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RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【医療計画策定参画者研修ガイドライン】 医療計画策定参画者研修ガイドライン 104
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医療計画策定参画者研修ガイドライン...2014/10/12  · 【医療計画策定参画者研修ガイドライン】 1.策定者・参画者等への教育・研修の現状

Oct 25, 2020

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RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【医療計画策定参画者研修ガイドライン】

医療計画策定参画者研修ガイドライン

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1.策定者・参画者等への教育・研修の現状 ・この章では現行の第 6 次地域医療計画策定に携わった人材の状況や、人材育成を目的としてこれまで

行われてきた研修について把握し、現状整理を行う。 □1 策定に携わる人材の現状

(1)都道府県職員の参画 ・厚生労働省医政局の調査によると、都道府県庁内の複数の部局・課(47 都道府県のうち最小値 1、中

央値 3、最大値 15)が地域医療計画策定に携わっている。策定を担った職員数は 5~20 人程度の県が

多いが、ばらつきがある。 ・職種は行政職と専門職(医師、歯科医師、保健師、看護師、薬剤師など)に大別される。キャリアパ

スは多様で、保健医療分野の経験年数も個人差が大きい。 ・地域医療計画策定主管部局の部署名は、都道府県により異なり、かなり多様である。分野横断的に多

くの担当業務を抱える職員が、付加的に地域医療計画策定も担うという姿が多く見受けられる。 図表 1 策定を担った都道府県職員数(第 6次地域医療計画策定時)

出典:厚生労働省医政局「医療計画

の推進に係る都道府県への調査」

2013(PDCA サイクルを通じた医

療計画の実効性の向上のための研

究会資料)(以下、医政局アンケー

トと表記)

(2)その他ステークホルダー(関係者)の参画 ・複数のステークホルダーのなかで、最も延べ参画人数が多いのは医療現場・提供者であり、延べ 100人以上が参画している県が 8 つみられた。医政局アンケートによると 47 都道府県中 43 県で作業部会

を設置しており、設置された作業部会の約 9 割が、構成員として地域医師会等の医療関係団体や医師・

歯科医師・薬剤師・看護師など医療提供者を含んでいることが背景にあると考えられる。 ・患者・住民については、1 県を除き参画があったが、延べ 10 人未満の県が半数近くを占める。 ・有識者については、3 県を除き参画があったが、関与する延べ人数は患者・住民よりさらに少ない。 ・その他の内訳として、町村会、市長会、社会福祉協議会、消防長会、議員、保険者などが挙げられた。

回答のあった 39 県のうち 24 県で参画があり、延べ人数は 3 人以下が半数を占める。 ・各ステークホルダーとも、関与人数は都道府県間で大きなばらつきがある。 ・H-PAC/RH-PAC都道府県アンケートでは、関与した人数(延べ)の定量把握に留まったが、患者・住民

の参加人数が多く、参画実態も良好な都道府県があれば、詳細を把握し、好事例として都道府県間で

共有することが望ましい。

105

該当する都道府県数(N=47)

都道府県職員

5人未満 19

5人以上20人未満 10

20人以上30人未満 7

30人以上50人未満 9

50人以上 2

注)換算できないとされた人数については計上していない

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図表 2 策定に参画したその他ステークホルダーの人数(延べ人数・第 6次地域医療計画策定時)

出典:H-PAC/RH-PAC「地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン策定にあたってのアンケート」2014

(以下、H-PAC/RH-PAC都道府県アンケートと記載)(設問への回答県件数=39)

□2 現在行われている研修の概要

〇厚生労働省による研修(図表 3) ・厚生労働省では 2006~2008 年の総合医療政策研修以来、都道府県担当者に対し研修を行っている。 ・多くの県では、研修の案内を受けて独自に受講者を選定し、研修に派遣している。 ・2013 医政局アンケートによると、厚生労働省の研修について、9 割以上にあたる 43 県が「役に立っ

た」と評価している。「役に立たなかった」と回答した県が挙げた理由は「複数県合同で短時間だっ

たため、個別具体的でなかった」「総括部門担当者のみの出席で、疾病・事業の担当者が出席できな

かった」「多項目のデータ提供はありがたいが、分析にあてる時間・コストが大きすぎる」等である。 ・研修自体によって知識やスキルを習得することに加え、場と時間を共有することで、各都道府県から

の参加者間、都道府県担当者と厚生労働省担当者の間に人的つながりが生まれるという副次的効果も

大きいとの意見があった(H-PAC/RH-PACで実施した都道府県ヒアリングより)。 ○その他の都道府県職員向け研修 ・政策研究大学院大学では都道府県または市町村の課長・主幹など若手幹部を対象に「医療政策短期特

別研修(約 3 週間)」を実施している。定員は 50 人だが、業務多忙を理由に近年受講者数が減少して

いることが課題の1つ(2014 年は 15 人)。受講者からの評価は高く、研修資料集を用いて自治体内

で再研修を行う例もある。 ・自治大学校が都道府県や市町村の幹部職員等を対象に行う「都道府県及び指定都市等コース」(約 3

週間)のカリキュラムのうち 2 時限分で地域医療政策の現状と課題を学ぶ。定員は 40 人。 ・リーダーシップやマネジメント等について自治体として人材育成の一環で研修の機会を設けている例

はある(人事院式監督者研修など)。

二重線より上:該当する都道府県数(N=39)

患者・住民(市民団体代表、患者会代表、住民

代表など)

医療現場・提供者(保健師、助産師、看護師、薬剤師、医師、

歯科医師など)

有識者(大学研究者、メ

ディア関係者など)

その他(町村会、市長会、社協、消防長会、

議員、保険者など)

5人未満 11 1 17 25

5人以上20人未満 21 17 13 7

20人以上30人未満 4 3 7 2

30人以上50人未満 2 2 1 2

50人以上100人未満 1 8 1 2

100人以上 0 8 0 1

平均 10人 64人 10人 15人

最小値 0人(1県) 3人(1県) 0人(3県) 0人(15県)

中央値 8人 24人 5人 3人

最大値 36人(新潟県) 278人(茨城県) 35人(徳島県) 109人(愛知県)

分布

記述統計量

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図表 3 2012 年度以降 厚生労働省より都道府県担当者を対象に行われた研修会

○その他ステークホルダーに対する研修 ・地域医療計画策定への参画につながる研修は、現状ではほとんど実施されていない(一部の好事例に

ついては後掲する)。 ・特に患者・住民に対する研修制度が不足している(RH-PAC 意見集約より)。 ・都道府県側に、職員以外の人材を育成するという発想があまりない(H-PAC/RH-PACで実施した都道府

県ヒアリングより)。 ・在宅医療分野を中心に、都道府県による市町村への支援や、両者の連携がいっそう重要となるため、

市町村職員も受講できることが望まれる(RH-PAC 意見集約より)。

全体研修会 -2012年3月に2日間 -厚生労働省会議室で開催

・医療計画の見直しとPDCAサイクルについて・NDB解析ソフトについて、コンピューターを用いた実習

ブロック別研修会 -2012年6月に各1日 -北海道・東北、関東信越、東海北陸、   近畿、中国四国、九州で開催

・患者調査、医療施設調査の個票解析について・NDB解析ソフトについて、コンピューターを用いた実習・医療計画策定に当たり各都道府県からの照会事項について

医療計画のためのデータ分析セミナー -2012年12月(東京) -2013年1月(福岡)

・NDB解析ソフト・操作方法について・地域別における将来患者数の推計方法について演習・地理情報システムを活用したデータ分析方法について演習

研修会 -2014年3月(東京)

・5疾病5事業および在宅医療についての指標となる統計指標と 解析ツールが収載された医療計画作成支援データブックを配布・データブックを活用した解析方法について、コンピューターを用い た実習・救急医療の系統的な分析についてのワークショップと事例発表※課題レポートの提出を求め、専門家のコメントを付して返送※優れた都道府県のレポートは好事例として配布

第1回 -2014年7月に3日間  (国立保健医療科学院)

・多様な専門家により、医療政策の課題と展望からPDCAの推進 の手法まで・データブックを活用した解析方法について、コンピューターを用い た実習・医療計画における課題抽出とPDCAについてのワークショップと 事例発表

第2回 -2014年9月に3日間

・都道府県からの取り組み事例報告・データ分析結果を活用した地域の問題解決手法・地域における合意形成・今後の医療計画に求められること 等

医療計画の見直しに関する都道府県担当者向け研修会

医療計画作成支援データブックを用いた評価・見直し等都道府県担当者向け研修会

医療計画PDCA研修会

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2.教育・研修等へのニーズ ・この章では、必要な人材育成要素を 4 つの区分別に定義した上で、各要素の充足状況や、研修のニー

ズについて把握する。 □1 必要な人材育成の要素(RH-PACガイドラインにおける 4区分)

・地域医療計画実践コミュニティー(Regional Health Plan Action Community=RH-PAC)では、都

道府県へのヒアリングや、多様な立場の参加者による意見集約を経て、地域医療計画策定参画に必要

な人材育成要素を分類・定義した。 ・さらに数県の策定担当者にヒアリングし、図表 4 の内容(政策知識、計画策定スキル、マネジメント

スキル、リーダーシップ)でおおむね妥当であると確認した。 ・図表 3 で示した既存研修は、主にB「計画策定スキル」部分に特化していると考えられる。 図表 4 RH-PACガイドラインで定義する「地域医療計画策定参画に必要な人材育成の要素」

□2 それぞれの要素の充足状況

・H-PAC/RH-PAC 都道府県アンケートでは、現行の第 6 次地域医療計画策定時を振り返った際の、4

つの要素の充足度を把握した。 (1)都道府県職員の充足度 ・都道府県職員について各要素の充足度を尋ねると、十分と答えた割合は、「政策知識」「計画策定スキ

主な要素

 A 政策知識専門用語の意味や定義政策や制度の知識疾病・事業の基本知識

 B 計画策定スキル

必須データの所在や入手法データの具体的活用法、将来推計方法圏域間や都道府県間の比較分析方法専門家の意見を理解し解釈する力論理的思考力

 C マネジメントスキル

説明力表現力多様なステークホルダー間で調整しまとめる力互いを尊重した対話を行う力

 D リーダーシップ

十分な対話から本質的意見を引き出す力個々の意見を尊重しつつ合意形成に至らせる力地域住民の理解を得る力意見や利害の違いを超えたファシリテーション(活動・議論が円滑に行えるよう中立的に支援する)力全体の中の相対的位置付けを踏まえて主張できる力人間力

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ル」各 11%、「マネジメントスキル」「リーダーシップ」各 16%にとどまった。 ・都道府県職員で充足度の評価が特に低いのは「計画策定スキル」で、不十分とやや不十分をあわせる

と 40%が不足と回答した。 ・「政策知識」「マネジメントスキル」「リーダーシップ」は 30%前後が不足と回答した。 (2)その他ステークホルダーの充足度 ・十分であったと回答した都道府県の割合は、「政策知識」「計画策定スキル」で各 19%、「マネジメン

トスキル」「リーダーシップ」で各 22%であった。

図表 5 それぞれの要素の充足度(第 6次地域医療計画策定時)

(1)都道府県職員

出典:H-PAC/RH-PAC 都道府県アンケート(設問への回答件数=無回答を除く 38)

(2)その他ステークホルダー

出典:H-PAC/RH-PAC 都道府県アンケート(設問への回答件数=無回答を除く 37)

・RH-PAC 参加者で意見集約を行うと、患者・住民、医療提供者、有識者、その他(保険者、議員、市

町村、社協、消防等)すべてのステークホルダーで A~D の必要度は高いという見解であった。 ・全てのステークホルダーが詳細な専門知識まで習得する必要はないものの、少なくとも基本知識の部

分は共有し、同じ土俵で議論できることが望ましいというのが RH-PAC としての考え方である。

11%

11%

16%

16%

58%

50%

58%

61%

26%

37%

24%

21%

5%

3%

3%

3%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

政策知識

計画策定スキル

マネジメントスキル

リーダーシップ

1.十分であった 2.おおむね十分であった 3.やや不十分であった 4.不十分であった

19%

19%

22%

22%

70%

59%

62%

68%

11%

19%

16%

11%

3%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

政策知識

計画策定スキル

マネジメントスキル

リーダーシップ

1.十分であった 2.おおむね十分であった 3.やや不十分であった 4.不十分であった

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3.教育・研修等への提案

・この章では、人材育成上の課題をステークホルダー別に把握した上で、研修のあるべき姿を提案する。

今後の方針検討の一助となるよう、ある程度具体的・詳細なイメージまで描く。 □1 現状からみた課題

H-PAC/RH-PAC 都道府県アンケート、一部都道府県ヒアリング、RH-PAC 参加者の意見集約により、

課題を抽出した。 (1)都道府県職員の人材育成における主な課題 ○定期的な人事異動を前提とせねばならない。 ・知識や経験の継続性を保てず、医療政策に精通した職員が常に担当できる状況にない。 ・属人的能力でなく組織的能力を向上できるよう、継続的な人材育成や研修が必要。 ○一部職員のみしか研修を受講できていない。 ・研修出席者が学んだ内容を庁内で共有・伝達する仕組みがない。 ・業務が多忙であり、複数名を一定期間の研修に派遣する余裕がない。 ○医療の専門家と非専門家(患者・住民等)の双方に対し、説明力・調整力を求められる。 (2)その他ステークホルダーの人材育成における主な課題 ○参画者の人選、任命のプロセスが確立されていない。 ○各ステークホルダーの役割や責任が不明確。 図表 6 各ステークホルダーが抱える主な課題のイメージ

出典:H-PAC/RH-PAC 都道府県アンケート、RH-PACメンバー意見集約をもとに作成

研究者メディア

都道府県職員

医療現場提供者

保険者議員など

患者・住民

多様な関係者の声を拾いきれない

定期的な人事異動

受講者が限られる

多様な相手への説明力が必要

人選、任命プロセス未整備

各ステークホルダーの

役割・責任が不明確

認識の共有が難

地元に人材少ない

属人的能力に依存

多忙専門分野の議論を理解

しづらい

臨床以外の知識・スキルに接する場がない

職能団体や組織の利害に基づく言動になりがち

研修が

ほとんどない

現時点でデータ未整備

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□2 教育・研修の好事例

○がん政策サミット(日本医療政策機構 市民医療協議会) ・内容:都道府県がん対策推進協議会患者委員等を中心に、都道府県行政担当者、都道府県議会議員、

地域の医療提供者、地域のメディアなどのキーパーソンが共に学ぶ機会。 ・好事例である理由:地域のマルチステークホルダー(多様な立場の関係者)が共に政策立案・合意形

成をしていくためのスキルを身につける実践的内容である。リーダーシップやマネジメントに関する

知見を含むプログラムである。好事例を共有し、人的つながりを得られる場である。 ○地域医療再生計画作成塾(放送大学) ・内容:教養学部の面接授業(90 分×8 時限)。講義後、専門職と一般市民によるグループで地域医療

再生計画予算案を作成し、発表。 ・好事例である理由:多様なステークホルダーが協働し、その過程で多くの気付きを得る。 □3 実施形態について

本ガイドラインでは、医療計画策定参画者研修の実施形態について、H-PAC/RH-PAC 都道府県アン

ケート、都道府県職員ヒアリング、RH-PAC 参加者の意見集約等に基づき以下の通り提言する。

(1)研修体系 ○二段構えの研修体系とする。 ・全てのステークホルダー共通の研修を新たに設け、計画策定に関わる全ステークホルダーが合同で学

ぶ場を設定する。 ・都道府県職員対象の既存研修を拡充し、立場に応じて必要な専門的知見やスキルについて育成を行う。 図表 7 二段構えの研修体系のイメージ

1) 個別専門研修のイメージ ○都道府県職員の政策知識・計画策定スキル向上に特化する。 ・厚生労働省、国立保健医療科学院、政策研究大学院大学等が主体となり、中央集約型で実施。 ・定期的・継続的に開催。 ・受講者が職場に戻り、知見を伝達する仕組みを設ける。

111

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○都道府県で医療政策の中核的な人材を育成することも検討。 ・現状の異動を前提とした人事制度を一部見直す。 ・人材育成方針を明確化し、県内大学院に職員を派遣することも一案。 (医療計画策定基本ガイドラインも参照) ○策定の実務面は、今後、センターを整備し支援することも検討。 (医療計画策定プロセスガイドラインも参照) 図表 8 都道府県職員の研修にふさわしいと考えられる実施主体

出典:H-PAC/RH-PAC 都道府県アンケート(設問への回答件数=無回答を除く 38) 2) 共通研修のイメージ ○「協働」を体験し、互いを知る場とする ・地域のマルチステークホルダーがともに政策立案・合意形成していくスキルを習得する。 ・座学にとどまらずグループワーク等の実践的内容を含める。 ・各ステークホルダーからの好事例を共有する。共有された好事例を県内でとりまとめた上で、さらに

都道府県間で共有する仕組みも設ける。 ・ステークホルダー間で人的つながりを得られる場とする。 ○都道府県内の既存の仕組みを活用し、地域分散型で実施する。 ・地域内の多様なステークホルダーが集まりやすい場で行う。 ・地元大学、地元医療機関、地域コミュニティ(自主勉強会)、NPO なども研修の場として想定される。 ・全国共通の内容と、地域特性を反映した内容の双方を学ぶ。 ・多忙な参加者向けに、座学部分は対面講義と e ラーニング(インターネット等を用いた学習)を併用

するなど、柔軟に対応する。

34

20

14

4

3

3

1

2

0

0 5 10 15 20 25 30 35

厚生労働省

国立保健医療科学院

政策研究大学院大学

庁内自主勉強会

民間企業

都道府県

放送大学

その他(東大公共政策大学院、eラーニング)

都道府県内の大学

回答都道府県(N=38)のうち

各選択肢を選んだ数

(複数回答)

112

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○別途、他県との人的交流を行う仕組みづくりも検討(医療計画策定プロセスガイドラインも参照)。 ○開催形態の具体的イメージ ・各県での研修人数:12分野(総論、疾病・事業別)×5つの立場×各 2人 → 120人

・週に 1回、1コマ 2時間(19-21時)

・1 コマ 2時間=座学 60分(事前に eラーニングも可能)+ グループワーク 60分

・A~Dの 4要素×各 3コマ → 3か月で 1クール(24時間分)

・1 回の参加者は約 40人(5つの立場×8人ずつ) → 計 3クール実施 図表 9 共通研修における協働のイメージ

□4 カリキュラムについて

研修の現状、都道府県のニーズなどを把握し、RH-PAC参加者で検討を行った上で、以下を提案する。

○各学習テーマの基本的内容を、すべてのステークホルダーで共有することを目標とする。 ・住民・住民においては、まずそのテーマに関心を持ち、より深く知りたいときには何を参照したらよ

いかが分かるようになることを目指す。 ・講師の人選時は肩書きにとらわれず、受講側に立ち公共性を重んじた分かりやすい講義をできること

を重視する。 ・受講生が相互にメンター(助言者)役になることも想定する。 ○研修受講者から知見を波及させる仕組みを作る。 ・初期の研修で育成された人材を中心にマルチステークホルダーのチームを形成し、地域・職場・自主

勉強会等で同等の研修を実施できるようにする。 ・受講内容が計画策定に役立ったかどうかを定期的に検証する。検証は、策定プロセスへのステークホ

地域医療計画策定人材養成講座

地域での協働

「場」の共有によりマルチステークホルダー協業の重要性を体感

研修で得た知見、経験を職場・地域等に波及

都道府県職員

医療現場提供者

保険者議員など

患者・住民

研究者メディア

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ルダー別参画人数等の量的指標と、受講者の実感に基づく質的指標の双方により行い、好事例があれ

ば都道府県間で共有する。 ・受講者からのフィードバックを反映させて研修体系やカリキュラムを更新する。 ○「座長の育成」も念頭においた研修とする。 ・医療審議会、地域医療計画部会、疾病・事業別部会の座長は、地域の医療提供体制の現状や課題を熟

知した医療提供者(医師)が務める場合が多い。 ・座長が各ステークホルダーの状況や視点を汲みつつ、円滑に議論をリードし、課題解決につながる合

意形成をめざす上でも、共通研修(特に、マネジメントとリーダーシップ)での協業の体験が活かさ

れることをねらう。 図表 10 RH-PACガイドラインで提案するカリキュラムイメージ

要素 形態 主な学習テーマ(イメージ)

 A 政策知識

一部:都道府県職員専門個別研修

共通研修(ステークホルダー合同)

・政策決定プロセスと参画のありかた・財政、社会保障制度改革について・地域医療計画について・5疾病、5事業、在宅医療の基礎知識・法令(法律、政令、省令、通知)等について・審議会、中央社会保険医療協議会等の仕組み・医療の質や均てん化について・統計、EBM(根拠に基づく医療)、社会調査の基礎

 B 計画策定スキル

一部:都道府県職員専門個別研修

共通研修(ステークホルダー合同)

・現状把握の手法(既存施策の評価、データの収集・分析・比較、各ステークホルダーからの意見聴取)・施策形成の手法(課題抽出、施策案の掲載、案の吟味ととりまとめ、実行計画の策定)・PDCAサイクルと評価(PDCAサイクル、政策評価、ロジックモデル、目標と指標の設定)・行政、医師会、地域医療機関など各ステークホルダーの役割と関係

 C マネジメントスキル共通研修(ステークホルダー合同)

・事業計画書、活動計画書、予算書作成・観察、進捗管理、状態管理・プロジェクトマネジメント・コミュニケーション(交渉)力・プレゼンテーション(説明)力・目標とミッションの設定

 D リーダーシップ共通研修(ステークホルダー合同)

・自らを理解し、一人称で語る・マルチステークホルダーでの協働(チームづくり)・課題解決のための施策立案と合意形成・ファシリテーション(活動・議論が円滑に行えるよう中立的に支援)

114

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4.まとめ

地域医療計画の策定体制や研修の現状、都道府県のニーズなどを把握し、RH-PAC参加者で検討を行

った上で、以下のガイドラインを提案する。

□1 研修の対象、実施方法

○研修の対象者は、すべてのステークホルダー(関係者)、すなわち都道府県職員(行政職、専門職)、

患者・住民、医療現場・提供者、有識者、その他(議員、保険者、市町村職員、社会福祉協議会、消

防関係者など)とする。 ○二段構えの研修体系とする。 1) 個別専門研修のイメージ ○都道府県職員の政策知識・計画策定スキル向上に特化する。 ・都道府県職員対象の既存研修を拡充する形で中央集約型で実施し、定期的・継続的に開催。 ・受講者が職場に戻り、知見を伝達する仕組みを設ける。 ○都道府県で医療政策の中核的な人材を育成することも検討。 2) 共通研修のイメージ ○「協働」を体験し、互いを知る場とする ・地域のマルチステークホルダー(多様な立場の関係者)がともに政策立案・合意形成していくスキル

を習得する。 ・座学にとどまらずグループワーク等の実践的内容を含める。 ・各ステークホルダーからの好事例を共有する。 ・ステークホルダー間で人的つながりを得られる場とする。 ○都道府県内の既存の仕組みを活用し、地域分散型で実施する。 ・地域内の多様なステークホルダーが集まりやすい場で行う。 ・地元大学、地元医療機関、地域コミュニティ(自主勉強会)、NPO などが研修の場として想定される。 ・全国共通の内容と、地域特性を反映した内容の双方を学ぶ。 ・多忙な参加者向けに、座学部分は対面講義と e ラーニングを併用するなど、柔軟に対応する □2 カリキュラム

○政策知識、計画策定スキル、マネジメントスキル、リーダーシップの 4 要素の研修とする。 ○各学習テーマの基本的内容を、すべてのステークホルダーで共有することを目標とする。 ○研修受講者から知見を波及させる仕組みを作る。 ・初期の研修で育成された人材を中心にマルチステークホルダーのチームを形成し、地域・職場・自主

勉強会等で同等の研修を実施できるようにする。 ・受講内容が計画策定に役立ったかどうかを定期的に検証する。 ・受講者からのフィードバックを反映させて研修体系やカリキュラムを更新する ○「座長の育成」も念頭においた研修とする。

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Page 13: 医療計画策定参画者研修ガイドライン...2014/10/12  · 【医療計画策定参画者研修ガイドライン】 1.策定者・参画者等への教育・研修の現状

RH-PAC 地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 【医療計画策定参画者研修ガイドライン】

5.参考資料 ・厚生労働省医政局、「医療計画の推進に係る都道府県への調査」(2013 年 8 月 5 日 第 2 回 PDCA サ

イクルを通じた医療計画の実効性の向上のための研究会資料) http://www.mhlw.go.jp/file.jsp?id=148715&name=0000014430.pdf ・H-PAC/RH-PAC、「地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン策定にあたってのアンケート」(2014

年 9 月実施) ・日本医療政策機構 市民医療協議会、「都道府県がん計画策定状況および技術支援ニーズに関するアン

ケート」(2012 年 9 月実施) http://153.122.7.157/handout/enquete_print_-00011130_370435.pdf ・日本医療政策機構 市民医療協議会、「患者アドボカシーカレッジ」 http://advocacy-college.net/ ・日本医療政策機構 市民医療協議会、「がん政策サミット」 http://ganseisaku.net/gan_summit.html ・国立保健医療科学院、「平成 26 年度 医療計画 PDCA 研修」(2014 年 7 月、9 月実施) http://www.niph.go.jp/entrance/h26/pdf/jikan_iryo01.pdf ・政策研究大学院大学、「医療政策短期特別研修」(2014 年 7 月実施) http://www3.grips.ac.jp/~healthcarepolicy/training/index.html

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