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This document is downloaded at: 2020-11-17T08:13:53Z Title 煮干しイワシの品質とだしの風味に関する研究 Author(s) 安達, 町子 Citation (2002-03-31) Issue Date 2002-03-31 URL http://hdl.handle.net/10069/7303 Right NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp
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NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITEnaosite.lb.nagasaki-u.ac.jp/dspace/bitstream/10069/7303/...第1章 緒書...

Aug 14, 2020

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Title 煮干しイワシの品質とだしの風味に関する研究

Author(s) 安達, 町子

Citation (2002-03-31)

Issue Date 2002-03-31

URL http://hdl.handle.net/10069/7303

Right

NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE

http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp

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煮干しイワシの品質とだしの風味に関する研究

 綬〆…訂ド厭仰鴨川

・ q丁噂置 

 霧礪選書館/

2001年12月

 長崎大学大学院

海洋生産科学研究科

安 達 町 子

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目次

第1章 緒言 ・・・・・… @  9・・・・・・・・・…   1

第2章 長崎県産煮干しイワシの大きさと

    化学的性状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・…  4

2-1-1

2-1-2

2-1-3

2-1-4

緒 言

実験方法

結果と考察

要 約

第3章  煮干しイワシの品質保持に及ぼす貯蔵温度と

     大きさの影響  …  ◎・・・・・・・・・・… 13

3-1-1

3-1-2

3-1-3

3-1-4

緒 言

実験方法

結果と考察

要 約

第4章  煮干しだしの風味や溶出成分に及ぼす

     煮干しイワシの大きさの影響

第1節  カタクチイワシの成長過程における

    煮干しだし成分の比較  ・・・・・・・・・・… 39

4-1-1

4-1-2

4-1-3

4-1-4

緒 言

実験方法

結果と考察

要 約

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第2節  煮干しの大きさと煮出し法の関係 。 ・ 。 。 。 。 ・49

4-2-1緒 言

4-2-2 実験方法

4-2-3結果と考察

4-2-4 要 約

第5章  煮干しだしの風味や溶出成分に及ぼす

      煮干しイワシの保存温度の影響 ・・・・…  一63

5-1-1緒 言

5-1-2 実験方法

5-1-3 結果と考察

5-1-4 要 約

第6章  粉末煮干しだしの風味や溶出成分に及ぼす

  だし袋の影響  ・…

6-1-1緒 言

6-1-2 実験方法

6-1-3 結果と考察

6-1-4  要  糸勺

・・・・・・・・・・…@ 81

総合考察 。 。 ・ 。 ・ ・ …    。 。 …    。 ・ ・ 。 。 。 。 ・ 。 ・97

謝 辞 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… @ 101

文 献 。 . . . . o . 9 . o . o . 0 9 . . 。 ・ 。 。 。 。 ・102

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                  略語

本論文では以下の略語を使用する。

TBA

COV

Aw5’一IMP

5’一AMP

ATP

Tau

Thr

Glu

Ala

Met

Ileu

:Leu

His

:Lys

DHAI:PA

thiol)arbituric acid

 carbonyl value

water act1Vlty

inosine monophosphate

adenosine monophosphate

adenosine triphosphate

taunne

threonine

glutamic acid

alanine

methionine

isoleucine

Ieucine

histidine

lysine ’

docosahexaenoic acid

icosapentaenoic acid

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第1章

緒書

 煮干しは、素干し、塩干し、節類などの魚類乾製品の一種で、イワシ類、イカナ

ゴ、エビ、アワビ、貝柱類などの魚介類をゆでたのち、乾燥させたものである。ふ

つう煮干しといえば煮干しイワシを指し、イリコ、ダシジャコとも呼ばれ、古くか

らわが国でつくられてきた伝統食品であり、主としてだしをとるために用いられて

いる。煮干しイワシの歴史は明らかでないが、堀口1)は藤原京(西暦694~710年置

跡から出土した木簡に、周防の南庄毛(山口県)から、天皇の食料としていわし製

品が貢献されていたとの記載があることから、この拉すでに煮干しイワシ類似の干

物があったものと推定している。煮干しイワシが商品として流通するようになるの

は、18世紀以降とみられ、当時はだしというより安価な庶民食として利用されてい

た。だし用として利用されるようになったのは、1868(明治元)年頃で比較的近年に

なってからのことである2)。それ以降煮干しイワシは、みそ汁や総菜用のだしとし

て日本人の食生活には欠かせないものとなり、その生産量は昭和30年代後半には年

産8万トン台に達した。40年代にはうま味調味料の普及とともに4万トン台に低下

し、以後年間4万トンから5万トンくらいの横ばい状態であるが、近年消費者の自

然志向、健康志向により煮干しの消費量も増加しつつある。3)

 煮干しイワシの原料は、カタクチイワシおよび小型のマイワシで脂質含量の比較

的低いものが使われる。85~95℃に加熱した4%前後の食塩水中で5~10分間煮熟

した後、3日間位の天日乾燥または、乾燥機で12時間程度低温乾燥して製品とする。

加熱することにより、魚介類の中に含まれている酵素は失活し、付着している細菌

も死滅するため乾燥中の酵素や細菌による成分変化が起こりにくい。また魚肉タン

パク質は凝固・脱水し、その後の乾燥を容易にする。煮干しイワシの水分は一般に

15%前後であるが、乾燥時間が長くまた常温で貯蔵および流通される場合が多いた

め、脂質酸化に基づく品質低下を起こしやすい。煮干しイワシについては多くの研

究があり、野中ら4-7)は魚油の油やけについて詳細な報告をしている。また金田8)、

滝口9)および安藤ら10)の煮干しイワシの脂質酸化に関する研究、伊佐11)、Nishina12)

1

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および滝口13)の煮干しの酸化防止に関する研究、伊佐14)の煮干しの成分相互作用に

関する研究、中島ら15)の煮干しの栄養価に関する研究、伊佐16)滝口17即19)の煮干しの

成分変化に関する研究など数多くの報告がある。

 この煮干しイワシを用いてとっただしを煮干しだしという。“だし”はだし汁の略

で、食品を煮たり、水に浸して汁に食品のうま味成分を溶出させたものである。主

な材料は、かつお節、そうだ節、さば節などの鳶頭、カタクチ煮干し、うるめ煮干

しなどの煮干し類、昆布類、干椎茸があげられる。わが国では、昔からこれらのだ

しを使って素材の持ち味を生かし、料理のおいしさを引き出してきた。日本料理の

調理の基本は、まず良いだしを引くことであるとよく言われるが、料理のおいしさ

の決め手となるものがだしである。20’22)煮干しだしは、一般にみそ汁のだしとし

て広く利用されているが、かつお節のだしに比べると、魚臭が強く、まろやかさ、

上品さに欠けると言われているが、良質の煮干しを用いてとっただし汁は魚臭も少

なく、独特の風味とコクがあり、美味である。好ましいだし汁をとるには、その材

料となる食品の品質のよいことが大切であり、次に問題となるのはだしのとり方で

ある。煮干しだしのとり方については、伊藤23)、吉松24)、今井25)、’平田26)らの報

告があり、吉松は、煮干しの浸水の効果について、低温でうま味成分を浸出させる

と不味成分の溶出が抑えられ、味のよいだし汁がとれることを明らかにした。また

煮干しの形態とうま味成分の浸出率について形が細かくなればなるほど浸出率は高

くなり、煮干しを細かく裂くだけでうま味成分の80~85%は浸出するとしている。

平田らは、煮干しだし汁の嗜好性および溶出成分に及ぼす調製条件の影響について

調べ、沸騰継続時間10~30分あるいは、浸水時間2時間で嗜好性の高いだし汁が

得られることを明らかにした。煮干しの呈味成分については、飯盛27)、横山28)、脇

田29)、山崎30)の報告があり、脇田らは、煮干しだし汁のうま味の中心は、5’一IMP

を主体にして5’一AMPとともにグルタミン酸との相乗効果によって作られ、それに

リン酸が関与し、さらに他の成分が複雑に関係しあって煮干しだし汁特有の味をつ

くりあげていると報告している。また山崎は、かつお節および煮干しだし適中の呈

味成分の比較を行い、煮干しにはコク味、味のまろやかさを呈するペプチドが多く

含まれ、かつお節には強力なうま味を呈する5’一IMPが多量に含有されることを明ら

かにした。煮干しだし汁の香気成分については、西堀31)、本間32)33)らの報告があり、

本間らは、かつお節、煮干しのだしをとる際の加熱に伴う香りの変化について調べ、

2

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かつお節は短時間の加熱(沸騰水浴中1分)によるだし汁の香りが最も好まれ、加

熱時間が長くなるにつれその香りは好ましくない方向へ変化していくのに対して煮

干しは短時間の加熱では生臭さが主であり、しばらく加熱したもの(沸騰水浴中20

分)が、特有の香りがあって好ましいという結果を得た。これは、煮干しだし汁の

香気成分としてかつお節より多量に存在する揮発性カルボニル化合物が、長時間加

熱することにより、減少することが一因であると推定した。煮干し脂質の性状がだ

し汁の風味に及ぼす影響について、久保ら34)はだし汁の風味と煮干し脂質の酸化に

より生成する物質の量には相関がみられCOVやTBA値が高い煮干しからとっただ

し汁ほど生臭みが強く、味も好まれないことを明らかにした。

このように煮干しイワシおよび煮干しだしに関する研究はそれぞれ、従来から広く

行われてきたが、煮干しイワシの品質とだしのとり方の関係、あるいは煮干しイワ

シの品質がだしの風味に及ぼす影響について調べた研究は少ない。本論文は、好ま

しい煮干しだしをとるための煮干しイワシの品質とだしの風味の関係を明らかにす

ることを目的に、煮干しイワシの品質保持に及ぼす貯蔵温度と大きさの影響、およ

びだしの風味や溶出成分に及ぼす煮干しイワシの大きさや保存温度およびだし袋の

影響を検討しまとめたものである。

 本研究によって良質な煮干しだしをとるための、煮干しイワシの保存温度および、

煮干しの大きさに応じた適切な煮出し法の一端を提示することができたと考える。

3

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第2章

長崎県湯煮干しイワシの大きさと化学的性状

2-1-1緒言

 我が国における煮干し品の生産高は約10万トンを推移し、長崎県では

その約12%の生産が行われている。35)煮干し品の約45%は煮干しイワ

シであり、長崎県ではその25~30%が生産されているが、主原料は県内

各地の漁場、なかでも橘湾で漁獲されたカタクチイワシを利用すること

が多い。また加工された煮干しイワシ製品は魚体の大きさにより呼称が

変わり多段階に及んでいる。36)37)煮干しの大きさの違いによる化学的

性状に関する報告は少なく、産業界でも加工特性に関する資料が希求さ

れている。煮干しイワシは原料魚を熱湯中で紅熟後乾燥したもので、乾

燥時間が長く、常温流通することが多いため脂質は酸化されやすく、脂

質劣化による風味等の悪変を生じやすい。また水分活性によっても脂質

酸化の進行速度は異なり、38)特定の水分活性域では酸化が遅いことが

知られている。したがって煮干しイワシの品質向上のためには原料魚の

大きさと、成分組成の違いおよび水分活性を明らかにすることが必要と

思われる。本研究は長崎県産煮干しイワシをサイズ別に成分分析を行い、

煮干しの大きさと化学的性状の関係を明らかにすることを目的として

行った。

2-1-2実験方法

1。試料

4

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 1998年12月に長崎県橘湾で水揚げされたカタクチイワシ加graα〃s

/apo加。ロs を煮干しとして加工された23種類を試料とした。試料の大

きさおよび原産地を表2-1に示した。

        表2一調長崎県産煮干しイワシの原産地および大きさ

試料No. 試料名  原産地 平均体長 平均体重(cm)    ()

備考

1 1メン  馨 18 0032 チカ 小浜市 2.9 0.06

3

4

5

6

7

8

9

マ0

カエリ  長崎市:力エリ  小佐々民

力エリ  小佐々町力エリ  小佐々町力詠リ  小佐々町力エリ  諌早尽力エリ  長崎市

工響   軽…

3.3

3.3

3.6

3.6

3.7

4」

4.4

49

0.08

0.08

0.12

0.嘔3

0.15

0.20

0.23

0.4唾

V.E*V.置

V.旺

V.旺

11

12

13

1415

16

17

小羽小羽小羽小羽小羽小羽小羽

南串山町野母崎町諌早市福島町小浜町小浜町 崎市

4.8

5.蓄

5.1

6」

5.8

6」

6.2

0.31

0.39

0.43

0.74

0.78

0.78

0。8土

18

19

2021

中羽中羽

中羽

中羽

松浦市長崎市松浦市長崎市

6.4

6.7

7.5

7.4

0.85

1.26

t42t47

2223

大羽大羽

小佐々町小佐々町

9.3

10.6

2.64

5.25

V.旺

V.E

* ビタミンE添加

2。一般成分

 水分は常圧加熱乾燥法(105℃)、粗タンパク質はケルダール法、粗脂

肪はソックスレー法、糖分はフェノール硫酸法、灰分は乾式加熱灰化法

(550℃)で測定した。また、塩分は塩分分析計(東亜電波工業製SAT-2A

型)を用いて測定した。

3。水分活性

オイルマノメーターを介した間接平衡蒸気圧測定法(20℃)39)で測定

した。

4。TBA値

 Yagi40)による蛍光法によった。

5

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5カルボニル化合物およびケト酸

 三輪4Dの方法によった。

6遊離アミノ酸

 試料1gに80%エタノールを10ml加えホモジナイズ後、遠心分離(2000

×g、!0分間)し、上清を70%エタノールで25mlに定解した。この溶液

1m1を減圧濃縮し、クエン酸ナトリウム緩衝液(pH2。2)4mlに溶解後メ

ンブランフィルターで濾過し、濾液をアミノ酸分析計(島津製作所製

ALC4000型)で分析した。

7。核酸関連物質

 島田42>の方法により核酸関連物質の抽出を行い、HPLC(島津LG6A)

を用いて定量した。カラムはShimpack WAX(4mm i。d.×50mm)、移動相

は25mMNaH2PO4、温度は40℃、流量は1.Oml/m1、検出はUV-260nmで行

った。

2-1-3 結果と考察

1.一般成分および水分活性

 長崎県産の煮干しイワシの一般成分を表2-2に示した。水分は煮干し

の形状の小さい方が多い傾向が見られ、特にチリメンのそれは約40%を

示した。一般にチリメンは生食される度合が高く、近年の食に対するソ

フト化志向により、上乾きのものから押水分県の加工品が増加している。

また水分が多いことから低温保存による流通が行われている。粗タンパ

ク質は煮干しが大きいほど多く含まれる傾向が見られた。粗脂肪はカエ

リ、小羽、中羽の順に多くなっていたが、大羽は少なくカエリと同程度

であった。糖分および灰分はカエリ、小羽、中羽、大羽の順に多く含ま

れていた。塩分は、チリメンが約6%を含んで多く、次いでチカとカエ

リの一部が約2%を含んでいたが、その他は1.3~15%の範囲にあった。

水分活性は、チリメンが0.73と最も高く、また中羽(試料No。19)が0。37、

カエリ(試料No.10)および小羽(試料No.14)が0。39と低かったが、そ

の他のものでは0.4~0.6の範囲にあった。水分活性は水分含量と同様の

6

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表量畷長崎県産煮干しイワシの一般成分

試料No。  試料  水分含量粗タンパク質 粗脂肪   糖分   灰分   塩分  水分活性        (%)     (%)        (%)      (%)      (%)      (%)     (200C)

チリメン  39B 44.9 34 0.4 唱t5 6.3 0.73

2 チカ  15.0 64.7 6.4 0.4 13.5 2.6 0.49

3

4

5

6

7

8

9

10

力羅ニリ     27.9

日工1/    15.9

力工リ     15.4

力工リ     12.5

力工リ  21.0

力工リ    2t7

力工リ     17.8

力エリ  腫2.7

54362.5

62.4

65.0

60.調

60.羅

61.7

68.6

476.0

5.4

5.9

484.3

5.8

4.6

0.6

0.5

0。5

0.5

0.6

0.5

0.5

0.6

12.5

15」

16.3

16.1

閲3.5

13.1

唱4.2

14.1

2.O

t4t尋

1.3

t31.3

t3t5

0.67

0.54

0.53

0.42

0.62

0.56

0.53

0.39

12

13

14

15

16

17

ノ』、5垂刃     i8.5

ノ』、響刃     薯6.7

ノ』、薯斗     14.5

ノ」、ヨ刃    14.9

ノ」、駐i署     唾5.0

ノ』、騒i羅     15.2

ノ且、斗刃     13.5

6t363.唾

66.7

62.7

66.3

66.8

68.6

5.3

5.2

5.3

8.7

6.7

484.8

0.6

0.6

0.5

0.4

0.5

0.5

0.4

14.3

礒4.4

13.0

13。3

1t512.7

12.7

1.3

t3t2翫4

t5t3t4

0.53

0.49

0.43

0.39

0.45

0.48

0.50

18

19

2021

中羽  12.4年掛  11.6中羽  13.3中吊  18」

66.7

68.4

65.2

63.8

6.8

5.3

7.7

6.7

0.4

0.4

0.4

0,3

13.7

14.3

調3.4

1t1

1.4

1.4

1.5

1.5

0.43

0.37

0.49

0.64

22

23大羽  16.3大羽  13.9

66.7

67.8

4.2

5.3

0.2

0.2

12.6

霊2.8

t5t5

0.51

0.51

傾向が見られ、両者の間には高い相関(r瓢0。898,p<0.001,n=23)が認

められた。カタクチイワシの乾製品は、水分7~9%、水分活性0.32~0.45

の範囲で最も褐変反応が遅いと、されている。43)Labuzaら44)は、水分

活性と食品の保存性を左右する脂質酸化、非酵素的褐変、微生物の生育

などの各種要因との関わりを明らかにしておりこれらの中で、非酵素的

褐変の速さと強さは水分活性0.65~0.80で増大し、その範囲を越すと減

少することを報告している。これらのことから長崎県産の煮干しの品質

変化を抑制するためには、水分含量および水分活性の低減化、あるいは

適正な保存法の選択が必要と考える。

2、TBA値およびカルボニル化合物

 長崎県産煮干しイワシのTBA値、カルボニル化合物量およびケト酸

量を調べ、その結果を表2-3に示した。形状の小さい煮干しはTBA値が

小さい傾向が見られ、特にチリメン、チカなどは著しく小さかった。ま

た形状がほぼ同じ大きさのものを比べた場合、酸化防止剤ビタミンEを

7

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表野3長崎県産煮干しイワシの脂質の酸化程度

試料No. 試料名  TBA値 :カルボニル化合物量 ケト酸量  備考

(mol/) (m/100)  (m/100)1 チ・リメン   0.27 唾5.63 2.38

2 0.49 20.33 2.56

3尋

5

6

7

8

9

:力エリ

カエリ

カエリ

:力エリ

力エリ

カエリ

カエリ

エ1

0.87

1」2

1.08

1.12

閲。10

凋。14

t45唱.36

30。77

33。72

30.唾9

37。89

37.49

34.65

34.54

39.27

尋.17

6.22

3.69

羅.1唾

6』3

6.08

5.87

6.86

V。E

V王

V.置

V.薩

唯1

12

13

14

15

16

17

小羽小羽小羽小羽小羽小羽小羽

t42tO71.40

1.63

1,76

t591.62

35.61

343836.93

39.62

40」938.09

37.67

6.53

5.74

6.32

6.87

6。96

6.83

7.11

18

19

202寒

中羽中羽中羽

1.74

1.59

調.77

t69

37.51

39.29

38.96

37.39

6.79

6.韓

6.84

41322

23大羽大羽

1.34

t3034。71

36.99

4.58

2.36

V.旺

V.E

添加した煮干しのTBA値は小さかった。一方,カルボニル化合物量およ

びケト酸量は煮干しが大きいほど多くなる傾向が見られ、これらの結果

は粗脂肪量の多寡が影響していると考えられた。

食品中のカルボニル化合物とケト酸の消長については、三輪41)が冷凍ウ

ニのえご味との関連で検討し、ウニの冷凍中に増加し、その生成は糖の

解糖、アミノ酸の酸化、脂肪の酸化分解などに起因することを推定して

いる。本実験結果で得たカルボニル化合物量とケト酸量は、冷凍(一

10℃)3ヶ月目のウニ41)と比較すると、カルボニル化合物量はほぼ同程

度であり、ケト酸量は約1/2であった。このように、製造直後の煮干し

中にはカルボニル化合物が多く含まれることを認めたが、この原因につ

いては特定できない。

8

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3。核酸関連物質

 長崎県産煮干しイワシの核酸関連物質含量を表2-4に示した。5’一IMP

量は煮干しの大きさに比例し煮干しが大きいほど多い傾向が見られた。

これは5’一IMPが筋肉に由来すると考えられ、魚体の大きいものでは小さ

いものより筋肉の割合が増加するためと思われた。一一方5’一AMP量は逆に

煮干しが小さいほど多い傾向が見られた。5’一IMPおよび5’一AMPは魚介肉

のエキス成分に含まれて味に関与し、45)特にかつお節の主要なうま味

成分であり、それらの値は生産地などで相違する。46噛48)本実験結果の

5’一IMPおよび5’一AMP量は、かつお節のそれらと比較すると、前者では約

1/2~1/4、後者では約1/3~1110を示して低かった。

表2-4長崎県産煮干しイワシの5’一罫MPおよび5’一AMP含量

試料No.試料名  5LIMP     5’一AMP(mg/100g)   (mg/100g)

1 1メン 歪328 65

3

45

6

7

8

9

10

力エリ

カエリ

カエリ

カエリ

カエリ

カエリ

カエリ

カエリ

唾29.4

唱15.7

韓2.7

178.8

望95.唾

140.4

193.1

256.5

28.尋

22.6

22.2

14.4

20.3

16。5

14.5

22.4

調

12艦3

14国5

i6

17

小羽小羽

小羽小羽

小羽小羽小羽

207.7

349.2

26t8253。5

252.7

239.9

136.0

16.O

i5.7

腫8.2

23.7

13.3

13.8

10.6

18 中羽紬  中学

20 中島2茎   ”

249.3

205.1

297。9

2唾99

国7.6

12.4

喉8.7

唯61

22 大羽23 大羽

2774270.7

14.5

13.1

9

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4.遊離アミノ酸

 長崎県産煮干しイワシの遊離アミノ酸組成を表2-5に示した。各煮干

しはいずれも17種類の遊離アミノ酸が検出され、全アミノ酸量は煮干し

の形状が大きくなるほど多く含まれていた。また、個々のアミノ酸をみ

ると、Tau,His,Ala,Thr,Gluが多く含まれていた。煮干しの主要なうま味

成分であるGluは、概ねカエリ、小羽、中羽の順に多かったが、大羽の

それは低かった。本実験結果のGlu量は、かつお節のそれとほぼ同レベ

ルであった。49・50)また煮干しイワシの保存中の褐変化にはアミノ化合

物と魚肉中の脂質の酸化によって生成するカルボニル化合物が関与す

るとされ、アミノ化合物としては遊離のHis、 LysおよびMetがこの反応

に関与することが知られている。51・52)本実験結果に示されるように、

His、:Lysが比較的多く含まれており、これらは保存中子イラード反応に

費やされることが推定された。19)

 以上のように、長崎県産の煮干しイワシのサイズと化学的性状の関係

を調べた結果、水分含量は煮干しが小さいほど多い傾向が見られ、粗タ

ンパク質は煮干しが大きくなるほど多かった。粗脂肪量はカエリ、小羽、

中寺の順に多くなったが、大羽は低くカエリと同じくらいであった。水

分含量、水分活性はいずれもやや高めで、煮干しの保存性を向上するた

めにはもう少し低くする必要があると思われた。煮干しのTBA値、カル

ボニル化合物量およびケト酸量を調べた結果、煮干しが小さいほど酸化

の程度は低い傾向が見られ、これは脂質含量の多寡が影響していると考

えられた。煮干しの主要なうま味成分である5’遭MPや遊離アミノ酸の

Gluは煮干しが大きくなるほど多く含まれる傾向が見られた。本研究で

は、試料は12月に加工された煮干しイワシを用いたが、イワシ類は季節

や漁場、系統的などで体成分の変化が大きい53噂55)ため、今後さらに異な

る季節、漁場などとの比較検討が必要である。

10

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襲三隅畏崎県産窯干しイワシの遊離アミノ酸組成

鵬/

試料鋤.試料名 T繊 Asp 「『馳r   Ser   G!閥   Gly   A!a Val Met 翻e しe購 Tyr Phe 隅ls しys Ar墓 Pr◎ T◎瞬

唱 チリメン 62.雇  0.8 咽2.8   二三.3   2尋.9   2◎,5 唱9.9  1罎.8 5.6 8.5 15.5  唱3.8  132  37.5 変5.3 9.7 9.⑪ 3⑪2.2

2 チカ  392。2  t5 20.3   噛0.曝   唱8。咽   嘔t4 36.5  霜4.尋 ◎.8 唱1.6 22.9   餐∠碁。9  17.鴫  唱06.瑠 2謬.2 1◎。瑠  書3。1 728。2

3嬉

5

6

7

8

9

唱。

愚闇り   388.8

力工㌧1  223.毬

力写り   3◎8。3

カコ鵜リ   502.5

カエリ   6尋6.3

力二二§ノ  63&6

カニ三聖リ   356.略

朗吟1 799,鴫

1.2

1』

123.0

1⑪.瑠

2,2

芝.8

9.7

層34暫2.5

20.尋

28.1

39.5

盆7.唄

28,0

364

5.7   頸8.7   窟2.2

魂㌔⑪   項1.8    7.8

5.6   噛64    9.5

9.瑠   墓~8,6   竃6.7

噛8.曝   尋3電3   3◎.⑪

7.7   27.8   嘔5.3

9.9   2尋願3   望3.3

1肩.0   38.フ   壌8.8

22.3

20.嬉

29.8

尋47

73.6

妬.フ

39.4

58.2

5.3

3.5

7』

韓.5

19.5

12215.層

13.2

 t9   2.9    6.5   曝.3   曝.3  119.8

 1.5   層.8    鴫.鴫   2.7   2.8  6焦6

 t⑪   2.9    6.3   3.8   ・曝.墓~  65.3

 免r    9.3   18.6    8.◎    9.3   7魂,窒

 t喜  11.0   25.8  三下.・馨  窟6.重  9馨.2邑

 tr   7.⑪   唱5.5   8.7  看胤⑪  38.’§

重O.0   9。4』  嘘9.6   8.5   9.7  魂.尋2

奮6.1   7。5   嘔8.3   調0.3  唱t芝  :215,8

8.7

罎.⑪

9。3

愛⑪.9

窒8,7

竃6.9

23.フ

咽6.6

鳳尋  7.◎

34  477.6  7.嬉

唱6.3   相5。暫

22.曝   1⑪.7

6.6 唱2.2

雇9.⑪   窟6.⑪

9.⑪ 窟3.2

5η.習

268.5

37497◎6,0

969.1

81謂.3

聡憾唱⑪343

目 早

旦咽3

1魂

餐5

暫6

η

小羽

小羽小羽

小羽

小羽

小羽ノ曳、’

65⑪.8

72曝.唱

767。9

7麟.8

675。9

729.9

558.5

噛.7

33四三

憲2,6

9.3

3.9

46

謂9.5

3唱.軽

36.瑠

59.7

曝t3

37、7

曝3.0

 5.3   21.8   重3.6

1窟.6   3∠喜.21  2響。魂,

1t1   37.6   19.5

2尋.尋   曝尋.5   27.尋

唱5.曝   36.6   26.3

唱2.6   3羅.’書  2・瑠,3

想5,9  3t8  2重.7

3尋.9

59。9

60.8

78.8

68.芝

69.5

63.6

8.噂

17.5

奮3.0

26.5

唱3,6

譲3,5

32.8

噛魂.7   5.1   窟2.7   7.⑪   7.8  唱眉1.8

7.9  環。。6  29.書  唱二心響  窟3.尋 3唱7。9

9.3    7.6   袋1.6   唱◎.6   唱暫.7   噂6。窓

2.6  型5.3   35.9  咽2.3  相32  86。7

7.尋   7.7   唱6.4婁   7。9   9。6 261.2皇

3.5   窟嬉.0   39.9   1頑.6   讃曝grl 2鷺窒。5

47  層9.9   尋8。曝   看3.◎  2塑,窟 309.1

腿2364咽5罵

36。3

2鑑嬉

麟.6

59.⑪

74  7.8薩5.5   噛8.5

馨t◎   層3.国

璽49  37.6

9.7 調9.8

18』   墓~3.7

23.7  37.9

879.3

1352.6

1⑪o曝.8

調麟.重

窟199.慧

誤36唱。7

鯛9唱.8

憾19

202淫

事羽

中羽

中羽

中羽

8⑪購7鐙.7

807.7

63《》.2

13.7

5.8

霜3.2

9,9

5尋.⑪

葡.2

尋7.6

53.7

露5.7

唱5,7

2229.3

尋2.9

尋。.8

38.曝

39.8

36.5

21.3

37.輯

艶2.6

9曝.3

フ46

95.7

78.8

25.6

2唱.6

芝2.瑠

η.3

408.2

7.9

2.3

嘔5.フ

醗.8

篭3.2

循。.3

35.7

芝9.尋

32。7

20.2

窟7.5

麗愚盲3.9

5.9

調8.◎

愛3.3

調翻

8.幽

魂3.8

愛36.7

58.9

窟346

26.9

38.◎

黛8.1

25.◎

唱7.唱

16,5

唱窟.看

7.6

23.自

国1.9

22.尋

26.5

唱176.8

唱298.9

噛22嘔.8

噛03嬉.◎

22

23大羽  32尋.6  52 も’   躍、99.8    6.3

25。7   瑠◎.6   24.曝   13.唱

256   謂0.9   26.7   嘘7.⑪

57.⑪  2フ.窟

75,0  26.5

1.8  18.0   尋7。7   壱5.(》  28。7 36噂.0

3.⑪  噸8。0   魂.6.9  環5.・馨  27.0 尋57.2

3亀3

31B1~49  33.3

21(》.嶋   215.7

596.2

鯛869奪r=  匙r農oe,く《},重

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2-1-4 要約

 長崎県産煮干しイワシの大きさと化学的性状の関係を明らかにするこ

とを目的として、1998年12月に長崎県沿岸海域で水揚げされ製造され

たカタクチイワシの煮干し23種類の成分分析を行い以下の結果を得た。

 (1) 煮干しの水分含量は約11~40%を示して大きな変動がみられ、

   それと水分活性との問には高い相関が認められた。

 (2) 脂質の酸化の程度は、煮干しが小さいほど低い傾向が見られ、

   これは煮干しの脂質含量の多寡が影響していると考えられた。

 (3) 煮干しのうま味成分である5’一IMPやGluの含有量は煮干しが

   大きくなるほど多くなる傾向が見られた。

12

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第3章

煮干しイワシの晶質保持に及ぼす貯蔵温度と

大きさの影響

3-1-1緒言

 第2章では、長崎県産の煮干しイワシのサイズと化学的性状の関係を調

べた。その結果、煮干しの水分含量は約11~40%と大きな変動が見られ、

水分活性との問には高い相関が認められた。また煮干し脂質の酸化の程度

は、煮干しが小さいほど低い傾向が見られ、これは煮干しの脂質含量の多

寡が影響していると考えられた。煮干しの主要なうま味成分である5’一IMP

や遊離アミノ酸のGluは煮干しが大きくなるほど多く含まれる傾向が見ら

れ、煮干しイワシの成分は魚体の大きさによって異なる傾向を示した。

 煮干しの特性は、うま味成分の含有、煮熟による組織中の酵素の不活性

化および付着細菌類の死滅、その後の乾燥による保存性の向上にあるが、

貯蔵中脂質酸化に基づく品質低下をおこしやすい17”19)。煮干しの脂質含量

により貯蔵中の品質が異なることはすでに報告されているが9)16)、煮干し

の魚体の大きさと貯蔵中の品質変化に関する研究はほとんど見られない。

煮干しは大きさにより呼称がチリメンから大羽まで多段階に及んでおり、

これらの大きさによる貯蔵中の品質変化を明らかにすることは、煮干しの

加工貯蔵において重要なことと思われる。

そこで第3章では、製造直後の大きさの異なる煮干し(小羽、中羽、大羽)

を室温(25℃)および低温貯蔵(5℃、一25℃)し、貯蔵温度と大きさの異

なる煮干しの品質変化を官能評価、品質測定により検討した。

13

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3二一2 実験方法

1.実験試料

 1998年7月に長崎県橘湾で水揚げされたカタクチイワシ翫gm〃1∫8

ノ卯。η蜘3を水洗後、92~95℃の海水で3~4分間煮熟し、水切り後46℃で12

~13時間熱風乾燥したもので、小羽(平均体長55cm)、中羽(平均体長6.9cm)、

大羽(平均体長8。6cm)の3種類の大きさの異なる煮干しを加工直後に入手

し試料とした。

2.貯蔵方法

 試料をポリ袋に入れ、25℃、5℃および一25℃の恒温器に入れ、180日間遮

光し貯蔵した。

3.煮干しの一般成分

 煮干しを粉砕ミルを用いて粉砕したものを試料とし、105℃常圧乾燥法、

550℃乾式加熱灰化法、フェノール硫酸法、ケルダール法、エーテル抽出法

により水分、灰分、糖分、粗タンパク質、粗脂肪を測定した。また塩分は

試料2gを紫紺後、5倍量の蒸留水を加えてホモジナイズした後遠心分離

 (3,000×g、20分間)し、得られた上清を塩分分析計(東亜電波工業製

SAT-2A型)で測定した。

.4.煮干しの官能評価

 貯蔵中における各煮干しの官能評価を表3-1の評価基準に基づいて4段階

の評点法によって行った。パネルは長崎県立女子短期大学学生8名である。

5.水分活性および水分含量の測定

 水分活性は、オイルマノメー寸止を介した間接平衡蒸気圧法39)(測定温

度20℃)により測定した。

6.TBA値

 Yagi 40)による蛍光法によった。

7.カルボニル化合物およびケト酸の定量

 三輪41)の方法によった。

14

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表3一書 煮干しの官能評価基準

1       盤        3        尋

?部が    腹部が     腹部が     腹部が

Z褐色    褐色      黄白色     銀自色

番り

1         豊         3        轟

s快な臭味   油焼け輿    軽い      香気の

@               油焼け臭   あるもの

望        豊        3       4

a味、生奥味  渋味、生臭味  やや渋味   良い

ェ葬常に強い  がかなりある  苦味がある

三味

壌         豊         3         講

Dましくない  あまり     やや      好ましい

@      好ましくない  好ましい

8、総脂質の脂肪酸組成

 Folchら56)の方法に従って、10尾の煮干しから、クロロホルムーメタノ

ール(2:1、v/v)で総脂質を抽出し、けん化、メチル化後ガスクロマトグラ

フィー(GC)により分析した57)。 GCの分析条件は以下のとおりである。

カラム13.2mmi.d.×2m、充填剤llO%Silar-10CでコートしたChromosorb

WAW(DMCS)、カラム温度1210℃、キャリヤーガスlHe、 He流速11kg/cm2、

検出・器lFID。

9.核酸関連物質の定量

 島田42)の方法により核酸関連物質の抽出を行い、高速液体クロマトグラ

フ(島津製作所製LC6A型)を用いて定量した。カラムはShimpack WAX

(4mm i.d.×50mm)を用い、移動相は25mMNaH2PO4温度は40℃、流量は

1.Om1/min、検出はUV-260nmで行った。

15

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10.遊離アミノ酸の定量

 試料1gに80%エタノール10mlを加え、ホモジナイズ後遠心分離(2,000×g、

10分間)し、70%エタノールで25mlに定容した。この溶液1m1を減圧下でエ

タノールを除去した後クエン酸ナトリウム緩衝液(pH2。2)4m1に溶解定容

後メンブランフィルターで濾過し、濾液をアミノ酸分析計(島津製作所製

ALC-1000型)で分析した。

穏.色調

煮干し(全個体)を粉砕ミルを用いて粉末状にしたものを測色色差計(日

本電色心ND-1001-DP型)によりL、 aおよびb値を測定した。

3-1-3結果と考察

頂.煮干しの一般成分

 3種類の大きさの異なる煮干しの一般成分は表3-2のとおりである。小羽

は中堅,大羽に比べて水分、粗脂肪量および塩分が少なく、灰分、糖分、

粗タンパク質量は多かった。

薮欝噸  煮干しイワシの一般成分《%)

項目 小羽 中羽 大羽

水分 1t58 13.90 看3.38

灰分 16.93 14轟0 16.09

糖分 O.63 0.50 0.44

粗タンパク質 62.94 63.12 61」6

粗脂肪 5.69 7.32 7.58

塩分 1.23 1.35 t42

16

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2.煮干しの官能評価

 貯蔵期間中におけるの各煮干しの官能評価の結果を図3-!に示した。

 煮干しの品質に対する貯蔵温度の影響は、貯蔵30日後まで各煮干しの評

価は色、香り、味、香味のいずれもほぼ良好であり、特に低温のものが、

室温のものより品質は良好であった。貯蔵60日後から煮干しの品質は徐々

に低下し、貯蔵90日以後貯蔵温度が高いほどさらにその品質低下は顕著で

あった。また煮干しの大きさによる品質変化は、貯蔵30日後まで大きさに

よる差異はほとんどないが、貯蔵60日以後小羽は中羽および大羽に比べ評

価が高かった。

ro目

30日

60日

go目

120日

咽50日

    小羽

 1          曝

色 トー→書りトー一+一一岬釦

味  トー醤昧トーートー一}

色  トー一→一→番リト堪+一一→

味  トー

色 トー一番りトー一味  トーートー一一細

雪味トー一一←一一←

味 トー画トー書昧トー「廿→儀  トr一

香味一色  トー瞭 トー一一

  紋羽 1       4

  大羽1          4

図3一竃 煮干しの官能評価

   幽:25。C魅睡:50C鮎○=一志500

17

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2,水分含量および水分活性の変化

 貯蔵中における煮干しの水分含量および水分活性の変化を図32、図3-3

に示した。水分含量と水分活性は貯蔵期間中ほぼ同様な変化を示し、煮干

しの大きさによる大きな差異は見られなかったが、貯蔵温度の影響をみる

と、25℃貯蔵で若干減少傾向が見られた。

3.脂質酸化

 貯蔵中における各煮干し脂質の酸化指標としてTBA値を測定し、その変

化を図3-4に示した。3種類の煮干しのTBA値はいずれも貯蔵10日目まで急

激に増加したが、以後貯蔵30日目まで減少し、その減少速度は貯蔵温度が

高いほど、また煮干しが小さいほど速かった。貯蔵30日以降25℃貯蔵の各

煮干しのTBA値は0.5μmol/g 前後で安定して推移した。5℃貯蔵では、小

羽および中羽のTBA値は1μmo1/g、大羽のそれは1.5μmol/g前後で推移し

た。一25℃貯蔵のもののTBA値は他の貯蔵温度のものより変化が小さく、各

煮干しのいずれも15μmol/g 前後で推移した。

貯蔵開始時の各煮干しの脂肪酸組成を表3-3に示した。いずれもC20:5、C22:

6の組成比が高く、また飽和酸ではC16:0の組成比が高かった。貯蔵中にお

ける高度不飽和酸の残存率の変化を図3-5に示した。25℃貯蔵の残存率は

各煮干しとも貯蔵10日目に急激に低下し、以後徐々に低下した。なお貯蔵

終了時の残存率は小羽69.8%、中羽67。5%、大羽62。6%であった。5℃お

よび一25℃貯蔵の残存率は各煮干しとも全貯蔵期間を通して低下し、貯蔵

終了時のそれは5℃貯蔵の小羽70。6%、中羽62。6%、大羽65.9%、一25℃貯

蔵の小羽75.1%、中羽72。2%、大羽69%であった。これは、煮干しの脂質

酸化が初期に速く、後期に緩慢に進行し、低温になるほど脂質の酸化が抑

制されたことを示している。

18

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小羽 董5

ま10三

三魚 5

 0

 15

茎,。

 董5

ま1。

漸くR

0 50 100 150   

中羽

0 50 100 150 200

0 50 葉00        150

貯蔵日数

200

図3-2煮干し貯蔵中における水分含量の変化

         △=250C,  圃=50C,  ○=一250C

19

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 0.6

翁・4

峯《0・2

  0           50          100          150          200

 0.6

翁・.・

三く 0・2

  0           50          凄00          150          200

 0.6

δo.4

9芝・.・

  0  0           50          100         150         200

          貯蔵日数

  図3-3煮干し貯蔵中における水分活性の変化

          △1250C, 圏=50C,○=一25。C

20

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小羽

 2.5

墓緬

3響

㌍o.5

 2.5

励Σ

婁t5

3響

㌍o.5

0 50 1GO 望50

0 50 100 150 200

大羽 2.5

薯15

3響

碑α5

0 50  で 

貯蔵日数

150

図3-4煮干し貯蔵中におけるTBA値の変化

        △:250C, 團=50C, ○:一250C

21

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嚢3-3 煮干しの脂肪酸網成

(%)

膿肪酸 小羽 申 羽 :大 羽

韓=o 6.9 8.7 9.5

16:0 零9。8 憾。5 18.5

16:1 10.3 ね。1 13.5

唾8:0 7.3 6B 7.4

18:宅 9.o 8.5 9.6

1812 1.3 t7 2.0

18=3 α6 o.5 0.6

20=1 0.2 0.2 0220=4 27 23 t9豊0:5 壌2.8 唾4.5 12.9

22:5 1.1 t2 1.2

袋2:6 23B 19.7 18.0

22

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小羽ま100

悪8・

δ

い。§4。

§20

 0

璽100

襲80

器60

§4・

古2。

§

 0

0 50 で00 150 200

0 50 100 150 200

       茎、。

   叢

  §60

  140

   §20

     0           50           100          150          200

             貯蔵日数

図3-5煮干し貯蔵中における高度不二和酸の残存率の変化

             《=250C,  國:50C,  ○:一250C

23

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さらに煮干しの大きさについては煮干しが小さいほど、高度不飽和脂肪酸

の残存率は高い傾向が見られ、これは魚体中の脂質含量の多寡が影響して

いると推定された。魚体の大きさと脂質含量は必ずしも比例するとは限ら

ない58)。本研究試料は、同一海域のものであるが、海域の異なる試料につ

いては、あるいは異なる結果が得られることも推定され、本実験結果から

は魚体の大きさの品質変化への関与は不明であり、これについては今後の

検討課題である。

4.カルボニル化合物およびケト酸

貯蔵中におけるカルボニル化合物量およびケト堀越の経日変化を図3喝、

図3-7に示した。3種類の煮干しのそれらはともに25℃および5℃貯蔵では

10日目まで急激に増加し、以後減少した。一25℃貯蔵では各煮干しのそれ

らは貯蔵60日まで増加し、それ以後ほとんど変化が認められなかった。

5.核酸関連物質の変化

貯蔵中における各大きさの煮干しの5’一IMPおよび5’一AMPの経日変化を図

3-8、図3-9に示した。5’一IMPは各大きさの煮干しのいずれも貯蔵30日まで

上昇し、以後減少したが、その傾向は貯蔵温度によって違いが見られなか

った。また5’一AMP量は、貯蔵中徐々に増加し、その程度は室温貯蔵で大き

く、低温貯蔵の5℃と一25℃では同程度であり、小羽が聖賢および大羽より

大きかった。このことは、独立した2回の実験でもほぼ同様な結果を得て

おり、貯蔵中の水分含量の差を補正しても、この傾向は変わらなかった。

煮干しは加工工程中煮熟を行うため、核酸関連物質の分解に関与する酵素

は失活していると推測されるが、加熱の程度によっては酵素の影響も考え

られ、この原因については不明であり、今後の検討が必要である。

24

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小羽

ゆ §

  9撃、。

言・・

0 50 100 150 200

中羽

ゆ む室

這60ε

饗、。

書・・

0 50 100 150 200

大羽

曾6・

毒40

襲、。

0 50  コ 

貯蔵日数

150 200

図3-6煮干し貯蔵中における:カルボニル化合物の変化

               、A:250C,圏=50C,○=一25。C

25

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掌10温

5羅

15

雲10遍

ε

0 50 凄00 150 200

0

 15

ミ10

9羅5寒

50 100 150

大羽

200

0 50  100

貯蔵日数

150

図3-7煮干し貯蔵中におけるケト酸の変化

          孟=250C,團=50C,()=一250C

200

26

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 800翁8600畏

響4。。

1200

b  O  O             50            准00           150           200

 800曾

    

蜜4。。

証叢

1200

b  O  O             50            100           150           200

 800曾

    

審4。。

亙叢

1200脇

  0  0             50             100            150            200

           貯蔵日数

 図3-8煮干し貯蔵中における5L湘Pの変化

          △:250C,閣=50C,○:一250C

27

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 150黛8く100ぎ

墓5。

む) @o

 嘘50

\葉00ぎ

藍,。

な) o

 遷50

ふ  §

遍差,。

 0

小羽

0 50 100 董50 200

中羽

0 50 100 150 200

大羽

0            50           壽00          150          200

         貯蔵日数

図3-9煮干し貯蔵中における5’一AMPの変化

        蓋=25。C,國:50C,○=一250C

28

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6.遊離アミノ酸組成の変化

 貯蔵開始時の各煮干しの遊離アミノ酸組成を表3-4に示した。小羽、中羽、

大羽の各煮干しはいずれも17種類のアミノ酸が検出された。Tauが最も多

く、次いでHis、 Ala、 Gluが多く含まれていた。

各アミノ酸はいずれも貯蔵中減少傾向が見られたが、特にMet、 His、 Lys

ではその傾向が顕著であった。 そこで、貯蔵中におけるMet、 Hisおよび

:Lysの経時変化を調べ、その結果を図3-10、図3-11、図3-12に示した。Met

含量は各煮干しとも貯蔵10日目まで変化が見られず、以後小羽、中国は全

貯蔵期間を通して減少し、その減少速度は貯蔵温度が高いほど速い傾向が

見られた。大羽のそれは貯蔵30日目に急激に減少し、以後ほとんど変化が

見られなかった。またHis含量もMet含量の変化と同様な傾向が見られた。

Lys含量も上述の2種のアミノ酸と同様な傾向を示したが、大羽のそれは貯

蔵日数とともに緩やかに減少した。煮干し中の遊離アミノ酸の減少速度は

貯蔵温度が高いほど、煮干しが大きいほど速い傾向が見られた。

7.色調の変化

 貯蔵中の色調の変化を図3-13、図3-14、図3-15に示した。:L値は貯蔵中

ほとんど変化が見られなかったが、a値は貯蔵60日後に貯蔵温度が高いほど、

また煮干しが大きいほど急激に上昇し、以後減少した。b値は25℃貯蔵で

は貯蔵30日以後徐々に増加した。 5℃および一25℃貯蔵ではほとんど変化

が見られなかった。これは、貯蔵60日以後煮干しが大きいほどまた貯蔵温

度が高いほど煮干しの褐変が進行したことを示している。これらの褐変は、

いわゆる魚類の油焼け59騨61)と呼ばれるものであるが、魚肉中の脂質の酸化

によって生成するカルボニル化合物とアミノ化合物が褐変に関与するとい

われており、アミノ化合物では遊離アミノ酸のMet、 Hisおよび:Lysがこの

反応に関与することが知られている。51)52)煮干しの異変については滝口18)

が貯蔵中の遊離アミノ酸の消長からこのことを推定しているが、本研究で

は遊離アミノ酸とカルボニル化合物の経時変化を調べた。その結果遊離ア

ミノ酸中Met、 HisおよびLysは貯蔵中顕著に減少し、カルボニル化合物は

貯蔵初期(10日目)に増加するが、以後減少した。この減少の一部はメイ

ラード反応に費やされたと推定され、その程度は貯蔵温度が高いほど大き

29

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煮干しが大きいほど速かった。この傾向は色調の変化と符合するものであ

った。ケト酸はカルボニル化合物と同様な傾向を示しており、ケト酸も本

反応への関与が示唆された。

褻3-4 煮干しの遊離アミノ酸組成

(mg1100g)

アミノ酸 小羽 申 羽 大 羽

目哉u 810.0 74t4 76tO

Asp 64 7.o 6.3

Thr 盤7.8 28.4 18.6

Ser 14.5 13.9 9.0

Glu 41.9 50.2 507PrO 1t8 14.6 14.5

Gly 26.1 23.8 194

A協 89.4 72.5 65.5

Val 16.3 16.唾 17.5

Me愛 15.9 2α1 23.0

11㊧ 10.0 10.望 137

L創 変0.6 2t7 254Tyr 10.3 12.望 164

Phe 薯27 壌39 20.8

His 411.唯 馴67 685.6

Lys 3曜2 3t3 38.9

Ar9 1t5 13.1 曜4.3

30

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小羽

 書00

茎80.墨・・

蓋、。

芝 20

 100

審80.塁6・

餐4。

芝 20

 100

璽80

:雛

垂・・

0 50 150  200

中羽

0 50 100 壌50 200

0 50    

貯蔵日数

遷50 200

図3-10煮干し貯蔵中におけるメチオニンの残存率

             《:250C, 團:50C,○一:250C

31

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 120

 で 茎・・

婁・・

茎・・

 20

小羽

0 50 100 150 200

;::

審、。

塁・・

茎・・

 20

 120

 100

茎・・

婁・・

茎、。

 20

0 50 100 遷50

高羽

200

0 50           書00          150

  貯蔵日数

200

図3-11煮干し貯蔵中におけるヒスチジンの残存率

            《=250C,團=50C,()=一250C

32

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 100

ま80

適60

㍗ 20

0 50 100 150 200

中羽

 遷00

ま80

瀬60

㍗ 20

 100

ま80

瀬60

340

 20

0 50 100 150       200

   大羽

0 50        100

  貯蔵日数

150 200

図3-12煮干し貯蔵中におけるリジンの残存率

          《:250C, 醗=50C,○=一250C

33

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 80

 60埋

 40」

 20

60

40

20

小羽

0 50 著00 准50       200

  中羽

0 50 100 150 200

大羽

 60

 40埋

 20

0 ら           むむ        で む

  貯蔵日数200

図3-13煮干し貯蔵中におけるL値の変化

        《:250C, 麟:50C,○=一250C

34

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一1

0 50 100 150 200

小羽

中羽

大羽

 0           50           100          150          200

         貯蔵臼数

図3-14煮干し貯蔵中における哉値の変化

        △=250C, 團=50C,○=一250C

35

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小羽

15

10

15

10

壌5

10

0 50 100 150      200

  中羽

0 50 100 150      200

  大羽

0 50           100          150

  貯蔵日数

200

図銑15煮干し貯蔵中におけるb値の変化

        《=250C, 團=50C,():一250C

36

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 以上貯蔵中における煮干しイワシの品質に及ぼす貯蔵温度と大きさの影

響を検討した結果、煮干しの品質に対する貯蔵温度の影響は、室温貯蔵

(25℃)では、小羽、中羽および大羽の3種類の煮干しはいずれも貯蔵10

日目に、TBA値は急激に増加した後、減少し以後平衡状態となった。高度

不飽和酸の残存率は貯蔵10日後に急激に低下し、以後徐々に減少した。ま

た幸町に関与すると考えられるMet,HisおよびLysは貯蔵とともに減少し、

色調のa値は60日後に急激に上昇し、b値は30日後から徐々に増加した。こ

れらのことから25℃で貯蔵した煮干しは、貯蔵初期の急激な脂質酸化によ

る酸化脂質とアミノ酸の反応により褐変が進行し、60日以後煮干しの品質

は徐々に低下し、90日以後著しく低下したと考えられた。

 低温貯蔵(5℃、一25℃)では各煮干しとも貯蔵10日目にTBA値は上昇

し、その後やや減少するがほぼ一定の値を保持し、高度不飽和酸の残存率

は貯蔵日数の経過に伴って徐々に低下した。煮干しの色調は、b値はほとん

ど変化がないがa値は60日後に上昇し、Met,Hisおよび:Lysは貯蔵期間中緩

やかに減少していた。すなわち低温貯蔵では、褐変は徐々に進行し、室温

貯蔵に比べると品質低下が抑制された。これは脂質酸化に伴ってカルボニ

ル化合物などの褐変因子は生ずるが低温のため褐変反応速度が抑制された

ためと思われた。これらの結果は官能評価の結果とも概ね符合していた。

 煮干しの大きさの影響は、官能評価の結果から、貯蔵30日目までは形状

による差異はほとんど認められず品質の評価は良好であった。貯蔵60日以

後各大きさの煮干しいずれも評価は低下するが、小羽は中羽や大羽に比べ

ると評価が高い傾向が見られた。品質測定結果から高度不飽和脂肪酸の残

存率は煮干しが小さいほど高い傾向が見られ、色調の測定から煮干しが小

さいほど褐変の程度も低かったことから、小羽が中羽や大羽に比べて品質

低下が抑制される傾向が見られ、これは魚体中の脂質含量の多寡が影響し

ていることが推定された。

37

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3-1-4   要  糸勺

 煮干しイワシの品質保持に及ぼす貯蔵温度と大きさの影響を調べ、以下

の結果を得た。

(1) 室温貯蔵(25℃)では、小羽、中羽および大羽の大きさの異なる3種

 類の煮干しは、いずれも貯蔵10日目まで官能評価は良好であったが、貯

 蔵初期の急激な脂質酸化による酸化脂質とアミノ酸の反応による褐変が

 進行し、貯蔵30日以後煮干しの品質はやや低下し、貯蔵90日以後著しく

 低下した。

(2)低温貯蔵(5℃、一25℃)では、煮干しの褐変は徐々に進行し、室温

 貯蔵に比べると品質低下が抑制された。これは、脂質酸化に伴う褐変因

 子は生ずるが、低温のため褐変反応速度が抑制されたためと考えられた。

(3) 煮干しの大きさによる品質変化は、いずれの貯蔵温度でも、貯蔵30

 日韓まで煮干しの大きさによる差異は認められないが、貯蔵60日以後脂

 質の酸化の程度が低く、褐変の程度も比較的低かったため、小羽の評価

 が高かった。これは煮干しが小さいほど脂質含量が低かったことに起因

 していると考えられたが、煮干しの大きさの品質変化への関与は不明で

 ある。

38

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 み   ま弟4早

煮干しだしの風味や溶出成分に及ぼす

煮干しイワシの大きさの影響

第1節

:カタクチイワシの成長過程における煮干しだし成分の比較

4-1-1緒言

 第2章、第3章では煮干しイワシの品質について調べた。すなわち第

2章で長崎県産煮干しイワシのサイズと化学的性状の関係を調べた結果、

水分含量に大きな変動が見られ、煮干しの品質変化を抑制するためには、

水分含量および水分活性の低減化あるいは適正な保存法の併用の必要性

を提言した。第3章では煮干しイワシの品質保持に、煮干しの貯蔵温度

や魚体の大きさがどのように影響するのかを調べた結果、室温貯蔵

(25℃)では貯蔵10日目まで品質は良好であったが、褐変が進行し、貯蔵

30日以後煮干しの品質はやや低下し、貯蔵90日以後著しく低下した。

一方低温貯蔵(5℃、一25℃)では、煮干しの褐変は徐々に進行し、品質低

下が抑制された。また煮干しの魚体の大きさによる品質変化は、いずれ

の貯蔵温度でも貯蔵30日まで差異は認められないが、貯蔵60日以後脂

質の酸化や褐変の程度が比較的低かったため、小羽の評価が高かった。

これは煮干しが小さいほど脂質含量が少なかったことに起因していると

考えられた。煮干しの品質変化に対する魚体の大きさの関与は不明であ

るが、煮干しイワシの品質保持には、低温貯蔵がより効果的であり、そ

の経日変化を明らかにした。

39

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 本章からは煮干しイワシを用いてとった煮干しだしの風味、溶出成分

に煮干しイワシの大きさ、保存温度あるいはだし袋がどのように影響す

るのかを検討した。

 まず本節では、カタクチイワシの成長過程における煮干しだし成分の

比較を行った。カタクチイワシは2種類あって、背部の色が濃く、腹部

とくっきりした差がみられる背黒カタクチイワシと背部の色が白い白ロ

カタクチイワシがある。一般に背黒カタクチイワシの煮干しだし汁は味

がさっぱりして関東以北で、白ロカタクチイワシの煮干しだし汁は味が

こく関西以西で利用されている。カタクチイワシはほぼ年2回の周期で

漁獲され、春物は3~4月産卵され5月にカエリになり、6~7月に小羽、

8~9月に中羽、12月頃に大羽として漁獲される。秋物は9月に産卵さ

れ、10~11月にカエリになり、11~12月に小羽、1~3に高羽、4月頃

に大羽が漁獲される。この成長過程における大きさの異なる煮干しとだ

し汁の味や成分の関係についての研究はほとんど見られない。そこでカ

タクチイワシの成長過程における4種類の煮干しである、カエリ、小羽、

二叉、大羽のだし汁を比較し、煮干しの成長過程によりだし汁問に差が

あるか否かを検討した。またあわせて、煮干しだし汁の官能特性と溶出

成分との相関も調べた。

4-1-2実験方法

1.試料

 試料は1994年1月長崎県南部漁協で煮干しとして加工された背黒カ

タクチイワシを用いた。大きさは図4-1-1に示すように、カエリ(3~4cm)、

小羽(5~6cm)、中羽(7~8cm)、大羽(9~11cm)を使用した。

2.煮干しだし汁の調製

 煮干しはそれぞれ頭と内臓をとり、カエリと小羽は半割りし、中山と

大羽は4つ割りして水の3%の材料を30分間浸漬後、3分間静かに沸騰

して直ちに、No.2の濾紙で濾過後定容した。

40

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(c蹟)

10

5

カエリ 小羽 岬大羽

図恥噛一1 煮干しの名称と大きさ

3.官能検査

 官能検査の試料は上記煮干しだし汁を0.6%の塩分濃度に調整し、60℃

に保温して官能検査に供した。パネルは短大女子学生(18~20歳)16名を

選び、対照として味の素製「いりこだし」の0。5%を基準にして、図4-1-2

の質問票に示すように比対照採点法で行った。

4煮干しの一般成分

 煮干しはそれぞれ頭と内臓をとり、CARIOCA-MIL:L(National

M:K-52M)で粉砕し、20メッシュでふるい、その粉末を用いた。水分は

105~110℃で乾燥して求めた。灰分は500~600℃で灰化して求めた。

全窒素はケルダール法で求めた。粗タンパク質は全窒素に6.25を乗じた。

粗脂肪はソックスレー抽出法で求めた。

41

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    だし汁の官能検:査     馨 月 臼                    バ酬。.

                    酩

この罎つ試斜はだしの材料の大きrさが異なります。対照を基準にイ,”,ハ、二を比較し

て、下の尺度で解傭し、右の回答欄に配入して下慈い。

な:お、下配の配述についても、お願いします◎

  項目   葬   髄   鍵   葬

       常やか圃かや常       にや蒔こじにやに1・匂い   悪し_一_良      い1 2  3  4  5  駐  7い

2.生臭み

3.うま味

4.総合評価

雲←†す「繍繰

      悪一一一      い1 2 3 墨 5 6 7い

☆認述のお願い

項臼1.で劔いの丁丁が4点以下の場合はどんな匂いがしますか。

 イの場合              ハの場合

 ロの鳩合            二の場合

項圏3.で蔚味の解優が4点以下の場合はどんな瞭がし讃すか。

 イの場合             ハの燭合 口の場合             ’   二の蝿合

    ご協力ありがとうございました

弱し_一強レ、裂23《567レ、              良

図解一霊一2 官能検査用紙

42

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5煮干しだし汁溶出成分の分析

1)pHの測定:コーリング製pHメーター120を使用した。

2)酸度:試料100mlに対する0。1N水酸化ナトリウムの滴定量で示した。

3)色と透明度:測色色差計(日本二色ND-1001DP)による透過測定法で行

 い、L値を透明度とし、 a値、 b値を求めた。

4)全エキス分:105~110℃で蒸発乾固して求めた。

5)無機エキス分:全エキス分を500~600℃で灰化して求めた。

6)有機エキス分:全エキス分から無機エキス分を差し引いて求めた。

7)全窒素:カルテックスシステムを使用しケルダール法によって求めた。

8)タンパク態窒素:Barnstein.法で求めた。

9)アミノ態窒素:ホルモール滴定法によった。

10)アミノ態窒素以外の非タンパク態窒素;全窒素からタンパク態窒素と

 アミノ態窒素を差し引いて求めた。

11)5’一IMPと5り一AMP量:高速液体クロマトグラフ(島津:LC-6A)を用いて

 測定した。カラムはShimpack WAX(4mm i.d.×50mm)、移動相は

 25mMNaH2PO4、温度は40℃、流量は1.Oml/min、検出はUV-260nm

 で行った。

6.統計処理

 Step-wise62)の相関係数により、官能検査数64と溶出成分測定数240

 について行った。

4-1-3結果と考察

調.カタクチイワシの成長過程における煮干しの一般成分の比較

 カタクチイワシの成長過程における煮干しの形状と一般成分の結果を

表4-1-1に示した。水分量は13。1~15。5%の範囲で、小羽、カエリが多

く、大羽、中羽はやや少なかった。灰分は8.5~10.3%の範囲で、カエリ、

小羽が多く、中羽、大羽はやや少なかった。粗タンパク質は65.9~73。2%

の範囲で、成長するに従って多くなっていた。粗脂肪は3.8~4.8%で小

羽が最も多く、カエリが最も少なかった。

43

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表羅一雪一1カタクチイワシの成長過程における形状と一般成分

材料 大きさ

(cm)

重量

()

水分

(%)

灰分

(%)

全窒素  粗タンパク質  粗脂肪

(%)    (%)    (%)

力1エリ

小羽

中羽

大羽

3~4

5~6

7~8

9~11

0』~0.2

0.5~0.8

t6~2.0

2.3~2.7

15.4

壌5。5

13.6

13.1

10.3

9.8

8.8

8.5

10.5

1t1

11.7

11.7

65.9

69.4

73.2

73.2

3.8

4.8

4。6

4。2

表牛1-2官能検査の結果

試”漏 意  由項目 試料 評点 力エリ     小羽

匂い 力瘤リ 3.9±1.08

小羽 3.5±0.93

中羽 3.7±1.咽6

大羽 3.8±0.98

生臭み 力エリ 3.4±0,88

小羽 2.9±t23中羽 3.7±t43 *

大羽 3.5±1.59

うま味 力エリ 3.6±t准8

小羽 2.9±閲,20 *

中羽 2.7±1.52 *

大羽 2.2±0.99 **

総合評価 門守リ 3.6±0.51

小羽 3.2±0.44 **

中羽 3.2±1。25

大羽 3.0±0.85

*:p<0。05, **:p<0.01

44

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2.カタクチイワシの成長過程における煮干しだし汁の嗜好性の比較

 30分間浸漬後、3分間加熱した各煮干しだし汁の官能検査の結果を表

4-1-2に示した。カエリは生臭みが強いが、うま味も強く、総合評価は

最も高かった。小羽は生臭味が強いためまた、中羽や大羽は生臭みは弱

かったがうま味も弱いため総合評価はカエリに比べて低く評価された。

3。カタクチイワシの成長過程における煮干しだし汁の溶出成分の比較

 煮干しだし汁の溶出成分の測定結果を表4-1-3に示した。そのうちpH、

透明度、a値、 b値は試料問に顕著な差はなかった。酸度はカエリが最

も低い値で中羽が高い値を示した。全エキス分と無機エキス分はカエリ

が最も多く、次いで小羽であった。全窒素、タンパク態窒素、アミノ態

窒素もカエリが最も多かった。5’一IMP量では小羽が最も多く、カエリ、

中羽、大羽の順であった。5’一AMP量はカエリが最も多く、小羽、中羽、

大羽の順であった。以上の三味成分の多少は官能検査の結果と一致して

いた。今回、カエリや小羽が二二や大羽に比べて溶出量が多かったのは

形状の小さいカエリや小羽は30分間浸漬後3分間加熱でだし成分が十

分溶出されたが、形状の大きい中羽や大羽に対しては加熱時間が十分で

はなかったと思われた。その理由としてカエリや小羽は表面積が大きい

ことや組織が柔らかいため短時間にだし成分が溶出されたと考えられた。

4煮干しだし汁の官能特性と溶出成分の相関関係

 煮干しだし汁の官能特性と溶出成分の単純相関係数を表4-1-4に示し

た。官能特性のうま味は総合評価との間に極めて高い正の相関が認めら

れた。また、溶出成分では、5’一AMP>全エキス分〉無機エキス分の順に

極めて高い正の相関が認められた。官能特性の総合評価は溶出成分の中

で5’一AMPが最も高く、全エキス分〉無機エキス分〉有機エキス分〉タン

パク態窒素〉全窒素の順に相関が高く、酸度との問に負の相関が認めら

れた。5’一IMPは溶出成分の中では無機エキス分との問に極めて高い正の

相関が認められ、pHとに極めて高い負の相関が認められた。5’一AMPは

溶出成分の中では無機エキス分〉全エキス分>5’一IMP>との問に極めて

高い正の相関が、タンパク態窒素との問に高い正の相関が認められた。

45

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表4一喰一3 煮干しだし汁の溶出成分

溶出成分 力エリ 小羽 中羽 大羽

PH

酸度(ml/調00mD

透明度

a 値

b 値

全エキス分(mg/100ml)

有機エキス分(mg/100ml)

無機iエキス分(mg/沿Oml)

全窒素(mg/旬OmD

たんぱく態窒素(mg/100ml)

アミノ態窒素(mg/犯Oml)

アミノ態窒素以外の

非たんぱく態窒素(mg/100ml)

5’一置MP(mg/100mD

5’一AMP(mg/100ml)

6。5

2。8

94.1

0.0

3。3

3845咽99.0

唾85.5

34.9

壌1.2

4.2

19。4

15.2

4.8

6。4

3.,1

93.6

0.2

2.5

325.6

147.7

噛77.9

24.6

7.0

4.0

13.6

嗜6.9

3.4

6.5

3.2

94.3

0』

2.3

268.7

調49.0

訓9.8

25.5

6.6

3.9

21。5

14.2

3.0

6.6

3,0

95.3

0.1

2.6

28咽.4

マ69.6

訓1.8

29.1

7。1

4.0

雪8.0

1唾.1

1.8

この相関関係の結果から、煮干しだし汁の美味しさは全エキス分、無機

エキス分、有機エキス分、全窒素、タンパク態窒素、5’一IMP、5’一AMPの

測定値量によって判断できることがわかった。

 以上の結果から、カタクチイワシの成長過程における4種類の煮干し

だし成分を比較したところ、30分間浸漬後3分間加熱した場合、カエリ

と小羽はだし成分が十分溶出され、官能検査の評価では特にカエリが高

かった。一般に、カエリは形が小さく身が柔らかい、またうま味も強い

ため、だし材料としてよりも、佃煮や和え物などに利用されることが多

い。一方小羽、中羽および大羽は主としてだし材料として利用されてい

る。今回、小羽、中羽および大羽の官能検査の差は顕著でなかったため、

最適なだし汁の抽出方法について、加熱時間を変えて、より詳細な検討

を行う必要があると考えられた。

46

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表尋一竃縄 煮干しだし成分の単純相関係数

心“

特性 匂い 生輿み うま味 総合辞価 ロh 酸度 透明度 δ{薩 b儘 全エキス分 有機:記キス 無機エキス 全窒繁 たんぱく態窒素 5L翻P

生細み

うま味

総合翻画 O.8◎*塞

P}唯 o.6◎‡

酸農 一〇.55率

透明度

♂櫨 0.5醜

b億 一〇.5尋*

全エキス分 0.66軸 0.79** 一α7嬉林 O.55*

電機エキス 0.63魑 0,52‡ 。◎。89林 一〇.77林 ◎.50‡ ◎.72韓

無機エキス 一◎,50寧 O.66糠 0.66紳 0.89聯

全疑繁 0.61‡ 一〇.6睡

たんぱく態蜜棄 0.62** 一〇.66林 一◎.75弊 0.65聯 O.78糠 ◎.79糧 O.55庫

アミノ態窒棄

アミノ態窒素以外 O.88韓

の非たんぱく態窯累

5L翻P 一α65韓 0.75韓

5’一A嗣P 0.72韓 0.83本寧 o.η寧率 O.77韓 ◎.56寧 0。72韓

n==薯6 象率:p<O.Ot寧:p<0.◎5

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4一噛一4要  糸勺

 カタクチイワシの成長過程における4種類の煮干し(カエリ、小羽、

中羽、大羽)のだし成分を比較検討した。さらに官能特性と溶出成分の

相関を調べ以下の結果を得た。

(1) 官能検査の結果、総合評価では、カエリが最も高く、小羽、中羽

 大羽の順であった。その理由として、カエリは生臭みがあるがうま味

 が強いため好まれ、大羽は生臭みが少ないがうま味が弱いので好まれ

 なかった。小羽と中羽はその中間であった。成長過程で形状の小さい

 カエリや小羽は3分間加熱でだし成分が十分溶出されたが、形状の大

 きい中羽や大羽に対しては加熱時間が十分ではなかったと思われた。

(2) 成長過程における4種類の煮干しだし汁の溶出成分を測定した結

 果、呈味成分であるエキス分、タンパク態窒素やアミノ態窒素、5’一IMP、

 5’一AMPなどはカエリ、小羽、中羽、大羽の順に多く溶出されていた。

 これは官能検査の結果と一致していた。

(3) 煮干しだし汁の官能特性と溶出成分との相関を調べた結果、官能特

 性の総合評価は、うま味との間に極めて高い正の相関が認められ、

 5’一AMP>全エキス分〉無機エキス分〉有機エキス分〉タンパク態窒素〉

 全窒素の順に極めて高い正の相関が認められた。

48

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第2節

煮干しの大きさと煮だし法の関係

4-2朔緒言

 煮干し材料のなかで最も多く利用されているカタクチイワシは、成長

に伴って、小羽、中里、大羽と呼ばれ、ほぼ年2回の周期で漁獲されて

いる。これら煮干しの大きさに対する好みは、地域や家庭で異なり、利

用される煮干しの大きさはさまざまである。伊佐は14)煮干しの塩分、脂

肪分とだし汁成分および煮干しの大きさの関係について報告している

が、煮干しの大きさとだし汁の味や、溶出成分および煮出し法の関係を

検討したものは見られない。第1節でカタクチイワシの成長過程におけ

る4種類の煮干し(カエリ、小羽、中羽、大羽)のだし成分を比較した。

だし汁は水の3%の煮干しを30分間浸漬後3分間沸騰加熱したものを試

料とし、官能検査と溶出成分について調べた。その結果、官能検査の評

価はカエリが最も高く、溶出成分も多かったが、小羽、中羽、大羽は差

が明らかでなかった。これについては、特に煮干しの形状の大きい中羽、

大羽は30分間浸漬後3分間の加熱では、だし成分が十分溶出していない

と思われた。またカエリは形が小さく身が柔らかいため、だし材料とし

てよりも佃煮や和え物などに利用されることが多い。そこで、本節では、

煮干しのサイズ別に、煮出し法の違いによるだし汁の嗜好性や溶出成分

を比較し、煮干しの大きさと煮出し法の関係を明らかにすることを目的

とした。すなわちカタクチイワシの成長過程における3種類の煮干し(小

49

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羽、中羽、大羽)のだし汁が煮出し法の違いにより嗜好性および溶出成

分にどのような相違が見られるかを調べ、各煮干しに適しただし汁抽出

方法について検討した。

4-2-2実験方法

翫試料

 煮干しは長崎市東部漁協産のカタクチイワシ加graα1∫s/apo加caを用

いた。大きさは図4-2-1に示すように小羽(5~6cm)、中羽(7~8cm)、大

羽(9~11cm)のものを使用した。105℃乾燥法で測定した煮干し試料の水

分量は、小羽が18.5%、中羽が17.8%、大羽が16.4%、ケルダール法で

測定した粗タンパク質量(窒素タンパク質換算係数6.25)は小羽が69.8

%、中羽が69.7%、大羽が71.4%、ソックスレー抽出法で測定した脂質

量は小羽が5.7%、中羽が4.6%、大羽が4.5%であった。試料は1995年1

月(秋もの)と1995年7月(春もの)を用いて実験を行ったが、同様な傾向

が見られたため、平均値で検討した。

(o瓢)

工。

δ

小羽 申羽 大羽

図4-2-1 煮干しの名称と大きさ

50

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2.煮干しだし汁の調製

 煮干しの使用量は水の3%(WIV)とし、それぞれ頭と内臓をとり、小羽

は半割りし、中断、大羽は4つ割りとした。煮干し7。5gを蒸留水250m1

に30分間浸漬後、ガス火にかけ1分間沸騰を継続したもの、30分間浸漬

後3分間沸騰を継続したもの、さらに浸漬なしで30分間沸騰継続の3方法

によって成分を抽出後、No.2の濾紙で濾過した。これを250mlに定直し、

以下の実験に供した。

3.官能検査

 だし汁の官能検査は生臭み、うま味の強さ及び総合評価について7段

階の評点法により行った。すなわち図4-2-2の質問表に示すように、生臭

みについては非常に弱い(+1)~非常に強い(+7)、うま味の強さについて

は非常に弱い(+1)~非常に強い(+7)、総合評価については非常に悪い

(+1)~非常に良い(+7)の7段階に評価した。各だし汁は0.6%の塩分濃度に

調整し、液温60℃で検査に供した。パネルは長崎県立女子短期大学およ

び活水女子短期大学学生(18~20歳)25名である。結果は、二元配置法に

よる分散分析を行い、:F検定により有意差検定を行った。

4.煮干しだし汁溶出成分の分析方法

1)全エキス分1105℃で蒸発乾固して求めた。

2)無機エキス分1全エキス分を500~600℃で灰化して求めた。

3)有機エキス分:全エキス分から無機エキス分を差し引いて求めた。

4)酸度1試料100mlに対する0.1N水酸化ナトリウムの滴定量で示した。

5)アミノ態窒素量:ホルモール滴定法によった。

6)5’一IMPと5’一AMP l高速液体クロマトグラフ(島津:LC-6A)を用いて測定

した。カラムはShimpackWAX、 (4mmi。d.×50mm)、移動相は25mM

NaH2PO4、温度は40℃、流量は1。Oml/min、検出はUV-260nmで行った。

7)リン酸1モリブデン青比色法63)によった。

8)pH:pHメーター(岩城ガラスM-120)を用いた。

9)色と:透明度の測定:測色色差計(日本狐色ND-1001DP)による透過測定

法で行い、Y値を透明度、 a値、 b値を求めた。

51

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5.統計処理

単純相関係数は前報62)に準じて、官能検査数81と溶出成分測定数297

について行った。

  3種の煮干しだし汁を比較して、それぞれの試料について、蓋生莫み、

2うま瞭の強さ、3総合評僑について、下記の判定基準によって評価し、空欄に

該当する数字を記入して下さい。

判定基準

幽幽に やや やや 開国に

1 生翼み 弱い 弱い 弱い  ふつう 験い 強い 強い

1 2 3    4 5 6 7

葬常に やや やや 鼻奮に

2 うま瞭 弱い 弱い 弱い  ふつう 強い 強い 強い

の強さ 】 2 3    4 5 6 7

非常に やや やや 非常に

3 総合評緬 悪い 悪い 悪い  ふつう 良い 良い 良い

1 2 3    4 5 6 7

項’ X A 8 C

1 生異み

2 うま瞭の強さ

3 総合評鰯

図4-2-2 官能検査用紙

52

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4-2-3 結果と考察

唾、煮干しの大きさと煮出し法の関係

 大きさの異なる3種類の煮干しのだし汁が、煮出し法の違いにより、嗜

好性にどのような相違が見られるかを調べた。すなわち小羽、中羽、大

羽をそれぞれ30分間浸漬後1分間沸騰加熱する、30分間浸漬後3分間沸騰

加熱する、浸漬なしで30分間沸騰継続する、の3方法で得られた各だし

汁について生臭み、うま味の強さおよび総合評価の官能検査を7段階の

評点法によって行った。その結果を図4-2-3に示し、検定結果を表4-2-1

に示した。生臭みは、小羽と大羽では煮出し法による有意差は認められ

なかった。しかし中羽では、30分間浸漬後1分間沸騰加熱したものが、

最も強く、加熱時間の長さとともに弱められた。うま味の強さは、小羽

では煮出し法の違いによる差は認められなかったが中締、大羽では30分

間沸騰継続しただし汁が強いと評価された。総合評価は、各煮干しとも

30分間浸漬後1分間沸騰加熱しただけでは低かったが、30分間浸漬後3分

間沸騰加熱すると、小羽のみ高くなった。しかし中羽や大羽は差が認め

られず、30分間沸騰継続することにより、評価が高くなった。なお本実

験の抽出条件で、30分間浸漬後1分間沸騰加熱する方法は水出し法に、

また30分間浸漬後3分間沸騰加熱する方法は煮出し汁の抽出方法に相当

する。また30分間沸騰を継続する方法は成分の溶出が、ほぼ平衡状態に

達するための抽出方法である。このように水出し法の場合は、各煮干し

とも評価が低かったが、30分間浸漬後3分間沸騰加熱した場合は、小羽

のみ評価が高くなったのに対し、中年や大羽はほとんど変化しなかった。

これは小羽はうま味成分などの呈味成分の溶出が速いのに対し、中羽や

大羽はこの煮出し法ではまだ副成分が十分に溶出されていないためと

推察された。30分間沸騰継続した場合は、各煮干しとも評価は高かった。

大羽はうま味が著しく増加したわりに、総合評価がそれほど高くなかっ

たが、それはうま味の他に渋味や苦味等が感じられたためではないかと

推察された。

53

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         小稠

浸潰時問(分)鶉   $o   ⑳

加熱時間(分)蓋   誼   鉤騒

   中霧

$◎     諺㊨     翰

塞     塾    3⑰

   大朝

39    30     幽

正     3    翻

3

口生臭みEOうま味の強さ

㊧総合評価

図4-2-3 官能検査の結果

54

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表4-2-1官能検査の検定結果

項目 試料 浸漬時間一沸騰時間

(分)  (分)

評点 Fo 試料間有意差検定

① ②

小羽

①30-1

②30-3

③0-30

4.24=豊=1」4

3.96±0.92

3.72±0.92

2.03 n.S.

n.S. n.S.

生臭み中羽

①30一壌

②30-3

③0-30

4.40±t20

3.88±t18

3.52±t14

 **

8.74 *

** n,S.

大羽①30引②30-3

30-30

4.16±1.43

3.84±1.22

3.88+1.14

0.54 n.S.

n。S, n.S.

小羽①30刊②30-3

30-30

3.24±0.91

3.72±1」5

3.76±1.で4

2.44 n.S.

n.S. n.S.

うま味

の強さ  中羽①30-1

②30-3

30-30

3.08土0.93

2.96±0.72

3.64±壌.02

401

n.S.

n。S、 *

大羽①30一1

②30-3

③0-30

3.36土t41

3.40±tO2

4.68±1.01

 **

18.89 n。S.

** **

総合評価小羽

①30-1

②30-3

30-30

3.44±0.57

4.24±0.95

4.24+1」8

6.74

**

**

**

中期

①30-1

②30-3

30-30

3.16±0.78

3.08±0.74

3.96+壌

8.01

**

R.S.

** **

大羽①30司②30-3

30-30

3.08±0.80

3.48±0.90

4」2+1.45

 **

7,70      n.s.

    ** **

n豊25 ①:30分間浸漬後1分間沸騰加熱

②:30分間浸漬後3分間沸騰加熱

③:浸漬なしで30分間沸騰加熱Foは分散比でF248(0つ1)議5.16, F 248(0.05)鷲3.26であり,

*は5%の危険率で,**は祝の危険率で差があることを示す.

n.s.は有意差なし

55

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3.調理条件の違いによる煮干しだし汁溶出成分の比較

 大きさの異なる煮干しのだし汁の調理条件の違いによる溶出成分の違

いを調べた。全エキス分、無機エキス分、有機エキス分、リン酸、pH、

透明度、a値、 b値の結果を表4-2-2に示した。また図42-4に酸度、アミ

ノ態窒素、5’一IMP、5’一AMP量を示した。全エキス分、無機エキス分、有

機エキス分は小羽、中羽、大羽とも加熱時間とともにほぼ増加がみられ、

小羽の30分間加熱試料の溶出量が最も多かった。また酸度、アミノ態窒

素、5’一IMP、5’一AMPも小羽、中羽、大羽とも加熱時間とともに増加して

いたが、小羽は30分間浸漬後3分間加熱と30分間加熱がほぼ同じ値であ

った。一方中羽や大羽の30分間浸漬後3分間加熱したものは溶出量が少

なく、30分間加熱したものは小羽と同じくらいの溶出量となった。これ

らの結果は、官能検査とよく一致していた。また新しい煮干しについて

透明度は、各煮干しとも加熱時間の長いものほど低い値を示し、逆にb

値は高い値を示したことからだし汁は加熱とともに透明度を下げ、黄色

味を増すことが明らかとなった。

4、煮干しだし汁における官能特性と溶出成分の関係

煮干しだし汁における単純相関係数を表4-2-3に示した。官能特性の評

価は、うま味との問に極めて高い正の相関があり、生臭みとの間には負

の高い相関が認められた。また総合評価は5’一IMP、全エキス分、アミノ

態窒素、5’一AMP、有機エキス、酸度、無機エキスの順に極めて高い相関

が認められた。また官能特性の旨味は5’一IMP、5’一AMP、アミノ態窒素の

川頁で極めて高い相関が認められた。このことからだし汁溶出成分の測定

で、小羽の3分間加熱の溶出量と音羽、大羽の30分間加熱試料がほぼ同

じ値を示したので、小羽のだし汁の加熱時間は30分間浸漬後3分間沸騰

加熱で十分であり、中羽、大羽のだし汁加熱時間は30分間位必要である

と考えられた。また全エキス分、無機エキス分、有機エキス分などが、

うま味や総合評価とも高い相関が認められたことから、これらはだし汁

のうま味の測定法として、利用できるものと思われた。リン酸は官能特

性のうま味と、5’一AMPとの問に高い正の相関が認められたが、これは脇

田29)らの報告と一致した。うま味や総合評価は、透明度との問に負の極

56

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めて高い相関が認められた。またa値、b値との問にも正の極めて高い相

関が認められた。これは新しい煮干し材料ではだし汁の色の濃度でだし

の旨味が判定できることを示唆している。

表4-2噸調理条件の違いによる煮干しだし汁の溶出成分含量

試料 小羽 中羽 大羽

溶出謬興難①30-1 ②30-3 ③0-3 ①30-1 ②30-3 ③0-30 ①30-1 ②30-3 ③0-30

(mg/100ml)

全エキス分 358.0 359.5 431.5 3霊2.3 358.1 397.4 28薯.9 345.4 383.8

無機エキス分 閲59.5 155.8 200.3 159.3 羽83.0 173.0 調31。8 136.7 173.4

有機エキス分 198.6 203.8 231.2 153.2 175.1 224.5 准50.1 208.8 209.6

リン酸 8.5 8.8 10.3 7.5 7.4 8.5 10.0 12.4 囹4.0

PH値 6.6 6.5 6.4 6.5 6.4 6.3 6.6 6.5 6.4

透明度 84.5 84.1 82」 94.4 93.2 91.8 92.3 90.4 89.3

a値 0.2 1.0 tO 一〇。2 一〇.1 一〇』 0.0 0.1 一〇.1

b値 5.2 6.0 7.3 2.9 3.8 3.8 2.6 3.7 47

調理条件

①:30分間浸潰後1分問沸騰加熱②:30分間浸漬後3分間沸騰加熱③=浸潰なしで30分間沸騰加熱

57

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 浸漬時間(分)

 加熱時間(分)

 (田9!100ml)

(酸度m協0◎鵬1)・

露⑪。㊨

豊⑪。覇

  小羽

欝  舗  ⑬

豊  塞 雛

  。㊧・一・魯

齢砂ゆ

 中羽

論  舗  ⑭

夏  豊 鱒

 ・  ゆ㊧

・醐◎_。《〉・・◎

  六羽

謬⑪ 翻   鰯

量  騒  鱒

5’・XM[P

      ア.ミイ態窒素   〆㊧

汐酸度    。ρ 5・・崩P

◎…《γ

図4-2-4 調理条件の違いによる煮干しだし汁の溶出成分

58

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ぴ⑩

表4-2-3 煮干しだし汁における単純相関係数

特性

生意み

うま瞭

総合半価

全エキス分

無機エキス

有機エキス

酸塵

アミノ態窒棄

5’一翻P

5’一A躍P

リン酸

PH傭透明度

魯憧

b櫨

生臭み うま味 総合評価 全エキス分無機エキス有機エキス 酸度  アミノ態窒棄51-IMP 5’一AMPリン酸’ o臆 透明度 、櫨

一α42*

一α70紳

一〇.47*

一〇,64紳

一〇.魂9*

一α弓7寧

一〇.5脾

0.72傘寧

0.60聯

α43*

0.53‡寧

0.77紳

α78聯

α78**

0。鳶「‡

一〇.52‡本

◎.69糠

。.69紳

0フ3棘

O,44*

0.70聯

O.70聯

0.72‡率

0。73‡*

o,7蓬軸

一〇.瑠3率

一〇.67糠

◎,67聯

O.82纏

O.74聯

0.86綿

0.62鵜

0.73寧寧

。.8豚‡

O.78韓

一〇.55率*

α尋3率

O,75聯

0.55棘

0.69韓

α妬本

0.75‡‡

◎.78*傘

0.73**

0.59職

一〇.58紳

0.72紳

0.峰8*   α8日照

    0.73寧*

一α62聯

    鞭0.68*寧

    O.7奄聯

    O.88*率

0,86紳

一〇.59寧本

O.55聯

α75齢

0.5理*

一〇.57牌

0,65率率

0.82糠

一〇.63麟・

一〇。85本*   ◎.76寧零

R=罵27  摩寧 :p<0.0耳, 率 :p 〈0.05

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5.だし汁中の5’一IMP.5㌧AMP量の経時変化

 脇田ら29)は、煮干しだし汁の旨味の中心は、5’一IMPを主体にして、

5’一AMPとともにGluとの相乗効果によって作られ、 PO43一や他の成分が複

雑に関係しあって、煮干しだし汁特有の味を作り上げていると報告して

いる。そこで玄翁に関与すると考えられている5’一IMP、5’一AMP量の経時

変化を図4-2-5に示した。

 30竃

825ミ

響20繭にしで 

メ  む

    

 0鶏・一魯一一一一イトー一

0 20       40       60       80       100      120

   沸騰継続時間(分)

一釦小羽(5LIMP)

一鉦中羽(5LIMP)

一欝一大羽(5’一1MP)

一◎一小羽(5’一AMP)

一△一中羽(5’一AMP)

唱一大羽(5㌧AMP)

図4-2-5煮干だし汁中の5’一置MP,5’AMP量の経時変化

 だし汁中に溶出した5’一IMP量の加熱に伴う変化は、各煮干しとも加熱

初期に急速な増加が見られた後、加熱10分間から30分間でその増加は緩

やかとなり、加熱30分間から60分間で最高値に達した後はほぼ一定の値

を保持していた。このうち小羽は加熱5分間から10分間でほぼ最高値に

達し、中羽や大羽に比べ溶出が速い傾向が認められた。5’・AMPも加熱30

分間から60分間で最高値に達し、以後ほぼ一定の値を保持しており、小

羽が中羽や大羽に比べ溶出が速い傾向が認められ、官能検査の結果とよ

く一致していた。

60

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6、煮干し粉末だし汁中の5㌧IMP、5㌧AMP量の経時変化

 大きさの異なる3種類の煮干しをそれぞれ粉末にし、定量の水を加え

て加熱し、沸騰後1分間~60分間までのだし汁中の5’一IMP、5’一AMP量の

経時変化を調べた。結果は表4-2-4に示すように、各煮干しとも粉末にす

ると5’一IMP量は、沸騰継続1分間でほぼ溶出が終了していた。一方

5’一AMP量は、小羽の溶出が中羽、大羽に比べて速い傾向が認められた。

これらの結果から、小羽が中羽や大羽に比べて成分の溶出が速いのは、

主として小羽の表面積が大きいためであると推察されるが、その他にも

成長過程において、初期の段階である小羽は、中羽や大羽に比べ組織が

柔らかい等の要因も考えられ、今後さらに検討が必要である。

 以上の結果から、大きさの異なる煮干しに適しただし汁の抽出方法と

して、小羽の場合は、30分間浸漬後、3分間沸騰加熱するか、または浸

漬なしで5分間沸騰加熱する。一方、中羽や大羽は、煮干しを表面積が

大きくなるように裂き、沸騰後10分から30分間加熱して煮出すことがよ

り有効な抽出方法である。

表4-2-4煮干し粉末だし汁中の5LIMP,5LAMP量の変化

     1  間(分)

@ 5LIMP視¥  5LAMP(m/嘘00ml

1 5 10 30 60

小羽5LIMPT’一AMP

29.51±0.20

Q.31±0.6壌

29.54±Oj 7

Q.5壌±0.69

29.12±2』2

Q.30±0.42

27.91±t62Q.77±0.76

27.22±5.59

Q.33土0.46

中羽

5’一IMP

TLAMP28.63±1.22

狽T6±0.14

29.51±1.95

狽V0±0.13

28.84±0.60

狽V5±0.09

29.40±1.32

Q.19±0.32

31.48±2.31

R.24±0.17

大羽

5’一IMP

TLAMP32.13±0.88

P.34±023

3t49±1.32P.35±0.20

28.65±t24P.魂0±0.24

28.72±0.36

狽U8±0.23

28.78±0.01

Q.38±0.37

61

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4-2-4   要  糸勺

 大きさの異なる煮干し(小羽、中羽、大羽)のだし汁の嗜好性および溶

出成分と煮出し法の関係を検討し、以下の結果を得た。

(1) 官能検査の結果、煮干しを30分間浸漬後1分間沸騰加熱した場合は、

  各煮干しとも評価が低かった。30分間沸騰を継続するとうま味が増

  し、各煮干しとも評価が高かった。30分間浸漬後3分間沸騰加熱し

  た場合、小羽は評価が高かったのに対し、中羽や大羽は、うま味が

  十分溶出していないためか評価が低く、小羽が中墨や大羽に比べ成

  分の溶出が速い傾向が認められた。この傾向は溶出成分の分析から

  も確認された。この要因のひとつとして小羽の表面積が土羽や大羽

  に比べて大きいことが考えられた。

(2) 煮干しだし汁のうま味は5’一IMP、5’一AMP、アミノ態窒素、 a値、 b

  値、全エキス分、有機エキス分、無機エキス分、リン酸の順で正の

  相関が高かった。

(3)各煮干しに適した煮出し法は、小羽のように小さめの煮干しは、30

  直間浸漬後3分間沸騰加熱するか、または浸漬なしで5分間沸騰継

  上する。一方、中豊や大羽のような大きめの煮干しを用いる場合は、

  できるだけ表面積が大きくなるように裂き、沸騰後10分から30分

  間加熱して十分煮出すことでより嗜好性の高いだし汁が得られるこ

  とが明らかになった。

62

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第5章

煮干しだしの風味や溶出成分に及ぼす

煮干しイワシの保存温度の影響

5-1一笠  糸者  言

 煮干しだしは、やや生臭みがあるが、上質の煮干しを用い上手にだし

をとるとかつお節に劣らない美味なだしがとれると言われる。煮干しの

特性は煮熟することにより、組織中の酵素は失活し、付着する細菌類は

死滅するため保存性がよいことである。しかし室温保存ではしばしば油

焼けにより褐変し、品質低下をおこしやすいため上質の煮干しだし汁を

とるには煮干しの保存方法が重要な要素のひとつと思われる。 一般に

家庭では、煮干しを購入後は、缶やびんなどに入れ室温または冷蔵保存

することが多い。煮干しだし汁23-34)に関する研究は数多く見られるが、

煮干しの保存温度とだし汁の味、溶出成分の関係を調べた研究は少ない。

第4章では大きさの異なる煮干し(小羽、二二、大羽)のだし汁の嗜好

成分および溶出成分と煮出し法の関係を検討した結果、嗜好性の高いだ

し汁を得るための煮出し法としては、煮干しの大きさ、浸漬および加熱

時間などを勘案する必要性を認めた。

 第5章では、煮干しの保存温度の違いがだし汁の風味および溶出成分

に及ぼす影響を明らかにすることを目的として、室温(25℃)、低温(5℃、

一25℃)保存した煮干しを経日的に取り出してだし汁を調製し、官能検

査、溶出成分の分析を行いその影響を検討した。

63

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5朔一2実験方法

1.試料

1999年10月に長崎県橘湾で水揚げされたカタクチイワシ翫gr醐〃3

ノ岬。η蜘3を煮干しとして加工した中羽(平均体長6.9cm)を試料とした。

105℃乾燥法で測定した煮干し試料の水分量は17。3%、ケルダール法で測

定した粗タンパク質量(窒素タンパク質換算係数6.25)は64。1%、ソッ

クスレー抽出法で測定した脂質量は5.7%、フェノール硫酸法による糖分

は0.6%、550℃乾式加熱灰化法による灰分量は13。8%であった。

2.保存方法

試料をチャック付きポリ袋に入れ、25℃、5℃および一25℃の恒温器に

入れ、90日間遮光して保存した。

3.煮干しだし汁の調製

煮干しは水の3%(w/v)を使用し、頭と内臓を除去した後、四つ

割し蒸留水を加え強火にかけた。沸騰後火を弱め10分間沸騰加熱後、た

だちに東洋濾紙(No.2)で濾過し、定容としたものを供試した。

4、官能検査

上記煮干しだし汁に塩分濃度0,4%となるよう麦味噌を加え、香り、う

ま味、生臭みおよび総合評価について味の素製いりこだしを同様に調製

したものを基準として、図5-1に示す質問票を用い2点嗜好試験法の変

法64)により、7段階尺度で評価し、t検定によって解析した。予備実験:

で味覚感度の高い女子学生(19~20歳)15名をパネルとした。

5.煮干しだし汁溶出成分の分析方法

1)全エキス分:だし汁15mlを秤量皿にとり、105℃蒸発乾固法によった。

2)酸度:フェノールフタレイン溶液を指示薬として0.1N水酸化ナトリ

ウムの滴定量で示した。

3)アミノ態窒素1ホルモール滴定法によった。

4)核酸関連物質:だし汁30mlにスルポサリチル酸1gを溶解し、遠心分

離(4,000rpm,10min)後濾過し、濾液を高速液体クロマトグラフ(島津

製作所:LC6A型)を用いて定量した。

64

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           煮干しだし汁の官能検査

次の3種の煮干しだし汁の、香り、うま味、生臭み、総合評価について、

対照を基準にして下の尺度で評価して下さい。

           非常に     やや     やや     非常に

            悪い  悪い  悪い 同じ 良い  良い 良い

    1。香り             ・

2.うま味

3.生臭み

1 2 3 4 5 6   7

非常に     やや     やや     非常に

弱い  弱い  弱い 同じ’ 強い  津い 強い

且 2 3 《 5 6   7

4。総合評価

非常に     やや     やや     非常に

強い  強い  強い 同じ 弱い  弱い 弱い

 「                                   1

1 2 3 魂 5 6   7

非常に     やや     やや     非’常に

悪い  悪い  悪い 同じ 良い  良い 良い

    穆且 2 3 4 5 6   7

項  目 対 照 A B C香り 4

うま味 4

生臭み 4

総合評価 4

図5朔 官能検査用紙

65

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カラムはShimpack WAX (4mm i.d.×50mm)、で行った。

5)遊離アミノ酸1上記同様に処理した試料を、アミノ酸分析計(島津

製作所製ALC-1000型)で分析した。

6)色調:測色色差計(日本電色面ND-1001-DP型)によりだし汁および

粉砕した煮干しのし、a、 b値を測定した。

7)TBA値:Yagi 40)による蛍光法によった。

8)総脂質の脂肪酸組成

:Folch56)らの方法に従って、10尾の煮干しからクロロホルム、メタノー

ル(211、v/v)で総脂質を抽出し、けん化、メチル化後ガスクロマトグ

ラフィー(GC)により分析した57)。GCの分析条件は以下の通りである。

カラム13.2mmi。d.×2m、充填剤:10%Silar10Cでコートした

Chromosorb WAW(DMCS)、カラム温度1210℃、キャリヤーガス:

He、 He流速11kg/cm2、検出器::FID。

9)水分活性

オイルマノメーターを介した間接平衡蒸気圧法39)(測定温度20℃)に

より測定した。

5-1-3 結果と考察

1.煮干しだし汁の官能検査

 保存温度の異なる煮干しのだし汁の経日的な官能検査結果を図5-2に、

また煮干しだし汁試料問の有意差検定結果を表5-1に示した。保存10日

後のだし汁は、保存温度による差異はほとんど認められず、香り、うま

味、生臭み、総合評価の各項目いずれも製造直後の煮干しだし汁の評価

に近いものであった。保存30日後では、25℃で保存した煮干しのだし汁

は5℃、一25℃保存に比べ香りの評価が低かったが、うま味、生臭み、

総合評価は保存温度による差が認められなかった。また製造直後のだし

汁に比べると25℃で保存した煮干しだし汁は、香り、うま味、総合評価

が低下し、5℃、一25℃で保存した煮干しだし汁は香り、生臭みは差が

ないがうま味、総合評価は低下した。

66

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o日

1⑪日

30日

60日

90日

番り

うま味

噌臭み

総合評価

香り

うま味

生臭み

総合評価

羅い

溺い

強い

懸い

悪い

聡い

強い

懸い

ト + 一+jブ町 +強い

ト→  ャ← +溺いトー一→一農いトー+         ち ス

/}1強い

香り

うま三

生臭み  強い

総合評価 悪い

        \\\

トー一一一十一良い

勘聴感一一←皿+良い弱いト怐ゥ一+強い

香り

うま味

生臭み  強い

総合評価 悪い

香り  悪い

うま味  臨・

生臭み  強い

総合評価 態い

ト +

トー一→一農い悪い 一一←良い弱いトテ蜘→→一一一蜘

=業晒==瓢    \//

トー一一㎝一←強い

トー_+良、、

図5-2煮干しだし汁の官能検査

◎:製造直後の煮干しのだし汁

A:25。Cで保存した煮干しのだし汁

囲=5℃で保存した煮干しのだし汁

○:一250Cで保存した煮干しのだし汁

67

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鶴團

豊⑱團

3⑪臼

翻翻

璽⑪闘

表5-1官能検査の検定結果

耀

6

一) 331±0.63うま味 392±0.95生臭み 323±0.93

乱ムニ’CCb

.62土0.65

櫨評,,..

,            一        」     ’

`  日    ・、

s霊   a   b

a 25 3。0フ土0,&8 踊.S.

b 5℃ 3.67±0.62    嘩禰.s.

C 一25℃ 3.47±0.64 n.s.    n。s.   n.s。

a 25 3.33士0,82 皿.S。

うま味 b 5℃ 3.40±0.74 n.5.    肱s.

C 一25℃ 353出0.64 n.S.        『筆‘S.     鶴.S.

a 25 2.96±0.84 a.s.

生臭み b 5℃ 3.32土0.61    慮n.S.

C 一25℃ 3」8::ヒ0.67 n。S.       n.S.     n.S.

器 25 327±0.73 n.S,

総合評価 b 5℃ 357土0.62 n.S.    盤.s.

c 一25℃ 3.鵡3±050 ”.S.        n.S.     “.S.

~隈謬 ,

u  05鴨ヨ ・日  ..’ ”

st   a   ba 25 2.36±1.OI 咳寧

b 5℃ 3.07±0。$3    寧罰.s.

C 一25℃ 3.07士0.83罰.S。        電1       隔.S

つ 陵 a 25 2.92±LO4 曝曝        ●b 5℃ 2。77±0網 二二      『1.s,

C 一25℃ 2.瑠6±052 鋤     n.s.   n.s.

一ラζみ a 25 2.57土1.22 n.s.

b 5℃ 2.79土O.43 n.S.    n.S.

C 一25℃ 2.64士0.74 篇s     ns    震S公 二》・≦..暢9口“

a 25 2.73土0.88 丁丁

b 5℃ 2.73±0.59 二二      a。s.

C 一25℃ 2.33士0.72 帥     n.S.  n.S。

一一~臨 ¶謬 ρ =    臼     、

σ●・、

st        b

a 25 L&0ま0.68 丁丁

b 5℃ 2.嬬7±0.74 曝麟      喀

C 一25℃ 293士070つ 琶・ a 25 L93±0.70 曝寧

bc  5℃一25℃ 253±0.74R.00土085

辱傘       陣

ロ喀      慮峰     麟    ●

み a 25 153士0.64 奪寧

b 5℃ 2.33±0.72 麟睡      摩專

C 一25℃ 2.80±056 一  9Do・口調 a 25 暫.73士0。フ0 碑寧

b 5℃ 233±0.45幽幽      蓼卑

C 一25 2.90±0.71寧      申零      嘩

一~睡 評の,. 塁 舞    し

当]        b

a 25 2.15±0.90 摩寧

b 5℃ 2灘5±055   曝罰.s.

c『一25℃ 2,η±0.73 n.s.  喀   n.s.

つ a 25 2.27±0.90 廓嘩

b 5℃ 2.魂5土0.82 鰯喀     n.s.

一25 2.1&±098瞭晦        n.S.       罰。S.

み a 25 護.64土0.81 寧寧

b 5℃ 255血0,69辱     嘩溜

C 一25℃ 236士0.67 鱒    罰,S   践.S。

 払E口触 a 25 2.00:ヒ0.77 卑摩

b 5℃ 2.霧2士0.40 摩麟     n.s。

c 一25℃ 2。45±0.69 麟象      n.s.     n.s.

st: 0日の煮干しのだし汁a: 25℃で保存した煮干しのだし汁bl  5℃で保存した煮干しのだし汁。: 。25℃で保存した煮干しのだし汁n罵15,潔pく0.05,唯激pく◎.Ol。皿.s.有意差なし

68

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保存60日後は、一25℃で保存した煮干しだし汁は製造直後に比べ、うま

味の強さ、総合評価はやや低下したが、香り、生臭みは差異がなかった。

5℃、25℃保存の煮干しだし汁の評価は低く、特に25℃保存のものは著

しく低下した。保存90日後では、製造直後のだし汁に比べ5℃、一25℃

で保存した煮干しだし汁の香りは差がなかったが、それ以外の評価は各

保存温度のいずれも低かった。

2.煮干しだし汁溶出成分の変化

 保存温度の異なる煮干しのだし汁溶出成分の経日変化を図5-3に示し

た。酸度、アミノ態窒素、全エキス分はいずれも保存期間中ほとんど変

化がなく、また保存温度による違いも認められなかった。煮干しだし汁

のうま味の主体である5’一IMP、5’一AMPの経日変化を図5-4に示した。

5’一IMPは保存期間中やや増加するが、保存温度による差異はみられなか

った。5’一AMPは5℃、一25℃保存の場合は変化がみられなかったが、25℃

保存した煮干しは30日以後徐々に増加した。煮干しだし汁中の遊離アミ

ノ酸組成を表5-2に示した。16種類のアミノ酸が検出され、His、 Tau、

Leu、11eが多く含まれていた。そのうち5’一IMPとともに煮干しだし汁の

主要なうま味成分であるGluおよび出山に関与すると考えられるLys、

Hisの経日変化を図5-5に示した。各保存温度とも保存30日まで減少し、

以後ほぼ平衡状態を保持していた。減少速度は温度が高いほど速かった。

これは以下に述べるように、酸化脂質との反応によるものと考えられた。

3.煮干しだし汁の色調の変化

 保存温度の異なる煮干しのだし汁の色調の経日変化を図5-6に示した。

L値は保存による変化はほとんどなく、温度による差異も認められなか

った。a値は25℃で保存した煮干しのだし汁は10日後から上昇し、30日

後に最大値に達し以後減少した。一方5℃、一25℃保存の煮干しだし汁

は30日後から上昇し、60日後に最大値に達し以後減少した。b値も60日

目までは同様な傾向を示したが、以後は平衡状態を保っていた。a値は

赤色度、b値は黄色度を示すもので、25℃保存した煮干しのだし汁は30

日後から、5℃、一25℃保存のものは60日後からだし汁の色が濃くなっ

たことを示している。

69

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  蓬

函4

麺2

なε300ミ

ε200

KH100

  0

0 20 40 60 80 100

0 20 40 60 80 100

0         20        40         60         80        100

        保存日数

 図5-3煮干しだし汁の溶出成分の変化

     ,轟、:25。C駕 團=5。C. ○:一一25◎C

70

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 40

零30

8ド漏20彦

睾1。

 0

 6

84く

証2遷

 0

0 20 40 60 80 葉00

0 20 40     60

保存日数(日)

80 壌00

図5-4煮干しだし汁中の核酸関連物質の変化

       △=盤5◎C. 曜15。C、 Ol一・250C

71

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表5遭 煮干しだし汁の遊離アミノ酸組成

アミノ酸 (mg/100mD

Tau 1t6

Asp 0.3

Thr 0.6

Ser 0.4

Glu t3

Pro 0.3

Gly 0.6

Ala 1.5

Var 0.5

亙le 7.2

Leu 9.5

Try 44Phe 0.9

His 28.1

Lys 0.7

Arg ◎.5

72

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 t5

8く

.塁。.5

  0

  0

 0.8

なむロ ε

属。.4

ε.墨

黒。.2

  0

   0

 30

820く

歪10覇

  0

   0

20 40 60 80 100

20 40 60 80 100

20 40 60 80 100

保存日数

図5-5煮干しだし汁中のグルタミン酸.リジン.ヒスチジン量の変化

                         《=250C、圃=5。C、○=一一250C

73

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 100

 80

埋 60

一』 @40

 20

  0  0

  8

  6

鯉4⑩ 2

  0

 -2

  25

  20

倒15這10

  5

  0

20 40 60 80 准00

20 40 60 80 霊00

0        20        40        60        80        100

       保存日数

図5-6 煮干しだし汁の色調の変化

  《=250C、困:50C。○=一25◎C

74

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4.煮干しの脂質酸化と色調の変化

 一般に水産食品の加工、貯蔵の際には脂質酸化に基づく悪変がしばし

ば見られる。油焼けと呼ばれる病変現象はその代表的なものである。こ

の油焼けは単に脂質が酸化するのみでなく、魚体中のタンパク質、遊離

アミノ酸および揮発性塩基などのアミノ化合物が作用して生ずると言

われている59061)。そこで保存期間中の煮干しの脂質酸化と褐変の様子を

みるためTBA値、脂肪酸組成、高度不飽和酸の残存率の変化および色調

の変化を調べた。図5-7にTBA値の変化を示した。各煮干しいずれも保存

10日目まで急激に増加し、以後保存30日目まで減少し、その減少速度は、

保存温度が高いほど速かった。保存30日以降各煮干しともほぼ平衡状態

を保持していた。滝口18)は煮干しの脂質酸化や転変の進行にMet、 His

およびLysの一部が関与することを報告している。本実験結果において

も保存30日までLys、 Hisは減少していたことからTBA値の減少について

は、酸化によって生成した過酸化物が、2次生成物に変化したと考えら

れ、その一部は褐変すなわち酸化脂質とアミノ酸との反応に費やされた

と推定された。保存開始時の煮干しの脂肪酸組成は表5-3に示す通りで

ある。C20:5、 C22:6の高度不飽和酸の組成比が高く、飽和酸ではC16:0の

組成比が高かった。煮干し保存中における高度不飽和酸の残存率の変化

を図5-8に示した。25℃で保存した煮干しは、保存10日後に高度不飽和

酸の残存率が急激に低下し、以後ほとんど変化が認められなかった。こ

れに対し5℃、一25℃で保存した煮干しの場合の残存率は全保存期間を

通して徐々に低下するが、25℃のそれより高かった。これは室温で保存

した煮干しは保存初期に急激な酸化がおこり、以後徐々に酸化が進行し

たのに対し、低温保存した煮干しは全保存期間を通して酸化が緩やかに

進行したことを示唆している。

 保存期間中における煮干しの色調の経日変化を図5-9に示した。L値は

保存中変化がなかったが、a値は30日後に上昇し、60日以後減少した。

b値は25℃で保存した煮干しが、30日以後徐’々に増加した。

75

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 2.5

 2璽

窪t5

3運 1話

ト0.5

 00         20         40         60         80         100

          保存日数

図5-7煮干し貯蔵中のTBA値の変化

     《:250C、圃:5QC魅○:一250C

   表5-3煮干しの脂肪酸組成

脂肪酸

14:0

16=0

16=1

18=0

18=1

1812唾813

譲011

20=4

2015

22:5

蹉豊:6

(%)

8.7

18.5

12.翌

6.8

8.5

1.7

0.5

0.2

2.3

楓51。2

罹9。7

76

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ま100

6縛80ミ6・

§4。

暑2。

§。

0 20 轟0 60 80 100

保存日数

図5-8  高度不飽和酸の残存率の変化

         A=250C, 騒=50C,○:一250C

これらの結果から、25℃で保存した煮干しは保存初期の急激な脂質酸

化並びに酸化脂質とアミノ酸との反応による褐変が10日以後徐々に、30

日以後顕著に進行したため、そのだし汁は、30日後には香りの評価が低

下し、さらに60日後には三三や酸化により生成した低級脂肪酸やカルボ

ニル化合物による不快臭、酸味、苦味、渋味などが加わり著二しく評価が

低下したと考えられた。一方、5℃、一25℃保存の煮干しの高度不飽和

酸は保存中減少し、脂質酸化に伴う褐変因子は生ずるが、低温のため褐

変反応速度は抑制され、そのため、特に一25℃で60日間保存した煮干し

のだし汁の評価は、5℃、25℃貯蔵の煮干しだし汁に比べて高かったと

思われた。

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 100

 80

 60埋

ヨ 40

0 如 60 80 100

0 20 40 60 80 1GO

15

10

0 20 ⑳ 60 80 100

貯蔵日数

図5-9煮干し貯蔵中の色調の変化

        《=盤50C、國15。C.○=一25。C

78

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 Labuzaら44)は水分活性と食品の保存性を左右する各種要因(脂質酸化,

非酵素的褐変,微生物の生育など)および相対変化との関わりを明らか

にしており、これらの中で非酵素的褐変の速さと強さは水分活性0.65~

0.8で増大し、その範囲を越すと減少することを報告している。図5-7、

図5-8、図5-9に示すように、煮干しの非酵素的褐変の遅速は保存温度に

よって違いがみられ、高温になるほど速くなる傾向を示したことから、

その理由は保存中の試料の水分活性にも関わりがあると考え、25℃、5℃

および一25℃に対応する水分活性を求めるたところ、それぞれ約0.69、

051およびく051であった。このことから、本実験で保存中の褐変化が

低温保存になるほど遅延していた結果はLabuzaらの報告44)と符合すると

いえる。

 以上、煮干しの保存温度が、だし汁の風味に及ぼす影響をみると、保

存10日後までは保存温度の影響はほとんどなく、だし汁の味は製造直後

のものと差異はなかった。保存30日後は、25℃で保存した煮干しのだし

汁は5℃、一25℃に比べて香りの評価が低かったが、うま味、生臭み、

総合評価は差が認められなかった。また製造直後のだし汁に比べると、

各保存温度とも評価はやや低下した。保存60日以後では、保存温度が高

いほどだし汁の評価は低下するが、低温保存特に一25℃で保存したもの

は評価が高かった。

 一般に市販されている煮干しは貯蔵中の脂質酸化を防止するために、

酸化防止剤や脱酸素剤を使用し、賞味期限を冷蔵で約6ヶ月程度に設定

していることが多い。また一般家庭では購入した煮干しはだいたい10日

から1ヶ月位で消費し、この間通常は常温で保存することが多いと言わ

れているが、煮干しだし汁の風味を保持するためには、煮干しを常温で

保存する場合は購入後10日間前後で消費することが望ましく、それ以上

長期間の保存には低温保存がより効果的であることを確認した。

79

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5-1-4要約

 煮干しの保存温度の違いが、だし汁の風味、溶出成分に及ぼす影響を

明らかすることを目的として、25℃、5℃、一25℃で90日間保存した煮

干しを聖日的に取り出し3%煮干しだし汁を調製し、官能検査、溶出成

分の分析および煮干しの脂質酸化、色調の変化を調べ、以下のことが明

らかになった。

(1) 官能検査の結果、煮干しだし汁は保存10日後では、保存温度の影響

 はなく、その味は製造直後のものと差異はなかった。保存30日後の煮

 干しのだし汁は25℃で保存したものは5℃、一25℃保存に比べ香りが

 悪く、だし汁の評価は各保存温度とも製造直後に比べてやや低下した。

 保存60日後の煮干しのだし汁は、一25℃保存のものでは製造直後に比

 べてうま味の強さ、総合評価はやや劣るが、香り、生臭みは違いがな

 く評価は良好であったが、5℃、25℃保存のものは評価が低く、特に

 25℃保存のものは著しく低かった。保存90日後では各保存温度の煮干

 しいずれもだし汁の評価は低かった。

(2) だし汁の溶出成分の分析から、全エキス分、酸度、アミノ態窒素は

 全保存期間中ほとんど変化がなく、保存温度による違いも認められな

 かった。だし汁のうま味成分として知られる5’一IMPは保存期間中やや

 増加し、5’一AMPは25℃保存で30日以後増加傾向が見られたが、官能

 検査では保存30日以後煮干しの保存温度が高いほど評価は低下した。

 これは保存温度が高いほど高度不飽和酸およびLys、 Hisは減少し、色

 調のa値、b値は増加していたことから、煮干しの脂質酸化および酸化

 脂質とアミノ酸との反応による褐変が進行し、だし汁に苦味、生臭み

 などが加わり評価が低下したと考えられた。

80

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第6章

粉宋煮干しだしの風味や溶出成分

に及ぼすだし袋の影響

6-1-1 暗者  言

 煮干しイワシは天然のだし汁として味噌汁や総菜等に利用され、最近

の自然志向、健:康志向を反映して家庭での利用も増えているが、さらに、

この利用も簡便志向からだし壷中に煮干しイワシの粉末を封入した、い

わゆるだしパックでの利用も増加している。お茶やだしの抽出に利用さ

れる袋は、こす手間が省けるため大変便利なものであるが、それだけで

はなく煮干しだし汁の場合、だし袋を用いると生臭みの少ない美味なだ

し汁が得られると言われている。一般に紅茶、緑茶、コーヒーなどを熱

湯で抽出濾過するのに用いられるティーブイルターは、マニラ麻などの

天然繊維とパルプを原料とする湿式不織布が多く、その特性は有害物を

含まず、加熱に耐える適度な強度を持ちお茶本来の香りや風味を損なわ

ないことである65)。だし汁に関する研究は多数あるが、だし汁抽出にお

けるだし袋の影響について調べたものはほとんど見られない。そこで本

章では、粉末煮干しだし汁の風味や溶出成分にだし袋がどのような影響

を及ぼすのかを明らかにすることを目的とした。さらにだし袋の素材の

違いによるだし汁抽出への影響についても検討した。

6-1-2実験:方法

81

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1.試料

 試料は2000年12月に長崎県東部漁協で煮干しとして加工されたカタ

クチイワシ翫gア醐〃3ノαρoη∫c〃5 の小羽を用いた。煮干し試料の水分量は

16.10%(105℃乾燥法)、粗タンパク質量は69.90%(ケルダール法)、

粗脂肪量は4。56%(ソックスレー抽出法)、糖分は0.58%(フェノール

硫酸法)、灰分量は 13。50%(550℃乾式加熱灰化法)であった。

2.だし袋

 だし袋の素材として、親油性繊維と親水性繊維からなる不織布を用い

ることにした66)。親油性繊維として1,4一ベンゼンジカルボン酸と1,2一エタ

ンジオールを縮合重合したポリエチレンテレフタラート繊維を用いた。

親水性繊維としてコットンリンターを原料にしたキュプラ繊維を用い

た。不織布はスパンボンド法により製造した。前者をポリエステルだし

袋、後者をキュプラだし袋と呼ぶことにする。だし袋として用いた不織

布の走査型電子顕微鏡写真を日本電子製JSM-5600で撮影し、図6-1に示

した。(a)はポリエチレンテレフタラート繊維、(b)はキュプラ繊維であ

り、ともに159倍半撮影した。これら2種類の不織布の明細を表6-1に示

した。通気抵抗は通気性試験機(カトーテック製KES-F8-AP1)で測定し

た。不織布同士の比較から、この2種類の不織布はその構造上の大きな

差異が無いものとして用いた。

表6-1不織布の明細

不織布 厚さ  重さ  含気率   通気抵抗(mm)  (/㎡)  (%)(kPa・sec/m)

ポリエステル不織布 α084  2t98  80。%

キュプラ不織布   0.057  調3.61  84。03

O。0366

0.0261

82

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幽畠

謡1翻

《a)

翼  男後

《bl

図㊨噸  不織布の走査型電子顕微鏡写真

        (のポリエチレンテレフタラート繊維

        (b)キュプラ繊維

83

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3.粉末煮干しだし汁の調製

 煮干しは水の2%(w/v)を使用し、頭と内臓を除去した後粉砕し蒸留水

を加え強火にかけた。沸騰後火を弱め2分から60分間加熱し、ただち

に東洋濾紙(No.2)で濾過し定私した。なおだし汁は水から加熱し8分後

に沸騰するよう火加減を調整した。だし袋は各不織布を6×7cmの袋にし

て煮干し粉末を入れ、上記と同様にだし汁を調製した。

4.官能検査

 だし袋の有無による粉末煮干しだし汁の呈味性を比較するため、2%

濃度で沸騰後2分間加熱した各だし汁を上記のように調製し塩分濃度

0。6%となるように食塩を加えた。各だし汁の香り、生臭み、苦味および

渋味、うま味、総合評価について粉末煮干しだし汁を基準にして2点嗜

好試験法の変法65)により、7段階尺度で評価し、t検定により解析した。

予備実験で味覚感度の高い女子学生および栄養健康学科教員15名をパ

ネルとした。

5.煮干しだし汁溶出成分の分析方法

1)全エキス分1だし汁15mlを秤量皿にとり、105℃蒸発乾固法によった。

2)酸度:フェノールフタレイン溶液を指示薬として0.1N水酸化ナトリウ

ムの滴定量で示した。

3)アミノ態窒素:ホルモール滴定法によった。

4)核酸関連物質1だし汁30mlにスルポサリチル酸lgを溶解し、遠心分離

(4,000rpm、10min)後濾過し、濾液を高速液体クロマトグラフ(島津製

作所:LC6A型)に供し、定量した。カラムはShimpack WAX(4mmi.d. x

50mm)移動相は25mMNaH2PO4温度は40℃、流量は1。Oml/min、検出は

260nmで行った。

5)遊離アミノ酸1上記と同様に処理した試料を、アミノ酸分析計(島津

製作所A:LC-1000型)で分析した。

6)Ca量:だし汁中のCa量を原子吸光法67)で測定した.

7)色調1測色色差計(日本電磁製ND-1001-DP型)で分析した。

8)脂質の抽出と脂質含量の測定:脂質の抽出はBligh and Dyer法68)によ

り行った。抽出操作中の脂質の酸化を防ぐため、予め抽出溶媒に0.01%

84

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のBHTを添加した。脂質含量は常法により測定した。

9)脂質の酸化程度の測定:カルボニル価(COV)は基準油脂分析試験法69)

により、TBA値は松下の方法70>により測定した。

10)脂肪酸組成1抽出した脂肪をけん化、メチル化後ガスクロマトグラフ

ィー(GC)により分析した71)。GCの分析条件は以下の通りである。カラ

ム13.2mmi.d。×2m、充填剤:10%Silar-10CでコートしたChromosorb

WAW(DMCS)、カラム温度:210℃,キャリヤーガス:He、 He流速:

1kg/cm2、検出器1:FID。

㊨一ト3結果と考察

1.粉末煮干しだし汁の官能検査

 だし袋の有無によるだし汁の呈味性への影響、さらにだし袋の素材に

よる差異を2点嗜好試験法により調べ、その結果を図6-2に示した。だし

袋に入れた粉末煮干しだし汁はだし袋を用いない場合に比べて、香りが

良く生臭みが弱く、苦味・渋味も弱く、うま味には差異がないが総合評

価は良いと評価された。ポリエステルとキュプラのだし袋の素材による

差異は認められなかった。

2.粉末煮干しだし汁の溶出成分

 粉末煮干しだし汁と2種類のだし袋を用いただし汁の酸度、アミノ態

窒素、全エキス分の加熱に伴う変化を図6-3に示した。粉末煮干しだし

汁は成分の溶出が速く、酸度、アミノ態窒素は加熱3分後にほぼ平衡状

態となった。全エキス分は沸騰後2分で平衡状態になった。だし袋に入

れた粉末煮干しだし汁のそれは沸騰後2分間の加熱でほぼ平衡状態にな

ったが、溶出量はだし袋を用いない場合に比べて少ない傾向が見られた。

だし袋の種類による溶出成分の差異はほとんど認められなかった。煮干

しだし汁のうま味の主体である5’一IMPと5’一AMP量の溶出に及ぼすだし

袋の影響を図6-4に示した。5’一IMPの溶出は、粉末煮干しだし汁では加

熱3分後にほぼ平衡状態となったのに対し、だし袋に入れたものは沸騰

後2分間の加熱で平衡状態となった。

85

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香り

生臭み

蓄み・渋み

うま味

総舎評価

男 7

悪いトー一一+一一一一一騨

弱いトー+一一

        駄_寧酬

悪いトー一一→一一一十一            一麟一

良い

強い

強い

強い

良い

図6-2 粉末煮干しだし汁の官能検査

                 ⑭:粉末煮干しだし汁

                 ○:ポリエステルだし袋

                 △:キュプラだし袋

                 n罵15,*lp〈0。05,**:p〈0。01

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3

釜2§

謹1

0

 5

釜48畏3圏

騰2

響,

卜o

0 10 20 30 40   50 60 70 80

0 10 20 30 40 50 60 70 80

 0爆

ζ}α3ε

蚕α2

描α1

 00  0       10      20      30      40      50      60      70      80

             加熱時間(分)

図6-3粉末煮干しだし汁の溶出成分に及ぼすだし袋の影響

                       ㊧:粉末煮干しだし汁

                       ○=ポリエステルだし袋

                       △=キュプラだし袋

87

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      30

     釜25

     §20

     喜壌5

     彊1・

     竃5

       0        0     10     20     30     40     50     60     70     80

       3

      釜

      82      く

      審

      達壌      ≡iii

      ホ

       0        0     10     20     30     40     50     60     70     80

                  加熱時間(分)

図6-4粉末煮干しだし汁の核酸関連物質の溶出に及ぼすだし袋の影響

                           ㊧=粉末煮干しだし汁

                           ○:ポリエステルだし袋

                           △・.キュプラだし袋

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その溶出量は袋を用いない場合に比べてポリエステルだし袋はほぼ同

じレベルになったが、キュプラだし袋を用いた場合は少ない傾向が見ら

れた。5’一AMP量も5’一IMP量と同様な傾向を示した。このことは5’一IMP

および、5’一AMPはその分子内に水酸基等を含んで親水性を示すこと、ま

たキュプラ繊維も同じような性質を示すことから両者間に何らかの作

用により5’一IMPおよび5’一AMPが繊維に吸収された結果、溶出量が少なく

なったと思われる。これに対しポリエステルだし袋を用いた場合5’一IMP

と5’一AMPの透過した量は多く、だし袋を用いなかったときの抽出量とほ

ぼ同じレベルになった。これは、5’一IMPや5’一AMPがキュプラ繊維に比べ

て親水性を示さないポリエステル繊維との相互作用がほとんどなく、そ

れらの大部分がだし袋の繊維間隙を透過したためと考えられた。

 加熱に伴うだし宮中に溶出した遊離アミノ酸の変化を表@2に示した。

だし汁のいずれも17種類の遊離アミノ酸が検出され、そのうちTau、 His、

Glu、 Alaが多く含まれていた。加熱に伴うアミノ酸の溶出量の変化は、

粉末煮干しだし汁の場合加熱1分から5分で成分の溶出は終了し、以後

ほぼ平衡状態であるのに対し、だし袋を用いると加熱5分までの溶出量

は少なく10分後に上昇し、以後平衡状態を保持した。だし袋の素材によ

る溶出量はポリエステルだし袋では加熱10分後に粉末煮干しだし汁と

ほぼ同じレベルになるのに対し、キュプラだし袋では少ない傾向が見ら

れた。この理由としてアミノ酸が親水性のキュプラ繊維に吸収されたた

め溶出量が少なくなったと考えられた。この結果はキュプラ繊維への吸

収量が抽出時間の経過とともに増加することを示唆していると考えら

れた。

 煮干しのCaの溶出に及ぼすだし袋の影響を調べ、その結果を図6-5に

示した。溶出Ca量は粉末煮干しだし汁では加熱時間が経過しても

0.6mg/100m1を示してほぼ一定であるのに対し、だし袋を用いると加熱時

間の経過とともに溶出量は増加するが粉末煮干しだし汁に比べて少な

かった。これはだし袋に用いた繊維の静電引力によりCaイオンが吸収さ

れたためと考えられた。

89

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8

表6-2 加熱による粉末煮干しだし汁中の遊離アミノ酸の変化

《r窮9!唱。◎rr幽》

粉末煮干しだし汁 粉末煮干しだし汁 粉末煮干しだし汁

だし袋なし ポリエステルだし袋 キュプラだし袋

加熱時間(分) 加熱時閣(分) 加熱時間(分)

アミノ酸 唾 5 鱒 38 看 5 竃◎ 38 唱 5 悪。 38

Ta腿 謂鳳《)8 1535 謂5.35 14。鯛 2.35 7.07 鱗.98 韓.28 2.◎3 5.09 7.稲 8.06

Asp ◎.憾 ◎.22 0.26 0.23 ◎.◎o ◎.16 ◎.33 ◎.3尋 o.o⑪ ◎.◎◎ ◎.調2 ◎.12

Thr ⑪.6◎ ◎,7尋 0.88 ◎.77 o.喰3 o.39 oB喉 ◎.76 0.◎5 ◎23 ◎.鱗 ◎.53

Ser 0.32 ◎.毒5 ◎.6◎ o.57 ⑪.唱。 03唾 0.63 ◎.6盆 ◎.04 o.15 ◎.尋7 o.羅3

G贈 ◎.88 喰.◎2 t2唱 1。竃7 0.21 o.66 t3尋 1.27 ◎.◎8 ◎.37 o.96 ⑪.87

靴◎ ◎.36 04◎ ◎45 ◎.45 o.◎9 ◎.26 o.5尋 ◎.50 o.01 ◎.◎9 0.32 ◎.29

Gly ◎.80 ◎.88 ◎.7尋 o.69 ◎。韓 ◎.43 ◎.91 o.87 ◎.08 ◎.24 ◎.6・堺 ◎.58

Ala ⑪.壌8 ◎.88 唯.35 t32 ◎.24 ◎.47 ◎.93 o.99 o.質 ◎.50 唱.29 謂.慣7

Va目 o.38 ◎.尋7 0.37 o.聡 ◎.07 0.23 o.47 0.48 ◎.◎o o.◎毒 ◎27 ◎.2尋

躍就 ◎.26 ◎.35 ◎.35 ◎.30 o.◎o ◎.1轟 0.28 ◎.27 ◎.◎◎ o.o◎ ◎.06 ◎.03

11e ◎2謂 ◎.27 ◎.23 ◎26 0.◎◎ o.韓 o.29 0.26 ◎.◎◎ ◎.◎◎ o。鋼 ◎.08

む磯 ◎.鴫 0.59 ◎.5尋 0.58 o.◎◎ ◎.3◎ ◎.62 0.55 o.◎◎ ◎.◎8 ◎.35 ◎3唱

Tyr ◎.唱3 ⑪25 0.27 o.25 ◎.◎o ◎.oo 0.28 0.26 ◎.oo o.oo ◎.◎7 ◎.◎5

臨e o.58 ◎.8噛 ◎.70 ◎.75 o.鱗 0.28 o.65 o.59 ◎.◎◎ o.06 o.38 0.35

騒IS 腰.醜 鱒.32 唱2.77 唱3.55 唱.92 5.95 1変.8講 12.27 2.唯8 54竃 7.56 鯛。03

しys ◎.95 t◎8 t鯛 to9 o。竃8 ◎.53 1.08 胤。尋 ◎.◎2 0.25 ◎.8尋 o.8◎

A霊9 ◎.瑠 ◎.曝。 o.68 ◎.6尋 ◎.唱6 ⑪.53 0.87 ◎71 ◎.o尋 o.唱。 ◎.39 0.33

T◎量al 33.20 38.聡 37.86 37.17 5.63 竃7.85 37.85 36.◎6 尋.,6尋 竃2.6唱・ 2唱.58 25.27

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 0.8

塞α6

轟α4

響α2

 0.00     10     20     30     40     50     60     70     80

       加熱時間(分)

図6づ粉末煮干しだし汁のC綾の溶出に及ぼすだし袋の影響

               鯵:粉末煮干しだし汁

               ○:ポリエステルだし袋

               △:キュプラだし袋

3.煮干しおよびだし汁、だしがら中の脂質の分析

 煮干しおよび沸騰後2分間加熱しただし汁、だしがら中の脂質含量と

その酸化の程度についてだし袋の有無による違いを表6-3に示した。だ

し汁の脂質含量は粉末煮干しだし汁が0.005%であるのに対して、だし袋

を用いるとポリエステルだし袋が0。001%、キュプラだし袋が0.002%と低

かった。まただしがらはだし袋を用いた方が脂質含量が高いことから、

だし袋は煮干しの脂質のだし汁への溶出を抑制することが明らかにな

った。これはだし袋を構成する繊維が脂質を吸収すると考えられ、さら

にポリエステルだし袋を用いて抽出したときのだし汁の脂質含量がキ

ュプラだし袋を用いたときのそれより少なかったのは、脂質がポリエス

テル繊維表面の疎水基に吸収され、透過する量が少なくなったためと考

えられた。だし汁中の脂質のCOVは煮干しの2~4倍、 TBA値は3~4倍の

値を示し、加熱により脂質の酸化生成物が増加したことを示している。

91

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表6-3 煮干しおよびだし汁,だしがら中の脂質含量とその酸化の程度

脂質含量 (鮨)

COV T8A値(μm◎1/k菖)

煮干し

煮干しだし汁(袋なし)

煮干しだし汁(ポリエステルだし袋)

煮干しだし汁(キュプラだし袋)

だしがら(袋なし)

だしがら

(ポリエステルだし袋)

だしがら(キュプラだし袋)

5.5魂・7 ;勤 0.002

0.⑪05 ± 0.0◎06

0.◎01 ± 0.OOO3

◎.OO2士 0.000鴫

t205 :豊= 0.176

t馴唯 ± o.咽45

調.469 ± O,071

雪19 ±《)。5

変8璽:土 3.3

・曝魂6 ±  ヨ6.0

餐96 ± 3.3

踊8 ± 10.瑠

唯06 士㊨.騒

胴7 :血 o.唱

雇627 ± 63

65尋6 ± 盤5盤

723騒 ±鴫2i6

尋質0 士 129

19鵡7 置藍 6轟0

鷹78◎ ± 轟82

望91壌 ± 1354

92

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煮干しおよびだし汁、だしがらの脂肪酸組成の平均値を表6-4に示した。

煮干しは、全脂肪酸のうち約46%が飽和脂肪酸で、約14%が1価不飽和

脂肪酸、約36%が多価不飽和脂肪酸であり、主な構成脂肪酸は、パルミ

チン酸(16:0)、DHA(22:6)、ミリスチン酸(14:0)、 PA(20:5)、オレイ

ン酸(18:1)およびステアリン酸(18:0)であった。煮干しに比べて、だし

汁・だしがら中には、飽和脂肪酸が増加し、不飽和脂肪酸が減少する傾

向が見られた。これはだし汁・だしがら中の脂質の酸化が加熱により進

行したことを示唆している。

表6-4煮干しおよびだし汁,だしがらの脂肪酸組成

脂肪酸  煮干し 粉宋煮干しだし汁粉宋煮干しだし汁粉末煮干しだし汁 だしがら  だしがら   だしがら

       (袋なし)    (ポリエステル)   (キュプラ)    (袋なし〉 (ポリエス予ル) (キュプラ)

噌4:◎

総IO1611

18:0

18:1

1812

憾:3

盤。:4

灘。:5

2蹉:5

22:6

哩5.5

23.8

6.6

6.8

7。5

t30.3

t711。4

0.7

20.9

8225。6

t6盤。噌

噛。7

030203詮,1

0229

駿。2

240,5

農.4

0,5

0。1

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0.竃

O。7

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◎、7

0。4

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0。7

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創。6

6.噂

6。3

6.7

1.3

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t51toO。7

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16。9

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7。6

噂.4

03t51t10.8

18、4

21。2

24。8

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6.9

t3◎2

t510.6

0。6

172

飽和脂肪酸  46,1 89。9 ⑭7 97.5 49.4 483 5t9

一価不飽和脂肪酸 14.1 33 コ口 。.8 俊。8 14.7 13.3

多価不飽和脂肪酸 363 ao t7 t4 34.o 鵠。5 3t4

93

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4.粉末煮干しだし汁の色調

 粉末煮干しだし汁の色調に及ぼすだし袋の影響を検討し、その結果を

図6-6に示した。L値は粉末煮干しだし汁が加熱とともにやや低下し、 a

値は粉末煮干しだし汁が加熱とともにやや増加していた。b値は粉末煮

干しだし汁がだし袋を用いたものより著しく高く、これは加熱時間とと

もにだし汁の色が黄色味を増していることを示している。このことから

だし袋を用いると粉末煮干しだし汁に比べ、透明度の高い澄んだだし汁

が得られることが確認された。だし袋の素材による差異は認められなか

った。

 以上、粉末煮干しだし汁抽出にだし袋を用いると、香りが良く、生臭

みは弱められ、苦味・渋味も弱くうま味は差異が認められないが総合的

に好ましいだし汁が得られることが明らかになった。溶出成分の分析か

ら、だし袋を用いると酸度、アミノ態窒素および全エキス分の溶出量は

沸騰後2分でほぼ平衡状態となるが、だし袋を用いない場合に比べて溶

出量が少ない傾向が見られた。また煮干しだし汁の主要なうま味成分で

ある5’一IMP、5’一AMP、遊離アミノ酸も沸騰後2分で平衡状態となったが、

キュプラだし袋は溶出量が少なかった。これはキュプラだし袋が親水性

であるため繊維に吸収されたためと考えられた。官能検査では、だし袋

を用いると香りが良く、生臭みが弱められ、苦味や渋味は少ないと評価

されたが、これについては、だし袋を用いるとだし汁の脂質含量が低く

なることに起因していると考えられた。一般に魚の生臭さは意味成分の

一つトリメチルアミンオキサイドが酵素で分解されて生成するトリメ

チルアミンや脂肪の酸化分解によって生成する揮発性のカルボニル化

合物が原因とされている72)。だし袋を通すと、脂質が吸収され、だし汁

申の脂質含量は低く酸化生成物の量も少ないため、脂質の酸化・分解に

よる特有のにおいも抑えられ、だし汁の生臭みが少なくなったと考えら

れた。

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10     20    30    40    50     60    70    80

10      20      30      40      50      60      70      80

10     20     30     40     50     60     70     80

図6-6粉末煮干しだし汁の色調に及ぼすだし袋の影響

                         ㊧:粉末煮干しだし汁

                         ○:ポリエステルだし袋

                         △:キュプラだし袋

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6一咽一4  要  糸勺

 粉末煮干しだし汁の風味や溶出成分に、だし袋がどのような影響を及

ぼすのか、さらにだし袋の素材の違いによるだし汁抽出への影響につい

て検討し、以下の結果を得た。

(1) 官能検査の結果、粉末煮干しだし汁の抽出にポリエステルだし袋、

 キュプラだし袋を用いると、香りが良く、生臭みは弱められ、苦味・

 渋味も弱く、うま味には差異がないが総合的に好ましいと評価された。

 だし袋の素材による違いは明らかでなかった。

(2) 溶出成分の分析から、だし袋を用いると酸度、アミノ態窒素およ

 び全エキス分の溶出は沸騰後2分でほぼ平衡状態となるが、だし袋を用

 いない場合に比べて溶出量は少なかった。また煮干しだし汁の主要な

 うま味成分である5’一IMP、5’一AMPおよび遊離アミノ酸の溶出はだし袋

 を用いると、沸騰後2分でほぼ平衡状態となった。その溶出量は袋を

 用いない場合に比べてポリエステルだし袋はほぼ同じレベルになった

 が、キュプラだし袋は少なかった。これは親水性のキュプラ繊維にこ

 れらが吸収されたためと考えられた。

(3) だし袋を用いると、香りが良く生臭みが抑えられるのは、煮干し

 の脂質がだし袋に吸収され、生成したにおい物質もだし袋に吸収され

 るためと考えられた。

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総合考察

 煮干しイワシは古くからわが国で作られてきた伝統食品であり、主と

してだしをとるために用いられる。だしは日本料理におけるおいしさの

もとになるものであり、煮干しイワシはかつお節、昆布に並ぶだし素材

として今なお私達の食生活には欠くことのできないものである。

 この煮干しイワシはカタクチイワシや小型のマイワシなど比較的脂質

含量の低いものを煮熟後乾燥した製品で、その特性はうま味成分を多く

含み、保存性が良いことであるが乾燥時間が長く、また常温で貯蔵およ

び流通されることが多いため脂質酸化による品質低下をおこしやすい食

品である。

 本研究は、好ましい煮干しだしを取るための煮干しイワシの品質とだ

しの風味の関係を明らかにすることを目的に、煮干しイワシの品質保持

に及ぼす貯蔵温度と大きさの影響およびだしの風味に及ぼす煮干しの大

きさや保存温度さらにだし袋の影響について検討した。

 第2章では、長崎県産煮干しイワシの大きさと化学的性状の関係を調

べた。1998年12月に長崎県沿岸海域で水揚げされたカタクチイワシの

煮干し23種類の成分分析を行った結果、煮干しの水分含量は約11~

40%を示して大きな変動が見られ、水分活性との問には高い相関が認め

られた。煮干し脂質の酸化の程度は、煮干しが小さいほど低い傾向が見

られ、これは煮干しの脂質含量の多寡が影響していると考えられた。煮

干しの主要なうま味成分である5’一IMPや遊離アミノ酸のGluは煮干し

が大きくなるほど多く含まれる傾向が見られ、煮干しイワシの成分は魚

体の大きさによって異なる傾向を示した。

 第3章では、煮干しイワシの品質保持に及ぼす貯蔵温度と大きさの影

響について検討した。貯蔵中における大きさの異なる煮干しイワシの品

質変化は、25℃貯蔵では、小羽、中羽および大羽の大きさの異なる3種

類の煮干しは、いずれも貯蔵10日目まで官能評価は良好であったが、

褐変が進行し、貯蔵30日以後煮干しの品質はやや低下し、貯蔵90日以

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後著しく低下した。5℃、一25℃貯蔵では煮干しの褐変は徐々に進行し、

25℃貯蔵に比べると品質低下が抑制された。煮干しの大きさによる品質

変化は、いずれの貯蔵温度でも貯蔵30日目まで煮干しの大きさによる

差異は認められないが、貯蔵60日以後脂質の酸化や褐変の程度が比較

的低かったため、小羽の評価が高かった。これは煮干しが小さいほど脂

質含量が少なかったことに起因していると考えられたが、煮干しの大き

さの品質変化への関与は不明である。

 第4章では煮干しだしの風味や溶出成分に及ぼす煮干しイワシの大き

さの影響について検討した。カタクチイワシの成長過程における4種類

の煮干し(カエリ、小羽、中羽、大羽)のだし成分の比較をした結果、

水の3%の煮干しを30分間浸漬後3分間沸騰加熱しただし汁を試料と

した場合、官能検査の評価はカエリが最も高く、溶出成分も多かったが、

小羽、中羽、大羽は差が明らかでなかった。これについては特に煮干し

の形状の大きい中羽、大羽は30分浸漬後3分間の加熱では、だし成分

が十分溶出していないためと思われた。そこで煮干しのサイズ別に、煮

出し法の違いによるだし汁の嗜好性や溶出成分を比較し、煮干しの大き

さと煮出し法の関係を調べた。その結果、煮干しを30分間浸漬後1分

間沸騰加熱した場合は、各煮干しとも評価は低く、30分間沸騰を継続す

るとうま味が増し、各煮干しとも評価が高かった。30分間浸漬後3分間

沸騰加熱した場合、小羽は評価が高かったのに対し、中震や大羽は、う

ま味が十分溶出していないためか評価が低く、小羽が中羽や大羽に比べ

成分の溶出が速い傾向が認められた。この要因のひとつとして小羽の表

面積が出羽や大羽に比べて大きいことが考えられ、煮干しの大きさによ

り煮だし方法を勘案する必要があることを明らかにした。煮干しの大き

さに適しただし汁の抽出方法は、小羽のように小さめの煮干しの場合は、

30分間浸漬後3分間沸騰加熱するかまたは浸漬なしで5分間沸騰加熱

することで美味なだし汁が得られる。一方、中庸や大羽のように大きめ

の煮干しはできるだけ表面積が大きくなるように裂き、沸騰後10分か

ら30分間加熱して十分煮出すことがより有効な抽出方法であることを

明らかにした。

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 第5章では煮干しだしの風味や溶出成分に及ぼす煮干しイワシの保存

温度の影響について検討した。煮干しは25℃、5℃、一25℃で90日間

保存し、3%の煮干しだしを調製し風味や溶出成分を調べた結果、保存

10日後まではだしの味、溶出成分に及ぼす煮干しの保存温度の影響はほ

とんどなかった。保存30日後は、25℃で保存した煮干しのだしは香り

の評価が低かった。保存60日以後では、保存温度が高いほどだしの官

能評価は低下した。これは煮干しの脂質酸化による褐変が進行し、だし

に苦み、生臭みなどが加わり評価が低下したと考えられた。煮干しだし

の風味を保持するためには、煮干しを常温で保存する場合は購入後10

日間前後で消費することが望ましく、それ以上長期間の保存には低温保

存がより効果的であることを明らかにした。

 第6章では、粉末煮干し出し汁の風味および溶出成分に及ぼすだし袋

の影響について検討した。粉末煮干しだしの抽出にポリエステルだし袋、

キュプラだし袋を用いると官能検査では、だし袋を使わないものに比べ

て、香りが良く、生臭みは弱かった。また苦味・渋味も少なかったため

うま味には差がなかったが総合的に好ましいと評価された。だし袋の素

材による差は明らかでなかった。溶出成分はだし袋を用いると酸度、ア

ミノ態窒素、全エキス分の溶出は沸騰後2分でほぼ平衡状態となるが、

だし袋を用いない場合に比べて溶出量は少なかった。また5’一IMP、

5’一AMP、遊離アミノ酸の溶出はだし袋を用いると、沸騰後2分間の加熱

でほぼ平衡状態となった。その溶出量は袋を用いない場合に比べてポリ

エステルだし袋はほぼ同じレベルになったが、キュプラだし袋は少なか

った。これは親水性のキュプラ繊維にこれらが吸収され溶出量が少なく

なったと考えられた。だし袋を用いると、香りが良く生臭みが抑えられ

るのは煮干しの脂質がだし袋に吸収され、脂質の酸化・分解による好ま

しくないにおい物質もだし袋に吸収されるためと考えられた。

 以上のように、本研究では煮干しイワシの品質保持やだしの風味に及

ぼす貯蔵温度と大きさの影響およびだし袋の効果を明らかにし、良質の

煮干しだしをとるための、煮干しの保存温度と煮干しの大きさに応じた

適切な煮だし方法を具体的に示した。

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 近年、女性の社会進出により主婦の調理にかける時間は減少してきて

いると言われる。だしをとるということは少々手間がかかることであり、

またうま味調味料やだしの素などの風味調味料の普及により、家庭でだ

しをとることが以前に比べて少なくなっていると思われる。忙しい現代

社会においてはこのような便利なものを利用することも当然必要となっ

てくるが、同時にわが国において昔から行われてきた、昆布、かつお節、

煮干しなど自然のだし素材でだしをとり、そこに溶出したうま味成分を

もとにして素材の持ち味を生かしたおいしい料理を作る、という日本の

伝統的な食文化も伝えてゆきたいものである。

 そのためにも、今後さらに種々のだし素材について、手軽で栄養的に

も優れ、より嗜好性の高いだしの抽出を検討して行くことが必要である

と考えられる。

100

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謝 辞

 本研究をまとめるにあたり、終始懇切なご指導、ご鞭捷をいただき

ました長崎大学水産学部 野崎征宣教授に深く感謝申し上げます。

 本論文作成につき、種々のご教示とご助言をいただきました長崎大

学水産学部 野口玉雄教授、同工学部 青柳東彦教授、同水産学部

原 研治教授に厚くお礼申し上げます。

 本研究を進めるにあたり、有益なご助言とご協力をいただきました

元活水女子短期大学 塩田教子教授、県立長崎シーボルト大学 樋口

才二助教授ならびに、実験にご協力いただきました元県立長崎シーボ

ルト大学助手 加瀬綾子氏、長崎大学水産学部水産利用学研究室の皆

様に厚くお礼申し上げます。

 本大学院進学につき、お世話になりました先生方ならびに、ご鞭捷

をいただきました県立長崎シーボルト大学看護栄養学部の先生方に心

からお礼申し上げます。

101

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Page 110: NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITEnaosite.lb.nagasaki-u.ac.jp/dspace/bitstream/10069/7303/...第1章 緒書 煮干しは、素干し、塩干し、節類などの魚類乾製品の一種で、イワシ類、イカナ

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