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2016131日 NHKカルチャー梅田教室 惑星科学最前線 ~太陽系誕生の謎~ 京都大学 宇宙物理学教室 佐々木貴教
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NHK カルチャー講義(第1回)

Feb 18, 2017

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Page 1: NHK カルチャー講義(第1回)

2016年1月31日 NHKカルチャー梅田教室

惑星科学最前線  ~太陽系誕生の謎~

京都大学 宇宙物理学教室 佐々木貴教

Page 2: NHK カルチャー講義(第1回)

自己紹介❖ 佐々木 貴教(ささき たかのり)

❖ 京都大学 大学院理学研究科 物理学・宇宙物理学専攻宇宙物理学教室 助教

❖ 2008年3月に東京大学で学位を取得

❖ 専門は “惑星の形成と進化” の理論研究 惑星系はどのようにして作られるのか 惑星系はどのように進化していくのか  我々は何処から来て何処へ行くのか? 生命を宿す “第二の地球” は存在するか?

(c) NASA

Page 3: NHK カルチャー講義(第1回)

講座の内容

✤ 現在の太陽系の姿 8つの惑星とその衛星、そして無数の小天体たち

✤ 太陽系形成論のレビュー 標準理論(京都モデル)の概要とその拡張の歴史

✤ 系外惑星の発見、そして汎惑星形成理論へ  多様な惑星系の作り方;第二の地球は存在するか?

Page 4: NHK カルチャー講義(第1回)

講座の内容

✤ 現在の太陽系の姿 8つの惑星とその衛星、そして無数の小天体たち

✤ 太陽系形成論のレビュー 標準理論(京都モデル)の概要とその拡張の歴史

✤ 系外惑星の発見、そして汎惑星形成理論へ  多様な惑星系の作り方;第二の地球は存在するか?

Page 5: NHK カルチャー講義(第1回)

太陽系の構成メンバーの紹介

Page 6: NHK カルチャー講義(第1回)

太陽系の構成メンバー

地球型惑星   水星   金星   地球   火星

巨大ガス惑星    木星    土星

巨大氷惑星   天王星   海王星

小天体(小惑星, 太陽系外縁天体, オールトの雲)

(c) ikachi.org

Page 7: NHK カルチャー講義(第1回)

各天体の軌道

隕石の母天体短周期彗星の巣

(c) wakatsuki

Page 8: NHK カルチャー講義(第1回)

さらに遠くまで広がる太陽系

「オールトの雲」

長周期彗星の巣

=天文単位(AU) 太陽から地球までの距離 (約1億5000万km)

(c) http://kahaku.go.jp

Page 9: NHK カルチャー講義(第1回)

各天体の特徴のまとめ (前編)

Page 10: NHK カルチャー講義(第1回)

太陽系の構成メンバー

地球型惑星   水星   金星   地球   火星

巨大ガス惑星    木星    土星

巨大氷惑星   天王星   海王星

小天体(小惑星, 太陽系外縁天体, オールトの雲)

(c) ikachi.org

Page 11: NHK カルチャー講義(第1回)

水星

(c) Wikipedia

Page 12: NHK カルチャー講義(第1回)

水星・太陽系で最も小さな惑星 ・太陽からの距離:0.38AU ・半径:2440km(地球の0.38倍) ・質量:3.3×1023kg(地球の0.055倍) ・温度:-183℃(夜)~427℃(昼) ・月に似たクレーターに覆われた地形 ・巨大な金属核を持っている ・磁場を持っている(成因は未だ不明)

Page 13: NHK カルチャー講義(第1回)

水星のクレーター 月のクレーター

クレーター:隕石の衝突によって作られる凹状の地形

水星の表面地形

(c) NASA (c) Takayuki Yoshida

Page 14: NHK カルチャー講義(第1回)

金星

(c) Wikipedia

Page 15: NHK カルチャー講義(第1回)

金星・太陽からの距離:0.723AU ・半径:6052km(地球の0.95倍) ・質量:4.9×1024kg(地球の0.815倍) ・温度と気圧:460℃, 90気圧 ・大気成分:二酸化炭素96.5%, 窒素3.5%   → 強烈な温室効果が働いている ・スーパーローテーションという強い風 ・自転の向きが他の惑星とは逆回転

Page 16: NHK カルチャー講義(第1回)

金星大気のスーパーローテーション

4日で金星を一周する高速の風が吹いている (風速 360km/h:自転の約60倍の速度)

原因は未だ解明されておらず, 金星の謎の一つ

(c) JAXA

Page 17: NHK カルチャー講義(第1回)

地球

(c) Wikipedia

Page 18: NHK カルチャー講義(第1回)

地球

・太陽からの距離:1億4960万km(1AU) ・半径と質量:6378km, 6.0×1024kg ・大気成分:窒素78%, 酸素21% ・太陽系で唯一プレートテクトニクスが存在 ・磁場を持っている(→オーロラが存在)・太陽系で唯一地表面に液体の水を持つ ・太陽系で(おそらく)唯一生命が存在

Page 19: NHK カルチャー講義(第1回)

地球の内部構造

内核(固体)

外核(液体)

下部マントル上部マントル地殻地表

Fe + Ni の合金}

}かんらん岩, 輝石

}玄武岩, 花崗岩

地表:複数のプレートが存在 (c) Wikipedia

(c) Wikipedia

Page 20: NHK カルチャー講義(第1回)

地球の海水量 = 0.023wt%

(c) USGS

Page 21: NHK カルチャー講義(第1回)

月・人類が降り立った唯一の地球外天体 ・地球からの距離:38万4400km ・半径:1737km(地球の0.27倍) ・質量:7.3×1022kg(地球の0.012倍) ・地球に常に同じ面を向けている ・表面は無数のクレーターに覆われている

表 裏 (c) Wikipedia (c) Takayuki Yoshida

Page 22: NHK カルチャー講義(第1回)

月探査機「かぐや」

2007年9月 打ち上げ 2007年10月 月周回軌道へ投入 2009年6月 運用終了・衛星本体は月へ落下

月の詳細なデータや高解像度の画像・動画を取得

(c) JAXA

Page 23: NHK カルチャー講義(第1回)
Page 24: NHK カルチャー講義(第1回)

火星

(c) Wikipedia

Page 25: NHK カルチャー講義(第1回)

火星・太陽からの距離:1.52AU ・半径:3394km(地球の0.53倍) ・質量:6.4×1023kg(地球の0.11倍) ・温度と気圧:-63℃, 0.006気圧 ・大気成分:二酸化炭素95%, 窒素3% ・水と二酸化炭素の氷から成る極冠 ・南北半球で大きく異なる地形の特徴 ・過去に水が流れたと思われる地形がある

Page 26: NHK カルチャー講義(第1回)

火星の風景

(c) NASA

Page 27: NHK カルチャー講義(第1回)

火星の南北非対称地形・極冠

南極 北極

(c) NASA

Page 28: NHK カルチャー講義(第1回)

過去に水が流れた跡?

(c) NASA

Page 29: NHK カルチャー講義(第1回)

火星には原始生命が存在した?

生物の痕跡!?

1996年8月 火星隕石中の原始生命体の痕跡が       科学雑誌「Science」に掲載される

様々な議論が行われてきたが、未だ結論は出ず

(c) NASA

(c) Wikipedia

Page 30: NHK カルチャー講義(第1回)

Break:太陽系第9惑星

Page 31: NHK カルチャー講義(第1回)

水金地火木土天海冥

(c) NASA

Page 32: NHK カルチャー講義(第1回)

水金地火木土天海冥X

2006年8月24日 国際天文学連合 (IAU) 総会で「惑星の定義」を決定  → 冥王星が惑星から外れ, 準惑星となる

(c) IAU

Page 33: NHK カルチャー講義(第1回)

冥王星より大きな天体の発見

2005年 冥王星より大きな天体 2003UB313 (エリス) が発見される

2400

第10惑星!?

「惑星の定義」を明確にしよう!

(c) Frank Bertoldi

Page 34: NHK カルチャー講義(第1回)

① ほぼ球形である ② 太陽の周りを回り, かつ恒星でも衛星でもない ③ その軌道周辺で他の天体を一掃している

冥王星, カロン, エリス, ケレスは ③ の条件を満たしていない

準惑星(Dwarf Planet)① ほぼ球形である ② 太陽の周りを回り, かつ恒星, 惑星, 衛星ではない ③ その軌道周辺に他の天体が存在している

新しい「惑星の定義」

Page 35: NHK カルチャー講義(第1回)

8つの惑星と3つの準惑星

惑星

準惑星

水 金 地 火 木 土 天 海

冥王星 エリス ケレス マケマケ(2008年7月)

ハウメア(2008年9月)

=5 (今後も増える可能性あり)

(c) Wikipedia, NASA

Page 36: NHK カルチャー講義(第1回)

(c) Yomiuri Online

Page 37: NHK カルチャー講義(第1回)

各天体の特徴のまとめ (後編)

Page 38: NHK カルチャー講義(第1回)

太陽系の構成メンバー

地球型惑星   水星   金星   地球   火星

巨大ガス惑星    木星    土星

巨大氷惑星   天王星   海王星

小天体(小惑星, 太陽系外縁天体, オールトの雲)

(c) ikachi.org

Page 39: NHK カルチャー講義(第1回)

木星

(c) Wikipedia

Page 40: NHK カルチャー講義(第1回)

木星・太陽系で最も大きな惑星 ・太陽からの距離:5.2AU ・半径:71492km(地球の11.2倍) ・質量:1.9×1027kg(地球の318倍) ・主に水素とヘリウムから成るガス惑星 ・表面に大きな渦(大赤斑)が見られる ・4つの大きな衛星(ガリレオ衛星)を持つ ・強力な磁場を持つ

Page 41: NHK カルチャー講義(第1回)

刻々と変化する大赤斑

地球2~3個分 高気圧性の渦

350年以上 存在している

(c) Wikipedia

(c) NASA

Page 42: NHK カルチャー講義(第1回)

ガリレオ衛星

イオ

エウロパ

ガニメデ

カリスト(c) Wikipedia

Galileo Galilei

ガリレオ・ガリレイ (1564~1642)

Page 43: NHK カルチャー講義(第1回)

イオには活発な火山活動が存在

木星や他のガリレオ衛星からの 潮汐力がエネルギー源か?

(c) Wikipedia

Page 44: NHK カルチャー講義(第1回)

エウロパには地球外生命の可能性?

内部に液体(状)の水を持つ

生命が存在するかも!?

表面の氷には 無数のひび割れが存在

(c) Wikipedia

(c) NASA

Page 45: NHK カルチャー講義(第1回)

外側の巨大な2衛星

半径:2631km 太陽系最大の衛星

半径:2400km 内部が未分化な衛星

ガニメデ カリスト

(c) Wikipedia

Page 46: NHK カルチャー講義(第1回)

土星

(c) Wikipedia

Page 47: NHK カルチャー講義(第1回)

土星・太陽からの距離:9.6AU ・半径:60268km(地球の9.4倍) ・質量:5.7×1026kg(地球の95倍) ・主に水素とヘリウムから成るガス惑星 ・太陽系で最も密度が小さい惑星 ・明確に見える環(リング)を持つ (※他の巨大惑星も薄い環を持っている) ・巨大な衛星タイタンを持つ

Page 48: NHK カルチャー講義(第1回)

土星の環(リング)

発見されている環(内側から順に)D環, C環, B環, A環, F環,  ヤヌス / エピメテウス環, G環, E環, パレネ環

(c) Wikipedia

環は氷と塵の粒子から成る

土星の潮汐力 > 自己重力 のために破壊が卓越する

(c) Wikipedia

Page 49: NHK カルチャー講義(第1回)

土星探査機「カッシーニ」1997年10月 打ち上げ 2004年6月 土星軌道に投入 2004年12月  タイタンにホイヘンス探査機を投入 2017年5月まで探査を続ける予定

土星の6つの衛星・1つの環を新しく発見 土星の環の消失現象を観測 タイタン上での降雨や流水現象を確認

(c) NASA

Page 50: NHK カルチャー講義(第1回)

“美しすぎる”土星の姿

(c) NASA

Page 51: NHK カルチャー講義(第1回)

土星から見た地球と月

(c) NASA

Page 52: NHK カルチャー講義(第1回)

衛星タイタン

液体メタンの湖が存在表面には石や氷塊 (c) Wikipedia

Page 53: NHK カルチャー講義(第1回)

衛星エンケラドス

氷粒と水蒸気からなる間欠泉液体の水・有機炭素・窒素の存在が確認

(c) Wikipedia(c) NASA

Page 54: NHK カルチャー講義(第1回)

太陽系の構成メンバー

地球型惑星   水星   金星   地球   火星

巨大ガス惑星    木星    土星

巨大氷惑星   天王星   海王星

小天体(小惑星, 太陽系外縁天体, オールトの雲)

(c) ikachi.org

Page 55: NHK カルチャー講義(第1回)

天王星・海王星

(c) Wikipedia

Page 56: NHK カルチャー講義(第1回)

天王星・海王星

・太陽からの距離:19.2AU ・半径:25559km(地球の4倍) ・質量:8.7×1025kg(地球の14.5倍) ・自転軸が黄道面に対して横倒し

・太陽からの距離:30AU ・半径:24764km(地球の3.9倍) ・質量:1.0×1026kg(地球の17倍) ・表面に大きな渦(大暗斑)が見られた

天 王 星

海 王 星

Page 57: NHK カルチャー講義(第1回)

太陽系の構成メンバー

地球型惑星   水星   金星   地球   火星

巨大ガス惑星    木星    土星

巨大氷惑星   天王星   海王星

小天体(小惑星, 太陽系外縁天体, オールトの雲)

(c) ikachi.org

Page 58: NHK カルチャー講義(第1回)

小惑星

メインベルト小惑星  火星と木星の間に存在 トロヤ群小惑星  木星の軌道上に存在発見された数は 40万個を超える

地球に降ってくる隕石の母天体だと考えられている

(c) Wikipedia

(c) Cornell Univ.

Page 59: NHK カルチャー講義(第1回)

小惑星イトカワと探査機「はやぶさ」2003年5月 打ち上げ 2005年夏~  小惑星イトカワに到着  表面の観測  表面物質の資料採取 2010年6月 地球に帰還 2010年10月 資料中から微粒子を検出!

小惑星への到着は工学実験探査機としての快挙 小惑星の物質は太陽系の謎を解く鍵を与える!

Page 60: NHK カルチャー講義(第1回)

はやぶさが明らかにしたイトカワの姿

Page 61: NHK カルチャー講義(第1回)

小惑星表面の微粒子の採取に成功!

微粒子から小惑星への 進化を解く鍵を与えた

Page 62: NHK カルチャー講義(第1回)
Page 63: NHK カルチャー講義(第1回)

太陽系外縁天体 (エッジワース・カイパーベルト天体)

海王星の外側に散在 冥王星もその一部

短周期彗星(P<200年)の巣だと考えられている

(c) Wikipedia(c) Wikipedia

Page 64: NHK カルチャー講義(第1回)

オールトの雲

長周期彗星(P≧200年)の巣だと考えられている

太陽系を球殻状に取り巻く 仮想的な天体群太陽から1万~10万AUに 1×1012個ほどの天体?

現在は状況証拠のみで 仮説の域を出ない存在

(c) kahaku.go.jp

Page 65: NHK カルチャー講義(第1回)

彗星

(c) Wikipedia

Page 66: NHK カルチャー講義(第1回)

彗星

ダストテイル (塵の尾)

イオンテイル (イオンの尾)

核:氷と塵が混ざった塊 コマ:核を覆う薄いガス 尾:太陽からの放射圧と   太陽風により形成

太陽系初期の情報を保持(c) Wikipedia

(c) Wikipedia

Page 67: NHK カルチャー講義(第1回)

太陽系の構成メンバー

地球型惑星   水星   金星   地球   火星

巨大ガス惑星    木星    土星

巨大氷惑星   天王星   海王星

小天体(小惑星, 太陽系外縁天体, オールトの雲)

(c) ikachi.org