これだけは知っておきたい SNR, CNR 測定の基礎 大阪市立大学医学部附属病院 中央放射線部 竹森 大智 第4回 関西Gyro Basic
これだけは知っておきたいSNR, CNR測定の基礎
大阪市立大学医学部附属病院 中央放射線部
竹森 大智
第4回 関西Gyro Basic
何の違いでしょう??
何の違いでしょう??
1分 10分
ファントムを置いてから・・・
SNRの測定???
•測定の方法がたくさんありすぎて分からない??
•煩雑すぎて面倒??
•自分で測定したことがない??
しかし,SNRは重要な値なんです!!!
SNR,何で測定するの??
①画像評価における重要な指標
②装置や撮像パラメータの評価
MRI装置の性能評価
MRIの画像・・・いろんなパラメータで変化します
MRIの画質???
スライス厚1mm
スライス厚5mm
スライス厚10mm
3Tで撮像しています
MRIの画質
•静磁場強度
•装置の性能や品質管理の状態
•被験者自身の特性
•撮像条件等
宮地利明,今井広, 他.標準MRIの評価と解析.日本放射線技術学会:20-21,2012
画質評価の目的
•日常の画質の変動のチェック
•装置の更新やシステム更新に伴うテスト
•コイルやパルスシーケンスの比較
•病変の検出能の評価
宮地利明,今井広, 他.標準MRIの評価と解析.日本放射線技術学会:20-21,2012
MRIの画質評価項目
•信号雑音比(signal-to-noise ratio : SNR)
•コントラスト雑音比(contrast-to-noise ratio : CNR)
•画像均一性
•画像コントラスト
•スライス厚、スライス位置
•歪み
•アーチファクトなど
宮地利明,今井広, 他.標準MRIの評価と解析.日本放射線技術学会:20-21,2012
MRIの画質評価項目
•信号雑音比(signal-to-noise ratio : SNR)
•コントラスト雑音比(contrast-to-noise ratio : CNR)
•画像均一性
•画像コントラスト
•スライス厚、スライス位置
•歪み
•アーチファクトなど
宮地利明,今井広, 他.標準MRIの評価と解析.日本放射線技術学会:20-21,2012
本日の内容
SNRの測定
CNRの測定
本日の内容
SNRの測定
CNRの測定
信号対雑音比 SNR
•画像の雑音特性を表す値
• MRI画像の信号強度は相対値
➡信号値や雑音値を単独で評価できないため,SNRによって画像を評価.
SNR=Signal / Noise
SNR 影響を受ける因子
①装置のキャリブレーション(共鳴周波数,フリップアングルなど)
②送受信器のゲイン
③コイル調整
④RFシールド
⑤コイル負荷
⑥画像処理法
⑦撮像パラメータ
いずれかの性能に異常が発生しても必ずSNRが低下する→システムの悪化やトラブルの発生を感知正常に動作しているか確認できる
SNR
信号値
ファントム内の関心領域における信号強度の平均値
雑音値
人体とコイルからの熱雑音もしくは他の広域帯のランダムノイズ
SNR=Signal / Noise
SNR
信号値
ファントム内の関心領域における信号強度の平均値
雑音値
人体とコイルからの熱雑音もしくは他の広域帯のランダムノイズ
SNR=Signal / Noise
雑音値の測定に関しては種々の方法がある雑音の定義の仕方
SNR評価方法:雑音評価の違い
•同一関心領域法
•空中信号法
•差分法
(2回撮像法:差分法)
(2回撮像法:差分map法)
(1回撮像法:ピクセルシフト法)
SNR評価方法:雑音評価の違い
•同一関心領域法ファントム内の関心領域内の各ピクセルの平均信号値Spと同一の関心領域内の各ピクセルの標準偏差Npから測定する方法
信号値変動→誤差
Noise= SDROI
SNR評価方法:雑音評価の違い
•空中信号法:BGROi
ファントム内の関心領域の平均信号値Spとファントム内の空中に関心領域を設定し、その平均信号値Sairから測定する方法
※Parallel imaging (PI)には使用できない
Noise= BGROI/ 𝜋/2= BGROI/1.253
ROIの設定に注意!!!!
phase
SNR評価方法:雑音評価の違い
•差分法 (2回撮像法)ファントム画像を2回撮像を行い、どちらか一つのファントム内の関心領域内の平均信号値Spと2回の画像の差分画像での同一位置の関心領域内の標準偏差Nsから測定する方法
1回撮像 2回撮像 差分画像
ー =
Noise= SDsub/ 2
受信ゲインの固定が困難!!
• リスケール処理を戻す計算を行い,スケール値を固定.
• ダイナミック設定で撮像した場合は受信ゲインは固定される.
固定スケール値 =計測した信号強度
𝑹𝒆𝒔𝒄𝒂𝒍 𝒔𝒍𝒐𝒑𝒆 × 𝑺𝒄𝒂𝒍𝒆 𝒔𝒍𝒐𝒑𝒆
受信ゲインの固定が困難!!
EWSでの確認方法
差分画像作成に注意
•画像データをDICOMで出力後,Image Jにて差分処理する場合は問題ない.
•装置上で差分処理可能であるが,メーカーによって差分処理の画像が,マイナス値の場合,0に置換される場合がある.
•装置上でA-B,B-Aの差分画像の標準偏差が同じかどうかcheckする必要がある.
差分法 (2回撮像法)
Image Jを用いた差分法の方法を簡単に説明します
ImageJを利用した差分法
①DICOM imageを開く
ImageJを利用した差分法
②Subtractionするためにimage calculatorを開く
ImageJを利用した差分法
②Subtractionするためにimage calculatorを開く
このような画面が表示される
ImageJを利用した差分法
②image calculatorをsubtractionするために設定
Image2を選択する
ImageJを利用した差分法
③image calculatorをsubtractionするために設定
Subtractionを選択する
ImageJを利用した差分法
④計測項目をset measurementsで選択する
ImageJを利用した差分法
⑤同じ位置でROIを計測するためにROI managerを開く
ImageJを利用した差分法⑥計測したいROIを選択し,Addで一旦,保存する.
次にsub imageを選択し,ROI Manager内の保存した番号を選択するとsub imageにROIが反映される.
④
③
②
①
ImageJを利用した差分法⑦計測したいROI内の情報を表示する.
ImageJを利用した差分法差分画像していない画像の平均信号値 S : 1347.765
差分画像処理した標準偏差N : 4.729
1回撮像 2回撮像 差分画像
ー =
𝑆𝑁𝑅 =2×𝑆
𝑁=1347.765× 2/4.729=402.99
差分Map法
・撮影手順は差分法と同じ.・SNR測定の信号値は撮像した画像のうちの1枚における各ピクセル7×7近傍
の平均値とし,雑音値は差分画像の同領域における標準偏差を 2で除した値.
今井広, 宮地利明,他.差分マップ法及び連続撮像法によるParallel MRI画像のSNR測定.日本放射線技術学会 :2008
差分Map法
今井広, 宮地利明,他.差分マップ法及び連続撮像法によるParallel MRI画像のSNR測定.日本放射線技術学会 :2008
・各ピクセルごとにSNRを算出→SNRマップ作製
・ブロックノイズの出現
・展開アーチファクト等によるSNRが過小評価
ImageJを利用した差分Map法①日本放射線技術学会画像分科会HPより
ImageJ Plug-inをダウンロード
http://www.fjt.info.gifu-u.ac.jp/imgcom/archives/2008/09/parallel_mrisnr_3.html
ImageJを利用した差分Map法②ダウンロードしたファイルをImageJのPlugins内の
フォルダにコピー(今回はAnalyze)
SNR Plugin ImageJ
ImageJを利用した差分Map法③ImageJで4枚のDICOM imageを開く
(wo/PI imageA , wo/PI imageA’ , PI imageA , PI imageA’)
④Plugins→Analyze→Snr subgfactorを選択
ImageJを利用した差分Map法
⑤各項目に対応する画像を選択
Reduction Factorや作成したい
Map画像を選択
(詳細はreadmeを参照)
ImageJを利用した差分Map法⑥各Mapが完成。
SNR Map PI SNR Map
Noise PI Noise
g-factor Map
しかしながら・・・
•臨床においては倫理上,2回撮像はできない
→差分法は使用できない
どうする???
SNR評価方法:雑音評価の違い
差分法 (1回撮像法:ピクセルシフト法)撮像された1枚の画像から,3方向(読み取り方向,位相エンコード方向,斜め方向)にそれぞれ1ピクセルシフトさせた画像を作成し,それぞれ元画像との差分画像を作成し,測定する方法.ノイズは各差分画像ROIの標準偏差から求める.読み取り方向の標準偏差𝑆𝑟,位相方向の標準偏差𝑆p,斜め方向の標準偏差を𝑆𝑑とする.
ピクセルシフト法のNoise= 𝑆𝑟2 + 𝑆𝑝2 − 𝑆𝑑2
ピクセルシフト法(1回撮像法)
original
readout
ph
ase
Pixel shift(readout)
Pixel shift(phase)
Pixel shift(diagonal)
subtraction
subtraction
subtraction
Sr
Sp
Sd
差分法 (ピクセルシフト法)
• Image Jを用いたピクセルシフト法の方法を簡単に説明します
差分法 (ピクセルシフト法)①画像データをText imageへ変換
差分法 (ピクセルシフト法)②Text dataをExcelで開く
3方向,1ピクセルシフトさせる
差分法 (ピクセルシフト法)③Originalデータから3方向すべてサブトラクションする
差分法 (ピクセルシフト法)④Text image
をimage jで開く
original
readout
ph
ase
Pixel shift(readout)
Pixel shift(phase)
Pixel shift(diagonal)
subtraction
subtraction
subtraction
Sr
Sp
Sd
差分法 (ピクセルシフト法)
④以下の式でSNRを算出する.
SNR =𝑀𝑒𝑎𝑛 signal
𝑆𝑟2 + 𝑆𝑝2 − 𝑆𝑑2
表面コイルについて
・感度補正処理の有無により,信号値と雑音値のどちらかが不均一分布となる
・PIではこれらに加えて,geometry factorにより不均一雑音となりSNR分布の位置依存性が生じる.そのため,ROIの位置と大きさに問題が生じる.
Array coil
W/O CLEAR With CLEAR
PIにおけるSNR測定の問題点
Question and Ansers in MRI :http://mriquestions.com/how-is-pi-different.html より引用.
PIにおけるSNR測定の問題点
• Geometry factorによる不均一雑音
SNRPI = SNR𝑓𝑢𝑙𝑙/𝑔 𝑅
Reduction factor =1 Reduction factor =3 Reduction factor =5
Question and Ansers in MRI :http://mriquestions.com/noise-in-pi.html より引用.
PIにおけるSNR測定の問題点
Geometry factor
・コイルの配置
・撮像断面
・位相エンコード方向
・Reduction Factor
実際にコイルをずらして撮像
実際のファントムでの画像
実際のファントム画像
SNR=997.1/54.9=18.1SNR=1053.3/34.1=30.9
位置依存性の問題
宮地利明, その他. Parallel MRI における画像 SNR 評価法の問題点. 日本放射線技術学会雑誌, 2006, 62.1: 145-148.
位置依存性の問題
PI SNRには位置依存性がある
①
⑤
④
③
②
ROI SNR(Sub)
Whole 402.9
1 354.8
2 412.5
3 378.5
4 412.3
5 401.7
PIにおけるSNR測定の問題点
• SNRは位置依存性を含まないように局所で測定する必要がある(画像均一性評価の必要性)
•信号値が雑音レベルの5倍以上あるpixelのみ使用する
• Pixel cizeは50pixel程度小さく設定する(信号不均一性の除外)
本日の内容
SNRの測定
CNRの測定
コントラスト対雑音比 CNR
•臨床に最適な画像を総合的に評価する場合に用いられる.
•臨床ではSNRが悪くても時間分解能やコントラスト分解能を優先する場合がよくある.
→CNRが画像本質の良し悪し,すべてを評価しているとはいえないので注意が必要.
CNR : Contrast to noise ratio
CNR (Noiseの定義付け)
*雑音の位置依存性により正確な評価は困難
𝐶𝑁𝑅𝑛𝑜𝑛𝑃𝐼 =𝜋
2・
𝐼𝑎 − 𝐼𝑏𝐼BG
𝐶𝑁𝑅𝑃𝐼 = 𝑆𝑁𝑅𝑎 − 𝑆𝑁𝑅𝑏
a b
BG
臨床画像のSNR,CNR測定
アーチファクトに注意
臨床画像のSNR,CNR測定
SNRはピクセルシフト法
ROIの設定・均一な部分を選択・ROI Sizeは50pixel程度・数ヵ所の測定を行う
視覚評価は必須
重要:適切な評価法の選択
CNR = 13.73Contrast = 0.49
CNR = 4.02Contrast = 0.53
まとめ
• SNRの測定法
• CNRの測定法
ご清聴ありがとうございました
臨床画像のSNR,CNR測定
スライス厚1mm
スライス厚5mm
スライス厚10mm