小川原湖の流域

出典:高瀬川河川事務所 HP

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資-16

(2)水質

小川原湖中央付近の表層部における主要な水質項目の経年変化は、いずれの項目も上昇傾

向にある(図 1.2 参照)。栄養レベルの長期的な変化からみると、小川原湖は現在まさに中

栄養から富栄養のレベルに移行しつつある状況にある。

一方、小川原湖の総リン(T.P)負荷量収支をみると(図 1.3 参照)、総流入に対して総流出

が少なく、リンが植物プランクトンに摂取され、湖内に蓄積されていると考えられる。また、

流入負荷量のバランスからは、高塩分層や底泥の中に貯蓄されたリンが溶出(混合)されるこ

とによる負荷影響が大きいことが推定される。

図 1.2 小川原湖内の水質経年変化

出典:高瀬川河川事務所データより作成

図 1.3 小川原湖の負荷量収支(平成 9年の例)

出典:高瀬川河川事務所 HP

T-P

T-N

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資-17

(3)小川原湖の水理(成層)特性

水温や濃度が急激に変化する層を躍層と呼び(水温躍層、塩分密度躍層など)、躍層の上下

間は密度差が大きいため水の交流が生じず、物質がほとんど移動しないため、水質に大きな

差がでる。

夏季の小川原湖(図 1.4(1)参照)は水温躍層より上層には風等の影響により鉛直方向に

混合されている鉛直混合層があり、水温・塩分の 2種類の躍層と混合層の 3層構造になって

いる。一方、冬季は水温躍層がなくなり、夏季より少し深い場所に存在する塩分密度躍層の

上部は、すべて鉛直混合層になる。このため、冬季の小川原湖(図 1.4(2)参照)は、年中

通して存在する塩分密度躍層と上部の混合層の 2層構造となる。

出典:高瀬川河川事務所 HP

(4)小川原湖の湖内流動

小川原湖においては 1)風、2)湖沼の流入出、3)熱、4)引力(重力)、5)気圧などの要因が複

雑に関わり合い、湖盆形状や表面積、水深、コリオリ力などの各種制限因子に依存して様々

な湖内流動が作り出されている。また、夏季には湖上風を要因の一つとする内部静振と呼ば

れる、躍層が振幅数 m におよぶ日単位の長周期変動と振幅 1m 程度の数時間周期の短周期変

動が起こっている。

小川原湖に生息する生物にとって、湖内の水質や塩分環境は非常に重要であるが湖内流動

は、これらに大きな影響を与える。過去のシジミの大量死の原因として内部静振の影響が推

測されている。

図 1.5 小川原湖における流動と外的要因の関係

出典:高瀬川河川事務所 HP

図 1.4(2)冬季小川原湖の成層構造 図 1.4(1)夏季小川原湖の成層構造

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資-18

(5)小川原湖水環境整備事業の概要

[事業概要]

小川原湖の水質は年々悪化の傾向が見られ、「中~富栄養湖」の段階にあるといえる。

また、シジミの口開けやワカサギの体長不良等、生態系への影響が出始めている。そのた

め、水質悪化の初期段階で適切な対策を行うことで将来的な投資額を抑え、利用環境の改

善・生態系の保全・水産資源の確保に繋げることにより、地域活性化を図るものである。

併せて、流入負荷抑制に向けた活動を行っている「小川原湖・高瀬川流域水環境ネットワ

ーク」など、地元への情報提供を行い、流域が一体となって小川原湖の恵みを後世に引き

継ぐ施策を展開していくものである。

[事業箇所]

青森県上北郡

[事業期間]

平成20年度~平成29年度

[総事業費]

40億円

図 1.6 小川原湖斜め写真

姉沼

内沼

小川原湖

土場川 → 七戸川 →

砂土路川 →

高瀬川

太平洋

三沢市

東北町

六 ヶ 所

JR東北本線

米軍

三沢基地

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資-19

2.小川原湖における底質調査の概要

本章は、本手引き(本編)の底質関係のグラフ等で用いたデータの概要(調査方法及び

調査結果)について示した。

2.1 定期底質調査の概要

2.1.1 調査の概要

定期調査の概要を以下に示す。

・調査地点:G地点(図 2.1)

・調査時期:8月

・調査頻度:年 1回

・採泥器:エクマンバージ型

図 2.1 調査地点図

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資-20

2.1.2 調査結果

昭和 56 年以降の定期調査結果を図 2.2 に示す。

図 2.2 定期底質調査結果

移動平均(3ヵ年)

分析値

0

20

40

60

80

100

S56

S58

S60

S62

H1

H3

H5

H7

H9

H11

H13

H15

H17

H19

含水

率(

%)

0

20

40

60

80

100

S56

S58

S60

S62

H1

H3

H5

H7

H9

H11

H13

H15

H17

H19

強熱

減量

(%)

0

50

100

150

200

S56

S58

S60

S62

H1

H3

H5

H7

H9

H11

H13

H15

H17

H19

COD(

mg/g)

0

5

10

15

20

S56

S58

S60

S62

H1

H3

H5

H7

H9

H11

H13

H15

H17

H19

全硫

化物

(mg/g)

0

2

4

6

8

S56

S58

S60

S62

H1

H3

H5

H7

H9

H11

H13

H15

H17

H19

T-N(

mg/g)

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

1.4

1.6

S56

S58

S60

S62

H1

H3

H5

H7

H9

H11

H13

H15

H17

H19

T-P(

mg/g)

0

20,000

40,000

60,000

80,000

S56

S58

S60

S62

H1

H3

H5

H7

H9

H11

H13

H15

H17

H19

鉄(mg/kg)

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

S56

S58

S60

S62

H1

H3

H5

H7

H9

H11

H13

H15

H17

H19

マン

ガン

(mg/kg)

0

10

20

30

40

50

60

S56

S58

S60

S62

H1

H3

H5

H7

H9

H11

H13

H15

H17

H19

塩化

物イ

オン

(mg/g)

0

5

10

15

20

25

30

S56

S58

S60

S62

H1

H3

H5

H7

H9

H11

H13

H15

H17

H19

BOD(

mg/g)

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資-21

2.2 平成 18 年度秋~平成 19 年度夏 4 季調査の概要

2.2.1 調査の概要

小川原湖における調査の概要を以下に示す。

表 2.1 調査地点と調査時期

底質の物理・化学性状調査 溶出速度試験 沈降量調査

秋(H18.11) A,C,G24,H,J A,C,G24,H,J A,C,G24,H,J

冬(H19.1) A,C,G24,H,J A,C,G24,H,J A,C,G24,H,J

春(H19.6) A,G24,H A,G24,H A,G24,H

夏(H19.8) A,C,G24,H,J

+3 測線(12 地点)

A,C,G24,H,J

+3 測線(水深 5m)

A,G24,H

Ⅲ測線

Ⅱ測線

Ⅰ測線

※3 測線(12 地点)は、等間隔の水深で調査することによ

り、水深と水質、底質の関係を把握するために水深

2,5,10,15,20m 間隔で実施。

Ⅰ測線:流入河川の影響がある。

Ⅱ測線:流入河川、入退潮の影響が小さい。

Ⅲ測線:入退潮の影響がある。

※3 測線(水深 5m)は、浅場と深場とを比較することによ

り、水深と溶出速度の関係を把握するために実施。

図 2.3 調査地点図

各調査地点の調査時における水深

A:9.7m~11.6m

C:11.2m~11.6m

G24:25.2m~26.4m

H:17.2m~18.3m

J:12.7m~13.2m

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資-22

表 2.2 調査項目と調査内容

調査内容 水質調査

底 質 の 物

理・化学性

状調査

試料採取方法:ダイバーによる未攪乱試料の直接採取

調査深度:表面、15cm、30cm、50cm の 4 深度

分析項目:粒度組成、含水率、強熱減量、COD、T-N、T-P

溶出速度

試験

試料採取方法:ダイバーによる未攪乱試料の直接採取

試料採取深度:表面

分析項目:TOC、COD、T-N、NH4-N、NO2-N、T-P、PO4-P、塩化

物イオン

実験条件:水温条件は現地に合わせる

DOは好気と嫌気

試料水は試料直上湖水

底泥厚は 30cm 程度 ※詳細は表 2.3

実験分析頻度:0、1、2、4、7、14、21、28 日の計 8回

溶出速度試験試料採取時に下

層水(底上 1m)を採水し水質分析

を実施。

分析項目は、TOC、COD、T-N、

NH4-N、NO2-N、NO3-N、T-P、PO4-P、

濁度、SS、塩化物イオン、DO。

沈降量調査 セジメントトラップ設置期間:14 日間

設置深度:上層(水深 5m)と下層(底上 2m)の 2水深。G24

地点は塩淡水境界を加えた 3水深

分析項目:COD、SS、VSS、T-N、T-P、クロロフィルa、フ

ェオフィチン

セジメントトラップ設置時に

上層水(水深 3m)、下層水(底上

4m)、G24 地点は塩淡境界上 2m 水

を採水し水質分析を実施

分析項目は、COD、SS、VSS、T-N、

NH4-N、NO2-N、NO3-N、T-P、PO4-P、

クロロフィルa、フェオフィチン

70cm

30cm

100cm

Pシリカゲル 活性炭

内径 約20㎝

15cm

10cm

モレキュラシーブ5A

綿

P

5cm

10cm

5cm

70cm

30cm

100cm

内径 約20㎝

※ 採水用の2Lポリビン(茶色)を使用

内径:33㎝

内径:30㎝

内径:48.5㎝

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資-23

表 2.3 溶出速度試験の実験条件

実験条件 地点 採泥季節

水温(℃) DO

秋 10 好気/嫌気

冬 5 好気/嫌気

春 15 好気/嫌気 A

夏 20 好気/嫌気

秋 10 好気/嫌気

冬 5 好気/嫌気

春 実施せず 実施せず C

夏 15 好気/嫌気

秋 10 嫌気

冬 5 嫌気

春 10 嫌気 G24

夏 10 嫌気

秋 10 好気/嫌気

冬 5 好気/嫌気

春 10 好気/嫌気 H

夏 15 好気/嫌気

秋 10 好気/嫌気

冬 5 好気/嫌気

春 実施せず 実施せず J

夏 15 好気/嫌気

Ⅰ-5 夏 25 好気

Ⅱ-5 夏 25 好気

Ⅲ-5 夏 25 好気

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資-24

表 2.4 沈降量調査の調査地点

設置位置 地点 設置季節

水深 5m 塩淡境界層 底上 2m

秋 ○ 実施せず ○

冬 ○ 実施せず ○

春 ○ 実施せず ○ A

夏 ○ 実施せず ○

秋 ○ 実施せず ○

冬 ○ 実施せず ○

春 実施せず C

夏 実施せず

秋 ○ ○ ○

冬 ○ ○ ○

春 ○ ○ ○ G24

夏 ○ ○ ○

秋 ○ 実施せず ○

冬 ○ 実施せず ○

春 ○ 実施せず ○ H

夏 ○ 実施せず ○

秋 ○ 実施せず ○

冬 ○ 実施せず ○

春 実施せず J

夏 実施せず

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資-25

図 2.4 底質の外観(11 月)

2.2.2調査結果

(1)底質の外観

表層 表層

表層

表層 表層

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資-26

(2)底質の物理・化学性状調査結果

①表層底質の平面分布状況

季節ごとの表層底質の含有量の平面分布状況を図 2.5 に示す。

■含水率

■強熱減量

図 2.5 (1) 表層底質の平面分布(季節変化)

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資-27

図 2.5 (2) 表層底質の平面分布(季節変化)

■T-P

■T-N

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資-28

②底質の鉛直分布

季節ごとの底質の含有量の鉛直分布を図 2.6 に示す。

■含水率

■強熱減量

図 2.6 (1) 底質の鉛直分布(季節変化)

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資-29

■T-N

■T-P

図 2.6 (2) 底質の鉛直分布(季節変化)

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資-30

③表層底質と水深の関係

水深の異なる地点における表層底質の含有量の分布を図 2.7 に示す。

■含水率

■強熱減量

図 2.7 (1) 表層底質の平面分布(水深方向)

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資-31

■T-N

■T-P

図 2.7 (2) 表層底質の平面分布(水深方向)

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資-32

④底質の鉛直分布と水深の関係

水深ごとの底質の鉛直分布を図 2.8 に示す。

■含水率

■強熱減量

図 2.8 (1) 底質の鉛直分布(水深方向)

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資-33

■T-N

■T-P

図 2.8 (2) 底質の鉛直分布(水深方向)

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資-34

3.小川原湖のヤマトシジミと底質の関係

生物と底質の関係を示した文献は少ない。小川原湖ではヤマトシジミを対象とした調査が実施

されているので、その調査結果をとりまとめ示した。

本手引き(本編)では、生物に関する調査について、詳細に記載していない。本章は、生物に

関する調査を検討する場合の参考資料として頂きたい。

(1)水深との関係

・ヤマトシジミは過去から現在まで、概ね水深 10 数 m まで確認されている(図 3.1)。

・平成元年に水深 14m まで生息が確認されており、水深 15m 以深では生息が確認されていない。

※一般的な湖沼の湖棚部は、水深がせいぜい 1~2m 程度であるが、小川原湖の湖棚部は、

最大で 11m と他の湖沼に比べて深い。これは、氷河期の谷の深さが他の地域より大きかっ

たためであり、現在でもその谷が完全には埋積されず、海跡湖としては最も深い湖盆を形

成しているためである(平井, 1997)。

図 3.1 小川原湖におけるヤマトシジミの漁場図

(湖岸部の色がついた部分が漁場;水深 11m 以浅)

出典:中村幹雄編, 2000

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資-35

(2)粒度との関係

図3.2 ヤマトシジミ現存量分布の経年変化:シルトクレイ(5φ以上、31μm以下)含有率との比較 出典:小川原湖漁業調査報告書(総合解析編 1,2)、

平成 14~18 年度のヤマトシジミ現存量調査報報告書」(データを元に作図)

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資-36

図 3.3 泥(63μm 未満)割合分布及びヤマトシジミ現存量の経年変化

出典:「平成 14~18 年度のヤマトシジミ現存量調査報告書」(データを元に作図)

平成 18 年度湖沼の底質環境に関する検討業務報告書

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資-37

(3)水質との関係

図 3.4 底質及び底質直上水の状況とヤマトシジミ現存量の関係(1989)

出典:「小川原湖漁業調査報告書(総合解析編 1,2),」(データを元に作図)

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資-38

平成18年8月24、25、28日

※調査地点名:イ=イカト、セ=セモダ、ミ=三沢灘、フ=舟ヶ沢前、タ=タカトリ、シ=島口

0

1000

2000

3000

4000

5000

6000

7000

イ-4

イ-5

ミ-12

フ-10

フ-13

イ-1

フ-2

イ-6

ミ-10

ミ-8

イ-2

イ-3

イ-13

セ-4

タ-7

タ-14

セ-1

イ-7

セ-5

セ-11

セ-12

ミ-6

フ-9

イ-8

イ-9

セ-2

セ-6

セ-8

フ-5

フ-8

タ-6

シ-1

シ-6

イ-12

タ-1

タ-9

ミ-4

シ-3

シ-9

セ-7

ミ-2

ミ-3

ミ-7

ミ-9

フ-7

フ-14

ミ-1

ミ-5

タ-10

ミ-15

フ-3

タ-2

タ-3

シ-7

セ-10

ミ-11

フ-15

フ-6

シ-8

シ-14

シ-12

セ-9

ミ-13

フ-12

シ-10

イ-14

シ-2

イ-11

タ-13

フ-4

タ-8

セ-3

イ-15

シ-11

シ-13

タ-12

シ-4

フ-11

タ-4

イ-10

タ-11

タ-5

セ-13

タ-15

シ-5

セ-14

セ-15

ミ-14

フ-1

ヤマ

トシ

ジミ

個体

数/m

2

0

2

4

6

8

10

12

14

水深

(m)

ヤマトシジミ個体数 水深

0

250

500

750

1000

1250

1500

34 33 49113 18 53 65 24 35 45 46 64 87 19 66 67 70

112 17 71 88 91 94 95 1 50 72 73 74 5 27

108 26 44 54 75 96 47 51 8 97

111 2 6 20 55 76 4 9 92 3 52 89 25 77 7 10 21 11 93 63

110

106

107 12 22 36 86 13 15 78 90 98 14 16 28 32

105

109 23 29 30 31 56 43 99

100

101

104 37

102

103 85 57 40 79 84 41 42 58 38 39 83 81 80 82 48 59 62 60 69 68 61

ヤマ

トシ

ジミ

個体

数/0.1

m2

0

5

10

15

20

25

30

全水

深(m

)

ヤマトシジミ個体数 全水深 全水深(DO:0mg/L)

平成元年 8 月

平成 16 年 7 月

平成 16 年 8 月

平成 18 年 8 月

平成16年7月8日

0

600

1200

1800

2400

3000

3600

4200

イ-4

イ-5

ミ-12

フ-2

イ-1

イ-6

ミ-10

ミ-9

イ-2

タ-14

イ-3

イ-13

セ-4

フ-10

セ-11

フ-14

タ-7

イ-7

フ-8

フ-13

タ-2

セ-12

タ-1

イ-8

イ-9

イ-12

セ-2

セ-6

ミ-5

ミ-6

フ-9

フ-5

セ-5

ミ-4

セ-8

シ-1

ミ-2

タ-15

シ-6

シ-9

タ-6

タ-9

シ-14

フ-6

ミ-3

ミ-8

フ-15

シ-7

シ-12

ミ-7

ミ-11

シ-2

シ-3

セ-1

セ-9

フ-12

タ-3

シ-8

イ-14

ミ-1

フ-7

シ-10

セ-10

セ-7

タ-13

フ-4

タ-10

タ-8

タ-12

フ-3

セ-3

シ-13

タ-4

フ-11

イ-10

シ-4

イ-11

タ-5

タ-11

シ-5

セ-13

セ-15

シ-11

イ-15

セ-14

フ-1

ミ-14

ミ-13

ミ-15

ヤマ

トシ

ジミ

個体

数/m

2

0

2

4

6

8

10

12

14

水深

(m)

平成16年8月25、26日

0

600

1200

1800

2400

3000

3600

4200

イ-4

イ-5

フ-10

フ-2

イ-1

イ-6

フ-13

イ-2

イ-13

ミ-8

ミ-10

セ-12

イ-3

セ-1

イ-7

セ-5

ミ-12

フ-9

タ-7

セ-2

セ-4

フ-5

タ-1

イ-9

ミ-1

ミ-2

ミ-3

ミ-9

タ-14

セ-8

フ-8

イ-8

シ-1

タ-2

タ-6

イ-12

ミ-5

ミ-7

セ-6

タ-9

セ-7

フ-3

シ-9

フ-14

シ-3

シ-6

セ-11

ミ-15

シ-12

シ-14

フ-7

ミ-6

ミ-11

シ-7

タ-3

フ-15

セ-10

フ-6

イ-14

シ-10

ミ-13

ミ-4

フ-12

シ-2

シ-8

セ-9

イ-11

タ-13

タ-10

セ-3

フ-4

タ-8

タ-12

シ-13

イ-15

タ-4

フ-11

シ-4

シ-11

イ-10

セ-13

タ-11

タ-15

シ-5

セ-14

ミ-14

タ-5

セ-15

フ-1

ヤマ

トシ

ジミ

個体

数/m

2

0

2

4

6

8

10

12

14

水深

(m)

15m 以深の嫌気化

層には生息なし

嫌気化層が水深

8m まで上昇し、

生息数が減少

8m 以深の生息数は殆ど

未回復

水深 12m まで

生息を確認

嫌気層

図 3.5 ヤマトシジミの過去からの鉛直分布状況

出典:小川原湖漁業調査報告書(総合解析編 1,2),平成 14~18 年度のヤマトシジミ現存量調査報報告書」(データを元に作図)

ヤマトシジミ個体数 水深

ヤマトシジミ個体数 水深

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資-39

◆参考図書

1) 「湖の環境学」平成 9年 古今書院

2) 「日本のシジミ漁業-その現状と問題点-」平成 12 年 たたら書房

3) 「湖沼における水理・水質管理の技術」平成 19 年 3 月 湖沼技術研究会

4) 「湖沼工学」平成 2年 3月 山海堂

15) 「水質調査の基礎知識」平成 8年 2月 近畿地方整備局近畿技術事務所

◆参考文献

6) 「小川原湖漁業調査報告書(総合解析編 1,2)」青森県水産総合研究センター内水面

研究所

7) 「平成 14~18 年度のヤマトシジミ現存量調査報告書」青森県水産総合研究センター内水面

研究所

8) 「手賀沼における流動・水質・底質の時空間変動シミュレーションと底泥からの栄養塩溶出

の水質への影響」昭和 56 年 中村ら 建設省東北地方建設局管内技術研究発表

会,vol.33,pp.76-81

9) 「平成 10 年度小川原湖水質変化予測業務報告書」平成 11 年 3 月

10) 「平成 16 年度湖沼水質保全対策・総合レビュー検討調査報告書」平成 16 年 環境省水環境

部(国立環境研究所)

11) 「手賀沼における流動・水質・底質のシミュレーションと底泥からの栄養塩溶出の水質への

影響」平成 14 年 8 月 松梨ら 土木学会論文集,No.712/Ⅱ-60,pp.161-173

12) 「水質年表」(S56~H12)

13) 「水質底質分析業務報告書」(H13~H19)

◆底質・土壌に係わる法令の参考図書及び参考 URL

14) 「土壌の汚染に係る環境基準」

参考図書:環境六法

参考 URL:http://www.env.go.jp/kijun/dojou.html(環境省)

15) 「環境影響評価法」

参考図書:環境六法

参考 URL:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H09/H09HO081.html(総務省)

16) 「底質の暫定除去基準(底質の処理・処分等に関する指針)」

参考図書:環境六法

参考 URL:http://www.env.go.jp/hourei/syousai.php?id=5000037(環境省)

17) 「ダイオキシン類対策特別措置法」

参考図書:環境六法

参考 URL:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H11/H11HO105.html(総務省)

参考 URL :http://www.env.go.jp/kijun/dioxin.html(環境省)

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資-40

18) 「建設省河川砂防技術基準(案)同解説 調査編(改訂新版)」平成 20 年 7 月 建設省河川

局【監修】 日本河川協会【編】技報堂出版

19) 「土壌汚染対策法」

参考図書:環境六法、 廃棄物・リサイクル六法

参考 URL:http://www.env.go.jp/water/dojo/law.html(環境省)

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H14/H14HO053.html(総務省)

20) 「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律」

参考図書:環境六法

参考 URL:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S45/S45HO139.html

21) 「建設発生土利用基準(技術マニュアル)」

参考図書:-

参考 URL:http://www.mlit.go.jp/tec/kankyou/hasseido.html(国土交通省)

22) 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」

参考図書:環境六法、廃棄物・リサイクル六法

参考 URL:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S45/S45HO137.html(総務省)

23) 「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」

参考図書:環境六法、廃棄物・リサイクル六法

参考 URL:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S45/S45HO136.html(総務省)