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P. 04 Axiom ジャポニカアレイ NEO P. 07 Ion GeneStudio S5 シリーズ P. 10 BenchStable 培地 P. 11 iBright FL1500 Imaging System / iBright CL1500 Imaging System P. 12 Qubit Flex Fluorometer P. 13 Attune NxT Flow Cytometer P. 14 SeqStudio Genetic Analyzer 2019 / December No. 52 NEXT Interview 発生を制御するエピジェネティクスの全体像を描くために クロマチン因子・ポリコム群複合体の多彩な働きを探る 古関明彦 理化学研究所生命医科学研究センター・副センター長、免疫器官形成チーム・チームリーダー Science, Products, and Information サーモフィッシャーサイエンティフィック ライフサイエンス情報誌
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No. · 2020. 12. 8. · P. 04 Axiom ジャポニカアレイ NEO P. 07 Ion GeneStudio S5 シリーズ P. 10 BenchStable 培地 P. 11 iBright FL1500 Imaging System / iBright CL1500

Mar 31, 2021

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2019 / December

No. 52

NEXT Interview

発生を制御するエピジェネティクスの全体像を描くためにクロマチン因子・ポリコム群複合体の多彩な働きを探る古関明彦 氏理化学研究所生命医科学研究センター・副センター長、免疫器官形成チーム・チームリーダー

Science, Products, and Informationサーモフィッシャーサイエンティフィック ライフサイエンス情報誌

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02 03

発生を制御するエピジェネティクスの全体像を描くためにクロマチン因子・ポリコム群複合体の多彩な働きを探る

古関明彦 氏

理化学研究所生命医科学研究センター・副センター長免疫器官形成チーム・チームリーダー

「エピジェネティックな転写制御メカニズムは、発生過程や成熟した臓器のホメオスタシスの維持に関わり、その分子機序は各遺伝子座におけるクロマチン構造の変換やその後の維持であり、様々な細胞の機能発現に寄与しています。私たちの研究グループは、ポリコム群複合体やDNAメチル化修飾メカニズムが、発生関連標的遺伝子群を制御するメカニズムについて、遺伝学、生化学、インフォマティクスを組み合わせて解析しています」と理化学研究所の古関明彦氏は語ります。ポリコム群複合体の変異は、発生のみならず、がんや幹細胞機能、X染色体不活性化の異常に関与します。古関氏に幅広い生命現象に関与するポリコム群に対する基礎研究と、別プロジェクトで進める社会実装を目指したiPS細胞応用研究やアトピー性疾患へのアプローチについて伺いました。

インタビュアー: サーモフィッシャーサイエンティフィック 橋本裕子

Interview

ポリコム群複合体が制御する多彩な現象

 ポリコム群複合体は、ショウジョウバエでホメオボックス遺伝子の調節因子として発見された一群のクロマチン因子であり、ヒトに至るまで保存されています。非メチル化CpG領域に結合し、周囲のヒストンタンパク質のメチル化やユビキチン化を通してクロマチンの

立体構造を変化させ、遺伝子の発現を主に抑制することが知られています。「最近の研究では、2016年にマウスの肢芽形成において、ポリコム群複合体が関与する分子メカニズムの一端を報告しました。この論文では、四肢の肩から指先に至る軸(基部先端部軸)の先端部ではポリコム群複合体がMeis2遺伝子の発現を抑制することで先端化に寄与し、逆に基部ではポリコム群複合体は抑制せずにMeis2遺伝子が発現することで基部化する

ことを明らかにしました。さらに2018年には、基部化シグナルであるレチノイン酸シグナルとポリコム群複合体がMeis2遺伝子の発現制御領域で拮抗的に制御することを報告しました。ポリコム群複合体による発生シグナルの閾値調整が発生過程の頑健性を支えている可能性があります」と古関氏。また2017年には、ポリコム群複合体の新しい機能として、不活性化X染色体の形成メカニズムを共同研究として報告しました。「X染色体上に存在す

るXist遺伝子から転写されるノンコーディングRNAの『Xist』がX染色体を包み込むように蓄積し、それがクロマチン上にさまざまなエピジェネティクス修飾因子タンパク質を呼び込むことでクロマチンが高度に凝集してヘテロクロマチンになり遺伝子発現が抑制され、X染色体が不活性化します。私たちは、この過程でXist RNAに結合するポリコム群複合体の種類や形成メカニズムが、従来の説とは異なることを提唱しました」と古関氏は続けます。

さらに血液幹細胞の分化調節や、がん抑制遺伝子 ink4の発現調節にも関わっていることが実験からわかってきました。

発生への興味からポリコム群の研究へ

 前述の研究成果を始め、古関氏の研究は各種ポリコム群のノックアウトマウス作製など、遺伝学を基盤にしています。古関氏に遺伝学の技術取得や発生学への興味のきっかけを伺いました。「医学部の講義で、ヒトの体の精密さと再現性に驚くとともに、1個の細胞から動物の組織や器官が発生していく過程に興味を持ちました。また遺伝子やゲノムの基盤を学んでいくうちに、発生のメカニズムを根本的に理解したいと思いました。そこで基礎研究者を目指して大学院に進み、免疫学教室に入りました。当時免疫学はいち早く分子生物学や遺伝学や取り入れ、さまざまな分化マーカーを利用した分子レベルの研究が進んでおり、発生の研究にも役立つと思ったからです。大学院ではNKT細胞がどうのようにできていくかを免疫遺伝学から取り組みました。そして博士課程修了後は、ドイツのマックスプランク研究所に留学し、マウス脊椎骨のパターン形成の研究に発生遺伝学から挑みました。当時、ヘッジホッグ遺伝子やBMP遺伝子を中心にした背腹軸形成の研究や、ホメオボックス遺伝子による前後軸形成に関する研究が隆盛を極めていました。25年前に帰国してからは、マウスで前後軸の研究を行うことにしましたが、ホメオボックス遺伝子の研究には、その当時世界中の数百人の研究者が従事していたので、私はホメオボックス遺伝子そのものではなく、その遺伝子の制御に関わるポリコム群複合体を研究することにしました。ポリコム群もショウジョバエで発見された遺伝子群でしたが、哺乳類で研究する人は少なく、私はポリコム群タンパク質に対するモノクローナル抗体やノックアウトマウスを作り、哺乳類での機能解析の手段を整えつつ研究を進めました」(古関氏)。

社会実装を目指した研究

 ポリコム群に関する基礎研究だけでなく、古関氏は幅広い分野の研究に取り組んでいます。アトピー性皮膚炎に関する研究では、遺伝子変異誘導によりアトピー性皮膚炎モデルマウス(Spadeマウス)を開発し、JAK1遺伝子の活性化変異が皮膚の炎症を促進すると

いうアトピー性皮膚炎発症のメカニズムの一例を解明しました。さらにその阻害剤が発症を予防することを2016年に報告。「アトピー性皮膚炎と言っても、その原因は多岐にわたります。現在、慶應義塾大学病院の皮膚科と連携して、アトピー性皮膚炎の患者さんの協力を得て検体を集めています。マウスとヒトの比較を通してアトピー性皮膚炎の原因を層別化し、効果的な治療法の開発をつなげたい」と話します。また京都大学の河本宏氏との共同研究では、iPS細胞から誘導したNKT細胞をがん治療に応用する臨床研究の準備を進めています。がんを特異的に攻撃するNKT細胞をiPS化して無限に増殖させて再度NKT化することで、元気で治療に十分な量のNKT細胞を供給できると期待されます。

若い研究者へ

「キャリアディベロップメントが難しい時代だと思います。僕らの若い頃は、発生生物学者と名乗ればそれを基盤に研究がでました。しかし技術が成熟した今日では、異分野融合で新たな分野を切り拓いていく必要があります。一分野の専門だけでは足りないと思います。逆に考えれば、自分で考えて異なる分野をリンクさせれば、ニッチな分野をオリジナルに創り出せるかもしれない。また基礎研究者といえども、研究成果の社会実装が求められます。それも新たなチャレンジであり、これまで到達していなかったところへどれだけチャレンジするかが問われていると思います」と古関氏は、若い研究者の新たな研究分野の創出を期待します。

古関明彦 (こせき はるひこ)

1986年千葉大学医学部卒業、同大学院医学研究科博士課程修了。90年千葉大学医学部助手、91年より93年までドイツ・マックスプランク免疫生物学研究所に留学、97年千葉大学医学部助教授、98年同大学発生生物学教授を経て、2001年理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センター免疫器官形成研究グループ・グループディレクター、11年免疫・アレルギー科学総合研究センター副センター長、13年同研究所統合生命医科学研究センター・副センター長、免疫器官形成研究グループ・グループディレクター、18年理化学研究所生命医科学研究センター・副センター長、免疫器官形成研究チーム・チームリーダー

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日本人のゲノム解析研究に特化した疾患志向性アレイAxiom ジャポニカアレイ NEO

0504

Applied Biosystems™ Axiom™ ジャポニカアレイ® NEOは、 東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)が構築した全ゲノムリファレンスパネル(3.5KJPNv2)をもとに新たに設計されました。日本人3,552人の全ゲノムデータから選択された65万 tagSNPと日本民族集団特有の疾患関連SNP、さらにToMMoが確立した全ゲノムインピュテーションを組み合わせることで、数千万規模のSNP情報が取得可能です。Axiom ジャポニカアレイ NEOは、これからの個別化医療実現に向けた研究に欠かせないツールです。

※ジャポニカアレイ® は、国立大学法人東北大学の登録商標です。※ジャポニカアレイ® NEOは、Life Technologies Corporation, part of Thermo Fisher Scientific Inc.が東北大学よりライセンスを受けて製造・販売しています。※ジャポニカアレイ® NEOに搭載されている疾患関連SNPマーカーはすべて研究用途です。

● 文献等に基づく日本人特有の疾患関連SNPを搭載● ToMMoが確立した全ゲノムインピュテーションシステムに対応● 日本人のゲノム解析に無駄のないマーカーを精選● 高精度な解析をプラットフォームのApplied Biosystems™ Axiom™がサポ―ト

P O I N T

NEW!

文献等に基づく日本人特有の疾患関連SNPを搭載

ToMMoが確立した 全ゲノムインピュテーションシステムに対応

日本人のゲノム解析に 無駄のないマーカーを精選

高品質なAxiom マイクロアレイの製造技術

疾患関連因子として確かな研究報告があるSNPを、さまざまな文献やデータベースをもとに選別し、3.5KJPNv2を用いて日本人にアレル頻度が一定以上で存在するSNPに絞り込みを行い、日本人特有の疾患関連SNPを搭載しました(表1)。

アレイの試作段階から、3.5KJPNv2パネルによる全ゲノムインピュテーションの有効性を確認しているため、ToMMoによって確立されたパイプラインで遺伝子型インピュテーションが可能です。 ※全ゲノムインピュテーションに対する ToMMo からのサポートについては弊社にお問い合わせください。

搭載されたマーカーの99.5%以上が多型を示すことを検証、無駄のない設計であることを確認しました(表2)。

フォトリソグラフィ技術を用いた独自の製造技術により、製造過程でマーカーが失われることはなく、常に100%同一のアレイコンテンツを提供します。

References

1 Tadaka S et al. (2019) 3.5KJPNv2: an allele frequency panel of 3552 Japanese individuals including the X chromosome. Hum Genome Var 6:28.

2 Yamaguchi KY et al. (2019) Estimating carrier frequencies of newborn screening disorders using a whole-genome reference panel of 3552 Japanese individuals. Hum Genet138(4):389-409.

3 Yasuda J et al. (2018) Regional genetic differences among Japanese populations and performance of genotype imputation using whole-genome reference panel of the Tohoku Medical Megabank Project. BMC Genomics 19(1):551.

4 Yasuda J et al. (2019) Genome analyses for the Tohoku Medical Megabank Project towards establishment of personalized healthcare. J Biochem 165(2):139-158.

5 MV Relling & TE Klein. (2011) CPIC: Clinical Pharmacogenetics Implementation Consortium of the Pharmacogenomics Research Network. Clin Pharmacol Ther 89(3): 464–467.

6 Kalia SS et al. (2017) Recommendations for reporting of secondary findings in clinical exome and genome sequencing, 2016 update (ACMG SF v2.0): a policy statement of the

7 American College of Medical Genetics and Genomics. Genet Med 19(2):249-255.8 Buniello A et al. (2019) The NHGRI-EBI GWAS Catalog of published genome-wide

association studies, targeted arrays and summary statistics 2019. Nucleic Acids Res 8;47(D1):D1005-D1012.

9 Carlson CS et al.(2004) Selecting a maximally informative set of single-nucleotide polymorphisms for association analyses using linkage disequilibrium. Am J Hum Genet 74:106–120

製品名 サイズ 製品番号 価格

Axiom Japonica Array NEO 1アレイプレート(96アレイ)* 952355 問い合わせ

*アレイプレートの他にApplied Biosystems™ Axiom™ 2.0 Reagent KitとApplied Biosystems™ GeneTitan™ Consumable Kitが含まれています。

「ジャポニカアレイ NEOを開発」 記者説明会

2019年9月17日、東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)主催でジャポニカアレイ

NEOの記者説明会が開催されました。ToMMo機構長の山本雅之機構長が、「より広くさまざまな人々にゲノム解析が適用可能に」という開発の目的を説明し、健康診断での活用や医療応用への期待など、今後の展望を述べました。大手メディアを含めて30名ほどの方の参加があり、活発な質疑応答が行われました。当日、東北大学、日本医療開発研究機構(AMED)、サーモフィッシャーサイエンテフィックからプレスリリースを配信しました。

写真は、右からToMMo副機構長の木下賢吾氏、 ToMMo機構長の山本雅之氏、サーモフィッシャーサイエンティフィック代表取締役の室田博夫、AMED基盤研究事業部バイオバンク課課長の岡村勝文氏です。

分類 搭載数(概数)

精神神経系疾患 5,500

循環器系疾患 1,100

呼吸器系疾患 2,000

代謝系疾患 2,900

免疫系疾患 6,400

分類 搭載数(概数)

眼科疾患 400

ミトコンドリア病 60

泌尿器系疾患 300

消化器系疾患 400

産婦人科系 200

分類 搭載数(概数)

悪性新生物(腫瘍) 900

遺伝性疾患 900

薬剤代謝 1,800

HLA 6,700

KIR 500

分類 ジャポニカアレイV2 ジャポニカアレイNEO

対象マーカー数 643,417 659,745

多型マーカー数 639,137(99.3%) 656,747(99.5%)

表2 ジャポニカアレイの搭載マーカーと多型マーカーの比較286検体をジャポニカアレイv2及びNEOで解析し、アレイ搭載マーカー数(対象マーカー数)と実際に検体で多型を示した数(多型マーカー数)を比較しました。その結果、従来のジャポニカアレイv2よりもジャポニカアレイNEOは対象マーカー数が増えていますが、さらに多型マーカー数が増え、多型を示す割合が向上していることを確認しました。

3,552人の全ゲノムシーケンスデータから デザインされた全く新しいジャポニカアレイ3.5KJPNv2に搭載された5千万超のSNP情報をもとに、アレル頻度

1%以上のSNPを対象に最適な全ゲノムインピュテーションが可能となるよう、すべてのtagSNPを国際標準に従い、連鎖不平衡統計量(r2)を用いて選定、全く新しいジャポニカアレイに生まれ変わりました(図1)。

図1  全ゲノムインピュテーションによる性能検証286検体をジャポニカアレイNEOで解析し、3.5kJPNv2リファレンスパネルで遺伝子型インピュテーションを行った結果、約1300万SNPの情報が得られ、擬似的な全ゲノム解析が可能となります。

ジャポニカアレイNEO

(0.02

5,0.05

]

遺伝子型遺伝子型インピュテーションマーカー数

表1 マーカーの機能別搭載数

遺伝子型インピュテーションとは、SNPアレイに搭載されていないSNPを推定・補完する統計手法であり、次世代シーケンス(NGS)解析の結果から作製された、リファレンスパネルのハプロタイプ情報を利用します。NGSによる全ゲノム解析は高コストですが、日本人向けに高度に最適化された遺伝子型インピュテーション用SNPアレイ(ジャポニカアレイ)により、低コストで擬似的な全ゲノム情報が取得できます。

参照

アレイ解析(低コスト・大規模)

約66万SNP

~1,300万SNP

ジャポニカアレイ®を用いたゲノム解析

インピュテーションによる補完

ToMMo全ゲノムリファレンスパネルToMMo日本人1,070人(2013年度)

日本人2,049人(2017年度)日本人3,554人(2018年度)

※均一性の高い集団での同規模の解析は世界有数

全ゲノムインピュテーション後のSNP

ToMMo

全ゲノムNGS解析(高コスト・小規模)

約30億塩基

ジャポニカアレイを使う全ゲノムインピュテーションとは?

www.thermofisher.com/jp-japonica

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業界をリードするスピードとスケールで次世代シーケンスの幅広いアプリケーションを柔軟に遂行します。スループットが異なるチップを使い分け、1チップあたり2M-80M(S5 システム)、2M-130M(S5

Plus/S5 Prime システム)のシーケンスリードが得られます。

要約

制御性T細胞(Treg)は転写因子Foxp3を発現する抑制性のCD4陽性T細胞サブセットであり、自己免疫疾患の抑制や抗腫瘍免疫活性化を目的とした治療標的としても注目されています。特に炎症性免疫疾患の治療に関して、抗原特異的な活性化T細胞にFoxp3を誘導し、免疫寛容を導入する戦略は古くから研究されてきました。しかしながら、活性化T細胞へのFoxp3誘導はTGF-βなど既存の手法では効率的ではありません。今回紹介する文献中で、著者らは化合物スクリーニングによりTreg誘導剤を発見、およびC D K 8 / 1 9の抑制によるF o x p 3誘導促進という新規メカニズムの解明を報告しました。この新規Foxp3誘導性CDK8/19

阻害剤・AS2863619をi n v i t roにおいてDynabeads T cel l act ivatorと共に作用させることでTGF-β非依存的にFoxp3を誘導できます。この現象は通常Foxp3を誘導できない I L -6や I L -4の存在下でも再現でき、TGF-βとは全く異なる新たなFoxp3

誘導システムの構築に成功しました。また、AS2863619はin vivoでもFoxp3誘導を促進すること、炎症反応を抑制することを確認しており、自己免疫疾患や炎症性疾患に対する新たな治療戦略となることが期待されます。

PrimeFlow RNA Assayの活用

A S 2 8 6 3 6 1 9はF o x p 3陰性 T細胞へのF o x p 3誘導を指標に探索した化合物であり、in v i t ro、in v ivoいずれにおいても抗原刺激依存的にFoxp3陽性T細胞を誘導します。しかし、i n v i voで人為的に誘導されたTreg (periphery induced Treg : pTreg)

は生体に元から存在する胸腺由来 Tr e g

(thymic Treg : tTreg) と区別することは困難でした。本論文ではtTregに発現する一方でpTregには全く発現しない遺伝子としてItgb8(integrin β8)に着目しました。ところがItgb8

タンパク質を認識する良い抗体が少なく、Invitrogen™ PrimeFlow™ RNA Assay

を利用してI tgb8 mRNA を検出することでtTregとpTregの識別に成功しました(図)。

試験方法

① Foxp3-GFPレポーターマウスのリンパ節、腸管から細胞を単離。場合によってはマウスにOVAを皮下投与して免疫を活性化し、同時にAS2863619を経口投与してpTregを誘導。

② 単離した細胞をPrimeFlow RNA Assayプロトコルに従って染色。同時に細胞外抗原としてCD4を染色。Probeは I tgb8

targeting probeを使用。③ C D 4陽性細胞中の F o x p 3陽性細胞、

I tgb8 mRNA陽性細胞の割合をフローサイトメーターで検出。

結果

一般的にリンパ組織のTregの多くはtTregである一方、腸管組織内にはpTregが多く存在すると考えられています。そこでリンパ節のTregと腸管組織内のTregにおけるI tgb8

mRNA発現レベルを比較すると、確かに腸管TregではItgb8発現が低いという結果が得られました(図)。このことからItgb8 mRNA発現は胸腺由来のTregに限定されることが示唆されました。また、論文ではAS2863619の投与によって発生したTregがI tgb8を発現していないことから、胸腺由来のTregではなく末梢由来のpTregであることを確認しました。このように優れたタンパク質検出系が存在しない標的因子に対して、フローサイトメトリーを用いて他のマーカー分子と同時にmRNA発現を比較することで細胞の性状や起源についての重要な知見を得られました。

使用者のコメント

本論文で使用したPrimeFlow RNA Assayは、mRNAをフローサイトメトリー法で検出する非常に優れた製品です。従来法ではRNAをフローサイトメトリー法で検出する手法は高発現する標的遺伝子に限定されますが、本研究で用いたItgb8はRNAシーケンス法による検出では一桁のFPKM値であるにも関わらず、PrimeFlow RNA Assayによる特異的な検出に成功しました。このような低発現遺伝子の検出に非常に有用なツールであると考えられます。また発展的な使用法として、PrimeFlow RNA Assayで標的RNAを染色後、フローサイトメトリーでソーティングした細胞からDNAを抽出してみました。細胞の固定法やDNA抽出法等に工夫が必要ですが、十分量のDNAが抽出できました。今後、DNAメチル化修飾状態の解析など幅広い応用に活かせるかもしれません。

PrimeFlow RNAアッセイを用いたアプリケーション

CDK8/19阻害剤によるFoxp3陽性制御性T細胞の誘導三上統久 氏レグセル株式会社研究開発部、大阪大学免疫学フロンティア研究センター実験免疫学、京都大学ウイルス再生医科学研究所生体再建学分野 研究員

論文:Conversion of antigen-specific effector/memory T cells into Foxp3-expressing Treg cells by inhibition of CDK8/19 M. Akamatsu, N. Mikami, et.al  Sci Immunol, 2019 in press 

PrimeFlow RNA Assayとは?細胞内の標的mRNAをフローサイトメトリーで検出するアッセイです。細胞を固定後、標的のRNAを特異的プローブ、分枝状の増幅プローブ、蛍光プローブでラベルして検出します。

Left oligo Right oligo

RNA

Preamplifier

Amplifier

Labeled probe

図 マウスリンパ節および腸管組織Tregにおける  Itgb8 mRNAの発現

FoxP3陽性細胞のItgb8のmRNAの発現をPrimeFlow RNA Assayを使って解析したところ、リンパ節(左)では確認できましたが。腸管(右)では確認できませんでした。

User's Voice

柔軟な次世代シーケンス解析を実現: Ion GeneStudio S5 シリーズ

製品名 サイズ 製品番号 価格

Ion GeneStudio S5 システム・チップ作製自動化システム付(2年保証) 1 式 GS-001CS2 ¥19,700,000

つのパネルを作製し、解析を開始しました。その後、循環器疾患パネル、免疫不全症候群パネル、自己炎症疾患パネル、遺伝性腫瘍症候群パネルなど次々に新たな遺伝子パネルを構築してきました。さらに、数年前からバリデーション済みのIon AmpliSeq

On-Demandパネルが利用できるようになり、カスタムパネルの精度が格段に上昇しました。テクニカルサポートからのアドバイスも解析者サイドに立った温かみのある、そして的確なもので、とても助けられています」とパネル開発を進めてきた山口氏も語ります。「臨床的遺伝学的検査においては、国内で医療機器として届け出されている次世代シーケンサのIon PGM Dxシステムを中心に解析しますが、パネル開発には解析能力が優れたIon GeneStudio

S5 システムを使っています。Ion PGM

Dxシステムと同じ原理で測定するので、開発研究から臨床へのトランスレーションもスムーズです。この研究は臨床に役立つとともに、患者さんのデータが増えていくことで疾患の本質が見えてきます。それは幅広い基礎研究の広がりにもつながります。遺伝性疾患にはこれまで光の当たらなかった希少難病が含まれますが、正確な遺伝学的診断に基づきデータを集積していけば、将来的に治療法開発への大きなパワーにもなるはず」と古庄氏は研究の将来を見つめます。

古庄知己 氏(信州大学医学部遺伝医学教室・教授、信州大学医学部附属病院遺伝子医療研究センター・センター長)山口智美 氏(信州大学医学部附属病院遺伝子医療研究センター・助教)

70種類を超える遺伝性疾患の原因遺伝子を遺伝子パネルで効率よく解析基礎研究と臨床の橋渡しを次世代シーケンサIon GeneStudio S5システムがサポート

「20年に亘り、遺伝性結合組織疾患に対する探索的研究と臨床に携わり、この疾患に限らず臨床に役立つ遺伝性疾患の原因遺伝子を効率よく同定するマルチ遺伝子検査パネルの開発を手掛けてきました。信州大学遺伝子研究センターは、診療科横断的な遺伝子医療部門であり、医学部遺伝医学教室と連携しつつ、丁寧な遺伝カウンセリングと最先端の遺伝学的解析を駆使することで、遺伝性・先天性疾患を持つ方やその家族の方への包括的支援を行っています」と古庄知己氏は語ります。信州大学医学部附属病院は、遺伝性疾患の臨床における日本での有数の拠点であり、古庄氏らが新たな病型を報告したエーラス・ダンロス症候群では世界的にも中心的役割を担っています。遺伝性結合組織疾患研究で世界をリードする古庄氏と共同研究者の山口智美氏に、次世代シーケンサIon

GeneStudio™ S5とIon AmpliSeq™

Panelを活用した疾患遺伝子解析と遺伝子検査パネルの開発について伺いました。

エーラス・ダンロス症候群の筋拘縮型(古庄型)病型の発見

「筋肉、骨、軟骨、靱帯、腱などの結合組織に加え、皮膚や内臓などにも含まれる結合組織は、本来、重さや張力に耐えられるだけの強さを備えていますが、その機能に問題が生じると、200種類以上の多様な結合組織関連疾患を発病します。私はその中で、エーラス-ダンロス症候群とマルファン症候群を主に研究しています。エーラス-ダンロス症候群は、皮膚、関節の過伸展、各種組織の脆弱性を特徴とする遺伝性疾患であり、古典型、関節型、血管型など、6つの大きな病型に分類され、コラーゲン分子やその成熟に必要な酵素の遺伝子の変異が

原因でした(現在は13病型に分類)。私はこの疾患の患者さん数名に出会う中で、これまでとは異なる病型に気づき、研究を進めて2010年に新たに筋拘縮型(古庄型)の原因遺伝子としてCHST14を同定しました。この遺伝子はデルマタン4-O-硫酸基転移酵素1という酵素をコードしており、この酵素の機能喪失により、全身のデルマタン硫酸が欠損し、これによりコラーゲン線維の適切な集合状態が崩れます」と古庄氏は説明します。

遺伝子パネルの開発

「2011年度に、信州大学の基盤研究支援センターに次世代シーケンサのIon PGMシステムが設置され、山口さんが研究グループに加わったことで遺伝子解析研究が加速度的に進みました。エーラス-ダンロス症候群には多くの病型があり原因遺伝子の数は多いのですが、次世代シーケンサとIon AmpliSeq パネルを利用すると、この症候群を含む結合組織疾患パネルとして17遺伝子を一度に解析できました。しかも新たな病型の原因遺伝子の追加や、解析する必要がない遺伝子の削除が簡単なので柔軟に研究を進められました」と古庄氏。「また2010年には、13種類の遺伝性疾患の遺伝学的検査が保険収載されることになり、2年毎の更新で保険収載される遺伝子数が増え、2018年には約70疾患が保険収載されました。しかし、当時国内にはこうした検査を実施する施設がなく、保険収載された遺伝性疾患を中心とした、臨床現場で有用な遺伝性疾患の原因遺伝子を搭載した臨床的カスタムパネルの開発にも取り組むことにしました」と続けます。「当初、保険収載遺伝学的検査は、代謝・免疫系、神経・循環器系、先天異常症候群に分割、3

0706

論文紹介

www.thermofisher.com/genestudiowww.thermofisher.com/primeflow

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iPS細胞を基盤にした治療法開発へ基礎研究から応用への橋渡し

iPSC-based Therapies: Bridging the gap from research to translation iPS細胞は、基礎生物学、細胞モデルの詳細な解析や細胞治療の研究を進めるツールとして、計り知れないポテンシャルで生物学分野に革新をもたらしています。山中伸弥教授が報告したこの画期的な技術は、成体の体細胞が再度多様な細胞に分化可能な多能性幹細胞に変換する能力を利用しています。この十年にわたり、iPS細胞から誘導した細胞が、創薬や薬剤スクリーニングに利用できることが実証されてきました。また、いくつの先進的なトライアルとして細胞治療や再生医療への応用も試みられています。2014年、初めての臨床的トライアルとして、加齢性黄斑変性症に対してiPS細胞から誘導された網膜上皮細胞を使う治療が実施されました。最近では、Fate Therapeutics社がiPS細胞から誘導したNK細胞を固形がんに対する汎用的な治療法とするクリニカルトライアルがFDAから承認されました。このような急速な進展により、基礎研究からトランスレーショナルへの円滑な移行をサポートするツールやプロトコールの必要性が増しています。

Uma LakshmipathyDirector, R&D for Cell & Gene Therapy, Thermo Fisher Scientific

彼女が率いるチームは、米国カリフォルニア州のカールスバッドを本境地として幹細胞を用いた基礎研究とトランスレーショナルリサーチに関するソリューション開発を中心的に行っています。

細胞製品の開発における課題は、細胞製品は製造工程から大きな影響を受けることであり、その製造工程が複雑なiPS細胞のワークフローであればなおさらのことです。たとえわずかな変化やずれでさえ、製品の安全性や有効性や品質に悪影響を与えます。そのような理由から、iPS細胞の製造に特化した高品質で目的に合致したツールや試薬への必要性が喫緊の課題となっています。さらにiPS細胞のマスターセルバンクやワーキングセルバンクの作製やその使用、臨床に用いるiPS細胞の品質評価のためにデザインされた網羅的な特性解析の開発が必要です(右図)。サーモフィッシャーサイエンティフィックは、このような課題

の解決のために、iPS細胞のマスターセルバンク作製や特性解析までの一貫したワークフローのソリューションを開発しています。最近ではInvitrogen™ CTS™ CytoTune™ 2.1*1の提供を開始しました。この製品は、臨床試験やトランスレーショナルリサーチに特化したはじめての市販のリプログラミングキットです。ドナー間の多様性を最小化することに最適化されたGibco™ CTS™ Essential 8™ 培地*2と併用することでゼノフリーなワークフローを実現します。さらにサーモフィッシャーサイエンティフィックは、以下の5つのアッセイを含む網羅的なパネル分析法を開発し、提供しています。

① PluriTest Analysis

高度にバリデーションされた機械学習モデルであり、網羅的遺伝子発現をベースに迅速に多能性を確認します。Appl ied Biosystms™

PrimeView™ Human Gene Expression Arrayで取得したデータを解析できます。

② Applied Biosystems™ TaqMan® hPSC ScoreCard™

93種類の遺伝子発現にフォーカスしたリアルタイムPCR用のパネルであり、シンプルに使えるクラウドベースのデータ解析ソフトウェアを利用して、三胚葉への分化能を評価します。

③ Applied Biosystems™ KaryoStat™ / KaryoStat™ HD

CNVやSNPプローブを使ってコピー数、変異、遺伝的モザイクをモニターでき、従来のGバンド解析と代替できます。

④ Ion Torrent™ Oncomine™ Comprehensive Assay v3

④ 次世代シーケンサを使ったマルチバイオマーカーアッセイです。NCI MATCH トライアルを含む数千のサンプルプロファイルを利用して、細胞内のがんホットスポットにおける変異の存在をレポートします。

⑤ Applied Biosystems™ AmpFLSTR™ Identifiler™ Plus PCR Amplification Kit

細胞の同一性を確認する認証用キットです。

*1 CTS CytoTune 2.1 : 臨床研究用のリプログラミングキットです。*2 CTS Essential 8 培地 : 成分が明確なヒト多能性幹細胞(PSC)用の培地です。フィーダーフリー、ゼノフリー条件下でPSCの成長と増殖に欠かせない8種類の必須成分のみで構成され、培養のスケールアップに柔軟に対応します。未確定成分や不純物、BSAなどのタンパク質を含まないので、培養のばらつきを最小限に抑え、一貫性の高い培養が行えます。

Gibco™ CTS™ ブランド製品シリーズは、品質マネジメントシステム規格ISO13485認証を取得した施設で製造され、製造方法や工程管理は米国のcGMPに準拠しています。分析証明書や原産地証明書などのトレーサビリティ文書も準備しています。

サーモフィッシャーサイエンティフィックでは、高品質な試薬やゼノフリーで明らかな成分で構成されたワークフロー、特性を網羅的に検証するアッセイ法を組み合わせたアプリケーションを提供しています。このような提案をとおして、細胞治療を見据えた基礎研究が臨床応用へ円滑に移行できるようにサポートすることを大きな目標としています。

■ 細胞治療法開発のためのiPS細胞用培地や試薬の詳細情報 www.thermofisher.com/stemcelltherapy

■ 治療用途の多能性幹細胞の製造に関する資料のダウンロード www.thermofisher.com/jp-celltherapy-wp

製品名 サイズ 製品番号 価格

CTS CytoTune-iPS 2.1 Sendai Reprogramming Kit 1キット A34546 ¥1,350,000

CTS Essential 8 培地 500 mL A2656101 ¥34,000

TaqMan hPSC ScoreCard Kit, Fast 96-well 2 x 96 ウェルプレート A15871 ¥99,900

TaqMan hPSC ScoreCard 解析受託サービス 1サンプル ー ¥60,000

KaryoStat Assay 解析受託サービス ー ー 問い合わせ

KaryoStat HD Assay 解析受託サービス ー ー 問い合わせ

Oncomine Comprehensive Assay v3C 32 サンプル A35806 問い合わせ

AmpFLSTR Identifiler Plus PCR Amplification Kit 100 反応 A26364 ¥330,000

トランスレーショナルリサーチを総合的にサポート

高品質のiPS細胞バンク作製への統合的アプローチ細胞製品開発のためのトータルソリューション

iPS細胞の作製と増殖

① CTS CytoTune-iPS 2.1 Sendai Reprogramming Kit ② Custom TaqMan Sendai Quantitation Assay (iPS細胞のフットプリント確認)

③ CTS Essential 8 Medium (多能性幹細胞用培地)

iPS細胞バンクの品質テスト

多能性の確認

④ PluriTest Analysis (マーカーの発現)⑤ TaqMan hPSC Scorecard Panel (分化能)⑥ KaryoStat 、KaryoStat HD Assays (カリオタイプ/ゲノムの安定性)

安全性

⑦ Oncomine Comprehensive Assay v3 (P53および他のがんのホットスポット)

⑧ AmpFLSTR Identifiler Plus PCR Amplification Kit (親細胞、 iPS細胞バンク、および最終的な細胞製品の認証)

iPS細胞

最終段階における品質管理

ドナー体細胞

細胞製品 分化した細胞

iPS細胞クローンの品質管理

フットプリントフリーのiPSCへのリプログラミング

マスターセルバンクからのリリーステスト

Page 6: No. · 2020. 12. 8. · P. 04 Axiom ジャポニカアレイ NEO P. 07 Ion GeneStudio S5 シリーズ P. 10 BenchStable 培地 P. 11 iBright FL1500 Imaging System / iBright CL1500

フレキシビリティーと便利さを追求したデザインにより室温での保存を可能にしたGibco™ BenchStable™ 培地は、研究室の貴重な冷蔵スペースを節約します。最も一般的に使用される基礎培地である、DMEM、DMEM/F-12、MEMおよびRPMI 1640を提供。BenchStable 培地はルーチンな細胞培養のために最適化されており、多くの一般的な細胞株において期待される形態および機能の維持が可能です。

● 室温で安定──冷蔵不要でいつでも使用できます。● フレキシブル──実験台でも冷蔵庫でも保存できます。● 使いやすい── 10%以上のFBSを添加するだけで現在使用中の培地と直接置き換えられます。

● 遮光性──培地ボトルは光曝露を低減するために保護包装しているので、ボトルをホイルで覆う必要はありません。

P O I N T

User's Voice

いつものウェスタンブロッティングをもっと簡単、パワフルに

iBright FL1500 Imaging System(化学発光・蛍光撮影装置)iBright CL1500 Imaging System(化学発光撮影装置)

Invitrogen™ iBright™ 1500 Imaging Systems シリーズは、従来の1000 シリーズで好評を博したタッチパネルによる簡単な操作性やSmartExposure技術による露光時間の自動算出機能はそのままに、蛍光感度※1やズーム機能を強化し(機械的ズーム2倍、デジタルズーム8倍)、より鮮明な画像を撮影します。ノーマライゼーション機能により、正確な定量解析をサポートします。※1 iBright FL1500 Imaging System を使用した場合

置群を比較することが多いので、その変化が分かりやすい露光時間を実験ごとに調整する必要もありますが、その時にもこの機能は便利ですね」と岡田氏。さらにメンブレンのゆがみを補正する機能を学会発表用や論文投稿用に活用し、今後、学内や共同研究先とのデータ共有にクラウド機能の応用を考えているそうです。

機能性食品を科学的に検証する

「私たちの研究の柱は、“生活の質”(QOL)の向上やWel l -be ingを目指し、食品の栄養性・嗜好性・恒常性維持を統合的に解析する『食品機能学』です。抗メタボに加え、脳認知機能活性化、身体ロコモ改善などに効果を持つ“次世代機能性食品”の科学的エビデンスの数々を産学連携型の共同研究によって取得・発信していくことを目指しています」と岡田氏は講座の目標と今後の展望を語ります。

岡田晋治 氏(東京大学大学院農学生命科学研究科「食品機能学」寄付講座 特任准教授)

筋肉を食べると筋肉が増えるメカニズムとは?タンパク質解析はiBright Imaging Systemで効率よく

「ラットの食餌を通常の餌から魚肉に変えると2、3日後には筋肉量の増加が認められ、1週間後にはその増加は明らかになります。通常の餌は、主に植物性タンパク質か牛乳に含まれるカゼインですが、魚のすり身など筋肉系のタンパク質を与えると筋肉量が短期間に増加します」と東京大学の岡田晋治氏は語ります。「このメカニズムを科学的に検証するためにトランスクリプトーム解析をベースに、遺伝子やタンパク質、そして組織レベルの研究を進めています」と続けます。岡田氏に、研究の概要やタンパク質解析に使用しているInvitrogen™ iBright™ Imaging

1000 Systemについて伺いました。

筋肉を食べると筋肉が増える?

「戦略的イノベーション創造プログラムという内閣府の研究プロジェクトに2014年から参加し、魚肉の機能性を調べています。共同で研究を進めている愛媛大学のチームはメタボリックシンドロームに関する研究の一環で、ラットに魚肉を与えると中性脂肪が減ることを見出し、その原因を探るため、体の各部分を測り、筋肉の重量が増えることを見出していました」。プロジェクトは2018年に終了しましたが、岡田氏は2019年4月から「食品機能学」寄付講座において、共同研究を継続しています。「高齢

者社会に移行する日本では、筋肉量が減少するロコモティブシンドロームは問題です。魚肉による筋肉の増加メカニズムを解明し、その治療法や予防法開発の糸口にできればと思っています。研究では、食餌による筋肉組織の変化を、最初にマイクロアレイで網羅的に遺伝子発現解析し、変化した遺伝子のタンパク質を解析したり、筋肉組織を免疫染色して比較しています。またモデル動物だけでなくヒトを対象にした栄養学やスポーツ関連の医学系研究室など10数箇所との共同研究を進めています」と岡田氏は語ります。

ウェスタンブロッティングの検出をストレスなく

「タンパク質のウェスタンブロッティング解析は条件が決まればルーチン作業的に行えますが、抗体やサンプルが変わると条件検討が必要です。以前は共通機器室の一般的な画像解析装置を使っていましたが、結果を早く知りたくて露光時間を短い間隔にすると目的のバンドが見えず、長くすると行き過ぎてしまうなど、何度もやり直していました。しかしiBrightシステムのSmartExposure™ 機能を使えば、わずか数秒で推奨する露光時間と予想画像が提示されるので、条件検討に手間取りません。私たちの実験では、コントロールと処

製品名 サイズ 製品番号 価格

iBright FL1500 Imaging System(化学発光・蛍光撮影装置)、設置・基本取扱説明付 1 式 IBFL1500 ¥3,980,000

iBright CL1500 Imaging System(化学発光撮影装置)、設置・基本取扱説明付 1 式 IBCL1500 ¥2,980,000

NEW!

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BenchStable 培地

細胞培養の柔軟性と利便性のために

いつもの細胞培養をサポート 遮光ボックスで培地の劣化を軽減室温保管後も従来培地と同等の性能を維持します。BenchStable培地にはGibco™

GlutaMAX™ Supplementが含まれ、通常の細胞培養に最適化されています。

露光により培地のパフォーマンスは徐々に損なわれてしまいますが(図2)、BenchStable培地には遮光ボックスが付属しているので(図3)、この中で保管すれば露光の影響を軽減できます。

製品名 サイズ 製品番号 価格

BenchStable DMEM, with GlutaMAX Supplement 500 mL A4192101 ¥3,000 10 X 500 mL A4192102 ¥24,400

BenchStable DMEM/F-12, with GlutaMAX Supplement 500 mL A4192001 ¥4,100 10 X 500 mL A4192002 ¥34,300

BenchStable MEM, with GlutaMAX Supplement 500 mL A4192201 ¥3,000 10 X 500 mL A4192202 ¥24,500

BenchStable RPMI 1640, with GlutaMAX Supplement 500 mL A4192301 ¥3,000 10 X 500 mL A4192302 ¥24,400

図3 各種BenchStable培地と遮光ボックスBenchStable培地は、室温でも低温でも遮光ボックス内で保管することで露光による培地パフォーマンスの低下を防げます。

図2 露光による培地パフォーマンスの変化標準的な実験室の光にさらされたDMEM/F-12 (製品番号 10565018)に10% FBS添加後、4週間にわたってHEK293細胞培養に使用しました。25日間の培地露光後、HEK293細胞の成長率は大幅に低下しました(上グラフ)。下図は7継代目のHEK293細胞を播種後95時間の画像です。 

Light-protected 95 h Light-exposed 95 h

図1 BenchStable培地はいつもの細胞培養をサポートSH-SY5Y神経芽細胞腫をDMEM / F-12培地(10565018)、およびBenchStable DMEM / F-12培地(A4192001)で培養しました(ともに10%FBS添加)。15継代後でも、SH-SY5Y細胞は従来培地と同等な形態を示しました。

HEK293DMEM/F-12

Light-protected

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www.thermofisher.com/ibrightwww.thermofisher.com/benchstable

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Qubit 4Fluorometer

Qubit FlexFluorometer

Othermanufacturer

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Other supplier

8サンプル同時測定で、核酸・タンパク質定量を迅速に!Qubit Flex Fluorometer

さらに便利になったInvitrogen™ Qubit™ Flex Fluorometerは、8連チューブで、最大8サンプルを同時測定。次世代シーケンサーやリアルタイム PCRなど、よりスループットが求められる場面で、“Flex”に活躍するベンチトップ型の核酸やタンパク質用の定量装置です。

迅速測定!

操作性、利便性に優れたソフトウェア 正確で精度よく定量

8サンプルで測定するので、サンプル数が増えると既存の1サンプル測定装置よりも測定時間を約半分に短縮できます。

日本語表示機能も搭載した大きなタッチパネル画面なので操作が簡単です。また、使用するアッセイ量やモル濃度の変換など、便利な計算機能を備え、最適なQubit アッセイを自由に利用できます。

Qubit シリーズは、“正確さ”と“精度”において、高い信頼を得ているプラットフォームです。 Qubit Flex Fluorometerは、その技術を継承し、エラーとばらつきが少ない高い品質のデータを提供します。

P O I N T

図1 1-96サンプルの測定にかかる時間をQubit Flex Fluorometerと既存機種で比較Qubit Flex Fluorometerと従来装置(Qubit 4 Fluorometer)、および他社製品で核酸定量を行い、測定時間を比較しました。Qubit Flex Fluorometerによる時間短縮効果は、8サンプル以降に見られ、さらにサンプルが増えるに従い最高で50%短縮されました。

図3 Qubit Flex Fluorometer の便利な計算機能左はAssay Range Calculatorの画面です。最も正確に定量できるようにコアとなるサンプル濃度レンジや高濃度側と低濃度側への拡張範囲を表示します。右はNormalization Calculatorの画面です。測定したサンプルを同一濃度に調製するために、必要なサンプル量とバッファ量を計算します。

図2 Qubit プラットフォームの正確さと精度Qubit 1X dsDNA HS Assay Kit と Qubit dsDNA BR Assay Kitを用いて、8種類の濃度の DNA サンプル(HS キットでは、0.1, 1, 5, 10 ng/µL、BR キットでは、2, 20, 50, 100 ng/µL)を Qubit 4 、Qubit Flex Fluorometer、および 他社製品で測定し、その測定誤差(%)を比較しました。

製品名 サイズ 製品番号 価格

Qubit Flex Fluorometer 1 式 QFlex01-S3 ¥740,000構成品: Qubit Flex Fluorometer、USB drive and USB cable、Wi-Fi Dongle (3年保証)

Qubit Flex Verification Assay Kit

Qubit Flex Assay Tubes Strips 125 本 Q33252 ¥24,800

Qubit Flex Assay Reservoirs 各100 個 Q33253 ¥23,900

Qubit Flex Verification Assay Kit 1 キット Q33254 ¥9,800

NEW!

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User's Voice

原虫もまた同様の戦術をもっていることが、荒瀬氏らの研究によって明らかになりました。「マラリア原虫が赤血球に感染すると、赤血球の表面でRIFINというタンパク質が発現します。RIFINが、免疫細胞の抑制化受容体であるLILRB1やLAIR1に結合することで免疫応答を抑制することを報告しました。マラリアに対しては現在有効なワクチンが存在しないだけでなく、一度感染しても十分な免疫が獲得されずに何度も感染してしまいます。マラリア原虫は、複数の抑制化受容体を標的にして免疫抑制を行なっていると考えています」と荒瀬氏は話します。

受容体とリガンドの複雑な相互作用を解明する

研究室では、抑制化受容体や活性化受容体とリガンドの相互作用を解析するうえで、フローサイトメトリーを日常的に使用しているそうです。「共同機器室にInvi trogen™ Attune™ NxT Flow

Cytometerがありますが、研究室にも1台導入しました。オートサンプラーを使って96ウェルプレートで測定しています。細胞の染色も同じプレート上で行っています。4プレートでも3時間程度で測定できるため、効率よく研究が進みます」(荒瀬氏)。相反する機能を有する受容体とリガンドが関与する複雑な免疫システムの分子機構が解明されることで、新たなワクチンや治療薬の開発に貢献できると期待されます。また抑制性受容体はがんの免疫回避にも関与しているため、感染症ばかりでなく、がん研究への進展も期待できそうです。

荒瀬 尚 氏(大阪大学 微生物学研究所 免疫フロンティア研究センター 免疫化学研究室 教授)

免疫システムと病原体との攻防の分子機構を明らかにするAttune NxT Flow Cytometerとオートサンプラーで多サンプルを効率よく解析

「NK細胞やマクロファージは、生体防御の最前線に位置する自然免疫の中心であり、外部から侵入したウイルスや細菌などの病原体を、受容体を介していち早く認知して排除します。自然免疫は、獲得免疫とは異なり非特異的に異物を排除するため、自己の細胞に対する免疫応答は抑制化受容体を介して的確に抑制しています」と大阪大学の荒瀬尚氏は話します。「ところがある種の病原体は、この抑制化受容体を利用して積極的に免疫反応から逃れていることがわかってきました。興味深いことに抑制化受容体には、相同性が非常に高い活性化受容体が存在し、ヒトやマウスのゲノムにはそれらがクラスターを形成して何セットも並んでいます。この抑制化受容体と活性化受容体からなるペア型受容体は、病原体と私たちの生体防御の攻防の歴史から生じたのかもしれません」と続けます。荒瀬氏に研究の概要と日々の実験に利用するフローサイトメーターの活用について伺いました。

相反する機能を有する2種類の受容体

「例えば持続感染するサイトメガロウイルスは、マウスにおいて感染細胞にm157と

いうニセのMHC分子を発現させてNK細胞の抑制化受容体Ly49に認識させることで、免疫反応を回避しています。ところがm157に対する活性化受容体Ly49を有するマウスはサイトメガロウイルスに対して感染抵抗性を示します」と荒瀬氏はウイルスと免疫システムの攻防の一端を説明します。「細胞外領域が抑制化受容体とアミノ酸レベルで90%という高いホモロジーを有する活性受容体はなぜ存在するのでしょうか?そもそも自己免疫を回避するためだけであれば、抑制化受容体だけあれば済むはずです」と疑問を呈します。「私たちは、様々なペア型受容体に着目し、解析を進めています。多くのペア型受容体は種間で大きく異なりますが、これまでヒトやマウスのみに認められる受容体は、免疫の普遍的機構に関わるとは考えられていませんでした。しかし多種多様な微生物との長期にわたる相互作用の中で、宿主が生き残るために遺伝子重複を起点に似た様なリガンドを認識しつつ、相反する機能を有する受容体が進化してきたと考えると、ペア型受容体の存在を合理的に説明できます」と荒瀬氏は仮説を説明します。受容体は異なっても、種を越えて共通のシステムを利用するということは、生体防御における重要性を示しています。

免疫システムから逃れるマラリア原虫

免疫細胞の抑制化受容体を利用して免疫応答から逃れる戦術を使うのは、ウイルスだけではありません。世界三大感染症の一つであるマラリアを引き起こすマラリア

Attune NxT Flow Cytometer

使いやすくコンパクトなフローサイトメーターInvitrogen™ Attune™ NxT Flow Cytometerは、最大4レーザーで14色検出可能なフローサイトメーターです。アコースティックフォーカシング技術により高流量で測定でき、レアイベントや全血サンプルを感度よく解析します。本体サイズはコンパクトで、しかも廃液が少ないので、限られたスペースの研究室にも設置できます。詳細はこちらから → www.thermofisher.com/attune

www.thermofisher.com/qubitflex

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2014年のTIMES誌「最も世界に影響を与えた人物」に選出された老化研究の第一人者David A. Sinclair博士のもと、世界一の創薬バイオテックハブであるボストンで4年半学んだ早野元詞氏。老化研究の地平を果敢に切り拓きながら、東京にも、研究成果を社会に実装しやすいビジネスの「エコシステム」を根付かせようと、いくつものしかけを展開しています。「世界を変革する研究をし、きちんと社会に届けたい」と、多様な研究者、医師、企業人を繋ぐ若手の反分野研究者の勉強会(一般社団法人ASG-Keio)を定期開催し、自らもベンチャーで医療機器や創薬へ携わりロールモデルを示す一方、社会人向けのアントレプレナー大学院コースの構築に尽力するなど、後進の路もひらいているのです。

トランスレーショナルリサーチの本場アメリカへ早野氏が老化に興味を抱いたのは学部生の時。30才前後になると突如老化が始まるウェルナー症候群という治療法のない難病との出合いがきっかけでした。DNA複製や修復に関与するヘリケースが原因遺伝子と知り、DNA

複製研究をリードしていた東京都医学総合研究所 (当時、東京都臨床医学総合研究所 ) /東京大学の正井久雄博士の研究室に所属。7年にわたり分裂酵母を使用した遺伝学的手法やChIP(クロマチン免疫沈降)の腕を磨きました。「次第に、最新の知見を医療現場に届けるトランスレーショショナルリサーチこそ目指す道だと考えが固まっていきました。その理想像にぴたり一致したのが、当時42才でHarvard Medical School教授のDavid A.

Sinclair博士でした。赤ワインに含まれるポリフェノールの一種レスベラトロールが老化を抑止することを突き止め、製薬ベンチャーを興して大成功していたのです。1年かけて留学の意志を伝え続け、ようやく2013年4月に渡米しました」と決心の固さを振り返ります。

ヒストン修飾が老化予測の指標に留学したボストンには老化研究と創薬開発、

社会実装の活力がみなぎっていました。1つの駅の間に投資会社、製薬企業、アクセラレーション施設、大学が集約し、業種の垣根を超えた連携を促進する環境に様々な経験をもった人々が行きかい、深いネットワークと人材のプールが構築されていたのです。日々、反分野的イノベーションが起きていました。「挑戦を称賛する文化、成果の実装を当然とする空気に身を置き、異なる背景の人々と交わるうちに自分の目標が明確化していきました。Davidの教え『世界を変えるアイデアを持つ』は特に心に刻まれ、個人では成し得ないビッグピクチャーを描くように。自分にない知を持つ人々とのネットワークを求めるようになりました」と自身の変化を語ります。

研究では、ヒストンの修飾パターンが老化の原因となり、また将来起こる老化現象の指標となることを突き止めました。当時、DNA

損傷がエピゲノム修飾因子Sirtuinのゲノム上の局在パターンを変え、老化関連遺伝子群が脱制御されることで、老化が誘導されることが培養細胞レベルで知られていました。Davidのラボではこの現象を in vivoで確認するために、制限酵素 I -Ppo Iの発現のON/

OFFによって特定の箇所にゲノムDNA損傷を誘導できるマウス( ICEマウス:Inducib le

changes to the epigenome)が構築されていました。「試しに3週間DNA損傷ストレスを与えました。すると1ケ月後にはすべての損傷が修復されているにも関わらず、白内障・骨粗鬆症の発症や記憶・筋肉・視力の低下など、老化が加速したのです。ChIPで調べると、ヒストンやDNA修飾状況から、将来起こる老化現象を予測できることが分かりました(Hayano

et al., 2019; Jae et al., 2019)*。老化の定量的な診断、予防、エピゲノム編集技術を使った治療への大きな一歩です」と目を輝かせます。

老化を制御し、世界を変える帰国後は、慶應義塾大学医学部にてICEモデルを使った新分野を築いています。老化した状況を人工的に作り、そこに老化関連疾患を誘導すれば、生理的な状況を忠実に再現でき、薬剤開発に役立ちます。また、組織特異的に老化を誘導すれば、特定の老化現象を引き起こす原因組織や細胞を同定できます。「老化は定義自体が曖昧で、ゲノムの不安定性、エピゲノムの脱制御、細胞の老化など多くの現象が影響しあいます。もし、1つの薬で老化全体を制御できたら画期的です。人類が老化を制御できたとき、社会は、私たちの人生観は、どう変わるのでしょう」と変化を想像します。「そのためには、業界や分野の枠を超えて風通しを良くしたり、リスクを冒して研究シーズに投資できて海外の市場に持っていける人材を育成したりと、関係者が共存共栄できる環境づくりが必要です。ボストンは20年かけて何もない所からバイオテックハブを生みました。東京もできるはず。私は研究者としてシーズを生み出し続け、信頼出来る仲間と共に社会実装していきたい。また、そうすることで公的資金を活用して基礎研究を行い、研究シーズをベンチャーとして成長させ、得られた資金を最終的に基礎研究に使用する。そういった研究者の自立やキャリアの多様性にも貢献したいと思います」。ビッグピクチャーを描き、世界を変革する老化研究の社会実装を力強く牽引していきます。

2005年熊本大学理学部生物科学科卒業後、11年東京大学大学院新領域創成科学研究科にて博士号を取得。10年より東京都医学総合研究所研究員、日本学術振興会海外特別研究員、Human Frontier Science Program Fellow、ハーバード大学医学部客員研究員などを経て、17年から慶應義塾大学特任講師、株式会社坪田ラボのChief Scientific officerを務める。一般社団法人ASG-Keio代表理事、特定非営利活動法人ケイロン・イニシアチブ 理事、一般社団法人海外日本人研究者ネットワーク 理事、UJAW.Inc (NPO in USA) board memberなどで研究推進や研究者および研究者家族の支援も行なっている。

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NEXT Pursuit

老化研究の成果を社会へ、そして研究者の自立に向けて早野 元詞 氏(慶應義塾大学医学部 眼科学教室・特任講師)

ライフサイエンスの未来に挑む人

*ICEマウスの論文はバイオアーカイブで公表し、同時に査読中です。in vivo https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3466338 (bioRxiv) https://www.biorxiv.org/content/10.1101/808659v1in vitro https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3461780 (bioRxiv) https://www.biorxiv.org/content/10.1101/808642v1

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和久 剛 氏(同志社大学 生命医科学部 医生命システム学科 遺伝情報研究室 助教) 成冨 純子 氏(同志社大学 生命医科学部 医生命システム学科)

シーケンス解析データの受け取りをクラウドで効率よくSeqStudio Genetic Analyzerの解析結果を迅速に確認

同志社大学生命医科学部医生命システム学科の和久剛氏は、同学科共同機器室の管理担当者の一人としてフローサイトメトリーやDNAマイクロアレイ、DNA

シーケンサなどの解析機器の管理を行なっています。Applied Biosystems™

SeqStudio™ Genetic Analyzerを共同機器室に導入した際には、クラウドを活用したデータの受け渡しにメリットを感じたと話します。機器の使用感やクラウド機能の利点などについて話を伺いました。

研究機関としてシーケンサは必要

2年前、SeqStudio Genetic Analyzerの導入時には、シーケンサを所有せずに外注することも検討されたそうです。しかし和久氏は、「研究科の先生方と話し合い、シーケンシングという分子生物学の基本技術を自分たちのところで行うことは、研究機関として必要だという結論に至りました。また教育機関として、学部生への授業で実物を見せることも重要だと考えました」と、購入の動機を話します。実際に機器を扱うのは、オペレーターである成冨純子氏。解析

の他の業務でメールする時間が取れない場合でも、依頼者はすぐに解析データにアクセスできます。例えばプラスミドのシーケンスを確認するステップで、オペレーターの帰宅後でもクラウドを介して解析データを確認して問題がなければ、当日中に大腸菌の培養の準備を進めるなど、次の実験に移ることができます。依頼者の要望に応じて、メールでの受け取りか、クラウドでの受け取りか、受け取り方法の選択肢が1つ増えたことが重要だと考えています」と、クラウド活用が利便性や実験の効率化につながっていると話します。和久氏は転写やタンパク質分解の異常とがん増悪との関連を主な研究テーマとしており、自身はクラウドでのデータ受け取りをよく利用しているとのこと。「私個人としてはクラウドでの受け取りが便利で、以前の方法には戻れませんね」(和久氏)。

クラウド活用にはネットワーク整備に留意

現在はクラウドにアクセスするためのアカウントとパスワードを、一つの研究室につき一つを割り当てて管理しているとのこと。和久氏は、「共通機器であれば、自分たちの研究室からクラウド上のデータにアクセスするのが便利だと思います。ただ、研究科が異なるとネットワーク環境が変わる場合もあり、その際にはクラウドへのアクセス制限が問題になるかもしれません」と、学内のネットワーク環境の整備が必要であることを指摘するものの、クラウドによって時間や場所を問わないデータの受け渡しに大きな利点を感じている様子です。

対象のサンプルとプライマーを受け取り、エタノール沈殿やシーケンス反応、精製など必要な処理をしてから機器にセットします。成冨氏は、「オールインワンのカートリッジ方式なのでポリマー交換やバッファ補充などが不要で、メンテナンスにかける時間が減りました。解析塩基数の自由度が高いことやラン時間が短いため、午前中にサンプルを受け取れば、当日中に解析を終えて結果を依頼者に返せます」と、扱いやすさと解析時間の短さを指摘します。和久氏も、「以前所有していた3130xl Genetic

Analyzerは16本キャピラリだったので16

サンプルが集まるまで時間がかかったり、サンプル数が集まらない場合はランニングコストが割高になるのを承知でランすることもありました。SeqStudio Genetic

Analyzerは4本キャピラリなので4サンプルあればランでき、小回りが効きますね。大量解析でなければ、小さいスケールのほうがランニングコストを抑えられ、共通機器として適します」と話します。

クラウドで解析データを受け取るメリット

以前は解析データの受け渡しは、成冨氏がメールに添付して送るのみでした。SeqStudio Genetic Analyzerの導入を機に、クラウドによるデータの受け渡しも可能としました。和久氏は、「依頼者がクラウドによるデータの受け取りを希望する場合、シーケンシングが終わるとクラウド上に解析データが自動的に保存され、各研究室のパソコンからアクセスできるようにしています。オペレーターが不在だったり、そ

スピーディーで使いやすい4本キャピラリのDNAシーケンサSeqStudio Genetic Analyzer

Applied Biosystems™ SeqStudio™ Genetic Analyzerは、簡単なクリックだけで、サンガーシーケンス解析とフラグメント解析を実施できるキャピラリシーケンサです。クラウド利用で解析や情報共有も簡単です。

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