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電子回路を用いたユーモラスなガジェット系作品の数々。あるいは鉄道模型を使って電子回路を用いたユーモラスなガジェット系作品の数々。あるいは鉄道模型を使って
幻想的な影の風景を紡ぎ出すインスタレーション。クワクボリョウタさんの作品は、幻想的な影の風景を紡ぎ出すインスタレーション。クワクボリョウタさんの作品は、
テクノロジーへの深い洞察力に基づきながらも、常に実世界での身体的な体験と結びテクノロジーへの深い洞察力に基づきながらも、常に実世界での身体的な体験と結び
付けられているようです。先輩である明和電機との共作に始まり、「作品への問いか付けられているようです。先輩である明和電機との共作に始まり、「作品への問いか
けを生み出せるサイクル」を探る道のりや、平成22年度(第14回)文化庁メディアけを生み出せるサイクル」を探る道のりや、平成22年度(第14回)文化庁メディア
芸術祭アート部門優秀賞の『10番目の感傷(点・線・面)』誕生の経緯を伺いまし芸術祭アート部門優秀賞の『10番目の感傷(点・線・面)』誕生の経緯を伺いまし
た。た。
『ビットマン』の誕生までと、明和電機から学んだこと
特定の解釈に縛られない「オブジェクトと人の関係」
どう見せるかに挑んだ『10番目の感傷(点・線・面)』
老若何女に体験してもらえる作品を目指す本当の理由
『ビットマン』の誕生までと、明和電機から学んだこと『ビットマン』の誕生までと、明和電機から学んだこと
クワクボさんの作品には、少年時代の機械工作が進化したような世界観を感じまクワクボさんの作品には、少年時代の機械工作が進化したような世界観を感じま
す。実際にそういう思い出はあるのでしょうか?す。実際にそういう思い出はあるのでしょうか?
クワクボ: クワクボ: 小学生のころ、クラブ活動的な工作はやっていました。みんな説明書付きの工
作キットをつくっていましたが、僕はエンジニアをしている父親にキットを買うのを禁じら
れて(苦笑)。それで、モーターを自作してみることにしました。本を見ながら、空き缶を
切ってコイルを巻いて、「鉄を焼きなます」と書いてあるので、よくわからず焚火に鉄板を
突っ込んだり・・・・・・。結局、出来上がったモーターはカクッと45度くらいしか回りません
でしたが、それが電気を使った工作の原体験だと思います。他にも、部品を集めてラジオを
組み立てたこともありました。これはちゃんと動いて、いまでも取ってあります。
以降もずっと、そうした世界に浸りながら成長を?以降もずっと、そうした世界に浸りながら成長を?
クワクボ: クワクボ: いえ。いわゆるマイコンショップに通って遊んだりもしましたが、そのうち音
楽、特に洋楽が好きになり、サブカルチャーの方面に惹かれていきました。進学した筑波大
学でも最初のころはコンピュータにもあまりさわらず過ごしていたんです。
しかし、そこで明和電機さんとの出会いがあるのですよね。しかし、そこで明和電機さんとの出会いがあるのですよね。
Vol.2注目作家インタビュー注目作家インタビュークワクボ リョウタクワクボ リョウタ
Vol.1注目作家インタビュー注目作家インタビュー鬼頭 莫宏鬼頭 莫宏
Vol.5注目作家インタビュー注目作家インタビュー千房 けん輔千房 けん輔
Vol.4注目作家インタビュー注目作家インタビュー小柳 祐介小柳 祐介
Vol.3注目作家インタビュー注目作家インタビュー大山 慶大山 慶
Vol.2注目作家インタビュー注目作家インタビュー今日 マチ子今日 マチ子
Vol.1受賞者インタビュー受賞者インタビュー和田 永和田 永
Vol.4受賞者インタビュー受賞者インタビュートーチカ篇トーチカ篇
Vol.3若手アーティストのリアルな事若手アーティストのリアルな事情とは~パート2~情とは~パート2~
Vol.2若手アーティストのリアルな事若手アーティストのリアルな事情とは~パート1~情とは~パート1~
Vol.1ものをつくる、表現するものをつくる、表現する関口 敦仁関口 敦仁
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クワクボ: クワクボ: 入学時に、明和電機になる前の土佐信道さんが同じ専攻(総合造形コース)の
4年生でした。それで制作を手伝い始めたのがきっかけです。当時から彼らは、常に何かの
機能を持たせた作品づくりをしていました。ふつうアートは機能を持たず、イメージや記号
を扱うことが多いですよね。その点では異色で、かといってデザイン製品でもない。僕はそ
こに強く影響を受けました。同時に、音楽や絵も手がけ、自ら演出したパフォーマンスもす
る土佐さんの多才さを前に、自分の活動はまた別の形になるだろうなと考えていました。
左:『ビットマン』(1998)©1998 Maywa Denki, Ryota Kuwakubo
右:『ビットマン』(2001) ©2001 Yoshimoto Co.,Ltd. / Maywa Denki / Ryota Kuwakubo
クワクボさんが注目を集めたのは、その明和電機との連名で発表、商品化もされクワクボさんが注目を集めたのは、その明和電機との連名で発表、商品化もされ
た『ビットマン』(98)ですね。た『ビットマン』(98)ですね。
クワクボ: クワクボ: 当時はプログラマーの仕事をしつつ、電子回路も少しいじれるようになった時
期でした。そこで小さな電光掲示板をつくってみたところ、土佐さんが「これで新しく“電
子部門”をやれるかもね」と言ってくれて。そこから発展したもので、作家としての自分を
確立する第一歩になった作品です。
電光掲示板に好きなメッセージを表示できるなど、やはり機能を持つ作品です電光掲示板に好きなメッセージを表示できるなど、やはり機能を持つ作品です
ね。クワクボさんにとってそのことはどんな意義があったのでしょう?ね。クワクボさんにとってそのことはどんな意義があったのでしょう?
クワクボ: クワクボ: いわゆる「解釈するための作品」は、正解があるならば例えば評論家の意
見などそれを知らなければいけない気持ちになるだろうし、知ったと思った瞬間に自分
への問いかけをやめてしまう気がしました。そうではなく、常に作品への問いかけを生み出
せるサイクルはないだろうか? そう考えたとき、身体的に関われて「取っ付きやすさ」もあ
る何らかの機能を備えることは突破口になるのではないか。そんな風にとらえていました。
特定の解釈に縛られない「オブジェクトと人の関係」特定の解釈に縛られない「オブジェクトと人の関係」
もともとはメディアアート以外の現代美術にも関心が高かったのですか?もともとはメディアアート以外の現代美術にも関心が高かったのですか?
クワクボ: クワクボ: ヤノベケンジさんなど、当時「ジャパニーズ・ネオポップ」として紹介された
作家のうち何人かには、とても惹かれました。ヤノベさんも、『アトムスーツ』など機能を
持ったオブジェをつくっているともいえますよね。
Vol.4近森 基++久納 鏡子近森 基++久納 鏡子
Vol.3村田 朋泰村田 朋泰
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クワクボ: クワクボ: 「この作品はこう解釈すべし」とズバっと言ってくれて、皆になるほどと思わ
せてくれる存在がいた時代もあったのかもしれません。例えばC・グリーンバーグのような
評論家が活躍したころはそうなのかなと思うのですが、現代では何に頼ればよいのかが、
もっとあやふやですよね。そう考えたときに、僕の中で文脈なり解釈とは違うところに関心
が移っていったのは事実です。それは自分にとって、大きな分岐点だったとも思います。
第7回文化庁メディア芸術祭のアート部門大賞作品『デジタルガジェット6,8 ,9』第7回文化庁メディア芸術祭のアート部門大賞作品『デジタルガジェット6,8 ,9』
は、3作品の組み合わせで受賞しています。これはやや珍しい形でしたが、組作品とは、3作品の組み合わせで受賞しています。これはやや珍しい形でしたが、組作品と
して応募したのはどんな理由からでしょう?して応募したのはどんな理由からでしょう?
クワクボ: クワクボ: ひとつには、僕の作品は小さいものが多いからです(笑)。ひとつなら点で
も、2つあると線、3つあると面ができるなというのがありました。もちろん互いに関係性が
あり、いずれも身体性を伴うわかりやすいインタラクションをテーマに生まれたものです。
『dupe r/ l oope r』はテーブルをノックすると同じリズムを真似して打ち続ける『dupe r/ l oope r』はテーブルをノックすると同じリズムを真似して打ち続ける
作品。『Heaven Seed』は投げたり回転させたりすると、動きに応じてさまざまな作品。『Heaven Seed』は投げたり回転させたりすると、動きに応じてさまざまな
音が鳴るボール。そして『loopScape』は、円筒型の画面で対戦型ゲームを行う中音が鳴るボール。そして『loopScape』は、円筒型の画面で対戦型ゲームを行う中
で、攻防の因果関係が錯綜する作品ですね。で、攻防の因果関係が錯綜する作品ですね。
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『loopScape』(2003)
クワクボ: クワクボ: オブジェクトと人の関係や、オブジェクトが介在した状態での人と人の関係へ
の関心は常にありました。テレコミュニケーションやネットワークという観点からメディア
アートの世界に合流していった人たちとは、僕はそのあたりで少し異なるかもしれません。
フェスティバル自体への印象はいかがでしたか?フェスティバル自体への印象はいかがでしたか?
クワクボ: クワクボ: 実はそれまでその存在を詳しく知らず、勧められて応募してみたのが本当のと
ころです。筑波大の後にIAMAS(情報科学芸術大学院大学)でも学び、アルスエレクトロニ
カにも出展したりする中で、メディアアートの動向は自分なりに理解していましたが、文化
庁が、つまり日本という国がこういうジャンルの表現をバックアップしようとしているのは
新鮮な驚きでもありました。
N e x t P a g e:N e x t P a g e:どう見せるかに挑んだ『10番目の感傷(点・線・面)』 >>
クワクボ リョウタクワクボ リョウタ - Kuwakubo Ryota
1971年栃木県生まれ。98年に明和電機との共作『ビットマン』を発表して以来、エレ
クトロニクスを使用したメディアアート作品を国内外で発表。アナログとデジタル、人
間と機械、情報の送り手と受け手など、さまざまな境界線上で生じる関係性を、制作の
テーマにしている。これまでの代表作に『ビデオバルブ』『PLX』『シリフリン』な
ど。文化庁メディア芸術祭では、『デジタルガジェット6,8,9』で第7回アート部門大賞
を、また『10番目の感傷(点・線・面)』で第14回アート部門優秀賞を獲得している。『ニコダマ』は第14
回エンターテインメント部門での審査委員会推薦作品に選出された。
http://www.vector-scan.com/
※2012年1月2日(月・祝)から1月8日(日)まで開催される、国内巡回事業「文化庁メディア芸術祭ネット
ワークス・長崎巡回」では、メイン展示に第14回アート部門優秀賞『10番目の感傷(点・線・面)』が登場。
クワクボリョウタ氏を迎えてのトークショーも行います。
http://plaza.map-staff. jp/blog/2011/10/1027.html
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インタビュー 1 2
どう見せるかに挑んだ『10番目の感傷 (点・線・面 )』どう見せるかに挑んだ『10番目の感傷 (点・線・面 )』
以降も活躍を続けるなか、『10番目の感傷(点・線・面)』で再び文化庁メディ以降も活躍を続けるなか、『10番目の感傷(点・線・面)』で再び文化庁メディ
ア芸術祭のアート部門に入賞します(第14回 優秀賞)。光源を積んだ鉄道模型を走ア芸術祭のアート部門に入賞します(第14回 優秀賞)。光源を積んだ鉄道模型を走
らせ、周囲に配した日常品の影が幻想的に移ろっていくインスタレーションで、これらせ、周囲に配した日常品の影が幻想的に移ろっていくインスタレーションで、これ
は新境地との評も多かったのでは?は新境地との評も多かったのでは?
『10番目の感傷(点・線・面)』(2010)©2010 クワクボリョウタ
写真:木奥恵三 写真提供:NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]
クワクボ: クワクボ: 作品そのもの以上に、それを「どう見せるか」の重要性を考えるようになった
なかで生まれた作品です。現状の結論として、まず僕のガジェット系作品は公共空間での体
験展示よりも、商品として購入できる形がよいと思っています。そうしないとコミュニケー
ションの形として機能しないものも多いので。
確かに、『ニコダマ』(第14回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門確かに、『ニコダマ』(第14回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門
審査委員推薦作品)などは実際に商品化されたことで、持ち主が好きなところに取り審査委員推薦作品)などは実際に商品化されたことで、持ち主が好きなところに取り
Vol.2注目作家インタビュー注目作家インタビュークワクボ リョウタクワクボ リョウタ
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付けて楽しめるのがよいですよね。付けて楽しめるのがよいですよね。
クワクボ: クワクボ: いっぽうで『10番目の感傷(点・線・面)』は、展示空間での効果的な見せ方
として「受け手の体験をどう設定し、提供するか」に比重を置いて取り組んだものです。こ
のときは「そこで経験するものすべてが作品にかかわる体験」といえるものを作ってみたい
と考えました。例えば、ふつうはノイズだとされる展示空間のホコリや熱、機械の発する
音、さらに作家が気付かないものをも含めた作品体験です。また、これは今回結果的にです
が、暗い空間ほど見る側のゲイン(入力レベル)は上がっていく面があります。これはマッ
チョなメディアアートが、観る者を圧倒することで感動を与えるのとは異なるやり方です。
もちろん、どちらの手法もありだと思います。
この作品の誕生においては、フッサールの現象学もヒントになったと聞きましこの作品の誕生においては、フッサールの現象学もヒントになったと聞きまし
た。た。
クワクボ: クワクボ: はい。「その人に見えるものすべて」から始める姿勢は、現象学的還元の考え
方にヒントを得たところがあります。
ここでは「機能」からいったん離れたといってよいのでしょうか?ここでは「機能」からいったん離れたといってよいのでしょうか?
クワクボ: クワクボ: そこはあまり意識していません。体験をどう生むかを考えてものをつくる際
に、今回は観る側が使える機能ではなく、視覚的な仕組みを用いたということです。何が起
こっているかはわかりやすく、その点ではこれもしきいが低い作品といえるかもしれませ
ん。いっぽうで、あの視覚的インパクトの理由のひとつは、影の解像度の高さだと思うんで
す。そもそもドットもフレームもない、時間軸と空間軸において完全に連続した像ですか
ら。プロジェクターからの映像に慣れ親しんだ現代にあって、観る側は無意識にでもその違
いを知覚するはずです。
老若何女に体験してもらえる作品を目指す本当の理由老若何女に体験してもらえる作品を目指す本当の理由
『10番目の感傷(点・線・面)』は文化庁メディア芸術祭のアート部門に「イン『10番目の感傷(点・線・面)』は文化庁メディア芸術祭のアート部門に「イン
スタレーション」カテゴリではなく、「インタラクティブアート」として応募されまスタレーション」カテゴリではなく、「インタラクティブアート」として応募されま
した。そこにはちょっとしたメッセージも?した。そこにはちょっとしたメッセージも?
クワクボ: クワクボ: はい。概念化・目的化してしまったインタラクティブ性とは違うものを志向し
たところはありました。あれをインタラクティブだと主張したら、絵も彫刻もそうでしょ
う、というのは承知の上です(笑)。でも、観衆の動きに反応して変化するとかなら、いま
やケータイやiPhoneもインタラクティブなわけで、そろそろこの言葉の再定義を考えていい
Vol.4近森 基++久納 鏡子近森 基++久納 鏡子
Vol.3村田 朋泰村田 朋泰
Vol.2藤木 淳藤木 淳
Vol.1平川 紀道平川 紀道
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時期のように思えます。
インタラクティブアートの登場時のような様式は、もう飽和点に達している?インタラクティブアートの登場時のような様式は、もう飽和点に達している?
クワクボ: クワクボ: 当然、新しい動きは加わり続けるでしょう。でも現時点ではいまだに、あるパ
ターン中でどこに分岐するかという範疇だとも感じます。『10番目の感傷』は幅広く受け入
れられたと同時に、すべての観賞者の体験が一点に収束しない作品だとも思っています。恋
人同士で観ても、互いにまったく違うものを感じるかもしれない。それって実は恐ろしいこ
とでもありますよね(笑)。一緒にいても、相手の体験には決して到達できないわけですか
ら。僕の過去作品では、『PLX』がこれをより顕在化させたものともいえます。目に見えて
いるものと、そこに何を見ているかはまた違う。これは常に興味のあるところですね。
そのためにも、さまざまな場で作品を見せていきたいのでしょうか?そのためにも、さまざまな場で作品を見せていきたいのでしょうか?
クワクボ: クワクボ: 簡単にいうと老若男女ですね(笑)。限られた対象に見せる作品も必要だし、
そのほうが議論の密度も上がるでしょう。逆に言えば、狭い範囲の人にしかわからないも
のって鋭さがあるけれど、もののつくりかたとしてはシンプルですよね。いっぽうで僕は、
多方面からみたときにも、どうにかとっかかりがあるインタフェースに関心があります。先
日、養老渓谷の古民家で展示をした際は、ハイキングに来て、いわば偶発的に作品を目にす
る人も多かった。そういう人の反応にも興味があるんです。
実際にそうした反応を目にすることは、作家としてはどんな体験ですか?実際にそうした反応を目にすることは、作家としてはどんな体験ですか?
クワクボ: クワクボ: 『10番目の感傷』の空間にいると、観にきた人に「俺ならこういうモノを置
く」といった話をよくされます。それはきっと、あの作品を自分なりのインタフェースとし
てつかんでくれたということですよね。それを直接ぶつけてもらえる、つまり作品体験その
ものが他者と関係を結ぶきっかけになる点では「やっと自分のアートをつくったかな」と
思ったりもします。
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『いち、に、たくさん』(2011)
現時点ではどんなテーマに関心を持っていますか?現時点ではどんなテーマに関心を持っていますか?
クワクボ: クワクボ: 先日“パブリック・メディアアート”を考える展覧会「歌舞伎町アートサイ
ト」に出展した『いち、に、たくさん』は、やはり影を使った作品です。ここでは、3つの
都市で入手したお土産の彫像に当てる光を、ミリ単位で制御し重ねていきます。そこには誰
も見たことのない絵がでてくる瞬間があるかもしれない。そんな期待が自分の中にもありま
す。まだ見たことのない絵、聴いたことのない音は未だにあると思いますし、それを体験す
る人の意識にもやはり興味がありますね。
写真(ポートレート):菱沼 勇夫
B a c k:B a c k:<< 『ビットマン』の誕生までと、明和電機から学んだこと
今こそ読みたい。これまでの記事をご紹介
作家インタビュー作家インタビュー
今日 マチ子今日 マチ子
例えば就職に失敗したら「人生終わ
り」だとか。でも私は答は...
コラム:写真の命コラム:写真の命
杉本 博司杉本 博司
写真という技術がひと昔前まで存在し
ていた。1839年に...
巨匠インタビュー巨匠インタビュー
中村 勇吾中村 勇吾
ボツになるほど、引き出しが増えてい
くということですから...
作家インタビュー作家インタビュー
トーチカトーチカ
作品をつくろうと思ってつくったもの
じゃないんです。始まりは...
巨匠インタビュー巨匠インタビュー
竹宮 惠子竹宮 惠子
スランプでも描くことをやめなかった
ことが、一番私を救ったと思う...
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